説明

羽毛用中生地、羽毛用中袋およびこれを用いたダウンプルーフ構造体

【課題】 羽毛の吹き出し防止効果に優れながら、羽毛の吹き込み充填や使用時の形状回復性に優れた通気性を持ち、しかも、柔軟な風合いを有し、さらに長時間の使用や使用頻度の高い場合でも羽毛の吹き出し防止効果を持続するという耐久性に優れたダウンプルーフ構造体に関し、ダウンプルーフ構造体に用いる羽毛用中生地、羽毛用中袋およびこれを用いたダウンプルーフ構造体を提供する。
【解決手段】 高密度不織布と中綿不織布とが積層されてなる羽毛用中生地であって、前記高密度不織布は構成繊維として0.5デシテックス未満の極細繊維を含み、通気量が16〜100(cm/cm・s)からなる不織布であり、前記中綿不織布は構成繊維の平均繊度が0.5〜5デシテックスであり、厚さが5〜20mmであり、且つ面密度が50〜200g/mである不織布からなる羽毛用中生地。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば羽毛布団、ダウンジャケット、クッションなどのダウンプルーフ構造体に用いる羽毛用中生地、羽毛用中袋およびこれを用いたダウンプルーフ構造体に関するものであり、羽毛の吹き出し防止効果に優れ、柔軟な風合いを有し、かつ優れた生産性を有すると共に、形状回復性にも優れた羽毛用中生地、羽毛用中袋およびこれを用いた構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
羽毛自体が有する保温性や軽量性は、袋状に形成した生地に内包させることによって、掛け布団、ダウンジャケット、或いはクッションなど(以下、包括的にダウンプルーフ構造体、または単に構造体と称する)として広く利用されている。しかし、微細な構造を持つ羽毛には絡みにくいことから流動性があり、構造体とした後の肌触りに優れる反面、一般的な織物やニットなどの布帛を生地に用いた場合、当該構造体の生地表面から容易に羽毛が吹き出すことが知られている。
【0003】
このようなダウンプルーフ構造体について、特許文献1に羽毛布団の製造技術が開示されており、羽毛布団に用いる生地としては、1秒間に1気圧の下で面積1cm当たりに漏れる空気の量が1cmであると定義された通気度が1以下でなければ上述した羽毛の吹き出しを来すのが通例であると記載されている。
【0004】
さらに、「羽毛寝具要覧」(以下、非特許文献1)によれば、「羽毛ふとん地流通協会基準」として、JIS L1096−1990に規定されたフラジール形試験機で測定した通気性(cm/cm・s)は綿織物としての平織、綾織では3以下、朱子織では2.5以下、合繊織物としてのフィラメント織物、スパン織物、綿混紡織物では2以下とされている。
【0005】
また、特許文献2には、羽毛などを中綿として収納した際、羽毛の移動を防止し、羽毛布団としての嵩高性を維持する技術について開示されている。この公報によれば、上下の表生地に縦横の仕切布を交差させて止着し、側生地内に複数の区画を形成し、この区画内に羽毛を収納した立体キルト式の布団構造について述べられている。また当該公報には、羽毛布団の作製工程についても開示されており、上述した区画内に羽毛を収納するに当たり、圧縮空気による空気圧を利用し、当該区画毎にホースで圧送することによって羽毛を充填する。
【0006】
この様な羽毛を利用した構造体では、高密度織物に代表されるダウンプルーフと呼ばれる目の詰んだ布帛が利用されてきた。すなわち、例えば120〜130(g/m)程度の比較的高い面密度で、物理的に羽毛の吹き出しを防ぐ構成となっている。しかしながら、比較的高い面密度であるがゆえに、当該織物は、本来、軽量であるという羽毛の特性をダウンプルーフ構造体に十分に反映することが難しかった。即ち、高面密度であり、かつ、低通気度である上記織物の場合、使用に際しての蒸れや、構造体を押圧変形した後の形状回復性を阻害するという現象が指摘されていた。これに加えて、上述した特許文献2に開示されるような羽毛の充填工程においても、高風量の装置を必要とするため、生産コストの低減を図ることが難しかった。
【0007】
このような観点から、特許文献3には、メルトブロー不織布などからなるエレクトレット不織布の少なくとも片面に、スパンボンドなどの補強用の基材不織布を積層してなる積層不織布シートであって、該積層不織布シートのフラジール法による通気量が8cc/cm2 .sec以上である羽毛用中袋用シートが開示されている。この公報によれば、エレクトレットの機能を利用し、羽毛を積層不織布シート内に把持・保持して離さない効果と、高い通気量を確保することにより、柔らかくて、軽くて、収納性、嵩高回復性に優れた羽毛用中袋用シートを提供することができることが述べられている。しかし、エレクトレット効果は長時間に及ぶ使用により減衰する恐れがあるという課題があり、またメルトブロー不織布が補強されているといっても、それ自体もともと強度に劣るため、物理的な外力に対しても耐久性に優れたものが求められていた。また洗濯耐性についても優れた、より高品質なものが求められていた。また、側地と補強用の基材不織布とを有するため柔軟性が低下するという課題もあり、この点でもより高品質なものが求められていた。
【0008】
【特許文献1】特開昭57−148912号公報
【特許文献2】実公平1−23336号公報
【特許文献3】特開平2006−89865号公報
【非特許文献1】日本羽毛寝具製造業協同組合発行、1999年3月15日、p175
