説明

耐スクラッチ性仕上げによるトップ層を有するセキュリティ書類および/または有価書類

【課題】耐スクラッチ性被覆物のための組成物、従って対応して完成したセキュリティ書類および/または有価書類および該セキュリティ書類および/または有価書類の製造方法を見出すこと。
【解決手段】上記目的は、特に互いに協調的なアクリレートまたはメタクリレート単位を有するラッカー組成物から製造される耐スクラッチ性被覆物により達成された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トップ層として少なくとも1つの耐スクラッチ性被覆物を少なくとも1つの外側上に含むセキュリティ書類および/または有価書類、その製造方法、該耐スクラッチ性被覆物で被覆された熱可塑性プラスチック皮膜、および該耐スクラッチ性被覆物のためのラッカー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、セキュリティ書類および/または有価書類、特に識別用書類、例えば個人IDカード等は、種々の機能をカードにおいて担う幾つかの異なった層を、通常個々の皮膜の形態で積層することによりカードを形成する。マイクロメートル域における寸法を有する構造は、積層作業中にセキュリティ機能として外側表面へ更に型押しされることが多い。
【0003】
しかしながら、上記書類として好ましく用いられる熱可塑性プラスチック材料は、通常、比較的軟質で引掻に敏感な表面を有する。このため、可読性は、該書類の10年以下の寿命の間耐えることとなる。更に、セキュリティ性は破壊される。
【0004】
個人IDカードの更なる典型的な要件は、柔軟性および破壊強度である。頻繁に繰り返される曲げ応力にも拘わらず、カード自体の機能性だけでなく、組み込まれた部品、例えば電子チップまたはRFIDアンテナの機能性も、損なわれるべきではない。
【0005】
カード読取装置は、特に頻繁に、カード表面上にスクラッチを生じさせ、これにより、カードの軟質性および破壊強度が低下し、従ってカードの寿命が短くなる。
【0006】
カードの機能性を、カードの寿命にわたって機械的におよび可読性について確保するために、個人IDカードの多くの製造業者は、カードの外側に、良好な化学耐性を更に有するべきである耐スクラッチ性保護層を付与することを試る。
【0007】
電子機器の筐体およびレンズ/ディスプレイにそれ自体用いられるアクリレートに基づく従来法による耐スクラッチ性ラッカーは、その高い架橋密度に起因して際立った耐スクラッチ性および耐化学薬品性を有する。しかしながら、このような系の欠点は、架橋密度に付随する脆化にある。これは、カードの破壊強度を切り欠き(被覆物における破壊)により全体に損なう影響を有する。
【0008】
更なる欠点は、高度に架橋したポリマーの型押性が低下することである。高度に架橋したポリマーは、十分に変形して、原本の比較的微細な構造を適切な画像の鮮明さで提供することができない。
【0009】
高度に架橋した耐スクラッチ性被覆物を柔軟にするために、非架橋ポリマー、例えばポリ酢酸ビニル(例えばJP−A2009−028956)またはポリエチレンワックス(例えばJP−A2008−006708)等を被覆物中へ導入するための手順が存在する。しかしながら、この場合、化学薬品への被覆物への耐性、従って文書の寿命が低下する。
【0010】
例えばIDカードの製造の間の高い積層温度に耐えられない耐スクラッチ性被覆物を、完成カードブランク上へ低温にて転写フィルムおよび必要に応じて接着層の更なる使用により引き続き積層することについて(例えば特開第2005−280288号、特開第2008−006708号および国際公開第2000/050250号を参照)またはこれらを、完成カードブランクへラッカー被覆物として引き続き塗布することについて(特開第2004−315546号および特開第2000−119553号)の可能性が存在する。しかしながら、これらの方法は、耐スクラッチ性被覆物の塗布のためにコストの大きい少なくとも1つの更なるプロセス工程を含む。さらに、転写フィルムが、カードの積層と同時に用いられない場合には、表面への型押が起こり得、ラッカー層の引き続きの適用の場合には、任意の型押構造が、所望の鮮明さで維持されない欠点が存在する。
【0011】
従って、文書の製造中に比較的高い積層温度に耐え、マイクロメートル規模での構造をエンボス加工することを可能とし、屈曲および破壊強度の要件を充足する耐スクラッチ性被覆物を有する柔軟性セキュリティ書類および/または有価書類、特に認識用書類、例えばIDカード等を、耐スクラッチ性または耐化学薬品性を顕著に失うことなく製造することの可能性についての必要性が存在し続ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2009−028956号明細書
【特許文献2】特開2008−006708号明細書
【特許文献3】特開2005−280288号明細書
【特許文献4】特開2008−006708号明細書
【特許文献5】国際公開第2000/050250号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、本発明が基づく目的は、上記耐スクラッチ性被覆物のための組成物、従って対応して完成したセキュリティ書類および/または有価書類および該セキュリティ書類および/または有価書類の製造方法を見出すことであった。
【課題を解決するための手段】
【0014】
意外にも、上記目的は、特に互いに協調されるアクリレートまたはメタクリレート単位を有するラッカー組成物から製造される耐スクラッチ性被覆物により達成された。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施態様は、
I)12〜70重量部のC〜C12−ジオールジアクリレートまたはC〜C12−ジオールジメタクリレート、ここで、C〜C12は、メチル基により必要に応じて置換されてよい、または1以上の酸素原子により中断されおよび1以上のメチル基により必要に応じて置換されてよい直鎖状アルキレン基を示し、
II)12〜40重量部のアルコキシル化モノ−、ジ−、トリ−、テトラ−、ペンタ−またはヘキサアクリレートまたはアルコキシル化モノ−、ジ−、トリ−、テトラ−、ペンタ−またはヘキサメタクリレート、
III)0〜40重量部の、ペンタエリトリトールトリアクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレート、ジペンタエリトリトールテトラアクリレート、ジペンタエリトリトールペンタアクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサアクリレート、ペンタエリトリトールトリメタクリレート、ペンタエリトリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリトリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリトリトールペンタメタクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサメタクリレート、これらと脂肪族または芳香族ジイソシアネートとの反応生成物およびこれらの混合物からなる群から選択されるモノマー、
IV)5〜60重量部の更なるモノ−、ジ−またはトリアクリレートまたはモノ−、ジ−またはトリメタクリレート
を含むラッカー組成物から得られた耐スクラッチ性被覆物を含み、成分I)〜IV)の重量部は合計100重量部となり、および該100重量部の他に、ラッカー組成物は、
V)0.1〜10重量部の光開始剤
を更に含む、セキュリティ書類および/または有価書類を提供する。
【0016】
本発明の他の実施態様は、ラッカー組成物が15〜60重量部の成分I)を含む、上記セキュリティ書類および/または有価書類である。
【0017】
本発明の他の実施態様は、ラッカー組成物が12〜35重量部の成分II)を含む、上記セキュリティ書類および/または有価書類である。
【0018】
本発明の他の実施態様は、ラッカー組成物が0〜30重量部の成分III)を含む、上記セキュリティ書類および/または有価書類である。
【0019】
本発明の他の実施態様は、セキュリティ書類および/または有価書類が認識用書類である上記セキュリティ書類および/または有価書類である。
【0020】
本発明の他の実施態様は、セキュリティ書類および/または有価書類が、ラッカー組成物から得られた耐スクラッチ性被覆物を、セキュリティ書類および/または有価書類の両側に含む上記セキュリティ書類および/または有価書類である。
【0021】
本発明の他の実施態様は、情報の項目が耐スクラッチ性被覆物において型押しされた上記セキュリティ書類および/または有価書類である。
【0022】
本発明の他の実施態様は、少なくとも、
I)12〜70重量部のC〜C12−ジオールジアクリレートまたはC〜C12−ジオールジメタクリレート、ここで、C〜C12は、メチル基により必要に応じて置換されてよい、または1以上の酸素原子により中断され、および1以上のメチル基により必要に応じて置換されてよい直鎖状アルキレン基を示し、
II)12〜40重量部のアルコキシル化モノ−、ジ−、トリ−、テトラ−、ペンタ−またはヘキサアクリレートまたはアルコキシル化モノ−、ジ−、トリ−、テトラ−、ペンタ−またはヘキサメタクリレート、
III)0〜40重量部の、ペンタエリトリトールトリアクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレート、ジペンタエリトリトールテトラアクリレート、ジペンタエリトリトールペンタアクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサアクリレート、ペンタエリトリトールトリメタクリレート、ペンタエリトリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリトリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリトリトールペンタメタクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサメタクリレート、これらと脂肪族または芳香族ジイソシアネートとの反応生成物およびこれらの混合物からなる群から選択されるモノマー、
IV)5〜60重量部の更なるモノ−、ジ−またはトリアクリレートまたはモノ−、ジ−またはトリメタクリレート、ここで、成分I)〜IV)の重量部は合計100重量部となり、および該100重量部の他に、
V)0.1〜10重量部の少なくとも1つの光開始剤
を接触させる工程を含む、セキュリティ書類および/または有価書類のための耐スクラッチ性被覆物用ラッカー組成物の製造方法を提供する。
【0023】
本発明による特定のラッカー組成物から製造された耐スクラッチ性被覆物は、上記書類の比較的高い積層温度に耐え、およびマイクロメートル規模での構造を、クラックを示すことなく型押しすることを可能する。さらに、該被覆物は、上記書類の柔軟性および破断強度の要件を充足する。該被覆物は、良好な耐スクラッチ性および化学薬品への耐性を更に示す。さらに、本発明による特定の組成物から製造された耐スクラッチ性被覆物により、情報の項目、好ましくは個人の情報の項目を、レーザーにより損傷することなく書類へ書き込みすることの可能性が存在する。
【0024】
従って、上記耐スクラッチ性被覆物は、外側耐スクラッチ性被覆物の製造のために、対応する被覆物で耐スクラッチ性仕上げを付与した熱可塑性プラスチック皮膜を、カードブランクの積層に直接用いることができる、本発明によるセキュリティ書類および/または有価書類の製造を可能とする。
【0025】
本発明の他の実施態様は、
複数の熱可塑性皮膜を含む積層膜を形成する工程であって、該熱可塑性皮膜の少なくとも1つは耐スクラッチ性被覆物を有する第1外面側を有し、および
