説明

義歯接着剤組成物及び方法

本発明は義歯接着組成物に関する。義歯接着組成物は、接着剤成分及び粘度指数向上剤を含む。本発明はまた、義歯接着組成物に関連する方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は義歯接着剤組成物、特に改良された義歯接着方法、並びに接着剤成分と粘土指数向上剤とを含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
通常の取り外し可能な義歯、義歯床、部分義歯等は、適切なプレート又は台座に取り付けられた歯を含む。義歯は、もともと個々のユーザーに合わせてあるが、時間とともに適合性が変化し、ずれ又は不快感をもたらすことがある。義歯の適合性の良し悪しについては、滑りやズレの特別な防止を好む使用者もいる。義歯接着剤は、口腔表面、特に口腔粘膜に義歯を一時的に接着するのに用いられ、着用者が好む特別な安心感を与える。義歯接着剤通常は、義歯を口腔内に取り付ける際、その日の初めに義歯、口腔表面、又はその両者に適用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
残念ながら義歯接着剤は、唾液作用、咀嚼、飲み物の摂取等により、一日の間に生体内腐食(bioerode)する傾向がある。この腐食は、接着性の損失、接着剤の口腔への浸出、ズレ等を引き起こす。よって、改良された義歯接着剤が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
一実施形態によると、本発明は、a)義歯接着剤成分と、b)ポリメタクリレート類、オレフィン共重合体、水素化スチレン−ジエン共重合体、スチレンポリエステル、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される粘度指数向上剤を含む義歯接着剤組成物に関する。
【0005】
本発明のこれら及び他の実施形態は、以下の詳細な説明を考慮すると、更に十分理解されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明の詳細な説明を以下に示す。
【0007】
用語の定義
本明細書で使用するとき、略称「cm」は、センチメートルを意味する。本明細書で使用するとき、略称「mm」は、ミリメートルを意味する。本明細書で使用するとき、略称「g」は、グラムを意味する。本明細書で使用するとき、略称「P」は「パスカル」を意味する。本明細書で使用するとき、略称「s」は「秒」を意味する。本明細書で使用するとき、略称「Ps」は「パスカル−秒」を意味する。本明細書で使用するとき、略称「oz」はオンス(1オンス=29.6mL)」を意味する。
【0008】
本明細書で使用するとき、「義歯」という用語は、上顎又は下顎義歯、部分上顎又は下顎義歯、又は部分及び総義歯の組み合わせを意味する。
【0009】
本明細書で使用するとき、「粘度指数向上剤」という用語は、温度が規定範囲を超えて上昇するにつれて、組み込んだ材料の粘度及び/又はレオロジーをより安定化させる非水溶性の材料を意味する。義歯接着剤製品の場合、上述の規定範囲は、約25℃〜約60℃の間である。
【0010】
本明細書で使用するとき、用語「チューブから分注/分注可能」という用語は、手による圧力下で小型の義歯接着剤チューブから分注可能な組成物を意味する。小型の義歯接着剤チューブは、箔積層品でできており、長さ約8.8cm(3.5インチ)、幅約1.21cm(0.48インチ)で、約7.3mL(0.25オンス)の製品が入る。この小型義歯接着剤チューブのノズルの内径は、約0.48cm(0.19インチ)であり、ノズル長さは約0.96cm(0.38インチ)である。小型義歯接着剤チューブの例は、7.3mL(0.25オンス)のサンプルサイズのチューブであり、在庫品番号2293でAlcan社から供給されている。
【0011】
本明細書で使用するとき、「予備成形された」という用語は、義歯に適合するように適切に成形されたシートに形成された義歯接着剤組成物を意味する。
【0012】
本明細書で使用するとき、「オレフィンポリマー」、「水素化スチレンージエンポリマー」、「スチレンポリエステル」、及び「ポリメタクリレート」という用語は、エラストマー及びゴム類を除外する。
【0013】
本明細書で使用するとき、「安全かつ有効な量」とは、健全な医学/歯学的判断の範囲内で、治療すべき状態を著しく(よい方向に)改変、又は求められる便益をよい方向に改変するのには十分多いが、重篤な副作用を(妥当な便益/危険比で)回避できるほど少ない、薬剤の量を意味する。薬剤の安全かつ有効な量は、治療される特別な症状、治療される患者の年齢及び身体状態、症状の重さ、治療期間、併用療法の性質、使用する物質の特定の形態、並びに作用剤を適用する特別な溶媒によって変化してもよい。
【0014】
本明細書で使用するとき、用語「AVE/MA」とは、アルキルビニルエーテル−マレイン酸又は無水マレイン酸共重合体のことを言う。本明細書で使用するとき、「混合塩類」という用語は、少なくとも2種類の異なるカチオン類が、同一のポリマー上で互いに混合されているか、又はその他の塩類と混合される、AVE/MA等のポリマーの塩類を意味する。
【0015】
本明細書で使用するとき、用語「毒物学的に許容可能」とは、毒性特性が、ヒト及び/又は動物に投与するために適している物質を記載するために使用される。
【0016】
本明細書で使用するとき、「非水性」という用語は、付加水が実質的にない組成物を意味する。「実質的にない」とは、自由水がその組成物には添加されていないが、組成物はその他の成分の一部として、5%以下の水を含んでいる可能があることを意味する。
【0017】
本明細書で使用するとき、「非水溶性」という用語は、水に晒されると溶解しないが、異なる度合いで分散する可能性のある物質を意味する。一般に、水に約10%未満が溶解する場合、物質は非水溶性である。
【0018】
本明細書で使用するとき、「生体内腐食性」という用語は、組成物が過剰な水又は唾液に晒された場合に、物理的作用及び/又は化学的作用によって経時的に腐食することを意味する。前記組成物は、完全に又はほぼ完全に腐食してよいが、最終的には前記組成物はその原形及び/又は完全性を喪失する。例えば、口腔内での少なくとも約24時間の適用及び使用後には、前記組成物は義歯又は口腔面からその原形で容易に分離又は剥離するだけの十分な製品の完全性を有さない。
【0019】
特に記載のない限り、「融点」という用語は、本明細書で使用するとき、物質がASTM D−127に列挙される所定の条件下で決定する際に用いる温度計からしたたるような十分な流体になる温度である、液滴融点(Drop Melting Point)を意味する。対象とする物質に対してASTM D−127が不適切な場合、ASTM D−3954を代わりに用いることができる。
【0020】
