説明

耐チッピング用塗料組成物

【課題】塩化ビニル樹脂を含まないため使用済み車両の焼却による塩化水素の発生がなくなり、また、スプレー作業時の溶剤発生量が少ないため環境への負荷が少ないという種々の利点を有する耐チッピング用塗料組成物を提供する。
【解決手段】加熱によりイソシアネートを再生するブロックドウレタン化合物(A)、化合物(A)と反応する水酸基及び/又はアミノ基を含有する化合物(B)、及び充填材(C)を含む耐チッピング用塗料組成物であり、化合物(A)と化合物(B)の当量比が0.5〜2.0であって、前記化合物(A)は、解離温度が100℃〜140℃のブロック化剤と反応して得られるジフェニルメタン4,4’−ジイソシアネートのブロックドウレタンであって、融点が100℃〜160℃、粒径0.01μm以上50μm以下の微粉末であり、かつ前記化合物(A)におけるイソシアネートを再生するための加熱温度が100℃以上であるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車に防錆、防音を目的に塗布される耐チッピング用塗料に関し、特に使用済み車両の焼却廃棄時に塩化水素の発生による公害問題を起こさない耐チッピング用塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の床裏、サイドシル、フエールタンク、フロントエプロン、タイヤハウス等に防錆、防音を目的に耐チッピング用塗料が塗布されているが、この塗料は従来、塩化ビニル樹脂を含有する、いわゆる塩ビゾル塗料が主体であった。
【0003】
近年、使用済み車両の焼却廃棄時に塩化水素発生による公害問題がクローズアップされ、塩化ビニル樹脂を含有しない耐チッピング用塗料の開発が急がれていた。
【0004】
その一手段として特許文献1及び2に見られるような水系の耐チッピング用塗料、また、特許文献3及び4に見られるようなアクリル樹脂を主成分としたアクリルゾル系の耐チッピング用塗料が開発された。
【0005】
しかし、水系塗料はそれを導入する際の塗装設備を全てステンレス等の錆びない装置に置き換えねばならず、多大な投資を必要とした。一方アクリルゾル塗料はすでに実用化が進みつつあるが、硬化皮膜の強度が低く薄膜化が困難であった。
【0006】
また、従来よりウレタン樹脂を主成分とした一液型の耐チッピング用塗料も開発されているが、スプレー塗布のため多量の溶剤が含有されていて、安全衛生上好ましくなかった。
【特許文献1】特開平5−163462号公報
【特許文献2】特開平6−157938号公報
【特許文献3】特開平7−233299号公報
【特許文献4】特開平8−295850号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記した問題点に鑑みなされたもので、公害問題、安全衛生問題を低減し、かつ、従来の塗装設備をそのまま使用できる塗料を提供すべく、本発明者等は鋭意研究を重ねた結果、微粉末ブロックドウレタンを使用することにより溶剤分が少なくてもスプレー塗布が容易にでき、また、その焼却時に塩化水素が発生しない塗料を見出し、本発明を完成したものである。
【0008】
本発明は、塩化ビニル樹脂を含まないため使用済み車両の焼却による塩化水素の発生がなくなり、また、スプレー作業時の溶剤発生量が少ないため環境への負荷が少ないという種々の利点を有する耐チッピング用塗料組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の耐チッピング用塗料組成物は、加熱によりイソシアネートを再生するブロックドウレタン化合物(A)、該化合物(A)と反応する水酸基及び/又はアミノ基を含有する化合物(B)、及び充填材(C)を含む耐チッピング用塗料組成物であり、前記化合物(A)と前記化合物(B)の当量比が0.5〜2.0であって、前記化合物(A)は、ブロック化剤と反応して得られるジフェニルメタン4,4’−ジイソシアネートのブロックドウレタンであって、該ブロック化剤の解離温度が100℃〜140℃であり、前記化合物(A)におけるイソシアネートを再生するための加熱温度が100℃以上であり、かつ前記化合物(A)は、融点が100℃〜160℃、粒径0.01μm以上50μm以下の微粉末であり、前記化合物(B)は、分子量300〜3000の2官能基以上の水酸基含有ポリエーテルポリオール、及び/又は分子量200〜6000の1〜3官能基含有ポリアミンであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