説明

耐ヒートショック性評価用インサート成形体、及び耐ヒートショック性評価用インサート成形体の製造方法

【課題】測定精度がより高く、より短時間で評価を終了させることができる耐ヒートショック性評価用インサート成形体、及び当該耐ヒートショック性評価用インサート成形体の製造方法を提供する。
【解決手段】ウェルドラインが形成された樹脂部材と、上記樹脂部材によって表面の少なくとも一部が覆われるインサート部材とを備え、上記樹脂部材が上記樹脂部材の表面と樹脂部材側のインサート部材との接合面との間隔が、ウェルドラインから離れるにつれて大きくなる肉厚傾斜部と、肉厚傾斜部の肉厚な両端と連なり肉厚傾斜部と共にインサート部材を囲う整流部とを有する耐ヒートショック性評価用インサート成形体を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐ヒートショック性評価用インサート成形体、及び耐ヒートショック性評価用インサート成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インサート成形法は、樹脂の特性と金属、無機固体等(以下、金属、無機固体等をインサート部材という場合がある。)の素材の特性を生かし、インサート部材を樹脂に埋め込む成形法であり、得られるインサート成形体は樹脂部材とインサート部材とを備える。インサート成形法により得られたインサート成形体は、自動車部品や電気・電子部品、OA機器部品等として使用されている。このようにインサート成形体は、広い分野で使用される有用な材料である。
【0003】
しかしながら、インサート成形体は、成形直後の樹脂部材の割れ、使用中の温度変化による樹脂部材の割れが問題になる場合がある。この問題は、熱可塑性樹脂の温度変化による膨張率や収縮率と、インサート部材の温度変化による膨張率や収縮率とが異なることや、熱可塑性樹脂の応力緩和、クリープ、疲労等に起因すると考えられている。
【0004】
インサート成形体において、温度変化のある環境下における樹脂部材の割れにくい性質(優れた耐ヒートショック性)を有する材料の開発が行われている。耐ヒートショック性に優れた材料の開発には、耐ヒートショック性を評価するための耐ヒートショック性評価用インサート成形体が必要になる。
【0005】
例えば、特許文献1には、耐ヒートショック性評価用インサート成形体が示されている。特許文献1に記載の耐ヒートショック性評価用インサート成形体を用いて、樹脂部材の耐ヒートショック性を評価することは可能である。しかし、耐ヒートショック性に優れた材料を評価する場合、ウェルドラインを有する特許文献1に記載の評価用インサート成形体であっても、樹脂部材に割れが生じるまでに長い時間がかかる等の問題がある。また、ウェルドラインの形成のされ方等が若干異なる程度であっても測定誤差が大きくなる場合がある等の測定精度の問題も存在する。
【0006】
また、特許文献2には、異なる形状の耐ヒートショック性評価用インサート成形体が示されている。この耐ヒートショック性評価用インサート成形体では、ウェルドラインと薄肉部とが一致しているため、ウェルドラインに応力が集中しやすい。その結果、耐ヒートショック性に優れた樹脂組成物から構成される樹脂部材を評価する場合であっても、評価にかかる期間を短縮することができる。また、特許文献2に記載の耐ヒートショック性評価用インサート成形体は、意図的にウェルドラインに応力が集中しやすいような形状にしているため、測定精度も比較的高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−290176号公報
【特許文献2】特開2006−176691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の通り、インサート成形体における樹脂部材の耐ヒートショック性を評価することは可能であるが、測定精度がより高く、より短時間で評価を終了できる耐ヒートショック性評価用インサート成形体が開発されれば、有用である。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、測定精度がより高く、より短時間で評価を終了させることができる耐ヒートショック性評価用インサート成形体、及び当該耐ヒートショック性評価用インサート成形体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、ウェルドラインが形成された樹脂部材と、上記樹脂部材によって、表面の少なくとも一部が覆われるインサート部材とを備え、樹脂部材は上記樹脂部材の表面と樹脂部材側のインサート部材との接合面との間隔が、ウェルドラインから離れるにつれて大きくなる肉厚傾斜部と、肉厚傾斜部の肉厚な両端と連なり肉厚傾斜部と共にインサート部材を囲う整流部とを有し、肉厚傾斜部はウェルドラインを中心として略対称形状であり、整流部は成形時に溶融状態の熱可塑性樹脂組成物が肉厚傾斜部と整流部との一方の境界と他方の境界とに略同時に到達するように整流する形状であり、インサート部材はインサート部材側の樹脂部材との接合面に先端が円弧形状の稜線部を有し、稜線部の位置は樹脂部材側の接合面におけるウェルドラインの位置と略一致する耐ヒートショック性評価用インサート成形体であれば上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には本発明は以下のものを提供する。