特に記載のない限り、「誘導体」という用語は、本明細書で使用するとき、ポリマー主鎖骨格が不変であるが、側基/鎖及び/又は末端基が変化している場合を意味する。
【0021】
本明細書で使用するとき、「シリコーン」という用語は、ケイ素についた様々な有機基を有する、ケイ素及び酸素原子が交互に存在する構造に基づくシロキサンポリマーを意味する。
【0022】
本明細書で使用するとき、「約」という用語は、プラス又はマイナス10%を意味する。
【0023】
本明細書で使用される他のすべての百分率は、他に指示がない限り組成物の重量による。
【0024】
本明細書で言及されるすべての測定は、特に明記されない限り25℃で行なわれる。
【0025】
義歯接着剤組成物及び方法
義歯接着剤組成物は、義歯着用時に、よりよい適合感及び/又はより安定なものを求める多くの人々が日々使用する製品となってきている。このことで、消費者の要望は、例えば長期持続性保持のような、改良された性質を有する製品に向けられた。本義歯接着剤組成物は、このような所望の性質について改良している。
【0026】
一般に、本発明の義歯接着剤組成物は、接着剤成分及び粘度指数向上剤を含む。歴史的には、粘度指数向上剤は、潤滑剤業界に関連の用語であった。潤滑剤の粘度は、摩擦を低減する能力に密接に関係している。最も望ましい潤滑剤は、摩擦を最小限にさせるため、2つの移動する表面を分離させたまま2表面を容易に移動させるものである。しかしながら、液体の粘度は、温度上昇とともに低下する傾向にあるので、比較的低温で機能する潤滑剤の多くは、比較高温では機能するには粘稠ではなく、比較的高温で十分粘稠なものは、比較的低温では粘稠すぎる傾向がある。
【0027】
例えば、自動車業界では、エンジンで見られるような、広範な条件にわたり機能できる潤滑剤が要求されている。自動車用潤滑剤は、運転中(最高200℃)はもとより、(エンジン稼動温度に比べて)低い温度から始動した場合にエンジン部品間の摩擦を低減させなければならない。最良のオイル(すなわち、潤滑剤)は、このような温度範囲では粘度があまり変化せず、したがってその範囲で十分に機能する。
【0028】
潤滑剤が機能する温度範囲をうまく予測するために、米国自動車技術会(SAE)が粘度指数を確立した。粘度指数は、潤滑剤の粘度が温度変化とともにどのように変化するかを強調している。粘度指数は、40℃(華氏100°)の任意の「低」温及び100℃(華氏210°)の任意の「高」温における物質の粘度を示す。
【0029】
設定温度範囲にわたる潤滑剤の特性を理解した後、ある種の潤滑剤がより広い温度範囲でその潤滑剤粘度をよりばらつきのないものとしていることが発見された。このため、比較的高温では潤滑剤粘度の低下が少ない。高温で高い粘度を有することで、潤滑剤は高温でよりよく機能することができる。高温での粘度を上昇させるのに添加する物質を粘度指数向上剤と定義した。
【0030】
驚くべきことに、この原理の応用は、義歯接着剤とも関連性があることが見出された。一般に、義歯接着剤組成物は、非水溶性成分(例えば、ペトロラタム)に分散させた義歯接着剤成分(例えば、AVE/MAの塩)を含む。使用中、唾液中の水分がその非水溶性成分に浸透し、義歯接着剤成分を水和する。このことにより、義歯接着剤成分は粘膜組織及び義歯表面に対して粘着性を帯びる。水和の量は、義歯接着剤成分の量、非水溶性ビヒクルの量、及び非水溶性ビヒクルの粘度に影響を受け、これら3つすべてが義歯接着剤組成物の全体的な粘度に寄与する。義歯接着剤組成物の粘度は、義歯接着剤成分の速度及び/又は水和量に寄与する。時間の経過とともに、過剰の唾液及び/又は液体による過剰の水和により、接着剤を失うことになり、これにより接着を弱めることになる。そのようなものとして、口内温度で高い粘度を有する義歯接着剤組成物は、少なくとも部分的に非水溶性ビヒクルにより、水和に対して、より耐性を有することになる。簡潔には、粘度指数向上剤によって付与される粘度の温度−抵抗は、過剰の水和に対する耐性をもたらし、ひいては経時的により多くの接着剤が保持され、義歯接着剤のより持続性のある改良機能につながる。
【0031】
したがって、粘度指数向上剤のみの使用又は非水溶性成分との併用は、義歯接着剤の水和特性を改良し、それにより改良された保持を提供することになる。義歯接着剤に最も関連のある温度範囲は、分注容器(例えば、チューブ又は包装容器)で義歯接着剤の粘度を扱う室温(25℃)から口内での義歯接着剤組成物の粘度を扱う40℃の範囲である。温かい飲み物を飲んでいるとき、口内の温度は60℃以上に達することもあり、40℃での組成物の挙動をみることは、60℃における増大した有益特性を有するかについてのよい予測判断材料にもなりやすい。したがって、義歯接着剤関連の粘度指数向上剤は、機能温度(すなわち、25℃〜60℃)の範囲にわたり、粘度をより安定なものにする。
【0032】
上記の点を考慮すると、一実施形態において、義歯接着剤組成物は、義歯接着剤成分と粘度指数向上剤の均一な混合物を含む。別の実施形態において、この義歯接着剤組成物は、粘度指数向上剤中に分散された接着剤成分の均一混合物を含む。
【0033】
義歯接着剤成分
本発明は、安全で効果的な量、通常組成物の約5重量%〜約99重量%の義歯接着剤成分を含む。別の実施形態においては、義歯接着剤成分は、約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%〜約50%、55%、60%、65%、70%、75%、又はこれらを各種組み合わせた範囲で存在する。別の実施形態においては、本発明の組成物は、組成物の少なくとも約20重量%又は少なくとも約30重量%の義歯接着剤成分を含む。ある具体的な実施形態においては、義歯接着剤成分は、約10.0%〜約60.0%の量で存在する。
【0034】
一般に、義歯接着剤成分は、水分で活性化すると粘稠になる親水性粒子又は親水性液体である。水分で活性化するものについては、水分は例えば、使用者の口腔内はもちろん、義歯接着剤組成物自身に存在していてもよい。様々な実施形態において、本発明の義歯接着剤成分は、粘膜付着性、親水性、水溶性であり、水分に暴露したときに膨潤する特性を持ち、水分と組み合わせた場合に、粘液性物体あるいはそれらの各種配合物を形成する。更なる実施形態においては、義歯接着剤成分は、グリセリン、ポリオキサマー、ソルビトール、ポリオックス、カルボマー、ポリアクリルアミド類、ポリペプチド類、天然ガム類、合成高分子系ガム類、AVE/MA、AVE/MA/IB、マレイン酸又はその無水物とエチレン、スチレン、及び/又はイソブチレンの共重合体、ポリアクリル酸及び/又はそのポリアクリレート、ポリイタコン酸、粘膜付着性ポリマー、水溶性親水コロイド、糖、セルロース、これらの誘導体、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。このような物質の例として、カラヤガム、グアーガム、ゼラチン、アルギン、アルギン酸ナトリウム、トラガント、キトサン、アクリルアミドポリマー、カルボキシポリメチレン、ポリビニルアルコール、ポリアミン、ポリ四級化合物、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン共重合体、カチオン性ポリアクリルアミドポリマー、AVE/MAの塩及び混合塩、AVE/MA/IBの塩及び混合塩、AVE/MA/スチレンの塩及び混合塩、AVE/MA/エチレンの塩及び混合塩、高分子酸類、高分子塩類、及びこれらの共重合体、ポリイタコン酸塩、ポリヒドロキシ化合物、これらの誘導体、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0035】
