説明

耐久性疎水性表面を有する物品

起立部分、陥凹部分又はこれらの組み合わせを有するマイクロパターン化表面を有する基材上に疎水性又は超疎水性表面を提供するために十分な量の、疎水性マイクロ粒子、疎水性ナノ粒子、又はこれらの混合物を含む組成物と結合剤を配置する工程を含む、高疎水性、最高疎水性又は超疎水性表面を形成する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疎水性又は超疎水性表面を有する基材に関する。
【背景技術】
【0002】
撥水性コーティング又は物品は、例えば、基材の表面上に平均粒径100nm未満の粒子を有するコーティングを塗布することにより形成される自己洗浄表面を開示する、米国特許第6,800,354号に言及又は開示されている。第6,800,354号特許はまた、ナノスケール粒子及びマイクロスケール粒子が、同一コーティング又は、基材に塗布されたマイクロスケール粒子を有する第1コーティング及び基材に塗布されたナノスケール粒子を有する第2コーティングに分布する、マイクロスケール構造上でのナノスケール構造の形成を開示する。コーティングは、オルガノシランのような疎水化物質で処理することにより、疎水性にしてもよい。
【0003】
自己洗浄疎水性構造は、米国特許出願公開第2003/0013795号に開示されている。この出願は、結合剤及び粒子を含むキャリアで固定された粒子から形成される自己洗浄疎水性表面を開示する。表面は、紫外線並びに風及び天候の影響を通じて放出される粒子を形成する新規構造を露出することによる、自己再生性であると言われている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本出願は、結合剤及び疎水性マイクロ粒子、疎水性ナノ粒子、又はこれらの混合物を含む液体組成物を付着する工程と;起立部分、陥凹部分又はこれらの組み合わせを有するマイクロパターン化表面を有する基材上に、耐久的な、高疎水性(very-hydrophobic)、最高疎水性(extremely-hydrophobic)又は超疎水性(superhydrophobic)表面を十分な量で提供する工程と;液体組成物を乾燥又は別の方法で硬化する工程と、を含む、耐久性、高疎水性、最高疎水性又は超疎水性表面を形成する方法を提供する。
【0005】
別の態様では、この方法は、起立部分、陥凹部分又はこれらの組み合わせを含むマイクロパターン化表面を有する基材上に耐久的な、高疎水性、最高疎水性、又は超疎水性表面を提供するために十分な量で結合剤及び疎水性ナノ粒子を含む液体組成物を付着する工程と、液体組成物を乾燥又は別の方法で硬化する工程とを含む。
【0006】
別の態様では、本発明の組成物は、全表面上に高疎水性、最高疎水性又は超疎水性特性を維持しながら、マイクロパターン化表面の突出形状によって遮断される、マイクロパターン化表面上の不連続層を形成することができる。
【0007】
別の態様では、本発明は、起立部分、陥凹部分又はこれらの組み合わせを有するマイクロパターン化表面を有する基材と;少なくとも起立部分間又は陥凹部分内の一部に位置し、結合剤及び疎水性マイクロ粒子、疎水性ナノ粒子、又はこれらの混合物を含む基材上のコーティング組成物と、を含み;十分な量で、耐久的な、高疎水性又は超疎水性表面を提供する物品を提供する。
【0008】
本発明のこれらの及び他の態様は、添付図面及びこの明細書から明らかになるであろう。しかしながら、上記要約は、請求された主題に関する限定として決して解釈されるべきでなく、主題は、手続処理中に補正され得る添付の特許請求の範囲によってのみ規定される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
用語「a」、「an」、及び「the」は、「少なくとも1つの」と互換的に用いられ、1つ以上の記載された要素を意味する。開示したコーティングされた物品内の種々の要素の位置について、「頂上の」「上の」「最上部の」「下層の」等のような配向用語を用いることにより、水平に配置された、上方に面する基材に対する、要素の相対位置を指す。開示した物品が、製造中又は製造後、空間内で任意の特定の配向を有するべきであることを意図しない。
【0010】
「疎水性」という用語は、水で湿潤するのが困難である表面又はコーティングを指す。表面は、後退水接触角が少なくとも70°を示す場合は疎水性、後退水接触角が少なくとも110°を示す場合は高疎水性、後退水接触角が少なくとも120°を示す場合最高疎水性であると考えられる。「超疎水性」という用語は、水で湿潤するのが極度に困難である表面又はコーティングを指す。超疎水性表面又はコーティングは、通常140°を超え、大抵150°を超える後退水接触角を有する。
【0011】
「ポリマー」という用語は、ポリマー、コポリマー(例えば、2種以上の異なるモノマーから形成されるか又は形成可能なポリマー)、オリゴマー及びこれらの組み合わせを指す。
【0012】
「マイクロパターン化表面又は基材」という用語は、基準面に対して起立又は陥凹した起立部分及び陥凹部分を特徴とする輪郭を画定する、所望の複数の形状を有する少なくとも1つの表面を有する表面又は基材を指す。マイクロパターン化表面の起立部分は、規則的、又は少なくとも部分的に規則的な反復形状を有し、例えば、不規則に配置されてもよく、表面の陥凹部分又は他の部分(例えば、基準)上で約5〜約150μmであってもよい。好ましくは、反復形状は、例えば、表面の陥凹部分又は他の部分上で約10μm〜約125μmであってもよい。より好ましくは、反復形状は、例えば、表面の陥凹部分又は他の部分上で約15μm〜約100μmであってもよい。反復する陥凹部分間又は起立部分間のピッチ(中心間距離)は、例えば、約10μm〜約250μmの長さ、好ましくは30μm〜約200μmの長さであってもよい。
【0013】
好ましくは、遭遇する見込みのある水滴のサイズと、耐久的な、高疎水性、最高疎水性又は超疎水性物品との間に関連性がある。水滴の直径は、マイクロパターン化表面内の形状のピッチより大きいことが好ましい。
【0014】
