説明

義歯洗浄剤

【課題】本発明の目的は、泡積りを形成させる作用及びその持続性が良好で、且つ洗浄後の泡積りが速やかに消失する義歯洗浄剤を提供することである。
【解決手段】(A)発泡剤、(B)アルキルスルホ酢酸塩、(C)アルキル硫酸塩、及び(D)テルペノイドを配合して、義歯洗浄剤を調製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、義歯洗浄剤を投入した水の上面に、気泡が重なり合って集積された状態を形成させる作用が良好であり、且つ義歯の洗浄後に集積された泡の消失作用にも優れた義歯洗浄剤に関する。更に、本発明は、当該義歯洗浄剤を用いた義歯洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
義歯は、総義歯、部分床義歯の別に関わらず、細菌、バイオフィルム、その他沈着物等が付着しやすく、洗浄せずに放置しておくと、口臭の原因になるだけでなく、歯周病等の口腔内疾患を誘発する一因になることがある。そのため、口腔ケアの一環として、義歯を洗浄し清潔に保つことが不可欠である。義歯に付着した細菌や汚れは、ブラシによる清掃では十分に除去できないため、義歯洗浄剤による洗浄が重要である。
【0003】
義歯洗浄剤による義歯の洗浄は、一般に、義歯洗浄剤を水に投入して調製された義歯洗浄水に義歯を浸漬放置する方法で行われている。従来、義歯洗浄剤としては、界面活性剤及び発泡剤を含むことで、水に投入した際に水中で発泡し、水の上面に気泡が重なり合って集積される発泡錠剤タイプのものが広く利用されている。発泡錠剤タイプの義歯洗浄剤では、界面活性化作用による化学的洗浄力と発泡作用による物理的洗浄力を兼ね備えることにより、洗浄力が高まるように設計されている。当該義歯洗浄剤は、水に投入すると、水中にて発泡すると同時に界面活性剤が水中に溶け出すため、水の上面に、気泡が重なり合って集積され(以下、かかる状態を「泡積り」と表記することもある)、当該泡積りが最大量に到達すると、一定時間その状態を維持し、洗浄が終わるにつれて泡積りが消失していき、やがて水面上の泡は完全に消失する。
【0004】
従来、このような発泡錠剤タイプの義歯洗浄剤について、洗浄効果等を向上させるために種々の改良が行われている。例えば、発泡錠剤タイプの義歯洗浄剤に、ポリビニルピロリドンとポリエチレングリコールを3:7〜7:3の重量比で配合することにより、起泡力を増大させ得ることが報告されている(特許文献1参照)。
【0005】
発泡錠剤タイプの義歯洗浄剤では、義歯洗浄剤を投入した水の上面に、気泡が重なり合って集積された状態を形成させる作用に優れ、その状態が一定期間保持されることが求められる。このように、泡積り作用及びその持続性が良好であることが、義歯洗浄剤の洗浄効果を高めることに繋がり、更には使用者が視覚的に感じる満足感を向上させる上で有効となる。しかしながら、従来の発泡錠剤タイプの義歯洗浄剤では、泡積りを形成させる作用が弱い、或いは泡積りの持続性が悪い等の欠点があり、これらを克服できる製剤処方について報告がなされていないのが現状である。
【0006】
一方、たとえ、泡積りを形成させる作用が強く、泡積りの持続性が良好であっても、義歯を洗浄した後に義歯からの汚れを含んだ泡が残存し続けると、洗浄後の義歯及び容器の濯ぎに手間取るという欠点が生じる。また、義歯の洗浄後に、汚れを含んだ泡が容器の壁面に付着した状態で乾燥すると、汚れが壁面上に斑状に残り(輪染みになり)、使用者に不快感を与えることにもなる。しかしながら、泡積りの形成と持続性を高める作用と、洗浄後の泡積りの消失を速める作用とでは、相反する特性が要求されるため、これらの両作用を共存させることは、従来の製剤処方では実現困難と考えられている。
【0007】
