説明

耐スライム性および貯蔵安定性が改良されたトリフェニルボロン化合物含有防汚塗料組成物

【課題】優れた耐スライム性を賦与する防汚塗膜を形成でき、かつ、防汚剤の塗料中での再結晶が抑制された防汚塗料組成物を提供する。
【解決手段】本発明の防汚塗料組成物は、(A)加水分解性共重合体と、(B)防汚剤とを含有するものであって、上記(A)は、所定の側鎖末端型または架橋型の金属塩結合を含有する共重合体であり、上記(B)は、(b1)少なくとも1種のトリフェニルボロン・アミン錯体と、(b2)N,N'−ジメチル−N'−トリル−(N−フルオロジクロロメチルチオ)スルファミドとを含有することを特徴とする。防汚剤(B)は、加水分解性共重
合体(A)100重量部に対して2〜500重量部の割合で含まれていることが好ましく、また、この防汚剤(B)は、(b1)100重量部に対して(b2)を5〜150重量部の割合で含有することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水棲生物(特にケイ藻類などのスライム)による基材の汚損を防止するために使用される、トリフェニルボロン化合物等の防汚剤を含有する防汚塗料組成物、ならびにそのような防汚塗料組成物の用途に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、船底塗料としては、亜酸化銅を含まず色相が鮮明であり、また、良好な消耗性を発揮し防汚性が良好であるという理由から、(メタ)アクリル酸金属塩共重合体とボロン化合物を組み合わせた海中防汚塗料が幅広く使用されている。しかしながら、船の稼動率が低い場合や海域の条件などによっては、珪藻類などのスライム(微生物皮膜)が付着し、船底の色がうす緑色になりやすく、特にプレジャーボート等の見栄えも要求される船舶で問題視されることが多い。
【0003】
そこで、従来の防汚塗料では、スライムの付着を防止するための耐スライム剤として、N,N'−ジメチル−N'−フェニル−(N−フルオロジクロロメチルチオ)スルファミド、
2,4,6−トリクロロフェニルマレイミド、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルフォニル)ピリジン等の有機防汚剤を配合していた。
【0004】
たとえば、特開2006−152205号公報(特許文献1)の実施例には、金属塩結合を有する加水分解性アクリル樹脂等の樹脂成分と、N,N'−ジメチル−N'−フェニル
−(N−フルオロジクロロメチルチオ)スルファミド、トリフェニルボロンピリジン等の有機防汚剤とを含有する防汚塗料組成物が記載されている。特開平08−277372号公報(特許文献2)の実施例には、トリオルガノシリル基を有する加水分解性共重合体と、トリフェニルボロンピリジンおよびN,N'−ジメチル−N'−フェニル−(N−フルオロジクロロメチルチオ)スルファミドとを含有する防汚塗料組成物が記載されている。また、
特開2004−315810号公報(特許文献3)には、酸化亜鉛等の無機担持体と、N,N'−ジメチル−N'−トリル−(N−フルオロジクロロメチルチオ)スルファミド等の有
機防汚剤とを含有する、防汚効果持続性の向上などの効果をうたった防汚塗料の発明が記載されている。
【0005】
しかし、このような従来の防汚塗料組成物の耐スライム性には改善の余地があり、また、耐スライム性を向上させようと防汚剤の塗料への配合量を増加させると、貯蔵中に再結晶して塗料性状が不良となりやすく、塗装作業中にスプレーガンの先が詰まるなどの不具合が起きるようになるといった問題があった。
【特許文献1】特開2006−152205号公報
【特許文献2】特開平08−277372号公報
【特許文献3】特開2004−315810号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、優れた耐スライム性を賦与する防汚塗膜を形成でき、かつ、塗料中での防汚剤の再結晶が抑制された防汚塗料組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、金属塩結合を含有する所定の加水分解性共重合体と、防汚剤として、トリフェニルボロン・アミン錯体およびN,N'−ジメチル−N'−トリル−(N−フルオロジク
ロロメチルチオ)スルファミドとを組み合わせて配合することにより、貯蔵中に再結晶が
起こらず、かつ顕著な耐スライム性を有する防汚塗膜を形成しうる防汚塗料組成物が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明の防汚塗料組成物は、(A)加水分解性共重合体と、(B)防汚剤とを含有するものであって、
上記加水分解性共重合体(A)は、
(a1)アクリル樹脂またはポリエステル樹脂であって、一般式(I):
−COO−M−O−COR1 ……(I)
[式(I)中、Mは亜鉛または銅を示し、R1は有機基を示す。]
で表される側鎖末端基を有する金属塩結合含有共重合体、または
(a2)一般式(II):
CH2=C(R2)−COO−M−O−CO−C(R2)=CH2 ……(II)
[式(II)中、Mは亜鉛または銅を示し、R2は水素原子またはメチル基を示す。]
で表される単量体(a21)から誘導される成分単位と、この単量体(a21)と共重合し得る他の不飽和単量体(a22)から誘導される成分単位とからなる金属塩結合含有共重合体、の少なくとも一方に該当する共重合体であり、
上記防汚剤(B)は、(b1)少なくとも1種のトリフェニルボロン・アミン錯体と、(b2)N,N'−ジメチル−N'−トリル−(N−フルオロジクロロメチルチオ)スルファ
ミドとを含有することを特徴とする。
【0009】
金属塩結合含有共重合体(a1)の有機基R1は、たとえば、一塩基酸から形成される
有機酸残基であって、炭素原子数2〜30飽和もしくは不飽和脂肪族炭化水素基、炭素原子数3〜20の飽和もしくは不飽和脂環式炭素水素基または炭素原子数6〜18の芳香族炭化水素基、あるいはこれらの置換体である。より具体的には、このような有機基R1
しては、バーサチック酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、ピマル酸、デヒドロアビエチン酸、12−ヒドロキシステアリン酸およびナフテン酸からなる群より選ばれた少なくとも1種の一塩基有機酸から形成される有機酸残基が挙げられる。その他、金属塩結合含有共重合体(a1)および(a2)に関する詳細な態様は後述する。
【0010】
一方、防汚剤(B)は、加水分解性共重合体(A)100重量部に対して2〜500重量部の割合で含まれていることが好ましく、また、この防汚剤(B)は、(b1)100重量部に対して(b2)を5〜150重量部の割合で含有することが好ましい。さらに、防汚剤(B)は、必要に応じて(b1)および(b2)以外の防汚剤、たとえば銅ピリチオン等の有機防汚剤を含有していてもよい。
【0011】
また、本発明の防汚塗料組成物は、着色顔料として弁柄等を、体質顔料としてタルク等を、脱水剤として無水石膏等を、可塑剤として塩素化パラフィンを、防汚塗料組成物中の全固形分に対して1〜5重量%の量で含有していてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の防汚塗料組成物を用いることにより、塗料中の再結晶物により塗料性状が不良となる、あるいはそれに伴い塗装作業に支障をきたすといった問題を引き起こすことなく、見栄えが要求される船舶に対して、十分な耐スライム性を有する防汚塗膜を形成できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明において成分の含有量を規定する際の基準となる物質の重量は、樹脂の重合用溶媒や塗料の希釈用溶剤等の揮発性成分を除いた乾燥塗膜を構成しうる成分、すなわち「固
