説明

義歯洗浄剤

【課題】抗菌性金属イオンを担持させた無機物系担体からなる新規洗浄剤用殺菌剤および該洗浄剤用殺菌剤を含有する義歯洗浄剤を提供する。
【解決手段】銀イオンを担持させたハイドロキシアパタイトを0.05〜10重量%、ラウリル硫酸ナトリウムを1〜15重量%、過炭酸ナトリウムを15〜45重量%、漂白成分、例えばモノ過硫酸水素カリウムを5〜20重量%、クエン酸を10〜40重量%および炭酸水素ナトリウムを5〜25重量%含有する義歯洗浄剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄剤用殺菌剤および該殺菌剤を含有する義歯洗浄剤に関する。
【背景技術】
【0002】
洗浄剤に殺菌効果を付与して微生物の汚染を防止することは、生活環境を清潔に保つ上で非常に重要であり、洗浄剤用として使用される殺菌剤の必要性は極めて高い。現在、様々な洗浄剤にこのような殺菌剤が使用されている。
【0003】
殺菌剤一般に要求される条件としては、自然界の多種多様な微生物に対して広く効力を発揮すること、少量で有効であること、生体に対して無毒、無刺激で安全性が高いことなどがあげられる。洗浄剤用殺菌剤のように、殺菌剤を洗浄剤とともに使用する場合には、これらの条件のほかに、殺菌剤が洗浄剤の処方系で安定であり、pHや他の成分の影響によって殺菌効果の阻害を受けないこと、殺菌剤が洗浄剤の機能、色、芳香などを阻害しないことなどがさらに要求される。
【0004】
洗浄剤の1つである義歯洗浄剤には、他の洗浄剤と同様、殺菌剤が使用されているものが多い。洗浄作用だけでは口腔内の常在菌を義歯から完全に除去することは困難であり、通常、義歯洗浄剤に添加された殺菌剤によってこれらの常在菌を殺菌している。義歯使用者とっての大きな問題の1つは“特有の口臭”であるが、このような口臭は口腔内の常在菌の繁殖が原因となって発生する。また、口腔内の常在菌の1つであるカンジダ菌(Candida albicans)は、義歯性口内炎の原因にもなっている。したがって、口臭の防止および義歯性口内炎の予防という観点から、このように殺菌剤を義歯洗浄剤に用いる必要性は極めて高い。現在市販されている義歯洗浄剤に含まれている殺菌剤は過酸化物等の活性酸素発生物質または酵素などであり、これら単独でまたは2種以上の併用によって義歯の洗浄が行われている。
【0005】
義歯洗浄剤に従来から使用されている上記の殺菌剤よりもさらに短時間で優れた殺菌効果を有する殺菌剤も検討されているが、いまだ実用に至っていない。その主たる理由は、洗浄剤の他の成分との相互作用によって、殺菌剤の殺菌効果が阻害されるという問題を生じることにある。例えば、口内洗浄剤や義歯洗浄剤の洗浄成分として好適な、広く使用されているラウリル硫酸ナトリウムを洗浄成分として用いた場合、塩化セチルピリジニウム、塩化デカリウムなどの陽イオン性殺菌剤を用いると、両者が反応して白色の不溶性物質を生じ、殺菌効果の阻害が起こる。また、ラウリル硫酸ナトリウムを洗浄成分として用い、サリチル酸ナトリウム、サリチル酸フェニル等を殺菌成分として用いた場合、殺菌効果の阻害は起こらないが、義歯を洗浄した場合には清涼感がなく、逆に口中に不快感を残す。
【0006】
非イオン性界面活性剤(例えばアミゾールMDE、アミゾールLME、エマルゲン950およびエマルゲンPP−290等)を洗浄成分として用い、これと反応しない塩化セチルピリジニウムを殺菌剤として用いると、ラウリル硫酸ナトリウムほど優れた洗浄効果および発泡力が得られず、洗浄剤としての目的が充分に達成できない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、洗浄剤中の他の成分による殺菌効果の阻害を受けることなく、洗浄剤に従来使用されていた殺菌剤よりもさらに短時間で優れた殺菌効果をもたらす洗浄剤用殺菌剤、および該殺菌剤を含有する義歯洗浄剤を提供することを目的とする。