「粒子」という用語は、マイクロ粒子、ナノ粒子又はこれらの混合物を指す。「マイクロ粒子」という用語は、約0.1〜約100μmの平均粒径を有する粒子を指す。「ナノ粒子」という用語は、約1〜約100nmの平均粒径を有する粒子を指す。典型的には、マイクロ粒子又はナノ粒子のサイズは、マイクロパターン化表面内の起立部分間の距離、すなわち形状のピッチ、よりも著しく小さい。代表的な実施形態では、本発明の実施に好適な粒子は、約5nm〜約100μmの平均粒径を有するマイクロ粒子、ナノ粒子又はこれらの混合物である。好ましくは、粒子は約50nm〜約50μmの平均粒径を有することができる。別の代表的な実施形態では、粒子は、約1nm〜約100nmの平均粒径を有するナノ粒子である。粒子は、球状であってもよく、非球状、例えば、不揃いな形状の粒子であってもよい。「平均粒径」という用語は、当該技術分野において既知である手段により分類される時の一次粒子のサイズを指し、粒塊のサイズではない。粒径は、一般に、偏球状粒子の平均直径であり、およそ針状粒子の最大寸法である。
【0015】
開示したコーティングは、当業者ならば周知の種々の用途で用いられてもよい。例えば、開示したコーティングは、耐久的に、高疎水性、最高疎水性、又は超疎水性表面が望ましい場合がある物品に塗布されてもよい。かかる表面は、例えば、少なくとも約110°、好ましくは少なくとも約120°、さらにより好ましくは少なくとも約130°、さらにより好ましくは少なくとも約140°、最も好ましくは少なくとも約150°の後退水接触角を有してもよい。
【0016】
耐久的に、高疎水性、最高疎水性、又は超疎水性であることから恩恵を受ける場合がある表面を有する代表的な物品としては、建築表面、車両表面、船舶表面及び標識が挙げられる。建築表面に対する用途の非限定的例としては、窓、壁又は橋のような落書きされやすい表面などが挙げられる。車両に対する用途の非限定的例としては、窓、本体部、鏡、車輪、ライトアセンブリのような自動車部品:窓、翼又は尾部アセンブリ用氷結防止コーティング、車輪、ライトアセンブリなどのような飛行機部品が挙げられる。船舶に対する用途の非限定的例としては、窓、抗藻類コーティング、燃料消費量低減のための抵抗低減コーティング、凍結層低減のための氷結防止コーティングなどのような船体用途が挙げられる。標識用途の非限定的例としては、自己洗浄、再帰反射標識のような抗露表面などが挙げられる。
【0017】
別の態様では、本発明は、
a)起立部分、陥凹部分又はこれらの組み合わせを有するマイクロパターン化表面を有する基材を提供する工程と、
b)疎水性マイクロ粒子、疎水性ナノ粒子、又はこれらの混合物と結合剤とを含む粒子組成物を提供する工程と、
c)この基材の少なくとも一部上に粒子組成物を配置する工程と、
e)結合剤を乾燥又は別の方法で硬化する工程と、
を含む、コーティングされた耐久的な、高疎水性、最高疎水性、又は超疎水性物品の製造方法を提供する。
【0018】
本発明の実施に好適なマイクロ粒子又はナノ粒子としては、粒子が不溶性金属酸化物又はその塩であり得る、表面改質粒子が挙げられる。好適な金属酸化物の非限定的な例としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化ビスマス、酸化チタン、酸化ジルコニウム、ランタニド(希土類)酸化物、これらの混合物など;炭酸カルシウム、アルミン酸カルシウム、アルミノケイ酸マグネシウム、チタン酸カリウム、オルトリン酸セリウム、水和ケイ酸アルミニウムなどの他の好適な金属塩、モンモリロナイト、イライト、カオリン粘土、ハロイサイト(AlSiO(OH))、これらの混合物などのような金属塩粘土、及び金属酸化物と金属塩との混合物が挙げられる。代表的な実施形態では、マイクロ粒子又はナノ粒子はシリカ粒子であり得る。
【0019】
マイクロ粒子又はナノ粒子は、多くの場合、少なくとも1つの加水分解基を有する加水分解反応性シランの溶液中で、好ましくは触媒量のフッ化水素酸とともに、マイクロ粒子又はナノ粒子を接触させることにより粒子の疎水性を増大させるために、改質してもよい。得られる混合物は、ナノ粒子の疎水性を強化するために十分な時間、室温を超える温度で超音波浴内に定置できる。特定の加水分解反応性基としては、−F、−Cl、−OCH、−OC、−NHAc、−N(Ac)(式中、Acは、例えば、−C(=O)CH、−C(=O)CHCHなどの低級カルボン酸由来のアシル基を表す)を挙げることができる。代表的なシランとしては、ヘキサメチルジシラザン、メチルトリエトキシシラン、イソオクチルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、5,6−エポキシヘキシルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピル−トリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル−トリエトキシシラン、3−(ペンタフルオロフェニル)プロピルメチルジクロロシラン、トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルジメチルクロロシラン、ノナフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロヘキシル−トリクロロシラン、3−(メタクリルオキシ)プロピルトリメトキシシラン、4−ビニルフェニルメチルトリメトキシシラン、11−(クロロジメチルシリルメチル)−トリコサン、[2−(3−シクロヘキセニル)エチル]トリメトキシシラン、及びこれらの混合物、並びに、結合及び架橋部位を提供してシラン構造を補強することを目的とする、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−ブロモプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン及びこれらの混合物のような、限定された量の1以上の連続反応性シラン(subsequently reactive silane)からなる群から選択されるオルガノシランが挙げられる。
【0020】
種々の材料を用いて好適な基材を調製することができる。好適な基材としては、例えば、ポリエステル、ポリプロピレン及びポリエチレンのようなポリオレフィン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリウレタン、フルオロポリマー、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリ酢酸ビニル−ポリ塩化ビニルコポリマー、セルロースアセテート及びコブチラート、シリコーンゴム、エポキシ樹脂などのような有機材料;鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、銅、銀、金などのような金属;石、セメント、セラミックス、ガラスなどのような無機物質から選択することができる。好適な基材の非限定的な例としては、ポリエチレンテレフタレート及びビスフェノールAポリカーボネートなどの材料が挙げられる。
