説明

美白用組成物、それを含む皮膚外用剤及び飲食品、並びにその美白用組成物の生産方法

【課題】優れたメラニン産生抑制能及びチロシナーゼ阻害能の少なくともいずれかを有し、優れた美白効果を有する美白用組成物の提供。
【解決手段】ハマミズナ科の植物体から抽出した抽出物を含有する美白用組成物である。前記抽出物の含有量が、0.25μg/mL以上である態様、前記抽出物が、ハマミズナ科の植物体を細分又は圧搾したものから抽出されたものである態様、及びハマミズナ科の植物体が、メセンブリアンテマ属の植物体である態様が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、美白用組成物、それを含む皮膚外用剤及び飲食品、並びにその美白用組成物の生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シミやソバカスは、ホルモン分泌の異常や紫外線への曝露に起因する皮膚症状である。紫外線により、皮膚内に存在するチロシンがチロシナーゼの働きにより酸化されてメラニン色素が過剰に産生されるとシミ、ソバカスの原因となる。シミやソバカスのない美しい肌を保つには紫外線から皮膚を防御することが大切であるが、紫外線に全く曝露されない日常生活をおくることは現実的には不可能である。そのため、多くの人々が紫外線によるシミやソバカスの生成を緩和乃至軽減する素材を必要としている。現在までに、上記のような機能性素材を見つけるため、多くの研究がなされてきた。その結果、コウジ酸(特許文献1参照)がメラニン合成抑制活性を示し、また、バラやキク(特許文献2参照)などが、メラニン合成抑制活性及びチロシナーゼ阻害活性を示し、美白剤として有用であることが知られている。また、ケールの成熟体に関しても、メラニン合成抑制活性を示し、美白剤として有用であることが知られている(特許文献3参照)。
【0003】
しかしながら、従来のメラニン合成抑制剤及びチロシナーゼ阻害剤は活性が十分に認められないことがあり、それ故に美白剤としての効果も不十分な場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公昭63−24968号公報
【特許文献2】特開2001−48801号公報
【特許文献3】特開2004−91396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、優れたメラニン産生抑制能及びチロシナーゼ阻害能の少なくともいずれかを有し、優れた美白効果を有する美白用組成物、それを含む皮膚外用剤及び飲食品、並びにその美白用組成物の生産方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、ハマミズナ科の植物体の抽出物が優れたメラニン産生抑制能及びチロシナーゼ阻害能の少なくともいずれかを有することを見出し、本発明の完成に至った。
【0007】
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> ハマミズナ科の植物体から抽出した抽出物を含有することを特徴とする美白用組成物である。
<2> 抽出物の含有量が、0.25μg/mL以上である前記<1>に記載の美白用組成物である。
<3> 抽出物が、ハマミズナ科の植物体を細分又は圧搾したものから抽出されたものである前記<1>から<2>のいずれかに記載の美白用組成物である。
<4> ハマミズナ科の植物体が、メセンブリアンテマ属の植物体である前記<1>から<3>のいずれかに記載の美白用組成物である。
<5> ハマミズナ科の植物体が、アイスプラントに含まれる植物体である前記<1>から<4>のいずれかに記載の美白用組成物である。
<6> ハマミズナ科の植物体が、植物の地上部である前記<1>から<5>のいずれかに記載の美白用組成物である。
<7> ハマミズナ科の植物体が、養液栽培されたものである前記<1>から<6>のいずれかに記載の美白用組成物である。
<8> メラニン産生抑制能及びチロシナーゼ阻害能の少なくともいずれかを有する前記<1>から<7>のいずれかに記載の美白用組成物である。
<9> 前記<1>から<8>のいずれかに記載の美白用組成物を含有することを特徴とする皮膚外用剤である。
<10> 前記<1>から<8>のいずれかに記載の美白用組成物を含有することを特徴とする飲食品である。
<11> ハマミズナ科の植物体を細分又は圧搾する工程と、