また本発明は、優れた洗浄作用および発泡作用を有するラウリル硫酸ナトリウムを含有する洗浄剤に対して、その作用を妨げない洗浄剤用殺菌剤を提供することを目的とする。さらに本発明は、ラウリル硫酸ナトリウムの洗浄作用および発泡作用を維持し、優れた殺菌作用を併せ持ち、快適に使用可能な義歯洗浄剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を行った結果、抗菌性金属イオンを担持させた無機物系担体(以下、本発明の殺菌剤ということがある)が、洗浄剤用殺菌剤として極めて優れていることを見出した。すなわち、本発明の殺菌剤は殺菌効果に優れており、しかも洗浄剤中の他の成分によって殺菌効果が阻害されないため短時間で優れた殺菌効果をもつ。
【0009】
すなわち、本発明は、抗菌性金属イオンを担持させた無機物系担体からなる洗浄剤用殺菌剤を提供するものである。さらに、本発明は、抗菌性金属イオンを担持させた無機物系担体を含有している義歯洗浄剤を提供するものである。
【0010】
抗菌性金属イオンを担持させた無機物系担体は、合成樹脂、ゴム材料、塗料、合成繊維や紙などの素材に配合され、これまで、これら素材自体の抗菌性の向上を目的として使用されてきた。このような抗菌性素材は、家電製品、家庭用品、事務用品、建材、包装材料、医療関連用品などあらゆる分野で現在使用されている。しかしながら、抗菌性金属イオンを担持させた無機物系担体が洗浄剤の殺菌性向上にも有効であり、洗浄する対象物に対して殺菌効果を及ぼすことは、本発明者らによってはじめて発見されたものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】各種殺菌剤のカンジダ菌に対する殺菌効果を示すグラフである。
【図2】各種殺菌剤の肺炎連鎖球菌に対する殺菌効果を示すグラフである。
【図3】各種殺菌剤の黄色ブドウ球菌に対する殺菌効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の第1の態様は、抗菌性金属イオンを担持させた無機物系担体からなる洗浄剤用殺菌剤である。
【0013】
本発明の洗浄剤用殺菌剤は、いずれの洗浄剤にも使用することができるが、本発明が意図する好適な洗浄剤は義歯洗浄剤である。
【0014】
抗菌性金属イオンを担持させた無機物系担体に使用される抗菌性金属イオンとしては、銀、銅および亜鉛イオンがあげられる。好ましい抗菌性金属イオンは銀イオンである。本発明の抗菌性金属イオンを担持させた無機物系担体に使用される無機物系担体には、例えばカルシウムのリン酸塩、ケイ酸塩および炭酸塩、リン酸アルミニウム、リン酸ジルコニウム、ゼオライト、シリカゲルなどが含まれる。好ましくは、本発明の無機物系担体はカルシウムのリン酸塩、リン酸アルミニウム、リン酸ジルコニウムまたはゼオライトである。より好ましくは、本発明の無機物系担体は、ハイドロキシアパタイト、リン酸カルシウムまたはリン酸水素カルシウムである。さらに好ましくは、本発明の無機物系担体はハイドロキシアパタイトまたはリン酸三カルシウムである。最も好ましくは、本発明の無機物系担体はハイドロキシアパタイトである。
【0015】
抗菌性金属イオンを担持させた無機物系担体は、刊行物に記載されている方法にしたがって製造することができる。例えば、無機物系担体がカルシウムのリン酸塩、ケイ酸塩または炭酸塩である場合は、本質的に、本明細書の一部を構成する特開平3−218765号に記載の方法にしたがって製造することができる。すなわち、微粉化した無機物系担体に抗菌性金属の金属塩を吸着保持させ、該無機物系担体が加熱収縮を起こす温度でこれを焼成して金属が無機物系担体から水中に脱着することがないよう加工する。
【0016】
