説明

耐チッピング性を改善したコーティングおよびそれを作製する方法

コーティング組成物であって、フィルム形成成分から形成され、それは官能基含有樹脂状バインダーおよび、必要に応じて上記のフィルム形成成分の官能基と反応性がある少なくとも2つの官能基を有する架橋剤を含み、ここで上記組成物が塗布され、そして硬化し、硬化コーティングを形成する。その硬化組成物は、2相連続モルホロジーを有することを特徴とするコーティング組成物。そのコーティング組成物を作製する方法およびそれから調製されるコーティング組成物もまた提供される。上記コーティング組成物は、コーティング組成物に取り込まれると、例えば耐チッピング性のような改善された物理的性質を提供し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、コーティング組成物、それを形成する方法およびそのコーティング組成物から形成される改善された耐チッピング性を有するコーティングに関する。
【背景技術】
【0002】
(背景)
コーティング処方物は、自動車のコーティングおよび/またはペインティングを含む種々の産業に用途がある。これらの産業において、特に自動車産業において、改良された性能性質を有するコーティング組成物を開発するのに多大な努力が費やされてきている。自動車産業では、例えば多くのアプローチが改善された耐チッピング性および防腐食性を達成するために捗られてきている。これらの努力は、例えば1以上のコーティング方法により、基材の上に6までまたはそれ以上の個別に塗布されたコーティング層を塗布する工程を包含する。
【0003】
そのような努力は、基材の表面の保護が強化され、自動車の基材が砂利および石のような石屑に当たる場合、チッピングによる塗装の損失を減少させる結果となっている。例えば、多層のコーティング層の間の衝撃エネルギーに関する差を減少させることは、特にそれぞれのコーティング層が固さに関して過剰な差を有するコーティングに関して、コーティング系全体としての耐チッピング性を改善し得る。硬さの差を減少させることは、下塗り、中塗りもしくはトップコートの間、または下塗りおよび中塗りの間のようなコーティング層の層間剥離を減少させ得ると考えられている。
【0004】
例えば、最終製品の耐チッピング性を増加するのに使用される種々のコーティング処方物および/または中塗りコーティング層により有効な耐チッピング性コーティングシステム用途を開発するために多大な時間および努力が費やされてきている。耐衝撃チッピング性の性質に悪影響を与えないで1以上のコーティング層を省略することにより、組立工場でより薄いコーティング系を開発することもまた、自動車メーカーの目的であり、通常、良好な耐チッピング性を提供するコーティング層を開発することにおいて競争する関心事である。コーティング層の省略は、コーティングプロセス全体としての効率に重要な時間的利益およびコスト利益を提供する。抗チッピング性プライマー層は、プライマー表面仕上剤の前に塗布されるが、自動車メーカーが省略したい標的にしてきた一つのコーティング層である。しかしながら、例えば、亜鉛コート金属のようなコートすることが困難である基材の上にプライマー表面仕上剤/ベースコート/クリアコート系またはプライマー表面仕上剤/モノコート系を用いてコンポジットコーティング層の耐チッピング性質を得ることは、抗チッピングプライマー層の塗布無しで達成することは困難である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、また既存のコーティング系に匹敵する耐チッピング性を提供しつつも、例えば抗チッピングプライマー層のような特定のコーティング層の必要性を除去し得るコーティング系に使用され得る物質に対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の要旨)
本発明は、コーティング組成物であって、上記コーティング組成物は、
(a)官能基含有樹脂状バインダーを含むフィルム形成成分;および
(b)上記フィルム形成成分(a)の官能基と反応性がある少なくとも2つの官能基を有する架橋剤であって、ここで上記組成物が塗布され、硬化し、そして硬化コーティングを形成する場合、その硬化コーティングが2相連続モルホロジー(bicontinuous morphology)を有することを特徴とする架橋剤を含む成分から形成される、コーティング組成物を提供する。
【0007】
本発明はまた、官能基含有樹脂状バインダーを含むフィルム形成成分を含むコーティングであって、ここで上記組成物が塗布され、硬化し、そして硬化コーティングを形成する場合、硬化コーティングが2相連続モルホロジーを有することを特徴とするコーティング組成物を提供する。
【0008】
本発明はまた、キャリアに分散されたポリマー部分を含むコーティング組成物を提供し、そのポリマー部分は、
(a)ポリウレタン成分および水分散性ポリマー成分から形成される官能基含有樹脂状バインダーから構成されるフィルム形成物質;および
(b)上記フィルム形成物質(a)の官能基と反応性がある少なくとも2つの官能基を有する架橋剤を含む成分から形成され、ここで上記組成物が塗布され、硬化し、そして硬化コーティングを形成する場合、上記コーティングが2相連続モルホロジーを有することを特徴とするコーティング組成物を提供する。
【0009】
別の実施形態では、本発明は、キャリアに分散されたポリマー部分を含むコーティング組成物に関し、そのポリマー部分は、
(a)フィルム形成物質が、ポリウレタン成分および水分散性ポリマー成分から形成される官能基含有樹脂状バインダーから構成される、フィルム形成物質を含む成分から形成される。ここでこの組成物が塗布され、硬化し、そして硬化コーティングを形成する場合、このコーティングが2相連続モルホロジーを有することを特徴とするコーティング組成物を提供する。
【0010】
本発明はまた、上述のコーティング組成物のいずれも含む、プライマーコーティング組成物、ベースコート組成物、クリアコート組成物、モノコート組成物および多層コンポジット組成物に関する。本発明が多層コンポジットコーティングである場合、少なくとも1つの層は、上記コーティング組成物を含む。一つの実施形態では、本発明はプライマーコーティング組成物から堆積されるプライマーコーティングおよびそのプライマーコーティングの少なくとも一部の上に塗布されるトップコートを含む多層コンポジットコーティングを提供する。ここで上記トップコートは、トップコーティング組成物から堆積され、そしてここでプライマーコーティング組成物は、上で示されるコーティング組成物のいずれかを含む。
【0011】
別の実施形態では、本発明は、その上に塗布されたコートされた層を有するコート基材を提供し、少なくとも1層は、上で示されたコーティング組成物のいずれかを含む。
【0012】
本発明はまた、水性媒体に分散されたポリマー部分を含む水性コーティング組成物を形成するためのプロセスに関し、そのプロセスは、
(a)以下の成分:
(i)官能基含有樹脂状バインダーを含むフィルム形成成分;および
(ii)上記フィルム形成成分(i)の官能基と反応性がある少なくとも2つの官能基を有する架橋剤を含む成分からポリマー部分を形成する工程、および
(b)上記ポリマー部分を、水性組成物を形成するよう水の中に分散する工程を包含し、ここで上記組成物が塗布され、硬化し、そして硬化コーティングを形成する場合、上記コーティングが2相連続モルホロジーを有することを特徴とする、プロセスに関する。
【0013】
本発明はまた、水性媒体に分散されたポリマー部分を含む水性コーティング組成物を形成するプロセスに関し、そのプロセスは、以下:
(a)以下:
(i)官能基含有樹脂状バインダーを含むフィルム形成成分
を含む成分からポリマー部分を形成する工程;および
(b)水性組成物を形成するように水中にポリマー部分を分散する工程を包含する。
ここで、その組成物が、塗布され、硬化し、硬化コーティングを形成する場合、そのコーティングは2相連続モルホロジー有することを特徴とする。
【0014】
本発明はまた、コート基材を調製するプロセスに関し、以下:
(a)上記基材の少なくとも一部の上に、ポリマー部分を含む組成物からコーティングを形成する工程であって、そのポリマー部分は、以下:
(i)ポリウレタン成分およびポリエステル成分から形成される官能基含有樹脂状バインダーから構成されるフィルム形成物質;および
(ii)上記フィルム形成物質(i)の官能基と反応性がある少なくとも2つの官能基を有する架橋剤を含む成分から形成される、工程、および
(b)上記コーティングを少なくとも部分的に硬化する工程
を含み、ここで上記組成物は2相連続モルホロジーを有することを特徴とする。
【0015】
本発明は、本要旨に開示する実施形態に限定するものではなく、請求項に規定されるように本発明の趣旨および範囲内に入る改変を含むよう意図されることが理解されるべきである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(発明の詳細な説明)
実施する実施例以外、または他で明確に特定しない限り、数字の範囲、量、値および%(例えば、物質の量、反応時間および反応温度、量の比、分子量値(数平均分子量(「Mn」)であれ、重量平均分子量(「Mw」)であれ)および明細書の以下の部分におけるその他)の全ては、例え値、量または範囲に用語「約」が明確に示されなかったとしても、あたかも語「約」が前置されているように読み取り得る。従って、反対に示されない限り、以下の明細書で示される数字のパラメーターは本発明により得られるように求められる所望の性質に依存して変わり得る概算である。少なくとも、請求の範囲に対する均等論の適用を限定するつもりとしてではなく、各数字のパラメータは、少なくとも報告される有意の数字の数に照らして、そして通常の丸め技術を適用して解釈されるべきである。
【0017】
本発明の広い範囲を示す数字の範囲およびパラメータが概算であるにもかかわらず、特定の実施例で示される数値は、できる限り正確に報告される。しかしながら、如何なる数値もそれぞれの試験測定で見られる標準偏差から必然的に生じる特定の誤差を本質的に含む。さらに、変化する範囲の数値の範囲が本明細書で示される場合、列挙された値を含むこれらの数値の如何なる組合わせも、使用され得るよう企図されている。
【0018】
量に関する如何なる数値の引用も、他で特定しない限り、「重量」による。用語「重量当量」は、特定の物質を作製するのに使用される種々の成分の相対的な量を基礎にして計算され、そして特定の物質の固形分を基礎にする。上記相対的量は、ポリマーのような成分から産生される物質のグラム単位での理論的重量を生じ、得られるポリマーに存在する特定の官能基の理論的な数を与える量である。理論的なポリマー重量は、重量当量を与えるウレタン/尿素基の当量の理論数により除される。例えば、ウレタン/尿素の重量当量は、ポリウレタン/尿素物質におけるウレタンおよび尿素基の当量を基礎にする。
【0019】
本明細書で使用される場合は、用語「ポリマー」は、オリゴマーおよびホモポリマーおよびコポリマーの両方をいうと意味される。また本明細書で使用される場合、用語「ポリウレタン」は、ポリウレタン、ポリ尿素およびそれらの混合物を含むと意味される。
【0020】
また分子量に関しては、MnまたはMwのいずれでも、これら量は当業者に周知でそして、米国特許第4,739,019号(第4欄、2〜45行目)で議論される標準的なポリスチレンを使用したゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより決定され、これは本明細書に全体として参考に援用される。
【0021】
本明細書に参考として援用されると言われる如何なる特許、刊行物または他の開示資料は、全体であれまたは部分であれ、援用された資料は、本開示に示される定義、記述または他の開示と矛盾しない範囲でのみ本明細書で援用される。そのようなものとして必要な程度に本明細書で明確に示されるような開示は、本明細書で参考として援用されている如何なる矛盾する資料をも打ち負かす。本明細書で参考として援用されるといわれるが、本明細書で示される現在の定義、記述または他の開示資料と矛盾する、いかなる資料、またはその部分も、その援用された資料と現在の本開示資料との間に矛盾が生じない範囲で援用されるのみである。
【0022】
本明細書で使用される場合、上記組成物の「樹脂固形分の全重量を基礎にして」とは、上記組成物が形成される間に添加される成分の量が、上記組成物の形成の間に存在するフィルム形成物質、ポリウレタン、架橋剤およびポリマーの樹脂固形分(非揮発性物質)の全重量を基礎にすることを意味するが、水、溶媒、またはヒンダードアミン安定剤、光開始剤、顔料(体質顔料および充填剤、流動調節剤、触媒および紫外光吸収剤を含む)などの添加物固形分は含まない。
【0023】
本明細書で使用される場合、「から形成される」とは、例えば請求用語「含む」のように広義で示される。そのようなものとして、列挙された成分のリスト「から形成される」組成物は、少なくともこれらの列挙された成分を含み、さらに上記組成物の形成の間の他の列挙されない成分をさらに含み得る。
【0024】
本明細書で使用される場合、組成物と関連して使用される用語「硬化」とは、例えば「硬化組成物」は、その組成物の任意の架橋可能成分が少なくとも部分的に架橋されることを意味する。本発明の特定の実施形態では、架橋可能成分の架橋密度、即ち架橋度が、完全架橋の5%〜100%の範囲である。他の実施形態では、架橋密度は完全架橋の35%〜85%の範囲である。他の実施形態では、架橋密度は、完全架橋の50%〜85%である。当業者は、架橋の存在および程度、即ち架橋密度は、種々の方法、例えば窒素雰囲気下で取り扱われるTA機器DMA2980DMTA分析器を使用する動的熱機械分析(DMTA)のような方法により決定され得る。この方法は、コーティングまたはポリマーのフリーフィルムのガラス転移温度および架橋密度を決定する。硬化物質のこれらの物理的特性は、架橋ネットワークの構造と関連する。
【0025】
平均粒子サイズは、公知のレーザー散乱技術に従って測定され得る。例えば、そのような粒子の平均粒子サイズは、Horiba Model LA 900 レーザー回折粒子サイズ機器を使用して測定され、その機器は、粒子サイズを測定するのに波長633nmのヘリウム−ネオンレーザーを使用し、そして粒子が球状を有すると仮定し、即ち「粒子サイズ」は、粒子を完全に封入する最小の球をいう。
【0026】
本明細書で使用される場合、「薄いフィルム」とは、1000ミクロン未満の乾燥フィルム厚みを有するフィルムをいい、代表的には800ミクロン未満、通常は10〜700ミクロンの範囲で、より通常には25〜600ミクロンの範囲である。本明細書で使用される場合、句「フィルム形成物質」は、それ単独でまたは例えば架橋剤のような共反応性物質と組合わせて、基材の表面上に連続フィルムを形成する能力がある物質をいう。
【0027】
本明細書で使用される場合、句「水分散性」は、2相系が形成されるよう十分な数の極性基(大量の物質として)をいたるところに分散することができる物質(微粉砕された粒子として)の能力をいい、ここでその物質は、分散相または内部相としての特徴を示し、その極性基は連続相または外部相としての特徴を示す。得られた2相系は、特性に応じてイオン性または非イオン性である。
【0028】
本明細書で使用される場合、「2相連続モルホロジー」は、分離した相に存在する2以上の物質をいい、ここでその相は、フイルム内で一様に混ざっている。2相連続モルホロジーは、通常混和不能な物質の2以上の混ざったネットワーク、により区別され、ここでは肉眼的な分離は防がれている。本発明の一つの実施形態では、肉眼的分離は、本熱硬化性組成物を硬化することにより防ぎ得、従って、その2つの成分の間に化学結合を提供し得る。言い換えれば、本2相連続モルホロジーは、架橋することによる適切に準安定な熱力学的凍結状態である。
【0029】
本明細書で示される、用語「相互作用パラメータ」および「χ」は、ポリマー分子と溶媒または別のポリマー分子との相互作用エネルギーの特性を示す無次元量をいう(Flory、Principles of Polymer Chemistry、Cornell University Press(1953)pp.507〜511 および541〜545)。相互作用パラメータは、小角中性子散乱(Lohse、Polymer Preprints、2001、42(1)、p.259)により直接的に測定され得る。
【0030】
本明細書で使用される場合、用語「溶解度パラメータ」および「δ」は、Hildebrand溶解度パラメータをいい、またはポリマー系においては凝集パラメータをいい得る。溶解度パラメータは、ポリマー系に関して多くの方法で決定するが、非限定的な例として溶媒におけるポリマーの膨潤性、曇り点決定法が挙げられるが、これは樹脂が真の溶媒中では溶解し、別の溶媒でその混合物が曇るまで滴定し、それで溶解度の範囲を同定する。種々の溶媒および希釈剤で曇り点試験することは、ポリマーの凝集パラメータ値の正確な決定を可能にする。他の方法として、限定されないが、曇り点、溶解性膨潤点のような実験的な試験と、公知の溶解度パラメータ値の他の物質と化学構造とを比較することを基礎にして理論的計算の追加との組合せを含む。この溶解度パラメータは、代表的に1立方cmあたりジュールの平方根で表現される((J/cm1/2)。