【0011】
(1) ウェルドラインが形成された樹脂部材と、前記樹脂部材によって、表面の少なくとも一部が覆われるインサート部材と、を備え、前記樹脂部材は、前記樹脂部材の表面と樹脂部材側のインサート部材との接合面との間隔が、前記ウェルドラインから離れるにつれて大きくなる肉厚傾斜部と、前記肉厚傾斜部の肉厚な両端と連なり前記肉厚傾斜部と共に前記インサート部材を囲う整流部とを有し、前記肉厚傾斜部は、前記ウェルドラインを中心として略対称形状であり、前記整流部は、成形時に、溶融状態の熱可塑性樹脂組成物が、前記肉厚傾斜部と前記整流部との一方の境界と他方の境界とに略同時に到達するように整流する形状であり、前記インサート部材は、インサート部材側の樹脂部材との接合面に、先端が円弧形状の稜線部を有し、前記稜線部の位置は、前記樹脂部材側の接合面におけるウェルドラインの位置と略一致する耐ヒートショック性評価用インサート成形体。
【0012】
(2) 前記インサート部材の硬度がHRC20以上である(1)に記載の耐ヒートショック性評価用インサート成形体。
【0013】
(3) 前記インサート部材は、前記樹脂部材を貫通する(1)又は(2)に記載の耐ヒートショック性評価用インサート成形体。
【0014】
(4) (1)から(3)に記載の耐ヒートショック性評価用インサート成形体の製造方法であって、金型にインサート部材を配置する準備工程と、前記準備工程後に前記金型内に熱可塑性樹脂組成物を注入してインサート部材と樹脂部材とが一体化したインサート成形体を製造する製造工程と、を備え、前記金型のゲートの位置と前記ウェルドラインの一端までの距離と、前記ゲートの位置と前記ウェルドラインの他端の位置までの距離が略一致する耐ヒートショック性評価用インサート成形体の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明の耐ヒートショック性評価用インサート成形体によれば、耐ヒートショック性の測定精度がより高く、より短時間で評価を終了できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の耐ヒートショック性評価用インサート成形体の一実施形態を模式的に示す図であり、(a)は斜視図であり、(b)は平面図である。
【図2】図2は、樹脂部材の一例を模式的に示す図であり、(a)は斜視図であり、(b)は平面図である。
【図3】図3は、ゲートから流れ込んだ溶融状態の熱可塑性樹脂組成物が樹脂部材を形成する様子を、樹脂部材の平面図を用いて模式的に示す図である。
【図4】図4はインサート部材を模式的に示す図であり、(a)は斜視図であり、図(b)は稜線部分が拡大されたインサート部材の平面図である。
【図5】図5は、本実施形態の評価用インサート成形体を製造するために使用する金型の模式図であり、(a)は側面図であり、図5(b)は、インサート部材が配置された状態の金型移動側を模式的に表す平面図である。
【図6】図6は、キャビティ内を流れる熱可塑性樹脂組成物を模式的に示す図であり、(a)はゲートから熱可塑性樹脂組成物が射出された直後を示し、(b)は熱可塑性樹脂組成物の流れが二つに分かれた後を示し、(c)は二つの流れに分かれた熱可塑性樹脂組成物がキャビティ内を充満する様子を示す図であり、(d)は二つの流れが衝突しウェルドラインが形成される様子を示す図である。
【図7】図7は、実施例に使用したインサート部材を模式的に示す図である。
【図8】図8は、比較例で使用したインサート部材を模式的に示す図である。
【図9】図9は、実施例で製造した評価用インサート成形体を模式的に示す図であり、(a)は平面図であり、(b)は側面図である。
【図10】図10は、比較例で製造した評価用インサート成形体を模式的に示す図であり、(a)は斜視図であり、(b)は平面図であり、(c)は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。
【0018】
<耐ヒートショック性評価用インサート成形体>
図1は、本発明の耐ヒートショック性評価用インサート成形体(本明細書において、「評価用インサート成形体」という場合がある)の一実施形態を模式的に示す図であり、(a)は斜視図であり、(b)は平面図である。
【0019】
図1に示すように、本実施形態の評価用インサート成形体1は、樹脂部材10とインサート部材11とを備える。本実施形態では、円柱状のインサート部材11の側面の一部が、樹脂部材10に囲われる。また、本実施形態では、インサート部材11が樹脂部材10を貫通している。
【0020】
図2は、樹脂部材10を模式的に示す図であり、(a)は斜視図であり、(b)は平面図である。
【0021】
