説明

義歯洗浄剤

【課題】本発明の目的は、義歯洗浄剤を投入した水の上面に、気泡が重なり合って集積された状態を形成させる作用に優れ、且つその持続性も良好な発泡錠剤タイプの義歯洗浄剤を提供することである。
【解決手段】(A)発泡剤、(B)アルキルスルホ酢酸塩、及び(C)アルキル硫酸塩を配合して、義歯洗浄剤を調製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、義歯洗浄剤を投入した水の上面に、気泡が重なり合って集積された状態を形成させる作用が強く、且つその持続性が良好である義歯洗浄剤に関する。更に、本発明は、当該義歯洗浄剤を用いた義歯洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
義歯は、総義歯、部分床義歯の別に関わらず、細菌、バイオフィルム、その他沈着物等が付着しやすく、洗浄せずに放置しておくと、口臭の原因になるだけでなく、歯周病等の口腔内疾患を誘発する一因になることがある。そのため、口腔ケアの一環として、義歯を洗浄し清潔に保つことが不可欠である。義歯に付着した細菌や汚れは、ブラシによる清掃では十分に除去できないため、義歯洗浄剤による洗浄が重要である。
【0003】
義歯洗浄剤による義歯の洗浄は、一般に、義歯洗浄剤を水に投入して調製された義歯洗浄水に義歯を浸漬放置する方法で行われている。従来、義歯洗浄剤としては、界面活性剤及び発泡剤を含むことで、水に投入した際に水中で発泡し、水の上面に気泡が重なり合って集積される発泡錠剤タイプのものが広く利用されている。発泡錠剤タイプの義歯洗浄剤では、界面活性化作用による化学的洗浄力と発泡作用による物理的洗浄力を兼ね備えることにより、洗浄力が高まるように設計されている。当該義歯洗浄剤は、水に投入すると、水中にて発泡すると同時に界面活性剤が水中に溶け出すため、水の上面に、気泡が重なり合って集積され(以下、かかる状態を「泡積り」と表記することもある)、当該泡積りが最大量に到達すると、一定時間その状態を維持し、洗浄が終わるにつれて泡積りが消失していき、やがて水面上の泡は完全に消失する。
【0004】
従来、このような発泡錠剤タイプの義歯洗浄剤について、洗浄効果等を向上させるために種々の改良が行われている。例えば、発泡錠剤タイプの義歯洗浄剤に、ポリビニルピロリドンとポリエチレングリコールを3:7〜7:3の重量比で配合することにより、起泡力を増大させ得ることが報告されている(特許文献1参照)。
【0005】
発泡錠剤タイプの義歯洗浄剤では、義歯洗浄剤を投入した水の上面に、気泡が重なり合って集積された状態を形成させる作用が強く、その持続性が良好であることが重要とされている。このように、泡積り作用が強く、その持続性が良好であることが、義歯洗浄剤の洗浄効果を高めることに繋がり、更には使用者が視覚的に感じる満足感を向上させる上で有効となる。しかしながら、従来の発泡錠剤タイプの義歯洗浄剤では、泡積りを形成させる作用が弱い、或いは泡積りの持続性が悪い等の欠点があり、これらを克服できる製剤処方について報告がなされていないのが現状である。
【0006】
このような従来技術を背景として、泡積りを形成させる作用に優れ、且つその持続性も良好な発泡錠剤タイプの義歯洗浄剤の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−50323号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、泡積りを形成させる作用に優れ、且つその持続性も良好な義歯洗浄剤を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、驚くべきことに、(A)発泡剤、(B)アルキルスルホ酢酸塩、及び(C)アルキル硫酸塩を含有する義歯洗浄剤は、泡積りを形成させる作用に優れ、しかも泡積りの持続性が良好であることを見出した。また、更に(D)シリカを含有させることで、泡積りの持続性を維持しながらも、泡積りの最大量を増加させ、義歯洗浄剤を水に投入した後に泡積りが最高量に到達するまでの時間を短縮できることも見出した。本発明は、かかる知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0010】
即ち、本発明は、下記に掲げる義歯洗浄剤及び義歯洗浄方法を提供する。
項1.(A)発泡剤、(B)アルキルスルホ酢酸塩、及び(C)アルキル硫酸塩を含有することを特徴とする、義歯洗浄剤。
項2.更に(D)シリカを含む、項1に記載の義歯洗浄剤。
項3.(B)アルキルスルホ酢酸塩100重量部当たり、(C)アルキル硫酸塩を20〜500重量部の比率で含有する、項1又は2に記載の義歯洗浄剤。
項4.更に(E)油性成分を含む、項1〜3のいずれかに記載の義歯洗浄剤。
項5.項1〜4のいずれかに記載の義歯洗浄剤を入れた水に、義歯を浸積することを特徴とする、義歯の洗浄方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の義歯洗浄剤は、義歯洗浄時に泡積りを形成させる作用に優れ、しかも泡積りの持続性も格段に向上しており、優れた洗浄効果を奏すると共に、使用者が視覚的に感じる満足感を向上させることができる。
【0012】
