説明

義歯洗浄用液体組成物

【解決手段】(A)界面活性剤を1.0〜3.5質量%、(B)亜硫酸塩を0.5〜2.5質量%、(C)水溶性ポリリン酸塩を0.3〜2.0質量%含有し、かつ(B)/(C)の質量比が0.3〜4.0であり、25℃におけるpHが6.0〜8.5であることを特徴とする義歯洗浄用液体組成物。
【効果】上記義歯洗浄用液体組成物は、使用時に希釈を必要とせず義歯に直接適用することが可能であり、義歯金属を傷めることがなく、極めて短時間の洗浄でも義歯のステイン汚れに対して優れた除去力を発揮し、良好な保存安定性、特に長期の高温保存及び低温保存における外観安定性に優れるものであり、化学的方法とブラッシング等の物理的方法とを組み合わせて義歯のステイン汚れをより効果的に除去して義歯を清潔にし、美的外観を保持することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用時に希釈を必要とせず義歯に直接適用することができる義歯洗浄用液体組成物に関し、更に詳述すると、適用が容易で長時間の洗浄を必要とせず、しかも、義歯汚れに対して優れた除去力を発揮し、かつ良好な保存安定性を有する義歯洗浄用液体組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高齢化社会の到来にともない義歯の使用者は年々増大する傾向にある。義歯の使用にあたっては、義歯と口腔粘膜との間に食べかすが溜まり易く、健常人に比べて口腔内が不潔になり易い。特に、義歯使用者のデンチャープラーク中には、健常人のデンタルプラークと比べてカンジダ菌が多く見られ、これが義歯性口内炎の原因と考えられている。デンチャープラークは細菌の住処となり、不快な義歯臭発生の原因になると共に、歯石発生の根本原因ともなり、頑固な汚れを形成する。しかしながら、デンチャープラークもデンタルプラークもその生成メカニズムは同じと考えられており、基本的にはプラークとして同様のものと考えられている。
【0003】
義歯の汚れはこのデンチャープラークの他にも食物残渣、ステイン(着色沈着物)、歯石等に起因し、これらを洗浄するために、ブラッシング及び義歯洗浄剤による洗浄のいずれか又はこれらの両方が行われる。義歯は、歯のみならず口蓋粘膜や歯肉が樹脂や金属で造られているため、汚れの対象となる面積が広く、汚れも目立ち易い。特にステインの付着は衛生的・美的観点からも好ましくなく、義歯洗浄剤の大きなターゲットとなっている。
【0004】
通常、義歯の洗浄に用いられる義歯洗浄剤は、漂白剤を主成分とし、界面活性剤、酵素、賦形剤、滑沢剤等が添加され、更に炭酸塩及び有機酸等が加えられて溶解時に発泡するようにした発泡錠タイプのものが主流である。また、過炭酸、過ホウ酸等の漂白剤はそれ自体殺菌作用を持つが、その効果は十分なものではないため、これに代えて、溶菌作用を持つ酵素や殺菌剤を配合することも多い。
【0005】
発泡する義歯洗浄剤として、例えば酸塩基反応により発泡する有機酸及び炭酸塩と、界面活性剤とを含有する固体の義歯洗浄剤が提案されている(特許文献1参照)。しかし、当該技術のような固体タイプの洗浄剤は、1回分単位で個装されており、部分床義歯のように義歯の大きさが個人で大きく異なる場合に使用量の調節ができないため、使用者の不満となることが多い。また、水で希釈して一定時間義歯を洗浄液に浸漬しなければならず、洗浄に手間がかかる上、更に記載されている濃度範囲でかつ浸漬洗浄の化学洗浄だけでは洗浄力が不十分であり、ステイン汚れを除去する効果は低い。
【0006】
特定の抗菌性金属塩を含有するアミノ酸化合物に上記のような発泡する洗浄剤組成物を組合せた技術も提案されている(特許文献2参照)。しかし、当該技術は特定の抗菌性金属塩により短時間の浸漬で除菌性は向上するが、使用時には漂白剤成分がかなり低濃度に希釈されてしまうため、ステイン汚れに対する除去力は低い。
【0007】
室温から低温領域で有効に作用する酵素を配合した洗浄剤組成物も提案されている(特許文献3参照)。しかし、当該技術は酵素以外の成分を特定しておらず、酵素のみではステイン汚れに対する除去力は低い。なお、特許文献3には、実施例に亜硫酸ナトリウムの配合が示されているが、亜硫酸ナトリウムの使用時の濃度が記載されている範囲では短時間の処理で十分なステイン除去力を発現させることができない。
仮に特許文献2及び3に提案されている組成物を液体製剤として希釈せずに直接使用した場合には、高濃度の界面活性剤により製剤の低温安定性が低下する。
【0008】
また、ヨウ素イオンを生成する化合物に亜硫酸イオン等の変色防止剤、亜硫酸塩等の漂白剤、界面活性剤、蛋白分解酵素、除菌・殺菌成分等を配合した組成物が特許文献4に記載されている。しかし、特許文献4では水溶性ポリリン酸塩が配合されておらず、亜硫酸塩単独では短時間の処理で優れたステイン除去力を発揮することができない。また、当該技術は粉末製剤に関するものであり、安定性についての記載はなく、安定な液体製剤を確保することは困難と考えられる。
【0009】
かかる点から、過酸化物や漂白剤を含まずに義歯への適用が容易で長時間の洗浄時間を必要としない泡状の形態で分配される義歯洗浄剤が提案されている(特許文献5)。しかし、当該技術は約50〜99%w/wの水相と、約1〜50重量%w/wの水非混和性油相を含む準安定なエマルジョンであり、使用前に振り混ぜないと分離しているため、保存中の外観安定性が低く、効果を均一に持続させることが難しい。また、油相が多いために義歯に適用してブラッシングしている間にヌルつき等の不具合を感じる可能性がある。更に、亜硫酸塩などの漂白剤を含まず、洗浄液のpHも低いために、ブラッシングを併用してもステイン汚れに対する除去力は低い。
【0010】