形分」の重量である。「(メタ)アクリル酸」および「(メタ)アクリレート」は、それぞれ、アクリル酸およびメタクリル酸、ならびにアクリレートおよびメタクリレートを総称する語句である。
【0014】
また、本発明において「スライム」とは、藻類(ケイ藻、緑藻等)、バクテリアその他の微生物などからなる膜状の集合体であり、「耐スライム性」とは、このようなスライムが基材表面に形成されることを防止する性能をいう。
【0015】
防汚塗料組成物の成分
< 加水分解性共重合体(A) >
本発明の防汚塗料組成物は、樹脂成分として、海水中等のアルカリ雰囲気下における加水分解性を有する「金属塩結合含有共重合体」を含有する。この金属塩結合含有共重合体は、以下に述べる金属塩結合含有共重合体(a1)(単に「共重合体(a1)」とよぶこともある。)または金属塩結合含有共重合体(a2)(単に「共重合体(a2)」とよぶこともある。)の少なくとも一方に該当するものであればよい。すなわち、本発明の加水分解性共重合体(A)は、共重合体(a1)にみられる側鎖末端型金属塩結合と、共重合体(a2)にみられる架橋型金属塩結合との両方の構造を含有する、共重合体(a1)および(a2)のいずれの要件をも満たす共重合体であってもよい。
【0016】
・金属塩結合含有共重合体(a1)
金属塩結合含有共重合体(a1)は、アクリル樹脂またはポリエステル樹脂であって、下記式(I)で表される側鎖末端基を有する金属塩結合含有共重合体である。このうちア
クリル樹脂型のものが本発明では好ましい。なお、本発明ではこのような構造を「側鎖末端型」の金属塩結合とよぶことがある。
【0017】
−COO−M−O−COR1 ……(I)
式(I)中、Mは亜鉛または銅を示し、R1は有機基を示す。なお、金属塩結合含有共重合体(a1)には、通常、式(I)で表される側鎖末端基が複数存在するが、それぞれのR1、M同士は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0018】
金属塩結合含有共重合体(a1)における有機基R1としては、一塩基酸から形成され
る有機酸残基であって、炭素原子数2〜30の飽和もしくは不飽和脂肪族炭化水素基、炭素原子数3〜20の飽和もしくは不飽和脂環式炭素水素基、炭素原子数6〜18の芳香族炭化水素基、またはこれらの置換体であることが好ましく、炭素原子数10〜20の飽和もしくは不飽和脂肪族炭化水素基、炭素原子数3〜20の飽和もしくは不飽和脂肪族炭化水素基、またはこれらの置換体であることがより好ましい。このようなR1を有する金属
塩結合含有共重合体(a1)は調製が容易であり、また、防汚塗膜の加水分解性や重ね塗り性を優れたものにすることができる。
【0019】
本発明で用いる金属塩結合含有共重合体(a1)のうち、アクリル樹脂型のものは、たとえば、下記式(III)で表される金属塩結合を有する単量体、すなわち一塩基酸金属(メタ)アクリレート(以下「単量体(a11)」ともいう。)を用いた重合反応により、調
製することができる。
【0020】
CH2=C(R2)−COO−M−O−COR1 ……(III)
式(III)中、Mは亜鉛または銅を示し、R1は有機基を示し、R2は水素原子またはメ
チル基を示す(前記式(I)および(II)と同様である)。ただし、後述するような架橋型金属塩結合を形成しうる式(IV)で表される金属含有単量体と区別するため、式(III)
におけるR1からは、ビニル基[−CH=CH2]およびイソプロペニル基[−C(CH3)
=CH2]が除外される。
【0021】
なお、単量体(a11)を表す式(III)におけるR1の好ましい種類は、式(I)につ
いて前述した事項と同様である。すなわち、単量体(a11)は、有機基R1として、炭
素原子数10〜20の飽和もしくは不飽和脂肪族炭化水素基、炭素原子数3〜20の飽和もしくは不飽和脂肪族炭化水素基、またはこれらの置換体である、一塩基酸から形成される有機酸残基を有するものが好ましい。なかでも、バーサチック酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸(これらの不飽和脂肪酸の構造異性体(イソステアリン酸等)を含む。以下同様。)、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、ピマル酸、デヒドロアビエチン酸、12−ヒドロキシステアリン酸またはナフテン酸から形成される有機酸残基を有するものが特に好ましい。
【0022】
本発明の金属塩結合含有共重合体(a1)は、上記単量体(a11)に該当する2種以上の単量体の共重合反応により得られたものであってもよい。また、単量体(a11)に該当する1種または2種以上の単量体と、単量体(a11)と共重合しうる1種または2種以上の他の不飽和単量体(以下「単量体(a12)」とよぶこともある。)とを用いた共重合反応によって得られたもの、すなわち、単量体(a11)から誘導される成分単位と、単量体(a12)から誘導される成分単位とを含有する共重合体であってもよい。
【0023】
上記単量体(a12)としては、アクリル樹脂用の重合性不飽和単量体として用いられている各種の化合物から適宜選択することができ、たとえば、アルキル(メタ)アクリレート、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートなどの金属塩結合を含有しない単量体が好ましい。これらの単量体(a12)は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併称しても良い。
【0024】
また、同じくアクリル樹脂型の金属塩結合含有共重合体(a1)は、たとえば、(メタ)アクリル酸、アルキル(メタ)アクリレート、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートアクリル等を用いてアクリル樹脂を調製した後、この樹脂の側鎖にある、未だ金属塩結合を形成していないカルボキシル基に、銅または亜鉛(M)を介して有機基(R1)を結合した構造を導入しうる反応を行い、前記式(I)で表される側鎖末端基を形成するような方法によっても、調製することができる。
【0025】
一方、本発明で用いる金属塩結合含有共重合体(a1)のうち、ポリエステル樹脂型のものは、多塩基酸および多価アルコールを主原料として合成された酸価50から200mgKOH/g、好ましくは80から170mgKOH/gのポリエステル樹脂の末端に、前記式(I)で表される構造を有する。
【0026】
本発明に用いられるポリエステル樹脂を生成するための酸成分としては、例えば安息香酸、p−t−ブチル安息香酸などのモノカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、1,4−ナフトール酸、ジフェニン酸、4,4’−オキシ安息香酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ノルボルネンジカルボン酸、シュウ酸、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、グルタール酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,3−シクロヘキシルジカルボン酸などのジカルボン酸やその無水物、およびこれらジカルボン酸の炭素数1から4程度のアルキルエステルなどが挙げられ、これら1種もしくは2種類以上併用して使用することができる。