更に、従来の義歯洗浄剤において、義歯からの汚れを含んだ泡が容器の壁面に付着した状態で乾燥すると、汚れが壁面上に斑状に残る(輪染みになる)ため、使用者に不快感を与えていたが、本発明の義歯洗浄剤は油性成分及び/又はテルペノイドを含む場合には、泡積りは義歯洗浄後には速やかに消失するので、汚れを含んだ泡が容器壁面に残り難いため、汚れが斑状に残る(輪染みになる)ことがないだけでなく、洗浄後の義歯及び容器の濯ぎが容易になり、使用者の利便性を高めることもできる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1.義歯洗浄剤
本発明の義歯洗浄剤は、(A)発泡剤、(B)アルキルスルホ酢酸塩、及び(C)アルキル硫酸塩を含有することを特徴とする。以下、本発明の義歯洗浄剤について詳述する。
【0014】
本発明の義歯洗浄剤に使用される発泡剤(以下、「(A)成分」と表記することもある)としては、特に制限されず、義歯洗浄剤で通常使用されるもの(即ち、水中で二酸化炭素を発生できるもの)を広く用いることができる。
【0015】
発泡剤として、具体的には、炭酸塩、炭酸水素塩、及びこれらの複塩の少なくとも1種(以下、炭酸化合物と表記することもある)と、酸との組み合わせが例示される。炭酸塩としては、特に制限されないが、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸のアルカリ金属塩が挙げられる。炭酸水素塩としては、特に制限されないが、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の炭酸水素のアルカリ金属塩が挙げられる。炭酸塩と炭酸水素塩の複塩としては、特に制限されないが、例えば、セスキ炭酸ナトリウム等が挙げられる。これらの炭酸化合物は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、酸としては、特に制限されないが、例えば、クエン酸、酒石酸、フマル酸、リンゴ酸、マレイン酸、グルコン酸、コハク酸、サリチル酸、シュウ酸等の有機酸;リン酸、スルファミン酸等の無機酸等が挙げられる。これらの酸は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0016】
発泡剤を構成する炭酸化合物として、好ましくは炭酸水素のアルカリ金属塩、更に好ましくは炭酸水素ナトリウムが挙げられる。また、発泡剤を構成する酸として、好ましくは有機酸、更に好ましくはクエン酸が挙げられる。
【0017】
発泡剤において、炭酸化合物と酸の比率については、水中で両者が反応して二酸化炭素を発生できることを限度として特に制限されないが、例えば、炭酸化合物100重量部当たり、酸が通常50〜120重量部、好ましくは60〜90重量部、更に好ましくは70〜85重量部が挙げられる。
【0018】
本発明の義歯洗浄剤における(A)成分の含有量(炭酸化合物と酸の合計量)については、義歯の洗浄時に発泡作用を発揮させ得る限り、特に制限されないが、例えば10〜70重量%、好ましくは20〜60重量%、更に好ましくは20〜50重量%、特に好ましくは30〜60重量%が挙げられる。
【0019】
また、本発明の義歯洗浄剤に使用されるアルキルスルホ酢酸塩(以下、「(B)成分」と表記することもある)としては、特に制限されず、陰イオン性界面活性剤として一般に使用されているものを広く用いることができる。
【0020】
アルキルスルホ酢酸塩を構成するアルキル基の炭素数については、特に制限されないが、例えば8〜20、好ましくは10〜18、更に好ましくは12〜18が挙げられる。また、アルキルスルホ酢酸塩を構成するアルキル基は、直鎖状、分岐状のいずれであってもよいが、好ましくは直鎖状が挙げられる。
【0021】
また、アルキルスルホ酢酸塩を構成する塩としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩が挙げられる。
【0022】
本発明の義歯洗浄剤において、アルキルスルホ酢酸塩の中でも、泡積りを形成させる作用及びその持続性をより一層向上させるという観点から、ラウリルスルホ酢酸塩及びミリスチル酢酸塩が挙げられ、好ましくはラウリルスルホ酢酸塩、より好ましくはラウリルスルホ酢酸アルカリ金属塩、更に好ましくはラウリルスルホ酢酸ナトリウムが挙げられる。ラウリルスルホ酢酸ナトリウムについては、例えば、日光ケミカルズ株式会社等から商業的に入手可能である。
【0023】
本発明の義歯洗浄剤において、アルキルスルホ酢酸塩は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0024】
本発明の義歯洗浄剤における(B)成分の含有量については、特に制限されないが、例えば0.1〜5.0重量%、好ましくは0.2〜2重量%、更に好ましくは0.25〜1.25重量%、特に好ましくは0.25〜1.0重量%が挙げられる。
【0025】
また、本発明の義歯洗浄剤に使用されるアルキル硫酸塩(アルキル硫酸エステル塩)(以下、「(C)成分」と表記することもある)としては、特に制限されず、陰イオン性界面活性剤として一般に使用されているものを広く用いることができる。
【0026】
