説明

耐久性布処理方法

【課題】布に殺生物銀材料及び向上した柔軟性、並びに洗濯による殺生物銀材料の除去に対する向上した耐性を提供する。
【解決手段】(i)銀イオンとコポリマーとの複合体、および(ii)分散したアミン官能性柔軟剤を含む、布を処理するのに有用な水性組成物であって、前記コポリマーが、(a)少なくとも1つの窒素原子を有する不飽和もしくは芳香族複素環式基から選択される置換基を有するエチレン性不飽和化合物である1種以上のモノマーXの重合単位を60〜95重量%、並びに(b)カルボン酸、有機硫酸、スルホン酸、ホスホン酸、エチレンオキシドの重合単位を含むエステル、並びにこれらの混合物から選択されるエチレン性不飽和化合物である1種以上のモノマーYの重合単位を5〜40重量%含む、水性組成物で布を処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は布を処理するのに有用な組成物に関する。この組成物は銀ポリマー複合体および柔軟剤を含み、これらは布に導入されて処理された布を提供する。
【背景技術】
【0002】
米国特許出願公開第2010/0229311号は布を処理するのに有用な組成物を記載する。米国特許出願公開第2010/0229311号に記載される組成物は銀−ポリマー複合体並びに様々な任意の追加の成分を含む。米国特許出願公開第2010/0229311号の開示はその文献に記載された布処理剤が洗濯による除去に耐性であるかどうかの問題を論じていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2010/0229311号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明によって取り組まれる課題は布に殺生物銀材料を導入することができ、布に向上した柔軟性を提供することができ、並びに洗濯による殺生物銀材料の除去に対する向上した耐性を提供することができる組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は以下のように特定される。
本発明は、布処理に有用な組成物に関する。一形態においては、本発明は、
(i)銀イオンとコポリマーとの複合体、および
(ii)分散したアミン官能性柔軟剤
を含む、布を処理するのに有用な水性組成物であって、
前記コポリマーが、(a)少なくとも1つの窒素原子を有する不飽和もしくは芳香族複素環式基から選択される置換基を有するエチレン性不飽和化合物である1種以上のモノマーXの重合単位を60〜95重量%、並びに(b)カルボン酸、有機硫酸、スルホン酸、ホスホン酸、エチレンオキシドの重合単位を含むエステル、並びにこれらの混合物から選択されるエチレン性不飽和化合物である1種以上のモノマーYの重合単位を5〜40重量%含む、
水性組成物を提供する。
別の形態においては、本発明は布を請求項1の組成物とpH3〜7で接触させることを含む、布を処理する方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、用語「コポリマー」とは少なくとも2種の異なるモノマーが重合されたポリマーをいう。他に特定されない限りは、本明細書における全てのパーセンテージは重量基準(重量%)である。モノマーのパーセンテージは全コポリマー重量を基準にする。
【0007】
本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、用語「水性」とは水、および水と水混和性溶媒とから実質的に構成される混合物を意味する。
【0008】
本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、ある材料が「分散した」と称される場合には、その材料は連続液体媒体全体にわたって分布している相対的に小さな、離散した粒子の形態で存在していることを意味する。その分散した粒子のメジアン粒子サイズは5ナノメートル〜10ナノメートルである。この粒子は、固体もしくは液体またはその組み合わせであってよい。「分散した」と見なされる粒子は沈降せず、すなわち、分散した粒子を含む組成物が25℃で24時間静置される場合には、全ての粒子の重量を基準にして50重量%以上の粒子が連続液体媒体全体にわたって分散したまま(すなわち、それら粒子は底に沈降せずかつ表面に浮き上がらない)である。粒子が沈降に抵抗するのを助けるために、分散助剤、例えば、分散剤、界面活性剤、乳化剤、溶解剤もしくはこれらの混合物などが使用されうる。
【0009】
分散した材料は連続液体媒体中に可溶性ではない。すなわち、分散した材料の連続液体媒体中、20℃での可溶性は連続液体媒体の重量を基準にして0.1重量%以下である。材料の個々の分子が連続液体媒体全体にわたって分布している場合には、本明細書においてはその材料は溶解したと称され、本明細書においては分散したとは称されない。
【0010】