従って、適用が容易で長時間の洗浄を必要とせず、かつ義歯金属を傷めずに義歯に対して優れたステイン除去力を発揮し、保存安定性も良好な義歯洗浄用組成物が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平11−181500号公報
【特許文献2】特開2007−269633号公報
【特許文献3】特開平9−299084号公報
【特許文献4】特開2003−96579号公報
【特許文献5】特開2007−254471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、義歯に直接適用することができ、長時間の洗浄を必要としないために短時間かつ簡単な洗浄ができる上、義歯金属を傷めることなく義歯に対して優れたステイン除去力を発揮し、かつ良好な保存安定性を有する義歯洗浄用液体組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、(A)界面活性剤と、(B)亜硫酸塩と、(C)水溶性ポリリン酸塩とを特定割合で配合し、pH調整剤を配合して25℃におけるpHを6.0〜8.5とすることにより、使用時に希釈することなく義歯に直接適用し、短時間かつ簡単な洗浄で、義歯のステイン汚れを効果的に除去できる上、義歯金属を傷めることがなく、高温又は低温保存後における良好な外観安定性を有する義歯洗浄用液体組成物が得られることを見出し、本発明をなすに至った。
【0014】
また、(A)界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤及び/又はノニオン性界面活性剤、特にアニオン性界面活性剤としてはポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩及び/又はアルキル硫酸塩、ノニオン性界面活性剤としてはポリオキシエチレンアルキルエーテル及び/又はポリオキシエチレン硬化ヒマシ油が好適であり、とりわけポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩とポリオキシエチレンアルキルエーテル及び/又はポリオキシエチレン硬化ヒマシ油との組み合わせが好適である。これら界面活性剤の併用により、義歯のステイン汚れを除去する効果、高温又は低温保存後における外観安定性が良好であるだけでなく、洗浄後の水すすぎ性が向上し、使用性を有効に改善することができる。
【0015】
本発明の義歯洗浄用液体組成物に、更に、(D)エタノール及び/又は(E)ポリオールを配合することにより、組成物の保存安定性をより向上させることができる。また更に、(F)エチレンジアミン四酢酸塩を配合することにより、ステイン除去力をより向上させることができる。
【0016】
なお、上記したように従来技術では、固体タイプの義歯洗浄剤を水で溶解・希釈する工程が必要で洗浄操作が面倒であったり、各成分の配合量が不適切で上記課題を解決することは難しく、適用が容易で長時間の洗浄を必要とせず簡単かつ短時間に義歯を洗浄でき、しかも、義歯金属を傷めることなく義歯に対して優れたステイン除去力を発揮し、保存安定性も良好な製剤を得ることは困難であったのに対して、本発明の義歯洗浄用液体組成物は、(A)〜(C)成分を特定の濃度範囲で配合し、(B)成分/(C)成分の配合比を特定の割合とし、更に25℃におけるpHが6.0〜8.5となるように調整することによって、使用時に希釈しないで義歯に直接適用することができ、長時間の洗浄を必要としないために短時間かつ簡単に洗浄可能で、義歯金属を傷めずに優れたステイン除去力が発揮されると共に、経時でステイン除去力が安定に保持され、外観安定性も良好で、保存安定性に優れる。
【0017】
本発明組成物は、液体製剤を原液のまま義歯に適用できるので、義歯の大きさなどに応じて洗浄時の製剤の使用量を適宜簡単に調整できる。更に、本発明の義歯洗浄用液体組成物は、亜硫酸塩と水溶性ポリリン酸塩の併用による化学的方法とブラッシング等の物理的方法とを組み合わせることができ、義歯のステイン汚れを効果的に除去でき、義歯を簡単かつ短時間で清潔にし、美的外観を保持することが可能である。
【0018】
従って、本発明は、下記の義歯洗浄用液体組成物を提供する。
請求項1:
(A)界面活性剤を1.0〜3.5質量%、(B)亜硫酸塩を0.5〜2.5質量%、(C)水溶性ポリリン酸塩を0.3〜2.0質量%含有し、かつ(B)/(C)の質量比が0.3〜4.0であり、25℃におけるpHが6.0〜8.5であることを特徴とする義歯洗浄用液体組成物。
請求項2:
(A)界面活性剤が、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油から選ばれる1種又は2種以上である請求項1記載の義歯洗浄用液体組成物。
請求項3:
更に、(D)エタノール及び/又は(E)ポリオールを含有する請求項1又は2記載の義歯洗浄用液体組成物。
請求項4:
更に、(F)エチレンジアミン四酢酸塩を含有する請求項1、2又は3記載の義歯洗浄用液体組成物。
【発明の効果】
【0019】
本発明の義歯洗浄用液体組成物は、使用時に希釈を必要とせず義歯に直接適用することが可能であり、義歯金属を傷めることがなく、極めて短時間の洗浄でも義歯のステイン汚れに対して優れた除去力を発揮し、良好な保存安定性、特に高温保存及び低温保存における外観安定性に優れるものであり、化学的方法とブラッシング等の物理的方法とを組み合わせて義歯のステイン汚れをより効果的に除去して義歯を清潔にし、美的外観を保持することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明について更に詳細な説明をする。
本発明の義歯洗浄用液体組成物は、(A)界面活性剤、(B)亜硫酸塩、(C)水溶性ポリリン酸塩を含有してなり、更に、(D)エタノール、(E)ポリオール、(F)エチレンジアミン四酢酸塩を含有することができる。