該積層膜を積層する工程
を含み、該耐スクラッチ性被覆物は、
I)12〜70重量部のC〜C12−ジオールジアクリレートまたはC〜C12−ジオールジメタクリレート、ここで、C〜C12は、メチル基により必要に応じて置換されてよい、または1以上の酸素原子により中断されおよび1以上のメチル基により必要に応じて置換されてよい直鎖状アルキレン基を示し、
II)12〜40重量部のアルコキシル化モノ−、ジ−、トリ−、テトラ−、ペンタ−またはヘキサアクリレートまたはアルコキシル化モノ−、ジ−、トリ−、テトラ−、ペンタ−またはヘキサメタクリレート、
III)0〜40重量部の、ペンタエリトリトールトリアクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレート、ジペンタエリトリトールテトラアクリレート、ジペンタエリトリトールペンタアクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサアクリレート、ペンタエリトリトールトリメタクリレート、ペンタエリトリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリトリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリトリトールペンタメタクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサメタクリレート、これらと脂肪族または芳香族ジイソシアネートとの反応生成物およびこれらの混合物からなる群から選択されるモノマー、
IV)5〜60重量部の更なるモノ−、ジ−またはトリアクリレートまたはモノ−、ジ−またはトリメタクリレート
を含むラッカー組成物から得られ、成分I)〜IV)の重量部は合計100重量部となり、および該100重量部の他に、該ラッカー組成物は、
V)0.1〜10重量部の光開始剤
を更に含む、セキュリティ書類および/または有価書類の製造方法である。
【0026】
本発明の他の実施態様は、複数の熱可塑性皮膜が、第1外面側の他にも、耐スクラッチ性被覆物を有する第2の外面側を有する熱可塑性皮膜を含む、上記方法である。
【0027】
本発明の他の実施態様は、熱可塑性皮膜の外面側に情報の項目を型押しする工程を更に含む上記方法である。
【0028】
本発明の他の実施態様は、情報の項目を、熱可塑性皮膜の外側面および/または熱可塑性皮膜の第2外側面に型押しする工程を更に含む上記方法である。
【0029】
本発明の更なる実施態様は、耐スクラッチ性被覆物を有する熱可塑性皮膜がポリカーボネートまたはコポリカーボネートを含む皮膜である上記方法である。
【0030】
本発明の実施態様による方法では、更なるプロセス工程、例えばラッカー被覆物の引き続きの塗布およびその硬化工程、または後に除去される転写フィルムを用いる耐スクラッチ性被覆物の引き続きの積層工程等を省略することができる。
【0031】
本発明による方法のための耐スクラッチ性被覆物が付与された熱可塑性皮膜も、これまで記載されていない。
【0032】
本発明の他の実施態様は、
I)12〜70重量部のC〜C12−ジオールジアクリレートまたはC〜C12−ジオールジメタクリレート、ここで、C〜C12は、メチル基により必要に応じて置換されてよい、または1以上の酸素原子により中断されおよび1以上のメチル基により必要に応じて置換されてよい直鎖状アルキレン基を示し、
II)12〜40重量部のアルコキシル化モノ−、ジ−、トリ−、テトラ−、ペンタ−またはヘキサアクリレートまたはアルコキシル化モノ−、ジ−、トリ−、テトラ−、ペンタ−またはヘキサメタクリレート、
III)0〜40重量部の、ペンタエリトリトールトリアクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレート、ジペンタエリトリトールテトラアクリレート、ジペンタエリトリトールペンタアクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサアクリレート、ペンタエリトリトールトリメタクリレート、ペンタエリトリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリトリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリトリトールペンタメタクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサメタクリレート、これらと脂肪族または芳香族ジイソシアネートとの反応生成物およびこれらの混合物からなる群から選択されるモノマー、
IV)5〜60重量部の更なるモノ−、ジ−またはトリアクリレートまたはモノ−、ジ−またはトリメタクリレート
を含むラッカー組成物から得られた被覆物で被覆された表面を有し、成分I)〜IV)の重量部は合計100重量部となり、および該100重量部の他に、該ラッカー組成物は、
V)0.1〜10重量部の光開始剤
を更に含む、熱可塑性皮膜である。
【0033】
特にアクリレートおよびメタクリレートモノマー中で互いにこうして協調した上記ラッカー組成物は、これまで記載されていない。従って、本発明の他の実施態様は、
I)12〜70重量部のC〜C12−ジオールジアクリレートまたはC〜C12−ジオールジメタクリレート、ここで、C〜C12は、メチル基により必要に応じて置換されてよい、または1以上の酸素原子により中断されおよび1以上のメチル基により必要に応じて置換されてよい直鎖状アルキレン基を示し、
II)12〜40重量部のアルコキシル化モノ−、ジ−、トリ−、テトラ−、ペンタ−またはヘキサアクリレートまたはアルコキシル化モノ−、ジ−、トリ−、テトラ−、ペンタ−またはヘキサメタクリレート、
III)0〜40重量部の、ペンタエリトリトールトリアクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレート、ジペンタエリトリトールテトラアクリレート、ジペンタエリトリトールペンタアクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサアクリレート、ペンタエリトリトールトリメタクリレート、ペンタエリトリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリトリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリトリトールペンタメタクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサメタクリレート、これらと脂肪族または芳香族ジイソシアネートとの反応生成物およびこれらの混合物からなる群から選択されるモノマー、
IV)5〜60重量部の更なるモノ−、ジ−またはトリアクリレートまたはモノ−、ジ−またはトリメタクリレート
を含み、成分I)〜IV)の重量部は合計100重量部となり、および該100重量部の他に、
V)0.1〜10重量部の光開始剤
を更に含む、ラッカー組成物を提供する。
【0034】
従って、本発明の他の実施態様はまた、セキュリティ書類および/または有価書類の少なくとも1つの耐スクラッチ性被覆物の製造のための、
I)12〜70重量部のC〜C12−ジオールジアクリレートまたはC〜C12−ジオールジメタクリレート、ここで、C〜C12は、メチル基により必要に応じて置換されてよい、または1以上の酸素原子により中断されおよび1以上のメチル基により必要に応じて置換されてよい直鎖状アルキレン基を示し、
II)12〜40重量部のアルコキシル化モノ−、ジ−、トリ−、テトラ−、ペンタ−またはヘキサアクリレートまたはアルコキシル化モノ−、ジ−、トリ−、テトラ−、ペンタ−またはヘキサメタクリレート、
III)0〜40重量部の、ペンタエリトリトールトリアクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレート、ジペンタエリトリトールテトラアクリレート、ジペンタエリトリトールペンタアクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサアクリレート、ペンタエリトリトールトリメタクリレート、ペンタエリトリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリトリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリトリトールペンタメタクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサメタクリレート、これらと脂肪族または芳香族ジイソシアネートとの反応生成物およびこれらの混合物からなる群から選択されるモノマー、
IV)5〜60重量部の更なるモノ−、ジ−またはトリアクリレートまたはモノ−、ジ−またはトリメタクリレート
を含み、成分I)〜IV)の重量部は100重量部まで添加し、および該100重量部の他に、
V)0.1〜10重量部の少なくとも1つの光開始剤
を少なくとも含有する、ラッカー組成物の使用を提供する。
【0035】
本明細書において、単数形の用語「1つの(a)」および「その(the)」は、言葉および/または内容が特に示さない限り同義であって、「1以上の(one or more)」および「少なくとも1つの(at least one)」と互換的に使用する。従って、例えば、本明細書または添付の特許請求の範囲において「1つのモノマー(a monomer)」と称することは、単一のモノマーまたは1より多いモノマーを指称し得る。さらに、全ての数値は、特記のない限り、単語「約」により修飾されると理解される。
【0036】
耐スクラッチ性被覆物の製造のための本発明によるまたは本発明に従って用いるラッカー組成物(以下、ラッカー組成物と称する)は、好ましくは15〜60重量部、特に好ましくは20〜55重量部の成分I)を含有する。上記重量部は、成分I)を構成する全てのジアクリレートまたはジメタクリレートの重量部の合計である。
【0037】
成分I)は、好ましくは少なくとも1つのC〜C12−ジオールジアクリレートまたはC〜C12−ジオールジメタクリレート、特に好ましくは少なくとも1つのC〜CジオールジアクリレートまたはC〜C−ジオールジメタクリレートである。C〜C12、好ましくはC〜C12、特に好ましくは、C〜C単位は、メチル基により必要に応じて置換されてよい、または1以上の酸素原子により中断されおよび1以上のメチル基により必要に応じて置換されてよい直鎖状アルキレン基である。好ましくは、これらは、1以上の酸素原子により必要に応じて中断されてよい直鎖状アルキレン基である。
【0038】
可能性のある適当なジオールジアクリレートまたはジオールジメタクリレートは、極めて特に好ましくは、一般式(I):
【化1】

(式中、
は、HまたはCH、好ましくはHを表し、および
nは、2〜12の整数、好ましくは4〜12、特に好ましくは4〜8の整数を表す)
で示されるジオールジアクリレートまたはジオールジメタクリレートである。
【0039】
可能性のある適当なジオールジアクリレートまたはジオールジメタクリレートは、さらに極めて特に好ましくは、一般式(II):
【化2】

(式中、
は、HまたはCH、好ましくはHを表し、
は、HまたはCHを表し、および
mは、2〜5の整数を表し、好ましくは2〜4を表す)
で示されるジオールジアクリレートまたはジオールジメタクリレートである。
【0040】