【0031】
本明細書で使用される場合、「チッピング試験方法」は、Nissan Motor Co.Ltd.、により発行されている、直径5mmの真鍮ナットを−20℃で使用する
試験KAG−P−00065を基礎にした多層コンポジットコーティングの耐チッピング性の格付けを決定する試験手順をいい、これは本明細書に参考として全体が援用されている。
【0032】
本発明は、コーティング組成物に関し、それから調製されるコーティングおよびそれを作製する方法に関する。上記コーティング組成物は、熱硬化性組成物または熱可塑性組成物であり得る。本発明の1つの実施形態では、上記コーティング組成物は、官能基含有樹脂状バインダー、および必要に応じて、上記フィルム形成成分の官能基と反応性がある少なくとも2つの官能基を有する架橋剤を含むフィルム形成成分を含む熱硬化性組成物を含む。上記フィルム形成成分は、ポリウレタン成分および水分散性ポリマー成分を含み得る。上記熱硬化性コーティング組成物は、架橋剤を含み得、または自己架橋し得、即ち架橋ネットワークを形成するためにそれぞれ他と反応することができる反応性基を含有する。例えば、本発明の1つの実施形態では、イソシアネート基およびヒドロキシル基はそれぞれ他と反応して架橋ネットワークを形成する。上記コーティング組成物が塗布され、硬化しそして硬化コーティングを形成する場合、その硬化コーティングは、2相連続モルホロジーを有することを特徴とする。
【0033】
本発明において、上記フィルム形成成分の溶解度パラメータは、例えばポリウレタン成分および水分散性ポリマーのようなフィルム形成物質を形成する成分の混合物に対する得られる熱力学的な相互作用パラメータ値(χ)が、代表的に0.5以上になるように十分異なる。必ずしもではないが、これは得られる。何故ならフィルム形成物質を形成する成分がお互いに混和性が無く、そして熱硬化性組成物を硬化させることにより肉眼的な分離を防ぎながら、2相連続モルホロジーを形成するからである。
【0034】
より具体的には、「混合の自由エネルギー」は、ΔG=ΔH−TΔSと規定され、ここで、Gはギブスの自由エネルギー、Hはエンタルピー、SはエントロピーおよびTは温度である。簡単に言えば、2つの成分の混合自由エネルギー(ΔG)が、+値である場合、その2つの成分は混和不能であり相分離し、例えばコーティング組成物が2つの実質的に混和不能な例において、コーティング相として塗布される場合、その成分は異なる相に分離し、大部分が2相連続モルホロジーを形成する。また成分1と成分2とを含有する2成分系の混合物のΔGは、以下の等式で規定され得る:
ΔG=RT[(nlnX+nlnX)+χn
ここで、Rは、気体定数で、Tは温度、Xは成分1または成分2の容量分率、nは粒子の数そしてχ(「カイ」)は、上に示したように熱力学的相互作用パラメータを示す。上記熱力学的相互作用パラメータ(χまたは「カイ」)は成分1と成分2の混合エネルギーにおける差として規定されている。これは以下の等式で表され得る:
χ=(ΔEmix/RT)V
ここでVは、平均モル容量(「基準セグメント容量」)であり、RおよびTは、上で規定される。「カイ」はまた、2つの物質の溶解度パラメータ(δ)における差を以下のように規定され得る:
χ=V(δ−δ/RT
ここでδは、Hildebrand溶解度パラメータである。上記溶解度パラメータは、物質の凝集エネルギー密度(「ced])として知られる値から計算され得る。上記「ced)」は、物質の蒸発潜熱、すなわちほぼ全体から単一分子を除去するためにどれだけのエネルギーが必要とされるかということに関する。ポリマー系に関して、そのようなコーティング組成物は、混合エネルギーのエントロピーが非常に小さいと仮定して、自由エネルギー式は混合エネルギー自身のエネルギーになり、即ちΔG=ΔHで、そして2つの物質が混和不能(相分離)になる「カイ」が0.5を超える場合、理論的臨界点が存在する。通常の溶液(即ち低分子量種)の場合、上記臨界点は2.0である。
【0035】
まとめると、最初の原理から、バルク物質に関する上記「ced」は、計算され得る。上記「ced」は、上で示される上記溶解度パラメータ(δ)に直接的に関連する。上記熱力学的相互作用パラメータ「カイ」(χ)は、二つの物質のそれぞれの溶解度パラメータにおける差から計算され得る。「カイ」は、混合物における物質の相対的画分と共に混合の自由エネルギー(ΔG)を計算するのに使用され得る。もしΔGが、+値である場合、その混合物は熱力学的には不安定で相分離が起こる。この条件の臨界点は、より高分子量物質、例えば樹脂バインダー系のポリマー成分については0.5に等しい化、またはそれより大きい「カイ」値であり、そしてより小さい分子にとっては2.0である。従って、2相連続モルホロジーの形成は、上記溶解度パラメータ(δ)、上記熱力学的相互作用パラメータ(χ)各成分の容量分率(Φ)およびそれぞれの分子量の均衡から生じる。(Flory、Paul J.、Principles of Polymer Chemistry、Cornell University Press(1953)、Chapters XIIおよびXIII;Polymer User Guide、September 1996、Molecular Simulations、Inc.、San Diego、CA;Nicolaides、D.、Parameterisation for Mesoscale Modeling、Molecular Simulations、Inc.).
上述のように、1つの実施形態では、例えばポリウレタン成分および水分散性ポリマー成分のようなフィルム形成成分を含み得る成分は、熱硬化性組成物が硬化する場合、適切にロックされる2相連続モルホロジーの形成を生じる。得られたコーティングは先行技術コーティングに比較して、光沢が改善され、かすみが減少し、可撓性および耐チッピング性も改善され得る。
【0036】
本発明において、代表的には例えばポリウレタン成分および水分散性ポリマー成分などのフィルム形成成分を形成する成分の熱力学的相互作用パラメータ「カイ」(χ)は、少なくとも0.5である。さらに本発明では、代表的にはポリウレタン成分の溶解度パラメータδおよび上記水分散性ポリマー成分の溶解度パラメータδの差〈δ−δ)は少なくとも1、代表的には少なくとも1.5、いくつかの実施形態では1.5〜2の範囲であり、そして少なくとも2であり得る。
【0037】
一般的に、例えばポリウレタン成分および水分散性ポリマー成分のようなフィルム形成物質を形成する成分は、2相連続モルホロジーの形成を生じるレベルで熱硬化性組成物に存在する。
【0038】
フィルム形成成分は、ポリウレタン成分、例えばポリエステル成分のような水分散性ポリマー成分、それらの混合物およびそれらのコポリマーの少なくとも1つを含む官能基含有樹脂状バインダーを含み得る。ポリウレタン成分および水分散性ポリマー成分のそれぞれは、単独または組合わせのいずれかでフィルム形成成分を形成するのに含まれ得る。
フィルム形成成分の多分散性指数(PDI)は、必ずしも重要ではない。フィルム形成成分の多分散性指数(PDI)は、常に10未満であり、多くの場合8未満で、そしてある場合には6未満である。本明細書および請求項で使用される場合、「多分散性指数」は、以下の等式から決定される:(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))。
【0039】
ポリウレタン成分は、コーティング組成物の全重量を基礎にしてコーティング組成物の中に、5〜40%、または5〜30%、または10〜20%の範囲で存在し得る。
【0040】
ポリウレタン成分は、ポリイソシアネートの任意の数から形成され得る。本明細書で使用される場合、用語「ポリイソシアネート」は、ブロック化ポリイソシアネートおよび非ブロック化ポリイソシアネートの両方を含む。
【0041】
ポリウレタン成分を調製するために使用される適切なポリイソシアネートとは、脂肪族、脂環式、アラリファティック(araliphatic)および芳香族イソシアネートおよびそれらの混合物が挙げられ得る。代表的には上記ポリイソシアネートは脂肪族または脂環式である。
【0042】
有用な脂肪族および脂環式ポリイソシアネートの例としては、4,4−メチレンビスジシクロヘキシルジイソシアネート(水素化MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPD),メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、メタ−テトラメチレンキシリレンジイソシアネート(TMXDI)およびシクロヘキシレンジイソシアネート(水素化XDI)。他の脂肪族ポリイソシアネートとしてはIPDIおよびHDIのイソシアヌレートを含む。
【0043】
適切な芳香族ポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート(TDI)(即ち2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネートまたはそれらの混合物)、ジフェニルメタン−4,4−ジイソシアネート(MDI)、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート(NDI)、3,3−ジメチル−4,4−ビフェニレンジイソシアネート(TODI),粗TDI(即ちTDIとそのオリゴマーとの混合物)、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、粗MDI(即ち、MDIとそのオリゴマーとの混合物)、キシリレンジイソシアネート(XDI)およびフェニレンジイソシアネートが挙げられる。
【0044】
ヘキサメチレンンジイソシアネートから調製されるポリイソシアネート誘導体、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナトメチルシクロヘキサン(「IPDI」)は、そのイソシアヌレートも含み、および/または4,4−ビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタンは、適切である。
【0045】
ポリウレタン成分を調製するために使用されるポリイソシアネートの量は、ポリウレタン成分を調製するために使用される樹脂固形分の全重量を基礎にして、一般的に15〜50重量%の範囲で、20〜35重量%の範囲でもあり得る。
【0046】
ポリウレタン成分が形成される成分は、ポリウレタン成分が形成される他の成分のイソシアネート基またはヒドロキシル基と反応性がある、少なくとも1つの酸官能基物質または少なくとも1つの官能基を有する、酸無水物を含み得る。有用な酸官能基物質としては以下の構造を有する化合物またはポリマーを含む:
X−Y−Z
ここでXは、OH、SH、NH、またはNHRであり、そしてRは、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、置換アルキル基、置換アリール基、置換シクロアルキル基およびそれらの混合物を含む;Yは、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、置換アルキル基、置換アリール基、置換シクロアルキル基およびそれらの混合物を含む;ならびにZは、OSOH、COOH、OPO、SOOH、POOH、およびPOおよびそれらの混合物を含む。
【0047】
適切な酸官能基物質としては、ジメチロールプロピオン酸(DMPA),ヒドロキシピバル酸,3−ヒドロキシ酪酸、D,L−トロパ酸、D,L−ヒドロキシマロン酸、D,L−リンゴ酸、クエン酸、チオグリコール酸(throglycolic acid)、グリコール酸、アミノ酸、12−ヒドロキシステアリン酸、メルカプトプロピオン酸、メルカプト酪酸、メルカプトコハク酸およびそれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。有用な無水物としては、脂肪族無水物、脂環式無水物、オレフィン性無水物、シクロオレフィンおよび芳香族無水物が挙げられる。置換脂肪族無水物および置換芳香族無水物はまた、置換基がその無水物の反応性または得られるポリウレタンの性質に悪影響を与えないのであれば有用である。置換基の例としては、クロロ、アルキルおよびアルコキシが挙げられる。無水物の例としては、コハク酸無水物、メチルコハク酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物、オクタデセニルコハク酸無水物、フタル酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、アルキルヘキサヒドロフタル酸無水物(例えば、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物)、テトラクロロフタル酸無水物、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸無水物、トリメリト酸無水物、クロレンド酸無水物、イタコン酸無水物、シトラコン酸無水物、マレイン酸無水物およびそれらの混合物が挙げられる。
【0048】
酸官能基物質または酸無水物は、水中でポリマーを溶解するためにイオン化され得るアニオン性イオン化可能基を有するポリウレタン成分を提供する。本発明の目的のために、用語「イオン化可能」とは、イオンになる、即ちイオンへ解離する能力または電荷を帯びる能力を有する基を意味する。上記酸は、塩基で中和されカルボキシレート塩基を形成する。アニオン基の例としては、−OSO、−COO、OPO、−SO、−POO;およびPOが挙げられるが、COOが好ましい。
【0049】
上記ポリウレタン成分を調製するのに使用される酸官能基物質または酸無水物の量は、上記ポリウレタン成分を形成するために使用される樹脂固形分の全重量を基礎にして、少なくとも1%、代表的には1〜20%の範囲であり、そしていくつかの形態では6〜10重量%の範囲である。
【0050】
上記酸基は塩基により中和され得る。中和は、全理論的中和当量の0.1〜2.0の範囲であり、そして0.4〜1.3の範囲であり得る。適切な中和剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、アミン、アルコールアミン(少なくとも1種の1級、2級もしくは3級アミノ基および少なくとも1つのヒドロキシル基を有する)のような無機塩基および有機塩基が挙げられる。適切なアミンとしては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、ジイソプロパノールアミンなどのアルカノールアミンが挙げられる。中和剤の適切な量は、全理論的中和当量の0.1〜1.0倍であり得、そして0.4〜1.0であり得る。
【0051】
ポリウレタン成分が形成される成分は、必要に応じて、先行技術に記載されるものとは異なる少なくとも1つの活性水素含有物質を含む。用語「活性水素」とは、JOURNAL OF THE AMERICAN CHEMICAL SOCIETY、Vol.49、3181ページ(1927)に記載されているようにZerewitnoff試験により決定されるイソシアネートとの反応性があるそれらの基を意味する。活性水素はポリオールおよび/またはアミンから誘導されるものを含み得る。適切な活性水素含有物質の非限定的な例としては、ポリオール、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリウレタン、ポリ尿素およびそれらの混合物を含む。代表的には活性水素含有物質は、酸官能基を含まない。
【0052】
本発明の1つの実施形態では、活性水素含有物質は、例えば2〜4のヒドロキシル基を有する1以上の低分子量ポリオールを含む。その低分子量ポリオールの重量平均分子量は、1モル当たり600〜3,000の範囲であり得、いくつかの実施形態では1モル当たり800〜2,500グラムの範囲で有り得、そして1モル当たり1,000〜2,000グラムの範囲であり得る。適切な低分子量ポリオールの例としては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセロール、ペンタエリトリトールおよびソルビトールなどの1〜10個の炭素原子を有するジオール、トリオールおよびテトラオールが挙げられる。他の低分子ポリオールの例としてはジエチレングリコール、エトキシビスフェノールAおよびアルコキシビスフェノールAが挙げられる。
【0053】
ポリエーテルポリオールの他の例としては、下記構造式を有するものを含むポリアルキレンエーテル(ポリ(オキシアルキレン))ポリオールが挙げられる。
【0054】
【化1】