本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、用語「布(fabric)」は繊維から製造された布地を意味する。布は織物であっても、不織物であってもよい。本発明に従った処理に適する布には、例えば、絹、綿、ウール、亜麻、毛皮、髪の毛、セルロース、ラミー、麻、リンネル、木材パルプ、ポリオレフィン、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリブチレン;ハロゲン化ポリマー、例えば、ポリ塩化ビニル;ポリアラミド、例えば、ポリ−p−フェニレンテレフタルラミド(例えば、デュポンから入手可能なKEVLAR登録商標繊維)、ポリ−m−フェニレンテレフタラミド(例えば、デュポンから入手可能なNOMEX登録商標繊維);メラミンおよびメラミン誘導体(例えば、Basofil Fibers,LLCから入手可能なBASOFIL登録商標繊維);ポリエステル、例えば、ポリエチレンテレフタラート、ポリエステル/ポリエーテル;ポリアミド、例えば、ナイロン6およびナイロン6,6;ポリウレタン、例えば、Noveonから入手可能なTECOPHILIC(登録商標)脂肪族熱可塑性ポリウレタン;アセタート;レーヨンアクリル;並びにこれらの組み合わせをはじめとする何らかの組成の繊維もしくは繊維の組合わせから製造された布が挙げられる。好ましい布には、綿、ポリエステル、綿−ポリエステルブレンドおよびポリオレフィンが挙げられる。本発明の好ましい実施形態においては、布は、布の重量を基準にして少なくとも40重量%のポリエステル繊維を含む。より好ましくは、ポリエステル繊維の量が布の重量を基準にして少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも60重量%、より好ましくは少なくとも70重量%、より好ましくは少なくとも80重量%、より好ましくは少なくとも90重量%である繊維である。
【0011】
本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、アクリル、アクリラート、アクリルアミドなどの別の用語が後に続く用語「(メタ)」の使用は例えば、アクリルおよびメタクリルの双方;アクリラートおよびメタクリラートの双方;アクリルアミドおよびメタクリルアミドの双方;などをいう。
【0012】
本発明のコポリマーのガラス転移温度(Tg)は、熱フロー対温度遷移における中点をTg値として採用する示差走査熱量測定(DSC)によって測定されうる。
【0013】
本明細書において使用される場合、ある材料の量が特定の重量%以下であることの表示は、その特定の材料の量がゼロであるか、そうでなければ、その特定の重量%に等しいかもしくはそれ未満のゼロでない量である。
【0014】
本発明の好ましい実施形態においては、コポリマーは少なくとも20重量%、より好ましくは少なくとも30重量%、より好ましくは少なくとも40重量%、より好ましくは少なくとも50重量%のモノマーXの単位を含む。好ましい実施形態においては、コポリマーは92重量%以下、より好ましくは90重量%以下、より好ましくは88重量%以下、より好ましくは80重量%以下、より好ましくは75重量%以下、より好ましくは70重量%以下のモノマーXの単位を含む。
【0015】
好ましい実施形態においては、コポリマーは60重量%以下、より好ましくは55重量%以下、より好ましくは50重量%以下、より好ましくは45重量%以下のモノマーYの単位を含む。好ましい実施形態においては、コポリマーは少なくとも10重量%、より好ましくは少なくとも18重量%、より好ましくは少なくとも25重量%、より好ましくは少なくとも30重量%、より好ましくは少なくとも35重量%を含む。
【0016】
本発明の好ましい実施形態においては、モノマーXはビニルイミダゾール、ビニルイミダゾリン、ビニルピリジン、ビニルピロール、これらの誘導体およびこれらの組み合わせから選択される。より好ましい実施形態においては、モノマーXはビニルイミダゾール、ビニルピリジン、これらの誘導体およびこれらの組み合わせから選択される。より好ましい実施形態においては、モノマーXはN−ビニルイミダゾール、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジンおよびこれらの組み合わせから選択される。最も好ましい実施形態においては、モノマーXはN−ビニルイミダゾール(VI)である。
【0017】
