説明

群検出装置、群検出プログラム、及び群検出方法

【課題】ユーザの集合によって形成されるユーザ群を速やかに検出することを可能とする群検出装置、群検出プログラム、及び群検出方法を提供する。
【解決手段】所定のエリアにおいてユーザの集合によって形成されるユーザ群を検出する群検出装置1であって、所定のエリアにおけるユーザの密度を取得する滞留人密度算出部103と、所定のエリアにおけるユーザのそれぞれの進行方向の直線の交点の総数を取得する交点数算出部107と、滞留人密度算出部103により取得された密度と交点数算出部107により取得された交点の総数とに基づいて、所定のエリアにおいてユーザ群が存在するか否かを判定する群検出部108と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定のエリアにおいてユーザの集合によって形成されるユーザ群を検出する群検出装置及び群検出プログラムと、当該群検出装置が行なう群検出方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人口分布情報を収集し、さらに統計的処理を施し、人口の集中状況を把握する手法が存在する。例えば、特許文献1には、人口分布を解析すべきターゲット地域に存在する携帯端末のそれぞれの位置情報を取得し、取得された位置情報に基づいて、ターゲット地域におけるユーザの人口分布を解析する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−30373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の装置では、ターゲット地域におけるユーザの人口分布を精度良く解析するためには、ターゲット地域に存在する携帯端末のそれぞれの位置情報の莫大なデータの処理を要する場合があり、その場合、処理に要する時間が長時間となってしまう。このため、ユーザの集合によって形成されるユーザ群の存在位置を速やかに検出してこのユーザ群の特徴を速やかに判別することは、困難になってしまう。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑み、ユーザの集合によって形成されるユーザ群を速やかに検出することを可能とする群検出装置、群検出プログラム、及び群検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る群検出装置は、所定のエリアにおいてユーザの集合によって形成されるユーザ群を検出する群検出装置であって、所定のエリアにおけるユーザの密度を取得する密度取得手段と、所定のエリアにおけるユーザのそれぞれの進行方向の直線の交点の総数を取得する交点数取得手段と、密度取得手段により取得された密度と交点数取得手段により取得された交点の総数とに基づいて、所定のエリアにおいてユーザ群が存在するか否かを判定する判定手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る群検出プログラムは、所定のエリアにおいてユーザの集合によって形成されるユーザ群を検出する群検出プログラムであって、コンピュータシステムを、所定のエリアにおけるユーザの密度を取得する密度取得手段と、所定のエリアにおけるユーザのそれぞれの進行方向の直線の交点の総数を取得する交点数取得手段と、密度取得手段により取得された密度と交点数取得手段により取得された交点の総数とに基づいて、所定のエリアにおいてユーザ群が存在するか否かを判定する判定手段と、として機能させる。
【0008】
また、本発明に係る所定のエリアにおいてユーザの集合によって形成されるユーザ群を検出する群検出装置が行なう群検出方法であって、所定のエリアにおけるユーザの密度を群検出装置が取得する密度取得ステップと、所定のエリアにおけるユーザのそれぞれの進行方向の直線の交点の総数を群検出装置が取得する交点数取得ステップと、密度取得ステップにより取得された密度と交点数取得ステップにより取得された交点の総数とに基づいて、所定のエリアにおいてユーザ群が存在するか否かを群検出装置が判定する判定ステップと、を有することを特徴とする。
【0009】
本発明に係る群検出装置、群検出プログラム、及び群検出方法によれば、まず、所定のエリアにおけるユーザの密度が取得され、所定のエリアにおけるユーザのそれぞれの進行方向の直線の交点の総数が取得される。そして、取得された密度と交点の総数とに基づいて、所定のエリアにおいてユーザ群が存在するか否かが判定される。ユーザの位置情報のみに基づくのではなく、上記のように、ユーザの密度と進行方向の直線の交点の総数とに基づいてユーザ群の存在が判定されることにより、ユーザ群の存在判定に必要な情報量を抑制することができ、ユーザ群を速やかに検出することが可能になる。