の耐チッピング用塗料組成物は、塩化ビニル樹脂を含まないため使用済み車両の焼却による塩化水素の発生がなくなり、また、スプレー作業時の溶剤発生量が少ないため環境への負荷が少ないという種々の利点を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の耐チッピング用塗料組成物は、加熱によりイソシアネートを再生するブロックドウレタン化合物(A)、化合物(A)と反応する水酸基及び/又はアミノ基を含有する化合物(B)、及び充填材(C)とからなる耐チッピング用塗料組成物であり、化合物(A)と化合物(B)の当量比が0.5〜2.0であることを特徴とする。上記当量比は0.8〜1.2がさらに好ましい。当量比が0.5未満の場合は硬化不良となる。また、当量比が2.0を超える場合は化合物(B)が過剰となり、硬化物の物性が低下する。
【0012】
前記化合物(A)におけるイソシアネートを再生するための加熱温度が100℃以上であり、かつこの化合物(A)は融点が100℃〜160℃の粒径50μm以下の微粉末であるのが好ましい。化合物(A)の融点が100℃に達しないと塗料製造時に融着して分散不良が起こったり、また、出来上がった塗料の保管時に融着を起こして粘度上昇を起こすなどの不良が発生する。また、化合物(A)の融点が160℃を超えると通常の中塗り炉(130〜150℃、15〜40分)、上塗り炉(130〜150℃、15〜40分)で焼き付けた時、溶融不良が発生して反応不足となったり、硬化皮膜表面が不均一となるなどの不具合が生じる。
【0013】
また、化合物(A)の粒径が50μmを超えると出来上がった塗料をエアレススプレーで吹き付け塗装する時にチップの詰まりが発生するなどの不具合が生じる。さらには、この粒径が50μmを超えると通常の中塗り炉(130〜150℃、15〜40分)、上塗り炉(130〜150℃、15〜40分)で焼き付けた時、溶融不良が発生して反応不足となったり、硬化皮膜表面が不均一になるなどの不具合が生じる。化合物(A)の粒径の下限値については特別の限定はないが、例えば、0.01μm程度の粒径であっても使用可能である。
【0014】
本発明で使用する加熱再生ブロックドウレタン化合物(A)の適当な出発成分は、ジ−又はポリイソシアネート及びこれらの混合物である。但し、これらの成分は、ブロック化剤と反応して得られるブロックドウレタン化合物(A)が常温で固形であることが必要である。
【0015】
適当なジ−又はポリイソシアネートとしては特開平7−278257に見られるような、脂肪族、脂環式、芳香脂肪族及び好ましくは複素環式のポリイソシアネート、例えば、アニリン/ホルムアルデヒド縮合とその後のホスゲン化とによって得られるポリメチレンポリイソシアネートが挙げられる。カルボジイミド基を含むポリイソシアネート、アロファネート基を含むポリイソシアネート、イソシアヌレート基を含むポリイソシアネート、ウレタン及び/又は尿素基を含むポリイソシアネート、アシル化尿素基を含むポリイソシアネート、ビウレット基を含むポリイソシアネート、テロ重合反応によって生成したポリイソシアネート、エステル基を含むポリイソシアネート、好ましくはウレチジオン基を含むジイソシアネート及び尿素基を含むジイソシアネートも適当なものである。
【0016】
具体例としては下記のものが挙げられる。p−キシリレンジイソシアネート、1,5−ジイソシアナトメチルナフタレン、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、1−メチルベンゼン2,5−ジイソシアネート、1,3ジメチルベンゼン4,6−ジイソシアネート、1,4ジメチルベンゼン2,5−ジイソシアネート、1−ニトロベンゼン2,5−ジイソシアネート、1−メトキシベンゼン2,4−ジイソシアネート、1−メトキシベンゼン2,5−ジイソシアネート、1,3−ジメトキシベンゼン4,6−ジイソシアネート、アゾベンゼン4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルエーテル4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルジメチルメタン4,4’−ジイソシアネート、ナフタレン1,5−ジイソシアネート、3,3’−ジメチルビフェニル4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルジスルフィド4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルスルホン4,4’−ジイソシアネート、1−メチルベンゼン2,4,6−トリイソシアネート、1,3,5−トリメチルベンゼン2,4,6−トリイソシアネート、トリフェニルメタン4,4’,4”−トリイソシアネート、4,4’ −ジイソシアナト−(1,2)−ジフェニルエタン、二量体1−メチル−2,4−フェニレンジイソシアネート、二量体1−イソプロピル−2,4−フェニレンジイソシアネート、二量体2,4’−ジイソシアナトジフェニルスルフィド、3,3’−ジイソシアナト−4,4’−ジメチル−N,N’−ジフェニル尿素、3,3’−ジイソシアナト−2,2’−ジメチル−N,N’−ジフェニル尿素、3,3’−ジイソシアナト−2,4’−ジメチル−N,N’−ジフェニル尿素、N,N’−ビス[4(4−イソシアナトフェニルメチル)フェニル]尿素、N,N’−ビス[4(2−イソシアナトフェニルメチル)フェニル]尿素。
【0017】
ブロック化されたウレタン化合物(A)を得るために使用されるブロック化剤としてはオキシム化合物(アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、メチルイソブチルケトオキシムなど)、ラクタム類(ε−カプロラクタムなど)、活性メチレン化合物(マロン酸ジエチル、アセチルアセトン、アセト酢酸エチルなど)、フェノール類(フェノール、m−クレゾールなど)、アルコール類(メタノール、エタノール、n−ブタノールなど)、水酸基含有エーテル(メチルセルソルブ、ブチルセルソルブなど)、水酸基含有エステル(乳酸メチル、乳酸アミルなど)、メルカプタン類(ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタンなど)、酸アミド類(アセトアニリド、アクリルアマイド、ダイマー酸アミドなど)、イミダゾール類(イミダゾール、2−エチルイミダゾールなど)、酸イミド類(コハク酸イミド、フタル酸イミドなど)、アミン類(ジシクロヘキシルアミンなど)及びこれらの2種類以上の混合物が挙げられる。
【0018】
これらのうちオキシム化合物、フェノール類及びアミン類が好ましく、特にメチルエチルケトオキシム、フェノール及びジシクロヘキシルアミンが好ましい。これらはその解離温度が100℃〜140℃と比較的低いため、耐チッピング用塗料として自動車に適用した場合でも充分に反応が進む。
【0019】
前記化合物(B)としては、分子量300〜3000の2官能基以上の水酸基含有ポリエーテルポリオール又はポリエステルポリオール、及び/又は分子量200〜6000の1〜3官能基含有ポリアミンを用いるのが好適である。2官能基以上の水酸基含有ポリエーテルポリオールまたはポリエステルポリオールの化合物(B)の分子量が300に達しない場合は硬化物の物性が低下する。また、分子量が3000を超えると粘度が高くなり、エアレススプレーによる吹き付け作業性に支障を来たす。同様に、1〜3官能基含有ポリアミンの化合物(B)の分子量が200未満であると硬化物の物性が低下する。また、分子量が6000を超えると粘度が高くなり、エアレススプレーによる吹き付け作業性に支障を来たす。
【0020】
本発明で使用するポリエーテルポリオールは2個以上、好ましくは2〜6個の水酸基を有する公知のものから選択する。
【0021】
これらのポリエーテルポリオールとしてはエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、シュークローズ、ポリエチエングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール及び3級窒素含有ポリオールが挙げられる。
【0022】
これらのうち好ましくは3級窒素含有ポリオールで分子量300〜3000が好ましい。この分子量が300に達しない場合は硬化物の物性が低下する。また、分子量が3000を超えると粘度が高くなり、作業性に支障を来たす。
【0023】
ポリエステルポリオールとしては特公昭64−11232に見られるように、ポリカルボン酸(たとえばアジピン酸、マレイン酸、二量化リノール酸などの脂肪族ポリカルボン酸、たとえばフタル酸などの芳香族ポリカルボン酸)と低分子ポリオール又はポリエーテルポリオールとの末端ヒドロキシル基含有ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオールたとえば開始剤[グリコール(エチレングリコールなど)、トリオールなど]をベースとしてこれにカプロラクトン(ε−カプロラクトン、α−メチル−ε−カプロラクトンなど)を有機金属化合物などの触媒の存在下に付加重合させたポリオールが挙げられる。
