説明

耐候性の改良された放射線硬化性コーティング

【課題】微小亀裂及び自発的層間剥離又はチョーキングに対する耐性を始めとする耐候性が大幅に改善された放射線硬化性コーティング組成物の提供。
【解決手段】(A)少なくとも1種類以上のアクリル単量体、(B)紫外線硬化のための少なくとも1種の光重合開始剤を含む放射線硬化性コーティング組成物中に、特定の化学式で表されるトリアジン又はジベンゾイルレゾルシノール誘導体又はその混合物から選択される紫外線吸収剤の有効量を配合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体基材上に塗布して硬化したときに該固体基材に改善された耐候性と耐摩耗性を与えるのに有用な放射線硬化コーティングに関する。より詳細には、本発明は、微小亀裂及び自発的な層間剥離又はチョーキングに対する耐性が大幅に改善された塗膜を与える紫外線硬化コーティング組成物に含まれるある種の紫外線吸収剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート及びポリ(メタクリル酸メチル)のような熱可塑性プラスチック基材は一般に、透明性、高い延性、高い加熱撓み温度、並びに寸法安定性など数多くの優れた性質によって特徴付けられる。これらの材料の多くは透明であり、幾多の商用用途においてガラス代替物として従来より使用されている。しかし、こうした材料は引掻傷や摩耗を生じ易く、そのため透明度が減少してしまうおそれがある。これらは往々にして耐化学溶剤性が低く、しかも紫外線による劣化を受けやすい。その結果、黄変及び基材表面のエロージョンを始めとする不都合な特徴を呈する。
【0003】
そのため、熱可塑性プラスチック基材の耐候性及び耐摩耗性を改良するための様々な方法が開発されてきた。そうした方法では熱可塑性プラスチック基材の表面をコーティング材で処理することが慣用的に用いられており、そうしたコーティング材には屋外曝露条件による黄変を低減するベンゾフェノンやベンゾトリアゾール誘導体のような紫外線吸収剤が含まれているのが通例である。コーティング材は耐摩耗性を向上させるためのケイ素化合物も含み得る。増大した耐摩耗性をもつコーティングには、熱硬化されるいわゆる「ハードコート」並びに紫外線(UV)照射などの放射線で硬化することのできるケイ素化合物含有組成物が包含される。
【0004】
紫外線硬化性(すなわち、放射線硬化性)の耐摩耗性コーティング組成物は、フリーラジカル型の光重合開始剤を用いて硬化することのできるアクリル単量体中に硬質コロイドシリカ充填剤を分散したものである。紫外線硬化コーティング組成物はその硬化時間が短いので有利である。このようなコーティングはそれらで被覆された熱可塑性プラスチック基材に増大した耐候性又は耐摩耗性又は耐候性と耐摩耗性の組合せを与える。
【0005】
多数の紫外線硬化性耐摩耗コーティングが当技術分野において公知である。米国特許第4455205号には、シリルアクリレート、水性コロイドシリカ、光重合開始剤及び任意成分として多官能性アクリレートを含んでなる組成物が開示されている。その他存在し得る物質には、安定剤として用いられる紫外線吸収剤、及びヒンダードアミンがある。
【0006】
別のタイプの紫外線硬化性コーティング組成物が米国特許第4486504号に開示されており、この組成物にはコロイドシリカ、シリルアクリレート、多官能性アクリレート及び光重合開始剤が含まれている。米国特許第4491508号記載のものには、コロイドシリカ、シリルアクリレート、多官能性アクリレート及び光重合開始剤が含まれている。これら二つの米国特許には、紫外線安定剤又はそうした紫外線安定剤に変換し得る化合物の任意成分としての存在についても開示されている。米国特許第4863802号には、基本的に同じタイプのコーティング組成物で、紫外線吸収量のダイマー形ベンゾトリアゾール化合物を安定剤としてさらに含んでいるものが開示されている。2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドのようなアシルリン化合物を使った同様の組成物が米国特許第5162390号に開示されており、紫外線安定剤としてのベンゾトリアゾール及びベンゾフェノンの使用についても開示されている。
【0007】
最近、ポリカーボネートのような熱可塑性プラスチック基材を屋外で使用することが段々と普及してきた。そこで、紫外線硬化性コーティングに耐候性を賦与することが重要である。耐候性コーティング系は、ベンゾトリアゾール及びベンゾフェノンのような紫外線吸収剤並びにヒンダードアミン系光安定剤を配合することによって調製することができる。しかし、日光、湿気及び熱サイクル条件に長期間曝露すると、黄変、層間剥離及び微小亀裂形成を起こして、透明性を減少させることがある。こうした状態は、上記各米国特許に開示された組成物において、記載された性質の一つが改善された耐候性であるときでも、様々な程度でみられることが多い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、そこで、紫外線を吸収してコーティングの耐候性を向上させることのできる新規な改善された紫外線硬化性コーティング(本明細書中では「UV硬化コーティング」とも呼ぶ)を提供することを目的としたものである。本発明は、また、現在公知の耐候性用コーティングに比べ、黄変、層間剥離及び微小亀裂の形成を低減することでコーティング及び被覆製品の耐候性を大幅に改善するコーティング組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第一の態様において、本発明は、少なくとも1種類のアクリル単量体、光重合開始剤、及びトリアジン又はジベンゾイルレゾルシノール誘導体又はその混合物から選択される紫外線吸収剤を含んでなる改良放射線硬化性コーティング組成物を提供するが、上記ジベンゾイルレゾルシノール誘導体は次式
【0010】
【化5】