先ず、樹脂部材10を構成する材料について簡単に説明する。樹脂部材10は熱可塑性樹脂組成物から構成される。熱可塑性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂の種類は特に限定されず、従来公知の樹脂を使用することができる。また、熱可塑性樹脂組成物は2種以上の熱可塑性樹脂を含んでもよい。また、熱可塑性樹脂組成物は、酸化防止剤、安定剤、離型剤、顔料、核剤等の従来公知の添加剤を含んでもよいし、実質的に熱可塑性樹脂から構成されるものであってもよい。
【0022】
ところで、本発明は、耐ヒートショック性に優れた熱可塑性樹脂組成物から構成される樹脂部材であっても、高い精度で且つ短時間で評価できる点が特徴の一つである。耐ヒートショック性に優れた熱可塑性樹脂組成物としては、ポリアリーレンサルファイド樹脂組成物、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物等が挙げられる。特にエラストマー樹脂を含むポリアリーレンサルファイド樹脂組成物、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、耐ヒートショック性に優れる傾向にある。
【0023】
ポリアリーレンサルファイド樹脂は、繰り返し単位として−(Ar−S)−(ただしArはアリーレン基)で主として構成されたものである。アリーレン基としては、例えばp−フェニレン基、m−フェニレン基、o−フェニレン基、置換フェニレン基、p,p’−ジフェニレンスルフォン基、p,p’−ビフェニレン基、p,p’−ジフェニレンエーテル基、p,p’−ジフェニレンカルボニル基、ナフタレン基等が使用できる。この場合、上記アリーレン基から構成されるアリーレンサルファイド基の中で、同一の繰り返し単位を用いたポリマー、即ちホモポリマーの他に、組成物の加工性という点から、異種繰り返し単位を含んだコポリマーが好ましい場合もある。ホモポリマーとしては、アリーレン基としてp−フェニレン基を用いたp−フェニレンサルファイド基を繰り返し単位とするものが特に好ましく用いられる。又、コポリマーとしては、上記のアリーレン基からなるアリーレンサルファイド基の中で、相異なる2種以上の組合せが使用できるが、中でもp−フェニレンサルファイド基とm−フェニレンサルファイド基を含む組合せが特に好ましく用いられる。この中で、p−フェニレンサルファイド基を70モル%以上、好ましくは80モル%以上含むものが、耐熱性、成形性、機械的特性等の物性上の点から適当である。又、これらのポリアリーレンサルファイド樹脂の中で、2官能性ハロゲン芳香族化合物を主体とするモノマーから縮重合によって得られる実質的に直鎖状構造の高分子量ポリマーが特に好ましく使用できるが、直鎖状構造のポリアリーレンサルファイド樹脂以外にも、縮重合させるときに3個以上のポリハロゲン芳香族化合物等のモノマーを少量用いて、部分的に分岐構造又は架橋構造を形成させたポリマーも使用できるし、比較的低分子量の直鎖状ポリマーを酸素又は酸化剤の存在下、高温で加熱して、酸化架橋又は熱架橋により溶融粘度を上昇させ、成形加工性を改良したポリマーも使用可能である。
【0024】
ポリブチレンテレフタレート樹脂は、少なくともテレフタル酸又はそのエステル形成性誘導体(C1−6のアルキルエステルや酸ハロゲン化物等)を含むジカルボン酸成分と、少なくとも炭素原子数4のアルキレングリコール(1,4−ブタンジオール)又はそのエステル形成性誘導体(アセチル化物等)を含むグリコール成分とを重縮合して得られるポリブチレンテレフタレート樹脂である。ポリブチレンテレフタレート樹脂はホモポリブチレンテレフタレート樹脂に限らず、ブチレンテレフタレート単位を60モル%以上(特に75モル%以上95モル%以下)含有する共重合体であってもよい。
【0025】
エラストマー樹脂としては、ポリオレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、フッ素系エラストマー、シリコーン系エラストマー、ブタジエン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、中心に架橋構造を持つ各種粒子系エラストマー等が挙げられ、1種又は2種以上を用いることができる。
【0026】
図2に示す通り、樹脂部材10は、筒状であり、肉厚傾斜部101と整流部102とウェルドライン103とを有する。
【0027】
肉厚傾斜部101は、図2に示すように、ウェルドライン103を略中心とし二点鎖線で囲まれる部分である。また、肉厚傾斜部101の形状はウェルドライン103を挟んで左右が略対称である。
【0028】
肉厚傾斜部101においては、樹脂部材10の表面である側面Fと樹脂部材側のインサート部材との接合面であるFとの間隔が、ウェルドライン103から離れるにつれて大きくなる。例えば、図2(b)に示すように、間隔dの位置は、間隔dの位置よりもウェルドライン103から離れているため、上記間隔dは上記間隔dより広い。
【0029】
本実施形態においては、肉厚傾斜部101における、ウェルドライン103が延びる方向の断面の形状は、ウェルドライン103上のいずれの位置の断面であってもほぼ同じ形状になる。即ち、ウェルドライン103からの最短距離が同じであれば、樹脂部材10の表面である側面Fと樹脂部材側のインサート部材との接合面であるFとの間隔は、ほぼ同じになる。