一実施形態において、前記義歯接着剤成分は、AVE/MAの塩類、AVE/MAの混合塩類、セルロース誘導体類(例えば、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、トウモロコシデンプン、及びこれらの組み合わせ)、ポリエチレングリコール、カラヤゴム、アルギン酸ナトリウム、キトサン、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される。更に別の実施形態において、接着剤成分は、AVE/MAの混合塩類、セルロース誘導体、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0036】
別の実施形態において、義歯接着剤成分は、セルロース、セルロース誘導体、デンプン、デンプン誘導体、糖、糖誘導体、ポリエチレンオキシド類、ポリエチレングリコール類、ポリビニルアルコール類、カラギーナン、アルギン酸塩、カラヤガム類、キサンタンガム類、グアーガム類、ゼラチン類、アルギン類、トラガント、キトサン、アクリルアミドポリマー類、カルボキシポリメチレン類、ポリアミン類、ポリ四級化合物類、ポリビニルピロリドン、アルキルビニルエーテル/無水マレイン酸ポリマー類、アルキルビニルエーテル/無水マレイン酸ポリマー類の塩、アルキルビニルエーテル/無水マレイン酸ポリマーの混合塩、高分子酸類、高分子塩類、ポリヒドロキシ化合物類、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0037】
一実施形態において、接着剤成分は、AVE/MAのポリマーの塩である。別の実施形態において、接着剤成分は、AVE/MAのポリマーの混合塩である。更なる実施形態において、前記AVE/MA共重合体は、周期表のIA族及び2A族のカチオン類、イットリウム、チタン、ジルコニウム、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、ニッケル、銅、亜鉛、ホウ素、アルミニウム、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるカチオンを含むカチオン塩官能を有する。別の実施形態において、接着剤成分は、ストロンチウム、亜鉛、鉄、ホウ素、アルミニウム、バナジウム、クロム、マンガン、ニッケル、銅、イットリウム、チタン、マグネシウム、カルシウム、ナトリウム、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるカチオンを含むカチオン性塩官能を有するAVE/MA共重合体の混合塩である。また別の実施形態において、このカチオンは、ストロンチウム、亜鉛、鉄、マグネシウム、カルシウム、ナトリウム、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。一実施形態において、接着剤成分は、AVE/MA共重合体のカルシウムと亜鉛の混合塩である。別の実施形態において、義歯接着剤成分は、AVE/MA、AVE/MAの塩、AVE/MAの混合塩、カルボキシメチルセルロースナトリウム、又はこれらの組み合わせを含む。一実施形態において、義歯接着剤成分は、AVE/MAの混合塩とカルボキシメチルセルロースの組み合わせを含む。
【0038】
更なる実施形態においては、この義歯接着剤組成物は、追加の接着剤成分を含む。一実施形態において、この追加の接着剤成分は、同濃度で存在し、接着剤成分として列挙されたものから選択される。一実施形態において、この追加のる接着剤成分は、セルロース誘導体を含む。更なる実施形態においては、このセルロース誘導体は、カルボキシメチルセルロースナトリウムを含む。複数の実施形態において、この追加の接着剤成分は、約5、10、15、20%〜約30、35、40、45、50、60%まで、又はこれらの組み合わせた範囲で存在する。
【0039】
非水溶性成分
いくつかの実施形態においては、本組成物は、安全でかつ効果的な量の非水溶性成分を含む。一実施形態において、この成分は、組成物の約1、2、5、10、20、25、30、35重量%〜約45、50、60、70、90重量%、又はこれらを組み合わせた範囲で存在する。更なる実施形態において、この非水溶性成分は、組成物の約20重量%〜約70重量%、約25重量%〜約60重量%、約35重量%〜約60重量%の量で存在する。また別の実施形態においては、この非水溶性成分は、水にほぼ非膨潤である。また別の実施形態においては、前記非水溶性構成成分は水にほぼ非膨潤性である。いくつかの実施形態においては、この非膨潤性で非水溶性の成分は、水中で約10%、5%、2%、又は1%未満膨潤する。
【0040】
一実施形態において、この非水溶性成分は、天然ワックス、合成ワックス、ペトロラタム、ポリ酢酸ビニル、天然油類、合成油類、脂肪類、シリコーン、シリコーン誘導体、ジメチコン、シリコーン樹脂、精油、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド類、ポリブテン、オレイン酸、ステアリン酸、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される。更なる実施形態においては、この非水溶性成分は、ペトロラタム、ポリ酢酸ビニル、天然油類、合成油類、脂肪類、シリコーン、シリコーン誘導体、ジメチコン、シリコーン樹脂、ポリブテン、オレイン酸、ステアリン酸、精油、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド類、微結晶ワックス、又はこれらの組み合わせを含む。更なる実施形態において、この非水溶性成分は、ペトロラタムを実質的に含まない。天然油類の例として、これらには限らないが、植物油類(例えば、コーン油)、大豆油、綿実油、パーム油、ヤシ油、鉱油、動物油(例えば、魚油)等が挙げられる。合成油の例として、シリコーン油等が挙げられるが、これらには限定されない。一実施形態において、非水溶性成分は天然油を含む。更なる実施形態においては、天然油は鉱油を含む。一実施形態において、鉱油は、組成物中に、約30%〜約50%存在し、別の実施形態では約35%〜約45%存在する。
【0041】