【0021】
本発明において(A)界面活性剤は、通常、口腔用組成物に使用される界面活性剤であれば特に限定されず、公知のアニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤を単独で、もしくは2種以上を組み合わせて用いることができる。例えば下記の界面活性剤などが挙げられる。
【0022】
アニオン性界面活性剤としては、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル硫酸エステル塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキル(又はアルコキシ)ナフタレンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、アルキルエーテルスルホン酸塩、アルキル(又はホルマリン縮合物)−β−ナフタレンスルホン酸又はその塩、高級アルコールリン酸モノエステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸又はその塩、ポリオキシアルキレンフェニルエーテルリン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、アルカノイルザルコシン、アルカノイルザルコシネート、アルカノイルメチルアラニン塩、N−アシルスルホカルボン酸塩、アルキルスルホ酢酸塩、アシルメチルタウリン酸塩、アルキル脂肪酸グリセリン硫酸エステル塩、硬化ヤシ油脂肪酸グリセリル硫酸塩、アルキルスルホカルボン酸エステル塩、アルキルスルホコハク酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルポリオキシエチレンスルホコハク酸塩、アミドポリオキシエチレンスルホコハク酸塩、スルホコハク酸モノオレイルアミド塩、脂肪酸セッケン系界面活性剤等を配合することができるが、中でもアルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩が好適である。上記の塩にはナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、トリエタノールアミン塩、アンモニウム塩等が含まれる。
【0023】
カチオン性界面活性剤としては、テトラ低級アルキルアンモニウムハライド、アルキルトリメチルアンモニウムハライド、ヒドロキシエチルアルキルイミダゾリン、ポリオキシエチレンアルキルメチルアンモニウムハライド、アルキルベンザルコニウムハライド、ジアルキルジメチルアンモニウムハライド、アルキルジメチルベンジルアンモニウムハライド、アルキルアミン塩酸塩、アルキルアミン酢酸塩、アルキルアミンオレイン酸塩、アルキルアミノエチルグリシン、アルキルピリジニウムハライド等を配合することができる。また、カチオン性界面活性剤は殺菌成分として配合してもよい。
【0024】
ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(又はエステル)、ポリオキシアルキレンフェニル(又はアルキルフェニル)エーテル、ポリオキシアルキレンナフチル(又はアルキルナフトチル)エーテル、ポリオキシアルキレンスチレン化フェニルエーテル(又は該フェニル基に更にポリオキシアルキレン鎖を付加したポリオキシアルキレンスチレン化フェニルエーテル)、ポリオキシアルキレンビスフェノールエーテル、ポリオキシエチレンアルキレンソルビット脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルアミン、エチレンジアミンのポリオキシアルキレン縮合物、ポリオキシアルキレン脂肪酸アミド、ポリオキシアルキレンヒマシ油、ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルホルマリン縮合物、グリセリン(又はポリグリセリン)脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ソルビタンモノ(又はセスキ、又はトリ)脂肪酸エステル、高級脂肪酸モノ(ジ)エタノールアミド、アルキル・アルキロールアミド、オキシエチレンアルキルアミン等が挙げられる。中でもポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油が好適である。
【0025】
両性界面活性剤としては、2−アルキル−N−カルボキシメチル(又はエチル)−N−ヒドロキシエチル(又はメチル)イミダゾリニウムベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル(又はエチル)−N−カルボキシメチルオキシエチルイミダゾリニウムベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル(又はエチル)−N−ヒドロキシエチル(又はメチル)イミダゾリン、ジメチルアルキルベタイン、N−アルキル−β−アミノプロピオン酸又はその塩、アルキル(ポリ)アミノエチルグリシン、N−アルキル−N−メチル−β−アラニン又はその塩、脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン等を配合することができる。上記の塩としては、アルカリ金属塩、トリエタノールアミン塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
【0026】