【0010】
また、交点数取得手段は、所定のエリアにおいて所定時間内に測位処理を行った携帯端末の移動方向をユーザの進行方向として取得し、当該ユーザのそれぞれの進行方向としての当該携帯端末のそれぞれの移動方向に基づいて交点の総数を取得するのも好ましい。
【0011】
これにより、所定のエリアにおいて測位処理を行った携帯端末の移動方向が、所定のエリアにおけるユーザの進行方向として取得されるため、所定のエリアにおけるユーザの進行方向を、より精度良く取得することができる。この結果、ユーザのそれぞれの進行方向に基づく交点の総数を、より精度良く取得することが可能になる。
【0012】
また、所定のエリアの大きさは可変であるのも好ましい。これにより、ユーザ群の検出を行なう対象となる所定のエリアの大きさを、所望の大きさ(例えば、10m四方のエリアや、1km四方のエリア等)に変化させることが可能になる。
【0013】
また、群検出装置は、判定手段により所定のエリアにおいてユーザ群が存在すると判定された場合に、当該ユーザ群が形成されるまでにユーザのそれぞれが移動するのに要した移動距離及び移動時間に基づいて、当該ユーザ群の特徴を決定する決定手段を更に備えるのも好ましい。
【0014】
これにより、所定のエリアにおいてユーザ群が存在すると判定された場合に、当該ユーザ群が形成されるまでにユーザのそれぞれが移動するのに要した移動距離及び移動時間に基づいて、当該ユーザ群の特徴を決定することが可能になる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ユーザの集合によって形成されるユーザ群を速やかに検出することを可能とする群検出装置、群検出プログラム、及び群検出方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】群検出装置の第一実施形態における機能構成を示す図である。
【図2】群検出装置の第一実施形態及び第二実施形態における物理構成を示す図である。
【図3】位置情報管理部による情報管理の様子の一例を示す図である。
【図4】位置対応付け部により表示される位置情報の一例を示す図である。
【図5】滞留人密度の算出処理の流れを示すシーケンス図である。
【図6】交点の総数の算出処理の流れを示すシーケンス図である。
【図7】群検出プログラムの第一実施形態の構成図である。
【図8】群検出装置の第二実施形態における機能構成を示す図である。
【図9】エリア群の形成に関わる端末ユーザの移動距離の総和の算出方法の一例を説明するための図である。
【図10】群特徴判別処理の流れを示すシーケンス図である。
【図11】群検出プログラムの第二実施形態の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0018】
(1)第一実施形態
(1−1)群検出装置の機能
まず、第一実施形態に係る群検出装置について、図1及び図2を用いて説明する。図1は、この群検出装置1の機能別モジュール構成の概略を示す機能構成図であり、図2は、この群検出装置1(及び後述する群検出装置2)の物理構成の概略を示す物理構成図である。群検出装置は、例えば、携帯端末による無線通信サービスを提供する通信事業会社に配備され、所定のエリアにおいて端末ユーザの集合によって形成されるユーザ群を検出するサーバ装置である。
【0019】
ここでは、携帯端末とは、歩行時に携帯しながら位置情報の計測、記録、(基地局や他端末といった)外部への送信が可能な端末を意味し、例えば、GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)機能や基地局から現在地情報を取得する機能を有する携帯電話端末が挙げられる。また、端末ユーザの集合は、所定のエリアにおけるイベント行事(いわゆる「いつもどおり」でない特別な事象)の発生によって検出されることが多い。
【0020】
このイベント行事の発生は、例えば、所定のエリアにおける現時点での現在人口の方が、同一エリアにおける通常時間帯での基準人口よりも多い場合に、検出される。イベント行事の一例として、ライブコンサートや集会や催し物や展覧会等が挙げられる。
【0021】
群検出装置1は、図2に示されるように、物理的な構成要素としてCPU11、RAM12、ROM13、通信モジュール14、及び補助記憶装置15等のハードウェアにより構成されている。これらの構成要素が動作することにより、以下に説明する各機能が発揮される。
【0022】
群検出装置1は、図1に示されるように、機能的な構成要素として、位置情報管理部101(端末管理手段)、位置対応付け部102(密度取得手段)、滞留人密度算出部103(密度取得手段)、進行方向ベクトル算出部104(交点数取得手段)、交点算出部105(交点数取得手段)、交点対応付け部106(交点数取得手段)、交点数算出部107(判定手段)、及び群検出部108(判定手段)を含んで構成される。