アルキル硫酸塩を構成するアルキル基の炭素数については、特に制限されないが、例えば8〜20、好ましくは10〜18、更に好ましくは12〜18が挙げられる。また、アルキル硫酸塩を構成するアルキル基は、直鎖状、分岐状のいずれであってもよいが、好ましくは直鎖状が挙げられる。
【0027】
また、アルキル硫酸塩を構成する塩としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩が挙げられる。
【0028】
アルキル硫酸塩の中でも、泡積りを形成させる作用及びその持続性をより一層向上させるという観点から、ラウリル硫酸塩及びミリスチル硫酸塩が挙げられ、好ましくはラウリル硫酸塩、より好ましくはラウリル硫酸アルカリ金属塩、更に好ましくはラウリル硫酸ナトリウムが挙げられる。ラウリル硫酸ナトリウムについては、例えば、東邦化学工業株式会社、花王株式会社等から商業的に入手可能である。
【0029】
本発明の義歯洗浄剤において、アルキル硫酸塩は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0030】
本発明の義歯洗浄剤において、(B)成分と(C)成分の比率については、特に制限されないが、泡積りの持続性をより一層向上させるという観点から、(B)成分100重量部に対して、(C)成分が通常10〜1000重量部、好ましくは20〜500重量部、更に好ましくは50〜500重量部、特に好ましくは50〜200重量部が挙げられる。
【0031】
本発明の義歯洗浄剤における(C)成分の含有量については、特に制限されないが、例えば0.1〜5.0重量%、好ましくは0.2〜2重量%、更に好ましくは0.25〜1.25重量%、特に好ましくは0.5〜1.25重量%が挙げられる。
【0032】
本発明の義歯洗浄剤には、更にシリカ(以下、「(D)成分」と表記することもある)が含まれていてもよい。シリカとは、二酸化ケイ素、又は二酸化ケイ素によって構成される物質の総称である。シリカを含有することにより、泡積りの持続性を維持しながらも、泡積り量を増大させ、且つ義歯洗浄剤を水に投入した後に泡積りが最高量に到達するまでの時間を短縮させることが可能になるため、更に洗浄効果感及び視覚的に得られる満足感を高めることができる。
【0033】
本発明の義歯洗浄剤に(D)成分を含有させる場合、(B)成分と(C)成分の総量に対する(D)成分の比率については、特に制限されないが、泡積り量の増大効果、及び泡積りが最高量に到達するまでの時間の短縮効果をより一層顕著に奏させるという観点から、(B)成分と(C)成分の総量100重量部に対して、(D)成分が通常10〜400重量部、好ましくは40〜250重量部、更に好ましくは60〜250重量部が挙げられる。
【0034】
本発明の義歯洗浄剤に(D)成分を含有させる場合、その含有量としては、特に制限されないが、例えば0.1〜10.0重量%、好ましくは0.1〜6.0重量%、更に好ましくは0.6〜3.75重量%、特に好ましくは0.9〜3.75重量%が挙げられる。
【0035】
また、本発明の義歯洗浄剤には、油性成分(以下、「(E)成分」と表記することもある)が含まれていてもよい。油性成分を含有することにより、義歯洗浄後に泡積りを速やかに消失させることが可能になるので、義歯の洗浄後に汚れを含んだ泡が原因で生じる、容器壁面上の輪染みができ難く、且つ洗浄後の義歯及び容器の濯ぎが容易になり、使用者の利便性を高めることができる。
【0036】
油性成分としては、特に制限されないが、具体的には、流動パラフィン、スクワラン、マイクロクリスタリンワックス、セレシンワックス、パラフィンワックス、ワセリン等の炭化水素;ヒマシ油、オリーブ油、カカオ油、パーム油、椿油、ヤシ油、木ロウ、ホホバ油、グレープシード油、アボカド油、ダイズ油等の植物油;ミンク油、卵黄油等の動物油脂;ミツロウ、鯨ロウ、ラノリン、カルナウバロウ、キャンデリラロウ等のロウ;ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、イソステアリン酸、ベヘニン酸等の脂肪酸;セタノール、ステアリルアルコール、ヘキシルデカノール、オクチルドデカノール、ラウリルアルコール等の高級アルコール;ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、オレイン酸オクチルドデシル、コレステロールオレート等の脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0037】
本発明の義歯洗浄剤に(E)成分を含有させる場合、上記油性成分の中から1種を選択して使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0038】
本発明の義歯洗浄剤に(E)成分を含有させる場合、(B)成分と(C)成分の総量に対する(E)成分の比率については、特に制限されないが、義歯洗浄後の泡積りの消失効果をより一層顕著に奏させるという観点から、(B)成分と(C)成分の総量100重量部に対して、(E)成分が通常10〜200重量部、好ましくは20〜150重量部、更に好ましくは50〜100重量部が挙げられる。
【0039】
本発明の義歯洗浄剤に(E)成分を含有させる場合、その含有量としては、特に制限されないが、例えば0.1〜5.0重量%、好ましくは0.5〜1.5重量%が挙げられる。
【0040】