さらに、これらにトリメット酸、無水トリメット酸、ピロメット酸、無水ピロメット酸、などの3官能以上のカルボン酸を併用してもよく、少量の無水マレイン酸、マレイン酸、無水イタコン酸、イタコン酸、フマル酸などの不飽和ジカルボン酸やそのエステルを併用してもよい。
【0027】
また、本発明に用いられるポリエステル樹脂を生成するための多価アルコール成分とし
ては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3プロパンジオールあるいは、ビスフェノールAおよび水添ビスフェノールAなどが挙げられ、これら1種類または2種類以上併用して使用することができる。またこれらにトリメチロールエタン、グリセリン、ペンタエリスリトール、などの3官能以上のアルコールを併用してもよい。
【0028】
これら各種酸成分およびアルコール成分を用いて、溶解法などの公知の方法によりエステル化反応またはエステル交換反応を行いポリエステル樹脂を調製した後、末端の未だ金属塩結合を形成していないカルボキシル基に、銅または亜鉛(M)を介して所定の官能基が結合した構造を導入しうる反応を行い、前記式(I)で表される構造を形成するような
方法によって、ポリエステル型の金属塩結合含有共重合体(a1)を調製することができる。
【0029】
なお、上記の方法によりアクリル樹脂またはポリエステル樹脂に所定の側鎖末端基が導入される場合であっても、前記式(I)におけるR1の好ましい種類は前述したものと同様である。すなわち、上記の方法により導入されるR1としては、炭素原子数10〜20の
飽和もしくは不飽和脂肪族炭化水素基、炭素原子数3〜20の飽和もしくは不飽和脂肪族炭化水素基、またはこれらの置換体である、一塩基酸から形成される有機酸残基が好ましく、なかでも、バーサチック酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、ピマル酸、デヒドロアビエチン酸、12−ヒドロキシステアリン酸またはナフテン酸から形成される有機酸残基が特に好ましい。上記の調製方法では、このような有機酸残基を有する化合物を、有機基R1を導入する
ための反応に用いればよい。
【0030】
上述のようにして調製される金属塩結合含有共重合体(a1)は、前記式(I)の構造
に起因する亜鉛および/または銅の含有量が、当該共重合体の0.5〜20重量%であることが好ましく、1〜19重量%であることがより好ましい。このような条件を満たす金属塩結合含有共重合体(a1)を用いることにより、防汚性(耐スライム性)および消耗性の両面に優れた防汚塗膜を形成できるようになる。亜鉛および/または銅の含有量は、金属塩結合含有共重合体(a1)の調製に用いられる、これらの金属を含有する単量体(a11)とそれ以外の単量体(a12)との配合割合、あるいは、アクリル樹脂またはポリエステル樹脂に後から反応させる亜鉛および/または銅を含有する化合物の添加量を調節することなどにより、上記範囲内のものとすることが可能である。
【0031】
・金属塩結合含有共重合体(a2)
金属塩結合含有共重合体(a2)は、下記式(II)で表される単量体(a21)から誘導される成分単位と、この単量体(a21)と共重合し得る他の単量体(a22)から誘導される成分単位とで構成される共重合体である。
【0032】
CH2=C(R2)−COO−M−O−CO−C(R2)=CH2 ……(II)
式(II)中、Mは亜鉛または銅を示し、R2は水素原子またはメチル基を示す。なお、金
属塩結合含有共重合体(a2)には、通常、式(II)で表される単量体(a21)から誘導される成分単位が複数存在するが、それぞれのR1、R2、M同士は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0033】
このような単量体(a21)としては、具体的には、亜鉛ジアクリレート、亜鉛ジメタ
クリレート、銅ジアクリレート、銅ジメタクリレートなどが挙げられる。これらの単量体(a21)は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】
なお、上記単量体(a21)は、たとえば、無機金属化合物(亜鉛または銅の酸化物、水酸化物、塩化物等)と(メタ)アクリル酸またはそのエステル化合物とを、アルコール系有機溶媒および水の存在下で、金属塩の分解温度以下で加熱、撹拌するなど、公知の方法により調製することができる。
【0035】
また、上記単量体(a21)から誘導される成分単位とは、下記式(IV)で表される構造を有するものであるが、本発明ではこのような構造を「架橋型」の金属塩結合とよぶことがある。
【0036】
【化1】

【0037】
一方、単量体(a21)と共重合し得る単量体(a22)としては、前述の共重合体(a1)についての単量体(a12)と同様、アクリル樹脂用の重合性不飽和単量体として用いられている各種の化合物から適切なものを選択することができる。すなわち、単量体(a22)としては、アルキル(メタ)アクリレート、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートなどが好ましく、なかでも、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどが特に好ましい。
【0038】
また、前述の金属塩結合含有共重合体(a1)についての単量体(a11)、すなわち一塩基酸金属(メタ)アクリレートも、単量体(a21)と共重合し得る単量体であり、金属塩結合含有共重合体(a2)の調製に用いることのできる単量体(a22)に該当する。この際の、単量体(a21)としての式(III)で表される一塩基酸金属(メタ)アクリ
レートについても、R1の好ましい態様は、前述のように単量体(a21)として説明し
たときと同様である。
【0039】
その他、スチレンおよびスチレン誘導体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;(メタ)アクリルアミドおよびその誘導体;(メタ)アクリロニトリルなども、単量体(a22)として挙げられる。
【0040】
上記のようにして調製される金属塩結合含有共重合体(a2)も、前述した金属塩結合含有共重合体(a1)と同様の観点から、前記式(II)の構造に起因する亜鉛および/または銅の含有量が、当該共重合体の0.5〜20重量%であることが好ましく、1〜19重量%であることがより好ましい。このような亜鉛および/または銅の含有量は、金属塩結合含有共重合体(a2)の調製に用いられる単量体の配合割合により調整することが可能である。なお、共重合体(a2)が架橋型金属塩結合と側鎖末端型金属塩結合の両方の構造を有する場合は、それぞれの構造に起因する亜鉛および/または銅の含有量の合計が上記範囲内にあるようにすることが好ましい。
【0041】
なお、金属塩結合含有共重合体(a1)および後述する金属塩結合含有共重合体(a2)の数平均分子量(Mn:ポリスチレン換算値)および重量平均分子量(Mw:ポリスチレン換算値)は、防汚塗料組成物の粘度や貯蔵安定性、防汚塗膜の溶出速度などを考慮し
、適宜調整することができるが、Mnは、通常1,000〜100,000程度、好ましくは1,000〜50,000であり、また、Mwは、通常1,000〜20,000程度、好ましくは1,000〜10,000である。
【0042】
< 防汚剤(B) >