適当なC〜C−ジオールジアクリレートまたは−ジオールジメタクリレートは、例えばジ−エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート,1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジアクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジメタクリレート、1,7−ヘプタンジオールジアクリレート、1,7−ヘプタンジオールジメタクリレート、1,8−オクタンジオールジアクリレートおよび/または1,8−オクタンジオールジメタクリレートである。さらに適当なC〜C12−ジオールジアクリレートまたは−ジオールジメタクリレートは、例えば1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、2−メチル−1,8−オクタンジオールジアクリレート、2−メチル−1,8−オクタンジオールジメタクリレート、1,10−デカンジオールジアクリレート、1,10−デカンジオールジメタクリレート、1,11−ウンデカンジオールジアクリレート、1,11−ウンデカンジオールジメタクリレート、1,12−ドデカンジオールジアクリレートおよび/または1,12−ドデカンジオールジメタクリレートである。さらに適当なC〜C12−ジオールジアクリレートまたは−ジオールジメタクリレートは、例えばエチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−プロパンジオールジアクリレートおよび/または1,3−プロパンジオールジメタクリレートである。とりわけ、ジアクリレートは極めて特に好ましい。1,6−ヘキサンジオールジアクリレートおよび/または1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレートおよびジエチレングリコールジメタクリレートは特に好ましく、さらに特に好ましいのは、1,6−ヘキサンジオールジアクリレートおよびジエチレングリコールジアクリレートである。
【0041】
ラッカー組成物は、好ましくは12〜35重量部、特に好ましくは15〜30重量部、極めて特に好ましくは20〜30重量部の成分II)を含有する。上記重量部は、成分II)を構成する全てのアルコキシル化モノ−、ジ−またはトリアクリレートまたはメタアクリレートの重量部の合計である。
【0042】
成分II)のためのアルコキシル化モノアクリレートまたは−メタクリレートは、アルコキシル化され、必要に応じて置換された脂肪族、脂環式、芳香族または混合芳香族−脂肪族モノアクリレートまたは−メタクリレートであってよい。ここで、アルキル鎖が1以上のヘテロ原子、例えば酸素原子等により更に中断されてよいアルコキシル化直鎖および分枝状脂肪族モノアクリレートまたは−メタクリレートはいずれも可能である。脂環式または芳香族モノアクリレートまたは−メタクリレートの場合には、ヘテロ環式またはヘテロ芳香族モノアクリートまたは−メタクリレートも可能である。
【0043】
上記アルコキシル化モノアクリレートまたは−メタクリレートの例は、アルコキシル化、好ましくはエトキシル化メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、イソドデシルアクリレート、n−ラウリルアクリレート、C12〜C15−アルキルアクリレート、n−ステアリルアクリレート、n−ブトキシエチルアクリレート、ブトキシ−ジエチレングリコールアクリレート、メトキシ−トリエチレングリコールアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ベンジルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレートおよび対応するアルコキシル化、好ましくはエトキシル化メタクリレートである。
【0044】
成分II)のためのアルコキシル化ジアクリレートまたは−メタクリレートは、例えば成分I)のジオールジアクリレートおよび−メタクリレートと異なったアルコキシル化ジアクリレートまたは−メタクリレートであってよい。
【0045】
上記アルコキシル化ジアクリレートまたは−メタクリレートの例は、アルコキシル化、好ましくはエトキシル化メタンジオールジアクリレート、メタンジオールジメタクリレート、グリセロールジアクリレート、グリセロールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジアクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレートまたはトリメチロールプロパンジメタクリレートである。
【0046】
成分II)のためのアルコキシル化トリアクリレートまたは−メタクリレートの例は、アルコキシル化、好ましくはエトキシル化ペンタエリトリトールトリアクリレート、ペンタエリトリトールトリメタクリレート、グリセロールトリアクリレート、グリセロールトリメタクリレート、1,2,4−ブタントリオールトリアクリレート、1,2,4−ブタントリオールトリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート、ジトリメチルプロパンテトラアクリレートまたはジトリメチロールプロパンテトラメタクリレートである。
【0047】
アルコキシル化テトラ−、ペンタ−またはヘキサアクリレートの例は、アルコキシル化、好ましくはエトキシル化ペンタエリトリトールテトラアクリレート、ジペンタエリトリトールテトラアクリレート、ジペンタエリトリトールペンタアクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサアクリレート、ペンタエリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリトリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリトリトールペンタメタクリレートまたはジペンタエリトリトールヘキサメタクリレートである。
【0048】
成分II)のアルコキシル化ジアクリレートまたは−メタクリレート、トリアクリレートまたは−メタクリレート、テトラアクリレートまたは−メタクリレート、ペンタアクリレートまたは−メタクリレートおよび/またはアルコキシル化ヘキサアクリレートまたは−メタクリレートのおいては、全てのアクリレート基もしくはメタクリレート基、または幾つかのアクリレート基またはメタクリレート基は、アルキレンオキシド基により対応する基へ結合してよい。上記の完全または部分アルコキシル化ジ−、トリ−、テトラ−、ペンタ−またはヘキサアクリレートまたは−メタクリレートの任意の所望の混合物を用いてもよい。本発明では、アクリート基またはメタクリレート基が、幾つかの連続するアルキレンオキシド基、好ましくはエチレンオキシド基によりモノマーの脂肪族基、脂環式基または芳香族基へ結合することも可能である。モノマー中のアルキレンオキシド基またはエチレンオキシド基の平均数は、アルコキシル化度またはエトキシル化度により与えられる。アルコキシル化度またはエトキシル化度は、好ましくは2〜25であってよく、2〜15のアルコキシル化度またはエトキシル化度は、特に好ましく、極めて特に好ましいのは、3〜9である。
【0049】
成分II)は好ましくは、アルコキシル化、好ましくはエトキシル化ジ−および/またはトリアクリレートを含有する。成分II)は、特に好ましくは、少なくとも1つのアルコキシル化、好ましくはエトキシル化ジ−またはトリアクリレートを含有し、少なくとも1つのアルコキシル化、好ましくはエトキシル化ジ−またはトリメタクリレート、極めて特に好ましくはエトキシル化ジ−またはトリアクリレートを含有する。本発明の好ましい実施態様では、成分II)は、少なくとも1つのエトキシル化トリアクリレートまたは−メタクリレート、好ましくはエトキシル化トリアクリレートを含有する。特に好ましくは、成分II)は、アルコキシル化トリメチロールプロパントリアクリレートおよび/またはトリメチロールプロパントリメタクリレートを含有する。好ましい実施態様では、成分II)は、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクレートおよび/またはトリメチロールプロパントリメタクリレート、好ましくはエトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレートを含有する。好ましい実施態様では、トリメチロールプロパントリアクリレートおよび/またはトリメチロールプロパントリメタクリレートのエトキシル化度は、2〜25、特に好ましくは2〜15、極めて特に好ましくは3〜9である。
【0050】
ラッカー組成物は、好ましくは0〜30重量部、特に好ましくは0.1〜30重量部の成分III)を含有する。特に好ましい実施態様では、ラッカー組成物は、成分III)を含有する。上記重量部は、成分III)を構成する、記載の群からの全てのモノマーの重量部の合計である。
【0051】
成分III)は、ペンタエリトリトールトリアクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレート、ジペンタエリトリトールテトラアクリレート、ジペンタエリトリトールペンタアクリレート、ペンタエリトリトールトリメタクリレート、ペンタエリトリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリトリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリトリトールペンタメタクリレートおよびこれらと脂肪族または芳香族ジイソシアネートとの反応生成物を含み、およびジペンタエリトリトールヘキサアクリレートおよびジペンタエリトリトールヘキサメタクリレートを含む群から選択される。好ましくは、成分III)は、上記モノマーの2以上を含有する混合物を含む。
【0052】
適当な脂肪族ジイソシアネートは、直鎖状脂肪族、分枝状脂肪族および/または脂環式ジイソシアネートである。上記脂肪族ジイソシアネートの例は、1,4−ブチレン−ジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレン−ジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、2,2,4−および/または2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、異性体ビス(4,4’−イソシアナトシクロヘキシル)メタンまたは任意の所望の異性体含有量のこれらの混合物、1,4−シクロヘキシレン−ジイソシアネート、4−イソシアナトメチル−1,8−オクタン−ジイソシアネート(ノナントリイソシアネート)、1〜8個の炭素原子を有するアルキル基でのアルキル2,6−ジイソシアナトヘキサノエート(リシン−ジイソシアネート)およびこれらの混合物である。
【0053】
芳香族ジイソシアネートの例は、1,4−フェニレン−ジイソシアネート、2,4−および/または2,6−トルイレン−ジイソシアネート(TDI)、1,5−ナフチレンジイソシアネート、2,2’−および/または2,4’−および/または4,4’−ジフェニルメタン−ジイソシアネート、1,3−および/または1,4−ビス−(2−イソシアナト−プロプ−2−イル)−ベンゼン(TMXDI)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン(XDI)およびこれらの混合物である。
【0054】
好ましい脂肪族または芳香族ジイソシアネートは、1,6−ヘキサメチレン−ジイソシアネート(HDI)、イソホロン−ジイソシアネート(IPDI)または2,4−および/または2,6−トルイレン−ジイソシアネート(TDI)である。
【0055】
極めて好ましい実施態様では、成分III)は、ペンタエリトールトリアクリレート、ペンタエリトールテトラアクリレート、ジペンタエリトリトールテトラアクリレート、ジペンタエリトリトールペンタアクリレートおよび/またはジペンタエリトリトールヘキサアクリレートを含有する。
【0056】