いくつかの実施形態においては、この非水溶性成分はワックスである。ワックス類は、一般に、炭化水素類(直鎖又は分岐アルカン類及びアルケン類)ケトン類、ジケトン類、一級及び二級アルコール、アルデヒド類、ステロールエステル類、アルカン酸、テルペン類、(スクアレン)及びモノエステル類(ワックスエステル類)等の多様な物質からできている。異なる種類のワックスとして、動物及び昆虫蝋類(蜜蝋、いぼた蝋、シェラック蝋、鯨蝋、ラノリン)、植物ワックス類(ヤマモモワックス、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、カスターワックス、エスパルトワックス、ジャパンワックス、ホホバオイル、オーリキュリーワックス、米ぬかワックス)、鉱蝋類(セレシンワックス類、モンタンワックス、オゾケライト、泥炭蝋類)、石油ワックス類(パラフィンワックス)、及び合成ワックス類(ポリエチレンワックス類、フィッシャートロプシュワックス類、科学変性ワックス類、置換アミドワックス類、重合α−オレフィン類)が挙げられる。
【0042】
一実施形態では、非水溶性成分は天然又は合成ワックスである。更なる実施形態においては、天然ワックスは、動物ワックス、植物ワックス、鉱蝋、微結晶性ワックス、及びこれらを組み合わせからなる群から選択される。別の実施形態において、動物ワックスとしては、蜜蝋、ラノリン、シェラック蝋、いぼた蝋、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。別の実施形態において、植物ワックスとして、カルナウバ、キャンデリラ、ヤマモモ、サトウキビ、並びにこれらの組み合わせが挙げられ、鉱蝋として、化石又は地蝋類(オゾケライト、セレシン、モンタン)、並びにパラフィン等の石油ワックス、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。一実施形態において、本明細書のワックス類は、蜜蝋、キャンデリラ、カンデラ、カルナウバ、パラフィン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される天然ワックス類である。様々な実施形態において、ワックスは、約1、2、5、8、10、15、20、40%〜約10、20、30、40、50、60、80%、又はこれらを組み合わせた範囲で存在する。
【0043】
別の実施形態において、天然ワックスは、パラフィンワックス、蜜蝋、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される。天然グレードと類似の性質を有する、合成グレードの蜜蝋、キャンデリラ、及びカルナウバワックス類もまた入手可能である。
【0044】
粘度指数向上剤
先述のように、粘度指数向上剤は、作用温度(すなわち、約25℃〜約60℃)の範囲にわたって義歯接着剤組成物の粘度を安定化する。更にまた、別の機構も粘度指数向上剤を含む義歯接着剤組成物の改良特性に寄与していると考えられている。理論に制限されるものではないが、接着剤成分の粒子の少なくともいくらかが粘度指数向上剤に少なくとも部分的に被覆又は包囲された場合に、少なくともいくつかの改良特性が生じると考えられている。実際、驚くべきことに、少なくともいくつかの本発明の実施形態において、粘度指数向上剤は、接着剤成分の粒子を少なくとも部分的に被覆することが見出されている。このことは特に、義歯接着剤組成物が、粘度指数向上剤の液化温度又はそれ以上の温度まで加熱し、その後室温まで冷却されることによって生成された場合に見られる。いくつかの実施形態において、この粘度指数向上剤は、接着剤成分の粒子の孔及び/又は間隙内で固体化又は結晶化することにより接着剤成分の粒子を被覆できる。
【0045】
いくつかの具体例においては、接着剤成分が粘度指数向上剤により被覆/包囲されることは、例えば不完全な水和による洗い流し、(唾液又は飲み物による)過剰な水和、口内温度の変化(例えば、コーヒー等の温かい飲み物の摂取による)、及び/又は咀嚼から、接着剤粒子を保護する物理的な防壁として機能する。このことは又は、機能をより優れたものとする、接着剤成分のよりよい使用と最適化にもなり得る。機能の向上は、先行品と同等もしくはそれ以上の保持性を得るために、少ない量の製品で済ませる性能につながり得る。
【0046】
粘度指数向上剤に関する一般的な原理の理解はさておき、物質が義歯接着剤組成物中で粘度指数向上剤として作用するかを決定する別の方法は、瞬間粘度比をみることである。この瞬間粘度比は、室温(25℃)と高温(40℃)で試作品サンプルの粘度比を測定するものである。本組成物は、粘度指数向上剤を含まない同組成物に比べ、高温において高い粘度を有する傾向がある。このことは、義歯接着剤組成物が一般に室温よりも高い使用者の口内で(義歯とともに)使用されるので、重要である。更にまた、使用者の口内温度は、温かい飲み物を摂取したときにも上昇する。高温で高い粘度を維持する能力は、使用中に義歯接着剤組成物をよりよく保持し損失を少なくするのに貢献する。
【0047】
瞬間粘度比は、以下に概説するようにして測定できる。一実施形態において、瞬間粘度比は、0.25を超える。別の実施形態において、瞬間粘度比は、約0.25〜約1.0である。更なる実施形態において、瞬間粘度比は、約0.25、0.3、0.4、0.6、0.7〜約0.3、0.4、0.5、0.8、1.0、あるいはこれらの組み合わせた範囲である。更なる実施形態において、瞬間粘度比は約0.3〜約0.8である。他の実施形態においては、瞬間粘度比は約0.3〜約0.6、又は約0.3〜約0.5である。
【0048】
粘度指数向上剤のいくつかの例として、ポリメタクリレート類、オレフィン共重合体、水素化スチレン−ジエン共重合体、スチレンポリエステル類、又はこれらの組み合わせが挙げられる。一実施形態において、粘度指数向上剤はポリ(n−ブチルビニルエーテル)、スチレン−無水マレイン酸共重合体、フマル酸アルキル−酢酸ビニル共重合体、アルキル化ポリスチレン、ポリ(t−ブチルスチレン)、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される。ポリメタクリレート類の例として、例えば、アクリレート−メタクリレート共重合体、メタクリレート−スチレン共重合体、又はこれらの組み合わせが挙げられる。粘度指数向上剤のその他の例は、ChapmanとHallによる「Chemistry and Technology of Lubricants(2nd Ed.1997)」に記載されている。一実施形態において、粘度指数向上剤は、オレフィン共重合体、水素化スチレン−ジエン共重合体、又はこれらの組み合わせを含む。上記の粘度指数向上剤はすべて、上述のような所望の粘度/レオロジー特性を与えると考えられている。
【0049】