無機物系担体が、リン酸三カルシウムである場合は、本明細書の一部を構成する特開平9−84870号に記載の方法にしたがって製造することができる。すなわち、リン酸三カルシウムに抗菌性金属イオンを吸着またはイオン交換により担持させるか、または抗菌性金属塩の存在下、アンモニアアルカリ性で塩化カルシウム等の可溶性カルシウム塩水溶液とリン酸水素二ナトリウムまたはリン酸水素アンモニウムとからリン酸三カルシウムを生成させることにより製造することができる。
【0017】
しかしながら、抗菌性金属イオンを担持させた無機物系担体は、様々な形態のものが商業的に入手可能である。商業的に入手可能な抗菌性金属イオンを担持させた無機物系担体としては、例えば、シルバーエースA−903K(商品名:太平化学産業:リン酸カルシウム)、ノバロンAGZ330(商品名:東亜合成社製:リン酸ジルコニウム)、ラサップAN−600SA(商品名:ラサ工業社製:リン酸アルミニウム)、アパサイダーAK(商品名:サンギ社製:ハイドロキシアパタイト)、ゼオミックAW10D(商品名:シナネン社製:ゼオライト)、アメニトップVerIII(商品名:松下電器産業社製:オスルファイト錯塩・シリカゲル)などがある。
【0018】
本発明の最も好ましい抗菌性金属イオンを担持させた無機物系担体は、アパサイダーである。アパサイダーは、銀イオンを担持させたハイドロキシアパタイトであり、仕様、粒径等の異なる各種グレードのものが市販されている(アパサイダーAW:汎用グレード、焼成品;アパサイダーA25:特殊グレード、焼成品;アパサイダーNB:特殊グレード、未焼成品;アパサイダーAK:微粒子グレード、焼成品)。本発明の洗浄剤用殺菌剤として最も好適であるのは、アパサイダーAK(商品名:サンギ社製:微粒子グレード、焼成品、平均粒径0.3μm)として市販されているものである。
【0019】
本発明の第2の態様は、本発明の洗浄剤用殺菌剤を含有する義歯洗浄剤である。本発明の義歯洗浄剤に含まれる本発明洗浄剤用殺菌剤の量は、義歯洗浄剤の0.05〜10重量%であり、好ましくは0.1〜3重量%である。この範囲よりも少なければ殺菌効果が低くなり目的が十分に達成されない。また、この範囲よりも多ければ、製剤化して錠剤とした場合に硬度が低くなり、製剤時にキャッピングが起こりやすくなる、商品流通時に錠剤が摩損する、または亀裂が入る等の問題が起こり、好適に用いることができない。
【0020】
本発明の義歯洗浄剤は、発泡錠剤、発泡顆粒、発泡粉体、液体、歯磨ペーストなど様々な剤型に製剤化することができる。好ましい剤型は発泡錠剤である。
【0021】
本発明の義歯洗浄剤には、本発明の洗浄剤用殺菌剤のほかに、洗浄成分、漂白成分、発泡成分、活性酸素発生物質などを配合することができる。本発明の義歯洗浄剤に含まれる成分に関して使用される「コート」なる語は、共存する他の成分との相互作用を避けるために、その成分が適当な被覆剤で被覆されていることを意味する。例えば、「コート過炭酸ナトリウム」および「コートクエン酸」なる語はそれぞれ、適当な被覆剤で被覆された過炭酸ナトリウムおよびクエン酸をいう。被覆法は通常用いられるものであればいずれの方法でもよい。例えば噴霧造粒や転動造粒等により、造粒と同時に被覆してもよく、造粒後にパンコーティング、流動コーティングまたはドライコーティング等の方法を用いて被覆してもよい。洗浄成分としては、硫酸アルキル塩であるラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、セチル硫酸ナトリウム、またはラウロイルサルコシンナトリウム、ジ2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、ラウリル燐酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩等が含まれる。とりわけ、タバコのヤニ等の洗浄作用に優れ、発泡による視覚的、心理的な洗浄効果が得られ、便用後に不快感を生じないラウリル硫酸ナトリウムが好ましい。本発明の洗浄剤用殺菌剤はラウリル硫酸ナトリウムと反応しないため、塩化セチルピリジニウムとラウリル硫酸ナトリウムのように相互作用による殺菌効果の低下は生じない。本発明の洗浄剤用殺菌剤およびラウリル硫酸ナトリウムの組み合わせは、殺菌成分および洗浄成分各々の優れた殺菌作用、洗浄作用、発泡力が充分に発揮される点で非常に好ましい。洗浄成分の配合量は、普通1〜30重量%、好ましくは1〜20重量%である。ラウリル硫酸ナトリウムを使用する場合、1〜15重量%、好ましくは3〜10重量%が望ましい。