前記細分又は圧搾されたハマミズナ科の植物体から抽出物を抽出する工程と、
前記抽出物を含有する美白用組成物を調製する工程と、
を含むことを特徴とする美白用組成物の生産方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、優れたメラニン産生抑制能及びチロシナーゼ阻害能の少なくともいずれかを有し、優れた美白効果を有する美白用組成物、それを含む皮膚外用剤及び飲食品、並びにその美白用組成物の生産方法を提供することができる。
【0009】
本発明の美白用組成物の組成及びその生産方法によれば、後述する実施例で示すように、優れた美白効果を有するハマミズナ科の植物体から抽出した抽出物を含有するため、優れた美白効果を有する美白用組成物が得られる。
【0010】
また、本発明の皮膚外用剤又は飲食品によれば、後述する実施例で示すように、優れた美白効果を有するハマミズナ科の植物体から抽出した抽出物を含有するため、優れた美白効果を有する皮膚外用剤又は飲食品が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、アイスプラント(バラフ)抽出物及びコウジ酸のメラニン産生抑制能の陰性コントロール比を示すためのグラフである。
【図2】図2は、アイスプラント(バラフ)抽出物のチロシナーゼ阻害能を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0013】
(美白用組成物及びその生産方法)
本発明の美白用組成物は、少なくとも、ハマミズナ科の植物体から抽出した抽出物を含有し、更に必要に応じて適宜その他の成分を含有する。この組成によれば、後述する実施例で示すように、従来公知の美白成分であるコウジ酸と比較して優れた美白効果を有するハマミズナ科の植物体から抽出した抽出物を含有するため、優れた美白効果を有する美白用組成物が得られる。前記抽出物は、メラニン産生抑制能及びチロシナーゼ阻害能の少なくともいずれかを有する。
また、本発明の美白用組成物の生産方法は、ハマミズナ科の植物体を細分又は圧搾する工程(細分又は圧搾工程)と、前記細分又は圧搾されたハマミズナ科の植物体から抽出物を抽出する工程(抽出工程)と、前記抽出物を含有する美白用組成物を調製する工程(調製工程)とを含み、必要に応じて更にその他の工程を含む。
【0014】
ここで、ハマミズナ科(Aizoaceae)とは、双子葉植物の科で、約126属1,100種を含む。なお、ハマミズナ科は、呼び名に混乱があり、ツルナ科と呼ばれることも多いが、ツルナ属(Tetragonia)とTribulocarpus属を狭義のツルナ科(Tetragoniaceae)として分ける場合には、他の属の植物にはハマミズナ科の名が用いられる(ただし、現在は、ツルナもハマミズナ科に含めるのが普通である)。ハマミズナ科は、別名としてマツバギク科、メセン科などの通称も使われる。学名もTetragoniaceaeFicoideaeなどの旧称が使われることがある。また、かつてはザクロソウ科(Molluginaceae)と同じ分類とされていたため、古い図鑑には「ザクロソウ科 Aizoaceae」などの表記もみられる。本明細書では、これらの用語の混乱を避けるために、ハマミズナ科(Aizoaceae)とは、ツルナ科、マツバギク科、メセン科を含み、かつてはザクロソウ科に分類されていた属乃至種を含む概念であるものとする。
【0015】
また、メセンブリアンテマ属(Mesembryanthemum)とは、ハマミズナ科に含まれる多肉植物の属であり、約50種を含む。このメセンブリアンテマ属には、例えば、Mesembryanthemum aitonisMesembryanthemum barklyiMesembryanthemum cryptanthumMesembryanthemum crystallinumMesembryanthemum excavatumMesembryanthemum fastigiatumMesembryanthemum gariusanumMesembryanthemum guerichianumMesembryanthemum hypertrophicumMesembryanthemum inachabenseMesembryanthemum lomgistylumMesembryanthemum nodiflorumMesembryanthemum pellitumMesembryanthemum stenandrumMesembryanthemum subtruncatumMesembryanthemum teretifoliumMesembryanthemum teretiusculumMesembryanthemum ventricosumMesembryanthemum violenseなどの種が含まれる。