ラッカー組成物は、好ましくは10〜60重量部、特に好ましくは15〜55重量部の成分IV)を含有する。上記重量部は、成分IV)を構成する全てのモノ−、ジ−またはトリアクリレートまたは−メタクリレートの重量部の合計である。
【0057】
成分IV)のためのモノアクリレートまたは−メタクリレートは、必要に応じて置換された脂肪族、脂環式、芳香族または混合芳香族−脂肪族モノアクリレートまたは−メタクリレートであってよい。本発明では、アルキル鎖が1以上のヘテロ原子、例えば酸素原子等により更に中断されてよい直鎖および分枝状脂肪族モノアクリレートまたは−メタクリレートはいずれも、可能である。脂環式または芳香族モノアクリレートまたは−メタクリレートの場合には、ヘテロ環式またはヘテロ芳香族モノアクリレートまたは−メタクリレートも可能である。成分IV)のための可能性のあるモノアクリレートまたは−メタクリレートは、アルコキシル化されていない。上記モノアクリレートまたは−メタクリレートの例は、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、イソドデシルアクリレート、n−ラウリルアクリレート、C12〜C15−アルキルアクリレート、n−ステアリルアクリレート、n−ブトキシエチルアクリレート、ブトキシ−ジエチレングリコールアクリレート、メトキシ−トリエチレングリコールアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ベンジルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレートおよび対応するメタクリレートである。
【0058】
成分IV)のためのジアクリレートまたは−メタクリレートは、例えば成分I)のジオールジアクリレートおよび−メタクリレートと異なったアルコキシル化ジアクリレートまたは−メタクリレートであってよく、アルコキシル化されていない。
【0059】
上記ジアクリレートまたは−メタクリレートの例は、メタンジオールジアクリレート、メタンジオールジメタクリレート、グリセロールジアクリレート、グリセロールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジアクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレートまたはトリメチロールプロパンジメタクリレートである。
【0060】
成分IV)のためのトリアクリレートまたは−メタクリレートは、例えば成分III)のトリアクリレートおよび−メタクリレートと異なったトリアクリレートまたは−メタクリレートであってよく、アルコキシル化されていない。
【0061】
上記トリアクリレートまたは−メタクリレートの例は、グリセロールトリアクリレート、グリセロールトリメタクリレート、1,2,4−ブタントリオールトリアクリレート、1,2,4−ブタントリオールトリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート、ジトリメチルプロパンテトラアクリレートまたはジトリメチロールプロパンテトラメタクリレートである。
【0062】
成分IV)は好ましくは、少なくとも1つのジ−またはトリアクリレートまたは少なくとも1つのジ−またはトリメタクリレートを含有する。成分IV)は、特に好ましくは、少なくとも1つのトリアクリレートまたは−メタクリレートである。特に好ましくは、成分IV)は、トリメチロールプロパントリアクリレートおよび/またはトリメチロールプロパントリメタクリレート、好ましくはトリメチロールプロパントリアクリレートを含有する。
【0063】
適当な光開始剤(UV−促進開始剤)は、好ましくは高い光化学反応性、および近紫外線範囲(>300nm、特に好ましくは>350nm)において吸収帯を有する。
【0064】
適当な光開始剤は、好ましくはアシルホスフィンオキシド誘導体、α−アミノアルキルフェノン誘導体、ヒドロキシアルキルフェノン、ベンゾフェノン、ベンジルケタール、メチルベンゾイルホルメートおよびフェニルアセトフェノンの群から選択される光開始剤である。
【0065】
上記光開始剤の例は、ベンゾフェノン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(Ciba Specialty ChemicalsからのIrgacure(登録商標) 819)、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン(Ciba Specialty ChemicalsからのIrgacure(登録商標) 184)、2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタノン(Ciba Specialty ChemicalsからのIrgacure(登録商標) 369)、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン(Ciba Specialty ChemicalsからのIrgacure(登録商標) 907)、(1−ヒドロキシシクロヘキシル)フェニルメタノン(Ciba Specialty ChemicalsからのIrgacure(登録商標) 1800)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノン(Ciba Specialty ChemicalsからのIrgacure(登録商標) 1700)、ビス(2,6−ジメチルベンゾイル)(2,4,4−トリメチルペンチル)ホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)(2,4,4−トリメチルペンチル)ホスフィンオキシド、(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ジフェニルホスフィンオキシド(BASF AGからのLucirin(登録商標) TPO Solid)、2,4,6−トリメチルベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキシド(BASF AGからのLucirin(登録商標) TPO−L)、ベンゾイルホスホン酸ビス(2,6−ジメチルフェニル)エステル(BASF AGからのLucirin(登録商標) 8728)および2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノン(Ciba Specialty Chemicals からのDarocur(登録商標) 4265)である。
【0066】
これらの光開始剤の互いの混合物も同様に適当である。
【0067】
ラッカー組成物は、1以上の更なるラッカー添加剤を成分I)〜IV)の100重量部を越えて必要に応じて更に含有してよい。上記ラッカー添加剤は、例えば安定剤、フロー剤、表面添加剤、顔料、染料、無機ナノ粒子、接着促進剤、IR吸収剤およびUV吸収剤を含む群から、好ましくは安定剤、フロー剤、表面添加剤および無機ナノ粒子を含む群から選択することができる。ラッカー組成物は、光開始剤の量に加えて、および成分I)〜IV)の100重量部に加えて、0〜20重量部、特に好ましくは0〜10重量部、極めて特に好ましくは0.1〜10重量部の少なくとも1つの更なるラッカー添加剤を成分VI)として含有する。好ましくは、ラッカー組成物中に含まれる全てのラッカー添加剤の全含有量は、0〜20重量部、特に好ましくは0〜10重量部、極めて特に好ましくは0.1〜10重量部である。
【0068】
本発明のラッカー組成物は、機械耐性、例えば耐スクラッチ性および/または鉛筆硬度等を向上させるために、およびUV放射線からの保護のために無機ナノ粒子を含有することができる。
【0069】
可能性のあるナノ粒子は、ランタニドを含む、周期表の主族II〜IVの元素および/または亜族I〜VIIIの元素の無機酸化物、混合酸化物、水酸化物、硫酸塩、炭酸塩、炭化物、ホウ化物および窒化物である。好ましいナノ粒子は、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ、酸化亜鉛または酸化チタンナノ粒子であり、酸化シリコンナノ粒子は特に好ましい。
【0070】
用いる粒子は、好ましくは、200nm未満、好ましくは5〜100nm、特に好ましくは5〜50nmの平均粒度(動的光散乱により分散体中で測定、Z平均として決定)を有する。好ましくは、用いる全てのナノ粒子の少なくとも75%、特に好ましくは少なくとも90%、極めて特に好ましくは少なくとも95%は、上記粒度を有する。
【0071】
ラッカー組成物は、1以上の有機溶媒を成分I)〜IV)の100重量部を越えて必要に応じて更に含有してよい。上記有機溶媒は、例えば芳香族溶媒、例えばキシレンまたはトルエン等、ケトン、例えばアセトン、2−ブタノン、メチルイソブチルケトン、ジアセトンアルコール等、アルコール、例えばメタノール、エタノール、i−プロパノール,2−メトキシプロピルアルコル等、エーテル、例えば1,4−ジオキサン、エチレングリコールn−プロピルエーテル等、またはエステル、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、1−メトキシ−2−プロピルアセテート等またはこれらの溶媒を含有する混合物を含む群から選択することができる。i−プロパノール,酢酸エチル、酢酸ブチル、2−メトキシ−プロピルアルコール、キシレンまたはトルエンは、特に好ましい。ラッカー組成物は、好ましくは、光開始剤の量に加えて、および成分I)〜IV)の100重量部に加えて、0〜300重量部、特に好ましくは0〜200重量部、極めて特に好ましくは10〜150重量部の少なくとも1つの有機溶媒を成分VII)として含有する。好ましくは、ラッカー組成物中に含まれる全ての有機溶媒の全含有量は、0〜300重量部、特に好ましくは0〜200重量部、極めて特に好ましくは10〜150重量部である。
【0072】
ラッカー組成物は、1以上のレーザー感応性添加剤を、成分I)〜IV)の100重量部を越えて必要に応じて更に含有することができる。可能性のある適当なレーザー感応性添加剤は、本出願においてプラスチックの層のために後に記載するものである。レーザー感応性添加剤は、好ましくは、完全にまたは部分的に硬化した耐スクラッチ性被覆物が、完全にまたは部分的に硬化した被覆物の全重量(任意の溶媒を含まない)を基準として10〜250ppm、特に好ましくは15〜150ppmのレーザー感応性添加剤を含有するような量でラッカー組成物へ添加することができる。
【0073】
本発明のラッカー組成物は、個々の成分I)〜V)、および必要に応じて任意成分VI)およびVII)を、溶媒を存在させずに取り入れ、これらを互いに撹拌により混合することにより、または溶媒の存在下、例えばこれらを溶媒へ添加し、これらを互いに撹拌により混合することにより簡単な方法により製造することができる。好ましくは、光開始剤を、まず、溶媒中または例えば成分I)中で溶解させ、次いで更なる成分を添加する。次いで、ろ過、好ましくは精密ろ過による精製を、必要に応じて行う。
【0074】
耐スクラッチ性被覆物は、ラッカー組成物から、ラッカー組成物を、適切な基材へ通常の方法により塗布して、次いでこれを適当な条件下で硬化させることにより簡単な方法により製造することができる。本発明では、例えばラッカー組成物の1以上の層を、必要に応じて予備処理した基材へ塗布することができ、次いで少なくとも幾つかの溶媒を層から除去することができ、次いで、このようにして得られた層を硬化することができる。本発明では、ラッカー組成物からの幾つかの層の塗布の場合には、必要に応じて存在する少なくとも幾つかの溶媒の除去を、いずれの場合にも次の層の塗布前に行う。特定の層の硬化は、必要に応じて、何れの場合にも次の層の適用前に行うこともできる。
【0075】