【0030】
整流部102は、図2に示す二点鎖線部分で肉厚傾斜部101と連なり、肉厚傾斜部101と共に樹脂部材101の外形である筒状を形成する。
【0031】
整流部102は、成形時に、溶融状態の熱可塑性樹脂組成物が、肉厚傾斜部101と整流部102との一方の境界と他方の境界とに略同時に到達するように整流する形状である。この整流部102の形状について、図3を用いて説明する。
【0032】
図3に、ゲートから流れ込んだ溶融状態の熱可塑性樹脂組成物が樹脂部材10を形成する様子を、樹脂部材10の平面図を用いて模式的に示す。
【0033】
図3は本実施形態の場合であり、図中の矢印は、溶融状態の熱可塑性樹脂組成物の流れを表す。図3に示すように、ゲートから流れて来る熱可塑性樹脂組成物は、インサート部材11の存在により、二つの流れに分かれる。その後、二つの流れがそれぞれ、肉厚傾斜部101と整流部102との境界となる部分に向かう。本実施形態では、ゲートからそれぞれの境界まで、樹脂部材10の表面である側面Fと樹脂部材側のインサート部材との接合面であるFとの間隔が徐々に狭まる。そして、整流部102の形状はゲートを挟んで左右対称になっている。この場合、上記の二つの流れは、同じような速度でそれぞれ上記境界となる部分に向かうため、図3に示すようにゲートの位置から一方の上記境界となる部分までの距離と、他方の上記境界となる部分までの距離とが等しければ、成形時に、溶融状態の熱可塑性樹脂組成物が、肉厚傾斜部101と整流部102との一方の境界と他方の境界とに略同時に到達する。ここで、略同時は同時を含む。なお、略同時で無い場合に、どの程度の時間差が許容されるかは、熱可塑性樹脂組成物の物性等によって異なる。本発明では、整流部102の形状と肉厚傾斜部101の形状とで、ウェルドライン103の位置とインサート部材11が有する稜線の位置とを略一致させることが特徴の一つであるため、ウェルドライン103の位置と稜線の位置とを略一致させることができる範囲であれば、上記時間差は許容される。
【0034】
また、それぞれの境界となる部分は面であり、この面内で熱可塑性樹脂組成物が早く到達する部分と遅く到達する部分との差がほぼ無くなるように、インサート部材11が延びる方向において、整流部102は厚みムラが無いので、インサート部材が延びる方向の断面は切断する位置によらず図3と同じ形状になる。
【0035】
成形時に溶融状態の熱可塑性樹脂組成物が肉厚傾斜部101と整流部102との一方の境界と他方の境界とに略同時に到達するのであれば、整流部102の形状は特に限定されないが、溶融状態の熱可塑性樹脂組成物の流れが安定するように、ゲートから上記各境界となる部分に到達するまでの間に、樹脂部材10の表面である側面Fと樹脂部材側のインサート部材との接合面であるFとの間隔が徐々に狭まることが好ましい。そして、上記間隔が徐々に狭まる形状の場合には、図3に示すようにゲートの位置から一方の上記境界までの距離と、他方の上記境界までの距離とが略一致することが好ましい。また、整流部102の形状が、成形時に溶融状態の熱可塑性樹脂組成物が肉厚傾斜部101と整流部102との一方の境界と他方の境界とに略同時に到達するように整流する形状であることを確認する方法は、ウェルドライン103と後述する稜線とが略一致していることで間接的に確認することが可能である。
【0036】
なお、通常、樹脂部材10における肉厚傾斜部101と整流部102との境界は、境界面等で明確に区別されているわけではない。特に本実施形態のように、ウェルドライン103からゲートの部分まで、樹脂部材10の表面である側面Fと樹脂部材側のインサート部材との接合面であるFとの間隔が徐々に狭まる場合には、樹脂部材10全体を肉厚傾斜部と捉えることもできるが、この場合であっても、便宜上任意の位置で肉厚傾斜部101と整流部102とに分けて捉えることとする。
【0037】
ウェルドライン103は、図2(a)に一点鎖線で示すように、肉厚傾斜部101の中央に存在する。本実施形態において、ウェルドライン103は、樹脂部材10の形成時に、インサート部材11に沿う右回りの熱可塑性樹脂組成物の流れと、左回りの熱可塑性樹脂組成物の流れとが衝突することで形成される。したがって、本実施形態において、ウェルドライン103は、樹脂部材10の形成時における、熱可塑性樹脂組成物の流れる方向に対して、略垂直方向に延びる。
【0038】
図2(b)に示すように、ウェルドライン103の形成される位置における、樹脂部材10の表面である側面Fと樹脂部材側のインサート部材との接合面であるFとの間隔(以下、ウェルドライン103の幅という場合がある)はdで表される。幅dは、樹脂部材を構成する材料の種類等を考慮して、適宜決定される。例えば、dが薄過ぎると、成形直後にウェルドラインが破断する可能性がある。一方、dが厚すぎると、樹脂部材が割れにくくなるだけでなく、耐ヒートショック性の評価の際に割れるサイクル数がばらつく結果、評価精度が劣り、材料間のヒートショック性能を正しく把握できない不具合を生じる可能性がある。
【0039】