【0016】
前記アイスプラント(学名:Mesembryanthemum crystallinum)は、ハマミズナ科メセンブリアンテマ属に含まれる植物の種名である。表皮に塩を隔離するための細胞があるため、葉の表面が凍ったように見えることが、名前の由来となっている。アイスプラントは、南アフリカ原産、ヨーロッパ、西アジア等に自生の種である。アイスプラントは、乾燥に耐えるとともに、耐塩性が高い塩生植物の一つであり、海水と同程度の塩化ナトリウム水溶液中でも水耕栽培が可能である。更に、アイスプラントは、生活環が半年程度と比較的短く、栽培も容易なため、植物の耐塩性研究におけるモデル生物と考えられ、学術的な注目も集まっている。しかしながら、アイスプラントは、水耕栽培等の養液栽培ではなく土耕栽培を行った場合はエグ味成分が蓄積しやすく、また地中にカドミウムなどの有害な重金属が含まれている場合、一般作物以上に吸収、蓄積する場合があるため、養液栽培されたものが好ましい。
【0017】
前記アイスプラントは、非常に特徴的なことに、乾燥や塩ストレスを与えないと、一般的な光合成経路であるC3光合成を行い、乾燥又は塩ストレスを与えるとCAM型光合成へ移行することができる。また、表皮には塩嚢細胞(ブラッダー細胞、英語:Bladder Cell)と呼ばれる体内に侵入した塩類を隔離するための細胞が発達する。この塩嚢細胞の大きさは2mm前後に達し、透明でキラキラと輝くため、種名のクリスタリナムの由来となっている。
【0018】
アイスプラントは、日本でも国立大学法人佐賀大学農学部が栽培化し、塩味のする新野菜として紹介されたことをきっかけに、近年、全国各地でも栽培されはじめている。国立ファームはソルトリーフ(登録商標)、国立大学法人佐賀大学発ベンチャーの株式会社農研堂はバラフ(登録商標)とクリスタルリーフ(登録商標)、アグリ社はプッチーナ(登録商標)、滋賀県長浜市の日本アドバンストアグリ株式会社はツブリナ(登録商標)という商標を用いている。また、静岡県ではソルティーナやシオーナの名で販売されている。本明細書では、これらの用語の混乱を避けるために、アイスプラント(学名:Mesembryanthemum crystallinum)には、バラフ、クリスタルリーフ、プッチーナ、ツブリナ、ソルティーナ、シオーナなどが含まれるものとする。
【0019】
ここで、「バラフ」とは、国立大学法人佐賀大学農学部で研究開発されている、南アフリカ原産の植物「アイスプラント」を野菜化した国立大学法人佐賀大学ブランド商品であり、市販されている。葉や茎の表面に宝石のようにキラキラと光る水滴のような細胞がついているのが、大きな特徴である。その外観から、アフリカのスワヒリ語で「水晶」や「氷」を意味する「バラフ」と名付けられている。バラフは、国立大学法人佐賀大学発ベンチャー企業(株)農研堂と契約農家で栽培を行っており、国立大学法人佐賀大学農学部で開発された技術によって品質安定を図り、安全性及び安心に配慮して栽培されている。
【0020】
<バラフの栄養成分について>
バラフは、レタスと比較すると、ミネラル分やカロテンが多いのが特徴である。特に、体内の塩分を調節する働きがあるカリウムを多く含む。また、バラフは、疲労回復効果の働きが知られているリンゴ酸やクエン酸を含むことも特徴である。また最近では、バラフは、体内の活性酸素を抑える抗酸化作用があるβカロテンが多いことから、老化防止や疲労回復、生活習慣病予防などに効果があるといわれ、細胞内の脂肪を燃焼させる効果のあるパントテン酸が含まれることもわかってきている。
【0021】
<バラフの成分分析結果について>
項目 バラフ>レタス結玉葉 生※
エネルギー(kcal) 15>12
ナトリウム(mg) 360>2
カリウム(mg) 480>200
カルシウム(mg) 30>19
マグネシウム(mg) 18>8
リン(mg) 45>22
カロテン注)(μg) 910>240
レチノール当量(μg) 150>40
ビタミンK(μg) 77>29
パントテン酸(mg) 0.63>0.2
食塩相当量(g) 0.9>0
単位は全て、地上部分100g当りの成分含有量
※ 五訂日本食品標準成分表より抜粋
