説明

耐アルカリ炉材の耐用性評価試験方法

【課題】簡単かつ短時間でソーダ化反応に対する耐用性を試験することができ、しかも、実機での試験と同等程度の結果を得ることが可能である耐アルカリ炉材の耐用性評価試験方法を提供する。
【解決手段】アルカリ系材料3aを使用したソーダ化反応を行う炉に使用される炉材の評価試験方法であって、炉材の材料によって形成された炉材成形体2の試験面2aに、アルカリ系材料3aを含有する試験材料3を載せて試験体1を形成する試験体形成工程と、試験体形成工程において形成された試験体1を加熱する加熱工程と、加熱工程終了後、試験体1を冷却する冷却工程と、を繰り返して行う。実機よりも過酷な条件で炉材成形体2の試験を行うことができるから、炉材成形体2の損傷の評価を短時間で行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐アルカリ炉材の耐用性評価試験方法に関する。さらに詳しくは、ソーダ化反応が生じる設備、例えば、石油精製所における脱硫に使用される脱硫触媒等の有価金属を有する廃触媒などをソーダ化反応させる反応炉や、ソーダ化反応等が生じる各種熔解炉などにおいて使用される耐アルカリ炉材の耐用性評価試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石油精製所における脱硫塔では、脱硫触媒によって石油が脱硫される。
かかる脱硫触媒による脱硫は、石油と高圧水素とを脱硫触媒上で反応させ、硫黄化合物を硫化水素に変えて除去する水素化脱硫によって行われる。しかし、かかる水素化脱硫作業を行うにつれ、脱硫触媒はその触媒活性が低下するので、触媒活性を失った脱硫触媒(廃触媒)は新しい脱硫触媒と交換される。
【0003】
ここで、水素化脱硫処理によって、石油中に含まれていたバナジウム等の有価金属が石油から脱硫触媒に移動する。また、脱硫触媒は、もともとモリブデン等の有価金属を含有している。つまり、廃触媒には、バナジウムやモリブデン等の有価金属が含まれているので、廃触媒から有価金属を回収して有価金属を再利用することが行われている。
【0004】
上記のごとき廃触媒から有価金属を回収する方法として、有価金属を水に溶解する可溶性塩としてから回収することが行われている(例えば、特許文献1)。
具体的には、廃触媒とアルカリ金属やアルカリ土類金属の塩とを酸素が存在する雰囲気において、ロータリーキルンによってソーダ焙焼する。すると、廃触媒中のモリブデンやバナジウム等の有価金属は、酸化しかつアルカリ金属やアルカリ土類金属の塩と反応して可溶性塩となる。この可溶性塩となった有価金属を含む焙焼物を浸出すると、モリブデン、バナジウムの水溶液が得られるので、この水溶液に塩析・酸沈法を適用すれば、三酸化モリブデン(MoO)、五酸化バナジウム(V)を得ることができる。
【0005】
ところで、ロータリーキルンは、回転可能な円筒状のキルン本体内部で加熱処理などを行うため、キルン本体内部は、高温域では1000℃近い高温の状態となる。しかるに、キルン本体は金属製の中空な筒状の回転体であるので、かかる高温の状態では強度を維持することができない。このため、キルン本体は、シェルを高温と腐食から保護するために、その内面に耐火断熱のためのライニングなど(以下、炉材という)を施工した構造となっており、キルン本体の損傷を防いでいる。
【0006】
しかし、上述したように、ロータリーキルン内で廃触媒を、例えばソーダ灰とともに加熱処理する場合には、炉材は上述したような高温による損傷に加えて、溶融したソーダ灰、酸化ナトリウム、硫酸ナトリウム等によって炉材が浸食されて損傷を生じる可能性がある。
また、廃触媒に含まれるバナジウム・モリブデン等も炉材を浸食する作用を有しているし、廃触媒を加熱処理した際に発生する硫黄酸化物によっても炉材が損傷する可能性がある。
そして、上述したような原因によって炉材が損傷すれば、その補修のためにロータリーキルンの操業を停止して補修を行わなければならず、ロータリーキルンの稼働率の低下を招き、また補修費用の増加や廃棄物の増加にもなる。
【0007】
このように、ロータリーキルンにおける廃触媒の加熱処理において稼働率を向上させかつ補修費用を抑える上では、上述したような非常に過酷な条件でも長期間の使用に耐えうる炉材が必要である。
【0008】
また、ロータリーキルンにおける廃触媒の加熱処理に限らず、その他の加熱炉などにおいても、ソーダ化反応が生じる場合には、溶融したソーダ灰などによる炉材の浸食に耐えうる炉材が必要である。
上記のごとき事情もあり、ソーダ灰などによる浸食等に対する耐用性の高い炉材が求められており、かかる炉材の開発とともに、かかる炉材の耐用性を試験する試験方法が求められている。
【0009】
しかるに、現状では、上述したような過酷な条件における耐用性を試験する有効な方法は存在していない。このため、現状では、実際の操業を行っているロータリーキルン等の加熱炉において、炉材の一部にまたは部分的に試験用炉材を施工して試験用炉材の耐用性試験を行っている。
しかし、試験用炉材が操業中に損傷するリスクを伴うほか、操業を行っている加熱炉を頻繁に停止させることができず、かつ、試験期間を短縮した加速試験もできないため試験に長期間を要する上、非常に大がかりな試験となるという問題がある。
