説明

耐レーザー性に優れた複合材料

【課題】耐レーザー性に優れた複合材料を提供する。
【解決手段】少なくとも2つのガラスと、前記ガラスに挟まれた硬化物からなる複合材料であり、前記硬化物が、複素環骨格または脂環骨格を有し、かつSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する化合物((A)成分)と、1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有するケイ素化合物((B)成分)を含む硬化性組成物をヒドロシリル化反応して得ることができる硬化物である複合材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐レーザー性に優れた複合材料を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、カメラや光ピックアップなどの光学機器では、レンズなどの複数の光学素子を貼り合わせることによって、複合レンズや複合プリズムなど、種々の光学部品が構成されている(特許文献1参照)。
しかしながら、近年用いられるようになった高出力の紫外線レーザー光や、青色や青紫色のレーザー光を透過、反射させると、光学素子を貼り合わせる接着層の着色による透過率の低下や接着面での剥離により、光学素子からなる光学部品を透過、反射する光の波面の変化により収差が大きくなるという課題があった。
このような課題を解決するために、張り合わせの接着剤としてシリコーン樹脂を用いることが提案されているが(特許文献2参照)、シリコーン樹脂は接着力が十分とは言えず、そのため貼り合わせ接着剤とて満足できるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−13061号公報
【特許文献2】特開2007−192970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、光学部品を形成する接着層の接着力が高く、高出力の紫外線レーザー光や、青色や青紫色のレーザー光を用いた際にも接着層が変質することなく、光学部品の性能を維持することができる光学部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記事情に鑑み、本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、
本発明は、少なくとも2つのガラスと、前記ガラスに挟まれた硬化物からなる複合材料であり、前記硬化物が、複素環骨格または脂環骨格を有し、かつSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する化合物((A)成分)と、1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有するケイ素化合物((B)成分)を含む硬化性組成物をヒドロシリル化反応して得ることができる硬化物である複合材料である。
また本発明は、前記(B)成分が、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機系化合物(B−1)と、1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有するケイ素化合物(B−2)を、ヒドロシリル化反応して得ることができる化合物であることを特徴とする。
また本発明は、前記(A)成分が、下記一般式(1)
【0006】
【化1】

【0007】
(式中R1、R2、R3はいずれも有機基であり、これらのうち少なくとも2つはアルケニル基である)で表される有機化合物が好適に使用されるからなる群より選択される少なくとも一つの化合物であることを特徴とする。
また本発明は、前記有機系化合物(B−1)が、複素環骨格または脂環骨格を有し、かつSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する化合物であることを特徴とする。
また本発明は、前記有機系化合物(B−1)が、下記一般式(2)
【0008】
【化2】

【0009】
(式中R1、R2、R3はいずれも有機基であり、これらのうち少なくとも2つはアルケニル基である)で表される有機化合物からなる群より選択される少なくとも一つの化合物であることを特徴とする。
また本発明は、前記硬化物が光学部材を貼り合わせる接着剤である複合材料を含む光学部品である。
また本発明は、レーザー光を透過または反射させる場所で使用される光学部品である。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、光学部品を形成する接着層の接着力が高く、高出力の紫外線レーザー光や、青色や青紫色のレーザー光を用いた際にも接着層が変質することなく、光学部品の性能を維持することができる光学部品を提供することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
[(A)成分]
本発明の(A)成分は、複素環骨格または脂環骨格を有し、かつSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する化合物であれば特に限定されない。
【0012】
本発明の(A)成分としては、原料液の糸引き性が少なく、取扱い性、塗布性が良好であるという観点からは、100℃以下の温度において流動性があるものが好ましい。分子量の下限は50、上限は100,000の任意のものが使用できるが、好ましい下限は60、好ましい上限は5,000、さらに好ましい下限は80、さらに好ましい上限は2,000である。分子量が50より低いものは揮発性が大であり、分子量が100,000を越えるものでは一般に原料が高粘度となり作業性に劣る。
本発明の(A)成分としては、他の成分との均一な混合、および良好な作業性を得るためには、粘度としては23℃において3000Pa・秒未満のものが好ましく、1000Pa・秒未満のものがより好ましく、100Pa・秒未満のものがさらに好ましい。粘度はE型粘度計によって測定することができる。
本発明の(A)成分としては、得られる硬化物の耐レーザー性が高いという観点から、複素環骨格または脂環骨格を有する化合物が好ましい。複素環骨格を有する化合物としては、例えば下記一般式(1)
【0013】
【化3】