ここで置換基Rは、水素、混合置換基を含む1〜5個の炭素原子を含有する低級アルキルであり、mは1〜4までの整数、好ましくは1または2、そしてnは、代表的には5〜200の範囲の整数である。有用なポリエーテルポリオールは、例えばE.I.du Pont de Nemours and Company、LaPorte、Texasから入手できるTERATHANE(登録商標)650のようなポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ポリ(オキシエチレン)グリコール、ポリ(オキシ−1,2−プロピレン)グリコールならびにエチレングリコールと、1,2−プロピレンオキシドとエチレンオキシドとの混合物、との反応生成物が挙げられる。これらの物質は、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシドおよびテトラヒドロフランのようなアルキレンオキシドの重合により得られる。TERATHANE(登録商標)1000および2000はまた、使用され得る。
【0055】
種々のポリオール、例えば1,6−ヘキサンジオールのようなジオールまたはトリメチロールプロパンおよびソルビトールのような高級ポリールのオキシアルキル化から得られるポリエーテルもまた、使用され得る。1つの良く使用されるオキシアルキル化方法は、当業者に周知の様式で酸性触媒または塩基性触媒の存在下で、ポリオールと例えばエチレンオキシドまたはプロピレンオキシドなどのアルキレンオキシドとの反応である。
【0056】
他の適切な活性水素含有ポリエーテルの例としては、例えばポリエーテルアミン(例えばポリオキシアルキレンポリアミン)のようなポリマーポリアミンである。本発明の実施において、表現「ポリオキシアルキレンポリアミン」が使用される場合、意図されるものは、1モル当たりオキシアルキレン基および少なくとも二つのアミン基、代表的には1級アミン基の両方を含有するポリアミンである。
【0057】
特に有用なポリオキシアルキレンポリアミンの例は以下の構造式により表現される:
【0058】
【化2】

ここでmは0〜50の範囲であり得、nは1〜50の範囲であり得、n’は1〜50の範囲であり得、xは1〜50の範囲であり得、yは0〜50の範囲であり得、そしてRからRは、同じかまたは異なり得、そして独立して水素、好ましくは1〜6個の炭素原子を有する低級アルキルラジカルから選択され得る。
【0059】
有用なポリオキシアルキレンポリアミンの別の例は以下の構造のもので:
【0060】
【化3】

ここでRは同じか、または異なり得、そして水素、1〜6個の炭素原子を有する低級アルキルラジカルから選択され、ここでnは1〜50の範囲の整数を表し、そして1〜35であり得る。好ましいポリオキシアルキレンポリアミンの非限定的な例としては、例えばJeffamine(登録商標)D−2000およびJeffamine(登録商標)D−400のようなポリオキシプロピレンジアミンが挙げられ、Huntsman Corporation、Houston、Texasから市販されている。多くのそのような他のポリオキシアルキレンポリアミンは、より詳細に米国特許第3,236,895号、第2欄、40〜72行に記載されており;ポリオキシアルキレンポリアミンの調製方法は、その実施例4、5,6および8〜12、第4欄〜第9欄に説明されている;米国特許第3、236,895号の上述の部分は、本明細書により参考として援用されている。
【0061】
混合されたポリオキシアルキレンポリアミンは使用され得る、即ちそのオキシアルキレン基が一部分より多くから選択され得るポリアミンである。例として以下の構造式を有するような混合ポリオキシエチレン−ポリプロピレンポリアミンが挙げられる:
【0062】
【化4】

ここでmは1〜49の範囲の整数で、1〜34であり得、そしてnは1〜34の整数であり、そしてここでn+mの和は1〜50に等しく、そして1〜35であり得る。
【0063】
上述のポリオキシアルキレンポリアミンのほかにポリオキシアルキレンポリオールの誘導体もまた使用され得る。適切な誘導体の例としては、上述のようなポリオキシアルキレンポリオールとアクリロニトリルとを反応させて、その後当業者に周知の様式で反応生成物を水素化することにより調製されるアミノアルキレン誘導体である。適切な誘導体の例としては、ポリテトラメチレングリコールビス(3−アミノプロピル(エーテル))である。他の適切な誘導体は以下の構造式を有する:
【0064】
【化5】