このような従来技術を背景として、泡積りを形成させる作用に優れ、且つその持続性も良好であるために十分な洗浄効果が得られ、しかも洗浄後の泡積りの消失が速やかな(すなわち泡切れに優れた)発泡錠剤タイプの義歯洗浄剤の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−50323号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、泡積りを形成させる作用及びその持続性が良好で、且つ洗浄後の泡積りが速やかに消失する義歯洗浄剤を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、驚くべきことに、(A)発泡剤、(B)アルキルスルホ酢酸塩、(C)アルキル硫酸塩、及び(D)テルペノイドを含有する義歯洗浄剤は、泡積りを形成させる作用及び泡積りの持続性が良好であり、しかも洗浄後の泡積りが速やかに消失することを見出した。また、更に(E)シリカを含有させることで、泡積りの持続性を維持しながらも、泡積りの最大量を増加させ、義歯洗浄剤を水に投入した後に泡積りが最高量に到達するまでの時間を短縮できることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0011】
即ち、本発明は、下記に掲げる義歯洗浄剤及び義歯洗浄方法を提供する。
項1.(A)発泡剤、(B)アルキルスルホ酢酸塩、(C)アルキル硫酸塩、及び(D)テルペノイドを含有することを特徴とする、義歯洗浄剤。
項2.(D)テルペノイドが、少なくとも1種の極性基を有する、項1に記載の義歯洗浄剤。
項3.(D)テルペノイドが、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルデヒド基、ケトン基、エポキシ基からなる群より選択される少なくとも1種の極性基を有する、項1又は2に記載の義歯洗浄剤。
項4.(D)テルペノイドが、ヒドロキシル基を有するテルペノイドである項1〜3のいずれかに記載の義歯洗浄剤。
項5.(D)テルペノイドが、モノテルペノイドである項1〜4のいずれかに記載の義歯洗浄剤。
項6.(D)テルペノイドが、リモネン、メントン、メントール、ゲラニオール、リナロール、ボルネオール、ペリルアルデヒド、シトラール及びカンフルからなる群より選択される少なくとも1種である、項1〜5のいずれかに記載の義歯洗浄剤。
項7.(D)テルペノイドが、メントール、ゲラニオール、リナロール及びシトラールからなる群より選択される少なくとも1種である、項1〜6のいずれかに記載の義歯洗浄剤。
項8.(B)アルキルスルホ酢酸塩100重量部当たり、(C)アルキル硫酸塩を20〜500重量部の比率で含有する、項1〜7のいずれかに記載の義歯洗浄剤。
項9.(D)テルペノイドを0.1〜5重量%の割合で含有する、項1〜8のいずれかに記載の義歯洗浄剤。
項10.(B)アルキルスルホ酢酸塩と(C)アルキル硫酸塩の総量100重量部に対して、(D)テルペノイドを10〜200重量部の比率で配合する、項1〜9のいずれかに記載の義歯洗浄剤。
項11.更に(E)シリカを含む、項1〜10のいずれかに記載の義歯洗浄剤。
項12.項1〜11のいずれかに記載の義歯洗浄剤を入れた水に、義歯を浸積することを特徴とする、義歯の洗浄方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の義歯洗浄剤は、義歯洗浄時に泡積りを形成させる作用に優れ、しかも泡積りの持続性も良好であることから、十分な洗浄効果を奏すると共に、使用者が視覚的に感じる満足感を向上させることができる。
【0013】
また、従来の義歯洗浄剤では、義歯洗浄後の泡が長時間残り、義歯からの汚れを含んだ状態で乾燥するため、汚れが容器の壁面上に斑状に残ったり(輪染みになったり)、洗浄後に液面上に残った泡が義歯を取り出す際に義歯に付着したりするため、使用者に不快感を与えていた。これらに対して、本発明の義歯洗浄剤は、洗浄後に泡積りが速やかに消失する(泡切れがよい)ので、汚れを含んだ泡が容器壁面に残り難いため、汚れが斑状に残る(輪染みになる)ことがないだけでなく、洗浄後の義歯及び容器の濯ぎが容易になり、使用者の利便性を高めることもできる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
1.義歯洗浄剤
