説明

羽、羽の製造方法、およびその羽を備えた移動装置

【課題】 CFRP等の質量が小さくかつ剛性が高い繊維複合材料を用いながら、所望の剛性分布が得られるような設計の自由度が高い構造からなる羽およびその製造方法を提供する。
【解決手段】 羽面部3は、繊維軸が第1の方向に延びる第1のCFRP層、第1の方向に対して60度ずれた第2の方向に繊維軸が延びる第2のCFRP層、および、第2の方向に対して60度ずれた第3の方向に繊維軸が延びる第3のCFRP層の積層構造からなる。第1のCFRP層においては、第1方向に沿って延びる複数の細長板状部7が互いに間隔をおいて並んでいる。第2のCFRP層においては、第2方向に沿って延びる複数の細長板状部8が互いに間隔をおいて並んでいる。第3のCFRP層においては、第3方向に沿って延びる複数の細長板状部9が互いに間隔をおいて並んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、羽ばたき運動によって所定の流体力を生み出しながら浮上移動する移動装置の羽、羽の製造方法、およびその羽を備えた移動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
小型の羽ばたきロボットによる羽ばたき飛行を実現させるためには、質量が小さくかつ剛性が高い羽を製造することが不可欠である。Ron Fearingらは、ハエの羽の動きを模倣した羽ばたき運動を得る手法を考案している。その手法は、次の非特許文献に開示されており、その手法においては、2自由度を有するピエゾバイモルフアクチュエータにリンク機構が設けられている。
【非特許文献1】論文” Lift Force Improvements for the Micromechanical Flying Insect” (S. Avadhanula, R. J. Wood, E. Steltz, J. Yan and R. S. Fearing, Proceedings of IEEE Int. Conf. on Intelligent Robots and Systems, Oct 28-30, 2003, Las Vegas NV, vol. 1, no. 3, pp. 221-238, 2002). 前述の論文においては、炭素繊維強化樹脂(CFRP:Carbon-Fiber Reinforced Plastics)のチューブで形成された枠部の内側にポリイミドのフィルムを張ることによって、非常に軽量な羽を製造することができることが記載されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記の論文に記載されているような手法では、羽ばたき飛行を実現し得る軽量な羽の材料は非常に限定されてしまう。そのため、羽ばたき飛行ロボットの羽に適した材料を選択することができない。上記の手法によれば、たとえば、CFRP等の樹脂と繊維との複合材料を用いた場合には、羽の設計の自由度が極めて低くなるとともに、羽の強度が低くなってしまう、という問題が生じる。さらに、所望の剛性分布を有する羽の製造は殆ど不可能である、という問題も生じる。
【0004】
以下、前述の問題点を表1を用いてより具体的に説明する。なお、表1は、羽を構成する各種材料の剛性と比重とを示している。
【0005】
【表1】

【0006】
表1に示される各種の材料の比重と剛性との関係から、CFRPは単位剛性あたりの質量が小さく、羽ばたき飛行ロボットの羽として非常に望ましい材料であることが分かる。しかしながら、CFRP層は、カーボン繊維の太さが10μm程度あるため、たとえ単一方向にカーボンの繊維軸が延びるものであっても、20μm程度までしかその厚さを薄くすることができない。また、CFRPの曲げ剛性は、繊維軸が延びる方向を含む平面内の曲げ変形以外の曲げ変形に対しては、樹脂そのものの曲げ剛性とほぼ同一である、すなわち、非常に低い。一方、CFRPは、複数方向にカーボンの繊維軸が延びるものであれば、剛性が高くなるが、複数方向にカーボン繊維が延びるCFRPを用いて形成された羽は、厚みおよび質量の双方が大きくなってしまう。
【0007】
上記のFearingらの論文においては、異なる方向に延びる複数のCFRPのチューブ同士を互いに接着して枠部を形成し、この枠部の内側にポリイミドのフィルムを張ることによって、可能な限り羽の剛性の低下を抑制している。しかしながら、この構成では、接着部分の強度が不足する。
【0008】
前述の論文においては、羽を支持するロボットの本体構造の質量が小さく、かつ、枠部内に張られたフィルムの面積も小さいため、上記の構成が用いられても、羽の強度の条件が満足されている。しかしながら、羽のサイズが大きくなるにしたがって、前述の接着部分の強度を維持することが困難になるとともに、前述の枠部とフィルムとの接合部に応力集中が生じ、前述のフィルムが破れてしまうという問題が生じる。この問題を解消するために、前述のチューブを、枠部の内側にも張り巡らせることが有効である。しかしながら、太さdのチューブは幅2π×dの幅のCFRPの平板を丸めたものであるため、そのチューブを用いて製造された羽は、極端なに大きな質量を有することになってしまう。
【0009】
また、CFRP層は繊維と樹脂との複合材料であるため、厚み分布によって剛性分布を変化させる場合には、羽の厚さが、繊維径によって決定されるCFRP層の最小の厚さの整数倍に限定されてしまう。また、羽の曲げ剛性は、厚さの3乗に比例する。そのため、単にCFRP層を複数重ねた構造の羽の剛性は、CFRPが1層、2層、3層、と順次重ねられるにしたがって、1倍、8倍、27倍、と急激に増加してしまう。そのため、この手法によっては、所望の曲げ剛性分布を有する羽を製造することは、ほぼ不可能であると思われる。
【0010】
つまり、従来においては、質量が小さく、所定の変形モードに対する剛性が高く、かつ、設計の自由度が高い構造の羽は存在しなかった。
【0011】
本発明は、上記の問題を鑑みてなされたものであり、その目的は、質量が小さく、所定の変形モードに対する剛性が高く、かつ、設計の自由度が高い構造の羽、羽の製造方法、およびその羽を備えた移動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の羽は、直接的にまたは他の部材を介して間接的に重なるように設けられた複数の繊維複合材料層を備えている。複数の繊維複合材料層のうちの少なくとも2以上の層は、それぞれの層の主たる繊維軸が互いに異なる方向に延びている。2以上の層のうちの少なくともいずれか1つの層は、互いに間隔をおいて並んでいる複数の細長板状部を有している。複数の細長板状部のそれぞれは、繊維軸の方向に沿って延びている。この構成によれば、細長板状部の幅を変更することによって、所望の剛性分布を有する羽を製造することができるため、羽の設計の自由度が大きくなる。したがって、質量が小さく、かつ、所定の変形モードに対する所望の剛性が高い羽を製造することが可能になる。
【0013】
また、複数の細長板状部のそれぞれの長手方向の2辺のうちの少なくともいずれか一方が繊維軸の方向と平行に設けられていれば、繊維の強度を有効に利用して、繊維複合材料層の単位質量あたりの剛性を高くすることができる。
【0014】
また、2以上の層のうちの少なくともいずれか1つの層の複数の細長板状部が羽の長手方向に沿って延びていれば、羽に最も大きい荷重がかかる変形モードに対して高い剛性を有する羽を製造することが可能なる。
【0015】
また、前述の2以上の層は、2つの層からなっていてもよい。その2つの層のうちの1つの層においては、複数の細長板状部が、第1方向に沿って延びており、2つの層のうちの他の層においては、複数の細長板状部が、第2方向に沿って延びていてもよい。この場合には、第1の方向と第2の方向とが直交していることが望ましい。この構成によれば、主要な変形モードに対して高い剛性を有する羽を極めて簡単に製造することが可能になる。
【0016】
また、第1の方向および第2の方向のそれぞれが羽の長手方向と45度の角度をなしていれば、羽ばたき運動の主要な変形モードである、長手方向を含む面内の曲げ変形、および、長手方向に直交する方向を含む面内の曲げ変形の双方に対して、高い剛性を有する羽を製造することが可能になる。
【0017】