【0023】
位置情報管理部101は、後述する時刻情報と、位置情報と、位置情報の取得(即ち、測位処理)を行った携帯端末を有する端末ユーザに関連付けられたユーザIDと、を互いに関連付けて蓄積・管理する情報取得部分である。位置情報管理部101は、例えば基地局と通信することにより、これらの情報を取得して蓄積・管理する。図3に、位置情報管理部101による情報管理の様子の一例を示す。図3において、「ユーザID」は、位置情報の取得を行った携帯端末を有する端末ユーザを一意に識別するための識別情報である。「時刻情報」は、この位置情報の取得が行われた日時や時刻に関する情報である。
【0024】
また、「位置情報」は、この携帯端末による測位処理の結果得られた携帯端末の存在位置に関する情報である。この「位置情報」は、例えば、緯度及び経度(例えば、「X1,Y1」)を用いて表現されるものであってもよく、また、予め設定された基準点からの相対的な位置を用いて表現されるものであってもよい。
【0025】
位置対応付け部102は、図1に示されるように、位置情報管理部101によって管理されている情報を用いて、「位置情報」によって示される位置を、複数のエリア(単位エリア)によって構成されるマップにおいて対応付けて表示させる演算部分である。即ち、位置対応付け部102は、「位置情報」の表現形式を、上記のマップにおけるエリアのいずれに存在するか特定して対応付けることにより、「位置情報」の表現形式を所望の「エリア」の表現形式に変換する。このマップは、メッシュ状(即ち、網の目のように同一形状)のエリア単位から構成されるものとしてもよく、市町村といったような行政区画をエリア単位とするものとしてもよい。
【0026】
図4に、位置対応付け部102により表示される位置情報の一例を示す。図4において、それぞれが一定範囲の広がりを有する正方形のグリッド形状の九つのエリアによって、一つのマップが構成されている。各エリアを一意に識別するためのエリアIDが、各エリア内の左上に丸括弧内に表示されている。そして、図3において「ユーザID」が「123」で示されている端末ユーザの時刻10:30における位置情報が特定の一点(X1,Y1)として算出されると、この一点に対応する一つのエリア(エリアIDが「1」であるエリア)が特定され、この端末ユーザの位置が「ユーザID」とともに表示される。「ユーザID」が例えば「232」で示されているような、その他の端末ユーザについても、同様の処理が行われる。
【0027】
なお、位置対応付け部102は、所定のエリアの大きさを変更・調節することが可能(即ち、可変)である。これにより、ユーザ群の検出を行なう対象となる所定のエリアの大きさを、所望の大きさ(例えば、10m四方のエリアや、1km四方のエリア等)に変化させることが可能になる。
【0028】
滞留人密度算出部103は、図1に示されるように、位置対応付け部102によって特定された所定のエリアと、この所定のエリアにおける「ユーザID」の数とを用いて、各エリアにおけるユーザの密度(滞留人密度)を算出して取得する演算部分である。より詳しくは、滞留人密度算出部103は、まず、各エリアにおける端末ユーザの総数を算出し、この端末ユーザの総数を、対応するエリアの面積で除する演算を行なうことによって、滞留人密度を算出する。例えば、時刻11時において、エリアIDが「1」であるエリア内に存在する端末ユーザの数がUであって、このエリアの面積がSであるとすれば、このエリアの滞留人密度Dは、D=U/Sという計算式によって算出される。
【0029】
進行方向ベクトル算出部104は、位置情報管理部101によって管理されている情報を用いて、上記のマップにおける端末ユーザのそれぞれの進行方向及び進行速度をベクトルとして算出し、取得する情報取得部分である。進行方向ベクトル算出部104は、具体的には、ベクトル算出対象となる所望の測位処理実施時刻よりも一つ前の測位処理実施時刻の位置情報が示す位置を始点とし、ベクトル算出対象となる所望の測位処理実施時刻の位置情報が示す位置を終点とした進行方向のベクトルを算出する。
【0030】
なお、進行方向ベクトル算出部104は、上記のマップにおいて所定時間内に測位処理を行った携帯端末の移動方向を、端末ユーザの進行方向として取得してもよい。例えば、「ユーザID」が「123」である端末ユーザの時刻11時(測位処理実施時刻)における位置が「(X1,Y1)」(終点)であって、この測位処理実施時刻よりも一つ前の測位処理実施時刻の位置が「(X2,Y2)」(起点)であるとした場合、進行方向ベクトル算出部104は、「(X1−X2),(Y1−Y2)」の形式の進行方向のベクトルを算出する。
【0031】