また、本発明の義歯洗浄剤には、テルペノイド(以下、「(F)成分」と表記することもある)が含まれていてもよい。テルペノイドは、上記油性成分と同様に、義歯洗浄後に泡積りを速やかに消失させる作用を示し、使用者の利便性を高めることができる。
【0041】
テルペノイドとしては、特に制限されないが、具体的には、メントール、カンフル、シネオール、オイゲノール、シトラール、シトロネラール、ボルネオール、リナロール、ゲラーオール、チモール、スピラントール、ピネン、リモネン等が挙げられる。これらのテルペノイドの中から、1種を選択してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、これらのテルペノイドは、精油の形態で使用してもよい。前記テルペノイドを含有する精油としては、例えば、スペアミント油、ペパーミント油、ハッカ油、ベルガモット油、ラベンダー油、ユーカリ油、ローズマリー油、タイム油、ジャスミン油、スペアミント油、ローズ油、ライム油、シダーウッド油、シソ油、マジョラム油、メリッサ油、ゼラニウム油、アニス油、ウイキョウ油、オレンジ油等が挙げられる。
【0042】
これらのテルペノイドの中でも、義歯洗浄後の泡積りの消失効果を一層顕著に奏させるという観点から、好ましくはメントール及びメントールを含む精油が挙げられる。
【0043】
本発明の義歯洗浄剤に(F)成分を含有させる場合、(B)成分と(C)成分の総量に対する(F)成分の比率については、特に制限されないが、義歯洗浄後の泡積りの消失効果をより一層顕著に奏させるという観点から、(B)成分と(C)成分の総量100重量部に対して、(F)成分が通常10〜200重量部、好ましくは20〜150重量部、更に好ましくは50〜100重量部が挙げられる。
【0044】
本発明の義歯洗浄剤に(F)成分を含有させる場合、その含有量としては、特に制限されないが、例えば0.1〜5.0重量%、好ましくは0.5〜1.5重量%が挙げられる。
【0045】
本発明の義歯洗浄剤には、前記成分の他に、本発明の効果を妨げないことを限度として、必要に応じて、キレート剤、酵素、着色料、甘味料、消臭剤、発泡安定化剤、保存剤、漂白剤、抗菌・殺菌剤、防腐剤、前記(B)及び(C)成分以外の界面活性剤、結合剤、滑沢剤、賦形剤、崩壊剤、pH調整剤、流動化剤等の添加剤を含んでいてもよい。
【0046】
本発明の義歯洗浄剤は、錠剤、粒剤、顆粒剤等の固形状であればよいが、水に投入した際に沈降するタイプの義歯洗浄剤は、水中で生じた二酸化炭素の気泡を義歯に物理的に接触させ、洗浄効果を高めることができるので、前記剤形の中でも最も沈降しやすい錠剤状であることが望ましい。また、錠剤状にする場合には、錠剤1個当たりの重量は、1回の義歯洗浄に必要な量に設定しておくことが望ましい。
【0047】
本発明の義歯洗浄剤を水に加えた状態で洗浄対象となる義歯を共存させると、含有成分の溶解と共に発泡剤による発泡が生じ、前記(A)成分が反応することで生じる二酸化炭素の気泡が義歯に接触することによる物理的な刺激と前記(B)及び(C)成分による界面活性作用によって義歯が洗浄される。
【0048】
本発明の義歯洗浄剤を用いて義歯を洗浄する際に使用される水としては、特に制限されないが、水道水、精製水、生理食塩水等が挙げられる。
【0049】
本発明の義歯洗浄剤を用いて義歯を洗浄する際には、水に義歯を浸漬した後に本発明の義歯洗浄剤を加えてもよく、また水に本発明の義歯洗浄剤を加えた後に義歯を浸漬させてもよい。
【0050】
また、義歯の洗浄において、本発明の義歯洗浄剤と水との比率は、本発明の義歯洗浄剤の組成、洗浄対象となる義歯の汚れの程度等に応じて適宜設定されるが、例えば、水100重量部に対して、義歯洗浄剤を通常1〜10重量部程度、好ましくは1〜5重量部程度とすればよい。より具体的には、1回の義歯の洗浄において、水100〜200mLを準備し、これに本発明の義歯洗浄剤1〜20g、好ましくは1〜10gを加えればよい。
【0051】
義歯洗浄時の水温は5〜30℃程度とすればよい。また、本発明の義歯洗浄剤を加えた水に義歯を浸積する時間は、通常5分〜12時間程度、好ましくは通常30分〜8時間程度が挙げられる。
【0052】
2.義歯洗浄方法
本発明の義歯洗浄方法は、前記義歯洗浄剤を用いて義歯を洗浄する方法である。即ち、本発明の義歯洗浄方法は、前記義歯洗浄剤を入れた水に、義歯を浸積して義歯を洗浄する方法である。本発明の義歯洗浄方法の具体的実施態様については、前記「1.義歯洗浄剤」の欄に記載の通りである。
【実施例】
【0053】
以下に実施例を示し、本発明を具体的に説明する。但し、本発明はこれらに限定されない。
【0054】
試験例1
表1に示す組成の錠剤状の義歯洗浄剤を調製した。具体的には、表1に示す成分を混合した組成物を、径25φの金型を用いて7Mpaで打錠成型することにより、1個当たり2.65gの錠剤状の義歯洗浄剤を調製した。
【0055】
得られた各義歯洗浄剤1個を300mL容のメスシリンダーに入れた25℃の水180mLに投入し、水の上面に気泡が重なり合って集積することにより形成された気泡層の量(泡積り量)を経時的に計測した。泡積り量の最大値(最大泡積り量)と、泡積り量の最大値に達した時点から120秒後の泡積り量を測定し、下記の式に従って、120秒後の泡積りの持続性の相対値(%)を算出した。
【0056】
【数1】