本発明の義歯洗浄剤は、(A)発泡剤、(B)アルキルスルホ酢酸塩、(C)アルキル硫酸塩、及び(D)テルペノイドを含有することを特徴とする。以下、本発明の義歯洗浄剤について詳述する。
【0015】
本発明の義歯洗浄剤に使用される発泡剤(以下、「(A)成分」と表記することもある)としては、特に制限されず、義歯洗浄剤で通常使用されるもの(即ち、水中で二酸化炭素を発生できるもの)を広く用いることができる。
【0016】
発泡剤として、具体的には、炭酸塩、炭酸水素塩、及びこれらの複塩の少なくとも1種(以下、炭酸化合物と表記することもある)と、酸との組み合わせが例示される。炭酸塩としては、特に制限されないが、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸のアルカリ金属塩が挙げられる。炭酸水素塩としては、特に制限されないが、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の炭酸水素のアルカリ金属塩が挙げられる。炭酸塩と炭酸水素塩の複塩としては、特に制限されないが、例えば、セスキ炭酸ナトリウム等が挙げられる。これらの炭酸化合物は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、酸としては、特に制限されないが、例えば、クエン酸、酒石酸、フマル酸、リンゴ酸、マレイン酸、グルコン酸、コハク酸、サリチル酸、シュウ酸等の有機酸;リン酸、スルファミン酸等の無機酸等が挙げられる。これらの酸は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0017】
発泡剤を構成する炭酸化合物として、好ましくは炭酸水素のアルカリ金属塩、更に好ましくは炭酸水素ナトリウムが挙げられる。また、発泡剤を構成する酸として、好ましくは有機酸、更に好ましくはクエン酸が挙げられる。
【0018】
発泡剤において、炭酸化合物と酸の比率については、水中で両者が反応して二酸化炭素を発生できることを限度として特に制限されないが、例えば、炭酸化合物100重量部当たり、酸が通常50〜120重量部、好ましくは60〜90重量部、更に好ましくは70〜85重量部が挙げられる。
【0019】
本発明の義歯洗浄剤における(A)成分の含有量(炭酸化合物と酸の合計量)については、義歯の洗浄時に発泡作用を発揮させ得る限り、特に制限されないが、例えば10〜70重量%、好ましくは20〜60重量%、更に好ましくは20〜50重量%、特に好ましくは30〜60重量%が挙げられる。
【0020】
また、本発明の義歯洗浄剤に使用されるアルキルスルホ酢酸塩(以下、「(B)成分」と表記することもある)としては、特に制限されず、陰イオン性界面活性剤として一般に使用されているものを広く用いることができる。
【0021】
アルキルスルホ酢酸塩を構成するアルキル基の炭素数については、特に制限されないが、例えば8〜20、好ましくは10〜18、更に好ましくは12〜18が挙げられる。また、アルキルスルホ酢酸塩を構成するアルキル基は、直鎖状、分岐状のいずれであってもよいが、好ましくは直鎖状が挙げられる。
【0022】
また、アルキルスルホ酢酸塩を構成する塩としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩が挙げられる。
【0023】
本発明の義歯洗浄剤において、アルキルスルホ酢酸塩の中でも、泡積りを形成させる作用及びその持続性をより一層向上させるという観点から、ラウリルスルホ酢酸塩及びミリスチル酢酸塩が挙げられ、好ましくはラウリルスルホ酢酸塩、より好ましくはラウリルスルホ酢酸アルカリ金属塩、更に好ましくはラウリルスルホ酢酸ナトリウムが挙げられる。ラウリルスルホ酢酸ナトリウムについては、例えば、日光ケミカルズ株式会社等から商業的に入手可能である。
【0024】
本発明の義歯洗浄剤において、アルキルスルホ酢酸塩は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0025】
本発明の義歯洗浄剤における(B)成分の含有量については、特に制限されないが、例えば0.1〜5.0重量%、好ましくは0.2〜2重量%、更に好ましくは0.25〜1.25重量%、特に好ましくは0.25〜1.0重量%が挙げられる。