【0010】
炉材の耐用性を、簡単かつ短時間で、しかも、実機での試験と同等程度の結果が得られる耐用性試験が開発されれば、炉材開発および、加熱炉に使用する炉材の選定において非常に有効である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2003−284955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は上記事情に鑑み、簡単かつ短時間で炉材の耐用性を試験することができ、しかも、実機での試験と同等程度の結果を得ることが可能である耐アルカリ炉材の耐用性評価試験方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1発明の耐アルカリ炉材の耐用性評価試験方法は、アルカリ系材料を使用した反応が生じる炉に使用される炉材の評価試験方法であって、前記炉材の材料によって形成された炉材成形体の試験面に、アルカリ系材料と該アルカリ系材料と反応する被反応物質とを含有する試験材料を載せて試験体を形成する試験体形成工程と、該試験体形成工程において形成された前記試験体を加熱する加熱工程と、該加熱工程終了後、前記試験体を冷却する冷却工程と、を繰り返して行うことを特徴とする。
第2発明の耐アルカリ炉材の耐用性評価試験方法は、第1発明において、前記アルカリ系材料は、前記試験材料に含有されている被反応物質に対して4倍当量以上となるように、該試験材料に添加されていることを特徴とする。
第3発明の耐アルカリ炉材の耐用性評価試験方法は、第1または第2発明において、前記冷却工程終了後、前記試験体形成工程を行う前に、前記冷却工程において冷却された前記試験体の炉材成形体の試験面から、前記試験材料を除去する試験材料除去工程を行うことを特徴とする。
第4発明の耐アルカリ炉材の耐用性評価試験方法は、第1、第2または第3発明において、前記試験材料に含まれるアルカリ系材料の量が、前記試験材料に含有されている全ての被反応物質と反応し得る量であり、かつ、該アルカリ系材料が全て熔融しても前記炉材成形体の試験面からその側面に流れない量に調整されていることを特徴とする。
第5発明の耐アルカリ炉材の耐用性評価試験方法は、第1、第2、第3または第4発明において、前記試験材料が、バナジウムおよび/またはモリブデンを含有するものであることを特徴とする。
第6発明の耐アルカリ炉材の耐用性評価試験方法は、第1、第2、第3、第4または第5発明において、前記試験材料が、アルカリ系材料と、該アルカリ系材料と反応する被反応物質とを含有する処理対象物と、とからなり、前記試験体形成工程において、前記炉材成形体の試験面に前記処理対象物を載せた後、該処理対象物の上に前記アルカリ系材料を載せて試験体を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
(加速試験)
第1発明によれば、炉材成形体の試験面にアルカリ系材料を含有する試験材料を載せた状態での加熱と、加熱後の冷却とを繰り返して行うので、炉材成形体は膨張収縮を繰り返すことになる。炉材成形体においてアルカリ系材料等が浸透した部分は変質して脆くなっているため、膨張収縮が繰り返される試験は、高温状態で連続して運転される実機と比べて、炉材成形体に与える損傷負荷が大きくなる。すなわち、実機よりも過酷な条件で炉材成形体の試験を行うことができることから、炉材成形体の損傷の評価を短時間で繰り返し行うことができる。しかも、短時間で試験を行うことができるので、炉材成形体の損傷が生じるまで試験を行うことも可能となるから、炉材成形体の耐用性を適切に評価することができる。
第2発明によれば、実機に比べてアルカリ系材料の量が多くなるので、アルカリ系材料による炉材損傷が実機よりも生じやすい過酷な条件で試験を行うことができる。したがって、炉材成形体の損傷の評価をより短時間で行うことができる。
第3発明によれば、繰り返し試験を行う際に、常に新しい試験材料が炉材成形体に接触する状況で加熱が行われる。つまり、加熱工程では、試験材料と炉材成形体との接触状態を実機とほぼ同じ状態とすることができるので、炉材の耐用性を正確に評価することができる。
第4発明によれば、熔融した全てのアルカリ系材料を炉材成形体の試験面上に留めておくことができるので、試験材料中の全ての被反応物質をアルカリ系材料と反応させることができ、しかも、反応に使用されなかったアルカリ系材料を確実に炉材成形体と反応させることができる。すると、想定した量のアルカリ系材料による炉材成形体の損傷を把握できるので、炉材成形体の耐用性を適切に評価することができる。
第5発明によれば、アルカリ系材料による炉材成形体の損傷だけでなく、バナジウムおよび/またはモリブデンによる炉材成形体の損傷も評価できるので、バナジウムおよび/またはモリブデンをソーダ化処理する炉等に使用する炉材の耐用性を実機に近い状態で適切に評価することができる。