また、2以上の層は、3つの層からなっていてもよい。3つの層のうちの第1の層においては、複数の細長板状部が、第1方向に沿って延びており、3つの層のうちの第2の層においては、複数の細長板状部が、第2方向に沿って延びており、3つの層のうちの第3の層においては、複数の細長板状部が、第3方向に沿って延びていてもよい。この場合には、第1の方向、第2の方向、および第3の方向が、互いに60度の角度をなしていることが望ましい。これによれば、羽の面内方向の剪断変形に対して高い剛性を有する羽を得ることができる。
【0018】
また、複数の繊維複合材料層のうちの少なくとも2以上の層は、それぞれ、羽の前縁部を構成する部分を有することが望ましい。これによれば、前縁部の剛性をより簡単に高くすることができる。
【0019】
また、2以上の層のうちの少なくともいずれか1つの層の厚さが均一であれば、その層の複数の細長板状部のそれぞれの幅を変更するだけで、所定の変形モードに対して所望の剛性を有する羽を容易に製造することができる。
【0020】
また、複数の繊維複合部材層のうちの少なくともいずれか1つの層が羽の外周部を構成する枠部の一部を有していれば、繊維複合材料層の一部を利用して、容易に羽の枠部を形成することができる。
【0021】
また、羽を構成する枠部が複数の繊維複合部材層のうちの少なくともいずれか1つの層の一部をその面内方向において曲げることによって形成された羽であれば、容易に羽に枠を付加することができるため、羽の剛性分布を多様化させることが容易になる。
【0022】
また、羽が複数の細長板状部によって支持されているフィルムをさらに備えていることが望ましい。これによれば、フィルムを有しない羽であって、複数の細長板状部が設けられていない複数の繊維複合材料層が重ねられた後に平面的に見て複数の細長板状部に相当する部分以外の部分を切り取った羽に比較して、空力特性が同一であって、かつ、軽量な羽を製造することが可能になる。
【0023】
また、フィルムは、その耐熱温度が複数の繊維複合材料層の成形温度よりも高いことが望ましい。これによれば、羽を熱間成形することができるため、複雑な形状の羽を容易に製造することができる。
【0024】
また、フィルムは、複数の繊維複合材料層と親和性を有していれば、羽の製造時にフィルムと複数の繊維複合材料層とを一体成形することが可能になる。
【0025】
また、フィルムは、複数の繊維複合材料層のうちのいずれか2つの層に挟まれていれば、フィルムが表裏の双方から支持されるため、フィルムの剥離を防止することができる。
【0026】
また、複数の繊維複合材料層のそれぞれがCFRPからなっていれば、軽量かつ剛性が高い羽を容易に製造することが可能になる。
【0027】
上述の羽の製造方法においては、複数の細長板状部が等間隔で平行に並んでおり、複数の繊維複合材料のそれぞれの細長板状部以外の部分全体の所定の方向を含む面内の曲げに対する剛性がE0であり、複数の細長板状部が位置する領域の部分全体の所定の方向を含む面内の曲げに対する剛性がE1である場合に、細長板状部の幅D1と細長板状部同士のピッチD0との比D1/D0がE1/E0であることが望ましい。これによれば、細長板状部の幅を変更することのみによって、羽の剛性分布を変更することができるため、所定の変形モードに対して所望の剛性を有する羽を容易に製造することが可能になる。
【0028】
また、前述の羽の製造方法は、複数の繊維複合材料層のそれぞれに対応する複数のプレプリグを含む原材料を金型の上に重ねて載置するステップと、その原材料を焼結することによって羽を成形するステップとを備えている。この製法によれば、立体形状、すなわち、所望の曲面形状を有する羽を容易に形成することが可能になる。
【0029】
さらに、その方法においては、前述の原材料がフィルムを含んでいることが望ましい。
【0030】
本発明の移動装置は、流体が存在する空間を羽ばたくための羽部と、羽部が接続された駆動機構部と、駆動機構部および羽部を所定の方向に往復回転運動させる駆動部と、駆動機構部および駆動部が搭載された本体とを備えている。その羽部は、前述の本発明の羽によって構成されている。駆動部は、駆動機構部を介して、羽部に羽ばたき動作をさせる。前述の本発明の羽は、軽量かつ所定の変形モードに対する所望の剛性を得ることが容易であるため、羽ばたき動作を行なう移動装置の羽に適している。つまり、本発明の羽を備えた移動装置の浮上移動が実現され易くなる。
【0031】
また、前述の駆動部は、駆動機構部を動作させることによって、羽部を、所定の方向に往復回転運動させるとともに、羽部の長手方向を回転中心軸として往復回転運動させるものであることが望ましい。前述の羽は、羽ばたき運動を行なう移動装置の中でも、特に、このような羽ばたき動作をする移動装置の羽に特に適している。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、質量が小さく、所定の方向の剛性が高く、かつ、設計の自由度が高い構造の羽、その製造方法、およびそれを備えた移動装置を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態の羽およびその製造方法を、図1〜図11を用いて説明する。
【0034】
以後、図1〜図11の各図においては、羽1の長手方向外側(アクチュエータ接合部6とは逆側の羽1の先端側)をX軸正方向と定義し、X軸に直交する方向であって、羽ばたき運動における羽の進行方向をY軸正方向と定義する。また、必要に応じて、Y軸正方向を前方といい、Y軸負方向を後方という。
【0035】
なお、本発明の羽1を用いて行なわれれば特に有利な羽ばたき運動は、羽1を切返しながら行なう前後方向の往復運動である。この羽ばたき運動においては、羽の進行方向は切返しの際に反転するが、その際には、羽の前縁と後縁とが入れ替わる。そのため、上記定義における前後方向と羽ばたき運動中の羽1の前方後方とは一致する。したがって、以後、前述の定義のみを用いて羽1の説明を行なう。
【0036】
特に、各実施の形態においては、羽を最大限に軽量化するため、単一方向に一層のみの繊維が延びるCRFP層、すなわち、複数の繊維が、厚さ方向に重なることなく、一つの平面内において並んでいる、厚さ20μmのCFRP層が、複数積層された羽についての説明を行なう。
【0037】
(実施の形態1)
まず、本発明の実施の形態1の羽を、図1〜図6を用いて説明する。なお、本実施の形態の羽1によれば、主たる繊維軸がそれぞれ60度ずつずれた3つのCFRP層が用いられることによって、羽面部3の剛性の異方性が低下されている。
【0038】
<全体の構成>
羽1は、図1および図2に示されるように、略矩形の細長い形状であり、長さが65mmであり、かつ、幅が16mmである。羽1は、前縁部2、羽面部3、枠部4、枝部5、およびアクチュエータ(後述する駆動機構部)接合部6を有している。なお、羽面部3とは、前縁部2、枠部4、枝部5、およびアクチュエータ接合部6以外の部分であって、細長板状部7、8、および9とポリエステルフィルム14とからなる部分である。
【0039】
羽1は、図3〜図5に示すように、厚さ20μmのCFRP層11、12、および13が積層されたものである。CFRP層11、12、および13は、それぞれ、一体的に形成された1枚の部材からなる。また、CFRP層11および12の間には、ポリエステルフィルム14が挟まれている。CFRP層11、12、および13のそれぞれにおいては、単一方向にカーボン繊維の繊維軸が延びている。また、CFRP層11、12、および13の繊維軸の方向は、それぞれ、x軸正方向を0度として、−60度、0度、+60度である。図3に示す細長板状部7は、CFRP層11の繊維軸の方向に沿って延びている。図4に示す細長板状部8は、CFRP層12の繊維軸の方向に沿って延びている。図5に示す細長板状部9は、CFRP層13の繊維軸の方向に沿って延びている。
【0040】
また、羽1の前側端部には、他の部分より剛性が高い前縁部2が設けられている。前縁部2は、CFRP層11、12、および13のそれぞれに設けられている。CFRP層11および12のそれぞれの前縁部2には、一体的に枠部4が設けられている。また、CFRP層12には、一体的に枝部5が設けられている。CFRP層13には、枠部4が設けられている。CFRP層13の枠部4は、図5においては、分離されているが、前縁部2に一体的に設けられていてもよい。
