説明

美白用組成物

【課題】美白成分としてアスコルビン酸誘導体を含む組成物および該組成物の安定化方法および安定性に優れ、美白効果および使用感に優れる医薬品、医薬部外品または化粧品用の組成物の提供。
【解決手段】アスコルビン酸誘導体およびエデト酸四ナトリウムを配合し、pH6.5〜7.0に調整された組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、美白成分としてアスコルビン酸誘導体を含む組成物の安定化方法および医薬品、医薬部外品または化粧品用の組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アスコルビン酸およびその誘導体は、メラニン生成阻害作用に基づく美白効果をはじめとして、多彩な作用を有することから、医薬品、医薬部外品および化粧品等の成分として汎用されてきた。しかしながら、アスコルビン酸は、酸化され易く、きわめて不安定な化合物であり、また、その安定化誘導体として最近多用されているアスコルビン酸グルコシドの安定性も未だ充分とはいえず、経時的に分解し、これらを配合した化粧料などに変色を生じるという課題がある。このためアスコルビン酸およびその誘導体の安定性を確保すべく、これまでに様々な試みがなされている。
【0003】
例えば、アスコルビン酸グルコシドを安定に配合し、経時での変色が生じにくい化粧料として、アスコルビン酸グルコシドおよびレシチンを含有する化粧料の開示がある(例えば、特許文献1参照)。当該文献には、キレート作用を有する化合物を配合することにより、アスコルビン酸グルコシドを更に安定に含有することができることについて開示があり、キレート作用を有する化合物として、エチレンジアミン四酢酸(別名;エデト酸)又はその塩などが例示されている。
【0004】
また、L−アスコルビン酸及びその誘導体の光による分解を抑制し、これにより皮膚外用剤の変色や変臭を低減するために金属イオン封鎖剤および特定のビフェニル化合物を配合した皮膚外用剤の開示がある(例えば、特許文献2参照)。この金属イオン封鎖剤として、エデト酸二ナトリウム、エデト酸三ナトリウムおよびエデト酸四ナトリウム等のエデト酸塩などが例示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2002−265344号公報
【特許文献2】特開2005−15449号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、安定性の改善されたアスコルビン酸誘導体を含む組成物、詳しくは、アスコルビン酸誘導体を含み、安定性に優れ、美白効果および使用感に優れる、医薬品、医薬部外品または化粧品用の組成物およびアスコルビン酸誘導体を含む組成物の安定化方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、美白成分としてアスコルビン酸誘導体を含む組成物について鋭意研究を行ったところ、エデト酸化合物のうちでも、特にエデト酸四ナトリウムを選択的に配合し、かつpHを6.5〜7.0の極めて限定された範囲に調整することにより、アスコルビン酸誘導体を含む組成物の安定性を達成しうること、かつ美白効果および使用感にも優れた組成物が得られることを見出し、本発明を完成した。このような本発明では、一態様としてアスコルビン酸誘導体およびエデト酸四ナトリウムを配合する、pH6.5〜7.0の医薬品、医薬部外品または化粧品用の組成物が提供される。また別態様として、アスコルビン酸誘導体を配合する組成物にエデト酸四ナトリウムを配合し、調製時のpHを6.5〜7.0に調整する、該組成物の安定化方法が提供される。
【0008】
なお、従来、アスコルビン酸誘導体を含む組成物中に、キレート作用を有する化合物あるいは金属イオン封鎖剤などとしてエデト酸化合物を添加することは知られ、その具体的な実施例を示す特許文献もあるが、エデト酸化合物のうちでもエデト酸四ナトリウムを選択する必要があることを教示するものはなく、pH調整の必要性を教示するものはない。勿論、アスコルビン酸誘導体を含む組成物の安定化のために、エデト酸四ナトリウムを含ませ、かつpH6.5〜7.0の範囲に調整された組成物の開示はない。たとえば前記特許文献1には、エデト酸二ナトリウムおよびエデト酸四ナトリウムを配合した実施例が示されているが、両者の効果の差異および至適pHについてはなんら開示しない。同様に、特許文献2においても、金属イオン封鎖剤として例示される各化合物、特に各エデト酸塩間の効果の差異および至適pHに関する開示はない。