注)βカロテン当量として
【0022】
前記ハマミズナ科の植物体の栽培方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、土耕栽培の場合、土に重金属が含まれると植物体に吸収乃至蓄積される可能性があるため、養液栽培が好ましい。前記養液栽培における養液及び栽培方法としては、例えば、特開2009−254246号公報に記載されたものを用いることができる。
【0023】
前記ハマミズナ科の植物体の栽培方法については、前記アイスプラントを商品化した国立大学法人佐賀大学農学部の研究グループが、その栽培に関して、土での栽培に注意を呼び掛けている。
前記研究グループは、もともと干拓地の塩害改善作物としてアイスプラントの研究をしており、アイスプラントの食用品も開発し「バラフ」の名称で商標登録をしている。前記研究グループは、栽培方法としては、「地中にカドミウムなどの有害な重金属が含まれている場合、一般作物以上に吸収、蓄積する特性があった」(野瀬昭博教授)として養液栽培を選択している。また、栽培に使用する培地についても分析を行い、栽培に使用する水は飲料適水に限定している。同教授は、土耕栽培をする場合には、「重金属の有無など、精密に土壌分析したうえで栽培すべき」と注意を喚起している。
【0024】
これらのハマミズナ科の植物体(例えば、アイスプラント)を用いる場合には、前記植物体の地上部を用いることが好ましい。ハマミズナ科の植物体(例えば、アイスプラント)のうち、地上部が特に食用として適しているため、本発明の組成物に用いる抽出物も食履歴などに基づく安全性及び健康によい成分を多く含むことが期待されることなどの観点から地上部を用いることが好ましいためである。ここで、本明細書において、植物体の「地上部」とは、地表よりも上部に位置する部位(葉、茎など)を含む概念である。
【0025】
<抽出物、並びに、細分又は圧搾工程及び抽出工程>
本実施形態では、ハマミズナ科の植物体からの抽出物は、ハマミズナ科の植物体を細分又は圧搾したものから抽出されたものであることが、美白用組成物の品質向上及び製造安定性の面から好ましい。
前記抽出物は、前記細分又は圧搾工程及び前記抽出工程により得ることができる。
細分又は圧搾方法、及び抽出方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、ハマミズナ科の植物体をミキサーなどを用いて、或いは手作業によるせん断力によって物理的に細分するか、又は機械を用いて或いは手作業などによって圧搾したものから、抽出物を抽出することによって、熱水抽出又はエタノール抽出などの場合のようにハマミズナ科の植物体に含まれる有効成分が変質乃至失活などしてしまう危険性を低減することができる。
なお、前記抽出物の原料である、前記ハマミズナ科の植物体の保管状態としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、抽出の直前まで冷凍して保管されてもよいし、一旦冷凍された後に解凍して保管されてもよいし、冷蔵又は常温で保管されてもよい。
【0026】
前記ハマミズナ科の植物体をせん断力によって機械的乃至物理的に細分する際の細分時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1時間以内であることが美白用組成物の品質向上及び製造安定性の観点から好ましい。
【0027】
前記細分又は前記圧搾の際には、他の溶媒(例えば水等)、助剤(例えば0.1質量%程度の微量のジエチレングリコール、アルコール等)などを加えてもよい。また、前記ハマミズナ科の植物体を手作業などによって圧搾する際には、細分化したハマミズナ科の植物体を、てこ、ネジ、水圧、油圧などを用いた圧搾機などで圧搾してもよい。このようにしても、ハマミズナ科の植物体を効率よく細分又は圧搾することが可能だからである。
【0028】
前記ハマミズナ科の植物体を、ミキサーなどを用いて或いは手作業によるせん断力によって物理的に細分、又は機械を用いて或いは手作業などによって圧搾した後に抽出する方法としては、特に制限はなく、任意の公知の濾過法を用いることができ、例えば、濾布、フィルター、メンブレン、金属濾材、セラミック濾材などを好適に用いることができる。
【0029】
また、前記濾過する際には、圧力をかけて濾過を行ってもよい。前記圧力としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1MPa〜10MPa程度の圧力で濾過を行うことが美白用組成物の品質向上及び製造安定性の観点から好ましい。