塗布は、例えば浸漬法、フラッディング、噴霧法、ナイフ塗布法、注入法、スピンコート法または刷毛法により行うことができる。大きな工業規模では、塗布は、例えばロールツーロール法により、ナイフ被覆法、注入法またはロール法により行うことができる。次いで、全てまたは幾つかの溶媒を必要に応じて除去し、好ましくは蒸発させ、こうして得られた被覆物を、好ましくは、UV放射により硬化させる。通常の方法による塗布についての情報は、例えばOrganic Coatings: Science and Technology、John Wiley & Sons 1994年、第22章、第65〜82頁に見出す。
【0076】
熱可塑性皮膜は、上記耐スクラッチ性被覆物を有する本発明による熱可塑性皮膜の製造のための基材として働く。本発明による可能性のある熱可塑性皮膜は、少なくとも1つの熱可塑性プラスチックを含有する少なくとも1つの層を含む皮膜である。しかしながら、耐スクラッチ性被覆物を他の基材、例えば既製カードブランクまたは既製多層構築物等へ適用することも可能である。しかしながら、耐スクラッチ性被覆物を熱可塑性皮膜へ適用することは、熱可塑性皮膜を本発明による方法に用いることができるので好ましい。上記熱可塑性皮膜を、単一または多層熱可塑性皮膜であってよい。基材としての多層熱可塑性皮膜の場合には、これは、共押出、押出積層または積層により、好ましくは共押出により製造された熱可塑性皮膜であってよい。
【0077】
本発明による熱可塑性皮膜は、好ましくは20μm〜500μm、特に好ましくは25〜300μm、極めて特に好ましくは30〜250μmの厚みを有する。好ましい実施態様では、本発明による熱可塑性皮膜は、50〜150μmの厚みを有する。
【0078】
本発明による熱可塑性フィルムは、好ましくは、1〜20μm、好ましくは30〜20μmの基本ピークツーバレー高さR3zを、耐スクラッチ性被覆物で被覆されていない側に有する。基本ピークツーバレー高さR3zは、5つの各ピークツーバレー高さR3z1〜R3z5の算術平均であり、個々のピークツーバレー高さは、個々の測定域L内での3番目に高いプロファイルピークおよび3番目に低いプロファイルバレーの間の垂直距離と定義される。基本ピークツーバレー高さR3zは、Lm=12.5mmの測定長さおよび2.5mmの個々の測定域Lにわたり測定する。測定は、1983年のダイムラー・ベンツ作業標準N31007に従って行うことができる。
【0079】
本発明による熱可塑性皮膜が、接着剤の層を、耐スクラッチ性被覆物で被覆されていない側に必要に応じて有することも可能である。接着剤の被覆物について、例えばポリウレタンまたはアクリレート接着剤に基づくものは適当である。このような接着剤は、当業者に既知である。
【0080】
本発明による熱可塑性皮膜が耐スクラッチ性被覆物で被覆されていない側に接着剤の層を必要に応じて有する場合、潜在性反応性接着剤を用いることが好ましい。潜在性反応性接着剤は、当業者に既知である。好ましい潜在性反応性接着剤は、水性分散体を含み、および>30℃の融点または軟化点を有するジ−またはポリイソシアネートおよびイソシアネートと反応性のポリマーを含有するものである。好ましくは、該水性分散体は、少なくとも2000mPasの粘度を有する。さらに、好ましくは、この分散体中におけるイソシアネート反応性ポリマーは、熱機械分析(TMA)により計測した場合、+110℃未満の温度、好ましくは+90℃未満の温度にて部分的にまたは完全に脱結晶化する結晶性ポリマー鎖から構成されたポリウレタンである。TMAによる測定は、ISO11359 パート3「浸透温度の決定」と同様に行う。さらに、好ましくは、ジ−またはポリイソシアネートは、二量化生成物、三量化生成物およびTDI(トルイレン−ジイソシアネート)またはIPDI(イソホロン−ジイソシアネート)のウレア誘導体の群から選択されるものである。このような潜在性反応性接着剤は、例えばDE−A102007054046に記載されている。このような潜在性反応性接着剤を用いることにより、セキュリティ書類および/または有価書類のセキュリティ防止の更なる向上が、水蒸気および/または空気が層構築物の端により内側へ広がることができず、したがって引き続きの層間剥離が生じることなく得られる。このような層構築物は、破壊することなく分離することはできない。
【0081】
本発明によるセキュリティ書類および/または有価書類は、ラッカー組成物から両側に製造された少なくとも1つの耐スクラッチ性被覆物を好ましく有する。
【0082】
このために、セキュリティ書類および/または有価書類の本発明による製造では、耐スクラッチ性仕上げが付与されたセキュリティ書類および/または有価書類の2つの外側の層の製造のために、積層膜は、耐スクラッチ性被覆物が付与され、および外側に面する側にそれぞれ少なくとも2つの熱可塑性皮膜を含む。
【0083】
好ましくは、少なくとも1つの情報の項目、好ましくはマイクロメートル規模での少なくとも1つの情報の項目は、本発明によるセキュリティ書類および/または有価書類の耐スクラッチ性被覆物の少なくとも1つに与えられる。その結果、更なるセキュリティ性を、本発明によるセキュリティ書類および/または有価書類に組み込むことができる。
【0084】
本発明では、用語情報の項目は、任意の形態でイメージ化することができる(型押される情報項目の場合には型押しすることできる)情報の項目を任意の形態で包含する。これは、例えば個々の数、数の組み合わせ、個々の文字、文字の組み合わせ、単語、署名、記号、反復性模様、線構造、装飾品、絵柄または他の像およびこれらの組み合わせであってよい。
【0085】
このようなセキュリティ書類および/または有価書類による製造では、上記情報の項目は、積層中または積層後、好ましくは積層膜の積層中に直接、耐スクラッチ性仕上げが付与された少なくとも1つの外側層に必要に応じて型押しされる。
【0086】
ラッカー組成物は、これにより製造された耐スクラッチ性被覆物が、セキュリティ書類および/または有価書類、好ましくはIDカードの製造中に、ダイへ付着することなく、またはその特性を破壊または低下させることなくその高積層温度に耐える優位性を提供する。上記セキュリティ書類および/または有価書類、好ましくはIDカードの従来法による積層条件は、積層中に例えば100〜200℃の積層温度、好ましくは120〜190℃、および380N/cmまで、好ましくは200および350N/cmの間の積層圧力である。
【0087】
ラッカー組成物で製造された耐スクラッチ性被覆物は、好ましくは1および25μmの間、特に好ましくは1および15μmの間、極めて特に好ましくは2および10μmの間の厚み(乾燥皮膜厚み)を有する。
【0088】
好ましくは、本発明によるセキュリティ書類および/または有価書類は、識別用書類、好ましくはIDカード(身分証明書)、例えば個人身分証明書、パスポート、運転免許証、銀行カード、クレジットカード、被保険者証、他の身分証明書等である。
【0089】
本発明によるセキュリティ書類および/または有価書類は、好ましくは、更なるプラスチックの層、特に好ましくは少なくとも1つの熱可塑性プラスチックを含有する熱可塑性プラスチックの層を含む。
【0090】
本発明によるセキュリティ書類および/または有価書類または本発明によるプラスチックの皮膜、好ましくは本発明によるセキュリティ書類および/または有価書類は、フィラー含有量を有する少なくとも1つのプラスチックの層、特に好ましくは熱可塑性プラスチックの層を含んでよい。フィラー含有量を有するプラスチックの層は、好ましくは、いずれの場合にも、互いに独立してフィラーのフィラー含有量を有する半透明、白色、黒色または着色層であってよい。特に好ましくは、フィラー含有量を有するプラスチックの層は、互いに独立して、フィラー含有量を有する半透明または白色層である。このようなフィラー含有量を有するプラスチックの半透明または白色層は、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、硫酸バリウムまたはガラス繊維を、顔料および/またはフィラーとして好ましく含有する。可能性のある適当なフィラー含有量を有するプラスチックの層は、Teslin(登録商標)の更なる層である。
【0091】
好ましくは、フィラー含有量を有するプラスチックの層は、50%未満の、好ましくは35%未満の、特に好ましくは25%未満の、極めて特に好ましい実施態様では15%未満の380nm〜780nmの可視波長範囲における透過率を有する層である。
【0092】
本発明の好ましい実施態様では、本発明によるセキュリティ書類および/または有価書類または本発明によるプラスチックの皮膜、好ましくは本発明によるセキュリティ書類および/または有価書類は、レーザー感応性添加剤を含有する少なくとも1つのプラスチックの層、特に好ましくは熱可塑性の層を含む。可能性のあるレーザー感応性添加剤は、例えばいわゆるレーザーマーキング添加剤、すなわち用いるレーザーの波長域で、好ましくはND:YAGレーザー(ネオジムドープトイットリウム−アルミニウム−ガーネットレーザー)の波長域で吸収剤のものである。WO−A2004/50766およびWO−A2004/50767および商標Micabs(登録商標)としてDSMから市販されている。レーザー添加剤として更に適当な吸収剤は、カーボンブラック、例えばDE−A−19522397に記載のおよび商標Lazerflair(登録商標)として市販の被覆薄板状シリケート、リン含有錫/銅混合酸化物、例えばUS6693657に記載のおよび商品名Mark−it(商標)として市販のアンチモンドープト酸化錫である。レーザー感応性添加剤の粒度粒度が、100nm〜10μmの範囲、特に有利には500nm〜2μmの範囲であることが好ましい。極めて特に好ましいレーザー感応性添加剤は、カーボンブラックである。
【0093】
本発明によるセキュリティ書類および/または有価書類または本発明によるプラスチックの皮膜は、1以上の更なる他の層、好ましくはプラスチックの層、特に好ましくは熱可塑性プラスチックの層を有することができ、これにより、例えば更なる情報の項目を、セキュリティ書類および/または有価書類、好ましくは身分証明書類へ組み込む。上記情報の項目は、例えば印刷法、例えばスクリーン法、インクジェット法、オフセット法またはレーザー印刷法等、または彫刻法、例えばレーザー彫刻等、または被覆法、例えばナイフ塗布法、浸漬法等から選択される少なくとも1つの方法により、必要に応じてマスク技術等を用いて書類の製造に用いる1以上の成分、例えば皮膜等へ適用することができる。情報の項目は、好ましくは装飾的性質または個別化性質、例えば名称、住所、写真等であってよい。
【0094】
本発明による多層構築物は、例えばセキュリティ書類および/または有価書類の保護のための働く1以上の更なる他の層、好ましくはプラスチックの層を有することができる。これらは、例えば帯電防止仕上げおよび/またはIR反射仕上げが付与された層であってよい。
【0095】
本発明によるプラスチックの皮膜は、帯電防止仕上げおよび/またはIR反射仕上げを付与することもできる。
【0096】
ラッカー組成物、好ましくはプラスチックの層、特に好ましくは熱可塑性プラスチックの層から製造された耐スクラッチ性被覆物の他に、本発明に従って存在する層はそれぞれ、好ましくは20μm〜850μmの厚みを有し、プラスチックの個々の層が同一または異なった層厚みを有することが可能である。25〜500μmの層厚みが好ましく、好ましくは30〜300μm、極めて特に好ましくは50〜250μmである。
【0097】
本発明によるセキュリティ書類および/または有価書類に含まれるプラスチックの層または本発明によるプラスチックの皮膜、特に好ましくは熱可塑性プラスチックの層は、好ましくは、少なくとも1つの熱可塑性プラスチックを含有する。
【0098】
プラスチックの層のための可能性のある熱可塑性プラスチックは、互いに独立して、エチレン性不飽和モノマーのポリマーおよび/または2官能性反応性化合物のポリカーボネートから選択される。特定の使用のために、透明熱可塑性プラスチックを用いることは有利であり得る。特に好ましい実施態様では、記載のプラスチックの層は、上記群から選択される少なくとも1つの熱可塑性プラスチックを一致して含むことができる。