ここで置換基Rは、水素または混合置換基を含む1〜5個の炭素原子を含有する低級アルキルであり、mは1〜4の整数、好ましくは1〜2であり、そしてnは代表的には5〜200の範囲の整数である。
【0065】
上記ポリエーテルセグメントにおける混合オキシエチレン−プロピレン基について、オキシプロピレン含量は、樹脂固形分の全重量を基礎にして少なくとも60重量%、より好ましくは少なくとも70重量%、より好ましくは少なくとも80重量%であることが好ましい。
【0066】
上記ポリエーテルセグメントは、単一タイプのポリエーテルもしくはポリオールまたはそれらの種々の混合物から誘導され得る。
【0067】
他の適切なポリオールは、ポリカーボネートジオール、ポリエステルジオール、ヒドロキシ含有ポリジエンポリマー、ヒドロキシ含有アクリル系ポリマーおよびそれらの混合物が挙げられる。
【0068】
ポリエステルポリオールおよびヒドロキシル含有アクリル酸ポリマーの例は、米国特許第3,962,522号および同第4,034,017号にそれぞれ記載されており、これらは本明細書に参考として援用される。ポリカーボネートポリオールの例としては米国特許第4,692,383号、第1欄、58行目から第4欄、14行目までに記載されており、これは本明細書に参考として援用される。ヒドロキシル含有ポリジエンポリマーの例は、米国特許第5,863,646号、第2欄、11〜54行に記載されており、これは本明細書に参考として援用される。これらのポリマーポリオールは、一般的に重量平均分子量が1モル当たり400〜10,000グラムを有し得る。
【0069】
一般的に、ポリウレタンを調製するために使用される活性水素含有物質の量は、70重量%までであり得、ポリウレタン成分を作製するために使用される樹脂固形分の全重量を基礎にして10〜25重量%の範囲であり得る。本発明の1つの実施形態では、活性水素含有物質は、上で示されたようなポリエーテルポリオールセグメントおよびポリエステルポリオールセグメントを含み得、ポリエステルポリオールセグメントおよびポリエーテルポリオールセグメントのそれぞれは、ポリウレタン成分を調製するために使用される樹脂固形分の全重量を基礎にして、ポリウレタン成分の中に70重量%までの量で存在し、そしていくつかの実施形態では30〜70重量%で存在する。
【0070】
本発明の1つの実施形態では、図1に示されるようにコーティング組成物は、活性水素含有物質およびポリエステル成分を含む。この実施の形態では、上記活性水素含有物質は、TERATHAME(登録商標)2000であり、上記ポリエステル成分は1,6ジヘキサンジオールイソフタル酸ポリエステルである。
【0071】
ポリイソシアネートおよび活性水素含有物質は、本発明のポリウレタンを形成する成分のいくらかまたは全てと共に添加され得、またはポリウレタン成分を調製するために使用される他の成分を反応させる前にプレポリマーを形成する当業者に周知の様式で一緒に予備反応し得る。例えば、上記ポリイソシアネートおよび活性水素含有物質は、0.5%まで、およびいくつかの実施形態では0.04%のジラウリン酸ジブチルすずを使用して40〜90℃の間で予備反応され得る。一般的に活性水素当量に対するイソシアネート当量は10:1〜1.1:1の範囲であり、5:1〜1.1:1の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、1.5〜1.1:1の範囲であり得る。
【0072】
上述のポリウレタン成分は、例えばポリアミンのような鎖延長剤をさらに含み得る。有用なポリアミンとしては、その窒素原子に結合している基が飽和または不飽和、脂肪族、脂環式、芳香族、芳香族置換脂肪族、脂肪族置換芳香族および複素環式であり得る、1級または2級ジアミンまたはポリアミンが挙げられる。例示的で適切な脂肪族ジアミン、脂環式ジアミンは、1,2−エチレンジアミン、1,2−プロピレンジアミン、1,8−オクタンジアミン、イソホロンジアミン、プロパン−2,2−シクロヘキシルアミン、アジピン酸ジヒドラジド、2−アミノエチルエタノールアミンなどが挙げられる。適切な芳香族ジアミンは、フェニレンジアミンおよびトルエンジアミン、例えば、o−フェニレンジアミンおよびp−トルエンジアミンが挙げられる。これらおよび他の適切なポリアミンは、詳細に米国特許第4,046,729号、第6欄、61行目から第7欄、26行目に記載されており、これは本明細書に参考として援用される。
【0073】
ポリウレタン成分が形成される樹脂固形分の全重量を基礎にして、ポリアミンの量は1〜8重量%の範囲であり得、そしていくつかの実施形態では2.5〜5重量%の範囲であり得る。
【0074】
上記ポリウレタン成分は、ポリウレタン成分のイソシアネート官能基の少なくとも一部をブロッキングする1以上のブロッキング剤をさらに含む。
【0075】
上記ポリウレタン成分を形成するために使用される適切なブロッキング剤は:オキシムで、例えばアセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、アセトフェノンオキシム、シクロヘキサノンオキシムおよびメチルイソブチルケトオキシム;炭素水素酸化合物、例えばマロン酸ジエチル、アセト酢酸アルキルおよびアセチルアセトン;複素環化合物、例えばフルフリルアルコール,1,2,4−トリアゾ−ルおよび3,5−ジメチルピラゾール;ラクタム、例えば、ε−カプロラクタム;アミド、例えばメチルアセトアミド、スクシンイミド、およびアセトアニリド;フェノール、例えば3−ヒドロキシ安息香酸メチルおよび4−ヒドロキシ安息香酸メチル;およびアミノ化合物、例えばジイソプロピルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジ−tert−ブチルアミン、ピペリジンおよび2,2,6,6−テトラメチルピペリジンが挙げられる。
【0076】
ポリウレタン成分を調製するために使用され得るブロッキング剤の量は、ポリウレタン成分を形成するために使用される樹脂固形分の全重量を基礎にして10%まで、1.0〜5.0重量%の範囲であり得る。
【0077】
上記ポリウレタン成分は、当業者に公知の任意の適切なアレンジメントまたは部分において上記で同定された成分を組合わせることにより形成され得る。例えば、本発明の反応生成物を調製する際に、上記成分は、単一のバッチ工程または以下に示されるように連続工程として組合わせ得る。例えば、上記ポリイソシアネートと上記活性水素含有物質とを、1以上の残りの成分と反応させる前にプレポリマーを形成する適切な条件下で予め反応させ得る。プレポリマーを形成するための任意の適切な反応温度は、例えば、50℃〜180℃の範囲のこれらの反応温度を使用され得る。ブロッキング剤が、プレポリマーのイソシアネート基の少なくとも一部をブロッキングするために、ここで反応させられ得る。そのような反応は適切な反応温度、例えば60℃〜90℃で実施され得る。その後、上記ポリアミン物質が、任意の適切な条件下、例えば反応温度が70℃〜75℃で添加され得る。その後イソシアネート基またはヒドロキシル基と反応性がある少なくとも1個の官能基を有する酸官能基物質または酸無水物は、適切な条件下で例えば反応温度が60℃〜95℃で反応され得る。
【0078】
上記ポリウレタン成分は、非イオン性またはアニオン性であり得る。上記ポリウレタン成分の重量平均分子量は、代表的には1モル当たり10,000〜100,000グラムの範囲であり、いくつかの実施形態では1モル当たり30,000〜90,000グラムの範囲であり、1モル当たり40,000から60,000グラムでの間であり得る。本発明の実施に使用される上記ポリウレタンおよび他のポリマー物質の分子量は、ポリスチレン標準を使用するゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより決定される。
【0079】
上記ポリウレタン成分は粉末、液体および粉末スラリー組成物を形成するためには有用である。上記ポリウレタン成分は、水性組成物で存在し得る。
【0080】
本発明のポリウレタン成分は、水性分散液の形態の組成物に存在し得る。本明細書で使用される場合、用語「分散」は、樹脂が分散相にそして水が連続層である、2層の透明な、半透明または不透明な樹脂系をいう。上記樹脂相の平均粒子径は、一般的には1.0ミクロン未満であり、0.5ミクロン未満であり得、そしていくつかの実施形態では0.2ミクロン未満である。
【0081】
一般的には水性媒体における樹脂相の濃度は、水性分散液の全重量を基礎にして10〜60%の範囲であり、30〜55%の範囲であり得、いくつかの実施形態では35〜45重量%の範囲であり得る。
【0082】
フィルム形成成分は、活性水素含有水分散性ポリマー成分を、単独もしくは上で議論したポリウレタン成分に加えてさらに含み得る。任意の水分散性ポリマー成分、例えばアルキド含有ポリマー、ポリエステル含有ポリマー、アクリルポリマー、オレフィンポリマー、ポリウレタン含有ポリマー、それらのコポリマーおよびそれらの混合物は、本発明のフィルム形成成分に使用され得る。フィルム形成成分の水分散性ポリマー成分は、ポリウレタン成分を調製するために使用されるポリエステルと同じか異なる成分を含む。本明細書で使用される場合「異なる」という意味は、成分に関してそれぞれの成分がことを意味する同じ化学構造を有しないという意味である。
【0083】
本発明の一つの実施形態では、上記水分散性ポリマー成分は、水性アクリル変性アルキドエマルジョンであり、それは酸化性または非酸化性オイルフリーのアルキド樹脂、ウレタン、ビニル、エポキシ変性アルキド、チキソトロピック樹脂およびそれらの混合物を含み、例えばResydrol(登録商標)ベースのポリマーがVAZ6600w/36WAという組成物としてUCB Surface Specialties、Smyrna、Geogiaから市販されている。
【0084】
上で示されたそれらのポリマーに加えて、上記フィルム形成成分の水分散性ポリマー成分は、多価アルコールとポリカルボン酸との縮合生成物を含み得る。適切な多価アルコールはエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパンおよびペンタエリトリトールが、挙げられ得る。適切なポリカルボン酸としては、アジピン酸、1,4−シクロヘキシルジカルボン酸およびヘキサヒドロフタル酸が挙げられ得る。上述のポリカルボン酸の他に上記酸の官能基等価物、例えば存在する酸無水物または酸の低級アルキルエステル、例えばメチルエステルなどが使用され得る。また、少量のモノカルボン酸、例えばステアリン酸も使用され得る。反応物の比率および反応条件は、所望の所有している官能基、即ちカルボキシル官能基またはヒドロキシル官能基を有するポリエステルポリマーが得られるように選択される。
【0085】
例えば、ヒドロキシル基含有ポリエステルは、例えばヘキサヒドロフタル酸無水物のようなジカルボン酸の酸無水物と、例えばネオペンチルグリコールのようなジオールと1:2のモル比で反応させることにより調製され得る。風乾性を高めることが所望される場合、適切な乾性油脂肪酸が使用され得、亜麻仁油、大豆油、トール油、脱水ヒマシ油または桐油由来のものが使用され得る。
【0086】
カルバメート官能性のポリエステルは、ポリエステルを形成するのに使用されるポリ酸およびポリオールと反応させられ得るヒドロキシアルキルカルバメートを最初に形成することにより調製され得る。あるいは、末端カルバメート官能基はイソシアン酸とヒドロキシ官能性ポリエステルと反応させることによりポリエステルに取り込まれ得る。また、カルバメート官能性はヒドロキシルポリエステルと尿素を反応させることによりポリエステルに取り込まれ得る。さらにカルバメート基は、トランスカルバモイル化反応によりポリエステルに取り込まれ得る。適切なカルバメート官能基含有ポリエステルの調製は、米国特許第5,593,733号、第2欄、40行〜第4欄、9行に記載されており、本明細書に参考として援用される。
【0087】
上記水分散性ポリマー成分は、上記コーティング組成物に、上記組成物の全重量を基礎にして、80%までの範囲の量で、30〜80%の範囲の量で、いくつかの実施形態で50〜70重量%で存在し得る。水分散性ポリマーの重量平均分子量は、代表的には1モル当たり2,000〜20,000グラムの範囲で、いくつかの実施形態では1モル当たり4,000〜12,000グラムの範囲である。
【0088】
最適な耐チッピング性および耐久性を達成するために、フィルム形成成分は前述したように硬化可能または熱硬化性であり得る。例えばメチルエチルケトオキシムのようなオキシムでブロッキングされるイソシアネート、アミノ樹脂およびそれらの混合物のような外因性の架橋剤が使用され得るが、上記フィルム形成物質は、自己架橋性であり得る。他の有用な外因性架橋剤としては、上述のようなポリイソシアネートが挙げられる。架橋剤のポリマーの多分散性指数(PDI)は、必ずしも重要ではない。上記多分散性指数は、2未満であり得、1.5未満であり得る。
【0089】
上記ポリイソシアネートは本質的に遊離のイソシアネート基がなく完全にキャップ化され異なる成分として存在し、または部分的にキャップ化され得、ポリウレタン成分の骨格のヒドロキシル基またはアミノ基と部分的に反応し得る。適切なポリイソシアネートおよ
びキャッピング剤は、米国特許第3、947,339号に記載されており、これは本明細書に全体が参考として援用される。
【0090】
架橋剤が遊離のイソシアネート基を含有する場合、フィルム形成成分は、2つの包装組成物(1つの包装は架橋剤を含み、そして他の方はヒドロキシル官能基ポリマーおよび他の成分を含む)であり得る。その2つの包装は、適用直前にブレンドされ得る。完全にキャップ化されたポリイソシアネートは、米国特許第3,984,299号に記載されており、これは全体が参考として本明細書に援用される。
【0091】
上記ポリイソシアネートは、脂肪族、脂環式もしくは芳香族ポリイソシアネートまたはそれらの混合物であり得る。高級ポリイソシアネートがジイソシアネートの代わりまたはそれと組合わせて使用され得るが、ジイソシアネートが代表的である。脂肪族ポリイソシアネートまたは脂環式ポリイソシアネートが代表的である。
【0092】
適切な脂肪族ジイソシアネートの例としては、1,4−テトラメチレンジイソシアネートおよび1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートのような直鎖脂肪族ジイソシアネートである。また、脂環式ジイソシアネートが用いられ得る。例としてイソホロンジイソシアネートおよび4,4’−メチレン−ビス−(シクロヘキシルイソシアネート)が挙げられる。適切な芳香族ジイソシアネートの例として、p−フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネートおよび2,4−もしくは2,6−トルエンジイソシアネートである。適切な高級ポリイソシアネートの例としては、トリフェニルメタン−4,4’,4”−トリイソシアネート、1,2,4−ベンゼントリイソシアネートおよびポリメチレンポリフェニルイソシアネートである。ジイソシアネートのビューレットおよびイソシアヌレート、それらの混合物を含み、例えばヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート、ヘキサメチレンジイソシアネートのビューレットおよびイソホロンジイソシアネートのイソシアヌレートもまた適切である。
【0093】
イソシアネートプレポリマー、例えば、ポリイソシアネートとポリオール(例えば、ネオペンチルグリコールもしくはトリメチロールプロパン)、またはポリマーポリオール(例えばポリカプロラクトンジオールおよびトリオール(NCO/OH当量比が1より大)))との反応生成物もまた、適切であり得る。
【0094】
任意の適切な脂肪族、脂環式または芳香族アルキルモノアルコールまたはフェノール性化合物は、本発明の組成物におけるキャップ化ポリイソシアネート架橋剤のキャッピング剤として使用され得、そのような化合物としては、例えばメタノール、エタノールおよびn−ブタノールのような低級脂肪族アルコール;フェニルカルビノールおよびメチルフェニルカルビノールのような芳香族アルキルアルコール;フェノール自身およびクレゾールおよびニトロフェノールのように置換基がコーティング操作に影響を及ぼさない置換フェノールが挙げられる。グリコールエーテルもまたキャッピング剤として使用され得る。適切なグリコールエーテルとしては、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテルおよびプロピレングリコールメチルエーテルが挙げられる。
【0095】
他の適切なキャッピング剤は、本明細書中上記ブロッキング剤、例えばメチルエチルケトオキシム(好ましい)、アセトンオキシムおよびシクロヘキサノンオキシムのようなオキシム、ε−カプロラクタムのようなラクタム、そしてジブチルアミンのようなアミンが挙げられる。
【0096】
存在する場合、上記架橋剤は本発明のコーティング組成物中に、コーティング組成物の全樹脂固形分重量を基礎にして、少なくとも10重量%の量で、代表的には10〜40重量%の範囲であり、そしていくつかの実施形態では14〜30重量%範囲である。
【0097】
アミノ樹脂はホルムアルデヒドとアミンまたはアミドとの反応から得られる。最も通常のアミンまたはアミドはメラミン、尿素またはベンゾグアナミンで、好ましい。しかしながら他のアミンまたはアミドとの縮合体にも使用され得る;例えばパウダーコーティングに有用である高融点の結晶性製品を与えるグリコールウリルのアルデヒド縮合体。使用されるそのアルデヒドは、殆どの場合ホルムアルデヒドで、アセトアルデヒド、クロトンアルデヒドおよびベンズアルデヒドのような他のアルデヒドも使用され得る。
【0098】
アミノ樹脂は、メチロール基を含み得、そして代表的には少なくともこれらの基の一部分でアルコールとエーテル化され硬化応答を改変する。任意の単価アルコールは、メタノール、エタノール、ブタノール、イソブタノールおよびヘキサノールを含みこの目的に使用され得る。
【0099】
適切なアミノ樹脂は、1〜4個の炭素原子を含有するアルコールとエーテル化したメラミン−、尿素−、グリコールウリル(glycouril)またはベンゾグアナミン−ホルムアルデヒド縮合体を含む。
【0100】
上記アミノ樹脂は上記組成物中に、樹脂固形分の全重量を基礎にして、5〜60重量%の範囲の量で存在し得、いくつかの実施形態では15〜50重量%の範囲の量で存在し得る。
【0101】
上記コーティング組成物はまた、架橋剤がポリマーの反応性基と硬化するのを加速する触媒を含有し得る。アミノ樹脂硬化に適切な触媒としては、例えばリン酸およびスルホン酸または置換スルホン酸などの酸が挙げられる。例として、ドデシルベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸などが挙げられる。イソシアネート硬化に適切な触媒としては、酸化ジブチルすず、酸化ジオクチルすず、ジラウリン酸ジブチルすずなどが挙げられる。上記触媒は、熱硬化性組成物の樹脂固形分の全重量を基礎にして、0.05〜5.0重量%、または0.08〜2.0重量%の範囲の量で存在し得る。
【0102】
顔料および充填剤のような他の成分がコーティング組成物に存在し得る。有用な顔料としては、遮蔽顔料(例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アンチモンなど)および有機紫外線吸収顔料または無機紫外線吸収顔料(例えば、酸化鉄、透明赤色または黄色酸化鉄、カーボンブラック、フタロシアニンブルーなど)が挙げられる。有用な充填剤としては硫酸バリウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸カルシウムおよびシリカが挙げられる。充填剤および顔料は上記コーティング組成物の全固形分重量100部を基礎にして重量で60部以下までの量で存在し得る。
【0103】
他の任意の成分としては、抗酸化剤、UV吸収剤およびヒンダードアミン光安定剤、例えばヒンダードフェノール、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、トリアゾ−ル、トリアジン、ベンゾエート、ピペリジニル化合物およびそれらの混合物が挙げられる。これらの成分は、代表的には上記組成物の樹脂固形分の全重量を基礎にして2%までの量で添加される。他の任意の成分としては水混和性物質、反応性希釈剤、共溶媒、癒着扶助、消泡剤、可塑剤、結合増粘材、殺細菌剤などが挙げられる。
【0104】
図1は、本発明のコーティング組成物の合成の1つの実施形態である。この実施形態では合成は、3工程のプロセスとして示される。示されるようにイソシアネートプレポリマーはメチルエチルケトン(MEK)の中でイソホロンジイソシアネート、ジメチルプロピオン酸、Terathane(登録商標)2000(ポリテトラメチレングリコール)およびポリエステルから調製される。上記イソシアネートプレポリマーはアジピン酸ジヒドラジドで鎖延長を受け、そしてジメチルエタノールアミンを含む脱イオン水中に分散され得る。上記MEKは、生成物を形成する分散液から減圧で除去され得る。
【0105】
電気伝導性基材、特に鉄鋼、亜鉛、アルミニウム、銅、マグネシウムなどの金属基材または任意のメッキ鋼、溶融メッキであれ、電気メッキであれまたは他の方法であれ、などのようなメッキ金属は、本発明の組成物でコートされ得る。上記基材をリン酸コンバージョンコーティング、通常亜鉛リン酸コンバージョンコーティングで前処理をしてコンバージョンコーティングをシールするリンスをすることは通例である。前処理は当業者には周知のことである。適切な前処置組成物としては、米国特許第4,793,867号、および同第5,588,989号に開示されており、これはそれら全体が本明細書に参考として援用される。
【0106】
一つの実施形態では本発明のコーティング組成物は、スプレー塗布のような非電気泳動的な手段により基材の上、または既に存在するコーティングの上に堆積され得る。
【0107】
所望の塗布および用途に依存して、本発明のコーティング組成物は、任意の液体コーティング組成物、パウダーコーティング組成物または水性スラリーコーティング組成物に取り込まれ得ることが企図される。本明細書の以下に記載するように、基材に塗布される上記コーティング組成物の固形分%および上記コーティング組成物の厚さは、本発明のコーティング組成物から形成される特定のタイプのコーティングのような要因を基礎にして、即ち上記コーティング組成物がプライマー表面仕上剤、ベースコート、クリアコート、トップコートもしくはそれらの組み合わせまたはモノコート組成物;基材のタイプおよび基材の意図された最終用途に使用されようが、変化し得る。