【0014】
(式中R1、R2、R3はいずれも有機基であり、これらのうち少なくとも2つはアルケニル基である)が挙げられる。脂環骨格を有する化合物としては、例えばビニルシクロヘキセン、ジシクロペンタジエン、1,2,4−トリビニルシクロヘキサン、ビニルノルボルネンが挙げられる。その中でも耐レーザー性の観点から下記一般式(1)
【0015】
【化4】

【0016】
(式中R1、R2、R3はいずれも有機基であり、これらのうち少なくとも2つはアルケニル基である)で表される化合物がさらに好ましく、トリアリルイソシアヌレートがさらに好ましい。
【0017】
[(B)成分]
本発明の(B)成分は、1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有するケイ素化合物であれば特に限定されないが、(A)成分との相容性の観点から、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機系化合物(B−1)と、1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有するケイ素化合物(B−2)を、ヒドロシリル化反応して得ることができる化合物であることが望ましい。
【0018】
[化合物(B−1)]
本発明の化合物(B−1)は、複素環骨格または脂環骨格を有し、かつSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する化合物であれば特に限定されない。
【0019】
本発明の化合物(B−1)としては、原料液の糸引き性が少なく、取扱い性、塗布性が良好であるという観点からは、100℃以下の温度において流動性があるものが好ましい。分子量の下限は50、上限は100,000の任意のものが使用できるが、好ましい下限は60、好ましい上限は5,000、さらに好ましい下限は80、さらに好ましい上限は2,000である。分子量が50より低いものは揮発性が大であり、分子量が100,000を越えるものでは一般に原料が高粘度となり作業性に劣る。
本発明の化合物(B−1)としては、他の成分との均一な混合、および良好な作業性を得るためには、粘度としては23℃において3000Pa・s未満のものが好ましく、1000Pa・s未満のものがより好ましく、100Pa・s未満のものがさらに好ましい。粘度はE型粘度計によって測定することができる。
本発明の化合物(B−1)としては、得られる硬化物の耐レーザー性が高いという観点から、複素環骨格または脂環骨格を有する化合物が好ましい。複素環骨格を有する化合物としては、例えば下記一般式(2)
【0020】
【化5】

【0021】
(式中R1、R2、R3はいずれも有機基であり、これらのうち少なくとも2つはアルケニル基である)が挙げられる。脂環骨格を有する化合物としては、例えばビニルシクロヘキセン、ジシクロペンタジエン、1,2,4−トリビニルシクロヘキサン、ビニルノルボルネンが挙げられる。その中でも耐レーザー性の観点から下記一般式(2)
【0022】
【化6】