(A)界面活性剤としては、ステイン汚れに対する除去力、洗浄後の水すすぎ性あるいは組成物の外観安定性の点から、アニオン性界面活性剤及び/又はノニオン性界面活性剤が好ましく、アニオン性界面活性剤とノニオン性界面活性剤との併用がより好ましい。特に、アニオン性界面活性剤としてはアルキル基の炭素数が10〜16、エチレンオキサイドの平均付加モル数が1〜3のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩及び/又はアルキル硫酸塩(特にラウリル硫酸塩)、中でも上記ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩が、ノニオン性界面活性剤としてはアルキル基の炭素数が12〜20、エチレンオキサイドの平均付加モル数が10〜20のポリオキシエチレンアルキルエーテル及び/又はエチレンオキサイドの平均付加モル数が40〜100のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、中でも上記ポリオキシエチレンアルキルエーテルが好ましい。好ましい組み合わせは、アルキル基の炭素数が10〜16、エチレンオキサイドの平均付加モル数が1〜3のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩と、アルキル基の炭素数が12〜20、エチレンオキサイドの平均付加モル数が10〜20のポリオキシエチレンアルキルエーテル及び/又はエチレンオキサイドの平均付加モル数が40〜100のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油との組み合わせであり、更に好ましくはアルキル基の炭素数が10〜16、エチレンオキサイドの平均付加モル数が1〜3のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩とアルキル基の炭素数が12〜20、エチレンオキサイドの平均付加モル数が10〜20のポリオキシエチレンアルキルエーテルとの組み合わせである。
【0027】
(A)界面活性剤の配合量は、ステイン汚れに対する除去力、外観安定性及び洗浄後の水すすぎ性の点から、組成物全体に対して1.0〜3.5%(質量%、以下同様。)であり、好ましくは1.5〜3.0%である。配合量が1.0%未満ではステイン汚れに対する除去力が満足に発揮されない場合や、香料成分を配合している場合に低温保存下での安定性が低下する場合がある。3.5%を超えると高温あるいは低温保存下でオリや沈殿等が生成する可能性があり、外観安定性が低下する場合がある。また、界面活性剤由来のヌルつきが大きくなり、水すすぎ性が低下する可能性がある。
【0028】
(B)亜硫酸塩は、その漂白作用によりステイン除去効果を発揮する成分で、更には殺菌作用も有する。該亜硫酸塩は、水溶液中で亜硫酸イオンを放出する化合物であれば良く、具体的には、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸アンモニウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜硫酸水素アンモニウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、メタ亜硫酸カリウム、メタ重亜硫酸アンモニウム等を配合することができる。(B)亜硫酸塩としてはステイン除去力及び保存安定性の点から亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウムが好ましく、特に亜硫酸ナトリウムが好適に用いられる。
なお、亜硫酸塩の代わりに、漂白作用を有する他の過酸化物、例えば過炭酸塩、過ホウ酸塩等を用いても本発明の目的を達成することはできない。
【0029】
亜硫酸塩の配合量は、ステイン汚れに対する除去力及び外観安定性の点から、組成物全体に対して0.5〜2.5%、好ましくは0.75〜2.0%である。配合量が0.5%未満ではステイン汚れに対する除去力が満足に発揮されず、2.5%を超えると低温保存下で沈殿や塩の析出が発生し、外観安定性が低下する。
【0030】
(C)水溶性ポリリン酸塩としては、重合度n=2のピロリン酸塩、n=3のトリポリリン酸塩、n=4のテトラポリリン酸塩、高重合度のメタリン酸塩等が使用され、例えばピロリン酸二水素二ナトリウム、ピロリン酸二ナトリウム、ピロリン酸四ナトリウム、ピロリン酸カリウム、ピロリン酸二水素カルシウム、トリポリリン酸ナトリウム、トリポリリン酸カリウム、テトラポリリン酸ナトリウム、テトラポリリン酸カリウム、メタリン酸ナトリウム等が挙げられる。中でも、ステイン除去力及び外観安定性の点からピロリン酸塩(特にアルカリ金属塩)、とりわけピロリン酸二水素二ナトリウムが好ましい。
【0031】
(C)水溶性ポリリン酸塩の配合量は、ステイン除去力及び外観安定性、あるいは金属為害性の点から組成全体の0.3〜2.0%、好ましくは0.5〜1.8%である。配合量が0.3%未満ではステイン汚れに対する除去力が満足に発揮されず、2.0%を超えると低温保存下で沈殿や塩の析出が発生し、外観安定性が低下する。また、義歯金属が変色し、義歯金属為害性が低下することがある。
【0032】
(B)亜硫酸塩と(C)水溶性ポリリン酸塩との質量比は、短時間の処理で高いステイン除去力を発現させる点や外観安定性の点から、(B)/(C)が0.3〜4.0、好ましくは0.5〜3.0の範囲である。(B)/(C)が0.3〜4.0の範囲外では、低温保存下で沈殿や塩の析出が発生し、外観安定性が低下する。また、洗浄剤を繰り返し使用してもステイン汚れに対する除去力が発現しにくくなる。
【0033】
本発明の組成物は、ステイン除去力、外観安定性及び義歯金属為害性の点から、25℃におけるpHが6.0〜8.5、好ましくは6.5〜8.0、より好ましくは7.0〜7.8である。pHが6.0未満ではステイン汚れに対する除去力が低くなり、8.5を超えるとステイン除去力は高まるが、高温保存品の変色が顕著に起こったり、低温保存下で沈殿物が析出したり、外観安定性に問題が生じる場合がある。また、義歯洗浄を繰り返し行うことによる義歯材質の変質が起こる場合がある。pH値は後述の実施例と同様の方法で測定した値である。