【0108】
さらに本発明のコーティング組成物が前述の基材の如何なるものも含む基材の上への塗布のための多層コンポジット組成物を形成するのに使用される。例えば、本発明の1つの実施形態では、本発明はプライマーコーティング組成物から堆積されるプライマーおよび上記プライマーの少なくとも一部分に塗布されるトップコートを含む多層コンポジットコーティングであり得、ここで少なくとも1種のプライマー組成物およびトップコート組成物は、本発明のコーティング組成物を含む。別の実施形態では、本発明は顔料入りコーティング組成物から堆積されるベースコートおよびそのベースコートの少なくとも一部の上に塗布されるクリアコート(このクリアコートは、クリアコーティング組成物から堆積される)を含む多層コンポジットコーティングに関し、ここでベースコート組成物およびクリアコーティング組成物の少なくとも1つは本発明のコーティング組成物を含む。
【0109】
本発明の組成物は、当業者に公知の任意の適切なコーティングプロセス、例えば浸漬コーティング、直接ロールコーティング、リバースロールコーティング、カーテンコーティング、スプレーコーティング、ブラシコーティング、静電気スプレーコーティングおよびそれらの組み合わせにより、基材の表面の上または先に形成されたポリマー下塗りの上に塗布され得る。上記基材へ上記コーティング組成物を塗布するための方法および装置は、ある程度、基材物質の形状およびタイプにより決定される。これに関して本発明のコーティングはこれらの塗布方法により金属基材またはプラスチック基材のいずれかの上にも塗布され得る。プラスチック基材の上に塗布された場合、本発明の組成物は、そのプラスチックの熱変形温度より下の温度で少なくとも部分的には硬化される。
【0110】
例えばプライマー/トップコートコンポジットで使用されるコーティング組成物は、ウェットオンウェット塗布で塗布され得る。この例では上記コーティング組成物は上記プライマー層およびトップコートの1方かまたは両方に取り込まれ得る。以下の例は説明の手段としてのみであって、当業者は、上記コーティング組成物が、必ずしもウェットオンウェットで塗布され得るが、そうされる必要はなく、例えばパウダーコーティングのような他のコーティングおよびコーティング方法もまた使用され得ることを認識する。
【0111】
上記プライマーコーティング組成物の実質的に硬化していないコーティングは、基材にプライマーコーティング組成物を塗布する間に基材の表面に形成される。特定の実施形態では、上記基材の表面は上述のように前処理され、20〜50μm電着塗装コーティング(PPG Industriesから市販されている)で電気コートされる。他の適切な電着塗装可能コーティングは、米国特許第4,891,111号、同第4,933,056号および同第5,760,107号に開示されており、本明細書に全体が参考として援用される。
【0112】
上記プライマー組成物は、水性コーティング組成物または溶媒性コーティング組成物であり得る。本発明の1つの実施形態では、上記プライマー組成物は水性組成物を含む。上記プライマーコーティング組成物は本発明のコーティング組成物を含有し得、または従来のプライマーコーティング組成物であり得、例えば米国特許第5,126,393号;同第5,280,067号;同第5,297,665号;同第5,589,228号および同第5,905,132号に記載され、それらは全体が参考として本明細書に援用される。上記プライマー組成物が本発明のコーティング組成物を含有する場合、プライマー組成物の本発明のコーティング組成物の固形分%は、プライマー組成物の樹脂状固形分の全重量を基礎にして5〜100%の範囲であり得、いくつかの実施形態では15〜100重量%の範囲であり得る。
【0113】
上記プライマー組成物は、当業者に公知の適切なコーティングプロセス、例えば浸漬コーティング、直接ロールコーティング、リバースロールコーティング、カーテンコーティング、スプレーコーティング、ブラシコーティング、静電的スプレーコーティングおよびそれらの組合わせにより基材の表面に塗布され得る。上記プライマーコーティングは、下で議論されるように、トップコートする前または脱水する前に硬化され得るが、そうされる必要はない。
【0114】
実質的に硬化していないプライマーコーティングは、プライマーの塗布の間に形成される。本明細書で使用される場合「実質的に硬化していない」コーティングは、コーティング組成物組成物が、基材の表面に塗布した後の、実質的に未架橋であるフィルムまたはコーティング、即ち有意な架橋を誘導するのに十分な温度まで加熱されず熱硬化性分散液と架橋剤との間に化学反応が実質的にない、フィルムまたはコーティングを形成することを意味する。
【0115】
基材にプライマーコーティング組成物を塗布している間、周囲の相対湿度が一般的に30〜90%の範囲であり得る。いくつかの実施形態では60〜80%の範囲であり得る。
【0116】
代表的には水性形態でのプライマーコーティング組成物の基材への塗布の後に、プライマーコーティングは、適用可能ならば、周囲温度(約25℃)または高温度で、フィルムを乾燥させるのが、プライマーコーティング成分を有意には架橋しないのに十分な時間で風乾することにより、フィルムの表面から水および溶媒(もし存在するのであれば)を蒸発させることにより少なくとも部分的には乾燥され得る。加熱は、プライマーコーティングを溶解することなく本質的にプライマーコーティングの上にトップコート組成物が塗布されうることを保証するのに十分短い時間であり得る。適切な乾燥条件はプライマーコーティングの成分および周囲の湿度に依存するが一般的には、80°F〜250°F(20℃〜121℃)の温度で1〜5分の乾燥時間が、プライマーコーティング組成物とトップコート組成物の混合を最短化することを保証するのに適切である。乾燥温度は20℃〜120℃の範囲であり得、代表的には70℃〜90℃の範囲である。また、多層プライマーコーティング組成物は、所望の場合、最適な外観が得られるよう塗布され得る。通常コーティングの間、予め塗布されたコートを「フラッシュ」する;即ち1〜20分間周囲条件に曝露する。
【0117】
代表的には上記多層コンポジットコーティングの最終乾燥および硬化後のプライマーコーティングの厚さは、0.4〜2ミル(10〜50μm)の範囲であり、1.0〜1.5ミル(25〜38μm)の範囲であり得る。
【0118】
トップコート組成物はプライマーコーティングの表面の少なくとも一部に塗布され得、そしていくつかの実施形態では、実質的にはプライマーコーティングを硬化していないでウェットオンウェットで塗布され得る。上記トップコート組成物は、本発明のコーティング組成物を含有し得るか、または例えば米国特許第4,403,003号;同第4,978,708号;同第5,071,904号;同第5,368,944号;同第5,739,194号;同第5,667,847号および同第6,093,497号に記載のような従来のトップコート組成物であり得る。上記の特許は本明細書で参考として全体が援用される。他の適切な組成物は、HWBおよびDWBと言う商品名でPPG Industries、Inc.から市販されているそれらの処方物である。上記トップコート組成物が本発明のコーティング組成物を含有する場合、本発明のコーティング組成物の固形分%は、トップコート組成物の樹脂固形分の全重量を基礎にして5〜100%、場合によっては15〜100重量%の範囲であり得る。
【0119】
トップコート組成物は、ウェットオンウェット用の水性コーティングまたは溶媒性コーティングであり得る。トップコートは、モノコーティングでもよく、ベースコート+クリアコートを取り込む系でもよい。
【0120】
以下の例はウェットオンウェット塗布でベースコート/クリアコートコンポジットで用いられるコーティング組成物を示す。上で議論したように、以下の例は説明のみのつもりで提供され当業者が本発明のコーティング組成物が、必ずしもそうではないが、ウェットオンウェット適用で塗布され、そして例えばパウダーコーティングのような他のコーティングおよび他のコーティング方法も使用され得ることを認識する。
【0121】
ベースコート組成物の実質的に硬化していないコーティングは、ベースコート組成物の塗布の間に、基材の上に形成される。上記ベースコート組成物は、本発明のコーティング組成物を含有し得るか、または本明細書で記載される従来のベースコート組成物であり得る。上記ベースコート組成物が本発明のコーティング組成物を含有する場合、コーティング組成物の固形分%は、ベースコート組成物の樹脂状固形分の全重量を基礎にして、5〜100%の範囲であり得、40〜80重量%の範囲であり得る。熱可塑性フィルム形成物質が使用され得るが、代表的にはベースコートは、少なくとも1種の熱硬化性フィルム形成物質および少なくとも1種の架橋剤を含む架橋可能なコーティングである。本発明に使用される適切なベースコートは、米国特許第5,071,904号に開示されるベースコートであり、それは本明細書に全体が参考として援用される。
【0122】
有機溶媒ベースのベースコートのための適切な樹脂状バインダーは米国特許第4,220,679号、第2欄、24行目から第4欄、40行目および米国特許第5,196,485号、第11欄、7行目から第13欄、22行目に開示されている。カラー+クリアコンポジットの適切な水性ベースコートは、米国特許第4,403,003号に開示されており、それらのベースコートを調製するのに使用される樹脂状組成物は、本発明で使用され得る。また例えば米国特許第4,147,679号に従って調製されるもののような水性ポリウレタンは、上記ベースコートの樹脂状バインダーとして使用され得る。さらに、米国特許第5,071,904号に記載される水性コーティングのような水性コーティングが、ベースコートとして使用され得る。上で議論された特許のそれぞれは、全体が参考として本明細書に援用される。ベースコート組成物の他の成分は、架橋剤および上で議論された顔料のような付加的な成分を含み得る。有用な金属性顔料は、アルミフレーク、真鍮フレーク、コーティングされたマイカ、ニッケルフレーク、すずフレーク、銀フレーク、銅フレークおよびこれらの組み合わせが挙げられる。他の適切な顔料としては、マイカ、酸化鉄、酸化鉛、カーボンブラック、二酸化チタンおよびタルクが挙げられる。バインダーに対する顔料の比率は、所望のフィルム厚さでの必要な遮蔽および適用固形分を提供する限りにおいて広く変化し得る。
【0123】
ベースコート組成物は、本明細書で記載されたような当業者に公知の任意の適切なコーティングプロセスにより基材の表面に塗布されうる。基材にベースコート組成物を塗布する間、周囲相対的湿度は、一般的に30〜90%で、いくつかの実施形態では60〜80%の範囲であり得る。
【0124】
実質的に硬化していないベースコートはベースコートの塗布の間に形成される。代表的には多層コンポジットコーティングをその上に有する基材の硬化の後のベースコートの厚さは、0.2〜2.0ミル(10〜50μm)の範囲であり、いくつかの実施形態では0.5〜1.2ミル(12〜30μm)の範囲であり得る。コーティング層の間のコーティング物質の移動は、例えば20重量%未満で起こり得る。
【0125】
基材にベースコート組成物を塗布した後、そのベースコートは周囲温度(約25℃)または高温度で、フィルム乾燥させるがベースコート組成物の成分を有意に架橋しないのに十分な時間で風乾することにより、フィルム表面から水および/または溶媒を蒸発させることにより少なくとも部分的に乾燥させ得る。加熱は、クリアコーティング組成物が、本質的にベースコートコーティングを溶解しないで、ベースコートコーティングの上に塗布され得ることを保証するのに十分なほんの短時間であり得る。適切な乾燥条件は、ベースコート組成物の成分および周囲湿度に依存するが、一般的には乾燥条件はプライマーコーティングに関して上で議論したものと同様である。また多層ベースコートコーティング組成物は、最適の外観を生じるよう塗布され得る。通常、コートの間、予め塗布されたコートがフラッシュされる;即ち周囲条件に1〜20分曝露される。
【0126】
クリアコート組成物が、その後、実質的に硬化していないベースコート/クリアコートコンポジットコーティングをその上に形成するベースコートコーティングを実質的に硬化していないで、少なくともベースコートの一部に適用される。クリアコート組成物が本発明のコーティング組成物を含有する場合、クリアコーティングと組成物中のポリウレタンの固形分%は、5から100%の範囲であり得、いくつかの実施形態では15〜100重量%の範囲であり得る。クリアコーティング組成物はベースコートの表面にベースコート組成物を塗布するための上述の任意のコーティングプロセスにより塗布され得る。
【0127】
クリアコート組成物は、水性コーティングまたは溶媒性コーティングであり得、代表的には、所望のようにウェットオンウェット適用であり得る。クリアコート組成物が本発明のコーティング組成物を含有する場合、そのクリアコート組成物とは、代表的には水性コーティング−ティングである。代表的にはそのクリアコーティング組成物は、熱可塑性フィルム形成物質が使用され得るが、少なくとも1種の熱硬化性フィルム形成物質および少なくとも1種の架橋剤を含む架橋可能なコーティングである。適切な従来の水性クリアコートは、米国特許第5,098,947号に開示されており、本明細書に参考として全体が援用され、水溶性アクリル樹脂を基礎にしている。有用な溶媒性クリアコートは、米国特許第5,196.485号および同第5,814,410号に開示され、本明細書には全体が参考として援用され、ポリエポキシドおよびポリ酸の硬化剤を含む。適切な従来のパウダークリアコートは、米国特許第5,663,240号に記載されており本明細書に参考として全体が援用され、エポキシ官能性アクリルコポリマーおよびポリカルボン酸架橋剤を含む。クリアコート組成物は、架橋剤および上述のような任意の適当な付加的成分を含み得る。
【0128】
クリアコート組成物を基材に塗布する間、周囲の相対的湿度は一般的には30〜90%の範囲であり得、いくつかの実施形態では60〜80%の範囲であり得る。
【0129】
クリアコーティングと組成物を基材に塗布した後、コンポジットコーティングは、周囲温度(約25℃)または高い温度でフィルムが乾燥するのに十分な期間、風乾してフィルムの表面から水および/または溶媒を蒸発により少なくとも部分的に乾燥され得る。好ましくは、クリアコート組成物は、コンポジットコーティングの架橋可能な成分を架橋させるのに十分な温度と時間で乾燥される適切な乾燥条件は、クリアコート組成物の成分および周囲湿度に依存する。また多層クリアコート組成物は、所望の場合、最適の外観が得られるように塗布され得る。コートの間は、通常予め塗布されたコートがフラッシュされる;即ち1〜20分周囲条件に曝露される。
【0130】
クリアコート/ベースコートコンポジットまたはトップコート/プライマーコンポジットの実質的に硬化していない多層コーティングは塗布の間に基材の表面に形成される。代表的には基材の上の多層コンポジットコーティングの硬化の後のコーティング厚さは、0.5〜4ミル(15〜100μm)、いくつかの実施形態では1.2〜3ミル(30〜75μm)の範囲であり得る。
【0131】
クリアコート組成物またはトップコート組成物の塗布後、コンポジットコーティングをコートした基材は加熱されてコーティングフィルムまたはコーティング層を硬化する。硬化操作において水および/または溶媒はコンポジットコーティングの表面から蒸発し、そしてコーティングフィルムのフィルム形成物質が架橋される。加熱操作または硬化操作は通常160°F 〜350°F(71℃〜177℃)の範囲の温度で行われるが、必要であれば架橋メカニズムを活性化するために必要なようにより低い温度またはより高い温度が使用され得る。乾燥しそして架橋したコンポジット組成物の厚さは、一般的に0.2〜5ミル(5〜125μm)であり、そして0.4〜3ミル(10〜75μm)の範囲であり得る。
【0132】
一つの実施形態では、本発明のコーティング組成物を含む組成物は、電着塗装により塗布され得る。この実施形態において用いられる物質および量ならびに用いられるプロセス条件は、米国特許第6,602,974号および同第6,624,276号に記載されるものを含み、これらは参考として全体が本明細書で援用される。
【0133】
図2は、走査型電子顕微鏡を使用して撮られた本発明のコーティングの1010×の断面の顕微鏡写真(明暗部分は異なる相を示す)であり、そのコーティングの2相連続モルホロジーを明確に示す。図3は、走査型電子顕微鏡を使用して撮られた先行技術のコーティングの1010×の断面の顕微鏡写真であって、それは均質である。
【0134】
本発明のコーティング組成物を含むコーティングは、例えば改善された耐チッピング性などの1以上のより望ましい性質を有するプライマー表面仕上剤、ベースコート、クリアコートおよびモノコートを提供し得る。特定の理論にこだわる意図はないが、2相連続モルホロジーに導くメカニズムおよび組成物効果がこれらの改善された性質を提供すると考えられる。
【0135】
本発明は、以下の実施例を参考としてさらに説明される。以下の実施例は、本発明の単なる説明であって限定するよう意図されていない。他で示されない限り、すべての部分は重量による。
【実施例】
【0136】
(実施例1:水性ポリウレタン(WR−43−4942;VK−93)
本実施例は高分子量ポリウレタンの調製を示す。
【0137】
(イソシアネートプレポリマー)
攪拌機、熱電対、コンデンサーおよび窒素吹き込み口を備え付けた反応容器に1010.3gのTERATHANE(登録商標)2000および50.7gのジメチロールプロピオン酸を仕込んで60℃に加熱した。336.7gのイソホロンジイソシアネートを10分にわたって添加し、次いで356.2gのメチルエチルケトンおよび1.51gのジラウリン酸ジブチルすずを添加した。反応は63℃まで発熱した。反応温度を80℃に上げてその内容物をイソシアネート重量当量が1380になるまで攪拌した。次いで39.4gのジメチロールプロピオン酸を反応フラスコに添加した。内容物をイソシアネート重量当量が2094になるまで攪拌した。
【0138】
得られた生成物は固形分含量83.4重量%(110℃で1時間測定)であり、酸価が21.20mgKOH/gであり、重量平均分子量がTHF中で14971であった。
【0139】
(分散および減圧蒸留)
バッフル、2枚ピッチドブレード攪拌機、熱電対およびコンデンサーを備えた1ガロンの円筒反応フラスコで、2259.9gの脱イオン水、40.6gのアジピン酸ジヒドラジドおよび52.2gのジメチルエタノールアミンの溶液に、76℃の上記プレポリマー1552.0gを、25分にわたって、21℃で500rpmで攪拌しながら添加した。この添加の後の分散温度は、36℃であった。この反応内容物をイソシアネートがFTIRで観察されなくなるまで攪拌した。
【0140】
この分散液を攪拌機、熱電対、コンデンサーおよびレシーバーを備え付けているフラスコに移した。この分散液を60℃に加熱してメチルエチルケトンおよび水を減圧蒸留で除去した。
【0141】
最終分散液は、固形分含量が38.7重量%(110℃で1時間測定)、60rpmで2番のスピンドルを使用して144センチポイズのBrookfield粘度、0.171ミリ当量酸/gの酸含量、0.177ミリ当量塩基/gの塩基含量、pH8.26、0.15重量%の残メチルエチルケトン含量および95536のDMF中で重量平均分子量を有する。
【0142】
(実施例2:ポリエステル中間体(1,6−ヘキサンジオールイソフタレート))
本実施例は水性ポリウレタンのポリエステル中間体の調製を示す。
【0143】
攪拌機、熱電対、グリコール回収装備、コンデンサーおよび窒素吹き込み口を備え付けた反応容器に1994.4gのイソフタル酸、1770.0gの1,6−ヘキサンジオールおよび1.9gの酸化ジブチルすずを、仕込み220℃に加熱した。水を、反応物の酸値が5.82mgKOH/gになるまで、水を除去した。その後グリコール回収装備をDean−Starkトラップに置き換え、75.3gのキシレンを添加し、酸値が0.18mgKOH/gになるまで、水を共沸蒸留で除去した。反応内容物を160℃までに冷却し、そしてキシレンを減圧蒸留で除去した。最終生成物は、97.48重量%の固形分含量(110℃で1時間測定)、酸値0.16mgKOH/g、ヒドロキシル値90.3mgKOH/gおよび水含量0.34%を有した。
【0144】
(実施例3:水性ポリウレタン(WR−78−3394)
本実施例はポリエステル中間体を含有する高分子量ポリウレタンの調製を示す。
【0145】
(イソシアネートプレポリマー)
攪拌機、熱電対、コンデンサーおよび窒素吹き込み口を備え付けた反応容器に1362.0gのTERATHANE(登録商標)2000、280.4gの実施例2の生成物、91.2gのジメチロールプロピオン酸、605.6gのイソホロンジイソシアネート、580.0gのメチルエチルケトンを仕込んで60℃に加熱した。次いで2.72gのジラウリン酸ジブチルすずを添加した。反応は78℃まで発熱した。反応温度を80℃に上げてその内容物をイソシアネート重量当量が1286になるまで攪拌した。次いで71.5gのジメチロールプロピオン酸を反応フラスコに添加した。内容物をイソシアネート重量当量が1882.6になるまで攪拌した。
【0146】
(分散および減圧蒸留)
バッフル、2枚ピッチドブレード攪拌機、熱電対およびコンデンサーを備えた1ガロンの円筒状反応フラスコで、2028.1gの脱イオン水、61.8gのアジピン酸ジヒドラジドおよび50.4gのジメチルエタノールアミンの溶液に、上記プレポリマー1392.0gを、19分にわたって、25℃、510rpmで攪拌しながら添加した。この添加の後の分散温度は、41℃であった。この反応内容物をイソシアネートがFTIRで観察されなくなるまで攪拌した。
【0147】
この分散液を攪拌機、熱電対、コンデンサーおよびレシーバーを備え付けているフラスコに移した。この分散液を60℃に加熱してメチルエチルケトンおよび水を減圧蒸留で除去した。
【0148】
最終分散液は、固形分含量が39.81重量%(110℃で1時間測定)、60rpmで3番のスピンドルを使用して240センチポイズのBrookfield粘度、0.203ミリ当量酸/gの酸含量、0.200ミリ当量塩基/gの塩基含量、pH7.64、およびDMF中で49148の重量平均分子量を有する。
【0149】
(実施例4)
コーティング組成物が、以下のようにグレー顔料ペーストから調製される:
【0150】
【表1】