【0041】
また、アクチュエータ接合部6、前縁部2、枠部4、および枝部5に囲まれるように羽面部3が設けられている。また、図3に示すように、CFRP層11の前縁部2から延びるように、複数の細長板状部7が設けられている。また、図4に示すように、CFRP層12の前縁部2から延びるように、複数の細長板状部8が設けられている。また、図5に示すように、CFRP層13の前縁部2から延びるように、複数の細長板状部9が設けられている。複数の細長板状部7のそれぞれは、CFRP層11の前縁部2と連続的に設けられている。複数の細長板状部8のそれぞれは、CFRP層12の前縁部2と連続的に設けられている。複数の細長板状部9のそれぞれは、CFRP層13の前縁部2と連続的に設けられている。
【0042】
羽面部3は、図3〜図5に示すまた、羽1の根元には、羽1を駆動するための駆動機構部および駆動部と接合されるアクチュエータ接合部6が設けられており、その長さは15mmである。
【0043】
また、図3〜図5に示すように、複数の細長板状部7のそれぞれは同一幅であり、複数の細長板状部7同士は、互いに同一ピッチでかつ平行に設けられている。また、複数の細長板状部8のそれぞれは同一幅であり、複数の細長板状部8同士は、互いに同一ピッチでかつ平行に設けられている。複数の細長板状部9のそれぞれは同一幅であり、複数の細長板状部9同士は、互いに同一ピッチでかつ平行に設けられている。また、図1に示すように、細長板状部7、8、および9によって形成されるトラスの内側の領域には、ポリエステルフィルム14のみが存在する。
【0044】
<前縁部>
前縁部2は、図1に示されるように、羽1の長手方向に沿って延びる溝構造、すなわちコルゲーションと呼ばれる凹凸形状を有しているため、長手方向を含む面内の曲げ変形に対する剛性が、長手方向を回転中心軸とする曲げ変形に対する剛性に比較して、高くなっている。なお、この前縁部2の凹凸形状は、プリプレグと呼ばれるCFRP層の原材料のシートを、この凹凸形状に対応する金型に密着させた状態で加熱することによって容易に成形され得る。また、前縁部2には荷重が大きくかかる。そのため、CFRP層11、12、および13のそれぞれの前縁部2は、細長板状部が設けられていない構造、すなわち隙間がない密実な構造であるので、羽面部3より剛性が高くなっている。さらに、前縁部2は、根元に近づくにしたがって、累積的に荷重が増加するため、根元が先端に比べ太くなっている。根元部分での前縁部2の幅および高さは約2mmであり、先端部分での前縁部2の幅および高さは約1mmである。ただし、図の記述精度の問題から、図1〜図6においては、根元部分における前縁部2の幅と先端部分における前縁部2の幅とは同じ幅で描かれている。
【0045】
<羽面部>
羽面部3は、図3〜図5に示されるように、CFRP層11、12、および13を有し、CFRP層11、12、および13の外形と同一の外形を有するポリエステルフィルム14がCFRP層11とCFRP層12との間に挟まれている。本実施の形態においては、ポリエステルフィルム14の耐熱温度がCFRP層11、12、および13の成形温度よりも高く、かつ、ポリエステルフィルム14とCFRP層11、12、および13との親和性が高い。したがって、CFRP層11、12、および13の成形のときに、ポリエステルフィルム14をCFRP層11に対応するプレプリグとCERP層12に対応するプレプリグとの間に挟んでおき、CFRP層11、12、および13ならびにポリエステルフィルム14を含む原材料を金型上で焼結することによって、簡単に羽面部3を製造することが可能である。
【0046】
CFRP層11、12、および13は、それぞれ、前述のように、細長板状部7、8、および9を有する。すなわち、CFRP層11、12、および13のそれぞれは、羽面部3、平面的に見れば、図3〜図5に示すように、細長板状部7、8、および9を歯とする櫛型をしている。また、図1に示すように、細長板状部7、8、および9は、それらが延びる方向が互いに60度ずつずれ、重ねられている。そのため、羽面部3の表面に垂直な方向から見ると、細長板状部7、8、および9によって、正三角形の枠、すなわちトラスが形成されているように見える。また、細長板状部7、8、および9のそれぞれは、細長い長方形の3辺の輪郭を有しており、2つの長辺は、繊維軸に平行に延びている。ただし、2つの長辺の一方の長辺のみが繊維軸に平行に延びていれば、繊維の強度をある程度有効に利用することが可能である。
【0047】
また、本実施の形態では、細長板状部7、8、および9のそれぞれの曲げ剛性は、前縁部2の1/8であるものとする。一般に、曲げ剛性は、断面二次モーメントに比例する。つまり、曲げ剛性は、(幅:矩形の短辺の長さ)×(厚さの3乗)に比例する。ここで、細長板状部7、8、および9のそれぞれの厚さが一定であり、細長板状部7の幅が細長板状部7同士の中心軸間の距離(以下、これを「ピッチ」という。)の1/a倍であり、細長板状部8の幅が細長板状部8同士のピッチの1/a倍であり、かつ、細長板状部9の幅が細長板状部9同士のピッチの1/a倍であると仮定する。この仮定の下では、細長板状部の幅が1/a倍になれば、羽面部3の曲げ剛性も1/a倍になる。したがって、本実施の形態においては、細長板状部7、8、および9のそれぞれの幅を細長板状部7、8、および9のそれぞれのピッチの1/8倍にすることによって、前縁部2の曲げ剛性の1/8倍の曲げ剛性を有する羽面部3が実現されている。つまり、羽面部3の厚さを変化させることなく、細長板状部7、8、および9のそれぞれの幅のみを変更することによって、所望の曲げ剛性分布を有する羽1が形成されている。
【0048】
なお、本実施の形態の羽1の構造によれば、細長板状部7の幅と細長板状部7同士のピッチとの比、細長板状部8の幅と細長板状部8同士のピッチとの比、および細長板状部9の幅と細長板状部9同士のピッチとの比を互いに異ならせることによって、羽面部3の曲げ剛性が異方性を有するようにすることが可能である。たとえば、CFRP層12の繊維軸の方向と羽1の長手方向とが一致している場合であって、羽1の長手方向を含む面内の曲げ変形に対して高い剛性を有する羽1を製造する場合には、CFRP層12において、細長板状部8の幅を大きくし、細長板状部8同士のピッチを小さくすればよい。
【0049】
一方、CFRP層が3つ積層された積層構造の一部をトラスが形成されるように切り抜く手法が用いられた場合には、各トラスの三辺に3つのCFRP層が積層されている。この手法により形成された羽面部の質量は、トラスが形成されていない羽面部3と同一面積の3つのCFRP層11、12および13の積層構造の質量の3/a倍(aは前述の値)となる。この場合、3つのCFRP層のうちの1つの層の繊維軸を含む面内の曲げ変形モードにおいては、その1つのCFRP層以外の2つのCFRP層は、樹脂程度の剛性しか有していないため、不要である。
【0050】
上記のことをまとめると次のようになる。
【0051】
本実施の形態の羽1においては、予めCFRP層11、12、および13のそれぞれが、CFRP層11、12、および13のそれぞれの繊維軸の方向に応じて細長い板状部を有するように加工されている。つまり、CFRP層11、12、および13のそれぞれにおいては、同一羽部の細長板状部同士が同一ピッチで配置されている。そのため、羽1の質量は、トラスが形成されていない構造であって羽面部3と同一面積の3つのCFRP層の積層構造の質量の1/a倍になる。すなわち、CFRP層が3つ積層された積層構造の一部をトラスが形成されるように切り抜く手法が用いられた羽との比較において、羽1は、その曲げ剛性が同一であれば、その質量が、ほぼ1/3倍になる。
【0052】
なお、本実施の形態においては、複数の細長板状部同士のピッチは4mmであり、複数の細長板状部のそれぞれの幅は0.5mmであるが、図3〜図5においては、描画の都合により、複数の細長板状部のそれぞれの幅と複数の細長板状部同士のピッチとの比率は正確なものではない。
【0053】
<枠部>