【0030】
前記抽出物は、抽出した溶液のまま用いてもよく、必要に応じて、濃縮、希釈及び濾過処理、活性炭等による脱色、脱臭処理等をして用いてもよい。更には、抽出した溶液を濃縮乾固、噴霧乾燥、凍結乾燥等の処理を行い、乾燥物として用いてもよい。これらの中でも、凍結乾燥することが、抽出物の品質安定性及び取扱容易性の観点から好ましい。
【0031】
前記凍結乾燥の時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、24時間以内であることが抽出物の品質安定性及び取扱容易性の観点から好ましい。
【0032】
<調製工程>
前記抽出物を含有する美白用組成物を調製する際には、前記抽出物をそのまま使用してもよく、単に水(精製水など)で希釈してもよく、或いは抽出物の効果を損なわない範囲内で、通常、美白用組成物に用いられる成分である油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、アルコール類、エステル類、界面活性剤、金属石鹸、pH調整剤、防腐剤、香料、粉体、紫外線吸収剤、増粘剤、色素、酸化防止剤、美白剤、キレート剤等の成分を配合することができる。
【0033】
本発明の美白用組成物に含まれる前記抽出物の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、品質向上及び製造安定性の観点からは、乾燥質量(抽出物及び美白用組成物が粉末状である場合には、かさ密度)として0.25μg/mL以上が好ましく、0.5μg/mL以上がより好ましい。また、用いる剤型、使用対象等の様々の条件に応じて、広範囲でその含有量を適宜設定することができるが、例えば、メラニン産生抑制能の観点からは、0.25μg/mL以上が好ましく、チロシナーゼ阻害能の観点からは、0.5mg/mL以上が好ましい。
【0034】
<皮膚外用剤及び飲食品>
本発明の皮膚外用剤は、上記の美白用組成物を含有する。この組成によれば、後述する実施例で示すように、従来公知の美白成分であるコウジ酸など(陽性コントロール)と比較して優れた美白効果を有する、ハマミズナ科の植物体から抽出した抽出物を含有するため、優れた美白効果を有する皮膚外用剤が得られる。
【0035】
ここで、本発明の皮膚外用剤は、前記抽出物をそのまま使用してもよく、単に水(精製水など)で希釈して用いてもよく、或いは前記抽出物の効果を損なわない範囲内で、前記美白用組成物に用いられる成分である、油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、アルコール類、エステル類、界面活性剤、金属石鹸、pH調整剤、防腐剤、香料、保湿剤、粉体、紫外線吸収剤、増粘剤、色素、酸化防止剤、キレート剤等の成分を配合することができる。
【0036】
なお、本発明の皮膚外用剤は、化粧品、医薬部外品、医薬品のいずれにも用いることができ、その剤形としては、例えば、化粧水、クリ−ム、乳液、ゲル剤、エアゾール剤、エッセンス、パック、洗浄剤、浴用剤、ファンデ−ション、打粉、口紅、軟膏、パップ剤等の皮膚に適用されるものが挙げられる。
【0037】
また、本発明の飲食品は、上記の美白用組成物を含有する。この組成によれば、後述する実施例で示すように、従来公知の美白成分であるコウジ酸など(陽性コントロール)と比較して優れた美白効果を有する、ハマミズナ科の植物体から抽出した抽出物を含有するため、優れた美白効果を有する飲食品が得られる。
【0038】
ここで、本発明の飲食品は、前記抽出物をそのまま使用してもよく、単に水(精製水など)で希釈して用いてもよく、或いは抽出物の効果を損なわない範囲内で、種々の栄養成分を加えて、食用に適した形態、例えば、粉末状、粒状、顆粒状、液状、ペースト状、クリーム状、タブレット状、カプセル状、カプレット状、ソフトカプセル状、錠剤状、棒状、板状、ブロック状、丸薬状、固形状、ゲル状、ゼリー状、グミ状、ウエハース状、ビスケット状、飴状、チュアブル状、シロップ状、スティック状などに成形して食品素材として提供することができる。また、水、牛乳、豆乳、果汁飲料、乳清飲料、清涼飲料、青汁、ヨーグルトなどに添加して使用してもよい。
【0039】