成分1〜6は、所定の順に一緒に攪拌した。上記顔料部分(7〜11)は滑らかなペーストが形成されるまで攪拌しながら少量づつ添加した。そのペーストはその後20分間、Eiger Minimillで、2500rpm、2mmジルコニアビーズを使用して再循環した。最終生成物は7.5より大きいhegmanを有した。
(実施例5)
本実施例では、実施例4で調製されたペーストを、メラミンを添加して、ウレタン成分を添加せずにコーティング組成物を形成するのに使用し、耐チッピング性能を試験した。その試験結果を下に示す。上記コーティング組成物は以下の成分を攪拌しながら段階的に添加して作製した。
【0151】
【表2】

上記コーティングのpHは、8より大きかった。その粘度を、周囲温度で、4番のFord 流出カップで30秒間測定した。
【0152】
(実施例6)
実施例4で調製したペーストを、メラミンとVK−93(実施例1)を添加して本発明のコーティング組成物の1つの実施形態を形成するのに使用して、耐チッピング性能を試験した。試験結果を下に示す。このコーティング組成物を、攪拌しながら以下の成分を段階的に添加して作製した。
【0153】
【表3】

上記コーティングのpHは8.0より大きかった。その粘度を、周囲温度で、4番のFord 流出カップで30秒間測定した。
【0154】
(実施例7)
実施例4で調製したペーストを、メラミンとブロック化NCOを添加してコーティング組成物を形成するのに使用して、耐チッピング性能を試験した。試験結果を下に示す。このコーティング組成物を、攪拌しながら以下の成分を段階的に添加して作製した。
【0155】
【表4】