本発明の好ましい実施形態においては、モノマーYはカルボン酸、有機硫酸、スルホン酸、ホスホン酸、エチレンオキシドの重合単位のエステル、およびこれらの組み合わせから選択される。本発明のより好ましい実施形態においては、エチレンオキシドの重合単位を含むエステルは、少なくとも2単位、より好ましくは少なくとも3単位、より好ましくは少なくとも4単位、より好ましくは少なくとも5単位、より好ましくは少なくとも6単位のエチレンオキシドを含む。重合されたエチレンオキシド単位の数は、重合されたエチレンオキシド鎖のMn(すなわち、数平均分子量)から計算される。本発明の好ましい実施形態においては、エチレンオキシドの重合単位のエステルは(メタ)アクリロイルエステルである。本発明の好ましい実施形態においては、エチレンオキシドの重合単位は、一方の末端上がC−Cアルキル基でキャップされる。本発明の好ましい実施形態においては、エチレンオキシドの重合単位は100以上のMnを有し、より好ましくは200以上であり、より好ましくは250以上であり、より好ましくは300以上である。本発明の好ましい実施形態においては、エチレンオキシドの重合単位は、3000以下のMnを有し、より好ましくは1000以下であり、より好ましくは600以下であり、より好ましくは500以下である。
【0018】
本発明のある実施形態においては、モノマーYはアクリル酸(AA)、メタクリル酸(MAA)、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、およびそのナトリウム塩、並びにこれらの組み合わせから選択される。これらの実施形態のいくつかの形態においては、コポリマーは他のエチレン性不飽和モノマー、例えば、(メタ)アクリラートエステル、ビニルエステル、(メタ)アクリルアミドをさらに含む。少量の疎水性モノマー、例えば、より高級のアルキル(メタ)アクリラート(例えば、C−4以上)が、水溶性を悪化させない程度で存在しうる。(メタ)アクリラートエステルは混合エチレン/プロピレンオキシドのエステルを含むことができるが、ただし、エチレンオキシド残基はエチレン/プロピレンオキシド残基の少なくとも50重量%(あるいは少なくとも75%、あるいは少なくとも90%)であるか、または混合エチレン/プロピレンオキシド残基のエステルはコポリマーの20重量%以下、あるいは15%以下、あるいは10%以下である。本発明のある実施形態においては、混合エチレン/プロピレンオキシド残基は少なくとも150、あるいは少なくとも300のMnを有する。
【0019】
本発明の好ましい実施形態においては、方法は、エポキシド機能を含むエチレン性不飽和モノマーから誘導される単位を5重量%以下しか含まないコポリマーを使用する。この実施形態の好ましい形態においては、コポリマー中での、エポキシド機能を含むエチレン性不飽和モノマーから誘導される単位の量は1重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下、より好ましくは0.1重量%以下、より好ましくは0.05重量%以下、より好ましくは0重量%である。
【0020】
本発明の好ましい実施形態においては、コポリマーを含む組成物は少なくとも3、より好ましくは少なくとも4、より好ましくは少なくとも4.5のpHを有する。好ましい実施形態においては、組成物は7以下、より好ましくは6以下のpHを有する。
【0021】
本発明のある実施形態においては、組成物は架橋剤から誘導される重合単位を含む。本発明と共に使用するのに好適な架橋剤には、多エチレン性不飽和モノマーが挙げられる。この実施形態のいくつかの形態においては、架橋剤由来単位は、1,4−ブタンジオールジアクリラート、1,4−ブタンジオールジメタクリラート、1,6−ヘキサンジオールジアクリラート、1,1,1−トリメチロールプロパントリアクリラート、1,1,1−トリメチロールプロパントリメタクリラート、アリルメタクリラート、ジビニルベンゼンおよびN−アリルアクリルアミドから選択される架橋剤から誘導される。これらの実施形態のある形態においては、架橋剤由来の単位は、1,1,1−トリメチロールプロパントリメタクリラートから選択される架橋剤から誘導される。これらの実施形態のいくつかの形態においては、組成物は(固形分を基準にして)0.01〜10重量%の架橋剤を含む。これら実施形態のある形態においては、組成物は(固形分を基準にして)0.01〜5重量%の架橋剤を含む。これら実施形態のある形態においては、組成物は(固形分を基準にして)0.01〜1重量%の架橋剤を含む。
【0022】
本発明の好ましい実施形態においては、架橋剤に由来する重合単位を含まないか、そうでなければ架橋剤に由来する重合単位を0.005重量%以下の量で含むコポリマーが使用される。本発明のより好ましい実施形態においては、架橋剤に由来する重合単位を含まないコポリマーが使用される。
【0023】
水性組成物が本明細書に記載されたコポリマーを含み、かつAg(I)イオンの形態の銀も含む場合には、本明細書においてはこのコポリマーおよび銀の混合物はそのコポリマーと銀イオンとの複合体と称される。
【0024】
組成物中の銀の量を、コポリマーの乾燥重量を基準にした重量パーセンテージで特徴付けるのが有用である。本発明の好ましい実施形態においては、組成物はコポリマーの乾燥重量を基準にして1重量%以上、より好ましくは2重量%以上、より好ましくは3重量%以上、より好ましくは5重量%以上の量で銀を含む。本発明の好ましい実施形態においては、コポリマーはコポリマーの乾燥重量を基準にして50重量%以下、より好ましくは40重量%以下、より好ましくは20重量%以下、より好ましくは15重量%以下の量で銀を含む。