羽面部3は、図1に示されるように、アクチュエータ接合部6、前縁部2、および枠部4の間に張られている。そのため、ポリエステルフィルム14の端部の破損が防止されている。本実施の形態では、枠部4の幅は約0.5mmである。なお、枠部4は、図1に示されるように、羽面部3を取り囲む形状であるため、それが延びる方向は位置によって異なる。このため、図3〜図5に示されるように、枠部4は、3つの部分によって構成されている。3つの部分は、CFRP層11、12、および13のそれぞれに1つずつ設けられている。また、3つの部分のそれぞれは、一方向に延びる一直線状の部分である。この一直線状の部分は、繊維軸の方向に沿って延びている。
【0054】
また、図6において矢印で示されるように、枠部4は、所定の方向に延びる繊維軸を有するCFRP層の一の端部にその繊維軸の方向と同一方向に延びるように設けられた枠部4をその面内方向に曲げてCFRP層の他の端部に接合することによって形成されてもよい。
【0055】
<枝部>
羽1が大きくなった場合には、羽1の先端部の回転半径も大きくなる。この場合、流体に対する相対速度が大きくなるため、羽1の先端部には大きな流体力が生じる。羽1の先端部に生じる流体力が大きくなっても、羽1の先端部の制御性を維持する必要がある。そのため、前縁部2に接続され、前縁部2から斜め方向に延びる枝部5が設けられている。
【0056】
枝部5の太さは約0.9mmである。枝部5は、CFRP層11の繊維軸が延びる方向と同一方向に延びるように設けられている。つまり、枝部5は、X軸方向の羽1の先端側を向く方向を0°とした場合に、−60°の方向に延びるように形成されている。
【0057】
なお、枝部5とX軸との間の角度および羽面部3に要求される剛性によっては、前述の細長板状部7とは異なる細長板状部を有するCFRP層に枝部5が設けられていてもよい。また、CFRP層とは別の材料を用いて形成された枝部5がCFRP層同士の間に挟み込まれた構造の羽面部3が用いられてもよい。
【0058】
<アクチュエータ接合部>
アクチュエータ接合部6は、実際には、羽1を駆動するアクチュエータとの適合性に応じて、その形状が決定される。本実施の形態のアクチュエータ接合部6は、図1に示される形状であるものとする。また、羽ばたき運動により生じる流体力に起因する変形を防止するため、アクチュエータ接合部6の材料としては、細長板状部を有しない、すなわち隙間がない密実な構造のCFRP層が用いられる。さらに、アクチュエータ接合部6の前方端には溝構造が設けられている。このアクチュエータ接合部6の溝構造と前縁部2の溝構造とは連続するように設けられている。
【0059】
<羽質量>
CFRPの比重が1.6g/cm3であるものとして、表2に前述の各部位の質量が示されている。表2に示されるように、羽1の総質量は、約26.5mgである。また、アクチュエータ接合部6の質量は約14.4mgである。
【0060】
また、表2は、本実施の形態の羽1の各部位の質量を示している。
【0061】
【表2】

【0062】
一方、CFRP層が3つ積層された積層構造をトラス形状が形成されるように切り抜く手法が用いられた比較例の羽の質量は約48mgである。したがって、3つのCFRP層のそれぞれに細長板状部が設けられた羽面部3を用いる本実施の形態1の羽1は、前述の比較例の羽よりも約45%の軽量化が図られている。
【0063】
(実施の形態2)
以下、本発明の実施の形態2の羽を、図7〜図11を用いて説明する。本実施の形態の羽の構造は、実施の形態1の羽の構造とほぼ同様である。そのため、本実施の形態の図7〜図11に示す羽1の各部位と実施の形態1の図1〜図6に示す羽1の各部位との対比において、対応する部位同士は、同一の参照符号が付されている。また、以後の説明については、主に、本実施の形態の羽1と実施の形態1の羽1とが相違する点についての説明がなされる。したがって、本実施の形態において特に説明がなされていない部位の構造および機能については、実施の形態1の対応する部位の構造および機能と同一である。
【0064】
本実施の形態の羽1が実施の形態1の羽1と異なる点は、概ね、図9に示す所定の方向に繊維軸が延びる細長板状部17を有するCFRP層11、図11に示す所定の方向とは90度ずれた方向に繊維軸が延びる細長板状部19を有するCFRP層13、および、図10に示す細長板状部を有しないCFRP層12が用いられていることである。この構造を有する本実施の形態の羽1によれば、実施の形態1の羽1に比較して、剛性に若干の異方性が生じるが、さらに軽量化を図ることができる。
【0065】
<全体の構成>
本実施の形態のCFRP層11、12および13のそれぞれにおいても、実施の形態1のそれと同様に、単一方向にカーボン繊維の繊維軸が延びている。ただし、図7および図8に示すように、CFRP層11、12、および13の主たる繊維軸の方向は、それぞれ、x軸正方向を0度として、+45度、0度、−45度である。その他の全体構造については、実施の形態1の羽1と本実施の形態の羽1とはほぼ同様である。
【0066】
<前縁部>
本実施の形態の前縁部2は、図7〜図11に示されるように、図1〜図6に示される実施の形態1の前縁部2と全く同様である。なお、図7〜図11においても、実施の形態1の図1〜図6と同様に、図の描画の精度の問題から、前縁部2の幅は一定に描かれているが、根元部分での前縁部2の幅および高さは約2mm、先端部分での前縁部2の幅および高さは約1mmである。
【0067】
<羽面部>
本実施の形態の羽面部3は、図7〜図11に示されるように、図1〜図6に示す実施の形態1の羽面部3と異なっている。
【0068】
図9〜図11から分かるように、CFRP層11およびCRRP層13は、それぞれ、複数の細長板状部17および19を有するが、CFRP層12は、細長板状部を有していない。また、CFRP層11の複数の細長板状部17のそれぞれが延びる方向、すなわち繊維軸の方向は、X軸正方向に対して+45度傾いており、CRRP層13の複数の細長板状部19のそれぞれが延びる方向、すなわち繊維軸の方向は、X軸正方向に対して−45度傾いている。
【0069】
一方、本実施の形態の羽面部3の構造を採用せずに、細長板状部を有しない羽面部3と同一面積の2つのCFRP層の積層構造を格子(四角形の4つの辺)が残存するように切り抜いた場合、格子部分は2つのCFRP層の積層構造によって形成されている。そのため、その羽面部3の質量は、格子が設けられていない2つのCFRP層の積層構造の2/a(aは実施の形態1と同様)となる。しかしながら、2つのCFRP層のうちの1つの層の繊維軸を含む面内の曲げ変形モードにおいては、その繊維軸方向に延びる細長板状部を有している一方のCFRP層は、所望の剛性を発揮するが、他方のCFRP層は、樹脂程度の剛性しか有していないため、不要である。
【0070】
上記のように、予め、2つのCFRP層11および13において、それぞれの繊維軸の方向に応じた複数の細長板状部17および19が設けられているため、同一の曲げ剛性であれば、細長板状部を有しない、すなわち隙間がない密実な同一面積のCFRP層の2つの積層構造の1/aになる。すなわち、羽面部3の質量は、細長板状部を有しない羽面部3と同一面積の2つのCFRP層の積層構造を格子(四角形の4つの辺)が残存するように切り抜いた羽の質量のほぼ1/2になる。
【0071】
なお、ここでは、複数の細長板状部同士のピッチは4mmであり、複数の細長板状部のそれぞれの幅は0.5mmであるが、図7〜図9においては、描画の都合により、複数の細長板状部のそれぞれの幅およびそれら同士のピッチの寸法は正確なものではない。
【0072】
<枠部>
本実施の形態の枠部4は、図9または図11において、それが延びる方向が細長板状部17または19に平行であること以外においては、図7〜図11に示すように、実施の形態1の枠部4と全く同様であるので、その説明は繰り返さない。
【0073】
<枝部>
本実施の形態の枝部5は、図11において、それが延びる方向が細長板状部19に平行であること以外においては、図7および図11に示すように、実施の形態1の枝部5と同様であるので、その説明は繰り返さない。
【0074】
<アクチュエータ接合部>
本実施の形態のアクチュエータ接合部6は、図7〜図11に示すように、実施の形態1のアクチュエータ接合部6と全く同様であるので、その説明は繰り返さない。
【0075】
<羽質量>
CFRPの比重を1.6g/cm3として、表3に各部位の質量を示す。羽1の質量は、約22.8mgである。
【0076】
また、表3は、本実施の形態の羽1の各部位の質量を示している。