本発明の本発明の防汚塗料組成物は、防汚剤(B)として、少なくとも、トリフェニルボロン・アミン錯体(b1)と、N,N'−ジメチル−N'−トリル−(N−フルオロジクロロメチルチオ)スルファミド(b2)とを含有する。
【0043】
上記トリフェニルボロン・アミン錯体(b1)としては、防汚作用を有する公知の化合物の中から好適なものを選択して用いることができるが、たとえば、下記式(V)で表さ
れるようなトリフェニルボロンと複素環アミンとの錯体(塩)、および下記式(VI)で表されるようなトリフェニルボロンとその他のアミン(脂肪族アミン、芳香族アミン等)との錯体(塩)が挙げられる。これらのトリフェニルボロン・アミン錯体は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0044】
【化2】

【0045】
式(V)中、R10は、水素原子、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I等)、または直鎖
状もしくは分岐を有する炭素原子数1〜5のアルキル基を示す。たとえば、トリフェニルボロンと、ピリジン(R10=H:非置換体)、ピコリン(R10=CH3)、クロロピリジ
ン(R10=Cl)等との錯体、特にピリジントリフェニルボロンは、式(IV)で表されるトリフェニルボロン・アミン錯体のうち好適な防汚剤である。
【0046】
【化3】

【0047】
式(VI)中、R11、R12、R13はそれぞれ、水素原子、あるいは直鎖状もしくは分岐を有する炭素原子数3〜30のアルキル基、「−R21−O−R22」(R21は直鎖状もしくは分岐を有する炭素原子数1〜8のアルキレン基もしくはフェニレン基を示し、R22は直鎖状もしくは分岐を有する炭素原子数1〜18のアルキル基を示す。)で表されるアルコキシアルキル基、または置換もしくは非置換のフェニル基を示す。たとえば、式(VI)で表
される化合物のうちでは、トリフェニルボロンと第1級アミンとの錯体が好ましいが、その場合、R11およびR12は水素原子であり、R12が上記いずれかの官能基となる。
【0048】
上記アルキル基を有する第1級アミンとしては、たとえば、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン等が挙げられる。
【0049】
上記アルコキシアルキル基を有する第1級アミンとしては、たとえば、3−エトキシプロピルアミン、3−ブトキシプロピルアミン、3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピルアミン、3−ラウリルオキシプロピルアミン、3−ステアリルオキシプロピルアミン、4−(2−エチルヘキシルオキシ)ブチルアミン、4−ラウリルオキシブチルアミン、8−エトキシオクチルアミン、8−(2−エチルヘキシルオキシ)オクチルアミン、2−エチルヘキシルオキシフェニルアミン、ラウリルオキシフェニルアミン等が挙げられる。
【0050】
また、上記フェニル基を有する第1級アミンとしては、たとえば、アニリン、トルイジン等が挙げられる。
これらのなかでも、トリフェニル(オクタデシルアミン)ボロン、トリフェニル[3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピルアミン]ボロンなどは、式(IV)で表されるトリフェニルボロン・アミン錯体のうち好適な防汚剤である。
【0051】
一方、防汚剤(b2)として用いられるN,N'−ジメチル−N'−トリル−(N−フルオロジクロロメチルチオ)スルファミドは、下記式(VII)で表される化合物である。この防汚剤は、たとえばランクセス(株)製「プリベントールA−5S」として入手できる。
【0052】
【化4】

【0053】
本発明の防汚塗料組成物中の防汚剤(B)の含有量は、加水分解性共重合体(A)100重量部に対して、2〜500重量部の割合であることが好ましく、2〜100重量部の割合であることがより好ましく、3〜80重量部の割合であることが特に好ましい。
【0054】
また、防汚剤(B)に含まれる防汚剤(b1)および(b2)の配合比は、(b1)100重量部に対して、(b2)を5〜150重量部とすることが好ましく、5〜100重量部とすることがより好ましく、10〜90重量部とすることが特に好ましい。
【0055】
このような条件を満たすことにより、本発明の防汚塗料組成物は、塗料中での再結晶物を抑制し、防汚性(耐スライム性)を優れたものとするといった効果の面で、さらに望ましいものとなる。
【0056】
本発明の防汚塗料組成物は、上記防汚剤(b1)および(b2)を含有することにより優れた耐スライム性を有するものであるが、耐スライム性をより一層向上させる、あるいはその他の生物の付着を防止する効果を向上させるため、必要に応じて、上記防汚剤(b1)および(b2)以外のその他の防汚剤を含有してもよい。
【0057】
本発明で用いることのできる「その他の防汚剤」としては、たとえば、2−ピリジンチオール−1−オキシド亜鉛塩(「銅ピリチオン」ともいう。)、2−ピリジンチオール−1−オキシド銅塩(「ジンクピリチオン」ともいう。)、4,5−ジクロロ−2−n−オ
クチル−4−イソチアゾリン−3−オン、N,N−ジメチルジクロロフェニル尿素、2,4,6−トリクロロフェニルマレイミド、2−メチルチオ−4−tert−ブチルアミノ−
6−シクロプロピルSトリアジン、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル、ビ
スジメチルジチオカルバモイルジンクエチレンビスジチオカーバメート、クロロメチル−n−オクチルジスルフィッド、N,N'−ジメチル−N'−フェニル−(N−フルオロジクロロメチルチオ)スルファミド、テトラアルキルチウラムジスルフィド、ジンクジメチルジ
チオカーバメート、ジンクエチレンビスジチオカーバメート、2,3−ジクロロ−N−(2',6'−ジエチルフェニル)マレイミド、2,3−ジクロロ−N−(2'−エチル−6'−メチルフェニル)マレイミドなどの有機防汚剤が挙げられる。これらの防汚剤は、1種単独で
、または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0058】
< その他の成分 >
本発明の防汚塗料組成物には、上述した成分の他に、着色顔料、体質顔料、無機系脱水剤、可塑剤、搖変剤、加水分解性共重合体(A)以外の樹脂や有機酸、溶剤など、一般的な塗料組成物に用いられている各種成分を配合することができる。
【0059】
・着色顔料
本発明の防汚塗料組成物に配合することのできる着色顔料としては、たとえば、弁柄、バライト粉(硫酸バリウム)、チタン白(酸化チタン)、黄色酸化鉄等の無機系顔料や、カーボンブラック、ナフトールレッド、フタロシアニンブルー等の有機系顔料が挙げられる。これらの着色顔料は、1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。なお、着色顔料には、さらに染料等の各種着色剤が含まれていてもよい。また、体質顔料の配合量は適宜調整することができるが、たとえば、加水分解性共重合体(A)100重量部に対して0.05〜125重量部の割合である。
【0060】
・体質顔料