第6発明によれば、上層に載ったアルカリ系材料が溶融して処理対象物内に流下するので、処理対象物中のモリブデン、バナジウム等の被反応物質とアルカリ系材料とが反応しながら炉材成形体へ浸透する状態となる。したがって、アルカリ系材料および処理対象物の挙動や状態を、実機内における挙動等とほぼ同様な状態で試験を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の耐アルカリ炉材の耐用性評価試験方法のフローチャートである。
【図2】試験体1の概略説明図である。
【図3】実施例1の実験結果である。
【図4】実施例1の実験結果である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
本発明の耐アルカリ炉材の耐用性評価試験方法は、ソーダ化反応等の各種反応が生じる炉の炉材を評価する方法であって、実機を使用した炉材の耐用性試験に比べて、短時間かつ簡単に炉材の耐用性を評価できる方法である。
なお、本明細書において、実機とは、ロータリーキルンや、各種熔解炉、各種加熱炉、各種保持炉などの炉や、かかる熱処理炉内に設けられるリフターやダム、装入シュートなどの炉内構造物、さらに、排ガスダクトや樋類、煙道類などの炉に付随する設備を含む概念である。
また、本明細書において、炉材とは、上述した実機の炉内や排ガスダクトに内張りされている耐火煉瓦や不定形耐火物、プレキャストなどの耐火材だけでなく、リフターやダム装入シュートなどの炉内構造物に使用される材料なども含む概念である。
【0017】
とくに、本発明の耐アルカリ炉材の耐用性評価試験方法(以下、本発明の試験方法という)は、ソーダ灰等のアルカリ系材料に関するものに加えて、バナジウムやモリブデンなどのような、炉材を浸食する物質が含まれている処理対象物を加熱処理する加熱炉の炉材の耐用性試験にも適している。炉材を浸食する物質が含まれている処理対象物としては、例えば、石油精製所等において使用される脱硫触媒、硫酸製造用の使用済触媒等を挙げることができるが、とくに限定されない。
【0018】
(本発明の試験方法の説明)
まず、本発明の試験方法の手順を説明する前に、試験に使用する材料および装置について説明する。
【0019】
(試験体1の説明)
本発明の試験方法では、図2に示すような試験体1を使用して試験を行う。
試験体1は、炉材成形体2と、この炉材成形体2上に配置される試験材料3とから構成される。
【0020】
(炉材成形体2の説明)
炉材成形体2は、実機に使用される炉材と同一の素材によって形成された成形体である。この炉材成形体2は、略円柱状に形成された成形体であり、その軸方向の両端面が略平坦面に形成されている。この両端面のうち、一方の端面(図2では上面)は試験材料3を載せる面(試験面2a)として使用される。
【0021】
炉材成形体2の大きさはとくに限定されないが、後述する試験材料3の厚さおよび直径の範囲内で、炉材成形体2を侵食する性質を有する材料(侵食材)の浸透が収まる大きさに形成される。かかる大きさとするのは、炉材成形体2に侵食材が浸透したときに侵食材が炉材成形体2からこぼれてしまうと、炉材成形体2と反応する侵食材の量が想定した量と異なってしまい、炉材成形体2の耐用性を適切に評価できなくなってしまうからである。例えば、後述する試験方法によって試験を行う場合であれば、侵食材が炉材成形体2からこぼれることなく実験を行うためには、炉材成形体2は、その直径Dが70〜90mmが好ましく、直径Dが75〜95mmがより好ましい。また、炉材成形体2は、その高さHが50mm程度以上であればよく、60mm程度が好ましい。
【0022】
なお、炉材成形体2を上記の形状および大きさに成形する方法はとくに限定されない。
例えば、所定の形状に形成された市販の炉材(例えば、レンガなどの定形耐火物等)を加工して(切り出して)炉材成形体2を形成してもよい。
また、キャスタブル等の不定形の材料を型枠内で成形して所定の形状の炉材成形体2を形成してもよいし、キャスタブル等の不定形の材料を型枠内で成形した粗成形体から切り出して所定の形状の炉材成形体2を形成してもよい。この場合には、実機に使用される炉材(実機炉材)と同じ方法で炉材成形体2や粗成形体を成形することが好ましい。例えば、キャスタブル等と混合する水の量や、キャスタブル等と水を混合した混合物の混練方法、乾燥方法(乾燥装置や乾燥時間など)、焼成方法(温度や時間等)を実機炉材を製造する条件に合わせて、炉材成形体2や粗成形体を成形することが好ましい。
【0023】
また、炉材成形体2の形状は、加熱炉内において安定して配置でき、しかも、試験材料3を載せることができる平坦面を有する形状であればとくに限定されない。しかし、上述したような円柱状に形成されていれば、炉材成形体2の材料の分散状態や密度などが均質な成形体を形成しやすくなる。すると、不均質な成形体を使用して試験を行う場合に比べて、炉材成形体2の耐用性を適切に評価することができるという利点が得られる。
【0024】
(試験材料3の説明)
試験材料3は、アルカリ系材料3aと、処理対象物3bとから構成されている。
【0025】
アルカリ系材料3aは、アルカリ金属やアルカリ土類金属の塩などを含有する粉体や粒状物である。例えば、炭酸塩、硫酸塩、水酸化物などの単体またはこれらの混合物で、炭酸ナトリウム(NaCO)や酸化ナトリウム(NaO)、硫酸ナトリウム(NaSO)などの腐食性や浸透性を有する物質である。