【0023】
(式中R1、R2、R3はいずれも有機基であり、これらのうち少なくとも2つはアルケニル基である)で表される化合物がさらに好ましく、トリアリルイソシアヌレートがさらに好ましい。
[化合物(B−2)]
本発明の化合物(B−2)としては、1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有するケイ素化合物であれば特に制限がなく、例えば国際公開WO96/15194に記載される化合物で、1分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有するもの等が使用できる。
【0024】
これらのうち、入手性の面からは、1分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する鎖状及び/又は環状オルガノポリシロキサンが好ましく、化合物B−1とヒドロシリル化反応して得られた成分(B)の成分(A)との相溶性が良いという観点からは環状オルガノポリシロキサンが好ましい。ヒドロシリル基を含有する環状シロキサンとしては、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1−プロピル−3,5,7−トリハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5−ジハイドロジェン−3,7−ジヘキシル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5−トリハイドロジェン−トリメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタハイドロジェン−1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9,11−ヘキサハイドロジェン−1,3,5,7,9,11−ヘキサメチルシクロシロキサンなどが例示される。入手容易性の観点からは、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンであることが好ましい。
【0025】
上記したような各種化合物(B−2)は単独もしくは2種以上のものを混合して用いることが可能である。
【0026】
化合物(B−2)の分子量は特に制約はなく任意のものが好適に使用できるが、取り扱い性という観点からは低分子量のものが好ましく用いられる。この場合、好ましい分子量の上限は100,000、より好ましくは1,000、さらに好ましくは700である。
【0027】
[ヒドロシリル化触媒]
次に、(A)成分と(B)成分をヒドロシリル化反応させるためのヒドロシリル化触媒について説明する。
ヒドロシリル化触媒としては、ヒドロシリル化反応の触媒活性があれば特に限定されないが、例えば、白金の単体;アルミナ、シリカ、カーボンブラック等の担体に固体白金を担持させたもの;塩化白金酸;塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトン等との錯体;白金−オレフィン錯体(例えば、Pt(CH2=CH2)2(PPh3)2、Pt(CH2=CH2)2Cl2);白金−ビニルシロキサン錯体(例えば、Pt(ViMe2SiOSiMe2Vi)a、Pt[(MeViSiO)4]b);白金−ホスフィン錯体(例えば、Pt(PPh3)4、Pt(PBu3)4);白金−ホスファイト錯体(例えば、Pt[P(OPh)3]4、Pt[P(OBu)3]4)(式中、Meはメチル基、Buはブチル基、Viはビニル基、Phはフェニル基を表し、a、bは、整数を示す。);ジカルボニルジクロロ白金;カールシュテト(Karstedt)触媒;アシュビー(Ashby)の米国特許第3159601号及び第3159662号明細書中に記載された白金−炭化水素複合体;ラモロー(Lamoreaux)の米国特許第3220972号明細書中に記載された白金アルコラート触媒等が挙げられる。さらに、モディック(Modic)の米国特許第3516946号明細書中に記載された塩化白金−オレフィン複合体も本発明において有用である。
【0028】
また、白金化合物以外の触媒の例としては、RhCl(PPh)3、RhCl3、RhAl2O3、RuCl3、IrCl3、FeCl3、AlCl3、PdCl2・2H2O、NiCl2、TiCl4等が挙げられる。
【0029】
これらの中では、触媒活性の点から、塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体等が好ましい。また、これらの触媒は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0030】
また、上記触媒には助触媒を併用することが可能である。助触媒の例としては、トリフェニルホスフィン等のリン系化合物、ジメチルマレート等の1、2−ジエステル系化合物、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−ブチン等のアセチレンアルコール系化合物、単体の硫黄等の硫黄系化合物、トリエチルアミン等のアミン系化合物、水等が挙げられる。
【0031】
助触媒の添加量は特に限定されないが、上記ヒドロシリル化触媒1モルに対して、下限10−5モル、上限10モルの範囲が好ましく、より好ましくは下限10−3モル、上限10モルの範囲である。
上記触媒には助触媒を併用することができる。
【0032】
[その他の添加物]
本発明の硬化性組成物は、シランカップリング剤を添加して基材との接着性を向上させることも可能である。使用できるシランカップリング剤としては、分子中に有機基と反応性のある官能基と加水分解性のケイ素基を各々少なくとも1個有する化合物であれば特に限定されない。
有機基と反応性のある官能基としては、取扱い性の点からエポキシ基、メタクリル基、アクリル基、イソシアネート基、イソシアヌレート基、ビニル基、カルバメート基から選ばれる少なくとも1個の官能基が好ましく、硬化性及び接着性の点から、エポキシ基、メタクリル基、アクリル基が特に好ましい。加水分解性のケイ素基としては取扱い性の点からアルコキシシリル基が好ましく、反応性の点からメトキシシリル基、エトキシシリル基が特に好ましい。