【0011】
[式中、Ar及びAr′は独立に置換又は非置換の単環式又は多環式アリール基であり、R′はH或いは−Si(OR(ただしRはC〜Cアルキル基である)をもつ炭素数約10未満の線状又は枝分れアルキル基である]を有しており、上記トリアジン吸収剤は次式
【0012】
【化6】

【0013】
[式中、Arは独立に置換又は非置換の単環式又は多環式アリール基であり、R′は炭素数1〜16の線状又は枝分れアルキル基或いはR′はCHCH(OH)CHOR(ただしRはC〜C16線状又は枝分れアルキル基である)である]を有する。放射線硬化性コーティングは一般に紫外線で硬化され、UV硬化性コーティングと呼ぶことができる。また、ジベンゾイルレゾルシノール誘導体は多くの場合4,6−ジベンゾイル−2−(3−トリアルコキシシリルアルキル)レゾルシノールであり、好ましくは4,6−ジベンゾイル−2−(3−トリエトキシシリルプロピル)レゾルシノールである。トリアジンの具体例はチバガイギー(Ciba Geigy Corp.)社の製品であるTinuvin 400、或いはサイテック(Cytec)社の製品であるCyagard 1164である。
【0014】
本発明の第二の態様では、上記紫外線吸収剤が放射線硬化ケイ素化合物含有コーティング組成物中に配合される。かかるケイ素化合物の例はヘキサンジオールジアクリレート単量体中のシリルアクリレート改質コロイドシリカであり、これはGEシリコーンズ(GE Silicones)社のFCS100として知られる製品である。ケイ素化合物及び本発明のUV吸収剤を有するコーティングは、紫外線安定剤としてベンゾトリアゾール類及びベンゾフェノン類を含むコーティング組成物に比べて、耐摩耗性及び改善された耐候性を与える。
【0015】
本発明の第三の態様では、上記コーティング系が固体基材の表面に塗布され、耐候性(特に耐紫外線性)の改善された被覆固体基材を与える。かかる被覆固体基材は熱可塑性プラスチック基材でも耐候性基材でもよい。使用し得る熱可塑性プラスチック基材には、多くの場合、ポリカーボネート類及びポリカーボネートブレンド、ポリ(メタクリル酸メチル)を始めとするアクリル系ポリマー類、ポリ(エチレンテレフタレート)やポリ(ブチレンテレフタレート)のようなポリエステル類、ポリアミド類、ポリイミド類、アクリロニトリル−スチレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリスチレンとポリフェニレンエーテルのブレンド、ブチレート、ポリエチレンなどのポリマー基材が含まれる。熱可塑性プラスチック基材は顔料を含んでいても含んでいなくてもよい。さらに、固体基材には金属基材、塗面、ガラス、セラミック及びテキスタイルも包含される。ただし、本発明のコーティング組成物は好ましくはポリカーボネートの被覆に使用される。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、現在公知の耐候性用コーティングに比べ、黄変、層間剥離及び微小亀裂の形成を低減することでコーティング及び被覆製品の耐候性を大幅に改善するコーティング組成物を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の第一の態様では、(A)少なくとも1種類のアクリル単量体、(B)組成物の紫外線硬化のための少なくとも1種類の光重合開始剤、及び(C)トリアジン又はジベンゾイルレゾルシノール誘導体又はその混合物から選択される少なくとも1種類の紫外線吸収剤の有効量を含んでなる放射線硬化性コーティング組成物であって、上記ジベンゾイルレゾルシノール誘導体が次式
【0018】
【化7】