【0077】
【表3】

【0078】
アクチュエータ接合部6の質量は約14.4mgである。2つのCFRP層を積層した積層構造を形成した後、積層構造を格子状に切り抜く手法によって形成された比較例の羽の質量は約37.2mgである。したがって、本実施の形態の羽1の構造を採用すれば、比較例の羽に対して約38%の軽量化を行なうことができる。
【0079】
<その他>
なお、実施の形態1および2の羽1は、本発明の羽が具現化されたものの一例であり、本発明の羽は、本実施の形態の羽1の構成要素の全てを備えていなくてもよい。たとえば、枠部4の強度が高ければ、枝部5がない羽であっても、本発明の目的を達成することができる。また、たとえば、羽ばたき飛行に必要な剛性が得られる羽であれば、アクチュエータ接合部6が羽面部3と同様の構造であってもよい。これによれば、さらに羽の軽量化を図ることができる。また、表2および表3に示す羽の各部位に与えられた数値も、前述のものに限定されない。また、前述のトラスまたは格子によって形成される隙間がある程度小さい羽であれば、ポリエステルフィルム14のようなフィルムがない羽であっても、所定の空力特性を得ることは可能である。さらに、ポリエステルフィルム14のようなフィルムを用いないのであれば、フィルムの端部を保護する必要がないため、枠部4がない羽であってもよい。また、羽部のより一層の軽量化のために、前縁部2が前述のトラスまたは格子を構成する細長板状部によって構成されていてもよい。
【0080】
なお、本発明の目的は、単一層からなる単一方向の繊維軸を有するCFRP層を複数用いて、所望の剛性分布を有する羽を製造することである。したがって、前述の実施の形態では、羽が羽ばたき飛行を行なう羽ばたきロボットに用いられることを前提に説明がなされているが、本発明の羽は、羽ばたき飛行に用いられるのみならず、滑空飛行などに用いられてもよい。
【0081】
以下、前述の各実施の形態の羽が用いられる移動装置(羽ばたき装置)を、図を参照しながら詳細に説明する。
【0082】
なお、前述の羽1は、以下の移動装置のように、羽ばたき運動によって空中を飛行する羽ばたき装置の羽に適している。また、羽ばたき運動の中でも、後述するように、前縁部2(後述する羽軸部101)を所定の方向に往復回転運動させるとともに、羽面部3(後述する羽膜部100)を羽1(後述する羽部)の長手方向を回転中心軸として往復回転運動させる羽ばたき運動を行なう羽ばたき装置の羽に特に適している。
【0083】
その理由は、次のようなものである。
【0084】
トンボのように、羽1(羽部110)を、前後方向に往復回転運動(ストローク運動)させながら、前縁部2(羽軸部101)が延びる方向を回転中心軸として往復回転運動(捻り運動)させることによって浮上力を得る昆虫の飛び方を模倣するためには、前縁部2(羽軸部101)は、前縁部2(羽軸部101)を含む面内の曲げに対しては強く抵抗し、前縁部2(羽軸部101)を回転中心軸とする捻りに対しては変形し易いものであることが望ましい。
【0085】
また、前述の羽面部3(後述する羽膜部100)は、その面内方向に沿ってその表面近傍に生じる流体の流れを有効に利用できるように、前縁部2(羽軸部101)に追随して前縁部2(羽軸部101)を回転中心軸として曲げ変形し易いことが望ましい。羽面部3(羽膜部100)がある程度柔軟に曲げ変形すれば、前縁部2(羽軸部101)が延びる方向を回転中心軸とする往復回転運動(捻り運動)が小さなものであっても、羽1(羽部110)のしなりによって、羽1(羽部110)の面内方向に沿って羽1(羽部110)の表面近傍に生じる流体力をより大きくすることができる。
【0086】
以下、前述の羽1が用いられれば、特に有効な羽ばたき装置の一例を具体的に説明する。
【0087】
後述する実施の形態3および4の羽ばたき装置1の全体の主要な構成については、図12に描かれている。図12に示すように、本体500と、本体500の前後方向に対する左側および右側のそれぞれに設けられた一対の羽部110とを有している。その羽ばたき装置は、羽部110が、その運動により周囲流体に流体力を生じさせる。その流体力は、羽ばたき装置の重力の方向とは逆向きに、羽ばたき装置の重力よりも大きな浮上力を羽ばたき装置に生じさせることが可能である。
【0088】
また、羽ばたき装置は、一方端側が、羽部110に固定された駆動機構部800を有している。駆動機構部800は、他方端側が、本体500内の第1および第2の駆動部1001および1002に接続されており、第1および第2の駆動部1001および1002の駆動力を羽部110に伝達する。なお、左半分に対して鏡面対称である構成要素が右半分について設けられているものとするが、本発明の移動装置においては、左右対称であることは、必須の条件ではない。
【0089】
次に、図12における駆動機構部800(図12中、点線で囲まれた部分)の左羽側を拡大したものを図13に示す。図13では、Z軸によって鉛直方向が示され、Y軸によって前後方向が示され、X軸によって左右方向が示されている。また、図12においては、第1および第2の駆動部1001および1002に共通の回転中心軸をZ軸とする。図13では、図を見易くするため、第1および第2の回転部材102および108のみがそれぞれ独立してZ軸周りに回転するように描かれ、第1および第2の駆動部1001および1002ならびに羽部110は描かれていない。なお、第1および第2の駆動部1001および1002は、それぞれ、何らかの支持部材で本体500に固定されているとともに、本体500に対して相対的に回転することが可能に構成されているが、図12では、その支持部材等の構造の描写は行なわれていない。
【0090】
ただし、第1の駆動部1001と第1の回転部材102とが接続され、第1の駆動部1001の回転往復運動に伴って、第1の回転部材102が往復回転運動する。また、第2の駆動部1002と第2の回転部材108とが接続され、第2の駆動部1002の往復回転運動に伴って、第2の回転部材108が往復回転運動する。また、第1の駆動部1001と第2の駆動部1002とは、独立して往復回転運動するため、第1の回転部材102と第2の回転部材108とも、互いに独立して、回転往復運動する。それにより、羽部110の先端部109と仮想の所定の基準面(XY平面)とのなす捻り角が変化する。
【0091】
なお、各実施の形態においては、第1の駆動部1001の回転中心軸と第2の駆動部1002の回転中心軸とが一致している駆動機構部800が示されているが、それらの回転中心軸同士が一致していない駆動機構部であっても、各実施の形態の駆動機構部800によって達成される目的と同様の目的を達成することは可能である。
【0092】
図13に示した駆動機構部800は、2つの回転部材、2つの中間部材、および3つのヒンジ部、つまり、第1および第2の回転部材102および108、第1および第2の中間部材104および106、第1、第2、および第3のヒンジ部103、105、および107を有している。
【0093】
第1の回転部材102と第1の中間部材104とは、第1のヒンジ部103を介して接続され、第1の中間部材104と第2の中間部材106とは、第2のヒンジ部105を介して接続され、第2の中間部材106と第2の回転部材108とは、第3のヒンジ部107を介して接続されている。第1の中間部材104は、第1のヒンジ部103が延びる方向の回転中心軸周りに自由に回動することが可能であり、かつ、第2のヒンジ部105が延びる方向の回転中心軸周りに自由に回動することが可能である。第2の中間部材106は、第2のヒンジ部105が延びる方向の回転中心軸周りに自由に回動することが可能であり、かつ、第3のヒンジ部107が延びる方向の回転中心軸周りに自由に回動することが可能である。
【0094】
なお、本発明においては、少なくとも2つの回転部材の間に接続される中間部材の個数nはn≧1であればよい。ただし、n=1の時は、第1の回転部材102の回転角θ1および第2の回転部材102の回転角θ2の差(θ1−θ2)が変化すると、中間部材の両端の2つのヒンジ部の先端(原点Оから遠方側の端部)同士の間の距離が変化するため、中間部材または回転部材がある程度以上大きく変形できるものでなければならない。それを避けるためには、中間部材の数、すなわち、nが2個以上(n≧2)であることが望ましい。そこで、本実施の形態においては、n≧2という条件を具備するもののうちで最も製造が容易なn=2という条件を具備する羽ばたき装置について説明がなされる。