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記要求に答えるべく、ダウンプルーフ構造体に用いる羽毛用中生地、羽毛用中袋およびこれを用いたダウンプルーフ構造体に関し、羽毛の吹き出し防止効果に優れながら、羽毛の吹き込み充填や使用時の形状回復性に優れた通気性を持ち、しかも、柔軟な風合いを有し、さらに長時間の使用や使用頻度の高い場合でも羽毛の吹き出し防止効果を持続するという耐久性に優れたダウンプルーフ構造体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための手段は、請求項1に係る発明では、高密度不織布と中綿不織布とが積層されてなる羽毛用中生地であって、前記高密度不織布は構成繊維として0.5デシテックス未満の極細繊維を含み、通気量が16〜100(cm/cm・s)[JIS L1096に規定されるフラジール法による]からなる不織布であり、前記中綿不織布は構成繊維の平均繊度が0.5〜5デシテックスであり、厚さが5〜20mmであり、且つ面密度が50〜200g/mである不織布からなることを特徴とする羽毛用中生地である。この発明により、羽毛の吹き出し防止効果に優れながら、羽毛の吹き込み充填や使用時の形状回復性に優れた通気性を持ち、しかも、柔軟な風合いを有し、さらに長時間の使用や使用頻度の高い場合でも羽毛の吹き出し防止効果を持続するという耐久性に優れたダウンプルーフ構造体を提供することができる。
【0011】
請求項2に係る発明では、前記中綿不織布の構成繊維の平均繊度が0.7〜2.5デシテックスであることを特徴とする請求項1に記載の羽毛用中生地であり、さらに柔軟で且つ羽毛の噴出し防止効果に優れるという利点がある。
【0012】
請求項3に係る発明では、前記極細繊維が異形断面を有していることを特徴とする請求項1または2に記載の羽毛用中生地であり、同じ繊維径であっても円形断面に較べて、羽毛の吹き出し防止に有効な低通気量を実現し得るという利点がある。
【0013】
請求項4に係る発明では、前記中綿不織布の通気量が70〜300(cm/cm・s)であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の羽毛用中生地であり、特に柔軟な風合いを有すると共に、羽毛の吹き込み充填や使用時の形状回復性に特に優れるという利点がある。
【0014】
請求項5に係る発明では、前記高密度不織布と前記中綿不織布とが接着又は縫製により積層一体化してなることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の羽毛用中生地であり、高密度不織布と中綿不織布とが積層一体化することにより、高密度不織布が一種の補強材として働き中綿不織布の過剰な伸張を防止するという効果と、ダウンプルーフ構造体の生産時の中綿不織布の取り扱いを容易とする利点がある。
【0015】
請求項6に係る発明では、請求項1〜5の何れかに記載の羽毛用中生地の高密度不織布を袋状に形成し、その表面を中綿不織布で被覆してなることを特徴とする羽毛用中袋である。
【0016】
請求項7に係る発明では、請求項6に記載の羽毛用中袋に、羽毛を充填してなることを特徴とする羽毛充填袋体である。
【0017】
請求項8に係る発明では、請求項7に記載の羽毛充填体を、通気性の布帛からなる外生地で被覆してなることを特徴とするダウンプルーフ構造体である。
【0018】
請求項9に係る発明では、前記外生地の通気量が3〜100(cm/cm・s)であることを特徴とする請求項8に記載のダウンプルーフ構造体であり、外生地の通気量がダウンプルーフ構造体の外生地として一般的に用いる外生地よりも通気量が大きいため、従来のダウンプルーフ構造体よりも柔軟性に特に優れるという利点がある。
【0019】
請求項10に係る発明では、前記外生地の通気量が5〜40(cm/cm・s)であることを特徴とする請求項8または9に記載のダウンプルーフ構造体であり、外生地の通気量がダウンプルーフ構造体の外生地として一般的に用いる外生地よりも通気量がさらに大きくなっているため、従来のダウンプルーフ構造体よりもさらに柔軟性に優れるという利点がある。
【発明の効果】
【0020】
上述した本発明の構成によれば、羽毛の吹き出し防止効果に優れながら、羽毛の吹き込み充填や使用時の形状回復性に優れた通気性を持ち、しかも、柔軟な風合いを有し、さらに長時間の使用や使用頻度の高い場合でも羽毛の吹き出し防止効果を持続するという耐久性に優れたダウンプルーフ構造体を提供することができる。特には、外生地と高密度不織布の間に中綿不織布の厚い層を配置することにより、高密度不織布から吹き出した少量の羽毛が外生地に到達しようとしても、その羽毛が中綿不織布に絡まり捕獲されてしまうので、羽毛が外生地に到達しなくなるか、或いは生地に到達するまでの時間が極めて長くなり、結果として外生地から羽毛を吹き出す現象を防止することができる。また、仮に外生地に到達して羽毛の先端が外生地に刺さっても、ダウンプルーフ構造体の使用時の外生地や中綿不織布の動きによって、一旦刺さった羽毛が中綿不織布によって引き戻されるという効果も考えられる。また、外生地と羽毛との間に厚さの厚い中綿不織布が介在するので、外生地を触った時に羽毛の軸の当たりが極めて少なく感触の良いダウンプルーフ構造体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明に係る羽毛用中生地、羽毛用中袋およびこれを用いたダウンプルーフ構造体の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0022】