本発明の皮膚外用剤又は飲食品に含まれる前記抽出物の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、品質向上及び製造安定性の観点からは、乾燥質量(抽出物、及び皮膚外用剤又は飲食品が粉末状である場合には、かさ密度)として0.25μg/mL以上が好ましく、0.5μg/mL以上がより好ましい。また、用いる剤型、使用対象等の様々の条件に応じて、広範囲でその含有量を適宜設定することができるが、例えば、メラニン産生抑制能の観点からは、0.25μg/mL以上が好ましく、チロシナーゼ阻害能の観点からは、0.5mg/mL以上が好ましい。
【0040】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例】
【0041】
以下、本発明の実施例について説明する。なお、本発明は、下記の実施例に限定して解
釈すべきではなく、特許請求の範囲における記載の範囲内で種々の変更が可能である。
【0042】
(実施例1:メラニン産生抑制能の評価試験)
アイスプラント(バラフ)を用いた本発明のメラニン産生抑制作用を、マウスのB16メラノーマ細胞(RCB1283;独立行政法人理化学研究所より入手)を使用し、以下のようにして評価した。
【0043】
<試験培地の調製>
テオフィリン(和光純薬工業株式会社製)を133.4mMとなるようにジメチルスルホキシド(和光純薬工業株式会社製)で溶解し、通常培地(10体積%ウシ胎児血清、及び1体積%ペニシリン−ストレプトマイシン混合溶液(ナカライテスク株式会社製)含有D−MEM(シグマ社製))で200倍希釈し、試験培地とした。
【0044】
<被験物質の調製>
まず、アイスプラント(バラフ)の地上部を室温(15℃〜25℃)下においてミキサーで細分(15℃〜25℃、20分間)し、細分物を濾布で濾過した後、濾過液を凍結乾燥(18時間)させ、アイスプラント(バラフ)の抽出物を得た。
前記アイスプラント(バラフ)の抽出物を1μg/mL、10μg/mL、及び100μg/mLの濃度となるように前記通常培地に溶解させ、0.2μmのフィルターで濾過滅菌を行ったものを被験物質とした。
【0045】
<比較対照の調製>
コウジ酸を1μg/mL、10μg/mL、及び100μg/mLの濃度となるように通常培地に溶解させ、0.2μmのフィルターで濾過滅菌を行ったものを比較対照(陽性コントロール)とした。なお、陰性コントロールとしては、通常培地を用いた。
【0046】
<細胞溶解液の調製>
水酸化ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)1N、及びTritonX−100(和光純薬工業株式会社製)1体積%となるように精製水を用いて調製し、細胞溶解液とした。
【0047】
<細胞の調製>
通常培地にて、マウスのB16メラノーマ細胞の凍結細胞を融解し、炭酸ガスインキュベーター内で、75cmのフラスコを用いて、通常培地により培養後、75cmフラスコへ継代して、炭酸ガスインキュベーターで培養を継続した。その後、75cmフラスコから96ウェルプレートに4.0×10cells/mLの細胞浮遊液を各0.2mL/wellずつ播種し、炭酸ガスインキュベーター内で24時間培養を行った。上記96ウェルプレートから培地を除去した後、試験培地0.1mL/wellと被験物質あるいは比較対照を含んだ培地、若しくは陰性コントロールとして通常培地を0.1mL/wellで添加し、3日間培養を行った。即ち、被験物質及び比較対照は、最終濃度が0.5μg/mL、5μg/mL、及び50μg/mLの3種を試験に供した。
【0048】
<細胞数の計測>
3日間、マウスのB16メラノーマ細胞の培養を行った96ウェルプレートから細胞培養上清を除去し、0.1mLの無血清培地(1体積%ペニシリン−ストレプトマイシン混合溶液含有D−MEM)で細胞を2回洗浄した後、前記無血清培地で20倍に希釈したCell Counting Kit−8(株式会社同人化学研究所製)溶液を0.1mL/wellで添加し、その後、37℃インキュベーターで適度に発色させ、分光光度計で波長450nmの吸光度を測定した。
【0049】
<メラニン産生量の測定>
96ウェルプレートからCell Counting Kit−8溶液を除去し、PBS(タカラバイオ株式会社製)を0.1mL/well添加して除去することを3回繰り返し、細胞を洗浄した。その後、0.1mL/wellずつ細胞溶解液を添加し、37℃のインキュベーターで1時間静置した後、分光光度計を用いて波長490nmの吸光度を測定した。