【0095】
本実施の形態においては、図12に示す羽部110、すなわち、羽膜部100および羽軸部101のうち少なくともいずれか一方は、第1の中間部材104と固定されているものとする。また、羽膜部100に捻り角αを与えるときにも、羽軸部101が延びる方向の回転中心軸がZ軸と成す角(コニング角)が一定値に保たれるように、羽軸部101が延びる方向の回転中心軸の延長線が、回転部材の一端のヒンジ部(たとえば、第1のヒンジ部103)の回転中心軸と重なっているものとする。なお、捻り角αは、羽部110の先端部109がXZ平面となす角度であるものとする。さらに、説明を容易にするため、第1のヒンジ部103の回転中心軸は、X軸上にあるものとする。つまり、Z軸と第1のヒンジ部103とがなすコニング角が直角であるものとする。
【0096】
一方、回転部材の回転に伴って各中間部材および各ヒンジ部に生じる歪みが小さくなるように、各ヒンジ部の一端(一般にはヒンジ部の回転中心軸の延長線上の所定の点)が原点Оと重なっているものとする。後述する実施の形態では、図16および図19に示されているように、各ヒンジ部および各中間部材は、相互に摩擦が生じず、それぞれの動作がスムーズに行なえるように、原点Оの近傍で切断されたものが描かれているが、図13においては、煩雑さを避けるため、各ヒンジ部および各中間部材は、原点0まで延びているものが描かれている。
【0097】
次に、たとえば、第1および第2の回転部材102および108の回転角がθ1およびθ2であり、X軸が延びる方向が角度0°である場合を考える。この場合、羽部110の羽ばたき運動は、XY平面に平行に、±θだけ、第1および第2の回転部材102および108を往復回転運動させることによって行なわれる。一方、羽軸部101が延びる方向の回転軸周りの捻り角α、すなわち、羽軸部101が延びる方向に羽膜部100を見たときに羽膜部100が羽軸部101周りに回転する角度は、2つの回転角θ1およびθ2の差θ2−θ1≡Δθを変化させることによって制御される。
【0098】
なお、以下の各実施の形態では、第1の駆動部1001の回転に起因した第1の回転部材102の回転によって、羽部110(羽膜部100および羽軸部101)の所定の点は、XY平面に平行な面内の往復回転運動(ストローク運動)を行なう。また、第2の駆動部1002の回転に起因した第2の回転部材108の往復回転運動によって、羽部110(羽膜部100および羽軸部101)の所定の点は、YZ平面に平行な面内の往復回転運動(捻り角αが変化する捻り運動)を行なう。
【0099】
また、2つの回転角θ1およびθ2の差Δθと捻り角αとの関係は、次のように求められる。図13においては、X軸上の第1のヒンジ部103が線分OPによって表わされている。第1のヒンジ部103の長さがbであるとすると、第1のヒンジ部103の先端Pの座標は(b,0,0)である。また、第2のヒンジ部105が線分OQによって表わされる。第2のヒンジ部105の先端Qは、第1のヒンジ部103の先端から距離aだけ離れており、線分OQとXY平面とがなす角度(位置角)は、ωであるものとすると、第2のヒンジ部105の先端Qの座標は(b,a×cosω,b×cosω)である。さらに、第3のヒンジ部107が線分ORによって表わされている。第3のヒンジ部107の先端Rは、XY平面から距離dだけ離れており、かつ、Z軸から距離bだけ離れており、線分ORとXZ平面とがなす角度(位置角)は、λであるものとする。このとき、第3のヒンジ部107の先端Rの座標は(b×cosλ,b×sinλ,d)となる。
【0100】
ここで、θ1=0°であると仮定され、回転角θ2がΔθであるとすると、2つの回転角θ1およびθ2の差は、θ2−θ1=Δθであり、かつ、羽膜部100が羽軸部101が延びる方向の回転中心軸の周りに捻り角αだけ捻られるとすれば、ωがω+αに変化する。このとき、回転前と回転後との比較において、線分PQの距離は変化しないとすると、次の式(1)および(2)が成立する。
【0101】
PR2(回転前)=[b−b×cosλ]2+[a×sinω−bsinλ]2+[a×cosω−d]2
PR2(回転後)=[b−bcos(λ+Δθ)]2 …(1)
+[a×sin(ω+α)−b×sin(λ+Δθ)]2+[a×cos(ω+α)−d]2 …(2)
前述の式(1)の右辺と式(2)の右辺とが等しいことから、次の式(3)が成立する。
【0102】
a×d×cos(ω+α)+a×b×sin(λ+Δθ)×sin(ω+α)
=b2×cosλ−b2×cos(λ+Δθ)+a×b×sinω×sinλ+a×d×cosω
…(3)
この式(3)を解くと、捻り角αが求められる。
【0103】
以上の結果から、本実施の形態の駆動機構部800において、第1、第2および第3のヒンジ部103、105、および107のそれぞれを配置する適切な位置を求めることができる。その際の設計基準の一つとして、たとえば、(捻り角α)/(2つの回転角の差Δθ)がより大きい場合を検討する。この場合、2つの回転角θ1およびθ2の差Δθが小さく、かつ、大きな捻り角αが得られる羽ばたき装置の設計が可能となる。
【0104】
一般に、b/aおよびa/dが大きい程、(捻り角α)/(2つの回転角θ1およびθ2の差Δθ)も大きくなるが、あまり大きな(捻り角α)/(2つの回転角θ1およびθ2の差Δθ)が採用されると、羽ばたき装置のサイズが制約されたり、第1および第2の駆動部1001および1002に大きなトルクが要求されたりする。そのため、本実施の形態においては、b/a=3、かつ、a/d=2とする。また、位置角λを90°に近づけると、駆動機構部800の幅(Y軸方向の長さ)が大きくなるため、λ=0°とする。これらのパラメータから、差Δθが+10°および−10°のそれぞれの場合の捻り角αと位置角ωとの関係が図14のグラフに示されている。図14のグラフから、位置角ω=±45〜135°の範囲であれば、捻り角αの角度の範囲Δαは、約90°という大きな値(α/Δθ≒4.5)になる。後述の実施の形態1においては、位置角ω=90°の場合の実際の駆動機構部800が説明される。
【0105】
また、たとえば、距離d=0である場合の捻り角αと位置角ωとの関係が図15のグラフに示されている。このとき、位置角λを0°近傍の値にすると、第1の中間部材104と第2の中間部材106とが接近し過ぎるため、一例として、λ=45°が用いられている。この場合、位置角ω=−15〜+40°であるか、または、位置角ω=+140〜−165°であれば、捻り角αの角度の範囲Δαは、約60°という大きな値(α/Δθ≒3)になる。後述する実施の形態4においては、位置角ω=180°の場合の実際の駆動機構部800が説明される。
【0106】
(実施の形態3)
まず、図16〜図18を用いて、本発明の本実施の形態1の駆動機構部1を説明する。なお、本実施の形態の羽ばたき装置の全体構成は、図12に示されている羽ばたき装置の全体構成と同一である。つまり、図16に示す駆動機構部800に付されている参照符号と図13に示す駆動機構部800に付されている参照符号とが同一の部位同士は、互いに同一の構造および機能を有している。したがって、以下、図16に示す駆動機構部800の構造および動作の説明においては、主に、前述の図13に示す駆動機構部800の構造および動作と異なる構造の部分の説明がなされる。
【0107】
本実施の形態においては、図16に示すように、羽軸部101は、第1の中間部材104に接続されている。羽軸部101は、第1の中間部材104を含む平面内に存在する板状部材によって構成されている。また、羽膜部100は、その一辺が羽軸部101に固定されている。羽軸部101を含む平面と羽部110を含む平面とは角度τをなして交差している。
【0108】
また、角度τに関しては、羽ばたき飛行中に羽膜部100が撓んでも、羽膜部100と羽軸部101との接合部においては、羽膜部100の接平面と羽軸部101の接平面とがなす角は一定であるものとする。また、角度τは90°であることが望ましいが、本発明の移動装置においては、角度τが90°以外の角度である移動装置であっても、角度τが90°である移動装置と同様の目的を達成することができる。
【0109】