本発明の羽毛用中生地は、高密度不織布と中綿不織布とが積層されてなる羽毛用中生地であり、前記高密度不織布は構成繊維として0.5デシテックス未満の極細繊維を含み、通気量が16〜100(cm/cm・s)[JIS L1096に規定されるフラジール法による]からなる不織布である。高密度不織布は0.5デシテックス未満の極細繊維を含む限り、その不織布の形態は特に限定されないが、この高密度不織布を袋状に形成してこの袋の中に羽毛を充填することを考慮すると、ある程度の強度が必要である。また、0.5デシテックス未満の極細繊維を含む必要性を考慮すると、好ましい形態としては、例えば、カード法や直接紡糸法によって分割性繊維を含む繊維ウェブを形成した後、水流や溶剤抽出などの作用により、分割性繊維を分割して0.5デシテックス未満の極細繊維を発生させることによって形成される不織布がある。水流による場合は、繊維の絡合も同時に行なうことができるので、より好ましい不織布の形態である。
【0023】
前記分割性繊維とは、2種類以上の繊維形成性樹脂成分が複合された分割可能な複合繊維からなる繊維であり、ニードルパンチや水流などの外力によって分割する分割繊維、および溶剤などによって一部の繊維成分が溶解することによって分割する分割繊維などを適用することができる。また、この分割性繊維の横断面形状は、特に限定されるものではなく、例えば図1の(a)〜(d)に示す形態や海島型の形態がある。これらの横断面形状の中でも、(a)及び(c)に示すミカンの袋形(扇形または楔形)の形状であれば、水流などの外力の作用によって分割し易く、分割した後の繊維強度も高くすることができるので好ましい。また、前記極細繊維の断面形状は円形であることも可能であるが、同じ繊維径であっても円形断面に較べて、羽毛の吹き出し防止に有効な低通気量を実現し得る異形断面とするのが好適である。前記分割性繊維の分割の個数も限定されるものではなく、2個以上であればよく、例えば6〜20分割程度が好ましい。
【0024】
前記分割性繊維がスパンボンド法のように直接紡糸法によって形成された繊維の場合の極細繊維の断面形状については、特開平10−53948号公報などに開示されるミカンの袋形(扇形または楔形)など、長径と短径とを有する種々の幾何学形状とすることができる。尚、上述した極細繊維が異形断面である場合には、その断面積から円形断面の直径に換算した値を意味する。
【0025】
前記分割性繊維を構成する樹脂成分としては、繊維形成能のある2種類以上の樹脂を選択することができ、具体的には、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン系共重合体などのポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート系共重合体、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート系共重合体などのポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン、ポリウレタン、ポリアクリロニトリル、ビニル共重合体、或いはポリグリコール酸、グリコール酸共重合体、ポリ乳酸、乳酸共重合体などの脂肪族ポリエステル系重合体などを挙げることができる。
【0026】
前記極細繊維の繊維径は0.5デシテックス未満であるが、その極細繊維の繊維径は好ましくは5μm以下とするのが好ましい。また、高密度不織布としての引裂き強さを満たす目的で、0.5μm以上、より好ましくは1μm以上の繊維径が好適である。
【0027】
前記高密度不織布は0.5デシテックス未満の極細繊維以外の繊維を含むことが可能であり、このような繊維としては、0.5デシテックス以上である限り特に限定されず、例えば、ポリクラール繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アクリル繊維、モダアクリル繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリウレタン繊維などの合成繊維や、レーヨン、ビスコースなどの再生繊維や、アセテートなどの半合成繊維などを採用することができる。これらの繊維の中でも、洗濯耐性などを考慮すると、合成繊維が好ましく、また難燃性に優れたポリクラール繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、モダアクリル繊維、ポリ塩化ビニル繊維などを必要に応じて採用することも好ましい。
【0028】
前記高密度不織布が0.5デシテックス未満の極細繊維を含む割合は特に限定されないが、5〜70質量%であることが好ましく、10〜50質量%であることがより好ましい。5質量%未満であると、通気量が100(cm/cm・s)を超える場合があり、このため十分に羽毛の吹き出しを防ぐことができなくなる場合がある。また、70質量%を超えると、通気量が16(cm/cm・s)未満となる場合があり、このためダウンプルーフ構造体を形成したときに、柔軟性に劣り、羽毛の吹き込み充填や使用時の形状回復性も不十分となる場合がある。なお、前記極細繊維と他の繊維との混合は、繊維がステープル繊維であると容易であり、ステープル繊維をカード機を用いて均一に混合することができる。前記極細繊維と他の繊維との混合により、必要とされる通気度の値を容易に得ることができる。
【0029】
前記高密度不織布の通気量は16〜100(cm/cm・s)であることが必要であり、30〜90(cm/cm・s)であることが好ましく、40〜80(cm/cm・s)であることがより好ましい。通気量が16(cm/cm・s)未満であると、ダウンプルーフ構造体を形成したときに、柔軟性に劣り、羽毛の吹き込み充填や使用時の形状回復性も不十分となる。また、通気量が100(cm/cm・s)を超えると十分に羽毛の吹き出しを防ぐことができなくなる。
【0030】