【0024】
本発明で使用し得るポリアミンとしては公知のポリアルキレンポリアミン、ポリオキシアルキレンアミンなどが挙げられる。
【0025】
具体例としては下記のものが挙げられる。ポリエチレンテトラミン(ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、デカエチレンウンデカアミンなど)、ポリプロピレンポリアミン(ジプロピレントリアミン、トリプロピレンテトラミン、ノナプロピレンデカアミンなど)、ポリブチレンポリアミン(ジブチレントリアミンなど)、ポリ(ペンタメチレン)ポリアミン[ビス(ペンタメチレン)トリアミンなど]、ポリ(ヘキサメチレン)ポリアミン[ビス(ヘキサメチレン)トリアミンなど]、ポリオキシエチレンアミン、ポリオキシプロピレンアミン。
【0026】
これらのうち好ましいのはポリエーテルポリアミンで分子量が約200〜6000、好ましくは400〜5000、より好ましくは1000〜5000である。この分子量が200未満であると硬化物の物性が低下する。また、分子量が6000を超えると粘度が高くなり、作業性に支障を来たす。
【0027】
本発明の耐チッピング用塗料組成物は充填材(C)を必須成分とし、塗料全重量の5〜50重量%、好ましくは10〜30重量%使用する。この使用量が50重量%を超えると塗料が硬化した後の被膜強度が弱く、耐チッピング塗料としての防錆機能を果たせなくなる。また、5重量%に満たないと作業性、特に垂れ性が悪化し規定の塗膜厚みが得られなくなる。
【0028】
一般的に、充填材としてはタルク、クレー、カオリン、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、硫酸バリウム、シリカ、酸化チタン、ケイ酸アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛が挙げられ、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0029】
本発明の組成物は任意に、公知のアクリル樹脂、例えば分子量5〜200万のポリメチルメタクリレート及び、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ノルマルブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、ターシャリブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、エチルヘキシルメタクリレートから選ばれる、2種以上の共重合体等を適宜1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0030】
本発明の組成物は任意に、公知の可塑剤、例えばフタル酸、トリメリット酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、リン酸、スルホン酸、オレイン酸及びステアリン酸と脂肪族又は芳香族結合したOH基を含む化合物、例えばアルコール又はフェノールとのエステル類等を適宜1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0031】
適当なエステルの具体例としては、ベンジルブチルフタレート、ビス−(2−エチルヘキシル)フタレート、ジ−イソノニルフタレート、トリス−(2−エチルヘキシル)トリメリテート、ビス−(2−エチルヘキシル)アジペート、トリクレジルホスフェート、ジフェニルオクチルホスフェート、トリス−(2−エチルヘキシル)ホスフェート、アルキル−スルホン酸フェニルエステル等が挙げられる。
【0032】
本発明の組成物は任意に、公知の添加剤、例えば無機難燃剤(水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム)、吸湿剤(酸化カルシウム、ゼオライト、シラン)、着色剤(染料、顔料)、軽量化材(ガラスバルーン、セラミックバルーン、シラスバルーン、樹脂バルーン)、有機発泡剤(アゾジカルボンアミド、4,4’−オキスビスベンゼンスルホニルヒドラジド、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、ヒドラジンカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル)、加熱膨張性マイクロバルーン、粘度調整剤(界面活性剤、カップリング剤、脂肪族炭化水素)を使用することができる。