体質顔料は、屈折率が小さく、油やワニスと混練した場合に透明で被塗面を隠さないような顔料である。本発明の防汚塗料組成物に配合することのできる体質顔料としては、たとえば、タルク、シリカ、マイカ、クレー、酸化亜鉛、沈降防止剤としても用いられる炭酸カルシウム、カオリン、アルミナホワイト、艶消し剤としても用いられるホワイトカーボン、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、硫化亜鉛などが挙げられ、なかでも、酸化亜鉛、タルク、シリカ、マイカ、クレー、炭酸カルシウム、カオリン、硫酸バリウムが好ましい。これらの体質顔料は、1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。なお、体質顔料の配合量は適宜調整することができるが、たとえば、加水分解性共重合体(A)100重量部に対して2.5〜250重量部の割合である。
【0061】
・脱水剤
脱水剤は、塗料の貯蔵安定性の向上に寄与する成分である。本発明の防汚塗料組成物に配合することのできる脱水剤としては、たとえば、無機系では、無水石膏、半水石膏(焼石膏)、合成ゼオライト系吸着剤(商品名「モレキュラーシーブ」等)などが挙げられ、その他、オルソエステル類(オルソギ酸メチル、オルソ酢酸メチル、オルソホウ酸エステル等)、シリケート類、イソシアネート類などが挙げられる。なかでも、無機系の脱水剤である無水石膏、半水石膏(焼石膏)が好ましい。これらの脱水剤は、1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。なお、脱水剤の配合量は適宜調整することができるが、たとえば、加水分解性共重合体(A)100重量部に対して1.0〜25重量部の割合である。
【0062】
・可塑剤
可塑剤は、防汚塗膜の耐クラック性や耐水性の向上および変色の抑制に寄与する成分で
ある。本発明の防汚塗料組成物に配合することのできる可塑剤としては、たとえば、n−パラフィン、塩素化パラフィン、テルペンフェノール、トリクレジルフォスフェート(TCP)、ポリビニルエチルエーテルなどが挙げられ、なかでも、塩素化パラフィン、テルペンフェノールが好ましく、塩素化パラフィンが特に好ましい。これらの可塑剤は、1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。上記n−パラフィンとしては、日本石油化学(株)製「n−パラフィン」などの商品を、上記塩素化パラフィンとしては、東ソー(株)製「トヨパラックス A−40/A−50/A−70/A−145/A−1
50」などの商品を使用できる。なお、可塑剤の配合量は適宜調整することができるが、たとえば、防汚塗料組成物中の全固形分に対して0.5〜5重量%の割合である。
【0063】
・タレ止め・沈降防止剤
本発明で用いることのできるタレ止め・沈降防止剤(搖変剤)としては、たとえば、有機粘土系化合物(Al、Ca、Znのアミン塩、ステアレート塩、レシチン塩、アルキルスルホン酸塩等)、有機系ワックス(ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、ポリアマイドワックス、アマイドワックス、水添ヒマシ油ワックス等)、合成微粉シリカなどが挙げられ、中でも、有機粘土系化合物、ポリアマイドワックス、酸化ポリエチレンワックス、合成微粉シリカが好ましい。これらのタレ止め・沈降防止剤は、1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。なお、タレ止め・沈降防止剤の配合量は適宜調整することができるが、たとえば、加水分解性共重合体(A)100重量部に対して0.25〜50重量部の割合である。
【0064】
・その他の樹脂類
本発明の防汚塗料組成物は、前述のような金属塩結合含有共重合体(A)以外にも、必要に応じて1種または2種以上のその他の樹脂類を含有してもよい。
【0065】
たとえば、金属塩結合を含有しないアクリル樹脂、アクリルシリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、ポリブテン樹脂、シリコーンゴム、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ビニル樹脂(塩化ビニル系共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体など)、塩化ゴム、塩素化オレフィン樹脂、スチレン・ブタジエン共重合樹脂、ケトン樹脂、アルキッド樹脂、クマロン樹脂、テルペンフェノール樹脂、石油樹脂等の非水溶性または難水溶性の樹脂を用いることができる。
【0066】
また、パインタール、ロジン(ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン)などの水溶性樹脂や、ナフテン酸、バーサチック酸、トリフェニルイソブテニルシクロヘキセンカルボン酸(ヤスハラケミカル(株)製「A−3000」)などの一塩基性有機酸なども、加水分解性共重合体(A)と併用することができる。
【0067】
・溶剤
本発明の防汚塗料組成物を構成する各種成分は、通常の防汚塗料組成物と同様、溶剤に溶解もしくは分散している。本発明では、脂肪族系溶剤、芳香族系溶剤(キシレン、トルエン等)、ケトン系溶剤(MIBK、シクロヘキサノン等)、エステル系溶剤、エーテル系溶剤(プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等)、アルコール系溶剤(イソプロピルアルコール等)など、防汚塗料用の溶剤として一般的なものを用いることができる。なお、溶剤の配合量は適宜調整することができるが、たとえば、防汚塗料組成物の全固形分率が20〜90重量%となるような割合であり、作業性に応じて塗装時にさらに添加してもよい。
【0068】
防汚塗料組成物の製造方法および用途
本発明の防汚塗料組成物は、公知の一般的な防汚塗料と同様の装置、手段等を用いて調製することができる。たとえば、あらかじめ金属塩結合含有共重合体(a1)または(a
2)を調製した後、この共重合体(反応液)と、防汚剤(b1)および(b2)と、必要に応じてその他の添加剤等の成分とを、一度にまたは順次溶剤に添加して、撹拌、混合するようにして製造すればよい。
【0069】
また、本発明の防汚塗料組成物は、公知の一般的な防汚塗料と同様の態様で使用することができる。たとえば、基材の表面、特に、水中構造物、船舶外板、漁網、漁具など、海水または真水と常時または断続的に接触する基材の表面に、本発明の防汚塗料組成物を塗布または含浸した後、所定の期間乾燥させることにより、基材の表面に硬化した防汚塗膜を形成することができる。このような防汚塗膜で表面を被覆することにより、水棲生物、特にケイ藻類などのスライムの付着による基材の汚損を、長期間にわたって防止することができる。なお、防汚塗膜の(乾燥)膜厚は、塗膜の消耗速度などを考慮して適宜調整することができるが、たとえば、50〜150μm程度とすればよい。
【実施例】
【0070】
[調製例1]
金属塩結合含有共重合体(a1−1)の調製
冷却器、温度計、滴下ロートおよび攪拌機を備えた四つ口フラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)30重量部およびキシレン40重量部を仕込み、撹拌しながら100℃に昇温した。続いて、亜鉛ジアクリレート8重量部、亜鉛ジメタクリレート8重量部、イソステアリン酸亜鉛アクリレート12重量部、イソステアリン酸亜鉛メタクリレート12重量部、2−メトキシエチルアクリレート13重量部、メチルメタクリレート13重量部、エチルアクリレート34重量部、およびt−ブチルパーオキサイド5重量部からなる混合物(表1参照)を、滴下ロートから3時間かけて等速滴下した。滴下終了後にt−ブチルパーオクトエート1重量部とキシレン10重量部を2時間かけて滴下し、さらに2時間攪拌した後、キシレンを20重量部添加することにより、固形分率49.7重量%、ガードナー粘度−Yである、金属塩結合含有共重合体(a1−1)の反応液を得た。なお、上記物性等の測定方法は下記の通りである。