前記羽毛用中生地を構成する中綿不織布は、構成繊維の平均繊度が0.5〜5デシテックスであり、厚さが5〜20mmであり、且つ面密度が50〜200g/mである不織布からなる。中綿不織布を構成する不織布は、面密度の割りには嵩高であることを必要とするため、捲縮を有する繊維から形成されていることが好ましい。したがって、この不織布の製法としては、繊維長15〜100mmの、捲縮数5〜70個/インチを有する通常ステープル繊維と呼ばれる繊維をカード機やエアレイ装置などを使用して、繊維ウエブに形成した後、熱接着性繊維による接着方式および/またはスプレー方式などにより熱接着性繊維や接着剤を用いて構成繊維を接着によって結合する方法による、一般的に乾式法と呼ばれる製法によって得られる不織布が好ましい。乾式法による不織布は、厚さ方向に多数の繊維が配向しているので、厚さが大きく、且つ厚さがつぶれ難い利点がある。また、ステープル繊維には、カード機などで開繊可能なように捲縮加工が施されているので、嵩高な不織布となり、且つ圧縮に対しても厚さ方向の反発力に優れる利点がある。また、このような繊維ウエブをニードルなどを用いて機械的に絡めた絡合不織布であることも可能である。
【0031】
前記中綿不織布に耐久性をもたせるには、繊維同士が確実に接着により結合していることが好ましく、このため、熱接着性繊維を含む嵩高な繊維ウエブを形成した後、スプレーによって接着剤を塗布して、その後熱風により加熱処理することによって、繊維ウエブの中央付近では主として繊維接着させ、一方繊維ウエブの両表面付近では主として接着剤による接着を行なうようにすることが好ましい。
【0032】
前記中綿不織布を構成する不織布に用いる繊維も特に限定されず、例えば、ポリクラール繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アクリル繊維、モダアクリル繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリウレタン繊維などの合成繊維や、レーヨン、ビスコースなどの再生繊維や、アセテートなどの半合成繊維などを使用でき、これらの中でも、洗濯耐性などを考慮すると、合成繊維が好ましく、また難燃性に優れたポリクラール繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、モダアクリル繊維、ポリ塩化ビニル繊維なども必要に応じて使用することも好ましい。
【0033】
また、前記中綿不織布を構成する繊維がシリコン処理を施された繊維を含むことも好ましく、このような繊維を含むことによって、繊維間で滑りが生じ、結果として中綿不織布非常に柔軟な感触を付与することができる。シリコン処理を施された繊維の混合割合は、前記中綿不織布を構成する繊維ウエブ中に30〜90質量%含むことが好ましく、40〜80質量%含むことがより好ましく、50〜70質量%含むことが更に好ましい。
【0034】
また、前記中綿不織布を構成する不織布が熱接着性繊維を含むことも好ましく、このような熱接着性繊維の態様としては、低融点の成分を有し、低融点の成分を繊維表面の少なくとも一部に露出する繊維である限り特に限定されず、(1)1つの融着成分のみからなる態様、(2)1つ以上の樹脂成分を融着成分で被覆した態様(芯鞘型又は海島型など)、又は1つ以上の樹脂成分と融着成分とを隣り合わせに配置した態様(サイドバイサイド型など)がある。なお、低融点の成分を有する繊維とは、熱接着性繊維を構成する樹脂成分のうち最も低い融点を有する樹脂成分の融点が、他の繊維を構成する樹脂成分のうち最も低い融点を有する樹脂成分の融点よりも低い繊維であり、この場合20℃以上低いことが好ましく、より好ましくは30℃以上、さらに好ましくは40℃以上低いことが好ましい。なお、本発明における融点は、示差熱量計を用い、昇温温度20℃/分で、室温から昇温して得られる融解吸収曲線の極値を与える温度をいう。
【0035】
前記熱接着性繊維を構成する繊維形成性樹脂の種類も、特に限定されるものではなく、例えば、ポリアミド系樹脂(例えば、6ナイロン、66ナイロンなど)、ポリエステル系樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなど)、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、ポリ塩化ビニリデン系樹脂などを挙げることができる。これらの樹脂の中でも、ポリエステル系樹脂を少なくとも一成分として選択することにより、高い強度と、優れた耐久性を付与することができるので好ましい。
【0036】
前記熱接着性繊維の混合割合も特に限定されず、前記中綿不織布を構成する繊維ウエブ中に3〜40質量%含むことが好ましく、5〜30質量%含むことがより好ましく、5〜20質量%含むことが更に好ましい。
【0037】
前記不織布は高捲縮の繊維を含むことも好ましく、高捲縮の繊維の捲縮数が5〜20個/インチであることが好ましく、6〜15個/インチであることがより好ましい。このような高捲縮の繊維は、繊維形成性樹脂成分を2成分有するサイドバイサイド型複合繊維、または偏芯の芯鞘型複合繊維の加熱処理によってスパイラル状の捲縮を付与して得ることができる。
【0038】
本発明では、前記中綿不織布の平均繊度が0.5〜5デシテックスであることが必要であり、0.5〜3デシテックスであることがより好ましく、0.7〜2.5デシテックスであることが更に好ましい。0.5デシテックス未満では、中綿不織布の厚さを確保できなくなり、またカード機を用いることが困難になるという問題が生じる。また、5デシテックスを超える場合は、中綿不織布の繊維組織が粗くなり、羽毛を捕捉する効果が低下するという問題がある。なお、平均繊度の計算方法としては、各繊維の繊度をaデシテックス、bデシテックス、cデシテックス・・・として、各繊維の含有割合をそれぞれa’質量%、b’質量%、c’質量%・・・とすると、(a’/a)+(b’/b)+(c’/c)・・・=(100/x)の関係式が成り立ち、この関係式から平均繊度xを求めることができる。
【0039】