【0099】
特に適当な熱可塑性プラスチックは、ジフェノールに基づくポリカーボネートまたはコポリカーボネート、ポリ−またはコポリアクリレートおよびポリ−またはコポリメタクリレート、例えば、好ましくはポリメチルメタクリレート、スチレンを有するポリマーまたはコポリマー、例えば、好ましくは、透明ポリスチレンまたはポリスチレン/アクリロニトリル(SAN)、透明熱可塑性ポリウレタンおよびポリオレフィン、例えば、好ましくは、透明ポリプロピレン型または環状オレフィンに基づくポリオレフィン(例えばTOPAS(登録商標)、Hoechst)、またはポリオレフィン系物質、例えばTeslin(登録商標)、テレフタル酸の重縮合物または共重縮合物(PETまたはCoPET)、グリコール−変性PET(PETG)またはポリ−またはコポリブチレンテレフタレート(PBTまたはCoPBT)、または上記の混合物である。
【0100】
とりわけ、500〜100000、好ましくは10000〜80000、特に好ましくは15000〜40000の平均分子量Mを有するポリカーボネートまたはコポリカーボネート、または少なくとも1つの上記ポリカーボネートまたはコポリカーボネートを含有するブレンドは、極めて特に好ましい。上記ポリカーボネートまたはコポリカーボネートと、少なくとも1つの上記テレフタル酸のポリカーボネートまたはコポリカーボネート、とりわけ10000〜200000、好ましくは26000〜120000の平均分子量Mを有する少なくとも1つの上記テレフタル酸のポリカーボネートまたはテレフタル酸とのブレンドは、さらに好ましい。本発明の特に好ましい実施態様では、ブレンドは、ポリカーボネートまたはコポリカーボネートと、ポリブチレンまたはコポリブチレンテレフタレートとのブレンドである。好ましくは、このようなポリカーボネートまたはコポリカーボネートと、ポリブチレンまたはコポリブチレンテレフタレートとのブレンドは、1〜90重量%のポリカーボネートまたはコポリカーボネートおよび99〜10重量%のポリブチレンまたはコポリブチレンテレフタレート、好ましくは1〜90重量%のポリカーボネートおよび99〜10重量%のポリブチレンテレフタレートでのブレンドであってよく、含有量は合計100重量%となる。特に好ましくは、上記ポリカーボネートまたはコポリカーボネートとポリブチレンまたはコポリブチレンテレフタレートとのブレンドは、20〜85重量%のポリカーボネートまたはコポリカーボネートおよび80〜15重量%のポリブチレンまたはコポリブチレンテレフタレート、好ましくは20〜85重量%のポリカーボネートおよび80〜15重量%のポリブチレンテレフタレートでのブレンドであってよく、含有量は合計100重量%となる。極めて特に好ましくは、上記ポリカーボネートまたはコポリカーボネートとポリブチレンまたはコポリブチレンテレフタレートとのブレンドは、35〜80重量%のポリカーボネートまたはコポリカーボネートおよび65〜20重量%のポリブチレンまたはコポリブチレンテレフタレート、好ましくは35〜80重量%のポリカーボネートおよび65〜20重量%のポリブチレンテレフタレートでのブレンドであってよく、含有量は合計100重量%となる。
【0101】
好ましい実施態様では、特に適当なポリカーボネートまたはコポリカーボネートは、芳香族ポリカーボネートまたはコポリカーボネートである。
【0102】
ポリカーボネートまたはコポリカーボネートは、既知の方法により直鎖または分枝状であってよい。
【0103】
これらのポリカーボネートの製造は、ジフェノール、カルボン酸誘導体、必要に応じて連鎖停止剤および必要に応じて分枝剤から既知の方法において行うことができる。ポリカーボネートの製造の詳細は、約40年間多くの特許明細書に記載されている。好ましい例として、Schnell、「Chemistry and Physics of Polycarbonates」、Polymer Reviews、第9巻、Interscience Publishers、ニューヨーク、ロンドン、シドニー、1964年、D.Freitag、U.Grigo、P.R.Mueller、H.Nouvertne’、BAYER AG、「Polycarbonates」、Encyclopedia of Polymer Science and Engineering、第11巻、第2版、1988年、第648〜718頁、および最後に、Dres.U.Grigo、K.KirchnerおよびP.R.Mueller、「Polycarbonate」、Becker/Braun、Kunststoff−Handbuch、第3/1巻、Polycarbonate、Polyacetale、Polyester、Celluloseester、Carl Hanser Verlag、ミュンヘン、ウィーン、1992年、第117〜299頁に記載されている。
【0104】
適当なジフェノールは、例えば一般式(III):
HO−Z−OH (III)
(式中、Zは、1以上の必要に応じて置換された芳香族環および脂肪族基または脂環式基またはアルキルアリールまたはヘテロ原子を架橋員(bridge members)として6〜34個のC原子を有する芳香族基である)
で示されるジヒドロキシアリール化合物であってよい。
【0105】
特に好ましいジヒドロキシアリール化合物は、レゾルシノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−ジフェニル−メタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニル−エタン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−1−(1−ナフチル)−エタン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−1−(2−ナフチル)−エタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキサン、1,1−ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキサン、1,1−ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキサン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、1,1’−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−3−ジイソプロピルベンゼンおよび1,1’−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−4−ジイソプロピル−ベンゼンである。
【0106】
極めて特に好ましいジヒドロキシアリール化合物は、4,4’−ジヒドロキシフェニル、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパンおよびビス−(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサンである。
【0107】
極めて特に好ましいコポリカーボネートは、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサンおよび2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパンを用いて製造することができる。
【0108】
適当な炭酸誘導体は、例えば一般式(IV):
【化3】

(式中、R、R’およびR’’は、互いに独立して、同一または異なっており、および水素、直鎖または分枝状C〜C34−アルキル、C〜C34−アルキルアリールまたはC〜C34−アリールを表し、およびRは、−COO−R’’’(式中、R’’’は、水素、直鎖または分枝状C〜C34−アルキル、C〜C34−アルキルアリールまたはC〜C34−アリールであってよい)を表す)
で示されるジアリールカーボネートであってよい。
【0109】
特に好ましいジアリール化合物は、ジフェニルカーボネート、4−tert−ブチルフェニルフェニルカーボネート、ジ−(4−tert−ブチルフェニル)カーボネート、ビフェニル−4−イルフェニルカーボネート、ジ−(ビフェニル−4−イル)カーボネート、4−(1−メチル−1−フェニルエチル)−フェニルフェニルカーボネート、ジ−[4−(1−メチル−1−フェニルエチル)−フェニル]カーボネートおよびジ−(メチルサリチレート)カーボネートである。
【0110】
ジフェニルカーボネートが極めて特に好ましい。
【0111】
1種のジアリールカーボネートまたは異なったジアリールカーボネートのどちらを用いてもよい。
【0112】
用いるジアリールカーボネートの製造に使用されなかった1以上のモノヒドロキシアリール化合物を、末端基を制御または変更する連鎖停止剤として更に用いてよい。これらは、一般式(V):
【化4】

(式中、Rは、直鎖もしくは分枝状C〜C34−アルキル、C〜C34−アルキルアリール、C〜C34−アリールまたは−COO−Rを表し、Rは、水素、直鎖もしくは分枝状C〜C34−アルキル、C〜C34−アルキルアリールまたはC〜C34−アリールを表し、
、Rは、互いに独立して、同一または異なっており、および水素、直鎖または分枝状C〜C34−アルキル、C〜C34−アルキルアリールまたはC〜C34−アリールを表す)
で示されるモノヒドロキシアリール化合物である。
【0113】
4−tert−ブチルフェノール、4−イソ−オクチルフェノールおよび3−ペンタデシルフェノールが好ましい。
【0114】
適当な分枝剤は、3個以上の官能性基、好ましくは3個以上のヒドロキシル基を有する化合物であってよい。
【0115】
好ましい分枝剤は、3,3−ビス−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−オキソ−2,3−ジヒドロインドールおよび1,1,1−トリス−(4−ヒドロキシフェニル)−エタンである。
【0116】
本発明の好ましい実施態様では、適当なテレフタル酸の重縮合物または共重縮合物は、ポリアルキレンテレフタレートである。適当なポリアルキレンテレフタレートは、例えば芳香族ジカルボン酸またはその反応性誘導体(例えばジメチルエステルまたは無水物)および脂肪族、脂環式または芳香脂肪族ジオールの反応生成物、およびこれらの反応生成物の混合物である。
【0117】
好ましいポリアルキレンテレフタレートは、テレフタル酸(またはその反応性誘導体)および2〜12個のC原子を有する脂肪族または脂環式ジオールから既知の方法により製造することができる(Kunststoff−Handbuch、第VIII巻、第 695頁以下参照、Karl−Hanser−Verlag、ミュンヘン、1973年)。
【0118】
好ましいポリアルキレンテレフタレートは、ジカルボン酸成分を基準として少なくとも80モル%、好ましくは90モル%のテレフタル酸基、およびジオール成分を基準として少なくとも80モル%、好ましくは少なくとも90モル%のエチレングリコールおよび/またはブタン−1,4−ジオールを含有する。
【0119】
好ましいポリアルキレンテレフタレートは、テレフタル酸基の他に、20モル%までの他の8〜14個のC原子を有する芳香族ジカルボン酸または4〜12個のC原子を有する脂肪族ジカルボン酸の基、例えばフタル酸、イソフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、シクロヘキサン二酢酸を含有してよい。
【0120】