【0026】
処理対象物3bは、アルカリ系材料3aと反応する物質(以下、被反応物質という)を含有する粉体や粒状物である。例えば、モリブデンおよび/またはバナジウムを含有する廃触媒などを挙げることができるが、これらに限定されない。また、処理対象物3bに含有される物質は、例えば、モリブデンやバナジウム、ニッケル、コバルトなどであるが、これらに限定されない。
【0027】
なお、処理対象物3bとして、モリブデンやバナジウムなどのように炉材を浸食する性質を有する物質が含まれている場合には、アルカリ系材料3aによる炉材成形体2の損傷だけでなく、モリブデンやバナジウムなどによる炉材成形体2の損傷も評価できる。すると、実機において、炉材を浸食する性質を有する物質が含まれている物質を加熱処理する場合における炉材の損傷を適切に評価できる。つまり、アルカリ系材料3aによる炉材の損傷に加えて、かかる物質による炉材の損傷も評価できるから、実機における炉材の耐用性をより適切に評価することができる。とくに、五酸化バナジウムは、強酸化剤であり濡れ性が高く炉材などに浸透しやすい性質を有するので、処理対象物3bに五酸化バナジウムが含まれていれば、例えば、廃触媒などのように五酸化バナジウムを含む物質をソーダ化処理する加熱炉において使用する炉材の耐用性を適切に試験することができる。
【0028】
また、試験材料3は、両者を混合した混合物として使用してもよいが、図2に示すように両者を混合せずに、それぞれが層状になるように重ねて炉材成形体2上に配置してもよい。図2のように積層した場合には、実機内におけるアルカリ系材料3aおよび処理対象物3bの状況に近い状態で試験を行うことができる。例えば、廃触媒とソーダ灰とをロータリーキルンにおいてソーダ焙焼する場合には、キルン下層(ロータリーキルンの内面)において、溶融したソーダ灰と共に廃触媒中のモリブデン、バナジウムが炉材に浸透するという現象が生じる。図2に示すように、処理対象物3bの上にアルカリ系材料3aを重ねて載せるようにすれば、熔融したアルカリ系材料3aは処理対象物3bを通過してから炉材成形体2に浸透する。すると、熔融したアルカリ系材料3aは、処理対象物3b中のモリブデンやバナジウム等と反応しながら、炉材成形体2に浸透する。例えば、アルカリ系材料3aがソーダ灰であれば、熔融したソーダ灰は、処理対象物3b中のモリブデンやバナジウム等をソーダ化しながら炉材成形体2に浸透するので、上述したキルン下層での現象を再現した実験を行うことができるという利点が得られる。
【0029】
(加熱炉の説明)
上述した試験体1は、加熱炉において所定の温度および雰囲気の状態で加熱処理される。加熱炉は、試験体1を内部に収容できる空間を有し、この空間内を所定の温度および雰囲気に均一に調整できるものであればよく、とくに限定されない。例えば、マッフル炉などの電気炉であって、内部の空間を外部から隔離でき、しかも、内部の空間の大きさが上述したような試験体1を収容し得る程度であるものを、本発明の方法の加熱炉として使用することができる。
【0030】
なお、加熱炉は、試験体1を一つだけ収容できるものでもよいが、複数の試験体1を同時に収容して加熱処理することができるものがより好ましい。この場合には、異なる複数の炉材成形体、つまり、異なる材料で形成された炉材成形体や同じ材料で形成された複数の炉材成形体を同時に試験することも可能となるので、多数の炉材成形体を短期間で試験評価することができる。
【0031】
(本発明の試験方法の説明)
つぎに、本発明の試験手順について図1に基づいて説明する。
【0032】
(試験体準備工程)
図1に示すように、まず、試験を行う試験体1を準備する。
具体的には、炉材成形体2の上面2a(軸方向の端面)に試験材料3の処理対象物3bを載せる。このとき、処理対象物3bは、炉材成形体2が上述したような大きさであれば、約10〜20gを炉材成形体2上に配置する。なお、処理対象物3bは、炉材成形体2上で山盛りにならないように配置する。
ついで、炉材成形体2上に載せられた処理対象物3bの上にアルカリ系材料3aを配置する。このとき、アルカリ系材料3aは、アルカリ系材料3a中のナトリウム等の量が、処理対象物3b中の被反応物質を全て反応(例えば、全てソーダ化)させるために必要な量(当量)以上となるように、処理対象物3bの上に配置される。
すると、炉材成形体2の上面2aに試験材料3が載せられた試験体1を形成することができる(図2参照)。
【0033】
(加熱工程)
試験体準備工程で形成された試験体1を電気炉等の加熱炉内に配置する。なお、複数の試験体1を同時に焙焼する場合には、試験体1同士が干渉しないように、各試験体1を配置する。
加熱炉内に試験体1が配置されると、加熱炉内の試験体1は、空気雰囲気中で加熱される。この加熱炉内における加熱条件は、試験材料3の処理対象物3b中の被反応物質を、試験材料3のアルカリ系材料3aと反応させ得る条件に調整される。例えば、試験材料3の処理対象物3b中のアルカリ系材料3aがソーダ灰であれば、被反応物質がソーダ化反応し、かつ、全ての被反応物質がソーダ化される条件に調整される。
【0034】