上記コーティングのpHは8.0より大きかった。その粘度を、周囲温度で、4番のFord 流出カップで30秒間測定した。
【0156】
実施例5〜7の3つのプライマー組成物を試験しそれらの光沢および耐チッピング性を相互に比較した。試験基材は、ACTメッキパネルであった。これらのパネルはカチオン的に電着可能なプライマー(ED6100HとしてPPG Industries、Inc.、Pittsburgh PAから市販されている)で電気塗装した。調製されたパネルは、ACT Laboratories of Hillsdale、Michiganから入手可能である。
【0157】
上記プライマー組成物を、60%相対湿度、21℃でスプレー塗布(コートの間60秒間周囲フラッシュで、2コート自動スプレー)し、乾燥フィルム厚さ1.20〜1.40ミルのものを得た。上記パネルを5分間周囲温度でフラッシュし、5分間80℃で脱水し、次いで140℃、17分で硬化した。上記パネルを、CHWB303713でトップコートし、銀ベースコート(PPG Industries、Inc.から市販されている)し、周囲条件で5分間フラッシュし、94℃で10分間脱水し、厚さ0.55〜0.66ミルの乾燥フイルムにした。上記パネルをその後NDCT5002 Clearcoat(PPG Industries、Inc.から市販されている)でクリアコートし、周囲条件で10分間フラッシュし、140℃で25分間硬化し、厚さ1.8ミルの乾燥フイルムにした。
【0158】
調製したパネルの光沢を、Autospec,Inc.of Ann Arbor、MIから入手可能な高光沢センサーへッド付きAutospec QMS−BP Unitを使用して測定した。数字が高ければ高いほど、より高くより好ましい光沢であることを示す。
【0159】
調製したパネルの耐チッピング性を、GM Gravelometer(GM試験法 GME60−268、−20℃、サイズ6の石を使用することを除く)で測定した。実際のヒット数を数えて、標準的なGM等級尺度を利用するのではなく、プラマーへのヒットとしてか、金属へのヒットとして報告した。得られたヒットの直径も測定し記録した。
【0160】
試験結果は、下の表5に示される。
【0161】
【表5】

表5に示されるように、ウレタン含有物質でコーティングされた基材は、本発明の1つの実施形態として、系への損傷ヒットが非常に少なく小さかった。それは損傷が基材層に届かなった好ましい態様もまた示した。
【0162】
(実施例8)
グレーのコーティング組成物を調製し、以下に示すように耐チッピング性について試験した。全ての%は、全ペーストについて樹脂固形分、顔料固形分、添加剤固形分を基礎にする。組成物を、以下のように調製した:
【0163】
【化6】

最初の4成分を、個別の顔料ペーストとして、実施例4の顔料ペーストと同じ様式で調製した。これらの4つのペーストを、その後一緒に攪拌した。残りの成分は、上に列挙した順に攪拌しながらサンプルに添加した。得られたコーティングのpHは、8.0より大きく、粘度は、周囲温度で4番のFord流出カップにより30秒間測定した。
【0164】
(実施例9)
本発明の実施形態のグレーのコーティング組成物を調製し、耐チッピング性について試験し、以下に示す。全ての%は、全ペーストについて樹脂固形分、顔料固形分添加剤固形分を基礎にする。組成物を、以下のように調製した:
【0165】
【化7】

最初の4成分を、個別の顔料ペーストとして、実施例4の顔料ペーストと同じ様式で調製した。これらの4つのペーストを、その後、一緒に攪拌した。残りの成分を、上に列挙した順に攪拌しながらサンプルに添加した。得られたコーティングのpHは、8.0より大きく、粘度は、周囲温度で4番のFord流出カップにより30秒間測定した。
【0166】
実施例9に示される本発明のプライマー組成物を、実施例8で示された組成物、溶媒性プライマー、NPX2622 Silver Primer(PPG Industries、Inc.から入手可能)と比較した。2つの異なる試験基材を用いた。用いられた最初の試験基材はACTメッキパネルである。これらのパネルはHilsdale、MichiganのACT Laboratoriesから入手可能である。これらのパネルはカチオン的に電着可能なプライマー(PPG Industries、Inc.から、ED6450HEとして入手可能)で電着塗装した。これらのパネルは、PPG Industries、Inc.Cleveland、OH施設で電着塗装され得る。第2の試験基材は、NPX2622でコーティングされたメッキ基材で、Nissan Motor Co.Ltd.、Smyrna、Georgiaにより調製され、そして提供された。この第2の試験基材もまた、ED6450HEで電着塗装した。
【0167】
実施例8および9のプライマー組成物および溶媒性プライマーサンプルを、60%相対湿度、21℃でスプレー塗布(コートの間60秒間周囲フラッシュで、2コート自動スプレー)し、乾燥フィルム厚さ1.20〜1.40ミルのものを得た。上記パネルにスプレーされた水性組成物を5分間周囲温度でフラッシュし、5分間80℃で脱水し、次いで140℃、17分で硬化した。第2のセットのパネルをフラッシュし、5分間周囲温度でフラッシュし、5分間80℃で脱水し、次いで152℃、25分で硬化し、ベーキングし過ぎのシナリオを促進した。パネルにスプレーされた溶媒性組成物を、周囲温度で10分間フラッシュし、152℃で、25分間で硬化した。
【0168】
上記パネルを、CHWB303713 シルバーベースコート(PPG Industries、Inc.から市販されている)でトップコートし、周囲温度で5分間、フラッシュし、94℃、10分間で脱水し、0.55〜0.66ミルの厚さのドライフィルムを得た。
【0169】
そのパネルを次いでNDCT5002クリアコート(PPG Industries、Inc.から市販されている)でクリアコートし、10分間周囲温度でフラッシュし、140℃、25分間で硬化し、1.8ミルの厚さのドライフィルムを得た。
【0170】
調製したパネルの光沢を、次いで以下の試験を使用して、測定した:光沢は、Byk−Gardner、Columbia、MD.から入手可能な、ミクロ−トリ−光沢メーターで測定した。数値が高ければ高いほど、より高く、より望ましい光沢である。
【0171】
調製したパネルの耐チッピング性もまた、CHIP TEST MEHOD(即ち、真鍮ナットを使用し、−20℃で、Nissan Specification番号 KAG−P−00065による耐ピッチング性(多数チッピング))を使用して測定した。Nissan Specificationに従った等級が使用され、低い等級数は、耐ピッチング性能がよいことを示す。
【0172】
この試験の結果を、以下の表6に示す。
【0173】
【表6】