好ましいポリアルキレンテレフタレートは、エチレングリコールまたは1,4-ブタンジオールの基の他に、3個〜12個のC原子を有する他の脂肪族ジオールまたは6個〜21個のC原子を有する脂環式ジオールの基、例えば1,3−プロパンジオール、2−エチルプロパン−1,3−ジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタン−1,5−ジオール、ヘキサン−1,6−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、3−メチルペンタン−2,4−ジオール、2−メチルペンタン−2,4−ジオール、2,2,4−トリメチルペンタン−1,3−ジオール、2−エチルヘキサン−1,6−ジオール、2,2−ジエチルプロパン−1,3−ジオール、ヘキサン−2,5−ジオール、1,4−ジ−(β−ヒドロキシエトキシ)−ベンゼン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシシクロヘキシル)−プロパン、2,4−ジヒドロキシ−1,1,3,3−テトラメチル-シクロブタン、2,2−ビス−(4−β−ヒドロキシエトキシフェニル)−プロパンおよび2,2−ビス−(4−ヒドロキシプロポキシフェニル)−プロパンの基を、20mol%まで含有してよい(DE−OS2407674、同2407776号、同2715932号参照)。
【0121】
ポリアルキレンテレフタレートは、比較的少量の3価または4価アルコールまたは3塩基性もしくは4塩基性カルボン酸を組み込むことにより、分枝させることができ、例えばDE−OS第1900270号明細書およびUS3692744号に記載されている。好ましい分枝剤の例は、トリメシン酸、トリメリット酸、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンおよびペンタエリトリトールである。
【0122】
好ましくは、酸成分を基準として1モル%以下の分枝剤を用いる。
【0123】
テレフタル酸およびその反応性誘導体(例えばそのジアルキルエステル)とエチレングリコールおよび/またはブタン−1,4−ジオールのみから製造されたポリアルキレンテレフタレート、およびこれらのポリアルキレンテレフタレートの混合物は、特に好ましい。
【0124】
好ましいポリアルキレンテレフタレートは、少なくとも2つの上記酸成分から、および/または少なくとも2つの上記アルコール成分から製造されるコポリエステルであり、特に好ましいコポリエステルは、ポリ(エチレングリコール/ブタン−1,4−ジオール)テレフタレートである。
【0125】
成分として好ましく使用されるポリアルキレンテレフタレートは、25℃においてフェノール/o−ジクロロベンゼン(1:1重量部)中で測定した場合、約0.4〜1.5dl/g、好ましくは0.5〜1.3dl/gの固有粘度を有する。
【0126】
本発明の特に好ましい実施態様では、できるだけ多くの存在する熱可塑性プラスチックの層は、少なくとも1つのポリカーボネートまたはコポリカーボネートを含有する。
【0127】
本発明によるセキュリティ書類および/または有価書類または本発明によるプラスチックの皮膜、好ましくは本発明によるセキュリティ書類および/または有価書類は、一体積層複合材料を、プラスチックの層が互いに直接接触する領域において含んでよい。とりわけ、このような一体積層複合材料は、積層複合材料の引き続きの非破壊分離からの保護をもたらす。
【0128】
プラスチックの個々の層のプラスチックが同一または同様のプラスチックまたはプラスチックの混合物である場合、特に一体積層複合材料の場合、個々の層は、種々の成分、例えば種々の皮膜からの多層複合材料(例えば本発明によるセキュリティ書類および/または有価書類の形態で)の製造において積層複合材料へ寄与する積層複合材料の部分を意味すると理解される。
【0129】
本発明によるセキュリティ書類および/または有価書類は、1以上の電子成分を更に含んでよい。
【0130】
以下の実施例は、例として本発明を説明するものであって、本発明を限定するものと決して解釈されるべきではない。
【実施例】
【0131】
用いた略称および商品名:
〔HDDA〕 1,6−ヘキサンジオールジアクリレート
〔PTTA〕 ペンタエリトールテトラアクリレート
〔TMPDA〕 トリメチロールプロパントリアクリレート
〔HDI〕 1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート
〔PTTA/HDI〕 PTTAおよびHDIの反応生成物
〔Irgacure(登録商標) 184〕 1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン(Ciba Specialty Chemicalsからの光開始剤)
〔BYK(登録商標) 306〕 ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンのキシレン/モノフェニルグリコール混合物(混合比7/2)中の溶液、固形分12.5重量%(BYK Additives & Instrumentsからの湿潤助剤)
【0132】
用いた成分I)〜IV):

【0133】
実施例1〜8(本発明による)および比較例1〜4
ラッカー組成物の製造:
まず、表1aおよび1bに記載の組成に従って、HDDAの記載重量部を混合容器中へ投入し、7重量部の光開始剤Irgacure(登録商標) 184を添加した。該混合物を、光開始剤が溶解するまで撹拌した。その後、光開始剤溶液を、精密ろ過した(1μmの細孔幅を有するフィルター)。次いで、記載の重量部に従う他のモノマー(TMPTA、エトキシル化TMPTA、PTTAまたはHDIとのPTTA反応生成物)および更なる0.9重量部のBYK(登録商標) 306を、撹拌しながら連続して添加し、次いで該混合物を15分間撹拌した。ラッカーを、もう一度精密ろ過した(1μmの細孔幅を有するフィルター)。
【0134】
【表1】

【0135】
【表2】

【0136】
被覆皮膜の製造
こうして得られたラッカー組成物を用いて、DIN A4サイズでの、および175μmの厚みを有するMakrofol(登録商標) DE 1−1のポリカーボネート皮膜を、特定のラッカー組成物により、5μmの湿潤被膜厚み(約5μmの乾燥皮膜厚みに相当)で、ドクターブレードにより被覆した。次いで被覆被膜を、UVユニット(ssr engineering gmbh製、水銀灯を有するBS 407 dr conveyor)により硬化した。
【0137】
積層カードの製造:
DIN A4サイズでの250μmの厚みを有するMakrofol(登録商標) ID 4−4の2つの白色着色ポリカーボネート皮膜を、同一のラッカー組成物により被覆された本発明による2つの皮膜の間に設置した。この場合、本発明による皮膜に、被覆物を外側に配置した。積層膜を、Buerkleからの積層プレス中に置き、加圧および加熱下で積層した。積層は、以下のパラメータで行った:
温度: 175℃
昇温時間中の低予備圧力: 15N/cm
昇温時間: 8分
積層中の高圧: 300N/cm
積層時間: 2分
次いで、プレスの冷却を開始した。冷却は、圧力荷重を維持しながら行った。38℃の温度に達した際、プレスを開けた。
【0138】
ISO 7810に従うカードの寸法を有するカードを、積層シートから打ち抜いた。
【0139】
比較例1からのラッカー組成物で被覆された皮膜で製造された積層膜を除けば、全ての被覆皮膜は、良好な積層可能性を示した(表2aおよび2b参照)。比較例1からのラッカー組成物で被覆された皮膜は、プレスからの除去後に粘着性であり、カードへ更に加工することができなかった。
【0140】
得られたカードのそれぞれにおいて、多層像(MLI)および可変レーザー像(CLI)構造を、積層に用いた条件と同じ条件下で表面の1つに型押しする。得られた全てのカードは、存在する耐スクラッチ性被覆物がクラックを示すことなく上記構造を型押しすることができた(表2aおよび2b参照)。
【0141】
まず、カードを、手動曲げ試験に付した。ここで、該カードを、2つの末端が互いに合うように平坦横断方向に沿って中間で1回、手で曲げる(180℃による曲げ)。この曲げ試験後にクラックを示さない、または部分的にのみ示すカードのうち、更なる上記カードを、ISO7810に従う折り畳み試験に付した。
【0142】
【表3】

【0143】
【表4】

【0144】
この試験の後、本発明による全てのカードは、耐スクラッチ性被覆物において全くクラックを示さないか、または部分的にのみクラックを示すかのいずれかであったが、比較例からのカードは、連続クラックを既に示した(表2aおよび2b参照)。
【0145】
この曲げ試験の後、クラックを示さないか、または部分的にのみクラックを示したカードのうち、更なる上記カードを、ISO7810に従って折り畳み試験に付した。実施例2からのカードは、連続20000回折り畳み後でさえ、全くクラックを示さなかった。実施例3および4からのカードは、連続20000回折り畳み後に最小限のクラックのみ示した。実施例1および7からのカードは、10000および15000回の間の連続折り畳み後に数mmの長さのクラックを示した。実施例5および6からのカードは、15000および20000回の間の連続折り畳み後に数mmの長さのクラックを示した。実施例1からのカードは、10000および15000回の間の連続折り畳み後に数mmの長さのクラックを示した。折り畳み試験は、実施例7および8からのカードについて行わなかった。この結果は、本発明によるカードが20000回の連続折り畳みにおいて連続クラックを示さないことを示す。いくつかの例では、部分的にのみクラックが、数mmの規模において確認され、本発明によるカードは、対応する標準の要件を全て満たす。
【0146】
実施例1〜8および比較例2〜4からのカードのi−プロパノール、キシレン、酢酸メトキシプロピル、酢酸エチルおよびアセトンに対する溶媒の耐性を、上記溶媒を含ませた織布により23℃にて1時間該カードに負荷をかけることにより更に決定した。カードはいずれも可視的な変化を示さず、この試験後に、カードは、溶媒で負荷をかけた箇所上でスクラッチすることにより損傷を与えることができなかった。
【0147】
被覆物の耐スクラッチ性は、スチールウール(型00)の1片を積層シートの被覆物上に置き、これに500gの重さのハンマーにより加重をかけおよび10cm長さの距離にわたり20回引っ張り、これによりハンマー上に更なる圧力を与えることなく、更に試験した。その後、こうして処理した被覆物の光沢水準およびヘイズ(ISO2813およびISO13803に従って、BYK Additives&Instrumentsからのmicro−haze plusにより計測)を計測した。比較例2および3に従うラッカー組成物により製造した被覆物のみが、スクラッチの可視的な跡を示した。
【0148】
この結果は、本発明によるカードが上記書類の柔軟性および破壊強度の高い要件をいずれも満たし、良好な耐化学薬品性および耐スクラッチ性を有することを示す。本発明によるラッカー組成物で被覆された皮膜は、高い積層温度に耐え、微細なマイクロメートル構造をクラックなしで型押しすることができる。これに対し、比較例によるカードは、適切な柔軟性および破壊強度を示さず、場合によっては、適切な耐スクラッチを更に示さない。
【0149】
広範な本発明の概念から逸脱することなく、上記の実施形態に対して変更を加えることができることは当業者に明らかであろう。従って、本発明は、開示した特定の実施形態に限定されず、特許請求の範囲によって定義されるような本発明の精神および範囲内での変更に及ぶことが意図される。
【0150】
全ての引用文献は、全ての有用な目的のために参照によりここに組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
I)12〜70重量部のC〜C12−ジオールジアクリレートまたはC〜C12−ジオールジメタクリレート、ここで、C〜C12は、メチル基により必要に応じて置換されてよい、または1以上の酸素原子により中断されおよび1以上のメチル基により必要に応じて置換されてよい直鎖状アルキレン基を示し、