なお、pHの調整手段として、必要に応じて水酸化ナトリウム、塩酸、リン酸又はその塩、クエン酸又はその塩、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、ホウ酸又はその塩等のpH調整剤を配合することができる。中でも水酸化ナトリウム、塩酸を用いることが好ましい。これらpH調整剤の配合量は、pHを上記範囲に調整できれば良い。
【0034】
本発明の義歯洗浄用液体組成物は、更に、組成物の長期間低温下で保存した場合の外観安定性及び洗浄後の水すすぎ性を高める目的で、(D)エタノール及び/又は(E)ポリオールを配合することができる。
【0035】
(D)エタノールを配合する場合、(D)成分の配合量は、長期保存後の外観安定性向上及びすすぎ性向上の点から、組成全体の1〜10%、特に1.5〜8%、とりわけ2〜6%が好ましい。配合量が1%未満では長期間低温下で保存した場合に沈殿や塩が析出したり、水すすぎ性向上効果が弱くなる場合がある。また、10%を超えると長期間低温下で保存した場合に沈殿や塩が析出し、外観安定性が低下する場合がある。
【0036】
(E)ポリオールとしては、例えば1,3−ブチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、エチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、エリスリトール、ソルビット等が挙げられ、中でも長期保存時の外観安定性の点からグリセリン、ソルビットが好ましい。ポリオールは1種を単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて使用してもよいが、特にグリセリンとソルビットの組み合わせが好適に使用される。
【0037】
(E)ポリオールを配合する場合、(E)ポリオールの配合量は、長期保存時の外観安定性向上及び水すすぎ性の点から組成物全体の6〜18%、特に8〜16%が好ましい。配合量が6%未満であると、長期保存時の外観安定性向上効果が満足に得られないことがあり、18%を超えると水すすぎ時に義歯のヌルつきが取れ難くなり、水すすぎ性が低下することがある。
【0038】
本発明の義歯洗浄用液体組成物は、ステイン除去力を向上させる目的で、更に(F)エチレンジアミン四酢酸塩を配合することが好ましい。
【0039】
(F)成分の配合量は、ステイン除去力の増強及び外観安定性の点から0.1〜1.5%、特に0.5〜1.0%が好ましい。配合量が0.1%未満ではステイン汚れに対する除去力の増強効果が弱く、1.5%を超えると低温保存下で外観安定性が低下する可能性がある。
【0040】
更に、ステイン除去力の増強と同時に外観安定性を良好にするために、(B)成分、(C)成分及び(F)成分の合計配合量は0.9〜4.0%、特に2.0〜3.5%の範囲内が好ましい。0.9%未満では液体で塗布又は泡状で塗布して洗浄した場合にステイン除去力が満足に発揮されない可能性があり、4.0%を超えると低温保存下で結晶が析出するなど外観安定性が低下することがある。
【0041】
本発明の義歯洗浄用液体組成物には、本発明の効果、即ちステイン汚れに対する除去力及び義歯金属為害性、保存安定性等を阻害しない範囲で、目的に応じて上記以外の他の公知成分を配合できる。任意成分としては、例えば香料、着色剤、殺菌剤、酵素等が挙げられる。
【0042】
香料としては、スペアミント油、ペパーミント油、アニス油、ユーカリ油、ウィンターグリーン油、カシア油、クローブ油、タイム油、セージ油、レモン油、オレンジ油、ハッカ油、カルダモン油、コリアンダー油、マンダリン油、ライム油、ラベンダー油、ローズマリー油、ローレル油、カモミル油、キャラウェイ油、マジョラム油、ベイ油、レモングラス油、オリガナム油、パインニードル油、シンナモンンバーク油等の天然香料、及び、メントール、メントン、カルボン、エチルブチレート、バニリン、エチルマルトール、アネトール、サリチル酸メチル、シンナミックアルデヒド、シネオール、オイゲノール、エチルバニリン、マルトール、リモネン、シトロネロール、リナロール、リナリールアセテート、メンチルアセテート、ピネン、オクチルアルデヒド、シトラール、プレゴン、カルビールアセテート、アニスアルデヒド、ジンジャーオレオレジン、クレオソール、dl−カンファー等の単品香料、更に、エチルアセテート、アリルシクロヘキサンプロピオネート、メチルアンスラニレート、エチルメチルフェニルグリシデート、ウンデカラクトン、ヘキサナール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブタノール、イソアミルアルコール等の単品香料及び/又は天然香料も含む各種調合香料等、口腔用組成物に通常用いられる公知の香料を使用することができる。
【0043】
本発明の義歯洗浄用液体組成物では、香料を配合することにより清涼感を付与することができ、使用者がより快適に義歯を洗浄したり、義歯を装着した時にサッパリ感を実感することができる。清涼感と外観安定性の点から香料の配合量は組成物全体の0.1〜1.0%が好ましい。配合量が0.1%未満では義歯を装着した時に、清涼感、サッパリ感の実感が満足に付与できず、1.0%を超えると、界面活性剤を配合しても、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテルを3.5%配合しても、低温保存時に十分な外観安定性を保つことができなかったり、高温保存時の変色が顕著に起こる場合がある。