【0033】
好ましいシランカップリング剤としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等のエポキシ官能基を有するアルコキシシラン類:3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、アクリロキシメチルトリメトキシシラン、アクリロキシメチルトリエトキシシラン等のメタクリル基あるいはアクリル基を有するアルコキシシラン類が例示できる。
シランカップリング剤の添加量としては、[(A)成分+(B)成分]100重量部に対しての好ましい添加量の下限は0.1重量部、より好ましくは0.5重量部であり、好ましい添加量の上限は10重量部、より好ましくは5重量部である。添加量が少ないと接着性改良効果が表れにくく、添加量が多いと硬化物の物性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0034】
本発明の硬化性組成物のガラスとの接着性をさらに向上させる目的でシラノール縮合触媒を使用することができる。使用できるシラノール縮合触媒としては、特に限定されるものではないが、具体的に例示すれば、ほう酸トリ−2−エチルヘキシル、ほう酸ノルマルトリオクタデシル、ほう酸トリノルマルオクチル、ほう酸トリフェニル、トリメチレンボレート、トリス(トリメチルシリル)ボレート、ほう酸トリノルマルブチル、ほう酸トリ−sec−ブチル、ほう酸トリ−tert−ブチル、ほう酸トリイソプロピル、ほう酸トリノルマルプロピル、ほう酸トリアリル、ほう酸トリエチル、ほう酸トリメチル、ほう素メトキシエトキサイド等を好適に用いることができる。
【0035】
本発明の硬化性組成物の保存安定性を改良する目的、又は、製造過程でのヒドロシリル化反応の反応性を調整する目的で、硬化遅延剤を使用することができる。硬化遅延剤としては、例えば、脂肪族不飽和結合を含有する化合物、有機リン化合物、有機硫黄化合物、窒素含有化合物、スズ系化合物、有機過酸化物等が挙げられる。これらは、単独で使用してもよく、2種以上併用してよい。
【0036】
脂肪族不飽和結合を含有する化合物としては、プロパルギルアルコール類、エン−イン化合物類、マレイン酸エステル類等が例示される。有機リン化合物としては、トリオルガノフォスフィン類、ジオルガノフォスフィン類、オルガノフォスフォン類、トリオルガノフォスファイト類等が例示される。有機硫黄化合物としては、オルガノメルカプタン類、ジオルガノスルフィド類、硫化水素、ベンゾチアゾール、チアゾール、ベンゾチアゾールジサルファイド等が例示される。窒素含有化合物としては、アンモニア、1〜3級アルキルアミン類、アリールアミン類、尿素、ヒドラジン等が例示される。スズ系化合物としては、ハロゲン化第一スズ2水和物、カルボン酸第一スズ等が例示される。有機過酸化物としては、ジ−tert−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、過安息香酸tert−ブチル等が例示される。
【0037】
これらの硬化遅延剤のうち、遅延活性が良好で原料入手性がよいという観点からは、ベンゾチアゾール、チアゾール、ジメチルマレート、3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ブチン、1−エチニル−1−シクロヘキサノールが好ましい。
【0038】
硬化遅延剤の添加量は、使用するヒドロシリル化触媒1モルに対して、下限10−1モル、上限10モルの範囲が好ましく、より好ましくは下限1モル、上限50モルの範囲である。
【0039】
次に、本発明の硬化性組成物の特性を改質する目的で添加することが可能な種々の樹脂について説明する。当該樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアリレート樹脂、エポキシ樹脂、シアナート樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂等が例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0040】
本発明の硬化性組成物には、必要に応じて無機フィラーを添加してもよい。無機フィラーを添加すると、材料の高強度化や難燃性向上などに効果がある。無機フィラーとしては、微粒子状のものが好ましく、アルミナ、水酸化アルミニウム、溶融シリカ、結晶性シリカ、超微粉無定型シリカ、疎水性超微粉シリカ、タルク、硫酸バリウム、蛍光体等を挙げることができる。
【0041】
フィラーを添加する方法としては、例えば、アルコキシシラン、アシロキシシラン、ハロゲン化シラン等の加水分解性シランモノマー又はオリゴマーや、チタン、アルミニウム等の金属のアルコキシド、アシロキシド又はハロゲン化物等を、本発明の硬化性組成物に添加して、組成物中あるいは組成物の部分反応物中で反応させ、組成物中で無機フィラーを生成させる方法等も挙げることができる。
本発明で得られる硬化性組成物には老化防止剤を添加してもよい。老化防止剤としては、ヒンダートフェノール系等一般に用いられている老化防止剤の他、クエン酸やリン酸、硫黄系老化防止剤等が挙げられる。
【0042】
ヒンダートフェノール系老化防止剤としては、チバスペシャリティーケミカルズ社から入手できるイルガノックス1010をはじめとして、各種のものが用いられる。
【0043】
硫黄系老化防止剤としては、メルカプタン類、メルカプタンの塩類、スルフィドカルボン酸エステル類や、ヒンダードフェノール系スルフィド類を含むスルフィド類、ポリスルフィド類、ジチオカルボン酸塩類、チオウレア類、チオホスフェイト類、スルホニウム化合物、チオアルデヒド類、チオケトン類、メルカプタール類、メルカプトール類、モノチオ酸類、ポリチオ酸類、チオアミド類、スルホキシド類等が挙げられる。
【0044】
また、これらの老化防止剤は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0045】