【0026】
また、本発明の義歯洗浄剤に使用されるアルキル硫酸塩(アルキル硫酸エステル塩)(以下、「(C)成分」と表記することもある)としては、特に制限されず、陰イオン性界面活性剤として一般に使用されているものを広く用いることができる。
【0027】
アルキル硫酸塩を構成するアルキル基の炭素数については、特に制限されないが、例えば8〜20、好ましくは10〜18、更に好ましくは12〜18が挙げられる。また、アルキル硫酸塩を構成するアルキル基は、直鎖状、分岐状のいずれであってもよいが、好ましくは直鎖状が挙げられる。
【0028】
また、アルキル硫酸塩を構成する塩としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩が挙げられる。
【0029】
アルキル硫酸塩の中でも、泡積りを形成させる作用及びその持続性をより一層向上させるという観点から、ラウリル硫酸塩及びミリスチル硫酸塩が挙げられ、好ましくはラウリル硫酸塩、より好ましくはラウリル硫酸アルカリ金属塩、更に好ましくはラウリル硫酸ナトリウムが挙げられる。ラウリル硫酸ナトリウムについては、例えば、東邦化学工業株式会社、花王株式会社等から商業的に入手可能である。
【0030】
本発明の義歯洗浄剤において、アルキル硫酸塩は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0031】
本発明の義歯洗浄剤において、(B)成分と(C)成分の比率については、特に制限されないが、泡積りの持続性をより一層向上させるという観点から、(B)成分100重量部に対して、(C)成分が通常10〜1000重量部、好ましくは20〜500重量部、更に好ましくは50〜500重量部、特に好ましくは50〜200重量部が挙げられる。
【0032】
本発明の義歯洗浄剤における(C)成分の含有量については、特に制限されないが、例えば0.1〜5.0重量%、好ましくは0.2〜2重量%、更に好ましくは0.25〜1.25重量%、特に好ましくは0.5〜1.25重量%が挙げられる。
【0033】
また、本発明の義歯洗浄剤は、テルペノイド(以下、「(D)成分」と表記することもある)を含有する。テルペノイドを含有することにより、義歯洗浄後の泡積りを速やかに消失させることが可能になるので、汚れを含んだ泡が原因で生じる、容器壁面上の輪染みができ難く、且つ洗浄後の義歯及び容器の濯ぎが容易になり、使用者の利便性を高めることができる。
【0034】
テルペノイドとは、イソプレノイド又はテルペンとも称され、通常、イソプレン単位(炭素数5)が複数個結合した化合物である。テルペノイドは、含まれるイソプレン単位の数に応じてモノテルペノイド(イソプレン単位が2個)、セスキテルペノイド(イソプレン単位が3個)、ジテルペノイド(イソプレン単位が4個)、セスタテルペノイド(イソプレン単位が5個)、トリテルペノイド(イソプレン単位が6個)、テトラテルペノイド(イソプレン単位が8個)等に分類される。
【0035】
また、テルペノイドの好適な例として、少なくとも1つの極性基を有するテルペノイドが挙げられる。極性基を2以上有するテルペノイドである場合、それらの極性基は同一であってもよく、異なっていてもよい。極性基とは、極性(親水性)を有する官能基を指す。極性基を有するテルペノイドを用いることにより、義歯洗浄後に泡積りを速やかに消失させる作用をより一層増強させることができる。このような極性基としては、特に制限されないが、例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルデヒド基、ケトン基、エポキシ基等が挙げられる。これらの極性基の中でも、義歯洗浄後に泡積りを速やかに消失させる作用をより強く発揮させるという観点から、好ましくは、ヒドロキシル基、アルデヒド基、ケトン基が挙げられ、更に好ましくはヒドロキシル基が挙げられる。
【0036】