【0057】
得られた結果を表1に示す。この結果から、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム及びラウリル硫酸ナトリウムの何れか一方を欠く義歯洗浄剤(比較例1〜2)では、120秒後の泡積りの持続性の相対値が90%未満となり、泡積りの持続性が悪いが、これらの双方を含む義歯洗浄剤(実施例1〜5)では、泡積りの持続性が大幅に向上することが明らかとなった。とりわけ、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム100重量部当たりラウリル硫酸ナトリウムを20〜500重量部の割合で使用した場合には、泡積りの持続性が顕著に向上し、特に、50〜500重量部の割合で使用した場合には、120秒後の泡積りの持続性の相対値が95%以上となり、泡積りの持続性が顕著に向上することも確認された。なお、実施例1〜5の義歯洗浄剤の最大泡積り量は、いずれも、高い値を示していた。
【0058】
【表1】

【0059】
試験例2
試験例1と同様の方法で、表2に示す組成の錠剤状の義歯洗浄剤(1個当たり2.65g)を調製した。得られた各義歯洗浄剤1個を300mL容のメスシリンダーに入れた25℃の水180mLに投入し、泡積り量を経時的に計測し、最大泡積り量及び最大泡積り量に到達するまでの時間を測定した。また、試験例1と同様の方法で、120秒後の泡積りの持続性の相対値についても算出した。
【0060】
得られた結果を表2に示す。この結果から、シリカ(二酸化ケイ素)を含む実施例6〜10の義歯洗浄剤では、シリカを含まない実施例3の義歯洗浄剤に比して、泡積りの持続性を維持(120秒後の泡積りの持続性の相対値が95%以上)しながら、最大泡積り量への到達時間が短縮されると共に、最大泡積り量が向上することが明らかとなった。とりわけ、(B)及び(C)成分の総量100重量部当たり(D)成分を60〜250重量部の割合で使用した場合には、顕著に最大泡積り量への到達時間が短縮されると共に、最大泡積り量が向上した。
【0061】
【表2】