具体的には、処理対象物3b中のアルカリ系材料3aがソーダ灰の場合、加熱炉内に試験体1を設置後、常温(約27℃)から試験材料3をソーダ化反応し得る温度(例えば、910℃程度)まで、加熱炉内の温度を急激に(例えば、加熱開始から30分程度で)上昇させる。そして、ソーダ化反応し得る温度に維持して一定時間(例えば2時間程度)加熱すれば、処理対象物3bに含まれる被反応物質を全てソーダ化することができる。
例えば、処理対象物3bがモリブデンおよびバナジウムを含有する廃触媒の場合、処理対象物3bが10g程度であれば、加熱炉内を910℃に維持したまま約2時間焙焼すれば、全てのモリブデンおよびバナジウムをソーダ化することができる。
【0035】
なお、上記のように加熱炉を稼働させれば、加熱炉内の雰囲気は、ロータリーキルンなどの加熱炉においてソーダ化反応を行う場合とほぼ同じ雰囲気となる。
【0036】
(冷却工程)
上記加熱工程が終了すると、加熱炉による加熱を停止し、試験体1を冷却する。このとき、試験体1は加熱炉内で放冷される。
【0037】
(試験材料除去工程)
試験体1が冷却されると、試験体1を加熱炉から取り出し、炉材成形体2上から試験材料3を払い落すなどして除去し、炉材成形体2の状態を確認する。
具体的には、炉材成形体2に亀裂や欠けなどが発生していないか、また、炉材成形体2の上部(つまり、試験材料3が載せられていた試験面2a側の部分)が膨張(2〜3%の直径の拡大など)したり、熔損が生じていたりしないか、などが、試験者によって目視により確認される。そして、目視により亀裂や欠けなどが発見された炉材成形体2や、膨張が見られた炉材成形体2は、損傷が生じたものと判断して、試験を終了する。
【0038】
そして、損傷が生じていないと判断された炉材成形体2は、試験体準備工程、加熱工程、冷却工程が、この順番で再度実施される。
この場合、試験体準備工程では、炉材成形体2に試験材料3が載せられるが、この際、前回の試験体準備工程において試験材料3が載せられていた同じ試験面2aに再度試験材料3が配置される。
【0039】
試験材料除去工程において、再度、試験体1の加熱工程と冷却工程が実施されると、再び炉材成形体2上から試験材料3を除去して、炉材成形体2の状態を確認する。そして、損傷が生じていた場合には試験を終了し、損傷が生じていない場合には、再度、試験体準備工程、加熱工程、冷却工程が実施される。
【0040】
そして、上記一連の工程、つまり、試験体準備工程、加熱工程、冷却工程および試験材料除去工程(一連の工程を1回とする)を、炉材成形体2に損傷が生じるまで、または、所定の回数となるまで繰り返す。すると、炉材成形体2に損傷が生じるまでに要した回数や、所定の回数の試験に炉材成形体2が耐えられたかによって、炉材成形体2のソーダ化処理などに対する耐用性を判断することができる。
【0041】
(本発明の試験方法の効果)
以上のごとく、本発明の試験方法では、加熱工程と冷却工程を繰り返して行うので、一定の温度で炉材成形体2の試験を行う場合に比べて、炉材成形体2に与える損傷負荷を大きくすることができる。つまり、本発明の試験方法では、長期間高温状態が継続する実機に比べて、加熱・冷却による膨張・収縮を繰り返す過酷な条件で炉材成形体2の試験を行うことができるから、炉材成形体2の損傷の評価を短時間で行うことができる。
【0042】
例えば、炉材では、アルカリ系材料が浸透した箇所はアルカリとの反応で変質して脆くなるため、かかる箇所が損傷しやすくなるが、実機試験などでは、長期間高温状態が継続するため、炉材の一部の強度が低下してもその箇所の損傷を評価することは難しい。一方、本発明の試験方法の場合、加熱工程冷却工程を連続して行った後、再度加熱工程を行うので、炉材成形体2において熱的に弱くなった箇所は損傷しやすくなる。また、変質した部分と正常な部分(変質していない部分)との境界部分は、加熱冷却の際に、両者の膨張率および収縮率の差によって割れやすくなる。すると、本発明の試験方法では、実機に比べて、熱的に弱くなった箇所等の損傷が短時間で発生することになり、かつ1回ごとの評価が可能となり確実な評価が可能となる。したがって、本発明の試験方法を採用すれば、炉材成形体2において、アルカリ系材料の浸透により損傷しやすくなった箇所の損傷を短時間でかつ正確に評価することも可能となる。
【0043】
例示すると、モリブデンおよびバナジウムを含有する廃触媒をソーダ化反応させる実機に使用する炉材であれば、100回程度の繰り返し試験で炉材成形体2に亀裂や熔損が生じておらず、また、膨張の程度が小さい(元の状態に対して膨張割合が2〜3%以下)ものであれば、実機における所定の耐用性を維持するものと判断することができる。そして、本発明の試験方法の場合、100回程度の繰り返し試験は1カ月あれば実施できるため、実機で耐用性を試験する場合(数カ月〜数年単位の試験)に比べて大幅に試験期間を短縮することができる。
【0044】
しかも、炉材成形体2の損傷が生じやすい条件で試験を行うので、炉材成形体2の損傷が生じるまで試験を行うことができるから、炉材成形体2の耐用性を適切に評価することができる。
【0045】
(アルカリ系材料3aについて)
とくに、アルカリ系材料3a中のナトリウム等の量が、処理対象物3b中の被反応物質の当量の4倍以上、好ましくは8倍以上、より好ましくは10倍程度となるように、アルカリ系材料3aを処理対象物3bの上に配置すれば、より短時間で耐用性を評価することができる。