【0019】
[式中、Ar及びAr′は独立に置換又は非置換の単環式又は多環式アリール基であり、R′はH或いは−Si(OR(ただしRはC〜Cアルキル基である)をもつ炭素数約10未満の線状又は枝分れアルキル基である]を有するものであり、上記トリアジン吸収剤が次式
【0020】
【化8】

【0021】
[式中、Arは独立に置換又は非置換の単環式又は多環式アリール基であり、R′は炭素数1〜16の線状又は枝分れアルキル基或いはR′はCHCH(OH)CHOR(ただしRはC〜C16線状又は枝分れアルキル基である)である]を有するものである、放射線硬化性コーティング組成物が提供される。さらに、上記組成物は、該組成物の紫外線劣化を防止するのに有効な量の少なくとも1種類のヒンダードアミン光安定剤並びに界面活性剤又は均展剤を含んでいてもよい。本発明の液体コーティング組成物の粘度は、反応性稀釈剤又は溶剤又はその両方としての低粘度モノアクリレート又はジアクリレートで該組成物を稀釈することによって調整し得る。コーティングの粘度調整にはその他の溶剤(例えばイソプロパノールとプロピレングリコールメチルエーテルの混液など)も使用し得る。コーティング組成物の粘度はコーティングの塗布方法に基づいて調整される。
【0022】
本発明の第二の態様は、コーティングの配合にケイ素化合物を追加した上記のUV硬化性コーティング組成物に関する。ケイ素化合物の存在は、引掻及び表面損傷耐性が重要性をもつ用途でのコーティングの耐摩耗性の向上に役立つ。往々にして、コーティング組成物に耐摩耗性を賦与するためのシリカアクリレートの製造にシリルアクリレートが使われる。試薬A(多官能性アクリレート)、試薬B(光重合開始剤)及び試薬C(トリアジン又はジベンゾイルレゾルシノール誘導体又はその混合物から選択される紫外線吸収剤)はケイ素化合物を有するコーティング組成物においても同じである。
【0023】
本発明の組成物における試薬Aは少なくとも1種類のアクリル単量体である。用語「アクリル単量体」は、一般に、アクリル酸、メタクリル酸及びそれらの同族体及び類似体(例えばエチルアクリル酸、フェニルアクリル酸、クロロアクリル酸など)のエステル及びアミドが包含される。好ましい酸はアクリル酸及びメタクリル酸であり、概してアクリル酸が最も好ましい。アクリル単量体は好ましくはエステルである。ただし、以後用いる「アクリレート」という用語には、対応する化学式がメタクリレートを示す場合にはメタクリレートも包含される。コーティング組成物の改質に使用することのできるアクリル単量体のその他の例は、ジペンタエリトリトールペンタアクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレート、ジ−トリメチロールプロパンテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリトリトールトリアクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、オクタンジオールジアクリレート、デカンジオールジアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、オクチル/デシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、N−ビニルピロリドン、脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー、及び脂肪族ポリエステルアクリレートオリゴマーである。特にウレタンアクリレートが用いられる。
【0024】
往々にして、アクリルエステルの少なくとも一部は、シリルアクリレート改質コロイドシリカの製造に使用されるシリルアクリレートである。シリルアクリレートは本発明の第二の態様において使用し得る。好適なシリルアクリレートには次式のものがある。
【0025】
【化9】