テルペノイドとして、具体的には、リモネン、メントン、ピネン、メントール、ゲラニオール、リナロール、チモール、ボルネオール、ペリルアルデヒド、シトラール、シトロネラール、カンフル、シネオール等のモノテルペノイド;カマズレン、サンタレン、パチュレン、セドロール、セレノール、ファルネソール、オイゲノール、α−ビサボロール、β−カリオフィレンアルコール、スクラレオール、ゲラニルリナロール、イソフィトール、ネロリドール、グロブロール、グアイオール、α−サンタロール、カトロール、ファルネソール、ゲルマクロン、シペロン、ゼルンボン、ベチボン等のセスキテルペノイド;ゲラニルゲラニル二リン酸、レチノール、レチナール、フィトール、パクリタキセル、ホルスコリン、アフィジコリン等のジテルペノイド;スクアレン、ラノステロール等のトリテルペノイドが例示される。
【0037】
これらのテルペノイドの中でも、義歯洗浄後に泡積りを速やかに消失させる作用をより強く発揮させるという観点から、好ましくはモノテルペノイドが挙げられ、具体的にはリモネン、メントン、メントール、ゲラニオール、リナロール、ボルネオール、ペリルアルデヒド、シトラール、カンフル等が例示される。また、より一層優れた本発明の効果を発揮し得るテルペノイドとして、好ましくはヒドロキシル基、アルデヒド基及びケトン基の少なくとも1つを有するモノテルペノイド、より好ましくはアルデヒド基及びヒドロキシル基の少なくとも1つを有するテルペノイド、更に好ましくはヒドロキシル基を有するモノテルペノイドが挙げられる。ヒドロキシル基を有するモノテルペノイドとしては、具体的には、メントール、ゲラニオール、リナロール、ボルネオール、テルピネオール等が挙げられ、更に好ましくはメントールが挙げられる。また、アルデヒド基を有するモノテルペノイドとしては、具体的には、シトラール、ペリルアルデヒド等が挙げられる。ケトン基を有するモノテルペノイドとしては、メントン、カンフル等が挙げられる。
【0038】
また、本発明の義歯洗浄剤において、テルペノイドは精油の形態で使用することもできる。テルペノイドを含む精油としては、特に制限されないが、例えば、スペアミント油、ペパーミント油、ハッカ油、ハッカ白油、ベルガモット油、ラベンダー油、ユーカリ油、ローズマリー油、タイム油、ジャスミン油、スペアミント油、ローズ油、ライム油、シダーウッド油、シソ油、マジョラム油、メリッサ油、ゼラニウム油、アニス油、ウイキョウ油、オレンジ油、パチュリー油、サイプレス油、ショウノウ油、ジュニパー油、ヒソップ油、ターペンタイン油、パイン油、セージ油、オレガノ油、カミツレ油、クラリセージ油、シナモン油、バラ油等が挙げられる。
【0039】
本発明の義歯洗浄剤において、テルペノイドは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0040】
本発明の義歯洗浄剤において、(B)成分と(C)成分の総量に対する(D)成分の比率については、特に制限されないが、義歯洗浄後の泡積りの消失効果をより一層顕著に奏させるという観点から、(B)成分と(C)成分の総量100重量部に対して、(D)成分が通常10〜200重量部、好ましくは20〜150重量部、より好ましくは34.7〜150重量部が挙げられる。
【0041】
本発明の義歯洗浄剤における(D)成分の含有量としては、特に制限されないが、例えば0.1〜5.0重量%、好ましくは0.3〜2.25重量%、より好ましくは0.52〜2.25重量%が挙げられる。
【0042】
本発明の義歯洗浄剤には、更にシリカ(以下、「(E)成分」と表記することもある)が含まれていてもよい。シリカとは、二酸化ケイ素、又は二酸化ケイ素によって構成される物質の総称である。シリカを含有することにより、泡積りの持続性を維持しながらも、泡積り量を増大させ、且つ義歯洗浄剤を水に投入した後に泡積りが最高量に到達するまでの時間を短縮させることが可能になるため、更に洗浄効果感及び視覚的に得られる満足感を高めることができる。また、シリカを含有させることにより、例えば、義歯洗浄剤投入から約4時間後の泡積りを更に低減することができ、汚れを含んだ泡が容器壁面に残り難く、汚れが容器壁面に斑状に残る(輪染みになる)ことを防ぐことができる。
【0043】