【0021】
疎水性マイクロ粒子又はナノ粒子と、結合剤とは種々の比で組み合わせることができる。本発明のコーティング組成物は、かかるマイクロ粒子又はナノ粒子を含まないコーティングと比較して、増加した水接触角を有する乾燥した又は硬化したコーティングを提供するために十分な粒子を含有するとともに、塗布されたコーティングが塗布当初のように視覚的に滑らかで連続的であるために、十分な結合剤を含有することが望ましい。例えば、任意の溶媒又は他の添加物質を除いて、粒子及び結合剤の重量のみを考えると、開示したコーティング組成物は、約5〜約95重量%の粒子及び約95〜約5重量%の結合剤;好ましくは約10〜約75重量%のマイクロ粒子及び約90〜約25重量%の結合剤;より好ましくは約10〜約50重量%のマイクロ粒子及び約90〜約50重量%の結合剤;又はさらにより好ましくは約10〜約30重量%のマイクロ粒子及び約90〜約70重量%の結合剤、を含有してもよい。代表的な実施形態では、結合剤/粒子組成物は、例えば、ショア(Shore)D又はA−2ジュロメーター{ショア・インスツルメント社(Shore Instrument Company)、ニューヨーク州ジャマイカ(Jamaica)}により測定した時、基材より柔らかい場合がある。
【0022】
結合剤は、フルオロポリマー又は炭化水素(非フッ素化)ポリマーを含んでもよい。好適なフルオロポリマーの非限定的な例としては、1,1−ジフルオロエチレンホモポリマー、1,1−ジフルオロエチレン及びヘキサフルオロプロピレンのコポリマー、テトラフルオロエチレン及びヘキサフルオロプロピレンのコポリマー、1,1−ジフルオロエチレン及びテトラフルオロエチレンのコポリマー、1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロ−1−プロペン、1,1−ジフルオロエチレン及びテトラフルオロエチレンのコポリマー、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン及び1,1−ジフルオロエチレンのターポリマー、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン及びエチレンのターポリマーなどが挙げられる。好適なフルオロポリマーとしてはまた、末端がポリフッ素化されたアルコールと非フッ素化アクリル(酸)ポリマーのエステルのような、炭化水素骨格鎖と側鎖としてフルオロアルキル基とを有するポリマーを挙げることもできる。
【0023】
本発明の実施に好適な炭化水素ポリマーとしては、1以上のオレフィンモノマー、オリゴマー又はポリマー由来のポリマーが挙げられる。好適な炭化水素ポリマーの非限定的な例としては、シリコーンポリマー、ポリオレフィン、及びこれらのコポリマー{例えばエチレン、プロピレン、ジエンターポリマー(EPDM)ゴム及びアクリレートポリマー}が挙げられる。代表的なオレフィンモノマー、オリゴマー又はポリマーとしては、少なくとも1つの不飽和部位を有する炭素含有化合物が挙げられる。かかるオレフィンモノマー、オリゴマー又はポリマーは、所望により反応開始剤の存在下で、反応して高分子生成物を提供することができる。オレフィンモノマー、オリゴマー又はポリマーは、ポリオレフィン、(メタ)アクリレートエステル、アリルエーテル、ビニルエステル、ビニルエーテルなどの混合物を含んでもよく、又は包含してもよい。エポキシ樹脂はまた結合剤として用いてもよい。
【0024】
開示した方法及びコーティング組成物中で種々の溶媒を使用してもよい。代表的な溶媒としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル及び酢酸ブチルのようなエステル;メタノール及びエタノールのようなアルコール;ジメチルアセトアミド及びジメチルホルムアミドのようなアミド;ジメチルスルホキシド;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン及びN−メチルピロリジノンのようなケトン;テトラメチレンスルホン(スルホラン);テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン及びメチルテトラヒドロフルフリルエーテルのようなエーテル;δ−バレロラクトン及びγ−バレロラクトンのような環状エステル;ペルフルオロ−2−ブチルテトラヒドロフラン及びヒドロフルオロエーテルのようなフッ素化溶媒;結合剤は溶解するがマイクロ粒子、ナノ粒子及びこれらの混合物は溶解しない他の物質、が挙げられる。
【0025】
開示したコーティング組成物は、かかる他の有機液体及び水が、所望のコーティングを塗布し、乾燥又は硬化することを過度に妨げないならば、結合剤又は粒子を溶解しない他の有機液体を含有してもよく、水を含有してもよい。例えば、かかる他の有機液体又は水が、開示したコーティング組成物の重量の3分の1超過又は未満、10分の1未満、20分の1未満又は100分の1未満を示してよい。百分率基準で表すと、溶媒の量は、例えば、コーティング組成物の約20〜約99.5重量%、約20〜約90重量%、又は約20〜約80重量%であってもよい。
【0026】
本発明の方法は、例えば、少なくとも約110°の静的水接触角を有する高疎水性表面を提供し得る。好ましくは、表面は、少なくとも約120°の後退水接触角を有する。より好ましくは、表面は、少なくとも約130°の後退水接触角を有する。表面は、さらにより好ましくは少なくとも約140°、最も好ましくは少なくとも150°の後退水接触角を有する。
【0027】