いくつかの実施形態においては、粘度指数向上剤は、約0.001%〜約90.0%の量で使用される。様々な実施形態において、粘度指数向上剤は、約1、2、5、10、15、20、30、40%〜約10、15、20、30、40、50、60、70、80、又は90%、あるいはこれらを組み合わせた範囲で存在する。一実施形態において、口腔ケア組成物を予備成形する場合、粘度指数向上剤は約40%〜約60%存在する。一実施形態において、口腔ケア組成物がチューブから分注できる場合、粘度指数向上剤は約1.0%〜約15.0%存在する。
【0050】
各種の添加剤
可塑剤
本発明の組成物はまた所望により、1つ以上の安全且つ有効な量の毒物学的に許容可能な可塑剤類を含んでよい。様々な実施形態において、可塑剤の濃度は、組成物の約0.01重量%〜約40重量%、約1重量%〜約10重量%、又は約2重量%〜約5重量%である。別の実施形態では、可塑剤は非水溶性である。
【0051】
本発明の好適な可塑剤として、ポリオール類(ソルビトール等)、グリセリン、プロピレングリコール、アセチル化モノグリセリド、水素化デンプン加水分解物、コーンシロップ、キシリトール、脂肪酸のグリセロールモノエステル、トリアセチン、ジアセチン、モノアセチン、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジオクチル、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、燐酸トリクレシル、セバシン酸ジメチル、グリコール酸エチル、エチルフタリルエチルグリコレート、o−及びp−トルエンエチルスルホンアミド、フタル酸、グリセロールトリアセテート、クエン酸、リン酸、グリコール、脂肪酸のペンタエリスリトールエステル、ステアリン酸、グリセロールモノステアレート、ポリエチレングリコール、ブチルフタリルブチルグリコレート、フタル酸ジメチル、フタル酸ジブチル、トリアセチン、クエン酸鳥エチル、アセチルクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリブチル、リン酸トリフェニル、ジエチレングリコール、カプリル酸トリグリセリド、カプリン酸トリグリセリド、ジカプリル酸/カプリン酸プロピレングリコール、これらの誘導体、又はこれらの組み合わせが挙げられるが、これらには限定されない。
【0052】
ゲル化剤
本発明の組成物はまた所望により、1つ以上の安全且つ有効な量の毒物学的に許容可能なゲル化剤類を含んでよい。様々な実施形態において、ゲル化剤は、組成物の約0.01重量%〜約40重量%、約1重量%〜約10重量%、又は約2重量%〜約5重量%の範囲で含まれる。
【0053】
本発明の好適なゲル化剤として、ISP社から商品名Ganex(登録商標)V−220Fで販売されているポリビニルピロリドン/エイコセン共重合体、ISP社から商品名Ganex(登録商標)WP−660で販売されているトリコンタニルポリビニルピロリドン、並びにArizona Chemical社から市販されているSylvaclear(登録商標)、Sylvacote(登録商標)、Sylvagel(登録商標)、及びUniclear(登録商標)等のポリアミドゲル化剤、又はこれらを組みあせたものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0054】
治療活性物質
このような義歯接着剤組成物は、1種又はそれ以上の治療有効成分を含んでもよい。治療活性物質は、約1、5、10、15、20、25、30%から約3、5、10、20、30、50、70%、又はこれらを組み合わせた範囲で存在し得る。治療活性物質として、例えば、ヨウ素、トリクロサン、過酸化物、スルホンアミド類、ビスビグアニド類、又はフェノール系化合物等の抗菌剤、テトラサイクリン、ネオマイシン、カナマイシン、メトロニダゾール、塩化セチルピリジニウム、臭化ドミフェン、又はクリンダマイシン等の抗生物質、アスピリン、アセトアミノフェン、ナプロキセン及びその塩類、イブプロフェン、ケトロラク、フルルビプロフェン、インドメタシン、オイゲノール、又はヒドロコルチゾン等の抗炎症剤、硝酸カリウム、塩化ストロンチウム、又はフッ化ナトリウム等の歯科用脱感作剤、フッ化ナトリウム、フッ化第一スズ、MFP(モノフルオロリン酸塩)等のフッ化物、リドカイン又はベンゾカイン等の麻酔剤、過酸化物等の漂白剤、カンジダ・アルビカンスを治療用のものなどの抗カビ剤、インスリン、ステロイド類、ハーブ及びその他の植物由来の治療薬、並びに重曹が挙げられる。その他の好適な治療活性物質については、Physicians Desk Reference 62nd Ed.2008及びthe Physicians Desk Reference for non−presecription drugs,andherbs,29thEd.で述べられている。
【0055】
一実施形態によると、活性物質は、抗歯石剤、フッ化物イオン源、スズイオン源、漂白剤、抗菌剤、抗プラーク剤、防汚剤、付着防止剤、歯肉炎防止剤、歯石防止剤、歯周炎防止剤、知覚過敏防止剤、虫歯防止剤、抗炎症剤、栄養分、抗酸化剤、抗ウイルス剤、防カビ剤、鎮痛剤、麻酔剤、H−2拮抗薬、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0056】
風味、芳香、及び知覚活性物質
本発明の組成物は、風味、芳香、及び/又は知覚効果を提供する1つ以上の成分(例えば、暖気剤又は涼気剤)を含んでもよい。好適な成分として、例えば、メントール、冬緑油、ペパーミント油、スペアミント油、リーフアルコール、クローブ芽油、アネトール、サルチル酸メチル、ユーカリプトール、カッシア、1〜8メンチルアセテート、セージ、オイゲノール、パセリ油、オキサノン、α−イリソン、マジョラム、レモン、オレンジ、プロペニルグエトール、シナモン、バニリン、チモール、リナロール、シンナムアルデヒドグリセロールアセタール、それらの誘導体、及びこれらの組み合わせが挙げられる。一実施形態において、活性物質は、ショウノウ、ユーカリ油、及びベンズアルデヒド等のアルデヒド誘導体、又はこれらの組み合わせ等の香料である。
【0057】
これらの薬剤は、前記組成物の約0重量%〜約40重量%、別の実施形態では約0.05重量%〜約5重量%、及び別の実施形態では約0.1重量%〜約2重量%の濃度で存在してよい。
【0058】
その他の各種添加剤
その他の好適な含有成分として、着色料、保存料(例えば、メチル及びプロピルパラベン類)、及びレオロジー改質剤(例えば、シリコンジオキシド等)が挙げられる。レオロジー改質剤は、粘度、弾性、及び/又は降伏応力等のレオロジー特性を改質する。このような着色料、保存料、及びレオロジー改質剤は、組成物に対し、約0重量%〜約20重量%、別の実施形態では、約0.1重量%、0.2、1、2、5〜約1、5、10、20重量%、又はこれらを組みあせた範囲で存在する。
【0059】