前記中綿不織布の厚さは5〜20mmであることが必要であり、8〜15mmであることがより好ましい。5mm未満では、中綿の厚さが薄くなりすぎて羽毛を捕捉する効果が低下するという問題がある。また、20mmを超える場合は、内包する羽毛の充填量を十分に確保することが困難になる。なお、厚さは、0.5gf/cmの圧力下における厚さで表すものとする。
【0040】
前記中綿不織布の面密度は50〜200g/mであることが必要であり、80〜150g/mであることがより好ましい。50g/m未満では、中綿の厚さが薄くなりすぎて羽毛を捕捉する効果が低下するという問題がある。また、200g/mを超える場合は、繊維の密度が高くなり過ぎて、ダウンプルーフ構造体の使用時の形状回復性に劣るという問題がある。
【0041】
本発明では、前記中綿不織布が前述の構成(平均繊度が0.5〜5デシテックスであり、厚さが5〜20mmであり、且つ面密度が50〜200g/mである)を有するため、前記高密度不織布に内包された羽毛が高密度不織布を突き抜けて来ても、この突き抜けた羽毛を捕獲する作用を有する。すなわち、ダウンプルーフ構造体の外生地にこの羽毛が到達しようとしても羽毛が中綿不織布に絡まり捕獲されてしまい、羽毛が外生地に到達しなくなるか、或いは外生地に到達するまでの時間が極めて長くなり耐久性に優れるという効果が生じる。また、仮に外生地に到達して羽毛の先端が外生地に刺さっても、ダウンプルーフ構造体の使用時の外生地や中綿不織布の動きによって、一旦刺さった羽毛が中綿不織布によって引き戻されるという効果も考えられる。また、ダウンプルーフ構造体を洗濯すると、水によって羽毛が収束して外生地から吹き出し易くなってしまうが、本発明では中綿不織布が介在することによって、このような吹き出しをも防止することが可能となり、洗濯耐性が向上するという効果がある。
【0042】
また、前記中綿不織布をダウンプルーフ構造体の外生地と羽毛との間に介在させることによって、外生地と羽毛との間に厚さの厚い中綿不織布が介在することになり、外生地を触った時に羽毛の軸の当たりが極めて少なくなる。その結果、感触の非常に優れたダウンプルーフ構造体が得られるという効果がある。
【0043】
本発明の羽毛用中生地は、前記高密度不織布と前記中綿不織布とが接着又は縫製により積層一体化していることも好ましい。高密度不織布と中綿不織布とが積層一体化することにより、高密度不織布が一種の補強材として働き中綿不織布の過剰な伸張を防止するという効果と、ダウンプルーフ構造体の生産時の中綿不織布の取り扱いを容易とする利点がある。接着の方法としては例えばホットメルト不織布などを用いて両者を貼り合わせる方法がある。また、部分的に接着や縫製を行ない、柔軟性を確保することも好ましい方法である。
【0044】
本発明の羽毛用中袋は、前記羽毛用中生地の高密度不織布を袋状に形成し、その表面を中綿不織布で被覆して形成されている。当該羽毛用中袋の形態としては、例えば高密度不織布を1つの袋状に形成した後、その袋状体に羽毛を充填して、得られた充填体を全体的に又部分的に中綿不織布で取り巻き、中綿不織布を固定して得られる羽毛充填袋体において、その羽毛充填袋体を構成している羽毛用中袋がある。また、例えば高密度不織布を袋状に形成し、上下の高密度不織布に縦横の仕切布を交差させて止着し、袋状の高密度不織布に複数の区画を形成し、この区画内に羽毛を充填した後、得られた充填体を全体的に又部分的に中綿不織布で取り巻き、中綿不織布を固定して得られる羽毛充填袋体において、その羽毛充填袋体を構成している羽毛用中袋がある。また、例えば前記高密度不織布と前記中綿不織布とを接着又は縫製により積層一体化させておき、この積層一体化物を袋状に形成して得られる羽毛用中袋がある。また、例えば高密度不織布を袋状に形成して羽毛を内包しておき、さらにダウンプルーフ構造体の表面を形成する外生地を袋状に形成しておき、当該外生地と当該高密度不織布の間に中綿不織布を介在させて得られるダウンプルーフ構造体において、その構造体を構成している羽毛用中袋がある。
【0045】
本発明の羽毛充填袋体は、前述のように本発明の羽毛用中袋に羽毛が充填された形態を有している。羽毛の充填は従来公知の方法によることができる。前記高密度不織布と前記中綿不織布とを接着又は縫製により積層一体化させた場合においても、前記羽毛用中袋は通気量が大きく、且つ強度も優れているため羽毛の充填が容易である。
【0046】
本発明のダウンプルーフ構造体は、本発明の羽毛充填体が通気性の布帛からなる外生地で被覆された形態を有している。当該外生地は、ダウンプルーフ構造体の表面を形成する生地であり、一般的には側地と称されることがある。この外生地は、通気性の布帛からなる限り特に限定されず、綿織物として平織、綾織、または朱子織や、合繊織物としてフィラメント織物、スパン織物、綿混紡織物などを適用することが可能である。また、染色などの着色や意匠柄を熱エンボスによる付与した生地、或いは種々の難燃処理などの後加工を施した生地も可能である。また、より軽量化を図る上では、不織布であることが好ましい。不織布の場合、ある程度の強度が必要であり、この点から前記生地が極細繊維で構成された不織布であることが好ましい。
【0047】
また、前記外生地の通気量は3〜100(cm/cm・s)であることが好ましい。このように、外生地の通気量がダウンプルーフ構造体の外生地として一般的に用いる外生地よりも通気量が大きいため、従来のダウンプルーフ構造体よりも柔軟性に特に優れるという利点がある。また、外生地の通気量が5〜40(cm/cm・s)であることがより好ましい。この場合外生地の通気量がダウンプルーフ構造体の外生地として一般的に用いる外生地よりも通気量がさらに大きくなっているため、従来のダウンプルーフ構造体よりもさらに柔軟性に優れるという利点がある。外生地の通気量が3(cm/cm・s)未満であると、外生地のみで羽毛の吹き出し防止効果が生じので、その分羽毛用中生地による効果が少なくなる場合がある。また、外生地の通気量が100(cm/cm・s)を越えると、繊維組織が粗くなり耐久性に劣る場合がある。