回転部材と中間部材とは、それらを接続するヒンジ部が延びる方向の回転中心軸周りに回転可能である。また、ヒンジ部が延びる方向の延長線の全て(図16中の点線)は、原点Оで交わる。原点Оは、第1および第2の駆動部1001および1002の往復回転運動の共通の回転中心軸であるZ軸上に位置している。このため、第1の回転部材102の回転角θ1と、第2の回転部材108の回転角θ2との差Δθ=θ2−θ1が一定の範囲内であれば、第1および第2の中間部材104および106が滑らかに動作する。これにより、第1および第2の駆動部1001および1002の往復回転運動が、第1の中間部材104および羽軸部101を介して、羽膜部100に伝達され、羽膜部100は、YZ平面に平行な捻り角αの往復回転運動を伴いながら、XY平面と平行な回転角Δθの往復回転運動する。
【0110】
また、回転角θ1=θ2=0°の状態では、第1および第2の回転部材102および108は、同一平面(図16ではXZ平面)内に位置している。この状態では、第2のヒンジ部105は、XY平面内でX軸と所定の角度をなしており、第1および第2の中間部材104および106は、第2のヒンジ部105と第1および第2の回転部材102および108との間に位置している。また、図16に示す構造は、図13に示す構造と同様に、Z軸から第1および第2の回転部材102および108のそれぞれの先端までの距離がbであり、第1の回転部材102の先端と第2の回転部材108の先端との間の距離がdであり、第2のヒンジ部105の先端とX軸の距離がaである。
【0111】
本実施の形態の移動装置においても、図16に示す構造は、理解の容易のために、第1のヒンジ部103が延びる方向の回転中心軸がZ軸となす角(コニング角)が90°(直角)であり、第1および第2の駆動部1001および1002の往復回転運動に伴なう羽軸部101の運動面(ストローク面)が、XY平面上に平行な面であって扇型の面となるものとするが、コニング角は直角以外の角度であってもよい。その場合は、羽軸部101は、ストローク面がZ軸を中心軸とした円錐の側面の一部となるように、往復回転運動する。このように、本実施の形態の羽ばたき装置によれば、コニング角が一定に保たれるため、羽軸部101におけるフラッタリング(運動する流体内での振動)を防止することができる。
【0112】
また、第1の回転部材102が停止した状態(θ1=0)で、第2の回転部材108を、一定のトルクで回転させた場合(θ2−θ1の場合)に、第2の回転部材108の回転角θ2=Δθと羽部110に生じる捻り角αとの関係が、どのように変化するかについて、構造解析が行なわれた。その結果が、図17および図18に示されている。この構造解析においては、第1の回転部材102に与えるトルクを±5gf・cmとし、駆動機構部800のサイズに関しては、a=5mm、b=15mm、およびd=2.5mmであり、また、ヒンジ部の位置角に関しては、λ=0°、および、ω=90°である。材料に関しては、回転部材および中間部材には、0.1mm厚のアルミニウム(ヤング率70GPa、比重2.7g)の板が用いられるが、ヤング率がより大きく、より比重が小さいものとして、CFRP(カーボン繊維強化プラスチック:Carbon Fiber Reinforced Plastic:ヤング率が120GPa、比重が1.6g)などが用いられてもよい。また、ヒンジ部には、5μm厚のPET(ポリエチレン・テレフタレート:ヤング率が3.9GPa、比重が1.2g)が用いられている。
【0113】
図17は、第1の回転部材102に−5gf・cmのトルクを加えた時の解析結果を示しており、第2の回転部材108の回転角θ2=Δθ=−3.9°であり、羽部110の捻り角α=−21.7°である。また、図18は、第1の回転部材102に+5gf・cmのトルクを加えた時の解析結果を示しており、第2の回転部材108の回転角Δθ=+8.1°であり、羽部110の捻り角α=+35.8°である。合計でΔθ=Δθ−Δθ=12.0°であり、α=α−α=57.5°である。このことから、第1回転部材102の回転角θ1と第2回転部材108の回転角θ2との差Δθが小さな値でも、羽膜部100は大きな捻り角αで捻られることが分かる(α/Δθ=4.8)。
【0114】
(実施の形態4)
次に、図19〜図21を用いて、本発明の本実施の形態4の駆動機構部800を説明する。
【0115】
図19に示すように、駆動機構部800は、実施の形態3の駆動機構部800とほぼ同様である。つまり、図19に示す駆動機構部800に付されている参照符号と図16に示す駆動機構部800に付されている参照符号とが同一の部位同士は、互いに同一の構造および機能を有している。本実施の形態の駆動機構部800が実施の形態3の駆動機構部800と異なる点は、Z軸方向に関して、駆動機構部800の上下の位置関係が逆になっていること、羽軸部101が羽部110の前縁部を構成していること、および、第1の中間部材104が延長された面上に羽膜部100および羽軸部101が位置するように、第1の中間部材104と羽部110および羽軸部101とが接続されていることである。なお、本実施の形態においては、第1の中間部材104は、羽膜部100および羽軸部101が延長された部材によって構成されている。
【0116】
次に、第1の回転部材102を停止した状態(θ1=0)で、第2の回転部材108に一定のトルクを加えて第2の回転部材108が回転角θ2=Δθだけ回転する場合、羽膜部100にどのような捻り角αが生じるかについて構造解析した結果を、図20および図21に示す。本実施の形態においても、実施の形態3と同様に、第1の回転部材102に与えるトルクは、±5gf・cmであり、駆動機構部800のサイズに関しては、a=5mm、b=15mm、およびd=0mmであり、また、ヒンジ部の位置角に関しては、λ=45°かつω=180°である。また、本実施の形態においても、実施の形態1と同様に、回転部材および中間部材には、0.1mm厚のアルミニウム(ヤング率70GPa、比重2.7g)の板が用いられ、また、ヒンジ部には、5μm厚のPET(ポリエチレン・テレフタレート:ヤング率3.9GPa、比重1.2g)が用いられている。なお、本実施の形態の移動装置において、アルミニウム板の代わりにCFRP板などが用いられてもよいことも、実施の形態3の移動装置と同様である。
【0117】
図20は、−5gf・cmのトルクを加えた時の解析結果を示しており、第2の回転部材108の回転角Δθ=−11.4°であり、羽膜部100の捻り角α=−40.0°である。また、図21は、第2の回転部材108に+5gf・cmのトルクを加えた時の場合の解析結果を示しており、第2の回転部材108の回転角Δθ=+14.8°であり、羽膜部100の捻り角α=+44.6°である。合計でΔθ=Δθ−Δθ=26.2°であり、α=α−α=84.6°である。この図20および図21から、実施の形態1と同様に、本実施の形態の駆動機構部800によれば、第1回転部材102の回転角θ1と第2回転部材108の回転角θ2との差Δθが小さな値であっても、羽部110には大きな捻り角αが生じる(α/Δθ=3.2)ことが分かる。
【0118】
本実施の形態の駆動機構部800によれば、実施の形態1の駆動機構部800に比較して、α/Δθは小さいが、同じトルクで、より大きな回転角θ1およびθ2の差Δθが得られる。そのため、同じ捻り角αを得るために必要な第1および第2の駆動部1001および1002のトルクは、実施の形態2の駆動機構部800の方が実施の形態1の駆動機構部800より小さくてもよい、と考えられる。
【0119】
ただし、ヒンジ部において中間部材と回転部材とがなす角度が180°を超えると、回転部材と中間部材との位置関係が可逆的ではなくなるため、その角度の最大値は180°より小さくなるような設計が行なわれる必要がある。
【0120】
前述の回転部材および中間部材の材料としては、アルミニウムまたはCFRPが用いられているが、これらの材料に限定されるものではない。ただし、回転部材および中間部材の材料としては、密度が小さく、かつ剛性が高いことが望ましいため、ステンレスなどの鋼鉄類、マグネシウム複合材料、または樹脂等が用いられることが好ましい。また、前述の材料が組合わせられた材料が用いられてもよい。
【0121】