更に、前記組成物は、1種類以上の溶媒を含んでもよい。これらの選択的な溶媒は、粘度指数向上剤、非水溶成分、又はこれら両者と混和し、かつ/あるいはその場で消散できる。一実施形態では、これらの溶媒は、蒸発、溶解、分散、バイオ吸収、又は任意の他の好適な手段によってその場で消失させてもよい。一実施形態において、溶媒として、シリコーン類、炭化水素類、イソドデカン、イソヘキサデカン、イソエイコサン、ポリイソブテン、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0060】
義歯接着剤組成物
義歯接着剤組成物は、液体から固体までの多くの異なる形態をとることができる。例えば、組成物は、乳濁液、分散液、スラリー、ゲル、クリーム、ペースト、予備成形物、及びこれらの組み合わせでもよい。一実施形態において、義歯接着剤組成物は、ゲル、クリーム、又はペーストの形態である。別の実施形態において、義歯接着剤組成物は、チューブ、注射器、及び/又はポンプ等の容器のノズルから、義歯表面又は口腔表面へ直接押し出すことができる。
【0061】
別の実施形態において、義歯接着剤組成物は予備成形されている。一実施形態において、この予備成形された組成物は歯茎と義歯の間の隙間に、実質的な変形なしに適合する。更なる実施形態において、予備成形された義歯接着剤組成物は、裏材層を含む。
【0062】
裏材層
義歯接着剤組成物は、単独のフィルムとして提供してもよいが、裏材層に塗装、被覆、あるいはその他の方法で適用してもよい。この裏材層は、単層、あるいは発泡体、メッシュ、及び/又はその他の好適な材料等の複数の層から形成される積層材として提供できる。この裏材層は、水浸透性、非水浸透性、部分的に水浸透性、水溶性、非水溶性、腐食性、又はこれらを組み合わせたものでもよい。更にまた、裏材層は、連続又は非連続(例えば、複数の別々のセグメントで形成)であってもよい。
【0063】
一実施形態において、裏材は、接着剤及び/又は活性物質を保護する防護壁としての機能を果たす。防護壁は、接着剤及び/又は活性物質が、例えば実質的に着用者の唇、舌、頬、並びに唾液によって浸出、かつ/あるいは腐食するのを防ぐ。これにより、義歯接着剤組成物は、より長期にわたって口腔表面及び/かつ義歯に接着できる。
【0064】
裏材は、ポリマー、天然及び合成織物、不織材、箔、紙、ゴム、及びこれらを組み合わせたものを含んでいてもよい。裏材は、材料の単層、あるいは一層以上からなる積層物であってもよい。好ましくは、材料は、屈曲剛直性を有し、義歯接着剤組成物に適合する、各種ポリマー又はポリマーの組み合わせである。好適なポリマーとして、ポリエチレン、エチルビニルアセテート、ポリエステル、エチルビニルアルコール、及びこれらの組み合わせが挙げられる。裏材は一般に、約1mmの厚さ、好ましくは約0.05mmの厚さ、より好ましくは約0.001〜約0.03mmの厚さである。ポリエチレン裏材は、好ましくは約0.1mm未満、より好ましくは約0.005〜約0.02mmの厚さである。
【0065】
裏材の形状は、所望の口腔表面を覆うならばどのような形状及び寸法でもよい。一実施形態において、裏材は、丸みを帯びた角を有する。丸みを帯びた角とは、鋭角又は尖端のないことで定義される。一実施例においては、裏材の長さは約2cm〜約12cmであり、好ましくは約4cm〜約9cmである。裏材の幅は、覆う口腔表面の面積に依存する。一実施例では、裏材の幅は、約0.5cm〜約4cm、好ましくは約1cm〜約2cmである。
【0066】
裏材は、浅いポケットを含んでいてもよい。義歯接着剤組成物を裏材で被覆する際、追加の義歯接着剤組成物が浅いポケットを満たし、追加的な口腔ケア物質の貯蔵部を提供する。更にまた、これらの浅いポケットは、送達系に質感を与えるのに役立つ。このフィルムは、好ましくはずらりと並んだ浅いポケットを有する。一般に、浅いポケットは、およそ0.4mm幅で0.1mmの深さである。これらの浅いポケットが裏材に備わっていて、義歯ケア用組成物が様々な厚さで適用されている場合、送達系の全体的な厚さは一般に約1mm未満である。好ましくは、全体的な幅は約0.5mm未満である。
【0067】
裏材は、義歯接着剤組成物により提供される接着的付着により、口腔及び/又は義歯表面の付着位置に保持される。義歯接着剤組成物の粘度及び一般的な粘着性により、裏材は口腔及び/又は義歯表面に、唇、歯、舌、及びその他の、話したり、飲み物を飲んだりする等の間に裏材を擦る口腔表面により生じる摩擦力からの実質的な滑りなく、接着剤で付着する。一実施形態において、口腔及び/又は義歯表面への接着は、着用者が指、指の爪を使ったり、綿ボール、綿棒、又はガーゼパッドで擦ることで、裏材を剥がすことで、着用者が簡単に裏剤を取り除ける程度に弱い。更にまた、一実施形態において、送達系は、器具、化学用材又は薬品、あるいは過剰の摩擦を適用することなく、表面から容易に取り除くことができる。化学溶剤として、アルコール等の口腔内での使用に知られている有機溶媒や、ゲル化剤の希釈に使用できる水のような安全な溶媒が挙げられる。
【0068】
剥離ライナー
これらの義歯接着剤組成物は、剥離ライナーを有していてもよい。この剥離ライナーは、義歯接着剤組成物がそれ自体と裏材に対して示す親和性に比べて低い親和性(親和性ゼロの場合も含む)を、義歯接着剤組成物に対して示す各種材料から形成できる。一実施形態において、剥離ライナーは、ポリエチレン、紙、ポリエステル、又はその他の材料を含み、その後非粘着性材料で被覆される。
【0069】
義歯接着剤組成物はまた、多くの特性も有する。一実施形態において、組成物は、生体分解性、非水性、又はこれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は腐食する。
【0070】
義歯接着剤組成物及びその成分は本明細書に開示している要素及び特性の任意の組み合わせを有してもよい。
【0071】
製造方法
義歯接着剤組成物は、いくつかの方法によって製造できる。製造法の一例として、a)粘度指数向上剤及び/又は非水溶性の成分を容器に加え、b)その粘度指数向上剤及び/又は非水溶性成分を少なくとも約55℃まで加熱及び混合し、c)義歯接着剤成分を加えて混合することが挙げられる。上記成分の添加順序は、粘度指数向上剤及び/又は非水溶性成分が実質的に液体の形態で存在する場合に、接着剤成分が組成物内に存在する限り、あまり重要ではないと考えられている。本方法の温度は、使用する粘度指数向上剤及び/又は非水溶性成分についての必要条件に基づいて、調整する必要がある。
【0072】