本発明のコーティング組成物は、種々の任意の追加成分を含有してもよい。代表的な追加成分としては、結合剤架橋剤、反応開始剤(例えば、光反応開始剤及び熱反応開始剤)及び別々に添加されるマイクロ粒子又は結合剤接着促進剤(例えば、シラン)が挙げられる。以下では、「メタクリル」という用語は、アクリレートを列挙する時、メタクリレートを含むと理解される。代表的な架橋剤としては、例えば、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノアクリレートモノメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、カプロラクトン修飾ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレートジアクリレート、カプロラクトン修飾ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレートジアクリレート、シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ヒドロキシピバルアルデヒド修飾トリメチロールプロパンジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート及びトリプロピレングリコールジアクリレートのような、ジ(メタ)アクリル含有化合物を含む、ポリ(メタ)アクリルモノマーが挙げられる。他の好適な架橋剤としては、グリセロールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート及びトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレートのようなトリ(メタ)アクリル含有化合物が挙げられる。さらに好適な架橋剤としては、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ−及びペンタアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、カプロラクトン修飾ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、例えば、米国特許第4,262,072号に記載されたヒダントイン部分含有ポリ(メタ)アクリレート、並びに例えばウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、ポリアクリルアミドのようなオリゴマー性(メタ)アクリル化合物及びこれらの組み合わせのような高級官能性(メタ)アクリル含有化合物が挙げられる。好適な架橋剤は、サートマー社(Sartomer Company){ペンシルバニア州エクストン(Exton)}、UCBケミカルズ社(UCB Chemicals Corporation){ジョージア州スマーナ(Smyrna)}、及びアルドリッチ・ケミカル社(Aldrich Chemical Company){ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee)}などの供給業者から幅広く入手可能である。代表的な市販の架橋剤としては、SR−351トリメチロールプロパントリアクリレート(「TMPTA」)並びにSR−444及びSR 494ペンタエリスリトールトリ/テトラアクリレート(「PETA」)(全てサートマー社製)が挙げられる。架橋剤と一官能性物質の混合物(例えば、TMPTAとメチルメタクリレートの混合物のような多官能性と一官能性(メタ)アクリレートとの混合物)を使用してもよい。
【0028】
開示したコーティング組成物で利用してもよい他の架橋剤又は一官能性物質としては、ペルフルオロポリエーテル(メタ)アクリレートのようなフッ素化(メタ)アクリレートが挙げられる。これらのペルフルオロポリエーテルアクリレートは、ヘキサフルオロプロピレンオキシド(「HFPO」)のマルチ(メタ)アクリレート又はモノ(メタ)アクリレート誘導体に基づくことが望ましい場合があり、(マルチ(メタ)アクリレート誘導体の場合)唯一の架橋剤として用いられる場合がある。マルチ(メタ)アクリレート誘導体はまた、メチルメタクリレートのような非フッ素化一官能性(メタ)アクリレート、又はTMPTA若しくはPETAのような非フッ素化架橋剤とともに用いてもよく、モノ(メタ)アクリレート誘導体は、TMPTA若しくはPETAのような非フッ素化架橋剤とともに用いてよい。
【0029】
代表的な反応開始剤としては、ベンゾフェノン及びその誘導体のようなフリーラジカル光反応開始剤;ベンゾイン、α−メチルベンゾイン、α−フェニルベンゾイン、α−アリルベンゾイン、α−ベンゾイルベンゾイン;ベンジルジメチルケタール[例えば、イルガキュア(IRGACURE)(商標)651{チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社(Ciba Specialty Chemicals Corporation)}{ニューヨーク州、タリータウン(Tarrytown)}]、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインn−ブチルエーテルのようなベンゾインエーテル;2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノン{例えば、ダロキュール(DAROCUR)(商標)1173(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社)}及び1−ヒドロキシシクロへキシルフェニルケトン{例えば、イルガキュア(商標)184(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社)}のようなアセトフェノン及びその誘導体;2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−(4−モルホリニル)−1−プロパノン{例えば、イルガキュア(商標)907(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社)};2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン{例えば、イルガキュア(商標)369(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社)};ベンゾフェノン及びその誘導体並びにアントラキノン及びその誘導体のような芳香族ケトン;ベンジルジメチルケタール[例えば、エサキュア(ESACURE)(商標)KB−1{ランベルティS.p.A社(Lamberti S.p.A)}{スペイン、ガララーテ(Gallarate)}];ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩のようなオニウム塩;チタン錯体{例えば、CGI 784 DC(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社)};ハロメチルニトロベンゼン;並びにモノ−及びビス−アシルホスフィン{例えば、イルガキュア(商標)1700、イルガキュア(商標)1800、イルガキュア(商標)1850、イルガキュア(商標)819、イルガキュア(商標)2005、イルガキュア(商標)2010、イルガキュア(商標)2020及びダロキュール(商標)4265)(全てチバ・スペシャルティ・ケミカルズ社)}が挙げられる。光反応開始剤の混合物を用いてもよい。