【0026】
上記式中、Rは水素又はメチルであり、RはC1−8アルキレン基であり、RはC1−13アルキル又はアリール基であり、RはC1−8アルキル基であり、aは0〜3である。特に好ましいのは、Rがメチルで、RがC2−4アルキレン、特にトリメチレンで、Rはメチルで、しかもaが0であるアクリレートである。
【0027】
試薬Aは少なくとも1種類の多官能性アクリル単量体を含んでなるものでもよい。かかる単量体には次式の化合物がある。
【0028】
【化10】

【0029】
上記式中、Rは上記で定義した通りであるが、ここでは好ましくは水素であり、Rは多価有機基であり、bは2〜8の整数である。Rは大抵は炭素数約4〜20の脂肪族基である。好ましくは、bは5〜6であって、Rはアルキレン、特にテトラメチレン、ヘキサメチレン又はオクタメチレンのような、枝分れのないアルキレンである。本発明に好適な多官能性アクリル単量体の具体例は、ジペンタエリトリトールモノヒドロキシペンタアクリレート(DiPePeta、サートマー社(Sartomer Co.)のSR−399)、六官能性ポリウレタンアクリレート(PU、UCBラドキュア社(UCB Radcure Inc.)のEbecryl 1290)、及び六官能性ポリエステルアクリレート(PE、UCBラドキュア社のEbecryl 830)、及びジペンタエリトリトールヘキサアクリレートがある。
【0030】
試薬Bは、コーティング組成物の組成物の紫外線硬化のための少なくとも1種類の開始剤(以後「光重合開始剤」ということもある)である。このような光重合開始剤は当技術分野において多数知られており、どれも本発明での使用に適している。光重合開始剤は、上記で引用した各米国特許並びに米国特許第4478876号及び同第5318850号に開示されているタイプの中から選択し得る。さらに例を挙げると、アセトフェノン、ベンゾフェノン、キサントン及びベンゾイン化合物などの芳香族ケトン;トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン及び4−ジメチルアミノベンゾフェノンなどの第三アミン;トリオルガノベンゾイルジアリールホスフィンオキシド、トリオルガノベンゾイルジオルガノホスホネート及びトリオルガノベンゾイルジアリールホスフィンスルフィドを始めとするアシルリン化合物がある。アシルリン化合物が好ましく、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドが特に好ましいことが多く、これはBASF社(BASF Corporation)からLucirin(登録商標)TPOとして市販されている。
【0031】
その他の光重合開始剤は、ベンゾイン誘導体(ベンゾインイソプロピルエーテル)、ベンジルケタール類(チバガイギー社のIrgacure(登録商標)651)、ジエトキシアセトフェノン(チバガイギー社のIrgacure(登録商標)184)、置換α−アミノケトン類(チバガイギー社のIrgacure(登録商標)907)、及びベンゾイルオキシム誘導体である。
【0032】
試薬Cは上記に示したタイプの紫外線(UV)安定剤又は吸収剤である。紫外線安定剤は、微小亀裂形成、層間剥離及び黄変へとつながるタイプの紫外線劣化を防止するのに有効な量ではあるが組成物の紫外線硬化を実質的に阻害する効果のない量で存在する。好ましいUV安定剤は4,6−ジベンゾイル−2−(3−トリエトキシシリルプロピル)レゾルシノールである。
【0033】
ヒンダードアミン光安定剤(HALS)は、コーティング組成物母材と混和性であるように十分に低い塩基性度をもつものであれば、当業者に公知の如何なるヒンダードアミン光安定剤であってもよい。具体例には、Tinuvin 123(チバガイギー社)及びSanduvor 3058(クラリアント(Clariant)社)がある。その他の低塩基性度HALSも本発明のコーティング組成物に有効であると期待される。
【0034】
耐摩耗性を与えるために本発明のコーティング組成物に使用することのできるケイ素化合物には、シリルアクリレート改質シリカでシリカの平均粒度が約5〜80nmの範囲(これはコロイドシリカの平均粒度に相当する)にあるものがあり、特に約15〜30nmの平均粒度のものが好ましい。コロイドシリカは水性その他の溶媒中にサブミクロンサイズのシリカ粒子が分散したものであり、その中のシリカ濃度は通例約15〜50重量%の範囲にある。本発明の組成物の調製に水性シリカ分散液を使用する場合、シリルアクリレートのSiO結合の少なくとも一部(aが3未満のとき)が加水分解を起こす可能性があり、その可能性が高いといってもよい。したがって、本発明の組成物には、かかるシリルアクリレートの加水分解生成物が含まれていることもある。本発明で使用することのできるシリルアクリレート改質コロイドシリカの具体例は、GEシリコーンズ社製の商品であるFCS100であり、これはヘキサンジオールジアクリレート単量体中約50重量%のシリルアクリレート改質コロイドシリカである。その製造方法は米国特許第5468789号に記載されている。