【0050】
<メラニン産生率の算出>
各well毎のメラニン産生率(% of control)は下記式1−1及び1−2から求めた。
メラニン産生率(% of control)=(各well毎の細胞あたりのメラニン量/陰性コントロールの細胞あたりのメラニン量)×100・・・式1−1
各well毎の細胞あたりのメラニン量=(C−D)/(A−B)・・・式1−2
A:各well毎に測定した波長450nmにおける吸光度
B:20倍希釈したCell Counting Kit−8溶液の波長450nmにおける吸光度
C:各well毎に測定した波長490nmにおける吸光度
D:細胞溶解液の波長490nmにおける吸光度
【0051】
以上の方法で求めたメラニン産生率の結果を表1及び図1に示す。
【0052】
【表1】

【0053】
<結果の考察>
表1及び図1に示すように、実施例1においてアイスプラント(バラフ)の抽出物は、比較対照であるコウジ酸(なお、コウジ酸にはメラニン産生量の抑制効果があることが公知である)に対して高いメラニン産生抑制効果を示した。以上の結果より、アイスプラント(バラフ)の抽出物が高いメラニン産生抑制効果を有することが明らかになった。
【0054】
また、上記の実施例では、アイスプラント(バラフ)を細分したものから濾過によって抽出された抽出物を用いているため、従来公知のメラニン産生抑制成分であるコウジ酸など(陽性コントロール)と比較しても優れたメラニン産生抑制効果があることが実証されている。また、上記の実施例では、アイスプラント(バラフ)を細分したものから濾過によって抽出された抽出物を用いている(熱水抽出やアルコール抽出などを行っていない)ため、アイスプラント(バラフ)の抽出物内の有効成分が変質、失活などする危険性が少ない。
【0055】
(実施例2:チロシナーゼ阻害能の評価試験)
アイスプラント(バラフ)の抽出物のチロシナーゼ活性阻害作用を以下のようにして評価した。
【0056】
<酵素溶液の調製>
チロシナーゼ(マッシュルーム由来、CALZYME Laboratpries, Inc製)を、1/15Mリン酸緩衝液(pH7.2)を用いて、275units/mLとなるように調製し、酵素溶液とした。
【0057】
<基質溶液の調製>
L−DOPA(和光純薬工業株式会社製)を、1/15Mリン酸緩衝液(pH7.2)を用いて、0.3mg/mLとなるように調製し、基質溶液とした。
【0058】
<被験物質の調製>
まず、アイスプラント(バラフ)の地上部を室温(15℃〜25℃)下においてミキサーで細分(15℃〜25℃、20分間)し、細分物を濾布で濾過した後、濾過液を凍結乾燥(18時間)させ、アイスプラント(バラフ)の抽出物を得た。
次いで、1/15Mリン酸緩衝液(pH7.2)を用いて、前記アイスプラント(バラフ)抽出物の濃度が2.2mg/mL、6.7mg/mL、20.0mg/mL、及び60.0mg/mLとなるように調製し、サンプル溶液とした。
96ウェルプレートに前記サンプル溶液を100μL/wellで添加した後、酵素溶液を100μL/wellで添加し、37℃で10分間インキュベートを行った。更に、基質溶液を100μL/wellで添加し、37℃で5分間インキュベートを行った後、波長475nmにおける吸光度を測定した。
【0059】
被験溶液blankの調製は以下のようにして行った。96ウェルプレートにサンプル溶液を100μL/wellで添加した後、酵素溶液を100μL/wellで添加し、37℃で10分間インキュベートを行った。更に、基質溶液に代えて1/15Mリン酸緩衝液(pH7.2)を100μL/wellで添加し、37℃で5分間インキュベートを行った後、波長475nmにおける吸光度を測定した。
【0060】
対照溶液の調製は以下のようにして行った。96ウェルプレートに1/15Mリン酸緩衝液(pH7.2)を100μL/wellで添加した後、酵素溶液を100μL/wellで添加し、37℃で10分間インキュベートを行った。更に、基質溶液を100μL/wellで添加し、37℃で5分間インキュベートを行った後、波長475nmにおける吸光度を測定した。
【0061】
対照溶液blankの調製は以下のようにして行った。96ウェルプレートに1/15Mリン酸緩衝液(pH7.2)を100μL/wellで添加した後、酵素溶液を100μL/wellで添加し、37℃で10分間インキュベートを行った。更に、1/15Mリン酸緩衝液(pH7.2)を100μL/wellで添加し、37℃で5分間インキュベートを行った後、波長475nmにおける吸光度を測定した。