交点算出部105は、進行方向ベクトル算出部104によって算出された情報を用いて、各携帯端末における起点からのベクトルの進行方向を延長した直線(進行直線)を算出し、携帯端末同士の進行直線の交点(算出交点)のそれぞれの位置を算出する演算部分である。
【0032】
交点対応付け部106は、位置対応付け部102と同様の対応付け方法により、交点算出部105によって算出された交点の位置を、複数のエリア(単位エリア)によって構成されるマップにおいて対応付けて表示させる演算部分である。即ち、交点対応付け部106は、交点の「位置情報」の表現形式を、上記のマップにおけるエリアのいずれに存在するか特定して対応付けることにより、交点の「位置情報」の表現形式を所望の「エリア」の表現形式に変換する。
【0033】
交点数算出部107は、交点算出部105及び交点対応付け部106によって算出された情報を用いて、各エリアにおける交点の数を集計し、各エリアにおける交点の総数を算出して取得する演算部分である。
【0034】
群検出部108は、滞留人密度算出部103によって算出された各エリアにおける滞留人密度と、交点数算出部107によって算出された各エリアにおける交点の総数と、滞留人密度及び交点の総数のそれぞれの閾値とを用いて、各エリアにおいてユーザ群が存在するか否かを判定する演算部分である。
【0035】
ここで、滞留人密度及び交点の総数のそれぞれの閾値は、ユーザ群の存在を判定するために予め規定された値であり、群検出部108に記憶されている。また、滞留人密度及び交点の総数のそれぞれの閾値は、所望の数値に設定可能であって、これにより、様々な要求に応じた大きさのユーザ群を検出することが可能になる。また、滞留人密度及び交点の総数のそれぞれの閾値は、単位エリア毎の値を設定してもよく、全ての単位エリアに共通の値を設定してもよい。
【0036】
例えば、エリアIDが「1」であるエリアの滞留人密度がD1であって、このエリアにおける交点の総数がC1であって、滞留人密度の閾値がDtであって、このエリアにおける交点の総数の閾値がCtであるとすれば、群検出部108は、「D1>Dt」且つ「C1>Ct」の関係の成立を検出した場合に、このエリアにユーザ群が形成されたと判定する。
【0037】
(1−2)群検出装置1によって実行される処理の流れ
引き続き、群検出装置1によって実行される群検出処理(群検出方法)の流れについて、図5及び図6を用いて説明する。図5は、滞留人密度の算出処理の流れを示すシーケンス図であり、図6は、交点の総数の算出処理の流れを示すシーケンス図である。
【0038】
まず、図5を用いて、滞留人密度の算出処理の流れについて説明する。最初に、位置対応付け部102が、所望の時刻t1における、各端末ユーザの携帯端末の位置情報を要求する位置情報要求信号を位置情報管理部101に送信し(ステップS101)、これに応じて、位置情報管理部101が、各ユーザの携帯端末の位置情報を位置対応付け部102に送信する(ステップS102)。所望の時刻t1(及び後述の時刻t2)は、例えば、群検出装置1の管理者が設定可能な時刻であってもよく、所定時間ごとに規定された時刻であってもよい。
【0039】
そして、位置対応付け部102が、位置情報管理部101から受信した各端末ユーザの携帯端末の位置情報を、各エリア単位へ各ユーザIDとともに対応付けて表現形式を変換する処理を行なう。(ステップS103)。次に、位置対応付け部102が、変換された各ユーザIDと各エリアに割り振られたエリアIDとの対応付け情報を、滞留人密度算出部103に送信する(ステップS104)。
【0040】
そして、滞留人密度算出部103が、位置対応付け部102から受信した、各ユーザIDとエリアIDとの対応付け情報を元に、各エリアにおける端末ユーザの数の集計を行う(ステップS105)。次に、滞留人密度算出部103が、集計された各エリアにおける端末ユーザの総数と、各エリアの面積とを用いて、滞留人密度を算出し(ステップS106、密度取得ステップ)、算出した各エリアにおける滞留人密度を群検出部108に送信する(ステップS107)。
【0041】
そして、後述する交点の総数の算出処理が行われると、群検出部108が、滞留人密度算出部103によって算出された各エリアにおける滞留人密度と、算出された各エリアにおける交点の総数と、滞留人密度及び交点の総数のそれぞれの閾値とを用いて、各エリアにおいてユーザ群が存在するか否かを判定する群検出処理を行なう(ステップS108)。
【0042】
引き続き、図6を用いて、各端末ユーザが有する携帯端末の進行方向の交点の総数の算出処理の流れについて説明する。最初に、進行方向ベクトル算出部104が、ベクトル算出対象となる所望の測位処理実施時刻t1における各端末ユーザの携帯端末の位置情報と、この時刻よりも一つ前の測位処理実施時刻t2における各端末ユーザの携帯端末の位置情報とを要求する位置情報要求信号を、位置情報管理部101に送信し(ステップS109)、これに応じて、位置情報管理部101が、所望の測位処理実施時刻t1及びt2のそれぞれにおける各端末ユーザの携帯端末の位置情報を進行方向ベクトル算出部104に送信する(ステップS110)。