【0025】
銀はAg(I)イオンの形態であり、これは典型的には硝酸銀の形態で導入される。コポリマーの製造方法は、例えば、米国特許出願公開第2005/0227895号にすでに開示されており、かつ本明細書の実施例にも開示されている。本発明のある実施形態においては、処理された布によって銀の保持を増大させるために、銀と複合体形成していない追加のコポリマーが添加されるか、および/またはアミン化合物もしくはポリマーが添加されうる。本発明のある実施形態においては、布処理剤は、エポキシ樹脂、ポリウレタンもしくはこれらの組み合わせを含む。
【0026】
本発明のある実施形態においては、エポキシ樹脂は少なくとも二官能性のエポキシ化合物、すなわち、分子あたり少なくとも2つのエポキシ基を有する化合物を含む。これら実施形態のある形態においては、エポキシ樹脂は、ビス−グリシジルエーテルもしくはエステル、トリグリシジルイソシアヌラート、1−エポキシエチル−3,4−エポキシシクロヘキサン、ビニルシクロヘキセンジオキシド、ジカルボン酸のジグリシジルエステル、ジオール、トリオールもしくはポリオールのジグリシジルエーテルを含む。ビス−グリシジルエステルおよびエーテルの好適な例には、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ジグリシジルアジパート;1,4−ジグリシジルブチルエーテル;エチレングリコールジグリシジルエーテル;グリセロール、エリスリトール、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパンおよびソルビトールのグリシジルエーテル;エポキシレゾルシノールエーテル;並びにポリエチレングリコールのジグリシジルエーテルが挙げられる。本発明のある実施形態においては、エポキシ樹脂はグリシジル(メタ)アクリラートおよび/またはアリルグリシジルエーテルのポリマーを含む。本発明のある実施形態においては、エポキシ樹脂はエポキシド当量:Xモノマー単位の当量の比率0.1:1〜10:1を生じさせる量で存在する。好ましくは、この比率は0.2以上:1、あるいは0.3以上:1、あるいは0.5以上:1、あるいは0.8以上:1である。あるいは、この比率は7以下:1、あるいは5以下:1、あるいは4以下:1、あるいは3以下:1である。
【0027】
本発明のある実施形態においては、コポリマーに加えてアミン硬化剤が使用される。このアミン硬化剤は、当該技術分野において周知であり、例えば、国際公開第WO2005/080481号に記載されている。これら硬化剤には、多官能性第一級および第二級アミン、並びに何らかの第三級アミン、例えば、アミン含有ポリマーが挙げられる。
【0028】
本発明のある実施形態においては、ポリエステルポリウレタンはポリエステルポリオールおよびジイソシアナートの重合残基を含む。ジイソシアナートは芳香族ジイソシアナート、例えば、トルエンジイソシアナート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアナート(MDI)、p−キシリレンジイソシアナート、テトラメチルキシレンジイソシアナート、この異性体もしくはこの混合物;または脂肪族ジイソシアナート、例えば、1,6−ヘキサメチレンジイソシアナート、水素化メチレンジフェニルジイソシアナート(HMDI)、エチレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアナートまたはこれらの混合物であり得る。芳香族ジイソシアナートの中では、MDIが好ましく、特に4,4’および2,4’異性体の混合物が好ましい。好ましい脂肪族ジイソシアナートには、例えば、1,6−ヘキサメチレンジイソシアナート、水素化メチレンジフェニルジイソシアナート(HMDI)、イソホロンジイソシアナートおよびこれらの混合物が挙げられる。ポリエステルポリオールには、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、フランジメタノール、シクロヘキサン1,6−ジメタノール、炭酸ジメチルから製造されたジオールのような多価アルコール、および上記多価アルコールのいずれかもしくはこれらの混合物と、ポリカルボン酸もしくはラクトン、特にジカルボン酸、例えば、コハク酸、アジピン酸、グルタル酸、フタル酸およびカプロラクトンとのヒドロキシ末端生成物が挙げられる。好ましいポリエステルポリオールには、例えば、アジピン酸と、ヘキサンジオール、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、プロピレングリコールおよびシクロヘキサン−1,6−ジメチロールから選択されるジオールとから形成されるものが挙げられる。2より多いヒドロキシル基を有する好ましい多価アルコールは、ポリオールの2重量%以下、あるいは1重量%以下、あるいは0.5重量%以下の程度で存在する。本発明のある実施形態においては、ポリウレタンは10,000〜100,000のMnおよび200,000〜2,000,000のMwを有する。本発明のある実施形態においては、ポリエステルポリウレタンは脂肪族ポリエステルポリウレタンであり、すなわち、それは脂肪族ポリエステルポリオールおよび脂肪族ジイソシアナートの重合残基を含む。