【0062】
チロシナーゼ活性阻害は、下記式2から求められる阻害率で表した。結果を表2及び図2に示す。
チロシナーゼ活性阻害率(%)=[100−{(a−b)/(c−d)}×100]・・・式2
a:被験溶液の波長475nmにおける吸光度。
b:被験溶液blankの波長475nmにおける吸光度。
c:対照溶液の波長475nmにおける吸光度。
d:対照溶液blankの波長475nmにおける吸光度。
【0063】
なお、チロシナーゼ活性阻害率は、3回の独立した試験の平均値±標準誤差で示した。また、チロシナーゼ活性阻害率が50%となる被験物質の濃度を示すIC50の値は、希釈系列から近似曲線を作成して求めた。
【0064】
【表2】

【0065】
表2及び図2の結果から、アイスプラント(バラフ)の抽出物は、優れたチロシナーゼ活性阻害作用を有していることが分かった。即ち、本発明の組成物は、優れたチロシナーゼ阻害能を有し、美白効果を有するので、美白用組成物として有用である。また、本発明の美白用組成物は、そのまま又は他の成分を添加することで、美白効果を有する皮膚外用剤、飲食品などを得ることができる。
【0066】
以上、本発明を実施例に基づいて説明した。これらの実施例はあくまで例示であり、種々の変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
例えば、実施例1及び2では、アイスプラント(バラフ)の濾過液を凍結乾燥して用いたが、濾過液をそのまま用いてもよい。この場合にも、アイスプラント(バラフ)の濾過液そのものも、前記実施例1及び2の場合と同様に、優れたメラニン産生抑制能及びチロシナーゼ阻害能の少なくともいずれかを有することは当業者に容易に理解可能である。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の美白用組成物は、ハマミズナ科の植物体から抽出した抽出物を含有することを特徴としており、優れたメラニン産生阻害作用及びチロシナーゼ活性阻害作用の少なくともいずれかを有する。本発明の美白用組成物は、そのまま又は種々の成分を加えて、皮膚外用剤、飲食品などとして好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハマミズナ科の植物体から抽出した抽出物を含有することを特徴とする美白用組成物。
【請求項2】
抽出物の含有量が、0.25μg/mL以上である請求項1に記載の美白用組成物。
【請求項3】
抽出物が、ハマミズナ科の植物体を細分又は圧搾したものから抽出されたものである請求項1から2のいずれかに記載の美白用組成物。
【請求項4】
ハマミズナ科の植物体が、メセンブリアンテマ属の植物体である請求項1から3のいずれかに記載の美白用組成物。
【請求項5】
ハマミズナ科の植物体が、アイスプラントに含まれる植物体である請求項1から4のいずれかに記載の美白用組成物。
【請求項6】
ハマミズナ科の植物体が、植物の地上部である請求項1から5のいずれかに記載の美白用組成物。
【請求項7】
ハマミズナ科の植物体が、養液栽培されたものである請求項1から6のいずれかに記載の美白用組成物。
【請求項8】
メラニン産生抑制能及びチロシナーゼ阻害能の少なくともいずれかを有する請求項1から7のいずれかに記載の美白用組成物。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の美白用組成物を含有することを特徴とする皮膚外用剤。
【請求項10】
請求項1から8のいずれかに記載の美白用組成物を含有することを特徴とする飲食品。
【請求項11】
ハマミズナ科の植物体を細分又は圧搾する工程と、
前記細分又は圧搾されたハマミズナ科の植物体から抽出物を抽出する工程と、
前記抽出物を含有する美白用組成物を調製する工程と、
を含むことを特徴とする美白用組成物の生産方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−232976(P2012−232976A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−94629(P2012−94629)
【出願日】平成24年4月18日(2012.4.18)
【出願人】(398028503)株式会社東洋新薬 (182)
【Fターム(参考)】