本発明の義歯洗浄剤に(E)成分を含有させる場合、(B)成分と(C)成分の総量に対する(E)成分の比率については、特に制限されないが、泡積り量の増大効果、及び泡積りが最高量に到達するまでの時間の短縮効果をより一層顕著に奏させるという観点から、(B)成分と(C)成分の総量100重量部に対して、(E)成分が通常10〜400重量部、好ましくは40〜250重量部、更に好ましくは60〜250重量部が挙げられる。
【0044】
本発明の義歯洗浄剤に(E)成分を含有させる場合、その含有量としては、特に制限されないが、例えば0.1〜10.0重量%、好ましくは0.1〜6.0重量%、更に好ましくは0.6〜3.75重量%、特に好ましくは0.9〜3.75重量%が挙げられる。
【0045】
本発明の義歯洗浄剤には、前記成分の他に、本発明の効果を妨げないことを限度として、必要に応じて、キレート剤、酵素、着色料、甘味料、消臭剤、発泡安定化剤、保存剤、漂白剤、抗菌・殺菌剤、防腐剤、前記(B)及び(C)成分以外の界面活性剤、前記(D)成分以外の油性成分、結合剤、滑沢剤、賦形剤、崩壊剤、pH調整剤、流動化剤等の添加剤を含んでいてもよい。
【0046】
本発明の義歯洗浄剤は、錠剤、粒剤、顆粒剤等の固形状であればよいが、水に投入した際に沈降するタイプの義歯洗浄剤は、水中で生じた二酸化炭素の気泡を義歯に物理的に接触させ、洗浄効果を高めることができるので、前記剤形の中でも最も沈降しやすい錠剤状であることが望ましい。また、錠剤状にする場合には、錠剤1個当たりの重量は、1回の義歯洗浄に必要な量に設定しておくことが望ましい。
【0047】
本発明の義歯洗浄剤は、上記(A)〜(D)成分と、必要に応じて含有される(E)成分及び/又は他の添加剤を混合し、所望の形状に製剤化することにより製造される。本発明の義歯洗浄剤の製造方法については、特に制限されるものではないが、上記(A)〜(D)成分と共に上記(E)成分を含有させる場合、予め上記(D)成分を上記(E)成分に含浸させた後に、他の成分と混合して、所望の形状に製剤化することが望ましい。
【0048】
本発明の義歯洗浄剤を水に加えた状態で洗浄対象となる義歯を共存させると、含有成分の溶解と共に発泡剤による発泡が生じ、前記(A)成分が反応することで生じる二酸化炭素の気泡が義歯に接触することによる物理的な刺激と前記(B)及び(C)成分による界面活性作用によって義歯が洗浄される。
【0049】
本発明の義歯洗浄剤を用いて義歯を洗浄する際に使用される水としては、特に制限されないが、水道水、精製水、生理食塩水等が挙げられる。
【0050】
本発明の義歯洗浄剤を用いて義歯を洗浄する際には、水に義歯を浸漬した後に本発明の義歯洗浄剤を加えてもよく、また水に本発明の義歯洗浄剤を加えた後に義歯を浸漬させてもよい。
【0051】
また、義歯の洗浄において、本発明の義歯洗浄剤と水との比率は、本発明の義歯洗浄剤の組成、洗浄対象となる義歯の汚れの程度等に応じて適宜設定されるが、例えば、水100重量部に対して、義歯洗浄剤を通常1〜10重量部程度、好ましくは1〜5重量部程度とすればよい。より具体的には、1回の義歯の洗浄において、水100〜200mLを準備し、これに本発明の義歯洗浄剤1〜20g、好ましくは1〜10gを加えればよい。
【0052】
義歯洗浄時の水温は5〜30℃程度とすればよい。また、本発明の義歯洗浄剤を加えた水に義歯を浸積する時間は、通常5分〜12時間程度、好ましくは通常30分〜8時間程度、更に好ましくは通常30分〜4時間程度が挙げられる。
【0053】
2.義歯洗浄方法
本発明の義歯洗浄方法は、前記義歯洗浄剤を用いて義歯を洗浄する方法である。即ち、本発明の義歯洗浄方法は、前記義歯洗浄剤を入れた水に、義歯を浸積して義歯を洗浄する方法である。本発明の義歯洗浄方法の具体的実施態様については、前記「1.義歯洗浄剤」の欄に記載の通りである。
【実施例】
【0054】
以下に実施例等を示し、本発明を具体的に説明する。但し、本発明はこれらに限定されない。
【0055】
参考試験例1
表1に示す組成の錠剤状の義歯洗浄剤を調製した。具体的には、表1に示す成分を混合した組成物を、径25φの金型を用いて7Mpaで打錠成型することにより、1個当たり2.65gの錠剤状の義歯洗浄剤を調製した。