【発明の効果】
【0009】
アスコルビン酸誘導体およびエデト酸四ナトリウムを配合し、pH6.5〜7.0に調整された医薬品、医薬部外品または化粧品用の組成物は、アスコルビン酸誘導体の不安定さに起因する変色や変臭が抑制される効果を有し、安定性に優れるとともに美白効果および使用感に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の一態様は、アスコルビン酸誘導体およびエデト酸四ナトリウムを配合する、pH6.5〜7.0の医薬品、医薬部外品または化粧品用の組成物である。
以下、本発明を、上記組成物の調製に基いて詳細に説明する。
【0011】
本発明におけるアスコルビン酸誘導体は、通常、医薬品、医薬部外品または化粧品用に用いられるものであれば特に限定されない。例えば、アスコルビン酸アルキルエステル、アスコルビン酸リン酸エステル、アスコルビン酸硫酸エステルおよびアスコルビン酸配糖体等が挙げられる。より具体的には、モノステアリン酸L−アスコルビル、モノパルミチン酸L−アスコルビル、モノイソパルミチン酸L−アスコルビル、モノオレイン酸L−アスコルビル、ジステアリン酸L−アスコルビル、ジパルミチン酸L−アスコルビル、ジイソパルミチン酸L−アスコルビル、ジオレイン酸L−アスコルビル、トリステアリン酸L−アスコルビル、トリパルミチン酸L−アスコルビル、トリイソパルミチン酸L−アスコルビル、トリオレイン酸L−アスコルビル、テトラステアリン酸L−アスコルビル、テトラパルミチン酸L−アスコルビル、テトライソパルミチン酸L−アスコルビル、テトラオレイン酸L−アスコルビル等のL−アスコルビン酸アルキルエステル、L−アスコルビン酸モノリン酸エステル、L−アスコルビン酸ジリン酸エステル、L−アスコルビン酸トリリン酸エステル等のL−アスコルビン酸リン酸エステル、L−アスコルビン酸−2−硫酸エステル、L−アスコルビン酸−3−硫酸エステル等のL−アスコルビン酸硫酸エステル、L−アスコルビン酸−2−グルコシド等のL−アスコルビン酸配糖体等が挙げられる。また、これらの塩を使用することも可能である。
【0012】
これらのうちでも、L−アスコルビン酸−2−グルコシドが好ましく、α−グリコシル−L−アスコルビン酸がさらに好ましく、とりわけ、2−O−α−D−グルコピラノシル−L−アスコルビン酸が好ましい。
【0013】
本発明で用いられるアスコルビン酸誘導体は、いずれも公知の化合物であり、公知の方法により合成されたものを用いることもでき、また、市販されているものを用いることもできる。例えば、アスコルビン酸−2−グルコシドについては、特許第2926412号公報、あるいは、特許第2832848号公報に記載の方法によって合成したものなどを用いることができる。
【0014】
本発明におけるアスコルビン酸誘導体の配合量は、美白効果および使用感の観点から、組成物全量に対して、0.1〜10wt%が好ましく、0.5〜5wt%がさらに好ましく、とりわけ、2wt%であるものが好ましい。なお本明細書において、配合量は、特に説明がない場合も、組成物全量に対する量であることを意味する。
【0015】
本発明で用いられるエデト酸四ナトリウムは、通常、医薬品、医薬部外品または化粧品用に用いられるものであれば特に限定されない。結晶水を有するものも使用可能である。例えば、市販の、エデト酸四ナトリウム、エデト酸四ナトリウム二水塩、エデト酸四ナトリウム四水塩、等を使用することができ、エデト酸四ナトリウム二水塩が好ましい。
【0016】
本発明で用いられるエデト酸四ナトリウムの配合量は、組成物の安定化効果および使用感の観点から、組成物全量に対して、エデト酸四ナトリウムとして、0.01〜0.5wt%が好ましく、0.1〜0.3wt%がさらに好ましい。
【0017】
本発明の組成物は、通常、水相を含み、水相が連続相の水性組成物であっても連続相が油性の乳剤等であってもよい。その具体的な形態は特に限定されないが、例えば、化粧水、乳液、エッセンス、クリームなどが挙げられ、化粧水、乳液またはエッセンスが好ましい。また、医薬品、医薬部外品または化粧品は、組成物中の成分や配合量等により、それぞれ薬事法に基いて分類される。