【0043】
そして、進行方向ベクトル算出部104が、位置情報管理部101から受信した測位処理実施時刻t1及びt2のそれぞれにおける各端末ユーザの携帯端末の位置情報を元に、各端末ユーザの携帯端末の進行方向のベクトルを算出する(ステップS111)。次に、進行方向ベクトル算出部104が、算出した進行方向のベクトルと、位置情報管理部101から受信した測位処理実施時刻t1における各端末ユーザの携帯端末の位置情報とを、交点算出部105に送信する(ステップS112)。
【0044】
そして、交点算出部105が、進行方向ベクトル算出部104から受信した、各端末ユーザの携帯端末の進行方向のベクトルと、測位処理実施時刻t1における各端末ユーザの携帯端末の位置情報とに基づいて、各端末ユーザの携帯端末同士の進行直線の交点の位置座標を算出する(ステップS113)。次に、交点算出部105が、算出した交点の位置座標に関する情報を交点対応付け部106に送信する。(ステップS115)。
【0045】
そして、交点対応付け部106が、交点算出部105から受信した各交点の位置座標を、いずれのエリアに存在するか特定して対応付ける(ステップS115)。次に、交点対応付け部106が、各交点の位置座標と、対応するエリアのエリアIDとに関する情報を、交点数算出部107に送信する(ステップS116)。
【0046】
そして、交点数算出部107が、交点対応付け部106から受信した各交点の位置座標と、各交点に対応するエリアIDとに基づいて、各エリアにおける交点の数を集計し、交点の総数を算出する(ステップS117、交点数取得ステップ)。次に、交点数算出部107が、算出した各エリアにおける交点の総数を群検出部108に送信する(ステップS118)。
【0047】
そして、群検出部108が、図5及び図6に示されるように、滞留人密度算出部103から各エリアにおける滞留人密度を受信し、また、交点数算出部107から交点の総数を受信すると、滞留人密度及び交点の総数のそれぞれの閾値を用いて、各エリアにおいてユーザ群が存在するか否かを判定する群検出処理を行なう(ステップS108、判定ステップ)。
【0048】
(1−3)コンピュータシステムを群検出装置1として機能させるための群検出プログラム
引き続き、コンピュータシステムを上記の群検出装置1として機能させるための群検出プログラムPについて、図7に示す構成図を併せて用いながら説明する。図7は、群検出プログラムPの構成図である。
【0049】
群検出プログラムPは、図7に示されるように、処理を統括するメインモジュールP10と、位置情報管理モジュールP11と、位置対応付けモジュールP12と、滞留人密度算出モジュールP13と、進行方向ベクトル算出モジュールP14と、交点算出モジュールP15と、交点対応付けモジュールP16と、交点数算出モジュールP17と、群検出モジュールP18と、を備えて構成される。
【0050】
ここで、位置情報管理モジュールP11、位置対応付けモジュールP12、滞留人密度算出モジュールP13、進行方向ベクトル算出モジュールP14、交点算出モジュールP15、交点対応付けモジュールP16、交点数算出モジュールP17、及び群検出モジュールP18のそれぞれを動作させることによって実現する機能は、上述した群検出装置1の位置情報管理部101、位置対応付け部102、滞留人密度算出部103、進行方向ベクトル算出部104、交点算出部105、交点対応付け部106、交点数算出部107、及び群検出部108のそれぞれの機能と同様である。
【0051】
(1−4)本実施形態による作用及び効果
引き続き、本実施形態に係る群検出装置1による作用及び効果について説明する。本実施形態に係る群検出装置1によれば、まず、所定のエリアにおけるユーザの密度が取得され、所定のエリアにおけるユーザのそれぞれの進行方向の直線の交点の総数が取得される。そして、取得された密度と交点の総数とに基づいて、所定のエリアにおいてユーザ群が存在するか否かが判定される。ユーザの位置情報のみに基づくのではなく、上記のように、ユーザの密度と進行方向の直線の交点の総数とに基づいてユーザ群の存在が判定されることにより、ユーザ群の存在判定に必要な情報量を結果的に抑制することができ、ユーザ群を速やかに且つ容易に検出することが可能になる。
【0052】
また、所定のエリアにおいて測位処理を行った携帯端末の移動方向が、所定のエリアにおけるユーザの進行方向として取得されるため、所定のエリアにおけるユーザの進行方向を、より精度良く取得することができる。この結果、ユーザのそれぞれの進行方向に基づく交点の総数を、より精度良く取得することが可能になる。