【0062】
試験例3
試験例1と同様の方法で、表3に示す組成の錠剤状の義歯洗浄剤(1個当たり2.65g)を調製した。得られた各義歯洗浄剤1個を300mL容のメスシリンダーに入れた25℃の水180mLに投入し、義歯洗浄剤の投入から4時間後の泡積り量を計測した。
【0063】
得られた結果を表3に示す。この結果から、油性成分又はテルペノイドを含む実施例11〜14の義歯洗浄剤では、義歯洗浄剤投入4時間後の泡積りを低減できており、汚れを含んだ泡が容器壁面に残り難く、汚れが容器壁面に斑状に残る(輪染みになる)ことを防ぐことができることが明らかとなった。特に、メントールを含む実施例11及び12においてはその効果が顕著であった。
【0064】
【表3】

【0065】
処方例1〜68
表4〜11に示す処方例に従い、試験例1と同様の方法で錠剤状の義歯洗浄剤(1個当たり2.65g)を調製した。特に処方例1〜16において、実施例と同様に「泡積りの持続性」の試験を行なったところ、いずれにおいても上記実施例と同様に優れた効果が認められた。なかでも、アルキルスルホ酢酸塩についてはラウリルスルホ酢酸ナトリウム、またアルキル硫酸塩についてはラウリル硫酸ナトリウムを使用した場合に、特に良好な結果が得られた。また、処方例17〜28についても泡積りの持続性に優れていた。
【0066】
また、処方例29〜68について、実施例と同様に「義歯洗浄剤の投入から4時間後の泡積り量」の計測を行なったところ、いずれにおいても実施例と同様に優れた効果が認められた。特に処方例41〜64について、(B)成分と(C)成分の総量100重量部に対して、テルペノイドを10〜200重量部(好ましくは20〜150重量部)含有させた場合(二酸化ケイ素を含有しなくても)、義歯洗浄後の泡積りの消失効果を高めることができ、なかでも、テルペノイドとしてメントールを含む処方例41〜48についての効果が高かった。
【0067】
【表4】

【0068】
【表5】

【0069】
【表6】

【0070】
【表7】

【0071】
【表8】

【0072】
【表9】

【0073】
【表10】

【0074】
【表11】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)発泡剤、(B)アルキルスルホ酢酸塩、及び(C)アルキル硫酸塩を含有することを特徴とする、義歯洗浄剤。
【請求項2】
更に(D)シリカを含む、請求項1に記載の義歯洗浄剤。
【請求項3】
(B)アルキルスルホ酢酸塩100重量部当たり、(C)アルキル硫酸塩を20〜500重量部の比率で含有する、請求項1又は2に記載の義歯洗浄剤。
【請求項4】
更に(E)油性成分を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の義歯洗浄剤。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の義歯洗浄剤を入れた水に、義歯を浸積することを特徴とする、義歯の洗浄方法。

【公開番号】特開2013−100258(P2013−100258A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−210733(P2012−210733)
【出願日】平成24年9月25日(2012.9.25)
【出願人】(000186588)小林製薬株式会社 (518)
【Fターム(参考)】