【0035】
一般に、本発明のUV硬化性コーティング組成物は、界面活性剤、均展剤又はそれらの混合物を含み得る。界面活性剤又は均展剤の具体例はUCBラドキュア社のEbecryl 1360である。一般に、本発明の組成物は約50〜90重量%のアクリル単量体を含有する。光重合開始剤は一般に約0.5〜5.0重量%を占め、紫外線吸収剤は大概は約1〜20重量%の量で用いられる。ヒンダードアミンを使用する場合、その量は組成物の約0.1〜4.0重量%である。本発明の第二の態様におけるようにシリカアクリレートが添加される場合、それは約5〜40重量%を占める。
【0036】
本発明の組成物は、望ましい割合の各種試薬を単にブレンディングすることによって調製し得る。溶剤が存在する場合及び/又はコロイドシリカがケイ素化合物源である場合、揮発分を減圧ストリッピングのような慣用操作で除去してもよい。本発明の組成物は、次いで、基材に対して浸漬塗装、刷毛塗り、ローラー塗り又は流し塗りのような慣用技術で塗布し得る。基材は大抵はポリカーボネート、ポリエステル、又はポリ(メタクリル酸メチル)のようなアクリル樹脂である。このようにして形成したコーティングは好ましくは約3〜25ミクロンの厚さを有し、通例は約10ミクロンの厚さである。
【0037】
塗布後、組成物は適当な紫外線に曝露することによって硬化される。硬化温度は臨界的ではないが、約25℃〜約70℃の範囲内とし得る。塗装及び硬化のために連続ラインを用いるのが好ましいことが多い。本発明の組成物で被覆された固体基材製品並びにその硬化製品は、本発明の別の態様をなす。
【実施例】
【0038】
本発明を以下の例で例示するが、以下の例における紫外線硬化性コーティング組成物は、ヘキサアクリレートポリウレタン、シリルアクリレート改質コロイドシリカ、上記で説明した本発明のUV吸収剤並びに伝統的なベンゾフェノン系及びベンゾトリアゾール系UV吸収剤を含めた各種UV吸収剤、ヒンダードアミン光安定剤、界面活性剤及び光重合開始剤に基づくものであった。組成物の粘度は、反応性稀釈剤又は溶剤又はその両方としてのモノアクリレートで稀釈することによって調整した。
【0039】
例A−F例A−Fのコーティング組成物は、六官能性ポリウレタンアクリレート(Ebecryl(登録商標)1290、UCBラドキュア社)に基づいており、これをヘキサンジオールジアクリレート単量体中約20重量%シリルアクリレート改質コロイドシリカ(FCS100、GEシリコーンズ社)と混合した。製品のFCS100はヘキサンジオールジアクリレート中約50重量%のシリルアクリレート改質コロイドシリカである。耐候性組成物を、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン(DHBP)、シラン化ヒドロキシベンゾフェノン(SHBP)、ベンゾトリアゾール(Cyagard(登録商標)5411、サイテック社(CytecIndustries Inc.))、トリアジン(Tinuvin(登録商標)400、チバガイギー社)、4,6−ジベンゾイルレゾルシノール(DBR)、4,6−ジベンゾイル−2(3−トリエトキシシリルプロピル)レゾルシノール(SDBR)などの各種のUV吸収剤を用いて調製した。上記組成物は、さらに、ヒンダードアミン光安定剤(Tinuvin(登録商標)123、チバガイギー社)及び界面活性剤又は均展剤(Ebecryl(登録商標)1360、UCBラドキュア社)を含んでいた。すべての組成物で、架橋被膜を生成させるための光重合開始剤として2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(Lucirin(登録商標)TPO、BASF社)を使用した。さらに、組成物は、塗布粘度を調整するためにイソプロパノールとプロピレングリコールメチルエーテルの混合溶剤で稀釈した。適宜モノアクリレート反応性稀釈剤をコーティング組成物の粘度の調整に使用することができる。配合の詳細を表1にまとめた。すべてのUV吸収剤は5.5〜6phr(parts per hundred resin solids;樹脂固形物百部当たりの部)のレベルで使用した。ただし、ここでいう固形物はアクリル改質コロイドシリカとアクリレート単量体からなっていた。
【0040】
【表1】