【0018】
本発明の組成物は、アスコルビン酸誘導体およびエデト酸四ナトリウムに加え、後述するような組成物に配合される他の成分を適宜含むことができるが、組成物の安定化効果とりわけ、着色・着臭の防止効果および使用感の観点から、最終的にpHを6.5〜7.0、より好ましくは6.7〜6.9に調整して調製される。pHが6.5未満では製品の安定性の観点、とりわけ、製品の着色の観点から好ましくない。また、組成物が医薬品、医薬部外品または化粧品用であることを考慮すれば、pHが7.0を超えると、皮膚のpHとの乖離が大きくなり、刺激性、使用感等の観点から好ましくない。pHの調製には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、クエン酸ナトリウムおよびクエン酸などのpH調整剤を使用することができる。
pH6.5〜7.0で調製された本発明の組成物は、後述する試験例に示すとおり、密閉保管下で、6ヶ月後でもL−アスコルビン酸−2−グルコシドの含量低下が認められないことが確認されている。なお、使用時(開封後)には、空気酸化等により、pHが変動し、この領域外となる場合もある。
【0019】
上記から、本発明の別態様として、アスコルビン酸誘導体を配合する組成物にエデト酸四ナトリウムを配合し、調製時のpHを6.5〜7.0に調整する組成物の安定化方法が提供される。
【0020】
本発明の組成物のpHの測定は、当該組成物が水性組成物であれば、そのまま測定することができる。連続相が油性の乳剤等の場合には、その水相を常法により測定することにより、測定することができる。また、必要に応じて、精製水等により希釈分散して測定することも可能である。
【0021】
上記のような本発明の組成物に含ませることができる他の成分は、通常、医薬品、医薬部外品または化粧品用に用いられるものであれば特に限定されない。具体的には、グリチルリチン酸ジカリウム、グリチルレチン酸ステアリル、酢酸dl−α−トコフェロールなどの肌荒れ防止剤、エタノールなどの清涼剤、1,3−ブチレングリコール、ヒオウギ抽出液、トリメチルグリシン、濃グリセリン、dl−ピロリドンカルボン酸ナトリウム液、ヒアルロン酸ナトリウム、キシリトール、1,2−ペンタンジオール、プロピレングリコールなどの保湿剤、任意の可溶化剤、パラオキシ安息香酸エステルなどの防腐剤、任意の基剤、キサンタンガム、メチルセルロース、ポリエチレングリコールなどの粘度調整剤などを適宜組み合わせて使用することができる。
【0022】
上記他の成分のうちでは、トリメチルグリシン、ヒオウギ抽出液、グリチルリチン酸ジカリウム、グリチルレチン酸ステアリルおよび酢酸dl−α−トコフェロールから選択される一種以上を配合することが好ましい。
【0023】
さらに、本発明の組成物には、更に通常用いられる成分、例えば、カチオン性ポリマーなどのコンディショニング成分、色素、顔料などの着色剤、塩化ナトリウムなどの塩類、植物エキス類、ビタミン剤、香料、紫外線吸収剤、抗酸化剤、水などを適宜配合できる。
【0024】
本発明の組成物は、例えば、以下の方法により調製することができるが、この方法に限定されない。
滅菌水に適量の水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムを加えて溶解した後、適量のクエン酸ナトリウムおよび適量のクエン酸を順次加えて溶解し、溶液とする。該溶液にアスコルビン酸誘導体を加えてアスコルビン酸誘導体含有溶液を調製する。なお、水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウム、クエン酸ナトリウムおよびクエン酸における適量とは、最終組成物のpHが本発明で規定するpHとなるように予め設定した配合量を意味する。
上記以外の各成分を常法により混合した溶液を予め調製しておき、これと、上述の方法にて調製したアスコルビン酸誘導体含有溶液とを混合することにより、目的とする組成物を得ることができる。
【実施例】
【0025】
以下に、本発明の組成物の実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)化粧水
以下の成分を常法により混合し、調製時pH6.8の化粧水を調製した。
【表1】