【0029】
本発明の組成物は1種以上の柔軟剤を含む。柔軟剤は布の柔らかさを向上させるために使用されうる化合物である。柔軟剤には、例えば、シリコーン化合物およびカチオン性高アルキル化合物が挙げられる。カチオン性高アルキル化合物はカチオン基および8個以上の炭素原子を有するアルキル基を含む化合物である。カチオン基には、例えば、第四級アンモニウム基が挙げられる。
【0030】
シリコーン化合物は構造(I)の繰り返し単位を有するポリマーである:
【化1】

式中、nは3以上であり、R11およびR12はそれぞれ独立して、置換もしくは非置換の有機基である。ある柔軟剤は、1以上のアミノ基を含むシリコーン化合物(本明細書においては、「アミノ官能性シリコーン」と称される)である。このアミノ基は第一級、第二級、第三級もしくは第四級であり得る。好ましい柔軟剤はアミノ官能性シリコーンである。
【0031】
このアミノ基は式(II)もしくは(III)の構造を有する化学基である:
【化2】

【化3】

式中、RおよびRのそれぞれは、水素であるか、または構造(II)に示される炭素原子がRおよびR内の炭素原子に結合している有機基であり;R、RおよびRのそれぞれは、水素であるか、または構造(II)もしくは構造(III)に示される窒素原子がR、RおよびR内の炭素原子と結合している有機基であり;並びに、
【化4】

はアニオンである。
本明細書においては、アミノ基を有する化合物はアミノ官能基または同義語としてアミン官能基を有すると称される。
【0032】
本明細書において使用される場合、用語「アミノ基」はアミド基を含まない。アミド基は構造(IV)を有する:
【化5】

式中、RおよびRは上述のRおよびRと同じ特徴を有する。好ましい実施形態においては、組成物はアミド基を有する柔軟剤を含まない。より好ましい実施形態においては、組成物はアミン官能性シリコーンポリマーではない柔軟剤を含まない。
【0033】
本発明の組成物は水性である。好ましくは、本発明の組成物中の水の量は組成物の重量を基準にして50重量%以上、より好ましくは75重量%以上、より好ましくは90重量%以上である。
【0034】
本発明の組成物においては、柔軟剤は分散されている。
【実施例】
【0035】
ここで、本発明のいくつかの実施形態が以下の実施例において詳細に説明される。実施例において以下に示される全ての分率およびパーセンテージは他に特定されない限りは重量基準である。実施例における全ての操作は他に特定されない限りは20℃で行われた。
【0036】
コポリマー溶液「A」は以下のように製造された:
60%ビニルイミダゾール(VI)/40%ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリラート(MPEGMA)(Mn300)ポリマーのサンプルが以下の手順に従って製造された。847.4mlの脱イオン水(DiW)を収容した3Lの反応容器を窒素下で85℃に加熱した後で、182gのDiW、30.1gの29%水性アンモニア、および12.1gのVazo−68(4,4’−アゾビス[4−シアノペンタン酸]CAS#2638−94−0)からなる溶液をこの反応容器に1.4g/分で、150分間添加した。同時に、207.7gのDiW、92.3gのビニルイミダゾール(CAS#1072−63−5)および61.6gのポリ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリラート(MPEGMA、CAS#26915−72−0、典型的なMn=300)の溶液がこの反応フラスコに4.0g/分で、120分間供給され、次いで、200gのDiWすすぎが4.8g/分で30分間供給された。反応混合物は85℃で15分間保持され、40.1gのDiW、10.3gの29%水性アンモニア、および2.1gのVazo−68の第2の混合物がこの反応容器に0.34g/分で90分間添加され、次いで85℃で120分間保持し、32gのDiWのすすぎが行われた。次いで、この混合物は室温まで冷却され、pH9.0で19.9%固形分の透明で薄黄色の溶液が得られた。
【0037】
銀−ポリマー複合体の溶液「B」は以下の材料を混合することにより以下のように製造された:
ポリマー溶液A 60g;
HNO、水中70重量%濃度 10g;
AgNO 水中50重量%濃度 4g;
過酸化水素、水中35重量%濃度 0.5g。