【0030】
光増感剤を使用してもよい。例えば、光増感剤2−イソプロピルチオキサントン[ファースト・ケミカル社(First Chemical Corporation){ミシシッピ州パスカグーラ(Pascagoula)}]を、イルガキュア(商標)369のような光反応開始剤と併せて用いてもよい。
【0031】
代表的な熱反応開始剤としては、アゾ、ペルオキシド、ペルスルフェート及びレドックス反応開始剤、並びにこれらの混合物が挙げられる。所望により、光反応開始剤と熱反応開始剤との混合物を用いてもよい。反応開始剤は、典型的には、総コーティング組成物重量に基づいて、約10重量%未満、より典型的には約5重量%未満の総量で用いられる。
【0032】
代表的な接着促進剤としては、3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート及びビニルトリメトキシシランのようなオレフィン性官能性を含有する光グラフト可能なシランエステルが挙げられる。これらの光グラフト可能なシランエステルは、結合剤と反応して、ペンダントシロキシ基(pendent siloxy group)を有するシリルグラフト化物質を形成することができる。かかるシロキシ基は、マイクロ粒子、隣接するコーティング層、又は基材と結合を形成し、それにより改善された接着、改善されたコーティング耐久性又はその両方を提供するために利用可能であり得る。他の代表的な接着促進剤としては、3−アミノプロピルトリメトキシシラン及びそのオリゴマー[例えば、シルクエスト(SILQUEST)(商標)A−1110{GEシリコーンズ(GE Silicones)、コネチカット州ウィルトン(Wilton)}]のようなアミノ置換オルガノシラン;3−アミノプロピルトリエトキシシラン及びそのオリゴマー{例えば、シルクエスト(商標)A−1100及びシルクエスト(商標)A−1106(GEシリコーンズ)};3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン{例えば、シルクエスト(商標)A−1120(GEシリコーンズ)};シルクエスト(商標)A−1130(GEシリコーンズ);(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリメトキシシラン;アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリエトキシシラン;N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン{例えば、シルクエスト(商標)A−2120(GEシリコーンズ)};ビス−(γ−トリエトキシシリルプロピル)アミン{例えば、シルクエスト(商標)A−1170(GEシリコーンズ)};N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリブトキシシラン;6−(アミノヘキシルアミノプロピル)トリメトキシシラン;4−アミノブチルトリメトキシシラン;4−アミノブチルトリエトキシシラン;p−(2−アミノエチル)フェニルトリメトキシシラン;3−アミノプロピルトリス(メトキシエトキシエトキシ)シラン;3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン;3−(N−メチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン[例えば、ディナシラン(DYNASYLAN)(商標)1146{シベント・シランズ(Sivento Silanes)、ニュージャージー州、ピスカタウェイ(Piscataway)}]のようなオリゴマー性アミノシラン;N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン;N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン;N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン;N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン;3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン;3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン;3−アミノプロピルジメチルメトキシシラン;3−アミノプロピルジメチルエトキシシラン;4−アミノフェニルトリメトキシシラン;3−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン;2,2−ジメトキシ−1−アザ−2−シラシクロペンタン−1−エタンアミン;2,2−ジエトキシ−1−アザ−2−シラシクロペンタン−1−エタンアミン;2,2−ジエトキシ−1−アザ−2−シラシクロペンタン;2,2−ジメトキシ−1−アザ−2−シラシクロペンタン;N,N−ジメチルアニリン及びジアザビシクロオクタンのような三級アミン;並びに((RO)Si(CH)NR)C=Oのようなビス−シリル尿素が挙げられる。接着促進剤の混合物を用いてもよい。
【0033】
当業者は、本発明のコーティング組成物が、界面活性剤、静電気防止剤(例えば、導電性ポリマー)、平滑化剤(leveling agents)、紫外線(「UV」)吸収剤、安定剤、酸化防止剤、潤滑剤、色素又は他の乳白剤、染料、可塑剤、懸濁化剤などを含む、他の任意補助剤を含有することができることを理解するであろう。