本発明で得られる硬化性組成物にはラジカル禁止剤を添加してもよい。ラジカル禁止剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−3−メチルフェノール(BHT)、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、テトラキス(メチレン−3(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタン等のフェノール系ラジカル禁止剤や、フェニル−β−ナフチルアミン、α−ナフチルアミン、N,N’−第二ブチル−p−フェニレンジアミン、フェノチアジン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン等のアミン系ラジカル禁止剤等が挙げられる。
【0046】
また、これらのラジカル禁止剤は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0047】
本発明で得られる硬化性組成物には紫外線吸収剤を添加してもよい。紫外線吸収剤としては、例えば2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジン)セバケート等が挙げられる。
【0048】
また、これらの紫外線吸収剤は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0049】
本発明の硬化性組成物には、その他、難燃剤、界面活性剤、消泡剤、乳化剤、レベリング剤、はじき防止剤、アンチモン−ビスマス等のイオントラップ剤、チクソ性付与剤、粘着性付与剤、オゾン劣化防止剤、光安定剤、増粘剤、可塑剤、酸化防止剤、熱安定剤、加工安定剤、反応性希釈剤、帯電防止剤、放射線遮断剤、核剤、リン系過酸化物分解剤、滑剤、顔料、金属不活性化剤、接着性付与剤、物性調整剤等を、本発明の目的及び効果を損なわない範囲において添加することができる。
[硬化性組成物]
本発明の硬化性組成物は、上記各成分を混合等することにより得られる。
【0050】
本発明の硬化性組成物は、硬化したときに気泡の原因となる揮発分を、硬化前に真空脱揮等により取り除いておくことが好ましい。
【0051】
本発明の硬化性組成物の粘度は、ガラスへの滴下、塗布、押し広げの観点から0.01Pa・秒から20Pa・秒の範囲であることが好ましく、0.1Pa.秒から5Pa・秒の範囲にあることがさらに好ましい。
【0052】
[ガラス]
本発明のガラスは、特に限定はないが、求められる屈折率、分散能、波長による透過率の精度の観点から、光学ガラスであることが好ましい。
[複合材料の作製方法]
本発明の複合材料を作製する方法としては、はじめに硬化物を作製し、それをガラスで挟んで任意の方法で固定してもよいし、硬化性組成物を接着剤として用いてガラスを貼り合わせてもよいが、光学部品として求められる屈折率、分散能、波長による透過率の精度の観点からは、硬化性組成物を接着剤として用いてガラスを貼り合わせる方法が好ましい。
硬化性組成物を硬化させる温度としては特に限定されないが、50℃から280℃の範囲で加熱して硬化させるのが好ましく、60℃から200℃の範囲がさらに好ましい。硬化温度が低すぎると十分に硬化させるための時間が長くなり、また十分に硬化しない可能性があり、必要な特性が発揮できない恐れがある。また硬化温度が高すぎると製品の熱劣化が生じ易くなる傾向がある。
【0053】
硬化は一定の温度で行ってもよいが、必要に応じて多段階あるいは連続的に温度を変化させてもよい。一定の温度で行うより、多段階的あるいは連続的に温度を上昇させながら反応させた方が、歪のない均一な硬化物が得られ易いという点で好ましい。
【0054】
上記硬化性組成物を接着剤として用いて上記ガラスを貼り合わせる方法としては特に限定されないが、例えば張り合わせるガラスの接着面の少なくとも一方に、上記硬化性組成物の適当量を塗布し、貼り合わせるガラスを互いに押圧して硬化性組成物を接着面に押し広げる。この状態で、上記と同様の温度にて接着剤を硬化し複合材料を作製することができる。
【0055】
上記ガラスを貼り合わせて複合材料となったときの接着剤の厚みは、1μmから20μmであることが好ましく、5μmから15μmの範囲であることがさらに好ましい。厚みが1μm未満であると接着力が不十分となり好ましくなく、20μmを超えると光学部品の光学特性に影響を与えるため好ましくない。
【0056】
硬化時の圧力も必要に応じて種々設定でき、常圧、高圧又は減圧状態で反応させることもできる。
【0057】
本発明の複合材料は、光学部品として、例えば複合レンズ、複合プリズム、回折格子、光学フィルタ、偏光フィルタ、位相フィルタ等に適用することができる。
【実施例】
【0058】
以下に、本発明の実施例および比較例を示すが、本発明は以下によって限定されるものではない。
【0059】
(合成例1)
2Lオートクレーブにトルエン696g、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン463gを入れ、気相部を窒素で置換した後、ジャケット温105℃で加熱、攪拌した。トリアリルイソシアヌレート80g、トルエン80g及び白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)0.050gの混合液を40分かけて滴下した。滴下終了から3時間後にH−NMRでアリル基の反応率が95%以上であることを確認し、冷却により反応を終了した。1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの未反応率は57%だった。未反応の1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンとトルエンを合計1
,000ppm以下まで減圧留去し、無色透明の液体を得た。
【0060】
本生成物の粘度は3.0Pa・秒であった。本生成物のGPC測定をすると多峰性のクロマトグラムが得られ、混合物であることが示唆された。本生成物は、H−NMRの測定より、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンのSiH基の一部がトリアリルイソシアヌレートのアリル基と反応したもの(一般式(3)、反応物Aと称す)であり、8.8mmol/gのSiH基を含有していることがわかった。
【0061】
【化7】