【0048】
前記ダウンプルーフ構造体の態様は、例えば高密度不織布を袋状に形成して羽毛を内包しておき、さらに外生地を袋状に形成しておき、当該外生地と当該高密度不織布の間に中綿不織布を介在させて得られるダウンプルーフ構造体がある。また、例えば高密度不織布と中綿不織布とを接着又は縫製により積層一体化させておき、この積層一体化物を袋状に形成して得られる羽毛用中袋に羽毛を充填した羽毛充填体を形成しておき、この羽毛充填体を、袋状に形成した外生地に挿入して得られるダウンプルーフ構造体がある。また、例えば高密度不織布を1つの袋状に形成した後、その袋状体に羽毛を充填して、得られた充填体を全体的に又部分的に中綿不織布で取り巻き、中綿不織布を固定して得られる羽毛充填袋体を、袋状に形成した外生地に挿入して得られるダウンプルーフ構造体がある。また、例えば高密度不織布を袋状に形成し、上下の高密度不織布に縦横の仕切布を交差させて止着し、袋状の高密度不織布に複数の区画を形成し、この区画内に羽毛を充填した後、得られた充填体を全体的に又部分的に中綿不織布で取り巻き、中綿不織布を固定して得られる羽毛充填袋体を、袋状に形成した外生地に挿入して得られるダウンプルーフ構造体がある。
【0049】
本発明のダウンプルーフ構造体は、外生地と羽毛による層との間に羽毛用中生地が介在しており、羽毛用中生地は高密度不織布と中綿不織布とから構成されおり、袋状となった高密度不織布に羽毛が内包されている。そして、中綿不織布が前述の構成(平均繊度が0.5〜5デシテックスであり、厚さが5〜20mmであり、且つ面密度が50〜200g/mである)を有するため、高密度不織布に内包された羽毛が高密度不織布を突き抜けて来ても、この突き抜けた羽毛を捕獲する作用を有する。すなわち、外生地にこの突き抜けた羽毛が到達しようとしても羽毛が中綿不織布に絡まり捕獲されてしまい、羽毛が外生地に到達しなくなるか、或いは外生地に到達するまでの時間が極めて長くなり耐久性に優れるという効果が生じる。また、仮に外生地に到達して羽毛の先端が外生地に刺さっても、ダウンプルーフ構造体の使用時の外生地や中綿不織布の動きによって、一旦刺さった羽毛が中綿不織布によって引き戻されるという効果も考えられる。このように、ダウンプルーフ構造体は、羽毛の吹き出し防止効果に優れるとともに、羽毛用中生地の通気性が高く、柔軟性を有するので、ダウンプルーフ構造体全体も柔軟な構造となっている。また、ダウンプルーフ構造体を洗濯すると、水によって羽毛が収束して外生地から吹き出し易くなってしまうが、本発明では中綿不織布が介在することによって、このような吹き出しをも防止することが可能となり、洗濯耐性が向上するという効果がある。
【0050】
また、前記中綿不織布が外生地と羽毛による層との間に介在しているので、外生地と羽毛との間に厚さの厚い中綿不織布が介在することになり、外生地を触った時に羽毛の軸の当たりが極めて少なくなる。その結果、感触の非常に優れたダウンプルーフ構造体が得られるという効果がある。
【0051】
このように、本発明のダウンプルーフ構造体は、羽毛の吹き出し防止効果に優れながら、羽毛の吹き込み充填や使用時の形状回復性に優れた通気性を持ち、しかも、柔軟な風合いを有し、さらに長時間の使用や使用頻度の高い場合でも羽毛の吹き出し防止効果を持続するという優れた耐久性を有している。
【0052】
以下、本発明の実施例につき説明するが、これは発明の理解を容易とするための好適例にすぎず、本発明はこれら実施例の内容に限定されるものではない。
【実施例】
【0053】
(羽毛の吹き出し試験)
評価用サンプルに対して、羽毛の吹き出しについて評価する。吹き出した羽毛の目視を容易とするため、試験サンプルを黒色の試験台上に置き、当該サンプルを両手で400回、180秒間に渡って等速度で叩くようにして圧縮を繰り返す。この後、試験台上に落ちた羽毛を粘着テープで収集し、その数を目視で計数する。なお、試験は2個のサンプルについて行い、落ちた羽毛の数の平均値を算出して、その平均値を用いて、以下の評価基準により等級付けを行なう。
【0054】
(評価基準)
5級:3本以下
4級:4〜10本
3級:11〜16本
2級:17〜25本
1級:25本以上
【0055】
(洗濯試験後の羽毛吹き出し試験)
JIS L0217:1995「繊維製品の取り扱いに関する表示記号及びその表示方法」の「付表1 記号別の試験方法−洗い方(水洗い)」の番号103に記載される試験方法に準じて洗濯操作を行う。
自動反転式洗濯機の水準線まで温度40±3℃の水を入れ(水量32リットル)、これに2g/リットルの割合で、無リン合成洗剤を加え、よく攪拌して洗剤を溶解する。洗濯物質量が600gになるように、試験サンプル数個に綿布などの負荷布を若干数加えて洗濯液に投入し、洗濯操作を行う。1回の洗濯操作は、15分間洗濯後、遠心脱水機で1分間脱水し、清水で5分間すすぎを行う操作として、この操作を5回繰り返し行う。その後、試験サンプルを自然乾燥して、羽毛吹き出し試験サンプルとする。その後、この試験サンプルの表面に突き出ている羽毛を目視で計数する。なお、試験は2個の試験サンプルについて行い、表面に突き出ている羽毛の数の平均値を算出して、その平均値を用いて、以下の評価基準により等級付けを行なう。
【0056】
(評価基準)
5級:3本以下
4級:4〜10本
3級:11〜16本
2級:17〜25本
1級:25本以上
【0057】
(風合いの評価)
ダウンプルーフ構造体を手で持った時に、柔軟と感じた場合を○とし、やや硬いと感じた場合を△とし、硬いと感じた場合を×とする。
【0058】
(原材料調整)
(1)高密度不織布Aの作製