【0053】
また、所定のエリアの大きさの変更が可能なため、ユーザ群の検出を行なう対象となる所定のエリアの大きさを、所望の大きさ(例えば、10m四方のエリアや、1km四方のエリア等)に変化させることが可能になる。
【0054】
(2)第二実施形態
(2−1)群検出装置の機能
引き続き、第二実施形態に係る群検出装置について、図8を用いて説明する。図8は、この群検出装置2の機能別モジュール構成の概略を示す機能構成図である。
【0055】
群検出装置2は、図2に示されるように、物理的な構成要素としてCPU11、RAM12、ROM13、通信モジュール14、及び補助記憶装置15等のハードウェアにより構成されている。これらの構成要素が動作することにより、以下に説明する各機能が発揮される。
【0056】
群検出装置2は、図8に示されるように、機能的な構成要素として、位置情報管理部101(端末管理手段)、位置対応付け部102(密度取得手段)、滞留人密度算出部103(密度取得手段)、進行方向ベクトル算出部104(交点数取得手段)、交点算出部105(交点数取得手段)、交点対応付け部106(交点数取得手段)、交点数算出部107(判定手段)、群検出部108(判定手段)、及び群特徴抽出部109(決定手段)を含んで構成される。即ち、群検出装置2は、群検出装置1の構成に更に群特徴抽出部109を含んで構成されている。群検出部108及び群特徴抽出部109以外の各機能についての説明は、割愛する。
【0057】
群検出部108は、上記の(1−1)で説明した処理機能に加え、所望の時刻において特定のエリアでユーザ群が形成されていると判定し、且つ、この時刻よりも一つ前の測位処理実施時刻においてはこの特定のエリアでユーザ群が形成されていなかったと判定した場合、この時刻から遡って、滞留人密度の増加が始まっている時刻(滞留人密度増加開始時刻)を算出する。更に、群検出部108は、算出した滞留人密度増加開始時刻に基づいて、ユーザ群の形成に要した時間(群形成時間)を算出する。
【0058】
群特徴抽出部109は、ユーザ群を形成している携帯端末の各端末ユーザがそのユーザ群を形成するまでに移動した移動距離の平均値(ユーザ群を形成する端末ユーザの移動距離の平均値)を算出し、算出した端末ユーザの移動距離平均値と、群検出部108によって算出された群形成時間とに基づいて、ユーザ群の種類等の特徴を判別して決定する演算部分である。例えば、端末ユーザの移動距離平均値が第一の所定値より長く、群形成時間が第二の所定値より短い場合には、端末ユーザが比較的短時間で比較的長距離を移動したことから、所定のエリアにおけるイベント行事の開催場所を目指して急いで移動する複数の端末ユーザによって形成されたユーザ群の種類であるとして判定される。
【0059】
ここで、「ユーザ群を形成する端末ユーザの移動距離」とは、ユーザ群を形成している携帯端末の各端末ユーザが、ユーザ群の形成完了時刻の地点から遡って、各測位処理実施時刻における進行方向と、形成されたユーザ群の位置への方向とがなすマップ上の角度が、90度以上になる地点の一つ前までの移動距離の総和のことである。即ち、90度以上になっている地点は、この移動距離の総和の算出において採用されない。
【0060】
図9に、移動距離の総和の算出方法の一例を示す。図9に示されるように、例えば、時刻11時において、エリアIDが「1」であるエリアでユーザ群が検出されたとする。この時刻を群形成時刻とした場合、まず、このユーザ群を形成する、ユーザIDが「111」である端末ユーザについて、群形成時刻から一つ前の測位処理実施時刻での位置P1における進行方向のベクトルA1と、この位置P1から群形成時刻における位置P0への方向(位置P1からの破線の方向)とがなすマップ上の角度が、ほぼゼロ度であることが算出される。
【0061】
この時点では、算出されたこのマップ上の角度が90度以上になっていないため(即ち、90度未満であるため)、更に一つ前の測位処理実施時刻に遡って、算出されたこのマップ上の角度が90度以上になるまでこの処理が繰り返される。即ち、更に一つ前の測位処理実施時刻での位置P2における進行方向のベクトルA2と、この位置P2から群形成時刻における位置P0への方向(位置P2からの破線の方向)とがなすマップ上の角度が90度未満であることが算出される。
【0062】
そして、更に一つ前の測位処理実施時刻での位置P3における進行方向のベクトルA3と、この位置P3から群形成時刻における位置P0への方向(位置P3からの破線の方向)とがなすマップ上の角度が90度未満であることが算出される。次に、更に一つ前の測位処理実施時刻での位置P4における進行方向のベクトルA4と、この位置P4から群形成時刻における位置P0への方向(位置P4からの破線の方向)とがなすマップ上の角度が90度以上であることが算出される。