【0071】
<固形分率>
調製した共重合体の溶液1gを平底皿にはかり取り、質量既知の針金を使って均一に広げた。125℃で1時間乾燥し、溶剤揮発後の後残渣および針金の質量を測定し、算出された加熱残分(すなわち固形分)から固形分率を求めた。
【0072】
<ガードナー粘度>
ガードナー粘度は、JIS K7233の4.3に準じ、反応液の固形分率を35重量
%に調整した後、25℃で測定した。
【0073】
<MnおよびMw>
数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)は、測定装置として東ソー(株)製「HLC−8120GPC」を、分離カラムとして東ソー(株)製「TSKgel α−M
」2本を、また、溶離液として20mMのLiBrを添加したジメチルホルムアミド(DMF)を用いたGPCにより、いずれもポリスチレン換算値として測定した。
【0074】
[調製例2・3]
金属塩結合含有共重合体(a1−2)および(a1−3)の調製
反応に供した単量体および重合開始剤からなる混合物を、表1の(a1−2)および(a1−3)の欄に示すものに変更した以外は上記調製例1と同様にして、金属塩結合含有共重合体(a1−2)および(a1−3)の反応液を得た。固形分率等の物性は、あわせて表1に示すとおりである。
【0075】
【表1】

【0076】
[調製例3]
金属含有単量体(a21−1)の調製
冷却器、温度計、滴下ロートおよび攪拌機を備えた四つ口フラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)85.4重量部および酸化亜鉛40.7重量部を仕込み、撹拌しながら75℃に昇温した。続いて、メタクリル酸(MAA)43.1重量部、アクリル酸(AA)36.1重量部、および水5重量部からなる混合物を滴下ロートから3時間かけて等速滴下した。滴下終了後、反応溶液は乳白色状態から透明となった。さらに2時間撹拌した後、プロピレングリコールモノメチルエーテル36重量部を添加して、固形分率44.8重量%である金属含有単量体(a21−1)を含む反応液を得た。なお、固形分率の測定方法は前述と同様である。
【0077】
[調製例4]
金属含有単量体(a21−2)の調製
反応に供した原料等を表2の(a21−2)の欄に示すものに変更した以外は上記調製例3と同様にして、金属塩結合含有共重合体(a21−2)の反応液を得た。その固形分率はあわせて表2に示すとおりである。
【0078】
【表2】

【0079】
[調製例5]
金属塩結合含有共重合体(a2−1)の調製
冷却器、温度計、滴下ロートおよび攪拌機を備えた四つ口フラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテル15重量部およびキシレン57重量部を仕込み、撹拌しながら100℃に昇温した。続いて、前記調製例3で得た金属含有単量体(a21−1)の反応液52重量部、メチルメタクリレート1重量部、エチルアクリレート66.2重量部、2−メトキシエチルアクリレート5.4重量部、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)(日本ヒドラジン工業(株)製)2.5重量部、アゾビスメチルブチロニトリル(AMBN)(日本ヒドラジン工業(株)製)7重量部、連鎖移動剤「ノフマーMSD」(日本油脂(
株)製)1重量部、およびキシレン10重量部からなる透明な混合物を、滴下ロートから
6時間かけて等速滴下した。滴下終了後、t−ブチルパーオクトエート(TBPO)0.5重量部とキシレン7重量部を30分かけて滴下し、さらに1時間30分撹拌した後キシレンを4.4重量部添加して、反応液中に不溶物がなく、淡黄色透明な、金属塩結合含有共重合体(a21−1)の反応液を得た。この反応液の固形分率は45.6重量%、ガードナー粘度は−Yであった。また、得られた金属塩結合含有共重合体(a2−1)の数平均分子量は1950、重量平均分子量は5200であった。なお、固形分率等の物性の測定方法は前述と同様である。
【0080】
[調整例6]
金属塩結合含有共重合体(a2−2)の調製
反応に供した単量体および重合開始剤からなる混合物を、表3の(a2−2)の欄に示すものに変更した以外は上記調製例5と同様にして、金属塩結合含有共重合体(a2−2)の反応液を得た。固形分率等の物性は、あわせて表3に示すとおりである。
【0081】
【表3】

【0082】
[実施例1〜20]
防汚塗料組成物の製造
上述の製造例1〜3により得られた側鎖末端構造金属塩共重合体(a1−1)〜(a1−3)および製造例6〜7により得られた架橋性金属塩結合含有共重合体(a2−1)〜(a2−2)、防汚剤(b1)および(b2)、ならびにその他の成分を、攪拌機を用いて均一に混合することにより、表4(実施例1〜10)および表5(実施例11〜20)に示す配合組成(表中の数値は重量部を示す。)からなる防汚塗料組成物を製造した。
【0083】
防汚剤の再結晶性試験
上記実施例により製造した防汚塗料組成物を200gずつ分取し、5℃に設定された恒温器に1ヶ月貯蔵した後、塗料を撹拌して、塗料貯蔵中の防汚剤の再結晶物の有無を目視で評価した。結果は表4および5に示す通りである。
【0084】
防汚塗膜の静置防汚性試験
サンドブラスト処理鋼板(縦300mm×横100mm×厚み3.2mm)に、エポキ
シ系防錆塗料(エポキシAC塗料、商品名「バンノー500」、中国塗料(株)製)をその乾燥膜厚が150μm厚となるように塗布した後、エポキシ系バインダー塗料(商品名「バンノー500N」、中国塗料(株)製)をその乾燥膜厚が100μm厚となるように塗布した。続いて、上記実施例により製造した防汚塗料組成物をその乾燥膜厚が150μmとなるように1回塗布し、室温で7日間乾燥させて、防汚塗膜付き試験板を作成した。なお、上記の3回の塗装はいずれも1day/1coatとした。
【0085】
上述のようにして作成した試験板を長崎県長崎湾内に4ヶ月間静置浸漬し、その間1ヶ月毎にスライム(ケイ藻被膜)の付着面積(%)を測定した。そして、下記の基準に従って、防汚塗膜の静置防汚性を評価した。結果は表4および5に示す通りである。
【0086】
スライムの付着面積による静置防汚性の評価基準;
0点……スライムの付着面積が100%程度
1点……スライムの付着面積が 90%程度
2点……スライムの付着面積が 80%程度
3点……スライムの付着面積が 70%程度
4点……スライムの付着面積が 60%程度
5点……スライムの付着面積が 50%程度
6点……スライムの付着面積が 40%程度
7点……スライムの付着面積が 30%程度
8点……スライムの付着面積が 20%程度
9点……スライムの付着面積が 10%程度
10点……スライムの付着なし。
【0087】
[比較例1〜18]
表6(比較例1〜9)および表7(比較例10〜18)に示す配合組成(表中の数値は重量部を示す。)に変更した以外は前記実施例と同様にして、比較例1〜18の防汚塗料組成物を製造した。
【0088】
また、これらの比較例の防汚塗料組成物についても、前記実施例の場合と同様にして、再結晶試験および静置防汚性試験を行った。結果は表6および7に示すとおりである。
<表4〜7に記載された成分・商品名>
・防汚剤(b1)/トリフェニルボランピリジン錯体:商品名「PK」(北興化学工業(
株))。
・防汚剤(b2)/N,N'−ジメチル−N'−トリル−(N−フルオロジクロロメチルチオ)スルファミド:商品名「プリベントール A−5S」(ランクセス(株))。