【0022】
漂白成分としては、過ホウ酸ナトリウム、過炭酸ナトリウムのような過酸化物と、ペルオキシ硫酸ナトリウムやモノ過硫酸水素カリウム、例えばオキソン(商品名:デュポン社製)などを組み合わせて活性酸素発生物質として使用するか、次亜塩素酸ナトリウム、ジクロルイソシアヌル酸ナトリウム、トリクロルイソシアヌル酸ナトリウム等の塩素系殺菌剤、過炭酸ナトリウム、オキソンを使用する。場合により、漂白成分を被覆剤で被覆(コート)してもよい。好ましい被覆剤は、芳香族炭化水素スルホン酸、アルキル芳香族ヒドロキシ炭化水素の酸化エチレン附加物硫酸エステル、脂肪酸族高級アルコール硫酸エステルおよび脂肪酸族高級アルコール酸化エチレン附加物硫酸エステルの、マグネシウム塩、アルカリ金属塩またはカルシウム塩と、ケイ酸アルカリ塩、炭酸塩、重炭酸塩または硫黄塩との混合物である。好ましい漂白成分はコート過炭酸ナトリウムとオキソンの組み合わせである。コート過炭酸ナトリウムの被覆剤としては、芳香族炭化水素スルホン酸のアルカリ金属塩とケイ酸アルカリ塩の混合物が特に好ましい。漂白成分の配合量は、20〜70重量%、好ましくは30〜60重量%である。コート過炭酸ナトリウムとオキソンを組み合わせて使用する場合、配合量はそれぞれ、前者が15〜45重量%、好ましくは25〜40重量%、後者が5〜20重量%、好ましくは5〜15重量%が望ましい。
【0023】
発泡成分としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウムなどの炭酸塩または重炭酸塩と、クエン酸、コハク酸、スルファミン酸等の有機酸または無機酸とを組み合わせて使用する。場合により、酸を被覆剤で被覆(コート)してもよい。好ましい被覆剤は、アセチルセルロース、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、可溶性デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、小麦デンプン、食用多糖類(例えば白糖、乳糖等)である。好ましい発泡成分はコートクエン酸と炭酸水素ナトリウムの組み合わせである。コートクエン酸の被覆剤としては、食用多糖類が特に好ましい。発泡成分の配合量は、炭酸塩または重炭酸塩が5〜30重量%、有機酸または無機酸が5〜45重量%である。好ましくは、炭酸塩または重炭酸塩が8〜25重量%、有機酸または無機酸が10〜40重量%である。コートクエン酸と炭酸水素ナトリウムを使用する場合、配合量はそれぞれ、前者が10〜40重量%、好ましくは15〜35重量%、後者が5〜25重量%、好ましくは8〜20重量%が特に望ましい。
【0024】
本発明の義歯洗浄剤には、上記の成分のほかに、例えば、二酸化ケイ素、合成ケイ酸アルミニウム、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ステアリン酸カルシウム、硬化ヒマシ油または水酸化マグネシウムなどの滑沢剤を0.1〜3重量%、好ましくは0.3〜2重量%含ませることができる。好ましくは、合成ケイ酸アルミニウムを0.1〜3重量%、さらに好ましくは0.3〜1.5重量%添加する。
【0025】
さらに本発明の義歯洗浄剤には亜硫酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム、塩化マグネシウム、クエン酸カルシウム、酸化マグネシウム、チオ硫酸ナトリウムなどの安定化剤を0.5〜15重量%、好ましくは1〜10重量%含ませることができる。好ましくは、酸化マグネシウムを1〜5重量%、さらに好ましくは1.5〜3重量%添加する。