分割性繊維として2.2デシテックスの複合繊維(繊維長51mm、横断面形状が図1(c)に示すミカンの袋形(扇形または楔形)で分割数16、第1樹脂成分はポリエステル樹脂、第2樹脂成分はポリアミド樹脂)30%と、1.45デシテックスのポリエステル繊維(繊維長38mm)70%とからなる原料繊維をカード機を使用して、繊維ウエブ(クロスレイ繊維ウエブ)を作製した。次いで、この繊維ウエブを金網コンベアーの上に載置して、孔径0.13mmのノズル孔が直線状に配列されたノズルを用いて、ノズル内圧力を80MPa以上として繊維ウエブの上方から繊維ウエブ向けて、柱状水流を噴射した。次いで、繊維ウエブを反転して繊維ウエブの反対面にも同様にして、柱状水流を噴射して、分割性繊維を分割させて極細繊維を形成させると共に繊維同士を交絡させ、その後150℃に保持された熱風循環型ドライヤーの中で乾燥させて、面密度が80g/mで、240gf/cmの圧力下における厚さが0.30mmの高密度不織布Aを作製した。この高密度不織布Aに含まれる極細繊維の横断面は楔形の異形断面を示しており、電子顕微鏡による観察では、円形断面に換算した繊維径は約3μmであり、元になる複合繊維の約90%以上が分割されていた。この高密度不織布AをJIS L1096に規定されたフラジール法によって測定した通気量は44(cm/cm・s)であった。
(2)高密度不織布Bの作製
1.45デシテックスのポリエステル繊維(繊維長51mm)100%からなる原料繊維をカード機を使用して、繊維ウエブ(クロスレイ繊維ウエブ)を作製した。次いで、この繊維ウエブを金網コンベアーの上に載置して、孔径0.13mmのノズル孔が直線状に配列されたノズルを用いて、ノズル内圧力を80MPa以上として繊維ウエブの上方から繊維ウエブ向けて、柱状水流を噴射した。次いで、繊維ウエブを反転して繊維ウエブの反対面にも同様にして、柱状水流を噴射して、分割性繊維を分割させて極細繊維を形成させると共に繊維同士を交絡させ、その後150℃に保持された熱風循環型ドライヤーの中で乾燥させて、面密度が40g/mで、240gf/cmの圧力下における厚さが0.21mmの高密度不織布Bを作製した。この高密度不織布Bの通気量は221(cm/cm・s)であった。
【0059】
(3)中綿不織布Aの作製
繊維表面の滑り性を向上するためシリコン系油剤を付着加工した1.1デシテックスのポリエステル繊維(繊維長38mm)60%と、2.2デシテックスの高捲縮ポリエステル繊維(繊維長64mm、サイドバイサイド型複合繊維、第1樹脂成分及び第2樹脂成分がポリエステル樹脂、捲縮数7.5個/インチ)30質量%と、2.2デシテックスの熱接着性繊維(繊維長51mm、芯鞘型複合繊維、融点110℃のポリエステル樹脂が鞘成分で、融点250℃のポリエステル樹脂が芯成分)10質量%とからなる原料繊維をカード機を使用して、面密度112g/mの繊維ウエブ(クロスレイ繊維ウエブ)を作製した。次に、アクリル系樹脂(Tg=−34℃)のエマルション液を調製し、この繊維ウエブの両面に、片面あたり面密度が4g/m(乾燥固形分)となるようスプレーして、その後乾燥及びキュアリングを施して、面密度が120g/mで、0.5gf/cmの圧力下における厚さが12.2mmの中綿不織布Aを作製した。この中綿不織布Aの通気量は161(cm/cm・s)であった。また、この中綿不織布Aの構成繊維の平均繊度は1.4デシテックスであった。
【0060】
(4)中綿不織布Bの作製
繊維表面の滑り性を向上するためシリコン系油剤を付着加工した1.1デシテックスのポリエステル繊維(繊維長38mm)60%と、2.2デシテックスの高捲縮ポリエステル繊維(繊維長64mm、サイドバイサイド型複合繊維、第1樹脂成分及び第2樹脂成分がポリエステル樹脂、捲縮数7.5個/インチ)30質量%と、2.2デシテックスの熱接着性繊維(繊維長51mm、芯鞘型複合繊維、融点110℃のポリエステル樹脂が鞘成分で、融点250℃のポリエステル樹脂が芯成分)10質量%とからなる原料繊維をカード機を使用して、面密度41g/mの繊維ウエブ(クロスレイ繊維ウエブ)を作製した。次に、アクリル系樹脂(Tg=−34℃)のエマルション液を調製し、この繊維ウエブの両面に、片面あたり面密度が2g/m(乾燥固形分)となるようスプレーして、その後乾燥及びキュアリングを施して、面密度が45g/mで、0.5gf/cmの圧力下における厚さが4.7mmの中綿不織布Bを作製した。この中綿不織布Bの通気量は355(cm/cm・s)であった。また、この中綿不織布Bの構成繊維の平均繊度は1.4デシテックスであった。
(5)外生地Aの準備
外生地として、単糸40番手の綿糸を使い、織り密度が縦120×横80(本/インチ)の平織物の生地からなる外生地Aを準備した。この外生地Aの面密度は113g/mであり、240gf/cmの圧力下における厚さは0.13mmであり、この外生地Aの通気量は20.0(cm/cm・s)であった。
【0061】
(実施例1)
前述の高密度不織布Aを1つの袋状に縫製して袋状体を形成した後、その袋状体に羽毛としてダウン90質量%とフェザー10質量%とからなるホワイトグースダウン30gを吹き入れ、得られた充填体を全体的に、前述の中綿不織布Aで取り巻き、中綿不織布Aの重なった部分を縫製して固定して羽毛充填袋体Aを得た。この羽毛充填袋体Aは、高密度不織布Aと中綿不織布Aとが積層されて羽毛用中生地Aが形成されているとともに羽毛用中袋Aとなっており、この羽毛用中袋Aに羽毛が充填された形態となっていた。また、羽毛用中生地Aの通気量は37(cm/cm・s)であった。次いで、前述の外生地Aを外形が30cm×30cm角となるように袋状に縫製して袋状体を形成して、この袋状体の中に前記羽毛充填袋体Aを挿入して、袋状体の開放端を縫製により閉じて、外生地Aを側地とした実施例1のダウンプルーフ構造体を作製した。なお、外生地Aの縫製は運針数18(本/3cm)の条件で2本針の工業用ミシンで行った。得られたダウンプルーフ構造体の評価結果を表1に示す。