続いて、インサート部材11について説明する。本実施形態のインサート部材11を説明する前に、インサート部材を構成する材料について説明する。
【0040】
インサート部材11は、従来からインサート成形体に用いられる一般的なものを使用することができる。つまり、インサート部材11を構成する材料は、金属、無機材料、有機材料のいずれであってもよい。具体的には、鋼、鋳鉄、ステンレス、アルミ、銅、金、銀、真鍮等の金属、熱伝導性のセラミックや炭素材等が挙げられる。また、表面に金属の薄膜が形成された金属等もインサート部材11として使用可能である。金属の薄膜としては、例えばメッキ処理(湿式メッキ処理、乾式メッキ処理等)により形成される薄膜を例示することができる。なお、インサート部材11とは金属、無機材料等の単体のみならず複数の金属や樹脂等を有する複合体のことをいう場合もある。
【0041】
インサート部材11を構成する材料の決定は、例えば、用途、樹脂部材を構成する樹脂材料の熱膨張率等の物性を考慮して、適宜好ましい材料を決定する。
【0042】
本発明においては、インサート部材11の硬度がHRC20以上であることが好ましい。より好ましくはHRC30以上である。インサート部材の硬度が低すぎると、試験回数を経ることで稜線部の先端の曲率半径が大きくなり、評価結果がばらつくのでヒートショック性能を正しく把握できない事態に陥る可能性がある。それだけでなく、インサート部材を再利用する際の樹脂を剥ぎ取る作業や実際の成形取り扱い作業時にインサート部材を傷つけてしまい、評価結果がばらつく事態に陥る可能性がある。このように、インサート部材そのものが弱いとリサイクルシステムの効果を最大化することができない。
【0043】
図4(a)は、本実施形態の評価用インサート成形体1における、インサート部材11を模式的に示す斜視図であり、図4(b)は稜線部分が拡大されたインサート部材11の平面図である。図4に示す通り、インサート部材11は、円柱状であり、側面に直線状の稜線部110が形成されている。本発明において、稜線部110は、ウェルドライン103と接する。
【0044】
図4(b)に示すように、側面の稜線部110の先端は円弧状になっており、この曲率半径rは樹脂部材10を構成する熱可塑性樹脂組成物の種類等を考慮して決定される。基本的に、稜線部110の先端の曲率半径rが小さい(尖っている)と耐ヒートショック性評価の際の故障(樹脂部材の割れ等)までの平均サイクル数は少なくなり、曲率半径rが大きいと(丸くなっている)と耐ヒートショック性評価の際の故障までの平均サイクル数は大きくなる。曲率半径rが小さすぎると、成形直後にウェルド部が破断してしまい試験として成立しない場合がある。一方、曲率半径rが大きすぎると、樹脂部材が割れにくくなるので、ヒートショック試験完了までの期間が長くなる傾向にある。ヒートショック試験が長引くことは、ヒートショック槽を長く運転することで経済性が悪いだけでなく、開発スピードを低下させるという開発活動に悪影響を及ぼすため好ましくない。
【0045】
<耐ヒートショック性評価用インサート成形体の製造方法>
本発明の評価用インサート成形体は、射出成形法で製造される。本発明においては、インサート部材の稜線の位置とウェルドラインの位置とを略一致させる必要がある。詳細は後述するが、本発明では、肉厚傾斜部、整流部の形状によって、溶融状態の熱可塑性樹脂組成物のキャビティ内での流れ方が制御されるため、ゲートの位置を調整することで、稜線の位置とウェルドラインの位置とを一致させることができる。
【0046】
以下、図1に示す評価用インサート成形体1を製造する場合を例に、耐ヒートショック性評価用インサート成形体の製造方法について説明する。図5は、本実施形態の評価用インサート成形体を製造するために使用する金型の模式図であり、図5(a)は側面図であり、図5(b)は、インサート部材が配置された状態の金型移動側を模式的に表す平面図である。
【0047】
図5の金型2は第一金型20と第二金型21とから構成される。第一金型20が金型移動側、第二金型21が金型固定側である。図5に示すように、第一金型20と第二金型21とを合わせた状態で、金型2内にはキャビティが形成される。また、第一金型20と第二金型21とを合わせた状態で、金型2内にインサート部材11(図5中に二点鎖線で示す)を配置できるように、キャビティはインサート部材11を配置するための空間も有する。また、第一金型20側にゲートGが形成されている。インサート部材の稜線部110の位置とウェルドライン103の位置とを略一致させるため、ゲートGは樹脂部材10の高さの略中央となる位置に設けることが好ましい。
【0048】
図5に示すように、第一金型20はキャビティの一部を構成する第一凹部201を備える。また、図5に示すように第二金型21はキャビティの一部を構成する第二凹部211を備える。
【0049】
図5(a)に示すように、本実施形態で使用する金型2では、ゲートGからウェルドライン103の一端になる部分までの距離と、ゲートGからウェルドライン103の他端になる部分までの距離とは略一致する。
【0050】