【0056】
得られた各義歯洗浄剤1個を300mL容のメスシリンダーに入れた25℃の水180mLに投入し、水の上面に気泡が重なり合って集積することにより形成された気泡層の量(泡積り量)を経時的に計測した。泡積り量の最大値(最大泡積り量)と、泡積り量の最大値に達した時点から120秒後の泡積り量を測定し、下記の式に従って、120秒後の泡積りの持続性の相対値(%)を算出した。
【0057】
【数1】

【0058】
得られた結果を表1に示す。この結果から、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム及びラウリル硫酸ナトリウムの何れか一方を欠く義歯洗浄剤(比較参考例1〜2)では、120秒後の泡積りの持続性の相対値が90%未満となり、泡積りの持続性が悪いが、これらの双方を含む義歯洗浄剤(参考例1〜5)では、泡積りの持続性が大幅に向上することが明らかとなった。とりわけ、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム100重量部当たりラウリル硫酸ナトリウムを20〜500重量部の割合で使用した場合には、泡積りの持続性が顕著に向上し、特に、50〜500重量部の割合で使用した場合には、120秒後の泡積りの持続性の相対値が95%以上となり、泡積りの持続性が顕著に向上することも確認された。なお、参考例1〜5の義歯洗浄剤の最大泡積り量は、いずれも、高い値を示していた。
【0059】
【表1】

【0060】
参考試験例2
参考試験例1と同様の方法で、表2に示す組成の錠剤状の義歯洗浄剤(1個当たり2.65g)を調製した。得られた各義歯洗浄剤1個を300mL容のメスシリンダーに入れた25℃の水180mLに投入し、泡積り量を経時的に計測し、最大泡積り量及び最大泡積り量に到達するまでの時間を測定した。また、参考試験例1と同様の方法で、120秒後の泡積りの持続性の相対値についても算出した。
【0061】
得られた結果を表2に示す。この結果から、シリカ(二酸化ケイ素)を含む参考例6〜10の義歯洗浄剤では、シリカを含まない参考例3の義歯洗浄剤に比して、泡積りの持続性を維持(120秒後の泡積りの持続性の相対値が95%以上)しながら、最大泡積り量への到達時間が短縮されると共に、最大泡積り量が向上することが明らかとなった。とりわけ、(B)及び(C)成分の総量100重量部当たり(E)成分を60〜250重量部の割合で使用した場合には、顕著に最大泡積り量への到達時間が短縮されると共に、最大泡積り量が向上した。
【0062】
【表2】

【0063】
試験例1
(A)発泡剤、(B)アルキルスルホ酢酸塩、(C)アルキル硫酸塩、及び(D)テルペノイドを含有する義歯洗浄剤において、テルペノイドの種類を変えて、洗浄後の泡積りの消失作用について評価した。具体的には、表3に示す組成の錠剤状の義歯洗浄剤(1個当たり2.65g)を参考試験例1と同様の方法で調製しし、得られた各義歯洗浄剤1個を300mL容のメスシリンダーに入れた25℃の水180mLに投入し、義歯洗浄剤の投入から4時間後の泡積り量を計測した。
【0064】
【表3】

【0065】
上記組成の義歯洗浄剤を用いて計測された4時間後の泡積り量(単位:mL)を下表4に示す。表4に示されるように、実施例1〜10の義歯洗浄剤は、いずれのテルペノイド含有量でも、テルペノイドを含有しない比較例1に比べて4時間後の泡積り量が低下していた。即ち、発泡剤、アルキルスルホ酢酸塩、及びアルキル硫酸塩を含有する義歯洗浄剤において、テルペノイドを含有させることにより、洗浄後、速やかに泡積りが消失することが示された。また、テルペノイドを0.6重量%以上含有させることにより、洗浄後の泡積りを消失する作用が強まり、特にテルペノイドを1重量%又は2.25重量%配合した場合には、当該泡積りの消失作用が格段顕著になることが確認された。また、テルペノイドの中でもヒドロキシル基を有するモノテルペノイド(メントール、ゲラニオール、リナロール及びボルネオール;各々実施例1、2、5、6及び9)、並びにアルデヒド基を有するモノテルペノイド(シトラール及びペリルアルデヒド;各々実施例7及び8)は、洗浄後の泡積りを消失する作用が格段顕著に発揮されることも確認された。なお、実施例1〜10及び比較例1の義歯洗浄剤の最大泡積り量は、いずれも高い値を示し、泡積りの持続性も良好であった。