実機では、一般的に、処理対象物3bとともに供給されるアルカリ系材料3aは、処理対象物3bに対して、アルカリ系材料3a中のナトリウム等の量が当量の2倍程度となるように調整されている。しかし、実機内では、アルカリ系材料3aの偏在などの影響により、当量の4倍程度となっている箇所が存在する可能性がある。このため、実機に近い条件で試験を行う場合でも、少なくとも当量の4倍程度、炉材成形体2を評価する期間をさらに短縮する上では、実機よりも厳しい条件(当量の8倍以上、より好ましくは10倍程度)で焙焼する方が好ましい。
【0046】
試験材料3中の処理対象物3bとアルカリ系材料3aの割合、つまり、処理対象物3b中の被反応物質に対して何倍当量のアルカリ系材料3aを供給するかは、処理対象物3bの量を増減して調整してもよいし、アルカリ系材料3aの量を増減してもよく、とくに限定されない。
【0047】
しかし、炉材成形体2の耐用性を適切に評価する上では、試験材料3中の処理対象物3bとアルカリ系材料3aの割合を調節する際に、アルカリ系材料3aを一定量以下に維持して、主に処理対象物3bの量を調節することが望ましい。一定量のアルカリ系材料3aとは、処理対象物3b中の全ての被反応物質と反応でき、しかも、処理対象物3bに吸収されたり炉材成形体2の試験面2aから炉材成形体2に浸透したりした以外のアルカリ系材料3aが試験面2aから側面に流れない程度の量を意味している。
アルカリ系材料3aの量を上述したような量とする理由は以下のとおりである。
【0048】
熔融したアルカリ系材料3aは、処理対象物3bに吸収されたり、炉材成形体2の試験面2aから炉材成形体2に浸透したりして、処理対象物3b中の被反応物質や炉材成形体2と反応する。
ところが、炉材成形体2の大きさに対してアルカリ系材料3aの量が多くなりすぎると、一部の熔融したアルカリ系材料3aが炉材成形体2の試験面2aから側面に流れてしまう可能性がある。すると、側面に流れた分だけ、想定した量よりも少ない量のアルカリ系材料3aしか炉材成形体2の損傷に寄与しない可能性がある。
【0049】
また、側面に流れたアルカリ系材料3aは、炉材成形体2の側面からもその内部に浸透してしまう可能性がある。しかし、実機では、通常、炉材の上面しかアルカリ系材料3aと接触せず、アルカリ系材料3aは炉材の上面からしか炉材の内部に浸透しない。このため、上述したような側面からの浸透が生じると、実機における炉材の耐用性を適切に評価できなくなる可能性がある。
【0050】
しかし、アルカリ系材料3aを上述したような一定量以下としておけば、熔融した全てのアルカリ系材料3aを炉材成形体2の試験面2a上に留めておくことができる。すると、処理対象物3b中の全ての被反応物質をアルカリ系材料3aと反応させることができ、しかも、反応に使用されなかったアルカリ系材料3aを確実に炉材成形体2と反応させることができる。したがって、想定した量のアルカリ系材料3aによる炉材成形体2の損傷を把握できるので、炉材成形体2の耐用性を適切に評価することができる。
しかも、アルカリ系材料3aが炉材成形体2の試験面2aからこぼれ落ちないので、安全に試験を行うことができ、加熱炉の損傷も防ぐことができる。
【0051】
例えば、炉材成形体2の試験面2aの直径が80mmであれば、処理対象物3bが7〜10g程度、アルカリ系材料3aが8〜11g程度であれば、アルカリ系材料3aが試験面2aから側面に流れない状態とすることができる。
【0052】
(試験材料除去工程について)
また、上記例では、試験材料除去工程において炉材成形体2から既に反応が終了した試験材料3を除去して新たな試験材料3を載せて加熱工程を行ったが、既にソーダ化反応が終了した試験材料3を除去せずにその上に新しい試験材料3を載せて再度加熱工程を行うようにしてもよい。しかし、再度加熱工程を行う際に、常に新しい試験材料3が炉材成形体2の試験面2aに接触する状況で実験を行えば、実機よりも厳しい条件で試験を行うことができるので、試験時間をより短縮することができる。
【0053】
また、加熱炉の炉内で試験を行うので、試験材料3から発生する気体による損傷も含めて炉材成形体2の損傷を評価できる。例えば、試験材料3に硫黄が含まれているような場合には、二酸化硫黄(SO)が発生し、炉内で一旦滞留するので、二酸化硫黄(SO)により炉材成形体2が損傷する可能性がある。すると、かかる二酸化硫黄(SO)による炉材成形体2の損傷も含めて炉材成形体2の耐用性を評価できるので、好ましい。
【0054】
上記例では、試験体1を加熱炉外で形成してから加熱炉内に配置する場合を説明したが、加熱炉を予め昇温し又は加熱処理を行う温度に調整しておいても良い。すると、この予熱時間を試験体1の準備に利用できるので、試験時間を短縮できるという利点が得られる。
【実施例1】
【0055】
(加速試験)
本発明の耐アルカリ炉材の耐用性評価試験方法によって、炉材形成体のソーダ化反応に対する耐用性を短時間で評価できることを確認した。