【0063】
このとき、群特徴抽出部109は、位置P0から位置P3までの移動距離の総和を算出して出力する。即ち、上記のマップ上の角度が90度以上になっている位置P4は、この移動距離の総和の算出において採用されない。また、群特徴抽出部109は、エリアIDが「1」であるエリアを形成する他のユーザIDについても同様に、移動距離の総和を算出して出力する。そして、群特徴抽出部109は、全ユーザIDについての移動距離の総計を算出し、このエリアを形成する携帯端末の端末ユーザIDの総数で除する演算を行なうことによって、移動距離の平均値(ユーザ群を形成する端末ユーザの移動距離の平均値)を算出する。
【0064】
(2−2)群検出部108によって実行される処理の流れ
引き続き、群検出部108によって実行される群特徴判別処理の流れについて、図10を用いて説明する。図10は、群特徴判別処理の流れを示すシーケンス図である。なお、この群特徴判別処理は、上記の(1−2)で説明した滞留人密度の算出処理及び交点の総数の算出処理が行われた後に、実行される。
【0065】
最初に、群検出部108が、上記の群検出処理を行なった後(ステップS108)、検出されたユーザ群の群形成開始時刻を算出する処理を行ない(ステップS119)、更に、検出されたユーザ群の形成に要した時間(群形成時間)を算出する処理を行なう(ステップS120)。次に、群検出部108が、ユーザ群が検出されたエリアのエリアIDと、算出された群形成開始時刻及び群形成時間とを群特徴抽出部109に送信する(ステップS121)。
【0066】
そして、群特徴抽出部109は、上記のエリアID、群形成開始時刻、及び群形成時間に関する情報を受信すると、ユーザ群の形成に関わった各端末ユーザの移動距離の平均値を算出する処理を実行する(ステップS122)。ここで、群特徴抽出部109は、必要に応じて、移動距離平均算出処理に必要な、各端末ユーザの携帯端末の進行方向ベクトルに関する情報を取得するため、上記の時刻情報とユーザIDとを含む進行方向ベクトルに関する情報を要求する信号を進行方向ベクトル算出部104に送信する(ステップS123)。
【0067】
そして、進行方向ベクトル算出部104は、上記の進行方向ベクトル情報要求信号を受信すると、該当する端末ユーザの携帯端末の進行方向ベクトルを算出する(ステップS124)。そして、進行方向ベクトル算出部104は、上記の要求に対応する端末ユーザの携帯端末の進行方向ベクトルに関する情報を群特徴抽出部109に送信する(ステップS125)。
【0068】
そして、群特徴抽出部109は、移動距離平均算出処理の実行を完了すると、算出された移動距離の平均値と、群検出部108から受信した群形成時間とに基づいて、ユーザ群の種類等の特徴を判別して決定する(ステップS126、判定ステップ)。例えば、端末ユーザの移動距離平均値が第一の所定値より長く、群形成時間が第二の所定値より短い場合には、端末ユーザが比較的短時間で比較的長距離を移動したことから、所定のエリアにおけるイベント行事の開催場所まで急いで目指して移動する複数の端末ユーザによって形成されたユーザ群の種類であるとして判定される。
【0069】
(2−3)コンピュータシステムを群検出装置2として機能させるための群検出プログラム
引き続き、コンピュータシステムを上記の群検出装置2として機能させるための群検出プログラムQについて、図11に示す構成図を併せて用いながら説明する。図11は、群検出プログラムQの構成図である。
【0070】
群検出プログラムQは、図11に示されるように、処理を統括するメインモジュールQ10と、位置情報管理モジュールQ11と、位置対応付けモジュールQ12と、滞留人密度算出モジュールQ13と、進行方向ベクトル算出モジュールQ14と、交点算出モジュールQ15と、交点対応付けモジュールQ16と、交点数算出モジュールQ17と、群検出モジュールQ18と、群特徴抽出モジュールQ19と、を備えて構成される。
【0071】
ここで、位置情報管理モジュールQ11、位置対応付けモジュールQ12、滞留人密度算出モジュールQ13、進行方向ベクトル算出モジュールQ14、交点算出モジュールQ15、交点対応付けモジュールQ16、交点数算出モジュールQ17、群検出モジュールQ18、及び群特徴抽出モジュールQ19のそれぞれを動作させることによって実現する機能は、上述した群検出装置1の位置情報管理部101、位置対応付け部102、滞留人密度算出部103、進行方向ベクトル算出部104、交点算出部105、交点対応付け部106、交点数算出部107、群検出部108、及び群特徴抽出部109のそれぞれの機能と同様である。
【0072】
(2−4)本実施形態による作用及び効果