また、ヒンジ部の材料としては、PET(ポリエチレン・テレフタレート)が例示されているが、折り曲げの繰り返しに対して強い靭性に優れた材料が用いられること望ましいため、シリコンゴムまたはポリイミド樹脂などの高分子材料が好ましい。
【0122】
さらに、回転部材および中間部材とヒンジ部とを接合させるために用いる接合材または接合方法(たとえば、圧着など)などは、互いの相性が良い組み合わせを用いることが望ましい。これら接合材および接合方法の選択は、本発明の本旨ではないため、特に記載しない。
【0123】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本発明によれば、空間を自由に羽ばたき飛行することができる移動装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】実施の形態1の羽の構造を説明するための概略図である。
【図2】図1のA−B線断面図である。
【図3】実施の形態1の羽を構成する3つのCFRP層のうちの第一層を示す概略図である。
【図4】実施の形態1の羽を構成する3つのCFRP層のうちの第二層を示す概略図である。
【図5】実施の形態1の羽を構成する3つのCFRP層のうちの第三層を示す概略図である。
【図6】実施の形態1の羽を構成する枠の形成方法を説明するための概略図である。
【図7】実施の形態2の羽の構造を説明するための概略図である。
【図8】図7のA−B線断面図である。
【図9】実施の形態2の羽を構成する3つのCFRP層のうちの第一層を示す概略図である。
【図10】実施の形態2の羽を構成する3つのCFRP層のうちの第二層を示す概略図である。
【図11】実施の形態2の羽を構成する3つのCFRP層のうちの第三層を示す概略図である。
【図12】実施の形態の羽ばたき装置の全体を示す図である。
【図13】図12に示す羽ばたき装置の駆動機構部を示す拡大図である。
【図14】図13に示す駆動機構部の第2のヒンジ部の位置角ωと羽膜部の捻り角αとの関係を示すグラフである。
【図15】図13に示す駆動機構部の第2のヒンジ部の位置角ωと羽膜部の捻り角αとの関係を示す他のグラフである。
【図16】実施の形態3の駆動機構部を示す図である。
【図17】図16に示す駆動機構部の第1の回転部材に一定のトルクを与えた場合の構造解析の結果を示す図である。
【図18】図16に示す駆動機構部の第1の回転部材に図17に示す駆動機構部の第1の回転部材に与えたトルクの方向とは逆方向に一定のトルクを与えた場合の構造解析の結果を示す図である。
【図19】実施の形態4の駆動機構部を示す図である。
【図20】図19に示す駆動機構部の第1の回転部材に一定のトルクを与えた場合の構造解析の結果を示す図である。
【図21】図19に示す駆動機構部の第1の回転部材に図20に示す駆動機構部の第1の回転部材に与えたトルクの方向とは逆方向に一定のトルクを与えた場合の構造解析の結果を示す図である。
【符号の説明】
【0126】
1 羽、2 前縁部、3 羽面部、4 枠部、5 枝部、6 アクチュエータ接合部、11,12,13 CFRP層、14 ポリエステルフィルム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直接的にまたは他の部材を介して間接的に重なるように設けられた複数の繊維複合材料層を備え
前記複数の繊維複合材料層のうちの少なくとも2以上の層は、それぞれの層の主たる繊維軸が互いに異なる方向に延びており、
前記2以上の層のうちの少なくともいずれか1つの層は、互いに間隔をおいて並んでいる複数の細長板状部を有し、
前記複数の細長板状部のそれぞれは、繊維軸の方向に沿って延びている、羽。
【請求項2】
前記複数の細長板状部のそれぞれは、その長手方向の2辺のうちの少なくともいずれか一方が前記繊維軸の方向と平行に設けられた、請求項1に記載の羽。
【請求項3】
前記2以上の層のうちの少なくともいずれか1つの層の前記複数の細長板状部は羽の長手方向に沿って延びている、請求項1に記載の羽。
【請求項4】
前記2以上の層は、2つの層からなり
前記2つの層のうちの1つの層においては、前記複数の細長板状部が、第1方向に沿って延びており、
前記2つの層のうちの他の層においては、前記複数の細長板状部が、第2方向に沿って延びており、
前記第1の方向と前記第2の方向とが直交する、請求項1に記載の羽。
【請求項5】
前記第1の方向および前記第2の方向のそれぞれが羽の長手方向と45度の角度をなす、請求項4に記載の羽。
【請求項6】
前記2以上の層は、3つの層からなり
前記3つの層のうちの第1の層においては、前記複数の細長板状部が、第1方向に沿って延びており、
前記3つの層のうちの第2の層においては、前記複数の細長板状部が、第2方向に沿って延びており、
前記3つの層のうちの第3の層においては、前記複数の細長板状部が、第3方向に沿って延びており、
前記第1の方向、前記第2の方向、および前記第3の方向が、互いに60度の角度をなす、請求項1に記載の羽。
【請求項7】
前記複数の繊維複合材料層のうちの少なくとも2以上の層は、それぞれ、羽の前縁部を構成する部分を有する、請求項1に記載の羽。
【請求項8】
前記2以上の層うちの少なくともいずれか1つの層は、その厚さが均一である、請求項1に記載の羽。
【請求項9】
前記複数の繊維複合部材層のうちの少なくともいずれか1つの層は、羽の外周部を構成する枠部の一部を有している、請求項1に記載の羽。
【請求項10】
羽の外周を構成する枠部が、前記複数の繊維複合部材層のうちの少なくともいずれか1つの層の一部を、その面内方向において曲げることによって形成された、請求項9に記載の羽。
【請求項11】
前記複数の細長板状部によって支持されているフィルムをさらに備えた、請求項1に記載の羽。
【請求項12】
前記フィルムは、その耐熱温度が前記複数の繊維複合材料層の成形温度よりも高い、請求項11に記載の羽。
【請求項13】
前記フィルムは、前記複数の繊維複合材料層と親和性を有している、請求項11に記載の羽。
【請求項14】
前記フィルムは、前記複数の繊維複合材料層のうちのいずれか2つの層に挟まれている、請求項11に記載の羽。
【請求項15】
前記複数の繊維複合材料層のそれぞれがCFRP(Carbon-Fiber Reinforced Plastics)からなる、請求項1に記載の羽。
【請求項16】
前記複数の細長板状部が等間隔で平行に並んでおり、
前記複数の繊維複合材料のそれぞれの前記細長板状部以外の部分全体の所定の方向を含む面内の曲げに対する剛性がE0であり、前記複数の細長板状部が位置する領域の部分全体の前記所定の方向を含む面内の曲げに対する剛性がE1である場合に、前記細長板状部の幅D1と前記細長板状部同士のピッチD0との比D1/D0がE1/E0である、羽。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれかに記載の羽の製造方法であって、
前記複数の繊維複合材料層のそれぞれに対応する複数のプレプリグを含む原材料を金型の上に重ねて載置するステップと、
前記原材料を焼結することによって羽を成形するステップとを備えた、羽の製造方法。
【請求項18】
前記原材料は、請求項11に記載のフィルムを含む、請求項17に記載の羽の製造方法。
【請求項19】
流体が存在する空間を羽ばたくための羽部と、
前記羽部が接続された駆動機構部と、
前記駆動機構部を駆動する駆動部と、
前記駆動機構部および前記駆動部が搭載された本体とを備え、
前記羽部は、請求項1〜16のいずれかに記載の羽によって構成されており、
前記駆動部は、前記駆動機構部を介して、前記羽部に羽ばたき動作をさせる、移動装置。
【請求項20】
前記駆動部は、前記駆動機構部を動作させることによって、前記羽部を、所定の方向に往復回転運動させるとともに、前記羽部の長手方向を回転中心軸として往復回転運動させる、移動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2006−76358(P2006−76358A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−259954(P2004−259954)
【出願日】平成16年9月7日(2004.9.7)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】