実験では、複数の素材によって円柱状(直径80mm、高さ65mm)の炉材形成体を形成し、各炉材形成体について本発明の評価試験を行い、各炉材成形体の状況を確認した。炉材成形体の耐久性は、その上部(試験材料が載せられる試験面側の端部)の膨張度合い、および、亀裂の発生状況を目視確認して、耐久性の限界となったか否かを判断した。
なお、本実験では、上部の膨張度合いは、冷却工程終了後の炉材成形体の試験面の直径が、元の炉材成形体の試験面の直径に対して2%程度膨張した場合に、また、亀裂に関しては、亀裂幅が1mm以上となった場合に、耐久性の限界に達したものと判断した。
【0056】
以下に、実験で使用した炉材形成体の素材を示す。

高アルミナ質(キャスタブル、レンガ)
アルクロ質(キャスタブル、レンガ)
Al−Cr−Zr質(レンガ)
マグクロ質(キャスタブル、レンガ)
アルミナSIC質(キャスタブル、レンガ)
改良ムライト質(キャスタブル、プレキャスト)
ムライト質(キャスタブル)

なお、レンガおよびプレキャストについては市販のものを加工して上記形状に成形したものを使用したが、キャスタブル成形体については、市販のキャスタブルを用いて、実機炉材を製造する条件に合わせて成形した。
また、改良ムライト質とは、高温溶融ソーダ灰、溶融五酸化バナジウムおよびガスなどの浸透を防止する機能が付与されたムライト質である。
【0057】
本発明の試験方法に使用した試験材料は、以下のとおりである。
処理対象物 :使用済み廃触媒(Mo含有量:5重量%、V含有量:6重量%)
ソーダ灰 :炭酸ナトリウム
【0058】
本実施例では、処理対象物(以下、ソーダ化反応対象物という)(8.55g)を炉材形成体上に載せて、その上に、ソーダ灰(9.5g)を載せてマッフル炉(アドバンテック東洋社製:KM−800)で910℃、2時間焙焼したのち、マッフル炉内で常温まで炉材形成体を冷却した。その後、炉材形成体の試験面に形成されているコーティングが除去されないように注意して、試験材料を炉材形成体から除去して炉材形成体の状態を確認した。
【0059】
なお、ソーダ化反応対象物8.55gに対してソーダ灰9.5gを供給すると、ソーダ化反応対象物中のモリブデン量に対して、ナトリウムは10倍当量に相当する量が供給されたことになる。
また、マッフル炉内の雰囲気は、焙焼期間中、加熱開始の初期には原料や原料に付着している油等の燃焼によって黒煙が発生する雰囲気となり、その後、モリブデンおよびバナジウムの酸化やソーダ化が生じる大気(空気)雰囲気の状態となるようにした。
【0060】
以下、実験結果を説明する。
図3および図4に示すように、本発明の試験方法によって、繰り返し試験を行ったところ、高アルミナ質、アルクロ質、Al−Cr−Zr質、マグクロ質およびムライト質で形成された炉材形成体は、レンガ、キャスタブルにかかわらず、100回の繰り返し実験が終了するまでに損傷が生じたことが確認できる。
【0061】
アルクロ質では、キャスタブル、レンガとも、たった13回(約1日3回の繰り返し)の繰り返しで上部の膨張や亀裂の発生により崩壊していることが確認された。
また、高アルミナ質のキャスタブルでも、30回(約1日3回の繰り返し)の繰り返しで上部の膨張や亀裂の発生による崩壊が確認された。
【0062】
高アルミナ質のレンガ、Al−Cr−Zr質(レンガ)、マグクロ質およびムライト質のキャスタブルは、上述した炉材形成体に比べて崩壊が遅かったものの、70〜90回(約1日3回の繰り返し)の繰り返しで上部の膨張や亀裂の発生による崩壊が確認された。
また、マグクロ質のレンガでは、100回の繰り返しは可能であったものの、上部が僅かに膨張し亀裂の発生が確認された。
【0063】
一方、アルミナSIC質および改良ムライト質では、炉材形成体の形成方法にかかわらず、100回繰り返しても、いずれも上部の膨張および亀裂発生の程度が低く、ソーダ焙焼に対する耐用性が高いことが確認できた。
なお、アルミナSIC質および改良ムライト質の炉材形成体の表面には、熔融したソーダ灰の浸透を遮断する保護層が形成されていることが確認できた。つまり、本発明の試験方法では、保護層の形成の有無を含めて炉材形成体を評価することができると考えられる。
【0064】
以上のごとく、本発明の試験方法では、素材の種類、また、成形方法の相違による炉材形成体のソーダ化反応に対する耐久性を定量的に確認できた。つまり、ソーダ焙焼に対する耐用性を、繰り返し回数で把握できることが確認された。
しかも、100回の試験でもせいぜい30日程度の実験であり、短時間で炉材形成体が耐久限界となるまで試験できることが確認できた。
【実施例2】
【0065】
(実機とのマッチング)
本発明の耐アルカリ炉材の耐用性評価試験方法による評価が、実機における炉材の耐用性を適切に評価できているか否かを確認した。
【0066】
実験では、実施例1において100回の試験で耐用性があると判断されたアルミナSIC質および改良ムライト質を用いて炉材を形成し、この炉材を実機に使用して耐用性を確認した。
【0067】
使用した実機は、ロータリーキルン(直径3m、長さ40m)ある。
試験では、アルミナ―SIC質製の炉材は、実機の装入シュートの内面に施工して試験を行った。
また、改良ムライト質の炉材は、実機の装入側ダム、高温ゾーンリフター、高温ゾーンライニングに施工して試験を行った。