図5(b)に示すように、金型2のキャビティは、ゲートGが延びる方向から見たときに、稜線部110を通る直線に対して対称であるため、ゲートGの位置から一方の上記境界(肉厚傾斜部101と整流部102との境界)となる部分までの距離と、他方の上記境界となる部分までの距離とが略一致する。
【0051】
続いて、評価用インサート成形体1の具体的な製造方法について説明する。金型2にインサート部材11を配置する準備工程と、準備工程後に金型2内に熱可塑性樹脂組成物を注入してインサート部材11と樹脂部材10とが一体化した評価用インサート成形体1を製造する製造工程と、を備える。
【0052】
準備工程では、図5に示すように、インサート部材11を金型2内に配置する。次いで行う製造工程では、ゲートGから溶融状態の熱可塑性樹脂組成物を金型2内に射出する。図6を用いて、熱可塑性樹脂組成物3が金型2のキャビティ内を流れる様子を説明する。図6はキャビティ内を流れる熱可塑性樹脂組成物を模式的に示す図であり、(a)はゲートから熱可塑性樹脂組成物が射出された直後を示し、(b)は熱可塑性樹脂組成物の流れが二つに分かれた後を示し、(c)は二つの流れに分かれた熱可塑性樹脂組成物がキャビティ内を充満する様子を示す図であり、(d)二つの流れが衝突しウェルドライン103が形成される様子を示す図である。
【0053】
金型2内に射出された熱可塑性樹脂組成物3は、図6(a)に示すように広がりながらインサート部材11に向かう。インサート部材11に到達すると熱可塑性樹脂組成物3は、図6(b)に示すように、インサート部材11を左回りに流れる流れと右回りに流れる流れに分かれる。二つの流れに分かれた熱可塑性樹脂組成物3は、図6(c)に示すように、金型2内を徐々に充満していく。そして、二つの流れ熱可塑性樹脂組成物3の流れは、図6(d)に示すように、稜線部110の位置で衝突する。この衝突によりウェルドライン103が形成される。このようにして、金型2内に熱可塑性樹脂組成物3が満たされ、金型2内で熱可塑性樹脂組成物3が固化することで、樹脂部材10とインサート部材11とが一体化した評価用インサート成形体1が得られる。
【0054】
<耐ヒートショック性評価用インサート成形体の効果>
本実施形態の評価用インサート成形体1は、上述の通り、肉厚傾斜部101と整流部102とを備える。肉厚傾斜部101と整流部102とを備えることで、本実施形態の評価用インサート成形体1は、樹脂部材10が形成されるときに形成されるウェルドライン103の位置を制御することが可能となる。先ず、この効果について説明する。
【0055】
この肉厚傾斜部101には、ウェルドライン103が存在している。肉厚傾斜部101にウェルドライン103が存在していることは、キャビティにおける、上記肉厚傾斜部101の両端になる部分からそれぞれ流れて来た熱可塑性樹脂組成物が衝突することを意味する。また、キャビティにおける肉厚な両端になる部分からウェルドライン103になる部分に向けて樹脂組成物が流れる幅が狭くなるため、肉厚な両端になる部分から流れるそれぞれの樹脂組成物の流れは、ほぼ同じ速度で流れることになる。そして、肉厚傾斜部101がウェルドライン103を中心線として略対称形状であり、さらに、整流部102の形状による効果で肉厚な両端になる部分に熱可塑性樹脂組成物が略同時に到達するため、肉厚傾斜部101になる部分の中央で二つの流れが衝突しウェルドライン103を形成することになる。このように、肉厚傾斜部101と整流部102との存在により、ウェルドライン103の形成の位置が制御される。
【0056】
本実施形態では、上記のウェルドライン103の位置をインサート部材11の稜線部110の位置と合わせる。上記の通り、本実施形態では、ウェルドライン103が形成される位置を、従来よりも正確に制御することができるため、複数の評価用インサート成形体を製造しても、ウェルドライン103の位置と最も薄肉になる稜線部110の位置とがずれることがほとんどない。その結果、使用するサンプルによって、耐ヒートショック性の評価がばらつくことを抑えることができる。また、割れやすい部分である稜線部110の位置と割れやすい部分であるウェルドライン103の位置とが高い精度で一致するため、耐ヒートショック性に優れた材料であっても少ない時間で評価することができる。
【0057】
また、本実施形態では、ウェルドライン103から離れるにつれて徐々に肉厚が大きくなる形状のため、耐ヒートショック性の評価の際に、効率良く応力を薄肉部分(本実施形態ではウェルドライン103が存在する位置である)に集中させることができる。その結果、耐ヒートショック性の評価時に樹脂部材10が割れることが促進されるため、耐ヒートショック性の高い材料ついて、耐ヒートショック性の評価を行う場合であっても、さらに、評価時間を短縮することができる。
【0058】
なお、上記ように、耐ヒートショック性の評価時に樹脂部材10が割れることを促進する場合、材料の耐ヒートショック性の評価で使用する全ての評価用インサート成形体で、ウェルドライン103の位置と稜線部110の位置とが高い精度で一致していなければ、測定結果が大きくバラツキ正確な評価が困難となるが、本実施形態では、上述の通り、ウェルドライン103の形成の位置を、従来よりも正確に制御することができる。このため、上記のような測定結果がばらつくことにより、正確な評価が妨げられる問題はほとんど生じない。