【0062】
(実施例1)
トリアリルイソシアヌレート 24.0g、白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体のキシレン溶液(白金3重量%含有)0.06gを混合し、攪拌、真空脱泡したものをA液とした。また、合成例1で調製した反応物A 36.0g、1−エチニルシクロヘキサノール 0.06g、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン 1.5gを混合し、攪拌、脱泡したものをB液とした。その後A液とB液を混合させたものを遊星式攪拌脱泡機にて攪拌・脱泡を行い、硬化性組成物を得た。粘度は0.4Pa・秒であった。
【0063】
(比較例1)
ゲレスト社製ビニル末端ポリジメチルシロキサン DMS−V31 20.0g、ゲレスト社製メチルハイドロシロキサン ジメチルシロキサン コポリマー HMS−3010.5g、白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体のキシレン溶液(白金3重量%含有)0.0001g、1−エチニルシクロヘキサノール 0.0005gを混合し、攪拌、真空脱泡を行い、硬化性組成物を得た。
【0064】
(比較例2)
エポキシ樹脂10.0g(日本ペルノックス製、商品名:ME540)、酸無水物6.0g(日本ペルノックス製、商品名:HV540)を混合し、攪拌、真空脱泡を行い、硬化性組成物を得た。
【0065】
(評価方法)
以下の評価を実施し表1に結果を示した。
【0066】
<耐レーザー性>
30×10mm、厚み1mmの光学ガラス(BK7)2枚を、実施例1、比較例1、2で得られた硬化性組成物で貼り合わせ、その複合材料を試験片とした。試験片作製の硬化条件は150℃1時間とした。また、比較例2の硬化性組成物を用いて、2枚のガラス板に3mm厚みのシリコーンゴムシートをスペーサーとしてはさみこんで作製したセルに流し、150℃3時間で硬化させたあと、ガラスセルをスペーサーを外し、厚さ約3mmの無色透明の硬化物を得た。それを30×10mmの大きさに切り、試験片とした。これを比較3とした。例次に、光学ガラスを貼り合わせた試験片については、405nmのレーザー光が試験片の接着面に対して垂直に入射するように光学系を組み、また3mmの厚みの硬化物については405nmのレーザー光が最も広い面に対して垂直に入射するように光学系を組み、そのときのレーザー光のパワー密度を50 m W / m m に調整した。またヒーターで試験片が60℃になるよう温調した。
試験サンプルの耐レーザー性の評価については、上記条件にて、500 時間のレーザー光連続照射を行い、試験前後で試験サンプルを透過するレーザー光の強度変化の変化をレーザーパワーメーターを用いて調べた。
【0067】
比較例2の3mmの厚みの硬化物については、レーザ照射箇所の表面変化の有無を3次元表面構造解析顕微鏡(ZYGO社製、製品名:ZYGO New View 5030)で確認した。
【0068】
<接着性>
硬化性組成物を50μmのブレードで塗布し、その塗膜に、はガラス製のダイをスタンプし、硬化性組成物をダイに付着させた。このダイを、硬化性組成物が付着した面を下方にしてガラス基板に乗せ、150℃1時間の条件にて硬化して試験片を作製した。得られた試験片を用いてボンドテスター試験機(デイジ社製、シリーズ4000ボンドテスター試験機、DS100KGロードセル)により接着強度を評価した。
【0069】
【表1】