【0068】
本発明の実機試験に使用した試験材料は、以下のとおりである。
ソーダ化反応対象物:使用済み廃触媒(Mo含有量:5重量%、V含有量:6重量%)
ソーダ灰 :炭酸ナトリウム
なお、ソーダ灰は、使用済み廃触媒に対して、約2倍当量となる量を供給した。
【0069】
以下、実験結果を説明する。
まず、アルミナ―SIC質製の炉材の結果を示す。
【0070】
従来、装入シュートはSUS310Sだけ、つまり、ステンレス板だけで形成されていたため、2カ月程度での交換が必要となっていた。
一方、アルミナSIC質製の炉材を内面に施工した装入シュートでは、施工してから6〜9ヶ月間、装入シュートに目立った損傷は見られず、装入シュートの交換を行う必要がなかった。つまり、アルミナSIC質製の炉材を装入シュートの内外面に施工することによって、装入シュートの寿命を3倍以上に延長することができた。
【0071】
つぎに、改良ムライト質の炉材の結果を示す。
従来、装入側ダムや高温ゾーンリフター、高温ゾーンライニングには、ムライト質の炉材が使用されていたが、この場合、装入側ダムでは約2〜3カ月程度、高温ゾーンリフターでは約2カ月程度、高温ゾーンライニングでは約1年で、炉材の交換が必要となっていた。
一方、本発明の試験方法において耐用性を満たした改良ムライト質の炉材では、装入側ダムでは約1〜2年程度、高温ゾーンリフターでは約1〜2年程度、高温ゾーンライニングでは約2年、炉材に目立った損傷は見られず、炉材の交換を行う必要がなかった。つまり、改良ムライト質の炉材を施工することによって、各部に施工された炉材の寿命を、装入側ダムおよび高温ゾーンリフターでは5倍以上、高温ゾーンライニングでは約2倍に延長することができた。
【0072】
つまり、本発明の試験方法によって耐用性が十分ある(100回の繰り返し試験で損傷なし)場合には、実機に用いても、十分に耐用性を満たすことが確認できた。
しかも、実機での試験では、炉材の評価に1〜2年の試験が必要であったところ、本発明の試験方法では、30日間程度で耐用性が確認できた。したがって、本発明の試験方法は、簡易かつ短時間、しかも実機での耐用性に適した炉材の評価を行うことができることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明の耐アルカリ炉材の耐用性評価試験方法は、ソーダ焙焼を行う焙焼炉の炉材を試験する方法として適している。
【符号の説明】
【0074】
1 試験体
2 炉材成形体
2a 試験面
3 試験材料
3a アルカリ系材料
3b 処理対象物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ系材料を使用した反応が生じる炉に使用される炉材の評価試験方法であって、
前記炉材の材料によって形成された炉材成形体の試験面に、アルカリ系材料と該アルカリ系材料と反応する被反応物質とを含有する試験材料を載せて試験体を形成する試験体形成工程と、
該試験体形成工程において形成された前記試験体を加熱する加熱工程と、
該加熱工程終了後、前記試験体を冷却する冷却工程と、を繰り返して行う
ことを特徴とする耐アルカリ炉材の耐用性評価試験方法。
【請求項2】
前記アルカリ系材料は、
前記試験材料に含有されている被反応物質に対して4倍当量以上となるように、該試験材料に添加されている
ことを特徴とする請求項1記載の耐アルカリ炉材の耐用性評価試験方法。
【請求項3】
前記冷却工程終了後、前記試験体形成工程を行う前に、前記冷却工程において冷却された前記試験体の炉材成形体の試験面から、前記試験材料を除去する試験材料除去工程を行う
ことを特徴とする請求項1または2記載の耐アルカリ炉材の耐用性評価試験方法。
【請求項4】
前記試験材料に含まれるアルカリ系材料の量が、
前記試験材料に含有されている全ての被反応物質と反応し得る量であり、かつ、該アルカリ系材料が全て熔融しても前記炉材成形体の試験面からその側面に流れない量に調整されている
ことを特徴とする請求項1、2または3記載の耐アルカリ炉材の耐用性評価試験方法。
【請求項5】
前記試験材料が、
バナジウムおよび/またはモリブデンを含有するものである
ことを特徴とする請求項1、2、3または4記載の耐アルカリ炉材の耐用性評価試験方法。
【請求項6】
前記試験材料が、
アルカリ系材料と、該アルカリ系材料と反応する被反応物質を含有する処理対象物とからなり、
前記試験体形成工程において、
前記炉材成形体の試験面に前記処理対象物を載せた後、該処理対象物の上に前記アルカリ系材料を載せて試験体を形成する
ことを特徴とする請求項1、2、3、4または5記載の耐アルカリ炉材の耐用性評価試験方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−113464(P2013−113464A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258420(P2011−258420)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000183303)住友金属鉱山株式会社 (2,015)
【Fターム(参考)】