得られた溶液Bは計算値1.7重量%の銀を有している。
【0038】
処理溶液は、水道水、溶液Bおよび柔軟剤を用いて製造された。溶液Bの量は処理溶液100重量部あたり、0.8重量部であった。柔軟剤の量は処理溶液100重量部あたり、3重量部であった。各処理溶液のpHは水酸化ナトリウム溶液で5.5に調節された。
【0039】
100%ポリエチレンテレフタラート(PET)布が3m/分の速度で運転するマチスパダー(Mathis Padder)を用いて処理された。過剰な溶液は、このウェブを3barの圧力のローラーニップを通してこのウェブから搾って除かれた。この布は、次いで、オーブン内で150℃で2分間乾燥させられた。この乾燥させられた処理された布は家庭用洗濯機を用いて、ISO6330「テキスタイル−テキスタイル試験方法のための家庭用洗濯および乾燥手順」(第二版、2000−12−15)を用い、いくつかの変更を伴って洗濯された。洗濯は以下の通り行われた:
洗濯機:頂部添加、攪拌型(ISO6330についてのタイプB)
サイクル:ノーマル(12分間攪拌洗浄、次いで、一回のすすぎ、次いですすぎ/スピン)
水温:洗浄40±2℃(105°F);およびすすぎ:低温、測定されず
水の硬度はモニターされ、100〜120ppmの範囲である
添加サイズ:小型、水44L
洗剤:タイド(Tide商標)フリーウルトラ2X、2.4ml(ISO6330の洗浄サイクルの終わりに、発生する泡は3cmを超えない)
バラスト:バラストのために通常2枚のt−シャツが使用されるが、試験される被検査物の体積に応じて変動する。
被検査物は洗濯中の保護のためにデリケート洗濯袋内に入れられる。
被検査物はその日の終わりに物干し(line)乾燥させられる。
【0040】
使用された柔軟剤は以下の通りであった:
Lavasoft商標MEC=アミノシリコーンポリマーのマイクロエマルション(Dystar)
DC−1716=架橋OHポリジメチルシロキサンのカチオン性マイクロエマルション(ダウコーニング)
DC2−8035=アミノ官能性シリコーンポリマー(ダウコーニング)
DC2−8194=アミン官能性シリコーンポリマー(ダウコーニング)
Ultratex商標SI=アミノ柔軟剤のマクロエマルション(ハンツマン;Hunstman)
Ultratex商標FMI=アミノ柔軟剤のマイクロエマルション(ハンツマン)
Magnasoft商標SRS=ブロックコポリマーシリコーン−アミノポリエチレンオキシド(GE)
Evosoft商標HSP=親水性シリコーンマイクロエマルション
【0041】
布のサンプルは0、もしくは20、もしくは50洗浄サイクルの後で取り出され、X線蛍光誘導結合プラズマ質量分析技術によって銀について分析された。各サンプルは二回試験された。データは表1に示される(比較例は実施例番号に「C」が付されている)。
【0042】
【表1】

【0043】
Magnasoft商標SRSは水に可溶性であり、分散されていないので、C10は比較例である。
Evosoft商標HSPはアミノ官能性ではないので、C11は比較例である。
実施例の配合物は比較例の配合物よりも良好な銀の保持を示す。
アミノ官能基を有するシリコーンは最も良好に機能する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)銀イオンとコポリマーとの複合体、および
(ii)分散したアミン官能性柔軟剤
を含む、布を処理するのに有用な水性組成物であって、
前記コポリマーが、
(a)少なくとも1つの窒素原子を有する不飽和もしくは芳香族複素環式基から選択される置換基を有するエチレン性不飽和化合物である1種以上のモノマーXの重合単位を60〜95重量%、並びに
(b)カルボン酸、有機硫酸、スルホン酸、ホスホン酸、エチレンオキシドの重合単位を含むエステル、並びにこれらの混合物から選択されるエチレン性不飽和化合物である1種以上のモノマーYの重合単位を5〜40重量%含む、
水性組成物。
【請求項2】
前記組成物が3〜7のpHを有する請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
モノマーXがN−ビニルイミダゾールである請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記アミン官能性柔軟剤がシリコーンポリマーである請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
布を請求項1の組成物とpH3〜7で接触させることを含む、布を処理する方法。

【公開番号】特開2012−112087(P2012−112087A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−223757(P2011−223757)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
【Fターム(参考)】