示されるように、本発明の多層コンポジットコーティングは、CHIP TEST METHODに従った試験で最大耐チッピング性が等級7を有し得る。
【0174】
本発明の樹脂の試験結果は、溶解度パラメータと表面張力における差と耐チッピング性および外観と明らかに強い相関があることを示す。ポリウレタン成分とポリエステル成分の間の溶解度パラメータおよび表面張力の差が増加する場合、耐チッピング性が増加し、一方溶解度パラメータと表面張力が減少する場合、上記コーティングの外観がよくなる。さらに、耐チッピング性能を観察したポリウレタン成分とポリエステル成分のTgの差に傾向がみられる。また、耐チッピング性の悪い樹脂は、優れた耐チッピング性を示す本発明のそれらの樹脂と比較すると有意により高い体積弾性率を有することが観察された。従って、最良の外観的性質(最悪の耐チッピング性)示す樹脂は、展性の破損というより脆い破損を受けると考えられる。
【0175】
試験結果はまた、樹脂およびその測定された性質の実験的挙動から、耐チッピング性はポリウレタンブロックおよびポリエステルブロック、もし存在するのであれば架橋剤(それぞれが体積関連性質(Tg,剪断応力、脆性破壊応力、および体積膨張率)の固有差を有する)が、それらのスピノダル相分離により引き起こされると考えられることを示した。得られたモルホロジーは相分離により生成される表面張力勾配に起因する外観が損なうことを示し得る。
【0176】
外観と耐チッピング性との兼ね合いにより、最適性質を有する樹脂系が得られ得ると考えられる。これらの性質としては:ポリウレタン、ポリエステル、もし存在すれば架橋剤の表面張力の僅かな差;高い変形率(低温)における低い剪断降伏応力(脆性破壊に比較して)を有する樹脂の選択;硬化条件下でスピノダル相分離を起こすポリウレタン成分、ポリエステル成分、もし存在するのであれば架橋剤成分の混合自由エネルギーの差、が挙げられる。混合自由エネルギーの差は、例えば、Mwまたは溶解度パラメーターの改変により達成され得る。
【0177】
溶解度パラメーターおよび表面張力的性質は強く関連し、そしてこれらの間には逆の相関が存在することが観察されているので、本発明は、例えばポリウレタン成分およびポリエステル成分および種々の架橋剤を有する組成物が、改善された耐チッピング的性質で、受容可能な外観を有する組成物を効果的に開発するためのフィルム形成成分の速いスクリーニングを可能にし得る。
【0178】
上で記載する実施形態に対して広い発明の概念から離れることなく変化がなされ得ることは当業者により理解される。したがって本発明は、開示された特定の実施の形態に限定されず、添付の請求項に規定されるように、本発明の趣旨および範囲内の改変を包含するように意図されていることを理解される。
【図面の簡単な説明】
【0179】
【図1】図1は、本発明のコーティング組成物の合成の1つの実施形態である。
【図2】図2は、本発明のコーティングの断面を示す(1010×)走査型電子顕微鏡からの顕微鏡写真である。
【図3】図3は、従来コーティングの断面を示す(1010×)走査型電子顕微鏡からの顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティング組成物であって、
(a)官能基含有樹脂状バインダーを含むフィルム形成成分;および
(b)該フィルム形成成分(a)の官能基と反応性がある少なくとも2つの官能基を有する架橋剤であって、ここで該組成物が塗布され、そして硬化コーティングを形成するよう硬化する場合、該硬化コーティングが2相連続モルホロジーを有することを特徴とする架橋剤を含む、コーティング組成物。
【請求項2】
前記コーティング組成物が、水性組成物を含む、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項3】
請求項1に記載のコーティング組成物であって、ここで前記フィルム形成成分(a)が、ポリウレタン成分、水分散性ポリマー成分、それらの混合物およびそれらのコポリマーの少なくとも1種を含む、コーティング組成物。
【請求項4】
前記フィルム形成成分(a)が、少なくとも1種のポリウレタン成分を含む、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項5】
前記フィルム形成成分(a)が、少なくとも1種の水分散性ポリマー成分を含む、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項6】
請求項1に記載のコーティング組成物であって、ここで前記フィルム形成成分(a)が少なくとも1種のポリウレタン成分および少なくとも1種の水分散性ポリマー成分を含む、官能基含有樹脂状バインダーを含む、コーティング組成物。
【請求項7】
請求項4に記載のコーティング組成物であって、ここで前記ポリウレタン成分が該コーティング組成物の全重量を基礎にして、5〜40重量%の範囲の量で、該コーティング組成物中に存在する、コーティング組成物。
【請求項8】
請求項7に記載のコーティング組成物であって、ここで前記ポリウレタン成分が該コーティング組成物の全重量を基礎にして、5〜30重量%の範囲の量で、該コーティング組成物中に存在する、コーティング組成物。
【請求項9】
請求項4に記載のコーティング組成物であって、ここで前記ポリウレタン成分が、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、アラリファティックポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネートおよびそれらの混合物からなる群より選択されるポリイソシアネートから形成される、コーティング組成物。
【請求項10】
請求項9に記載のコーティング組成物であって、ここで前記ポリイソシアネートがイソホロンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートおよびそれらの混合物からなる群より選択される、コーティング組成物。
【請求項11】
前記ポリイソシアネートが、イソホロンジイソシアネートを含む、請求項10に記載のコーティング組成物。
【請求項12】
請求項9に記載のコーティング組成物であって、ここで前記ポリイソシアネートが、前記ポリウレタン成分が形成される全樹脂状固形分成分を基礎にして、15〜50重量%の範囲の量で存在する、コーティング組成物。
【請求項13】
請求項12に記載のコーティング組成物であって、ここで前記ポリイソシアネートが、前記ポリウレタン成分が形成される全樹脂状固形分成分を基礎にして、20〜35重量%の範囲の量で存在する、コーティング組成物。
【請求項14】
請求項4に記載のコーティング組成物であって、ここで前記ポリウレタン成分が、少なくとも1種のポリイソシアネートと少なくとも1種の酸官能基物質または酸無水物との反応から形成され、そして該酸官能基物質または酸無水物は、該ポリウレタンが形成される他の成分のイソシアネート基もしくはヒドロキシル基と反応する少なくとも1種の官能基を有する、コーティング組成物。
【請求項15】
前記酸官能基物質が、酸官能基カルボン酸を含む、請求項14に記載のコーティング組成物。
【請求項16】
請求項14に記載のコーティング組成物であって、ここで前記酸官能基物質が、前記ポリウレタン成分が形成される全樹脂状固形分成分を基礎にして、1〜20重量%の範囲の量で存在する、コーティング組成物。
【請求項17】
請求項16に記載のコーティング組成物であって、ここで前記酸官能基物質が、前記ポリウレタン成分が形成される全樹脂状固形分成分を基礎にして、6〜10重量%の範囲の量で存在する、コーティング組成物。
【請求項18】
請求項4に記載のコーティング組成物であって、ここで前記ポリウレタン成分が少なくとも1種のポリイソシアネートおよび少なくとも1種のポリエーテルポリオールの反応から形成される、コーティング組成物。
【請求項19】
請求項18に記載のコーティング組成物であって、ここで前記ポリエーテルポリオールが、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ポリプロピレンおよびアルコキシル化ビスフェノールAおよびそれらの混合物からなる群より選択される、コーティング組成物。
【請求項20】
前記ポリエーテルポリオールがポリ(オキシテトラメチレン)グリコールである、請求項19に記載のコーティング組成物。
【請求項21】
請求項18に記載のコーティング組成物であって、ここで前記ポリエーテルポリオールが、前記ポリウレタン成分が形成される全樹脂状固形分成分を基礎にして、70重量%までの範囲の量で存在する、コーティング組成物。
【請求項22】
請求項21に記載のコーティング組成物であって、ここで前記ポリエーテルポリオールが、前記ポリウレタン成分が形成される全樹脂状固形分成分を基礎にして、30〜70重量%までの範囲の量で存在する、コーティング組成物。
【請求項23】
請求項1に記載のコーティング組成物であって、ここで前記フィルム形成成分(a)が、
(1)ポリイソシアネートおよび活性水素含有物質からイソシアネート官能基含有ポリウレタンプレポリマーを形成する工程;および
(2)(1)のプレポリマーと活性水素含有水分散性ポリマー成分とを反応させる工程により形成される官能基含有樹脂状バインダーを含む、コーティング組成物。
【請求項24】
請求項4に記載のコーティング組成物であって、ここで前記ポリウレタン成分が、1モル当たり10,000〜100,000グラムの範囲の重量平均分子量を有する、コーティング組成物。
【請求項25】
請求項24に記載のコーティング組成物であって、ここで前記ポリウレタン成分が、1モル当たり30,000〜90,000グラムの範囲の重量平均分子量を有する、コーティング組成物。
【請求項26】
請求項25に記載のコーティング組成物であって、ここで前記ポリウレタン成分が、1モル当たり40,000〜60,000の範囲の重量平均分子量を有する、コーティング組成物。
【請求項27】
請求項5に記載のコーティング組成物であって、ここで前記水分散性ポリマー成分が、該コーティング組成物が形成される全樹脂状固形分成分を基礎にして、30〜80重量%の範囲の量で存在する、コーティング組成物。
【請求項28】
請求項27に記載のコーティング組成物であって、ここで前記水分散性ポリマー成分が、該コーティング組成物が形成される全樹脂状固形分成分を基礎にして、50〜70重量%の範囲の量で存在する、コーティング組成物。
【請求項29】
請求項5に記載のコーティング組成物であって、ここで前記水分散性ポリマー成分が、1モル当たり2,000〜20,000グラムの範囲の重量平均分子量を有する、コーティング組成物。
【請求項30】
請求項29に記載のコーティング組成物であって、ここで前記水分散性ポリマー成分が、1モルあたり4,000〜12,000グラムの範囲の重量平均分子量を有する、コーティング組成物。
【請求項31】
請求項1に記載のコーティング組成物であって、ここで前記架橋剤がアミノ樹脂、ポリイソシアネートおよびそれらの混合物からなる群より選択される、コーティング組成物。
【請求項32】
前記架橋剤が少なくとも1種のアミノ樹脂を含む、請求項31に記載のコーティング組成物。
【請求項33】
請求項1に記載のコーティング組成物であって、ここで前記架橋剤が、該コーティング組成物が形成される全樹脂状固形分成分を基礎にして10〜40重量%の範囲の量で存在する、コーティング組成物。
【請求項34】
請求項33に記載のコーティング組成物であって、前記架橋剤が、該コーティング組成物が形成される全樹脂状固形分成分を基礎にして14〜30重量%の範囲の量で存在する、コーティング組成物。
【請求項35】
請求項6に記載のコーティング組成物であって、ここで前記ポリウレタン成分と前記水分散性ポリマー成分との混和性が相互作用パラメータ、カイ(χ)が、少なくとも0.5であるような、コーティング組成物。
【請求項36】
請求項6に記載のコーティング組成物であって、ここで前記ポリウレタン成分と前記水分散性ポリマー成分との混和性が、該ポリウレタン成分の溶解度パラメータδと該水分散性ポリマーの溶解度パラメータδとの差(δ−δ)が、少なくとも1であるような、コーティング組成物。
【請求項37】
請求項6に記載のコーティング組成物であって、ここで前記ポリウレタン成分と前記水分散性ポリマー成分との混和性が、該ポリウレタン成分の溶解度パラメータδと該水分散性ポリマーの溶解度パラメータδとの差(δ−δ)が、少なくとも1.5であるような、コーティング組成物。
【請求項38】
請求項6に記載のコーティング組成物であって、ここで前記ポリウレタン成分と前記水分散性ポリマー成分との混和性が、該ポリウレタン成分の溶解度パラメータδと水分散性ポリマーの溶解度パラメータδとの差(δ−δ)が、1.5〜2であるような、コーティング組成物。
【請求項39】
請求項6に記載のコーティング組成物であって、ここで前記ポリウレタン成分と前記水分散性ポリマー成分との混和性が、該ポリウレタン成分の溶解度パラメータδと該水分散性ポリマーの溶解度パラメータδとの差(δ−δ)が、少なくとも2であることを特徴とする、コーティング組成物。
【請求項40】
前記フィルム形成成分(a)が形成される成分が、鎖延長剤をさらに含む、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項41】
前記鎖延長剤がジアミンを含む、請求項40に記載のコーティング組成物。
【請求項42】
請求項41に記載のコーティング組成物であって、ここで前記ジアミン成分が1,2−エチレンジアミン、1,2−プロピレンジアミン、1,8−オクタジアミン、イソホロンジアミン、プロパン−2,2−シクロヘキシルアミン、フェニレンジアミンおよびトルエンジアミンおよびそれらの混合物からなる群より選択される、コーティング組成物。
【請求項43】
請求項40に記載のコーティング組成物であって、ここで前記鎖延長剤が、前記フィルム形成成分(a)が形成される全樹脂状固形分成分を基礎にして、1〜8重量%の範囲の量で存在する、コーティング組成物。
【請求項44】
多層コンポジットコーティングであって、プライマーコーティング組成物から堆積されたプライマーコーティングおよび該プライマーコーティングの少なくとも一部にわたって塗布されたトップコートを含み、ここで該トップコートは、トップコーティング組成物から堆積され、そして該プライマーコーティング組成物は請求項1に記載のコーティング組成物を含む、多層コンポジットコーティング。
【請求項45】
チッピング試験方法による最大耐チッピング性7の格付けを有する、請求項44に記載の多層コンポジットコーティング。
【請求項46】
その上に塗布された多層コート層を有するコート基材であって、その内の少なくとも1層は、請求項1に記載のコーティング組成物を含む、コート基材。
【請求項47】
コーティング組成物であって、以下:
官能基含有樹脂状バインダーを含むフィルム形成成分であって、ここで該組成物が塗布され、そして硬化コーティングを形成するよう硬化する場合、該硬化コーティングが2相連続モルホロジーを有することで特徴づけられるフィルム形成成分を含有する、
コーティング組成物。
【請求項48】
請求項47に記載のコーティング組成物であって、前記フィルム形成成分の官能基と反応性がある少なくとも2つの官能基を有する架橋剤をさらに含む、コーティング組成物。
【請求項49】
多層コンポジットコーティングであって、プライマーコーティング組成物から堆積したプライマーコーティングおよび該プライマーコーティングの少なくとも一部分の上に塗布されたトップコートを含み、ここで該トップコーティングはトップコーティング組成物から堆積され、かつ該プライマーコーティング組成物は、請求項47に記載のコーティング組成物を含む、多層コンポジットコーティング。
【請求項50】
チッピング試験方法による最大耐チッピング性7の格付けを有する、請求項49に記載の多層コンポジットコーティング。
【請求項51】
その上に塗布された多層コート層を有するコート基材であって、その内の少なくとも1層は、請求項47に記載のコーティング組成物を含む、コート基材。
【請求項52】
キャリアに分散されるポリマー部分を含むコーティング組成物であって、該ポリマー部分は、以下:
(a)ポリウレタン成分および水分散性ポリマー成分から形成される官能基含有樹脂状バインダーから構成されるフィルム形成成分;および
(b)フィルム形成成分(a)の官能基と反応性がある少なくとも2つの官能基を有する架橋剤を含む成分から形成される、
ここで該組成物が塗布され、硬化し、そして硬化コーティングを形成する場合、該コーティングが2相連続モルホロジーを有することで特徴づけられる、コーティング組成物。
【請求項53】
前記キャリアが水性組成物を含む、請求項52に記載のコーティング組成物。
【請求項54】
前記キャリアが有機溶媒を含む、請求項53記載のコーティング組成物。
【請求項55】
キャリアに分散されるポリマー部分を含むコーティング組成物であって、該ポリマー部分は、以下:
(a)フィルム形成物質が、ポリウレタン成分および水分散性ポリマー成分から形成される官能基含有樹脂状バインダーから構成される、フィルム形成物質を含む成分から形成され、
ここで該組成物が塗布され、硬化し、そして硬化コーティングを形成する場合、該コーティングが2相連続モルホロジーを有することで特徴づけられる、コーティング組成物。
【請求項56】
請求項55に記載のコーティング組成物であって、前記フィルム形成物質(a)の官能基と反応性がある、少なくとも2つの官能基を有する架橋剤をさらに含む、コーティング組成物。
【請求項57】
水性媒体に分散されたポリマー部分を含む水性コーティング組成物を形成するプロセスであって、該プロセスは、以下:
(a)
(i)官能基含有樹脂状バインダーを含むフィルム形成成分;および
(ii)該フィルム形成成分(i)の官能基と反応性がある少なくとも2つの官能基を有する架橋剤を含む成分からポリマー部分を形成する工程、および
(b)該ポリマー部分を、水性組成物を形成するよう水に分散する工程を包含し、
ここで該組成物が塗布され、硬化し、そして硬化コーティングを形成する場合、該コーティングが2相連続モルホロジーを有することで特徴とする、プロセス。
【請求項58】
請求項57に記載のプロセスであって、前記フィルム形成成分(i)がポリウレタンポリマー、ポリエステルポリマー、それらの混合物およびそれらのコポリマーの内の少なくとも1種を含む、プロセス。
【請求項59】
請求項57に記載のプロセスであって、前記フィルム形成成分(i)が少なくとも1種のポリウレタン成分および少なくとも1種の水分散性ポリマー成分を含む、官能基含有樹脂状バインダーを含む、プロセス。
【請求項60】
請求項59に記載のプロセスであって、ここで前記ポリウレタン成分は、前記コーティング組成物を形成するのに使用される前記水分散性ポリマー成分と前記架橋剤の添加の前に、ポリイソシアネート官能性プレポリマーを形成するために予備反応させるポリイソシアネートおよび活性水素含有物質から形成される、プロセス。
【請求項61】
ポリマー物質を形成するために成分(i)および(ii)に鎖延長剤を添加する工程をさらに含む、請求項57に記載のプロセス。
【請求項62】
水性媒体に分散されたポリマー部分を含む水性コーティング組成物を形成するプロセスであって、該プロセスは、以下:
(a)
(i)官能基含有樹脂状バインダーを含むフィルム形成成分を含む成分からポリマー部分を形成する工程;および
(b)該ポリマー部分を、水性組成物を形成するよう水に分散する工程を含み、ここで該組成物が塗布され、硬化し、そして硬化コーティングを形成する場合、該硬化コーティングが2相連続モルホロジーを有する特性を示す、
プロセス。
【請求項63】
請求項62に記載のプロセスであって、ここで前記ポリマー部分が、フィルム形成成分の官能基と反応性がある少なくとも2つの官能基を有する架橋剤をさらに含む、プロセス。
【請求項64】
コート基材を調製するプロセスであって、
(a)該基材の少なくとも一部の上に、ポリマー部分を含む組成物からコーティングを形成する工程であって、該ポリマー部分は、以下:
(i)ポリウレタン成分およびポリエステル成分から形成される官能基含有樹脂状バインダーから構成されるフィルム形成物質;および
(ii)該フィルム形成物質(i)の官能基と反応性である少なくとも2つの官能基を有する架橋剤を含む成分から形成される、工程、および
(b)該コーティングを少なくとも部分的に硬化する工程
を包含し、ここで該組成物は2相連続モルホロジーを有することで特徴づけられる、プロセス。
【請求項65】
請求項64に記載のプロセスであって、ここで前記ポリウレタン成分と前記水分散性ポリマー成分との混和性が、相互作用パラメータ カイ(χ)が少なくとも0.5であることを特徴とする、プロセス。
【請求項66】
請求項64に記載のプロセスであって、ここで前記ポリウレタン成分と前記水分散性ポリマー成分との混和性が、該ポリウレタン成分の溶解度パラメータδと該水分散性ポリマーの溶解度パラメータδとの差(δ−δ)が、少なくとも1であるような、プロセス。
【請求項67】
請求項64に記載のプロセスであって、ここで前記ポリウレタン成分と前記水分散性ポリマー成分との混和性が、該ポリウレタン成分の溶解度パラメータδと該水分散性ポリマーの溶解度パラメータδとの差(δ−δ)が、少なくとも1.5であるような、プロセス。
【請求項68】
請求項64に記載のプロセスであって、ここで前記ポリウレタン成分と前記水分散性ポリマー成分との混和性が、該ポリウレタン成分の溶解度パラメータδと該水分散性ポリマーの溶解度パラメータδとの差(δ−δ)が、1.5〜2であるような、プロセス。
【請求項69】
請求項64に記載のプロセスであって、ここで前記ポリウレタン成分と前記水分散性ポリマー成分との混和性が、該ポリウレタン成分の溶解度パラメータδと該水分散性ポリマーの溶解度パラメータδとの差(δ−δ)が、少なくとも2であることを特徴とする、プロセス。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2007−511662(P2007−511662A)
【公表日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−541550(P2006−541550)
【出願日】平成16年11月19日(2004.11.19)
【国際出願番号】PCT/US2004/038968
【国際公開番号】WO2005/052077
【国際公開日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【出願人】(599087017)ピーピージー インダストリーズ オハイオ, インコーポレイテッド (267)
【Fターム(参考)】