本明細書の予備成形した組成物は、当該技術分野における従来法により、例えば流延、被覆、カレンダー、及び押し出し等のフィルム製造業界において生成できる。一実施形態では、組成物の個々の成分を溶融し、次に均一な組み合わせが得られるまで、混合タンク内で混合する。その後、溶融混合物を許容可能な厚さで適切な基材上に流延してよい。かかる基材の例としては、Mylar、連続運転ステンレス鋼ベルト(必要であれば、最終的には乾燥器セクションに入る)、剥離紙などが挙げられる。続いて、組成物を冷却する。次に、必要に応じて、組成物を例えば送風乾燥器内で乾燥してもよい。乾燥用空気温度及び乾燥時間は、当該技術分野において認識されているように、利用される溶媒の性質に依存する。一般に、乾燥温度として、約25℃〜140℃、別の実施形態では約60°〜90℃の間の温度で、約20分〜約60分間、別の実施形態では約30〜約40分間の持続時間が挙げられる。次に組成物は、所望の寸法を備えた所望の形状に切断し、その後積み重ね、かつ/又は引き続いて包装してよい。
【0073】
当該技術分野において既知の別の公知のフィルム製造方法は、押出成形である。この方法は、フィルムの膜形成成分が各種の押し出し可能な物質を含む場合に可能である。押出成形プロセスの機械的な詳細、例えば、使用する特定の装置、押出成形力、オリフィス及び/又はダイの形状及び温度は、当該分野の技術の範囲内であるとみなし、本明細書に記載する組成物の物理的特性を達成するために既知の態様で変更できる。
【0074】
一実施形態では、本明細書の予備成形した組成物の厚さは一般に、約0.1mm〜約2.5mm、別の実施形態では、約0.4mm〜約1.5mmの厚さ、別の実施形態では、約0.5mm〜約1mmの厚さである。組成物は、使用者の望む緩衝作用の程度に応じて、より厚く又はより薄くてもよい。
【0075】
組成物の使用
本組成物は一般に、義歯及び/又は口腔に適用され、その後に義歯が口腔に固定される。一実施形態において、義歯は、義歯接着剤組成物の適用前に乾燥される。一実施形態において、組成物を義歯及び/又は口腔に粘着させるために、義歯及び/又は口腔に組成物を適用する前に、組成物及び/又は義歯を濡らす必要はない。組成物を義歯及び/又は口腔上の任意の適切な位置に適用してもよい。一実施形態において、義歯着用者は一般に、約1時間〜約3日間、別の実施形態では、約6時間〜約24時間、組成物を装着する。使用後、義歯を口腔から取り外し、すべての残留組成物を、例えば水及びブラシでやさしく擦ることで、義歯から清掃することができる。
【0076】
試験方法
参考用サンプル(RS)及び試作サンプル(PS)の調製手順
参考用サンプルは、標準としてみなされ、標準品の非水溶性成分を用いて生成されるものであるのに対し、試作サンプルは、評価する粘度指数向上剤を用いて生成される。
【0077】
材料
1.標準義歯接着剤成分及び(RS及びPSの両サンプル調製用)賦形剤粉末
i.Ca(47.5)/Zn(17.5)MVE/MA(メチルビニルエーテル/マレイン酸)混合部分塩(33%)
ii.カルボキシメチルセルロースナトリウム(20%)
iii.コロイド状二酸化ケイ素(1.14%)
2.水溶性成分(WIC)及び粘度指数向上剤
iv.標準WICを用いたRSのサンプルの調製
● 鉱油(Penreco社のDrakeol 35)(23.95%)+白色ワセリン(Penreco社の「Snow」)(21.91%)
又は
試作品の粘度指数向上剤及びWICを用いた、PSのサンプルの調製
● 鉱油(Penreco社のDrakeol 35)(40.812%)+試作品の粘度指数向上剤(5.048%)
【0078】
手順
参考サンプル及び試作サンプルを共に以下の手順により、調製する。
【0079】
ウォールスクレーパブレード(Haagen and Rinau社のUnimix)及び温水ジャケットを備えるミキサーを、ウォータバス及び真空ポンプに接続する。温水ジャケットのウォータバスを約95℃に設定する。WIC及び/又は粘度指数向上剤成分をミキサー容器に入れる。非水溶性成分及び/又は粘度指数向上剤が室温で液体でない場合、攪拌機にスイッチを入れる前にこれらを柔らかくさせておく。攪拌機を約60RPMに設定し、WIC及び/又は粘度指数向上剤成分を、温度が約95℃に達するまで混合する。「標準義歯接着剤成分及び賦形剤粉末」を、ベントを開放した状態で、漏斗を介してミキサーに加える。ベントを閉め、混合を止める。粉末の固まりを擦り落とす。約60RPMで混合を再開する。約81.27kPa(24インチHg)に真空引きし、そのバッチが約90℃に達するまで混合する。ウォータバス温度を約60℃まで下げ、バッチが約65℃になるまで真空下で混合し続ける。混合を止め、ポンプを停止し、ベントをゆっくり開き、真空解除し、蓋を開ける。容量約41.4mL(1.4oz)のホイルチューブ等の適切な容器にサンプルを満たす。約1週間かけて、サンプルを平衡化させる。評価の直前にチューブから絞り出し、最初の約2gを廃棄する。
【0080】
できる限り、RSとPSを同一の義歯接着剤成分及び賦形剤粉末を同濃度並びに同一製造手順で生成する。これは、義歯接着剤成分及びサンプル調製手順を含むあらゆる変数を同じに保つことにより、多様な粘度指数向上剤間の違いを試験するための標準マトリックスを提供するために行う。標準義歯接着剤成分により付与されるその他の特性の中でも、これらは、唾液と水分が義歯接着剤組成物を通して浸透する標準的な駆動力も提供する。
【0081】
上記に詳述される手順に対応していない(例えば、95℃を超える温度のみで軟化する場合)試作粘度指数向上剤又は粘度指数向上剤/非水溶性成分混合物の各種特性を対応させる必要がある場合、必要に応じて、加工温度プロファイルを変更できる。同様に、上述の標準義歯接着剤成分が適切ではない場合、単一の義歯接着剤成分のみ、Ca/Zn MVE/MA塩との組み合わせの代わりに、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウムを53%で使用できる。更にまた、上述の試験配合物が以下に述べるような瞬間粘度の試験には高粘度であるPSを与える場合、サンプルを鉱油等の追加的な非水溶性成分で希釈する必要があり得る。
【0082】
上記のプロセスは、約5%の濃度での粘度指数向上剤を評価する。5%での試作粘度指数向上剤の評価は、基準値の設定に役立つ、すなわち、5%濃度での粘度指数向上剤の特性を見つけることが、高濃度での粘度指数向上剤の特性の指標となると考えられている。そうは言っても、5%で評価し、その濃度で粘度指数向上剤特性を持たないとわかった試作粘度指数向上剤は、より高い濃度なら持つことがあり、確認のため高濃度で評価すべきである。
【0083】
上記のプロセスは、スケールアップして、粘度指数向上剤及び/又は義歯接着剤組成物の非水溶性成分に適切な温度における一般的な製造に利用することもできる。
【0084】
瞬間粘度比試験
瞬間粘度比は、以下の手順により測定及び計算できる。
【0085】
装置
● Ares歪み制御レオメータ
● 25mm永久平行板
【0086】
方法
1.25mm平行板をAresレオメータに載せる。
2.垂直力をゼロにする。
3.25℃(すなわち室温)でのギャップをゼロにする。
4.サンプルを、平行板を横切るような半円状の動きで、底板に適用する。2.177±0.005mmのギャップに達すると、過剰分を切り落とし、試料がギャップがないようにすべての端に均一に行き渡るように十分な試料があるべきである。