【0026】
さらに、必要に応じて、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビット、グリセリン、モノステアリン酸グリセリン、ポリソルベート80、流動パラフィンなどの保湿剤、例えば硬化ヒマシ油、植物油、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ショ糖脂肪酸エステルなどの可溶化剤、例えばサッカリンナトリウム、メントール、ペパーミントオイル、スペアミントオイル、ハーブミントオイルなどの香料、および着色料等を加えることができる。好ましくは、本発明の義歯洗浄剤に、保湿剤としてポリエチレングリコールを3〜20重量%、好ましくは5〜15重量%、可溶化剤として硬化ヒマシ油を0.5〜3重量%、好ましくは0.8〜2.0重量%、香料としてペパーミントオイルを0.5〜3重量%、好ましくは0.5〜1.5重量%、着色料として食用色素を0.01〜0.05重量%、好ましくは0.01〜0.03重量%加える。
【0027】
以下に試験例および実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明し、且つ本発明の効果を明らかにする。
【0028】
実施例1:本発明洗浄剤用殺菌剤の殺菌力評価試験
本発明の洗浄剤用殺菌剤として使用し得る、表1に示した銀イオン担持の各種無機物系担体(市販品)を用いて殺菌効果を調べた。
【表1】

試験菌:
a)Candida albicans A(カンジダ菌)
b)Streptcoccus pneumoiae ATCC 49619(肺炎連鎖球菌)
c)Staphylococcus aureus IFO 3060(黄色ブドウ球菌)
試験法:
殺菌剤の入った水溶液(0.01w/v%)100mL中に1mLの菌液(10 CFU/mL)を加え、常温にて、スターラーで撹拌(200rpm)することによりインキュベーションした。各経過時間後の溶液内菌数を希釈平板法(繊維抗菌力測定法)により測定した。
結果:
経過時間に対する菌数の変化を第1図(カンジダ菌)、第2図(肺炎連鎖球菌)および第3図(黄色ブドウ球菌)に示す。さらに、殺菌剤の効力の定義として使用されるD値(菌数が1/10になる時間(分))を以下の式を用いて計算し、表2に示した。
D=1/k

k:死滅速度恒数=1/t log100/Nt
t:処理時間(分)
0:初発菌数
t:t分後の生存菌数
【表2】

カンジダ菌と黄色ブドウ球菌の両方に対しては、ゼオミック(ゼオライト)、ラサップ(リン酸アルミニウム)およびアパサイダー(ハイドロキシアパタイト)の殺菌効果が優れている。シルバーエース(リン酸カルシウム)は、黄色ブドウ球菌に対しては優れた殺菌作用を示した。肺炎連鎖球菌に対しては、いずれの殺菌剤も非常に優れた殺菌効果を示した。
【0029】
実施例2:製剤例
殺菌剤としてアパサイダーAKを0.50重量%含有する義歯洗浄製剤を、以下の成分を用いて製造する。
【表3】

上記成分を混合し、圧縮して錠剤を形成する。
【0030】
実施例3:義歯洗浄剤の殺菌力評価試験
実施例2で製造した本発明義歯洗浄剤、並びに他社製義歯洗浄剤A、BおよびCの各3gを水200mLにそれぞれ溶解し(1.5%水溶液)、殺菌力を評価した。
検体:
(1)本発明義歯洗浄剤(実施例2で製造)
(2)他社製義歯洗浄剤A
(3)他社製義歯洗浄剤B
(4)他社製義歯洗浄剤C
注)他社製義歯洗浄剤A、BおよびCの殺菌作用は、いずれも活性酸素によるものである。
試験菌:
a)Candida albicans A(カンジダ菌)
b)Streptcoccus pneumoiae ATCC 49619(肺炎連鎖球菌)
c)Staphylococcus aureus IFO 3060(黄色ブドウ球菌)
試験法:
(1)菌付着プレートの作製