【0044】
着色剤としては、赤色2号、赤色3号、赤色225号、赤色226号、黄色4号、黄色5号、黄色205号、青色1号、青色2号、青色201号、青色204号、緑色3号等の法定色素、カラメル色素、ベニバナ色素、クチナシ色素、コチニール色素、アナトー色素、雲母チタン、酸化チタン等が挙げられる。
【0045】
殺菌剤としては、イソプロピルメチルフェノール、チモール、トリクロサン、安息香酸又はその塩、サリチル酸又はそのエステルもしくはその塩、パラベン類(パラオキシ安息香酸エステル又はその塩)、フェノール等を用いることができる。
【0046】
本発明の義歯洗浄用液体組成物は、使用時に希釈することなく義歯にそのまま適用することができる義歯洗浄剤として使用できる。
本発明の義歯洗浄用液体組成物で部分床義歯、全部床義歯等の義歯を洗浄するには、義歯に組成物を液体で又は泡状で塗布したり、あるいはコップ等の容器に液体組成物を入れ、その中に義歯を浸漬し、液体組成物を義歯に30秒〜5分間程度接触させ、その後、手に持って使用するタイプの歯ブラシ、電動歯ブラシ、義歯ブラシ等のブラシで30秒〜3分間、特に1分間ブラッシングを行うことが推奨される。義歯洗浄用液体組成物を義歯に適用すると共にブラッシングを行うことにより、化学的作用と物理的作用とにより義歯のステイン汚れを効果的に除去できる。洗浄後は、組成物を流水で10秒〜1分間程度すすいでから義歯を装着することができる。
【0047】
本発明の義歯洗浄用液体組成物を液体で義歯に適用する場合、収容容器としては特に制限はなく、通常、口腔用組成物に適用されている収容容器に充填して用いることができる。このような容器として具体的には、ポリエチレン層、エチレンメタクリル酸共重合体層、ポリエチレンテレフタレート層、アルミニウム層、ガラス蒸着層、ポリビニルアルコール層、エチレンビニルアルコール共重合体層、アクリロニトリル共重合体層、紙、リサイクルプラスチック層からなるラミネート容器、又はポリエチレン容器、ポリエチレンテレフタレート容器、ポリプロピレン容器等が使用でき、チューブ状容器、ピロー包装等のフィルム包装容器等、液体口腔用組成物の収容に通常使用されている各種容器を使用可能である。
【0048】
また、義歯洗浄用液体組成物を泡状で義歯に適用する場合は、液体組成物を泡状で噴出させることができる容器に収容することができ、内容物に押圧力を付与することにより該内容物を空気と混合せしめてその噴出口より泡状に噴出させる収容容器、特に非エアゾール型のノンガス常圧容器に充填し、使用時に泡状にすることができる。なお、義歯洗浄用液体組成物を泡状にして義歯に適用することで、組成物が義歯に付着し易くなり、適用後に速やかにステイン除去効果が発揮され、より短時間に義歯を洗浄できる。
【0049】
本発明の義歯洗浄用液体組成物を泡状にして義歯に適用する場合、かかる容器としては、内容物を泡状に噴出させることができる構造を有しているものであれば特に制限されず、公知のスクイズ式、ディスペンサー式のもの等を使用することができる。具体的には、内容物を収容するプラスチックボトル等の容器本体と、ポンプディスペンサー等の噴出機構を有するスプレー部とを備え、容器本体の上部開口部に密着して装着されたスプレー部の押圧部を押圧することで、液ピストンとエアーピストンが同時に作動し、内容物とエアーが同時に気液混合室に供給され、混合された後に製泡メッシュを通過することで発泡し、内容物排出口(ノズル)から噴出されるものである。この場合、1回の噴出で内容物を0.5〜1.5g程度吐出できる口径のものが望ましい。
【0050】
かかる容器としては市販品を使用しても良く、例えば実公平7−6108号、実開平7−8251号、実開平4−102666号公報に記載のものなどが使用することができる。
【実施例】
【0051】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。なお、以下の例において、%は特に断らない限り質量%を意味する。
【0052】
また、原料の各成分としては、以下のものを使用した。
・ポリオキシエチレン(POE)ラウリルエーテル(エチレンオキサイド平均付加モル数15);日本エマルジョン(株)製、エマレックス715
・ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム(エチレンオキサイド平均付加モル数2);日光ケミカルズ(株)製、SBL−2N−27(27%品)
・ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム(エチレンオキサイド平均付加モル数3);日光ケミカルズ(株)製、SBL−3N−27(27%品)
・ラウリル硫酸ナトリウム;東邦化学工業(株)製、ラウリル硫酸ナトリウム
・ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(エチレンオキサイド平均付加モル数60);日光ケミカルズ(株)製、HCO−60
・ラウリン酸デカグリセリル;太陽化学(株)製、サンソフトM−12J
・ショ糖ステアリン酸エステル;三菱化学フーズ(株)製、リョートーシュガーエステルS−1570
・亜硫酸ナトリウム;日曹金属化学(株)製、精製無水亜硫酸ソーダ
・過炭酸ナトリウム;関東化学(株)製、試薬特級
・ピロリン酸二水素二ナトリウム;太平化学産業(株)製
・無水ピロリン酸四ナトリウム;太平化学産業(株)製
・トリポリリン酸ナトリウム;太平化学産業(株)製
・エデト酸二ナトリウム;ライオン(株)製、ディゾルビンNA2
・濃グリセリン;阪本薬品工業(株)製
・プロピレングリコール;昭和電工(株)製
・ソルビット液;東和化成工業(株)製(70%品)
・プロテアーゼ;ノボザイムズ社製、エバラーゼ16L
・安息香酸ナトリウム;(株)伏見製薬所製