【0059】
また、本実施形態では、インサート部材11は樹脂部材10を貫通する。これにより、評価後の評価用インサート成形体1を樹脂部材10とインサート部材11とに分解しやすくなる。したがって、本実施形態の評価用インサート成形体1であれば、材料のリサイクルも容易である。
【0060】
稜線部110の先端の上記曲率半径r、上記ウェルドラインの幅dを調整することで、樹脂部材10を構成する熱可塑性樹脂組成物の性質に適した評価用インサート成形体とすることができる。曲率半径r及び幅dのいずれかのみを調整することで、評価用インサート成形体の状態を調整してもよいし、両者を調整することで、評価用インサート成形体の状態を調整してもよい。なお、好ましいdは0.6〜1.7である。さらに好ましくは、0.6〜1.4である。
【0061】
また、本実施形態の製造方法では、評価用インサート成形体1を製造するための金型2内における、金型2のゲートの位置とウェルドライン103の一端になる部分までの距離と、上記ゲートの位置とウェルドライン103の他端になる部分の位置までの距離が略一致する。即ち、本実施形態では、ゲートの位置は、ウェルドライン103の中心を通り、ウェルドライン103と直交する直線上に存在することになる。このような金型を使用することで、ウェルドライン103と稜線部110が一致したインサート成形体1が得られる。
【実施例】
【0062】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0063】
<材料>
熱可塑性樹脂組成物1:ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物(ポリプラスチックス社製、「フォートロン(登録商標)6150T6」)
熱可塑性樹脂組成物2:ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物(ポリプラスチックス社製、「フォートロン(登録商標)1130A1」)
熱可塑性樹脂組成物3:ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物(ポリプラスチックス社製、「フォートロン(登録商標)1130T6」)
【0064】
インサート部材1及び2は、図7に示す形状で、HPM1(日立金属社製)から構成され、HRCで表される硬度が40であるものを用いた。なお、インサート部材1は、曲率半径rが0.2mmであり、インサート部材2は、曲率半径rが0.5mmである。インサート部材3は図8の形状で、SUS(S35C)であるものを用いた。図7、図8に示す寸法の単位はmmである。
【0065】
<インサート成形体の製造と評価>
<実施例1>
インサート部材1、熱可塑性樹脂組成物1を用いて、図1に示す形状のインサート成形体を製造した。寸法は図9に示す通りである(ウェルドラインの幅dは1.0mm)。インサート成形体の製造に用いる金型の形状は図5に示す通りである。ゲートは、断面が縦2mm、横3mmの長方形で、インサート成形体の底面から15mmの位置に設けた。
【0066】
シリンダー温度320℃、金型温度150℃、射出時間1.2秒、冷却時間40秒で、金型内に上記熱可塑性樹脂組成物を射出して、インサート成形体を10個製造した。
【0067】
上記のインサート成形体について、耐ヒートショック性の評価を以下の方法で行った。得られたインサート成形体を、冷熱衝撃試験機を用いて180℃にて2時間加熱後、−40℃に降温して2時間冷却後、さらに180℃に昇温する過程を1サイクルとする耐ヒートショック試験を行い、20サイクル毎に取り出して確認を行いながら、インサート成形体にクラックが入るまでのサイクル数を測定し、耐ヒートショック性を評価した。また、クラックが発生するサイクル数の平均(平均寿命サイクル)も算出した。また、インサート成形体についてワイブル分布関数のワイブル係数mを導出し、評価のバラツキを確認した。耐ヒートショックの評価結果、m値を表1に示した。なお、表中の数字は、クラックの入ったインサート成形体の個数を表す。なお、m値はバラツキが小さいほど値は大きくなる。
【0068】
<実施例2>
インサート部材2を用いた以外は、実施例1と同様の方法で実施例2のインサート成形体を製造し、評価した。耐ヒートショックの評価結果、m値を表1に示した。
【0069】
<比較例1>
インサート部材3、熱可塑性樹脂組成物1を用いて、図10(a)に示す形状のインサート成形体を製造した。寸法は図10(b)、(c)に示す通りである。試験片成形用金型(縦22mm、横22mm、高さ30mmの角柱内部に図8に示したインサート部材3をインサートする金型)に、シリンダー温度320℃、金型温度150℃、射出時間0.84秒、冷却時間40秒で、樹脂部の最小肉厚が1mmとなるようにインサート射出成形し、インサート成形体を10個製造した。ゲートは、断面が縦2mm、横2mmの正方形で、インサート成形体の底面から22mmの位置に設けた。実施例1と同様の方法で耐ヒートショック性を評価し、結果を表1に示した。