・防汚剤(B)/4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン
:商品名「シーナイン 211」(ロームアンドハース社)。固形分30重量%。
・防汚剤(B)/2−ピリジンチオール−1−オキシド亜鉛塩:商品名「AF−Z」(吉富ファインケミカル(株))。
・防汚剤(B)/N,N'−ジメチル−N'−フェニル−(N−フルオロジクロロメチルチオ)スルファミド:商品名「プリベントール A−4S」(ランクセス(株))。
・防汚剤(B)/2,4,6−トリクロロフェニルマレイミド:商品名「IT−354」(ケイアイ化成(株))。
・防汚剤(B)/2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルフォニル)ピリジン:商
品名「デンシル S−100」(アイシーアイジャパン(株))。
・着色顔料/チタン白:商品名「R−5N」(堺化学工業(株))。
・着色顔料(有機顔料)/フタロシアニンブルー:商品名「シアニンブルー S−201
0」(大日精化工業(株))
・体質顔料/酸化亜鉛:商品名「亜鉛華3号」(ハクスイテック(株))。
・体質顔料/沈降性硫酸バリウム:商品名「沈バリ100」(堺化学工業(株))。
・無機脱水剤/焼石膏:商品名「FT−2」((株)ノリタケジプサム)。
・可塑剤/塩素化パラフィン:商品名「トヨパラックス(TOYOPARAX)A−150」(東
ソー(株))。平均炭素数14.5、塩素含有率(量)50%、粘度12ポイズ/25℃、比重1.25/25℃。
・沈降防止剤/酸化ポリエチレンワックス:商品名「ディスパロン(Disparlon)420
0−20」(楠本化成(株))。キシレンペースト、固形分20%。
・沈降防止剤/脂肪酸アマイドワックス:商品名「ディスパロン(Disparlon)A630
−20X」(楠本化成(株))。キシレンペースト、固形分20%。
・溶剤/プロピレングリコールモノメチルエーテル:商品名「クラレ(Kuraray)PGM
」((株)クラレ)。
【0089】
【表4】

【0090】
【表5】

【0091】
【表6】

【0092】
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)加水分解性共重合体と、
(B)防汚剤とを含有する防汚塗料組成物であって、
上記加水分解性共重合体(A)は、
(a1)アクリル樹脂またはポリエステル樹脂であって、一般式(I):
−COO−M−O−COR1 ……(I)
[式(I)中、Mは亜鉛または銅を示し、R1は有機基を示す。]
で表される側鎖末端基を有する金属塩結合含有共重合体、または
(a2)一般式(II):
CH2=C(R2)−COO−M−O−CO−C(R2)=CH2 ……(II)
[式(II)中、Mは亜鉛または銅を示し、R2は水素原子またはメチル基を示す。]
で表される単量体(a21)から誘導される成分単位と、この単量体(a21)と共重合し得る他の不飽和単量体(a22)から誘導される成分単位とからなる金属塩結合含有共重合体、の少なくとも一方に該当する共重合体であり、
上記防汚剤(B)は、
(b1)少なくとも1種のトリフェニルボロン・アミン錯体と、
(b2)N,N'−ジメチル−N'−トリル−(N−フルオロジクロロメチルチオ)スルフ
ァミドとを含有することを特徴とする、防汚塗料組成物。
【請求項2】
防汚剤(B)が加水分解性共重合体(A)100重量部に対して2〜500重量部の割合で含まれていることを特徴とする、請求項1に記載の防汚塗料組成物。
【請求項3】
防汚剤(B)が、(b1)100重量部に対して(b2)を5〜150重量部の割合で含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の防汚塗料組成物。
【請求項4】
防汚剤(B)が、さらに(b1)および(b2)以外の防汚剤を含有する、請求項1〜3のいずれかに記載の防汚塗料組成物。
【請求項5】
(b1)および(b2)以外の防汚剤が、銅ピリチオン、ジンクピリチオン、4,5−
ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、N,N−ジメチルジクロ
ロフェニル尿素、2,4,6−トリクロロフェニルマレイミド、2−メチルチオ−4−tert−ブチルアミノ−6−シクロプロピルSトリアジン、2,4,5,6−テトラクロロイソフ
タロニトリル、ビスジメチルジチオカルバモイルジンクエチレンビスジチオカーバメート、クロロメチル−n−オクチルジスルフィッド、N,N'−ジメチル−N'−フェニル−(N−フルオロジクロロメチルチオ)スルファミド、テトラアルキルチウラムジスルフィド、
ジンクジメチルジチオカーバメート、ジンクエチレンビスジチオカーバメート、2,3−
ジクロロ−N−(2',6'−ジエチルフェニル)マレイミド、および2,3−ジクロロ−N−(2'−エチル−6'−メチルフェニル)マレイミドからなる群より選ばれた少なくとも1種の有機防汚剤である、請求項4に記載の防汚塗料組成物。
【請求項6】
さらに、着色顔料として、弁柄、チタン白、黄色酸化鉄および有機顔料からなる群より選ばれた少なくとも1種を含有する、請求項1〜5のいずれかに記載の防汚塗料組成物。
【請求項7】
さらに、体質顔料として、タルク、シリカ、マイカ、クレー、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、カオリン、アルミナホワイト、ホワイトカーボン、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウムおよび硫化亜鉛からなる群より選ばれた少なくとも1種を含有する、請求項1〜6のいずれかに記載の防汚塗料組成物。
【請求項8】
さらに脱水剤として、無水石膏、半水石膏(焼石膏)、合成ゼオライト系吸着剤、オル
ソエステル類、シリケート類およびイソシアネート類からなる群より選ばれた少なくとも1種を含有する、請求項1〜7のいずれかに記載の防汚塗料組成物。
【請求項9】
さらに、可塑剤として塩素化パラフィンを、防汚塗料組成物中の全固形分に対して1〜5重量%の量で含有する、請求項1〜8記載の防汚塗料組成物。
【請求項10】
金属塩結合含有共重合体(a1)の有機基R1が、一塩基酸から形成される有機酸残基
であって、炭素原子数2〜30の飽和もしくは不飽和脂肪族炭化水素基、炭素原子数3〜20の飽和もしくは不飽和脂環式炭素水素基または炭素原子数6〜18の芳香族炭化水素基、あるいはこれらの置換体である、請求項1〜9のいずれかに記載の防汚塗料組成物。
【請求項11】
金属塩結合含有共重合体(a1)の有機基R1が、一塩基酸から形成される有機酸残基
であって、炭素原子数10〜20の飽和もしくは不飽和脂肪族炭化水素基または炭素原子数3〜20の飽和もしくは不飽和脂環式炭素水素基、あるいはこれらの置換体である、請求項1〜10のいずれかに記載の防汚塗料組成物。
【請求項12】
金属塩結合含有共重合体(a1)が、アクリル樹脂の金属塩結合を形成していないカルボキシル基に、銅または亜鉛を介して有機基R1を導入しうる反応により得られた、前記
式(I)で表される側鎖末端基を有する金属塩結合含有共重合体であって、かつ、
上記有機基R1が、一塩基酸から形成される有機酸残基であって、炭素原子数10〜2
0の飽和もしくは不飽和脂肪族炭化水素基または炭素原子数3〜20の飽和もしくは不飽和脂環式炭素水素基、あるいはこれらの置換体である、請求項1〜11のいずれかに記載の防汚塗料組成物。
【請求項13】