【0033】
本発明の組成物は公知の方法で製造することができる。例えば通常の混合装置、縦型2軸ミキサー、プラネタリーミキサー、ボールミル、ロールミル、2軸ブレンダー、ニーダー、縦型高速攪拌機などを用いて混合塗料化することにより得られる。
【0034】
本発明の耐チッピング用塗料組成物は自動車塗装ラインの従来の塗装装置及び塗装条件を何ら変更無くそのまま使用が可能である。また、その後の焼付けも従来と同じ条件で可能である。つまり、通常のエアレススプレー装置にて所定の膜厚(0.2mm〜2mm)に塗布され、その後の中塗り炉(130〜150℃、15〜40分)、上塗り炉(130〜150℃、15〜40分)を通ることにより加熱され、垂れ、亀裂、フクレ、縮みなどの外観品質を損ねることの無い硬化塗膜を得ることができる。
【実施例】
【0035】
以下に実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、これらの実施例は例示的に示されるもので限定的に解釈されるべきでないことはいうまでもない。なお、下記する実施例及び比較例中の部は重量部を示す。
【0036】
(実施例1)
メチルエチルケトオキシムと反応して得られる
ジフェニルメタン4,4’−ジイソシアネートのブロックドウレタン 10部
ポリオキシプロピレントリアミン(分子量:5000) 50部
メチルメタクリレート−ブチルメタクリレートの共重合樹脂
(分子量:80万) 20部
炭酸カルシウム 50部
酸化カルシウム 10部
フタル酸ジイソノニル(DINP) 45部
脂肪族炭化水素(沸点範囲:180〜230℃) 15部
を均一に攪拌分散し、耐チッピング塗料組成物を作成した。
【0037】
この塗料組成物をエアレススプレーポンプを用いて電着塗装鋼板に吹き付け0.4mm厚となるようにした。スプレー性は良好でパターン幅も充分広がり、ミストも少なく均一に塗布することができた。塗布した電着塗装鋼板を130℃の恒温槽にて20分間保持し、加熱焼付けしたところ外観の良好な表面皮膜が得られた。
【0038】
次に、この塗料組成物の性能について表1に示した項目について試験を行い、その結果を表1に示した。表1に示されるように、粘度は70Pa・s、スプレー性は良好、固形分は93%、垂れ性は0mm、接着性は良好、耐チッピング性は50Kg/0.4mmであり、総合評価として、優秀な耐チッピング性を有する塗料組成物であることがわかった。
【0039】
(実施例2)
実施例1のポリオキシプロピレントリアミンをポリオキシエチレン付加3級窒素含有多官能ポリオール(旭電化工業株式会社製の「EDP−450」)20部に代え、DINPを55部、脂肪族炭化水素(沸点範囲:180〜230℃)を20部にした。それ以外は実施例1と同様に実施し、耐チッピング塗料組成物を得た。その性能についても実施例1と同様に評価し、表1に示した。表1から明らかなように、実施例1の塗料組成物よりもやや性能的に低いものの、総合評価として良好な耐チッピング性を有する塗料組成物であることを確認した。
【0040】
(実施例3)
実施例1のポリオキシプロピレントリアミンをポリオキシプロピレンジアミン(分子量:2000)に代えた以外は実施例1と同様に実施し、耐チッピング塗料組成物を得た。その性能についても実施例1と同様に評価し、表1に示した。表1から明らかなように、実施例1の塗料組成物よりもやや性能的に落ちるものの、総合評価として良好な耐チッピング性を有する塗料組成物であることがわかった。
【0041】
(比較例1)
実施例1のブロックドウレタンをポリオキシプロピレングリコールのトリレンジイソシアネートの付加物とメチルエチルケトオキシムとを反応して得られるブロックドウレタンに代え、脂肪族炭化水素(沸点範囲:180〜230℃)を25部にした。それ以外は実施例1と同様に実施し、耐チッピング塗料組成物を得た。その性能についても実施例1と同様に評価し、表1に示した。表1に示されるように、スプレー性以外の性能は良好であるものの、スプレー性が極めて不良なため、総合評価として不良な耐チッピング性塗料組成物であることが判明した。
【0042】
(比較例2)