【0070】
表1の結果からわかるように、本発明による複合材料は、比較例1の複合材料と比べて、ガラス貼り合わせの接着層の接着力が高いことがわかった。また比較例2の複合材料、硬化物と比べて耐レーザー性に優れることがわかった。またガラスで挟まない比較例2の硬化物は、レーザーアブレーションによると思われるへこみが観察された。強力なレーザ光を固体に照射すると、表面から原子、分子、クラスターが蒸発して固体表面が削り取られる現象をレーザーアブレーションという。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つのガラスと、前記ガラスに挟まれた硬化物からなる複合材料であり、前記硬化物が、複素環骨格または脂環骨格を有し、かつSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する化合物((A)成分)と、1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有するケイ素化合物((B)成分)を含む硬化性組成物をヒドロシリル化反応して得ることができる硬化物である複合材料。
【請求項2】
前記(B)成分が、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機系化合物(B−1)と、1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有するケイ素化合物(B−2)を、ヒドロシリル化反応して得ることができる化合物であることを特徴とする請求項1記載の複合材料。
【請求項3】
前記(A)成分が、下記一般式(1)
【化1】


(式中R1、R2、R3はいずれも有機基であり、これらのうち少なくとも2つはアルケニル基である)で表される有機化合物からなる群より選択される少なくとも一つの化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載の複合材料。
【請求項4】
前記有機系化合物(B−1)が、複素環骨格または脂環骨格を有し、かつSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項5】
前記有機系化合物(B−1)が、下記一般式(2)
【化2】


(式中R1、R2、R3はいずれも有機基であり、これらのうち少なくとも2つはアルケニル基である)で表される有機化合物からなる群より選択される少なくとも一つの化合物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に1〜4記載の複合材料。
【請求項6】
前記硬化物がガラスを貼り合わせる接着剤である請求項1〜5のいずれか一項に記載の複合材料を含む光学部品。
【請求項7】
前記ガラスが光学ガラスであり、前記複合材料が、レーザー光を透過または反射させる場所で使用される、請求項6に記載の光学部品。





【公開番号】特開2012−86997(P2012−86997A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−233688(P2010−233688)
【出願日】平成22年10月18日(2010.10.18)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】