説明

羽毛抜け防止キルト構成体

【課題】しなやかさ、伸縮性、通気性、透湿度は勿論のこと、布袋への羽毛の吹き込み作業性のよい羽毛抜け防止キルト構成体を提供する。
【解決手段】
厚さ15μm〜60μm、通気度5cm/cm/s以上、透湿度500g/m・hr以下の発泡ポリウレタンフィルムを布袋2とし、この布袋2に羽毛1を吹き込み充填してなるキルト構成体5であり、とりわけ上記発泡ポリウレタンフィルムの厚さを40〜60μmとし、発泡径を1.5〜10μmとしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、しなやかさ、伸縮性、耐久性、通気性、羽毛の吹き込み作業性良好な羽毛抜け防止キルト構成体に関する。
【背景技術】
【0002】
ダウンジャケットや羽毛ふとんは長期間の使用により、羽毛を包む布袋(以下、単に布袋という)の織り目や縫い目から羽毛が抜け出す問題があり、その対策として羽毛を収容する布袋に織り密度の高い織布、編み密度の高いニットを採用したもの、あるいは表面にポリウレタンなど粘性のある樹脂組成物をコーティングした繊維でもって織製した布帛を採用したもの等が提案されている。
【特許文献1】特開2005−160713
【特許文献1】特開2007−056414
【0003】
上記提案により羽毛抜けの防止効果を得ることができたが、布袋のしなやかさが損なわれ肌触りの悪いものとなった。
【0004】
また、布袋を形成する繊維の表面にポリウレタンやポリテトラフルオロエチレン等を塗布するようなことも試みられたが、布袋のしなやかさ・通気性・透湿度を損なうこととなり、通気性が低下することにより羽毛の吹き込み作業性が低下する問題もある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記、従来技術の問題に鑑みこの発明は、しなやかさ、伸縮性、通気性、透湿度は勿論のこと、布袋への羽毛の吹き込み作業性のよい羽毛抜け防止キルト構成体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためにこの発明は、厚さ15μm〜60μm、通気度5cm/cm/s以上、透湿度500g/m・hr以下の連続気泡の発泡ポリウレタンフィルムを布袋とし、この布袋に羽毛を吹き込み充填してなる構成としたもので、とりわけ上記連続気泡の発泡ポリウレタンフィルムの厚さを40〜60μmとし、発泡径を1.5〜10μmとしたものである。
【0007】
さらにまた、上記羽毛抜け防止キルト構成体を羽毛ふとんやダウンジャケットの素材とすることもできる。
【発明の効果】
【0008】
上記の如く構成するこの発明によれば、第一に連続気泡の発泡ポリウレタンフィルムの通気性が良好なため羽毛の充填作業(とりわけ吹き込み重点において)が容易で偏りなく充填できる。
【0009】
第二に連続気泡の発泡ポリウレタンフィルムのしなやかさ、伸縮性、通気性、透湿性が良好なため着心地が良く、使用時に蒸れることがなく快適な状態を保つことができる。
【0010】
第三に連続気泡の発泡ポリウレタンフィルムの厚さと発泡径を上記のように特定することにより、断面構造が複雑で細かい網の目のような連続気泡を形成することとなって通気性、透湿性が良好でありながら羽毛の抜け出し防止効果が得られることとなった。
【発明を実施するための最良の形態】
【実施例1】
【0011】
次にこの発明の実施例を、図面を参照しながら説明する。図1において布袋2を構成する連続気泡の発泡ポリウレタンフィルムはDICCorporation製のXOLTEX・PX−550を採用している。同社のデーターによるとこの発泡ポリウレタンフィルムの諸特性は次の通りである。発泡径は1.5〜10μm(電子顕微鏡×500による観察)、通気度は5〜8cm/cm/s、透湿度200〜400g/m・hrである。
【0012】
上記連続気泡の発泡ポリウレタンフィルムを素材として充填(吹き込み)口を残して布袋2とし、この布袋2内に通常の手段で羽毛1を充填、さらに保護布3を重ねて周囲縁をかがり縫いし、羽毛1を布袋2内に万遍に分布させて後キルティング(押さえ縫い)4を施して試作品5とした。
【0013】
なお、羽毛の充填(吹き込み)作業においては、発泡ポリウレタンフィルムの通気性が良好なため布袋2内に羽毛が万遍に重点(吹き込み)され作業性が極めて良好であることを確認した。
【実施例2】
【0014】
図2に示すものは、図1の試作品と同様にDICCorporation製のXOLTEX・PX−550の連続気泡の発泡ポリウレタンフィルムでもって吹き込み口を残して布袋2を縫製し、この布袋2に通常の手法でもって羽毛1を重点(吹き込み)し、その後、片面にのみ保護布3を重ねて周囲縁をかがり縫いし、羽毛1を布袋2内に万遍に分布させて後キルティング(押さえ縫い)4を施し、さらに保護布3aを縫い付けて試作品5aとした。
【実施例3】
【0015】
図3は、図1のキルト構成体5でもって防寒ジャケットJを試作したものである。このジャケットJを試着して着心地、蒸れ具合、羽毛抜け発生状態を確認したところ何れも良好な評価を得た。
【0016】
なお、図2に示すキルト構成体でもジャケットに縫製することができ、また、図1、図2のキルト構成体で羽毛ふとんを製作できることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0017】
以上説明した如くこの発明によれば、織り密度あるいは編み密度の高い布帛を用いることなく羽毛の抜けを完全に防止することが可能になり、布袋に用いる連続気泡の発泡ポリウレタンフィルムはしなやかさ、伸縮性、通気性、透湿性が良好で着心地がよく、布袋への羽毛の充填(吹き込み)作業性もよくなって産業上の利用価値が極めて高いものであ。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施例1に係るキルト構成体の一部切り剥ぎ斜視図
【図2】実施例2に係るキルト構成体の一部切り剥ぎ斜視図
【図3】本発明に係るキルト構成体で製作した防寒ジャケットの斜視図
【符号の説明】
【0019】
1:羽毛
2:布袋
3,3a:保護布
4:キルティング(押さえ縫い)
5,5a:キルト構成体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ15〜60μm、通気度5cm/cm/s以上、透湿度500g/m・hr以下の連続気泡の発泡ポリウレタンフィルムを布袋(2)とし、この布袋(2)に羽毛(1)を充填してなる羽毛抜け防止キルト構成体(5)。
【請求項2】
上記連続気泡の発泡ポリウレタンフィルムの厚さを40〜60μmとし、発泡径を1.5〜10μmとした請求項1に記載の羽毛抜け防止キルト構成体(5)。
【請求項3】
上記請求項1または2に記載の羽毛抜け防止キルト構成体(5)により縫製された羽毛ふとん。
【請求項4】
上記請求項1または2に記載の羽毛抜け防止キルト構成体(5)により縫製された防寒ジャケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−220993(P2010−220993A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−99350(P2009−99350)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(501041263)
【出願人】(509107460)
【出願人】(509107622)
【Fターム(参考)】