【0034】
本発明のコーティングは、当業者によく知られた種々の技術を用いて塗布することができる。代表的なコーティング方法としては、ダイコーティング、ナイフコーティング、スプレーコーティング、カーテンコーティング及びディップコーティングが挙げられる。コーティング組成物は、例えば、移動ウェブ(moving web)又は他の支持体若しくは基材をコーティングすることにより、コーティングされた物品のロール又は長いコーティング長さを提供する、連続的方式で塗布してもよい。コーティング組成物は、代わりに又はさらに、個々の又は複数の別個の基材部分に塗布し、例えば、1つ以上の単独又は重ねてコーティングされた物品を提供することができる。
【0035】
本発明は、以下の実施例においてさらに例示されるが、その中での全ての部、百分率及び比は、特に指示がない限り重量基準である。特に断りのない限り、溶媒及び試薬は全てアルドリッチ・ケミカル社(ウィスコンシン州ミルウォーキー)から入手した。全ての百分率、部、及び量は、特に指定がない限り重量基準である。下塗りされていないポリエステルは、商標スコッチパー(Scotchpar)(商標)として入手可能なものを、3M社{ミネソタ州セントポール(St. Paul)}から入手した。ダイネオン(Dyneon)(商標)フルオロポリマーTHV220、ダイネオン−FC 2145フルオロポリマー及びフルオロエラストマーFPO 3470並びにフッ素化アクリルポリマーノベック(Novec)(商標)もまた3M社から入手した。ダイネオンTF 2071、ポリ(テトラフルオロエチレン)粉末(PTFE粉末)は3M社から入手した。ポリジメチルシロキサン修飾ヒュームドシリカ(ヒュームドエアロシル(Fumed Aerosil)TS−720)は、カボット社(Cabot Company)(イリノイ州シカゴ)から入手した。トリメチロールプロパントリアクリレートSR 351(「TMPTA」)及びベンジルジメチルケタール紫外線光反応開始剤(KB−1)は、サートマー社(ペンシルバニア州エクストン)から入手した。ダロキュール1173反応開始剤は、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社(ニューヨーク州タリータウン)から入手した。
【0036】
水接触角測定は、ASTプロダクツ社(AST Products){マサチューセッツ州ビルリカ(Billerica)}から入手可能な、ビデオ接触角分析器モデルVCA−オプティマ(VCA-Optima)を用いて行った。測定は、ミリポア社(Millipore Corporation){マサチューセッツ州ビルリカ(Billerica)}製の濾過システムを通して濾過した試薬等級の脱イオン水を用いて行った。表1で報告した静的接触角測定値は、水滴の反対側の、測定した3滴に基づいた平均値である。水滴容量は、静的測定の場合5μLである。
【0037】
クロックメーター(Crockmeter)[アトラス・エレクトリック・デバイシズ社(Atlas Electric Devices){イリノイ州シカゴ(Chicago)60613}から入手可能なAATCCモデルCM5]を用いて、試料は耐久性(摩擦又は磨耗に対する耐性)に関して評価された。標本を乾いた標準的な綿布で摩擦し、9ニュートンの力で標本上に載っている装置(直径16mm)の触針下に実装した。100mmの摩擦距離及び60rpmのストローク速度を使用した。
【0038】
図1は、陥凹部分すなわち谷部分(2)及び起立部分すなわち隆起部分(3)を含む表面に塗布された、本発明の均一なコーティング組成物(5)を有する鋸歯(すなわちV溝)マイクロパターン化表面(1)の図である。図2は、クロックメーター装置で100サイクル研磨した後の、本発明の均一なコーティング組成物(5)を有する鋸歯マイクロパターン化表面(1)の図である。本発明のコーティングが試験により除去された起立部分の一部が、領域(7)として図示されている。陥凹部分(2)のコーティング組成物は、摩擦又は磨耗試験後にも残っており、表面全体が超疎水性特性を保持していた。
【0039】
マイクロパターン化表面の調製
代表的な光重合可能な樹脂組成物は、サートマー6210{74%、サートマー社(ペンシルバニア州エクストン)}として入手したウレタンアクリレートオリゴマー、サートマー238(25%、サートマー社)として入手したジアクリレートモノマー、及びダロキュール1173として入手した反応開始剤からなる溶液を作ることにより調製した。この溶液を室温で30分間混合し、使用前にオーブン内で25℃に加温した。
【0040】
マイクロパターン化表面を作製するためのある有用な方法では、ニッケルマスター工具はダイヤモンド切削工具を用いてダイヤモンド旋盤により作製される(米国特許第5,435,816号)。工具は複数のV溝を含む模様を有していた。V溝間の隆起部分の二面角はおよそ90°であった。溝のピッチ、すなわち、ある溝の最も低い部分から隣接する溝の最も低い部分への距離は、実施例1で用いられる工具の場合、約50マイクロメートル(μm)であった。溝の深さ(すなわち、溝の最も低い部分と隆起部分の頂上により画定される表面との間の距離)は約12.5μmであった。実施例2で用いられる工具の場合、刃先角は約60°であり、ピッチは約62.5μmであり、V溝の深さは約62.5μmであった。
【0041】
ポリエステル(PET、ポリエチレンテレフタレート)フィルムのシート(15cm×45cm)をマスター工具の上端部に貼り付け、折り重ねる。点眼器を用いて、マスター工具上の、貼り付けられたPET付近の幅全域に、光重合可能な樹脂組成物の量又は滴(幅12.7mm)を定置する。PETとマスター工具との間に樹脂溶液を右手で広げながら、左手でPETを持ち上げ、保持する。PETフィルムを光重合可能な樹脂組成物の上に置く時、均一な圧力を樹脂組成物の反対のPETシート側に適用し、樹脂組成物をPETにより被覆されたニッケルマスター工具上に均一に広げる。光重合可能な樹脂組成物を、次いで、紫外線(UV)光[フュージョン(Fusion)「D」電球、フュージョンUVシステムズ社(Fusion UV Systems){メリーランド州ゲイサーズバーグ(Gaithersburg)から入手可能}]下で硬化した。工具、光重合可能な組成物及びPETを含む構造を、10.7m/分で2回通過させ紫外線光に曝露する。樹脂の重合又は硬化後、マイクロ構造化「V」溝を備える表面を有する硬化した樹脂を有するPETを、マスター工具から分離する。