上記有機基R1が、バーサチック酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノ
ール酸、リノレン酸、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、ピマル酸、デヒドロアビエチン酸、12−ヒドロキシステアリン酸およびナフテン酸からなる群より選ばれた少なくとも1種の一塩基有機酸から形成される有機酸残基である、請求項12に記載の防汚塗料組成物。
【請求項14】
金属塩結合含有共重合体(a1)が、一般式(III):
CH2=C(R2)−COO−M−O−COR1 ……(III)
[式(III)中、Mは亜鉛または銅を示し、R1は有機基を示し、R2は水素原子ま
たはメチル基を示す。]
で表される2種以上の一塩基酸金属(メタ)アクリレートの共重合体である、請求項1〜13のいずれかに記載の防汚塗料組成物。
【請求項15】
前記式(III)の有機基R1が、一塩基酸から形成される有機酸残基であって、炭素原子数10〜20の飽和もしくは不飽和脂肪族炭化水素基または炭素原子数3〜20の飽和もしくは不飽和脂環式炭素水素基、あるいはこれらの置換体である、請求項14に記載の防汚塗料組成物。
【請求項16】
前記式(III)の有機基R1が、バーサチック酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、ピマル酸、デヒドロアビエチン酸、12−ヒドロキシステアリン酸およびナフテン酸からなる群より選ばれた少なくとも1種の一塩基有機酸から形成される有機酸残基である、請求項14または15に記載の防汚塗料組成物。
【請求項17】
金属塩結合含有共重合体(a1)が、前記式(III)で表される一塩基酸金属(メタ)ア
クリレートから誘導される成分単位と、
アルキル(メタ)アクリレート、アルコキシアルキル(メタ)アクリレートおよびヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートからなる群より選ばれた少なくとも1種の不飽和単量体
から誘導される成分単位とを含有する共重合体である、請求項1〜16のいずれかに記載の防汚塗料組成物。
【請求項18】
金属塩結合含有共重合体(a1)中の前記式(I)の構造に起因する亜鉛および/また
は銅の含有量がこの共重合体(a1)の0.5〜20重量%である、請求項1〜17のいずれに記載の防汚塗料組成物。
【請求項19】
前記単量体(a21)が、亜鉛ジアクリレート、亜鉛ジメタクリレート、銅ジアクリレートおよび銅ジメタクリレートからなる群より選ばれた少なくとも1種の単量体である、請求項1〜18のいずれかに記載の防汚塗料組成物。
【請求項20】
前記単量体(a22)が、アルキル(メタ)アクリレート、アルコキシアルキル(メタ)アクリレートおよびヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートからなる群より選ばれた少な
くとも1種の単量体を含むものである、請求項1〜19のいずれかに記載の防汚塗料組成物。
【請求項21】
前記単量体(a21)が、亜鉛ジアクリレート、亜鉛ジメタクリレート、銅ジアクリレートおよび銅ジメタクリレートからなる群より選ばれた少なくとも1種の単量体であり、かつ、
前記単量体(a22)が、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートおよび2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートからなる群よ
り選ばれた少なくとも1種の単量体を含むものである、請求項1〜20のいずれかに記載の防汚塗料組成物。
【請求項22】
前記単量体(a21)が、亜鉛ジアクリレート、亜鉛ジメタクリレート、銅ジアクリレートおよび銅ジメタクリレートからなる群より選ばれた少なくとも1種の単量体であり、かつ、
前記単量体(a22)が、前記式(III)で表される少なくとも1種の一塩基酸金属(メタ)アクリレートを含むものである、請求項1〜21のいずれかに記載の防汚塗料組成物

【請求項23】
前記単量体(a21)が、亜鉛ジアクリレート、亜鉛ジメタクリレート、銅ジアクリレートおよび銅ジメタクリレートからなる群より選ばれた少なくとも1種の単量体であり、かつ、
前記単量体(a22)が、前記式(III)で表される少なくとも1種の一塩基酸金属(メタ)アクリレートと、アルキル(メタ)アクリレート、アルコキシアルキル(メタ)アクリレ
ートおよびヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートからなる群より選ばれた少なくとも
1種の単量体とを含むものである、請求項1〜22のいずれかに記載の防汚塗料組成物。
【請求項24】
前記単量体(a21)が、亜鉛ジアクリレート、亜鉛ジメタクリレート、銅ジアクリレートおよび銅ジメタクリレートからなる群より選ばれた少なくとも1種の単量体であり、かつ、
前記単量体(a22)が、前記式(III)で表される少なくとも1種の一塩基酸金属(メタ)アクリレートと、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートおよび2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートからなる群より選ばれ
た少なくとも1種の単量体とを含むものである、請求項23に記載の防汚塗料組成物。
【請求項25】
前記式(III)で表される一塩基酸金属(メタ)アクリレートの有機基R1が、一塩基酸か
ら形成される有機酸残基であって、炭素原子数10〜20の飽和もしくは不飽和脂肪族炭化水素基または炭素原子数3〜20の飽和もしくは不飽和脂環式炭素水素基、あるいはこれらの置換体である、請求項22〜24のいずれかに記載の防汚塗料組成物。
【請求項26】
前記式(III)で表される一塩基酸金属(メタ)アクリレートの有機基R1が、バーサチック酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、ピマル酸、デヒドロアビエチン酸、12−ヒドロキシステアリン酸およびナフテン酸からなる群より選ばれた少なくとも1種の一塩基有機酸から形成される有機酸残基である、請求項25に記載の防汚塗料組成物。
【請求項27】
金属塩結合含有共重合体(a2)中の前記式(II)の構造に起因する亜鉛および/または銅の含有量がこの共重合体(a2)の0.5〜20重量%である、請求項1〜26のいずれに記載の防汚塗料組成物。
【請求項28】
請求項1〜27のいずれかに記載の防汚塗料組成物から形成された防汚塗膜。
【請求項29】
基材の表面が、請求項1〜27のいずれかに記載の防汚塗料組成物を硬化させてなる塗膜で被覆されていることを特徴とする塗膜付き基材。
【請求項30】
海水または真水と接触する基材の表面が、請求項1〜27のいずれかに記載の防汚塗料組成物を硬化させてなる塗膜で被覆されていることを特徴とする防汚性基材。
【請求項31】
上記基材が、水中構造物、船舶外板、漁網、漁具のいずれかである請求項30に記載の防汚性基材。

【公開番号】特開2009−91562(P2009−91562A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−237967(P2008−237967)
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【出願人】(390033628)中国塗料株式会社 (57)
【Fターム(参考)】