引き続き、本実施形態に係る群検出装置2による作用及び効果について、上記の(1−4)で述べた内容以外に関して説明する。本実施形態に係る群検出装置2によれば、所定のエリアにおいてユーザ群が存在すると判定された場合に、当該ユーザ群が形成されるまでにユーザのそれぞれが移動するのに要した移動距離及び移動時間に基づいて、当該ユーザ群の特徴を速やかに且つ容易に決定することが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明によれば、ユーザの集合によって形成されるユーザ群を速やかに検出することができる。
【符号の説明】
【0074】
1,2…群検出装置、11…CPU、12…RAM、13…ROM、14…通信モジュール、15…補助記憶装置、101…位置情報管理部、102…位置対応付け部、103…滞留人密度算出部、104…進行方向ベクトル算出部、105…交点算出部、106…交点対応付け部、107…交点数算出部、108…群検出部、109…群特徴抽出部、A1〜A4…ベクトル、P,Q…群検出プログラム、P0〜P4…位置、P10,Q10…メインモジュール、P11,Q11…位置情報管理モジュール、P12,Q12…位置対応付けモジュール、P13,Q13…滞留人密度算出モジュール、P14,Q14…進行方向ベクトル算出モジュール、P15,Q15…交点算出モジュール、P16,Q16…交点対応付けモジュール、P17,Q17…交点数算出モジュール、P18,Q18…群検出モジュール、Q19…群特徴抽出モジュール。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のエリアにおいてユーザの集合によって形成されるユーザ群を検出する群検出装置であって、
前記所定のエリアにおける前記ユーザの密度を取得する密度取得手段と、
前記所定のエリアにおける前記ユーザのそれぞれの進行方向の直線の交点の総数を取得する交点数取得手段と、
前記密度取得手段により取得された前記密度と前記交点数取得手段により取得された前記交点の総数とに基づいて、前記所定のエリアにおいて前記ユーザ群が存在するか否かを判定する判定手段と、
を備えることを特徴とする群検出装置。
【請求項2】
前記交点数取得手段は、前記所定のエリアにおいて所定時間内に測位処理を行った携帯端末の移動方向を前記ユーザの進行方向として取得し、当該ユーザのそれぞれの進行方向としての当該携帯端末のそれぞれの移動方向に基づいて前記交点の総数を取得する、ことを特徴とする請求項1に記載の群検出装置。
【請求項3】
前記所定のエリアの大きさは可変である、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の群検出装置。
【請求項4】
前記判定手段により前記所定のエリアにおいて前記ユーザ群が存在すると判定された場合に、当該ユーザ群が形成されるまでに前記ユーザのそれぞれが移動するのに要した移動距離及び移動時間に基づいて、当該ユーザ群の特徴を決定する決定手段を更に備える、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の群検出装置。
【請求項5】
所定のエリアにおいてユーザの集合によって形成されるユーザ群を検出する群検出プログラムであって、
コンピュータシステムを、
前記所定のエリアにおける前記ユーザの密度を取得する密度取得手段と、
前記所定のエリアにおける前記ユーザのそれぞれの進行方向の直線の交点の総数を取得する交点数取得手段と、
前記密度取得手段により取得された前記密度と前記交点数取得手段により取得された前記交点の総数とに基づいて、前記所定のエリアにおいて前記ユーザ群が存在するか否かを判定する判定手段と、
として機能させる群検出プログラム。
【請求項6】
所定のエリアにおいてユーザの集合によって形成されるユーザ群を検出する群検出装置が行なう群検出方法であって、
前記所定のエリアにおける前記ユーザの密度を前記群検出装置が取得する密度取得ステップと、
前記所定のエリアにおける前記ユーザのそれぞれの進行方向の直線の交点の総数を前記群検出装置が取得する交点数取得ステップと、
前記密度取得ステップにより取得された前記密度と前記交点数取得ステップにより取得された前記交点の総数とに基づいて、前記所定のエリアにおいて前記ユーザ群が存在するか否かを前記群検出装置が判定する判定ステップと、
を有することを特徴とする群検出方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−174182(P2012−174182A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−38335(P2011−38335)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【出願人】(899000079)学校法人慶應義塾 (742)