【0042】
疎水性コーティング組成物の調製#1
TS−720、約5nm〜約200nmのヒュームドシリカ疎水性粒子を含む粉末(1.5/100部)を、メチルエチルケトン(95/100部)に分散させる。フルオロエラストマーFPO 3740(2.7/100部)をこの分散物に添加し、15分間混合し、続いてTMPTA(0.5/100部)、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(0.25/100部)及びKB−1(0.05/100部)を添加し、得られる混合物を使用前に室温でさらに15分間攪拌する。
【0043】
疎水性コーティング組成物の調製#2
約3〜5μmの範囲のサイズのPTFE粉末(TF 2071)疎水性粒子(4.49/100部)を、メチルエチルケトン(95/100部)に分散した。次いで、ダイネオン2145として入手したフルオロポリマー(ヘキサフルオロプロピレン及びフッ化ビニリデンのコポリマー)(0.5/100部)を分散物に添加し、15分間混合し、続いて1,12−ジアミノドデカン(0.1/100部)を添加した。得られた混合物を使用前に室温でさらに15分間攪拌した。
【0044】
比較例のための下塗りされた基材の調製
比較例2の場合下塗剤溶液(1,6−ヘキサンジオールジアクリレート/ダロキュール1173、比99:1)、又は比較例3の場合3−アミノプロピルトリエトキシシラン(メタノール中に5重量%)、又は比較例4の場合光重合可能な樹脂組成物(上述のように調製)を、マイヤーバー(meyer bar)[#10、ポールNガードナー社(Paul N. Gardner Co., Inc.){フロリダ州ポンパノビーチ(Pompano Beach)}から入手可能]でPETフィルム上にコーティングして、厚さ5〜10μmのコーティングを得た。アミノシランで下塗りした基材を、使用前に100℃で10分間乾燥した。1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(HDODA)下塗剤及び光重合可能な樹脂組成物を、下塗りした材料を毎分10.7メートル(m/分)で紫外線光(フュージョン「D」電球)下を2回通過させることにより硬化した。
【0045】
比較例1
ヒュームドシリカ粒子で作製した疎水性コーティング組成物(上記、番号1)を、マイヤーバー(#20)で、下塗りしていないPETフィルム上にコーティングして、1〜15μmの厚さのコーティングを得た。試料を120℃のオーブン内で10分間乾燥し、次いで、10.7m/分で紫外線光(フュージョン「D」電球)下で架橋又は硬化した。表1で規定したように、クロック試験(Crock test)での多数の試験サイクル後、接触角を測定することにより、試料を疎水性について評価した。
【0046】
比較例2
ヒュームドシリカ粒子で作製した疎水性コーティング組成物(上記、番号1)を、マイヤーバー(#20)で、1,6−ヘキサンジオールジアクリレートで下塗りしたPETフィルム上にコーティングし、1〜15μmの厚さのコーティングを得た。比較例1で記載したように、同じオーブン乾燥及び紫外線硬化処理により試料を処理した。接触角測定の結果を表1に示す。
【0047】
比較例3
ヒュームドシリカ粒子で作製した疎水性コーティング組成物(上記、番号1)を、マイヤーバー(#20)で、3−アミノプロピルトリエトキシシランで下塗りしたPETフィルム上にコーティングし、1〜15μmの厚さのコーティングを得た。比較例1で記載したように、同じオーブン乾燥及び紫外線硬化処理により試料を処理した。接触角測定の結果を表1に示す。
【0048】
比較例4
ヒュームドシリカ粒子で作製した疎水性コーティング組成物を、マイヤーバー(#20)で、PETフィルム(マイクロパターン化表面を作製するための上記光重合可能な組成物で下塗りした)上にコーティングし、1〜15μmの厚さのコーティングを得た。比較例1で記載したように、同じオーブン乾燥及び紫外線硬化処理により試料を処理した。接触角測定の結果を表1に示す。
【0049】
(実施例1)
疎水性コーティング組成物(上記番号1で指定した)を、マイヤーバー(#20)で、「V」溝(上記のように調製した)を備えるPET上にコーティングし、1〜8μmの厚さのコーティングを得た。試料を120℃のオーブン内で10分間乾燥し、次いで、10.7m/分で紫外線光(フュージョン「D」電球)下で架橋又は硬化した。表1で規定したような試験サイクル後、接触角を測定することにより試料を評価した。
【0050】
(実施例2)
疎水性コーティング組成物(番号1で指定した)を、マイヤーバー(#20)で、「V」溝(上記のように調製した)を備えるPET上にコーティングして、1〜25μmの厚さのコーティングを得た。実施例1で記載したように、オーブン乾燥及び紫外線硬化処理により試料を処理した。試料のデータを表1に報告する。
【0051】
(実施例3)
疎水性コーティング組成物(番号2で指定した)を、マイヤーバー(#20)で、「V」溝(「V」溝方向に)を備えるPET上にコーティングして、1〜25μmの厚さのコーティングを得た。試料を140℃のオーブン内で15分間乾燥し、組成物中のポリマーを熱的に架橋又は硬化する。表1で規定したような多数の試験サイクル後、接触角を測定することにより疎水性について試料を評価した。
【0052】
【表1】

【0053】
10サイクル後に測定した接触角
表1のデータは、クロックメーター試験で繰り返し摩擦した後、超疎水性表面を示す、大きな接触角(150°)を優位に保持することにより、比較例と比較して、本発明の実施例は耐久性が実質的に改善されていることを示す。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】マイクロパターン化表面上の本発明のコーティング組成物の図。
【図2】クロックメーター試験装置で100サイクル摩擦した後の、マイクロパターン化表面上の本発明のコーティング組成物の略図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
起立部分、陥凹部分又はこれらの組み合わせを含むマイクロパターン化表面を有する基材上に高疎水性又は超疎水性表面を提供するために十分な量の、結合剤及び疎水性マイクロ粒子、疎水性ナノ粒子、又はこれらの混合物を含む液体組成物を付着する工程と、