【0066】
【表4】

【0067】
試験例2
参考試験例1と同様の方法で、表5に示す組成の錠剤状の義歯洗浄剤(1個当たり2.65g)を調製した。得られた各義歯洗浄剤1個を300mL容のメスシリンダーに入れた25℃の水180mLに投入し、義歯洗浄剤の投入から4時間後の泡積り量を計測した。
【0068】
得られた結果を表5に示す。また、比較対象として、参考例11(実施例1において(D)成分を1.0重量%含有する義歯洗浄剤)及び参考例12(実施例2において(D)成分を1.0重量%含有する義歯洗浄剤)の結果も併せて示す。この結果から、(E)二酸化ケイ素を含有させた実施例11及び実施例12の義歯洗浄剤では、義歯洗浄剤投入4時間後の泡積りを更に低減できており、汚れを含んだ泡が容器壁面に残り難く、汚れが容器壁面に斑状に残る(輪染みになる)ことを防ぐことができることが明らかとなった。なお、実施例11及び実施例12の義歯洗浄剤の最大泡積り量は、いずれも高い値を示し、泡積りの持続性も良好であった。
【0069】
【表5】

【0070】
処方例1〜20
表6〜7に示す処方例に従い、参考試験例1と同様の方法で錠剤状の義歯洗浄剤(1個当たり2.65g)を調製した。これらの錠剤状の義歯洗浄剤について、参考試験例1と同様に、「最大泡積り量」及び「泡積りの持続性」の評価を行なったところ、いずれも、優れた効果が認められた。更に、これらの錠剤状の義歯洗浄剤について、上記試験例1と同様に「義歯洗浄剤の投入から4時間後の泡積り量」の計測を行なったところ、いずれも洗浄後の泡積りを消失する作用が優れていることが確認された。とくに、テルペノイドを含有する義歯洗浄剤に、シリカを含有させた場合(処方例1〜20)には、さらに泡積りの消失効果が更に高まった。また、義歯洗浄剤を調製する際に、あらかじめテルペノイドをシリカに含浸させると、テルペノイドをシリカに含浸させない場合に比べて泡積りの持続性が高まった。
【0071】
【表6】

【0072】
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)発泡剤、(B)アルキルスルホ酢酸塩、(C)アルキル硫酸塩、及び(D)テルペノイドを含有することを特徴とする、義歯洗浄剤。
【請求項2】
(D)テルペノイドが、少なくとも1つの極性基を有する、請求項1に記載の義歯洗浄剤。
【請求項3】
(D)テルペノイドが、モノテルペノイドである請求項1又は2に記載の義歯洗浄剤。
【請求項4】
(D)テルペノイドが、リモネン、メントン、メントール、ゲラニオール、リナロール、ボルネオール、ペリルアルデヒド、シトラール及びカンフルからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれかに記載の義歯洗浄剤。
【請求項5】
(B)アルキルスルホ酢酸塩100重量部当たり、(C)アルキル硫酸塩を20〜500重量部の比率で含有する、請求項1〜4のいずれかに記載の義歯洗浄剤。
【請求項6】
(D)テルペノイドを0.1〜5重量%の割合で含有する、請求項1〜5のいずれかに記載の義歯洗浄剤。
【請求項7】
更に(E)シリカを含む、請求項1〜6のいずれかに記載の義歯洗浄剤。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の義歯洗浄剤を入れた水に、義歯を浸積することを特徴とする、義歯の洗浄方法。

【公開番号】特開2013−100259(P2013−100259A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−210734(P2012−210734)
【出願日】平成24年9月25日(2012.9.25)
【出願人】(000186588)小林製薬株式会社 (518)
【Fターム(参考)】