・その他任意成分;全て日本薬局方もしくは医薬部外品原料規格適合品を使用
【0053】
[実施例、比較例]
表1〜5に示す組成の義歯洗浄用液体組成物を下記製造法により調製し、下記方法にてステイン除去力、義歯金属為害性、保存安定性(外観安定性)、水すすぎ性を評価した。結果を表1〜5に示す。
なお、表1〜5の配合量は純分換算した配合量を示した。pH調整剤として配合している水酸化ナトリウムは微量であるため、配合量をゼロとみなして水分量を算出した。
【0054】
<義歯洗浄用液体組成物の製造法>
(1)精製水中にポリリン酸塩、亜硫酸塩等を混合溶解し、添加する場合はエチレンジア
ミン四酢酸塩や安息香酸等の水溶性成分を加えて混合溶解させた。
(2)(1)に加温融解した界面活性剤を加えて均一溶解するまで十分に撹拌した。
(3)香料や油溶性殺菌剤等の油溶性成分を配合する場合には、エタノールに溶解させて
(2)の混合溶液に加えた。
(4)必要があれば1N塩酸もしくは10%水酸化ナトリウム水溶液でpHを調整して、
義歯洗浄用液体組成物を得た。
【0055】
<pH測定方法>
ガラス容器に移したサンプル溶液についてpH計(東亜電波工業(株)製、HM−30V)及びpH電極(東亜電波工業(株)製、GST−5421C)にて25℃における2分後の値を測定した。
【0056】
試験例1.ステイン汚れに対する除去力試験
義歯洗浄用液体組成物のステイン汚れに対する除去力を検証するため、タンニンステインモデルを作成し、評価を行った。
【0057】
<タンニンステインモデルの作成方法>
白色メタクリル樹脂板(20mm×20mm、パラグラス5mm、クラレ(株)製)の表面をサンドブラストで10〜15秒間研磨し、洗剤を入れたイオン交換水で超音波洗浄した後、水でよくすすいで一晩イオン交換水に浸けた。翌日、十分に乾燥して色差計で色差を測定し、平均値を算出して、アクリル白板の初期値とした。アルブミン溶液(アルブミン6.0g/1200mL)→タンニン液(日本茶50g、紅茶5パックを煮出し、濾過した後インスタントコーヒー12gを溶解、1,200mLにメスアップ)→鉄液(クエン酸鉄(III)アンモニウム6.85g/1,200mL)の順に最初の5サイクルは45℃で20分間ずつ、6サイクル目以降は50℃で10分間ずつ浸漬する操作を繰り返した。30サイクル終了後、色差を測定し、L値22前後であることを確認し、除去力試験の評価モデルとした。
【0058】
<除去力試験−1・浸漬洗浄>
評価試料(表1〜4に示す組成の義歯洗浄用液体組成物)5gにステインモデルを2分間浸漬した後、電動ブラシ(TIDE、P&G社製)を用いて1分間ブラッシングを行った。その後、流水で1分間すすぎ、よく乾かした後に色差計を用いて色差を測定した。ステイン付着後及び洗浄剤処理後の色差をそれぞれΔE1、ΔE2とし、式(1)に従ってステイン除去力を算出し、下記基準で評価した。
【0059】
式(1)
ステイン除去力(%)=((洗浄前ΔE1−洗浄後ΔE2)/洗浄前ΔE1)×100
【0060】
<評価基準>
ステイン除去力 50%以上 :◎
30%以上50%未満:○
10%以上30%未満:△
10%未満 :×
【0061】
<除去力試験−2・泡洗浄>
除去力試験−1よりも過酷な除去力試験として泡洗浄を用いた。評価試料(表5に示す組成の義歯洗浄用液体組成物)を図1に示すノンガスタイプのフォーム容器(吉野工業所製フォーマーポンプYF−9413、ディップチューブ長さ35mm、1プッシュの吐出量は約1g、容量100mLポリエチレン製ボトル)に充填し、ステインモデルに評価試料を泡状で約1g塗布し、電動ブラシを用いて1分間ブラッシングを行った。その後、流水で1分間すすぎ、よく乾かした後に色差計を用いて色差を測定した。ステイン付着後及び洗浄剤処理後の色差値から、上記式(1)に従ってステイン除去力を算出した。
【0062】
図1は、上記ノンガスタイプのフォーム容器の概略断面図であり、この容器は、内容物を収容するボトル本体aと噴霧機構を有するフォーマーポンプ部bとを備え、ボトル本体1の上部開口部に、フォーマーポンプ部bがパッキンを備えたキャップcによって密着して装着され、かつフォーマーポンプ部bは、その内容物排出機構としてポンプヘッド1、製泡メッシュ2、気液混合室3、流量を調節するボール4,エアーピストン5、エアータンク6、エアーシリンダー7、液ピストン8、液シリンダー9を備え、内容部流入路となる液シリンダー9の下部突出部がボトル本体b内に挿入されている。この容器は、ポンプヘッド1を押圧すると、エアーシリンダー7内のエアーピストン5が上下すると共にエアーシリンダー7内のエアータンク6内部の圧力差により、液ピストン8が液シリンダー9に沿って上下することによって、ボトル本体a内の内容物が、液シリンダー9の下部開口部から吸い上げられ、エアーシリンダー7内の流量を調節するボール4を介して吸い上げられ、気液混合室3と製泡メッシュ2を通って内容物排出口10から噴霧、排出されるものである。
【0063】
試験例2.義歯金属為害性試験
義歯洗浄用液体組成物について、下記方法にて義歯金属為害性を評価した。
<義歯金属為害性試験>
板状に加工した義歯金属材料の表面をサンドブラストで研磨し、評価試液(義歯洗浄用液体組成物)に浸漬させて、50℃の恒温槽で1晩保存した。保存後、評価試液から義歯材料を取り出し水洗し、乾燥した。乾燥後の義歯金属材料板の後に色差を測定した。初期の金属材料及び浸漬処理後の色差をそれぞれΔE1、ΔE2とし、式(2)に従って義歯金属為害性を算出した。
【0064】
式(2)
義歯金属為害性(%)=((浸漬前ΔE1−浸漬後ΔE2)/浸漬前ΔE1)×100
【0065】
<評価基準>
義歯金属為害性 ΔE値 3%未満 :◎
3%以上4%未満:○
4%以上6%未満:△
6%以上 :×
【0066】