前記液体組成物を乾燥又は別の方法で硬化する工程と、を含む、高疎水性又は超疎水性表面の形成方法。
【請求項2】
乾燥又は硬化した組成物が、前記マイクロパターン化表面の突出形状によって遮断された不連続コーティングを形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記マイクロ粒子又は前記ナノ粒子が、不溶性金属酸化物又は金属塩を含む表面改質粒子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記マイクロ粒子又は前記ナノ粒子が、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、酸化チタン又は酸化ジルコニウムを含む表面改質粒子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記マイクロ粒子及び前記ナノ粒子がシリカ粒子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記マイクロ粒子又は前記ナノ粒子が、前記粒子の疎水性を強化するために、少なくとも1つの加水分解基を有する加水分解反応性シランと触媒とに十分な時間接触させることにより改質されている、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記マイクロパターン化表面の前記起立部分が、前記表面の前記陥凹部分上又は他の部分上にある約5μm〜約150μmの規則的反復形状である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記マイクロパターン化表面が、約10μm〜約250μmの長さのピッチを有する反復突出形状を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記結合剤が炭化水素ポリマー又はフルオロポリマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記フルオロポリマーが、ポリ−1,1−ジフルオロエチレン;テトラフルオロエチレン及びヘキサフルオロプロピレンのコポリマー;ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン及びエチレンのターポリマー;並びに、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン及び1,1−ジフルオロエチレン(difluorethylene)のターポリマーからなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記基材が、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、ポリビニルブチラール、セルロースアセテート及びコブチラート、フルオロポリマー、並びにシリコーンゴムからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
起立部分、陥凹部分又はこれらの組み合わせを含むマイクロパターン化表面を有する基材と;少なくとも起立部分間又は陥凹部分内の一部に位置し、結合剤及び疎水性マイクロ粒子、疎水性ナノ粒子、又はこれらの混合物を含む前記基材上のコーティング組成物とを高疎水性又は超疎水性表面を提供するために十分な量で含む物品。
【請求項13】
前記コーティング組成物が、前記マイクロパターン化表面の起立部分によって遮断される不連続層を形成する、請求項12に記載の物品。
【請求項14】
前記マイクロ粒子又は前記ナノ粒子が、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、及びこれらの混合物から選択される材料を含む、請求項12に記載の物品。
【請求項15】
前記マイクロ粒子又は前記ナノ粒子が、前記粒子の疎水性を強化するために、少なくとも1つの加水分解基を有する加水分解的反応性シランと触媒とに十分な時間接触させることにより改質されている、請求項14に記載の物品。
【請求項16】
前記マイクロ粒子及び前記ナノ粒子がシリカ粒子を含む、請求項15に記載の物品。
【請求項17】
前記基材の材料が、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリビニルブチラール、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、セルロースアセテート及びコブチラート、フルオロポリマー、並びにシリコーンゴムからなる群から選択される、請求項12に記載の物品。
【請求項18】
前記基材が、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリエステル、フルオロポリマー、及びフッ素化アクリルポリマーからなる群から選択される、請求項17に記載の物品。
【請求項19】
前記結合剤が炭化水素ポリマー又はフルオロポリマーを含む、請求項12に記載の物品。
【請求項20】
フルオロポリマーが、ポリ−1,1−ジフルオロエチレン;テトラフルオロエチレン及びヘキサフルオロプロピレンのコポリマー;ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン及びエチレンのターポリマー;並びにテトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン及び1,1−ジフルオロエチレンのターポリマーからなる群から選択される、請求項19に記載の物品。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−541033(P2009−541033A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−516605(P2009−516605)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【国際出願番号】PCT/US2007/065628
【国際公開番号】WO2007/149617
【国際公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】