実施例1のブロックドウレタンをε−カプロラクタムと反応して得られるジフェニルメタン4,4’−ジイソシアネートのブロックドウレタンに代えた以外は実施例1と同様に実施し、耐チッピング塗料組成物を得た。その性能についても実施例1と同様に評価し、表1に示した。表1に示されるように、耐チッピング性以外の性能は良好であるものの、耐チッピング性が極めて不良なため、総合評価として不良な耐チッピング性塗料組成物であることがわかった。
【0043】
【表1】

【0044】
表1における試験方法は次の通りである。
1.粘度
20℃にてBH型粘度計、ローターNo.7、20rpmによる。
【0045】
2.スプレー性
日本グレイ(株)製エアレスポンプ(キングタイプ)を用いてガン前圧力9.8MPa、ノズル#527で塗布した時良好なパターン幅が得られ、テールやミストが少なく塗布ムラなどないこと。
【0046】
スプレー性の評価は次の通りである。
○:良好なパターン幅、テール、ミストなし、塗布ムラなし。
△:パターン幅ややせまい、テール、ミストややあり。
×:パターン幅広がらない、塗布ムラひどく均一塗布できない。
【0047】
3.固形分
40×40×0.2mmのアルミシートの質量を測定し、サンプルを30×30×0.4mm塗布し、秤量する。次に、恒温槽にて140℃、30分加熱し、デシケータ内で冷却後質量を測定する。固形分は次式(1)にて計算する。
固形分(%)=100×(W3−W1)/(W2−W1) ・・・(1)
式(1)において、W1:アルミシートの質量(mg)、W2:アルミシートとサンプルの加熱前の質量(mg)、W3:アルミシートとサンプルの加熱後の質量(mg)。
【0048】
4.垂れ性
150×70×0.8mmの電着塗装鋼板にサンプルを半径4mm×長さ100mmの半円ビード状に塗布して垂直にたてかけ室温で30分放置した後95℃の恒温槽内に8分間加熱後取り出し、垂れ(mm)を測定する。
【0049】
5.接着性
100×25×0.8mmの電着塗装鋼板の端部にサンプルを塗布し、接着部の厚さが3mmとなるようスペーサーをはさみ接着、固定して130℃、20分間焼付けを行う。取り出し後スペーサーを取り除き引張り速度50mm/分でせん断接着力を測定する。
【0050】
接着性の評価は次の通りである。
○:破壊状態が凝集破壊。
△:破壊状態が一部界面破壊。
×:破壊状態が全面破壊。
【0051】
6.耐チッピング性
150×70×0.8mmの電着塗装鋼板にサンプルを0.4mmになるように塗布し、130℃、20分間焼付けを行う。室温に戻ったらM4黄銅ナットを2mの高さから内径2cmの塩ビパイプを通して落下させ、塗膜の素地に達する穴があくまで連続落下させる。試験片の角度は60°とする。
【0052】
7.総合評価
耐チッピング用塗料組成物としての総合的な評価を示す。総合評価の判断は次の通りである。
○:優秀。
○△:良好。
△:使用可能。
×:不良。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱によりイソシアネートを再生するブロックドウレタン化合物(A)、
該化合物(A)と反応する水酸基及び/又はアミノ基を含有する化合物(B)、及び
充填材(C)を含む耐チッピング用塗料組成物であり、
前記化合物(A)と前記化合物(B)の当量比が0.5〜2.0であって、
前記化合物(A)は、ブロック化剤と反応して得られるジフェニルメタン4,4’−ジイソシアネートのブロックドウレタンであって、該ブロック化剤の解離温度が100℃〜140℃であり、前記化合物(A)におけるイソシアネートを再生するための加熱温度が100℃以上であり、かつ前記化合物(A)は、融点が100℃〜160℃、粒径0.01μm以上50μm以下の微粉末であり、
前記化合物(B)は、分子量300〜3000の2官能基以上の水酸基含有ポリエーテルポリオール、及び/又は分子量200〜6000の1〜3官能基含有ポリアミンであることを特徴とする耐チッピング用塗料組成物。

【公開番号】特開2008−189934(P2008−189934A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−56469(P2008−56469)
【出願日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【分割の表示】特願2002−71916(P2002−71916)の分割
【原出願日】平成14年3月15日(2002.3.15)
【出願人】(300043303)セメダインヘンケル株式会社 (7)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】