試験例3.水すすぎ性
義歯洗浄用液体組成物で義歯を洗浄した場合の水すすぎ性について、下記方法で評価した。
<水すすぎ性試験>
評価溶液(義歯洗浄用液体組成物)を図1に示すノンガスタイプのフォーム容器に同様に充填し、泡状でモデル義歯に約1g塗布し、歯ブラシで1分間ブラッシングした後に流水で1分間すすいだ時の水すすぎ性について、下記基準で官能評価を行った。
【0067】
<評価基準>
洗浄時の水すすぎ性
義歯のぬるつきが10秒未満で感じられなくなる :◎
10秒以上20秒未満で感じられなくなる:○
20秒以上30秒未満で感じられなくなる:△
30秒以上すすいだ後に感じられなくなる:×
【0068】
試験例4.保存安定性試験
表1〜5に示す義歯洗浄用液体組成物について、保存安定性を下記方法で評価した。
<高温又は低温保存(3日後)での外観安定性>
義歯洗浄用液体組成物約48gを蓋付きの50mL透明PET容器に充填し、高温(50℃)又は低温(−5℃)条件下に3日間静置した後に室温に戻した時の外観安定性(組成物の均一性・沈殿物・液分離・変色)を下記基準で評価した。
【0069】
<評価基準>
◎:高温保存品及び低温保存品において、均一性、液分離、濁り、変色の全ての項目で変
化が認められなかった。
○:高温保存品及び/又は低温保存品において、均一性、液分離、濁り、変色のいずれか
の項目で品質上問題にならないレベルの変化が認められた。
△:高温及び/又は低温保存品において、均一性、液分離、濁り、変色のいずれかの項目
で品質上僅かな問題となる変化が認められた。
×:高温及び/又は低温保存品において、均一性、液分離、濁り、変色のいずれかの項目
で品質上大きな問題となるレベルの変化が認められた。
【0070】
<低温又は高温で長期保存後(1ヶ月後)の外観安定性>
義歯洗浄用液体組成物約48gを蓋付きの50mL透明PET容器に充填し、高温(50℃)又は低温(−5℃)条件下に静置して1ヶ月間保存した。保存後のサンプルを1日間室温で静置し、室温に戻した時の外観安定性(組成物の均一性・沈殿物・液分離・変色)を下記基準で評価した。
【0071】
<評価基準>
◎:高温及び低温保存品において、均一性、液分離、濁り、変色の全ての項目で変化が認
められなかった。
○:高温及び/又は低温保存品において、均一性、液分離、濁り、変色のいずれかの項目
で品質上問題にならないレベルの変化が認められた。
△:高温及び/又は低温保存品において、均一性、液分離、濁り、変色のいずれかの項目
で品質上僅かな問題となる変化が認められた。
×:高温及び/又は低温保存品において、均一性、液分離、濁り、変色のいずれかの項目
で品質上大きな問題となるレベルの変化が認められた。
【0072】
表1〜5の結果より、本発明の義歯洗浄用液体組成物は、(A)界面活性剤1.0〜3.5%、(B)亜硫酸塩0.5〜2.5%、(C)水溶性ポリリン酸塩0.3〜2.0%を含有し、かつ、(B)/(C)の配合比が0.3〜4.0であり、25℃におけるpHが6.0〜8.5であることで、ステイン除去力、外観安定性、義歯金属為害性、水すすぎ性に優れることがわかった。また、表4の結果より、(D)エタノール及び/又は(E)ポリオールを配合することで、外観安定性や水すすぎ性がより向上すること、更に、表2及び表5の結果より、(F)エチレンジアミン四酢酸塩を配合することで、ステイン除去力がより向上することがわかった。以上の結果より、本発明の義歯洗浄用液体組成物は、義歯のステイン汚れに対する除去力、義歯金属為害性、外観安定性、水すすぎ性に優れることが確認された。
【0073】
【表1】

*:表中、Naはナトリウムを示す(以下、同様)。
【0074】
【表2】

【0075】
【表3−1】

【0076】
【表3−2】

【0077】
【表4】

【0078】
【表5】


【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の実施例で使用したノンガスタイプのフォーム容器(吉野工業所製フォーマーポンプYF−9413)の概略断面図である。
【符号の説明】
【0080】
a ボトル本体
b フォーマーポンプ
c キャップ
1 ポンプヘッド
2 製泡メッシュ
3 気液混合室
4 ボール
5 エアーピストン
6 エアータンク
7 エアーシリンダー
8 液ピストン
9 液シリンダー
10 内容物排出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)界面活性剤を1.0〜3.5質量%、(B)亜硫酸塩を0.5〜2.5質量%、(C)水溶性ポリリン酸塩を0.3〜2.0質量%含有し、かつ(B)/(C)の質量比が0.3〜4.0であり、25℃におけるpHが6.0〜8.5であることを特徴とする義歯洗浄用液体組成物。
【請求項2】
(A)界面活性剤が、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油から選ばれる1種又は2種以上である請求項1記載の義歯洗浄用液体組成物。
【請求項3】
更に、(D)エタノール及び/又は(E)ポリオールを含有する請求項1又は2記載の義歯洗浄用液体組成物。
【請求項4】
更に、(F)エチレンジアミン四酢酸塩を含有する請求項1、2又は3記載の義歯洗浄用液体組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2010−168352(P2010−168352A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−279697(P2009−279697)
【出願日】平成21年12月9日(2009.12.9)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】