トリプトソーヤブイヨンに菌を接種後、35℃で48時間静置培養した。培養液を遠心処理(9,000rpm,10分間)して菌体を得、これに滅菌水20mLを加えて菌懸濁液とした。
この菌懸濁液を希釈して、吸光度0.0750≧Abs≧0.0350の範囲に調整したものを浸漬液とした。標準曲線を作成して10CFU/mLの範囲を予め設定した。
タフロンDE(三木化学工業)を加熱重合後、1.5×2.0cm(厚さ0.2cm)に切断し、レジンプレートを作製した。このプレートを滅菌した後、これを上記浸漬液中、室温(25℃)で3時間浸漬したものを菌付着プレートとした。
(2)殺菌力評価試験
200mL容メスシリンダーの底に、各種義歯洗浄剤の錠剤1個を入れた。次いで、上記(1)で作製した菌付着プレートをメスシリンダー中に懸垂し、直ちに水道水200mLを入れた。各経過時間後にプレートを取り出した。取り出したプレートを滅菌水20mLで1回洗浄し、予めトリプトソーヤブイヨン15mLを入れておいた試験管中で、それぞれ35℃にて72時間培養した。各プレート上の菌の存在は培養液から判定した。判定は、培養液に濁りのあるものについて顕鏡し、選択培地を用いて菌を確認することにより行なった。
結果:
上記判定の結果、培養液中に菌が確認されなくなった時間(完全殺菌所要時間)をそれぞれの菌について表4に示す。完全殺菌所要時間は、各菌につき3回試験したうちで最も長い時間のものを示した。
【表4】

肺炎連鎖球菌に対しては、本発明義歯洗浄剤および他社製義歯洗浄剤A、BおよびCとも、完全殺菌時間5分以下という優れた殺菌力を示した。カンジタ菌および黄色ブドウ球菌に対しては、本発明義歯洗浄剤の完全殺菌時間はいずれも20分以内であり、優れた殺菌効果を示した。
【0031】
これらの結果から、本発明の義歯洗浄剤は、他社製義歯洗浄剤と比べてより高い殺菌効果を有することが証明された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銀イオンを担持させたハイドロキシアパタイトを0.05〜10重量%、ラウリル硫酸ナトリウムを1〜15重量%、過炭酸ナトリウムを15〜45重量%、オキソンを5〜20重量%、クエン酸を10〜40重量%および炭酸水素ナトリウムを5〜25重量%含有する義歯洗浄剤。
【請求項2】
クエン酸を10〜40重量%、過炭酸ナトリウムを15〜45重量%、オキソンを5〜20重量%、炭酸水素ナトリウムを5〜25重量%、食用色素を0.01〜0.05重量%、ラウリル硫酸ナトリウムを1〜15重量%、硬化ヒマシ油を0.5〜3重量%、ポリエチレングリコールを3〜20重量%、ペパーミントオイルを0.5〜3重量%、合成ケイ酸アルミニウムを0.1〜3重量%、酸化マグネシウムを1〜5重量%、および銀イオンを担持させたハイドロキシアパタイトを0.05〜10重量%含有する、請求項1に記載の義歯洗浄剤。
【請求項3】
銀イオンを担持させたハイドロキシアパタイトが0.1〜3重量%である、請求項1または2に記載の義歯洗浄剤。
【請求項4】
銀イオンを担持させたハイドロキシアパタイトが0.1〜0.5重量%である、請求項1または2に記載の義歯洗浄剤。
【請求項5】
発泡錠である、請求項1〜4のいずれかに記載の義歯洗浄剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−248235(P2010−248235A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−154067(P2010−154067)
【出願日】平成22年7月6日(2010.7.6)
【分割の表示】特願2000−546742(P2000−546742)の分割
【原出願日】平成11年4月19日(1999.4.19)
【出願人】(000142034)株式会社共和 (12)
【出願人】(000001926)塩野義製薬株式会社 (229)
【Fターム(参考)】