【0062】
(比較例1)
高密度不織布Aの替わりに高密度不織布Bを用いたこと以外は実施例1と同様にして、比較例1のダウンプルーフ構造体を作製した。なお、羽毛用中生地Bの通気量は102(cm/cm・s)であった。得られたダウンプルーフ構造体の評価結果を表1に示す。
【0063】
(比較例2)
中綿不織布Aの替わりに中綿不織布Bを用いたこと以外は実施例1と同様にして、比較例2のダウンプルーフ構造体を作製した。なお、羽毛用中生地Cの通気量は42(cm/cm・s)であった。得られたダウンプルーフ構造体の評価結果を表1に示す。
【0064】
(比較例3)
中綿不織布Aを用いなかったこと以外は実施例1と同様にして、比較例3のダウンプルーフ構造体を作製した。すなわち、高密度不織布Aを1つの袋状に縫製して袋状体を形成した後、その袋状体に羽毛としてダウン90質量%とフェザー10質量%とからなるホワイトグースダウン30gを吹き入れ、羽毛充填袋体Cを得た。次いで、外生地Aの外形が30cm×30cm角となるように袋状体を縫製して形成して、この袋状体の中に前記羽毛充填袋体Cを挿入して、袋状体の開放端を縫製により閉じて、外生地Aを側地とした比較例3のダウンプルーフ構造体を作製した。なお、外生地Aの縫製は運針数18(本/3cm)の条件で2本針の工業用ミシンで行った。得られたダウンプルーフ構造体の評価結果を表1に示す。
【0065】
(表1)

(*1) 240gf/cmの圧力下、中綿不織布のみ0.5gf/cmの圧力下
【0066】
上記の表1からも理解できるように、実施例1に係るダウンプルーフ構造体は、0.5デシテックス未満の極細繊維を含有しない高密度不織布を有する比較例1に係る構造体よりも羽毛の吹き出しが少なく、洗濯試験ではさらに羽毛の吹き出しが少ない。また、中綿不織布の面密度及び厚さが少ない比較例2に係る構造体よりも羽毛の吹き出しが少なく、洗濯試験ではさらに羽毛の吹き出しが少ない。また、中綿不織布を有しない比較例3は、羽毛の吹き出しが非常に多いことが分かる。また、実施例1に係るダウンプルーフ構造体は、外生地と高密度不織布の間に中綿不織布を有しているので、外生地と高密度不織布とが直接に接することがなく、結果としてごわごわした感触がない構造体であった。また中綿不織布による反発性も有しているので、結果として柔軟な感触を有する構造体であった。また、外生地を触った時に羽毛の軸の当たりが極めて少なく感触の良い構造体となっていた。また、通気性にも優れるため、形状回復性に優れた構造体であった。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】(a)は本発明で用いる分割性繊維の断面の例、(b)は本発明で用いる分割性繊維の断面の別の例、(c)は本発明で用いる分割性繊維の断面の別の例、(d)は本発明で用いる分割性繊維の断面の別の例を示す図である。
【符号の説明】
【0068】
1.樹脂成分
2.他の樹脂成分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高密度不織布と中綿不織布とが積層されてなる羽毛用中生地であって、前記高密度不織布は構成繊維として0.5デシテックス未満の極細繊維を含み、通気量が16〜100(cm/cm・s)[JIS L1096に規定されるフラジール法による]からなる不織布であり、前記中綿不織布は構成繊維の平均繊度が0.5〜5デシテックスであり、厚さが5〜20mmであり、且つ面密度が50〜200g/mである不織布からなることを特徴とする羽毛用中生地。
【請求項2】
前記中綿不織布の構成繊維の平均繊度が0.7〜2.5デシテックスであることを特徴とする請求項1に記載の羽毛用中生地。
【請求項3】
前記極細繊維が異形断面を有していることを特徴とする請求項1または2に記載の羽毛用中生地。
【請求項4】
前記中綿不織布の通気量が70〜300(cm/cm・s)であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の羽毛用中生地。
【請求項5】
前記高密度不織布と前記中綿不織布とが接着又は縫製により積層一体化してなることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の羽毛用中生地。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかに記載の羽毛用中生地の高密度不織布を袋状に形成し、その表面を中綿不織布で被覆してなることを特徴とする羽毛用中袋。
【請求項7】
請求項6に記載の羽毛用中袋に、羽毛を充填してなることを特徴とする羽毛充填袋体。
【請求項8】
請求項7に記載の羽毛充填体を、通気性の布帛からなる外生地で被覆してなることを特徴とするダウンプルーフ構造体。
【請求項9】
前記外生地の通気量が3〜100(cm/cm・s)であることを特徴とする請求項8に記載のダウンプルーフ構造体。
【請求項10】
前記外生地の通気量が5〜40(cm/cm・s)であることを特徴とする請求項8または9に記載のダウンプルーフ構造体。

【図1】
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【公開番号】特開2008−303479(P2008−303479A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−150017(P2007−150017)
【出願日】平成19年6月6日(2007.6.6)
【出願人】(000229542)日本バイリーン株式会社 (378)
【Fターム(参考)】