【0070】
【表1】

【0071】
表1の結果から、本発明の耐ヒートショック性評価用インサート成形体を用いると、従来の耐ヒートショック性評価用インサート成形体を用いた場合に比べ、測定精度がより高いことがわかる。
【0072】
なお、実施例2は、曲率半径が0.5mmと長いため、実施例1に比べ評価に長い時間がかかる。このように、rを調整することで、樹脂部材を構成する熱可塑性樹脂組成物の性質に、より適した評価用インサート成形体とすることができ、より短時間で評価を終了することができる。
【0073】
<実施例3>
熱可塑性樹脂組成物2を用いた以外は、実施例1と同様の方法で実施例3のインサート成形体を製造し、評価した。耐ヒートショックの評価結果、m値を表2に示した。
【0074】
<実施例4>
ウェルドラインの幅dの長さを1.5mmにした以外は、実施例3と同様の方法で実施例4のインサート成形体を製造し、評価した。耐ヒートショックの評価結果、m値を表2に示した。
【0075】
<実施例5>
インサート部材2を用いた以外は、実施例3と同様の方法で実施例5のインサート成形体を製造し、評価した。耐ヒートショックの評価結果、m値を表2に示した。
【0076】
<実施例6>
熱可塑性樹脂組成物3を用いた以外は、実施例1と同様の方法で実施例6のインサート成形体を製造し、評価した。耐ヒートショックの評価結果、m値を表2に示した。
【0077】
<実施例7>
インサート部材2を用いた以外は、実施例6と同様の方法で実施例7のインサート成形体を製造し、評価した。耐ヒートショックの評価結果、m値を表2に示した。
【0078】
【表2】

【0079】
表2の結果から、ウェルドラインの幅は耐ヒートショック性に影響を与えることがわかる。
【0080】
表1、2から明らかなように、本実施例によれば、曲率半径がいずれの値であっても、樹脂部材を構成する樹脂組成物の種類間の耐ヒートショック性の優劣を評価できることが確認された。
【0081】
本実施例では、インサート成形体のインサート部材の稜線の先端の曲率半径が0.2mmの場合に、耐ヒートショック評価用に、より適する。具体的には、曲率半径が0.5mmの場合には評価に長い時間がかかる。このように、rを調整することで、樹脂部材を構成する熱可塑性樹脂組成物の性質に、より適した評価用インサート成形体とすることができ、より短時間で評価を終了することができる。
【符号の説明】
【0082】
1 耐ヒートショック性評価用インサート成形体
10 樹脂部材
101 肉厚傾斜部
102 整流部
103 ウェルドライン
11 インサート部材
110 稜線部
2 金型
20 第一金型
201 第一凹部
21 第二金型
211 第二凹部
3 熱可塑性樹脂組成物
G ゲート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェルドラインが形成された樹脂部材と、
前記樹脂部材によって、表面の少なくとも一部が覆われるインサート部材と、を備え、
前記樹脂部材は、前記樹脂部材の表面と樹脂部材側のインサート部材との接合面との間隔が、前記ウェルドラインから離れるにつれて大きくなる肉厚傾斜部と、前記肉厚傾斜部の肉厚な両端と連なり前記肉厚傾斜部と共に前記インサート部材を囲う整流部とを有し、
前記肉厚傾斜部は、前記ウェルドラインを中心として略対称形状であり、
前記整流部は、成形時に、溶融状態の熱可塑性樹脂組成物が、前記肉厚傾斜部と前記整流部との一方の境界になる部分と他方の境界になる部分とに略同時に到達するように整流する形状であり、
前記インサート部材は、インサート部材側の樹脂部材との接合面に、先端が円弧形状の稜線部を有し、
前記稜線部の位置は、前記樹脂部材側の接合面におけるウェルドラインの位置と略一致する耐ヒートショック性評価用インサート成形体。
【請求項2】
前記インサート部材の硬度がHRC20以上である請求項1に記載の耐ヒートショック性評価用インサート成形体。
【請求項3】
前記インサート部材は、前記樹脂部材を貫通する請求項1又は2に記載の耐ヒートショック性評価用インサート成形体。
【請求項4】
請求項1から3に記載の耐ヒートショック性評価用インサート成形体の製造方法であって、
金型にインサート部材を配置する準備工程と、前記準備工程後に前記金型内に熱可塑性樹脂組成物を注入してインサート部材と樹脂部材とが一体化したインサート成形体を製造する製造工程と、を備え、
前記金型のゲートの位置と前記ウェルドラインの一端までの距離と、前記ゲートの位置と前記ウェルドラインの他端の位置までの距離が略一致する耐ヒートショック性評価用インサート成形体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−103470(P2013−103470A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250567(P2011−250567)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(390006323)ポリプラスチックス株式会社 (302)
【Fターム(参考)】