II)12〜40重量部のアルコキシル化モノ−、ジ−、トリ−、テトラ−、ペンタ−またはヘキサアクリレートまたはアルコキシル化モノ−、ジ−、トリ−、テトラ−、ペンタ−またはヘキサメタクリレート、
III)0〜40重量部の、ペンタエリトリトールトリアクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレート、ジペンタエリトリトールテトラアクリレート、ジペンタエリトリトールペンタアクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサアクリレート、ペンタエリトリトールトリメタクリレート、ペンタエリトリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリトリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリトリトールペンタメタクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサメタクリレート、これらと脂肪族または芳香族ジイソシアネートとの反応生成物およびこれらの混合物からなる群から選択されるモノマー、
IV)5〜60重量部の更なるモノ−、ジ−またはトリアクリレートまたはモノ−、ジ−またはトリメタクリレート
を含むラッカー組成物から得られた耐スクラッチ性被覆物を含み、成分I)〜IV)の重量部は合計100重量部となり、および該100重量部の他に、該ラッカー組成物は、
V)0.1〜10重量部の光開始剤
を更に含む、セキュリティ書類および/または有価書類。
【請求項2】
ラッカー組成物は、15〜60重量部の成分I)を含む、請求項1に記載のセキュリティ書類および/または有価書類。
【請求項3】
ラッカー組成物は、12〜35重量部の成分II)を含む、請求項1に記載のセキュリティ書類および/または有価書類。
【請求項4】
ラッカー組成物は、0〜30重量部の成分III)を含む、請求項1に記載のセキュリティ書類および/または有価書類。
【請求項5】
セキュリティ書類および/または有価書類は、識別用書類である、請求項1に記載のセキュリティ書類および/または有価書類。
【請求項6】
セキュリティ書類および/または有価書類は、ラッカー組成物から得られた耐スクラッチ性被覆物をセキュリティ書類および/または有価書類の両側に含む、請求項1に記載のセキュリティ書類および/または有価書類。
【請求項7】
情報の項目は、耐スクラッチ性被覆物において型押しされる、請求項1に記載のセキュリティ書類および/または有価書類。
【請求項8】
セキュリティ書類および/または有価書類のための耐スクラッチ性被覆物用ラッカー組成物の製造方法であって、少なくとも、
I)12〜70重量部のC〜C12−ジオールジアクリレートまたはC〜C12−ジオールジメタクリレート、ここで、C〜C12は、メチル基により必要に応じて置換されてよい、または1以上の酸素原子により中断されおよび1以上のメチル基により必要に応じて置換されてよい直鎖状アルキレン基を示し、
II)12〜40重量部のアルコキシル化モノ−、ジ−、トリ−、テトラ−、ペンタ−またはヘキサアクリレートまたはアルコキシル化モノ−、ジ−、トリ−、テトラ−、ペンタ−またはヘキサメタクリレート、
III)0〜40重量部の、ペンタエリトリトールトリアクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレート、ジペンタエリトリトールテトラアクリレート、ジペンタエリトリトールペンタアクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサアクリレート、ペンタエリトリトールトリメタクリレート、ペンタエリトリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリトリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリトリトールペンタメタクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサメタクリレート、これらと脂肪族または芳香族ジイソシアネートとの反応生成物およびこれらの混合物からなる群から選択されるモノマー、
IV)5〜60重量部の更なるモノ−、ジ−またはトリアクリレートまたはモノ−、ジ−またはトリメタクリレート、
ここで、成分I)〜IV)の重量部は合計100重量部となり、および
該100重量部の他に、
V)0.1〜10重量部の少なくとも1つの光開始剤
を接触させる工程を含む、方法。
【請求項9】
セキュリティ書類および/または有価書類の製造方法であって、
複数の熱可塑性皮膜を含む積層膜を形成する工程であって、該熱可塑性皮膜の少なくとも1つは、耐スクラッチ性被覆物を有する第1外面側を有し、および
該積層膜を積層する工程
を含み、該耐スクラッチ性被覆物は、
I)12〜70重量部のC〜C12−ジオールジアクリレートまたはC〜C12−ジオールジメタクリレート、ここで、C〜C12は、メチル基により必要に応じて置換されてよい、または1以上の酸素原子により中断されおよび1以上のメチル基により必要に応じて置換されてよい直鎖状アルキレン基を示し、
II)12〜40重量部のアルコキシル化モノ−、ジ−、トリ−、テトラ−、ペンタ−またはヘキサアクリレートまたはアルコキシル化モノ−、ジ−、トリ−、テトラ−、ペンタ−またはヘキサメタクリレート、
III)0〜40重量部の、ペンタエリトリトールトリアクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレート、ジペンタエリトリトールテトラアクリレート、ジペンタエリトリトールペンタアクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサアクリレート、ペンタエリトリトールトリメタクリレート、ペンタエリトリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリトリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリトリトールペンタメタクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサメタクリレート、これらと脂肪族または芳香族ジイソシアネートとの反応生成物およびこれらの混合物からなる群から選択されるモノマー、
IV)5〜60重量部の更なるモノ−、ジ−またはトリアクリレートまたはモノ−、ジ−またはトリメタクリレート
を含むラッカー組成物から得られ、成分I)〜IV)の重量部は合計100重量部となり、および該100重量部の他に、該ラッカー組成物は、
V)0.1〜10重量部の光開始剤
を更に含む、方法。
【請求項10】
複数の熱可塑性皮膜は、第1外面側の他にも、耐スクラッチ性被覆物を有する第2外面側を有する熱可塑性皮膜を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
情報の項目を、熱可塑性皮膜の外面側において型押しする工程を更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
情報の項目を、熱可塑性皮膜の外面側および/または熱可塑性皮膜の第2外面側において型押しする工程を更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
耐スクラッチ性被覆物を有する熱可塑性皮膜は、ポリカーボネートまたはコポリカーボネートを含む皮膜である、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
I)12〜70重量部のC〜C12−ジオールジアクリレートまたはC〜C12−ジオールジメタクリレート、ここで、C〜C12は、メチル基により必要に応じて置換されてよい、または1以上の酸素原子により中断されおよび1以上のメチル基により必要に応じて置換されてよい直鎖状アルキレン基を示し、
II)12〜40重量部のアルコキシル化モノ−、ジ−、トリ−、テトラ−、ペンタ−またはヘキサアクリレートまたはアルコキシル化モノ−、ジ−、トリ−、テトラ−、ペンタ−またはヘキサメタクリレート、
III)0〜40重量部の、ペンタエリトリトールトリアクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレート、ジペンタエリトリトールテトラアクリレート、ジペンタエリトリトールペンタアクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサアクリレート、ペンタエリトリトールトリメタクリレート、ペンタエリトリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリトリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリトリトールペンタメタクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサメタクリレート、これらと脂肪族または芳香族ジイソシアネートとの反応生成物およびこれらの混合物からなる群から選択されるモノマー、
IV)5〜60重量部の更なるモノ−、ジ−またはトリアクリレートまたはモノ−、ジ−またはトリメタクリレート
を含むラッカー組成物から得られた被覆物で被覆された表面を有し、成分I)〜IV)の重量部は合計100重量部となり、および該100重量部の他に、該ラッカー組成物は、
V)0.1〜10重量部の光開始剤
を更に含む、熱可塑性皮膜。
【請求項15】
I)12〜70重量部のC〜C12−ジオールジアクリレートまたはC〜C12−ジオールジメタクリレート、ここで、C〜C12は、メチル基により必要に応じて置換されてよい、または1以上の酸素原子により中断されおよび1以上のメチル基により必要に応じて置換されてよい直鎖状アルキレン基を示し、
II)12〜40重量部のアルコキシル化モノ−、ジ−、トリ−、テトラ−、ペンタ−またはヘキサアクリレートまたはアルコキシル化モノ−、ジ−、トリ−、テトラ−、ペンタ−またはヘキサメタクリレート、
III)0〜40重量部の、ペンタエリトリトールトリアクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレート、ジペンタエリトリトールテトラアクリレート、ジペンタエリトリトールペンタアクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサアクリレート、ペンタエリトリトールトリメタクリレート、ペンタエリトリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリトリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリトリトールペンタメタクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサメタクリレート、これらと脂肪族または芳香族ジイソシアネートとの反応生成物およびこれらの混合物からなる群から選択されるモノマー、
IV)5〜60重量部の更なるモノ−、ジ−またはトリアクリレートまたはモノ−、ジ−またはトリメタクリレート
を含み、成分I)〜IV)の重量部は合計100重量部となり、および該100重量部の他に、
V)0.1〜10重量部の光開始剤
を更に含む、ラッカー組成物。

【公開番号】特開2012−117067(P2012−117067A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−264913(P2011−264913)
【出願日】平成23年12月2日(2011.12.2)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】