【0026】
(実施例2) 化粧水
以下の成分を常法により混合し、調製時pH6.7の化粧水を調製した。
【表2】

【0027】
(実施例3) 乳液
以下の成分を常法により混合し、調製時pH6.7の乳液を調製した。
【表3】

【0028】
(試験例1)
実施例2の化粧水、および、実施例2の組成物に含まれる金属封鎖剤であるエデト酸四ナトリウム二水塩(配合量0.2%)を、以下のとおり変更した以外は、実施例2に準じて調製した各化粧水(pH6.7)について、40℃、1か月後の着色程度を340nmの透過率を指標に測定し、以下の基準により評価した。
【0029】
【表4】


[評価基準]
評価
透過率60%未満 ×
透過率60%以上70%未満 △
透過率70%以上 ○
以上の結果から明らかなように、エデト酸四ナトリウムによる優れた着色防止効果が確認された。
【0030】
(試験例2)
実施例2の化粧水に含まれるpH調整剤の配合比率を変えて、調製時pHを以下のように調整した各化粧水について、40℃、2か月後の着色・臭いの評価を5名の専門の評価者が評価した結果を以下に記載した。
【0031】
【表5】


以上の結果から明らかなように、エデト酸四ナトリウム配合組成物の調製時pHを6.5〜7.0に調製することによる優れた着色・着臭防止効果が確認された。
【0032】
(試験例3)
実施例1〜3の化粧水または乳液を各種容器(ガラス瓶、PE容器、等)に封入し、6ヶ月間の各種安定性試験(室温、40℃75%、蛍光灯下、等)を実施した。6ヵ月後のアスコルビン酸−2−グルコシドの定量値は97.9〜101.3%であり、着色・着臭は、認められないか、認められた場合にも、ごくわずかであった。
【0033】
(試験例4)
実施例2の化粧水について、健常女性ボランティアを対象に、使用感のアンケート調査を実施した。結果を以下に示す。
【表6】

以上の結果から、本発明の組成物が、優れた使用感を有するとともに、優れた着臭防止効果を有することが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスコルビン酸誘導体およびエデト酸四ナトリウムを配合し、pH6.5〜7.0に調整された医薬品、医薬部外品または化粧品用の組成物。
【請求項2】
アスコルビン酸誘導体がアスコルビン酸−2−グルコシドである、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
アスコルビン酸誘導体の配合量が0.1〜10wt%、エデト酸四ナトリウムの配合量が0.01〜0.5wt%である、請求項1または2項記載の組成物。
【請求項4】
組成物が化粧水、乳液またはエッセンスである、請求項1〜3のいずれか一項記載の組成物。
【請求項5】
アスコルビン酸誘導体を配合する組成物にエデト酸四ナトリウムを配合し、調製時のpHを6.5〜7.0に調整することを特徴とする、該組成物の安定化方法。

【公開番号】特開2007−99629(P2007−99629A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−288137(P2005−288137)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(000181147)持田製薬株式会社 (62)
【出願人】(592106155)ジェイオーコスメティックス株式会社 (6)
【Fターム(参考)】