5.以下の手順により、ギャップを調整する。
● ギャップ設定アイコンをクリックする。コマンドギャップ位置を2.55mmに設定する。
● 許容最大力を100gに設定する。
● ギャップ設定をクリックする。
● プラスチックのカバースライドでサンプルを切り落とす。
● マンドギャップ位置を2.177mm、許容最大力=100gに設定する。
● ギャップ設定をクリックする。
● プラスチックのカバースライドでサンプルを切り落とす。
● コマンドギャップ位置を2.147mm、許容最大力=100gに設定する。
● ギャップ設定をクリックする。
● サンプルを切り落とさない。
● 最終的なギャップの読みは、2.147±0.005mmであるべきである。
● 温度を25℃に平衡させる。
● ギャップ及び軸力を各観察記録とともに試験ノートに記録する。
● 実験を開始する。
6.試験開始
● 方法は、以下の手順を行うステップレート(一過性)試験である。
i.1s(1s遅延)に対し、0/sのレートを適用する。
ii.5sに対し、5/sを適用する。
● 結果は粘度対時間の曲線で示される。
7.この曲線の粘度のピーク値(別名「瞬間粘度」)を記録する。
8.25℃でPSについてステップ1〜7を繰り返す−少なくとも3回
9.40℃でPSについてステップ1〜7を繰り返す−少なくとも3回
10.25℃でのPSの瞬間粘度の平均値、及び40℃での値を別個に計算する。
11.最後に以下を計算する。
● 「瞬間粘度比」=(40℃における組成物の平均瞬間粘度)/(25℃における組成物の平均瞬間粘度)
【0087】
以下の実施例は、本発明の範囲内にある実施形態を更に説明し、かつ、実証する。これら実施例は、説明の目的のためのみに提示するものであって、本発明を限定するものと解釈すべきではない。本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく、これらの多くの変更が可能である。
【実施例】
【0088】
次に挙げるのは、本発明の非限定的な実施形態例である。
【0089】
(実施例I)
【表1】

【0090】
(実施例I(続き))
【表2】

【0091】
上記の例は、既述の「参考サンプルの調製手順」を、手順に具体的に列挙されていないすべての非粉末状含有成分を添加し、非水溶成分/粘度指数向上剤及びすべての粉末状含有成分を義歯接着剤成分とともに添加して、生成している。
【0092】
「発明を実施するための形態」で引用したすべての文献は、関連部分において本明細書に参考として組み込まれるが、いずれの文献の引用も、それが本発明に関して先行技術であることを容認するものとして解釈されるべきではない。
【0093】
本発明の特定の実施形態について説明し記載したが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく他の様々な変更及び修正が可能であることが当業者には自明である。したがって、本発明の範囲内にあるそのようなすべての変更及び修正を、添付の特許請求の範囲で扱うものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)義歯接着剤成分と、
b)ポリメタクリレート類、オレフィン共重合体、水素化スチレン−ジエン共重合体、スチレンポリエステル類、ポリ(n−ブチルビニルエーテル)、スチレン−無水マレイン酸共重合体、フマル酸アルキル−酢酸ビニル共重合体、アルキル化ポリスチレン、ポリ(t−ブチルスチレン)、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される粘度指数向上剤と、
を含む、義歯接着剤組成物。
【請求項2】
前記粘度指数向上剤が、前記義歯接着剤組成物の約0.001重量%〜約90.0重量%の量で存在する、請求項1に記載の義歯接着剤組成物。
【請求項3】
前記義歯接着剤成分が、前記義歯接着剤組成物の約10.0重量%〜約99.0重量%の量で存在する、請求項2に記載の義歯接着剤組成物。
【請求項4】
前記義歯接着剤成分が、セルロース、セルロース誘導体、デンプン、デンプン誘導体、糖、糖誘導体、ポリエチレンオキシド類、ポリエチレングリコール類、ポリビニルアルコール、カラギーナン、アルギン酸塩類、カラヤゴム、キサンタンガム、グアーガム、ゼラチン、アルギン、トラガカント、キトサン、アクリルアミドポリマー類、カルボキシポリメチレン、ポリアミン類、ポリ四級化合物類、ポリビニルピロリドン、AVE/MA、AVE/MAの塩類、AVE/MAの混合塩類、高分子酸類、高分子塩類、ポリヒドロキシ化合物類、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項3に記載の義歯接着剤組成物。
【請求項5】
前記義歯接着剤成分が、AVE/MA、AVE/MAの塩、AVE/MAの混合塩、カルボキシメチルセルロースナトリウム、又はこれらの組み合わせを含む、請求項3に記載の義歯接着剤組成物。
【請求項6】
非水溶性成分を更に含む、請求項3に記載の義歯接着剤組成物。
【請求項7】
前記非水溶性成分が、ペトロラタム、ポリ酢酸ビニル、天然油類、合成油類、脂肪類、シリコーン、シリコーン誘導体、ジメチコン、シリコーン樹脂、炭化水素類、炭化水素類誘導体、精油、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド類、又はこれらの組み合わせを含む、請求項6に記載の義歯接着剤組成物。
【請求項8】
前記粘度指数向上剤が、ポリメタクリレートを含む、請求項1に記載の義歯接着剤組成物。
【請求項9】
前記ポリメタクリレートが、メタクリレート−アクリレート共重合体、メタクリレート−スチレン共重合体、又はこれらの組み合わせを含む、請求項8に記載の義歯接着剤組成物。
【請求項10】
前記組成物が、チューブから分注可能である、請求項6に記載の義歯接着剤組成物。
【請求項11】
前記粘度指数向上剤が、約1.0%〜約15.0%の量で存在する、請求項10に記載の義歯接着剤組成物。
【請求項12】
前記物品が予備成形されている、請求項3に記載の義歯接着剤組成物。
【請求項13】
前記粘度指数向上剤が、前記義歯接着組成物の約10重量%〜約60重量%の量で存在する、請求項12に記載の義歯接着剤組成物。
【請求項14】
裏材層を更に含む、請求項13に記載の義歯接着剤組成物。

【公表番号】特表2011−522052(P2011−522052A)
【公表日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−512571(P2011−512571)
【出願日】平成21年6月2日(2009.6.2)
【国際出願番号】PCT/US2009/045886
【国際公開番号】WO2009/149029
【国際公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】