【0041】
上記の各組成物を4インチ×6インチ×0.125インチのLexan9030(登録商標)パネル上に流し塗りし、次いで1分間自然乾燥し、65℃の対流オーブン中で4分間乾燥して溶剤を除去した。300ワット/インチ中圧水銀ランプ2基を備えたUVプロセッサーを用いて空気雰囲気中25フィート/分のコンベヤーベルト速度でUV光の下に被覆パネルを6回通過させることによってコーティングを硬化した。すべての組成物は光学的に透明なコーティングを与えた。硬化したコーティングの厚さは約10〜15ミクロンであった。
【0042】
異なるUV吸収剤を含有するコーティングをキセノンアーク促進ウェザオメーター内で曝露した。光透過率(%)、ヘーズ(曇り度,%)及び黄色度指数(YI)などの光学的特性を定期的に測定した。さらに、テープ引張試験(3M)を用いてクロスハッチ接着性を評価するとともに、微小亀裂及び自発的層間剥離又はチョーキングについてコーティングを目視検査した。340nmでのUV光曝露における、様々な故障についての耐候性試験結果を表2にまとめた。
【0043】
【表2】

【0044】
コーティング組成物A〜Fについての上記の結果は、例D、E及びFに示す本発明のUV吸収剤で優れた結果が得られたことを示している。放射線硬化コーティング配合物に使用した先行技術のUV吸収剤は例A、B及びCに示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)少なくとも1種類のアクリル単量体、(B)組成物の紫外線硬化のための少なくとも1種類の光重合開始剤、及び(C)トリアジン又はジベンゾイルレゾルシノール誘導体又はその混合物から選択される少なくとも1種類の紫外線吸収剤の有効量を含んでなる放射線硬化性コーティング組成物であって、上記ジベンゾイルレゾルシノール誘導体が次式
【化1】

[式中、Ar及びAr′は独立に置換又は非置換の単環式又は多環式アリール基であり、R′はH或いは−Si(OR(ただしRはC〜Cアルキル基である)をもつ炭素数10未満の線状又は枝分れアルキル基である]を有するものであり、上記トリアジン吸収剤が次式
【化2】

[式中、Arは独立に置換又は非置換の単環式又は多環式アリール基であり、R′は炭素数1〜16の線状又は枝分れアルキル基或いはR′はCHCH(OH)CHOR(ただしRはC〜C16線状又は枝分れアルキル基である)である]を有するものである、放射線硬化性コーティング組成物。
【請求項2】
シリルアクリレート改質コロイドシリカを含む、請求項1記載の放射線硬化性コーティング組成物。
【請求項3】
前記アクリル単量体がウレタンアクリレートである、請求項1又は2記載の放射線硬化性コーティング組成物。
【請求項4】
前記光重合開始剤が2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドである、請求項1〜3のいずれか1項記載の放射線硬化性コーティン組成物。
【請求項5】
前記シリルアクリレート改質コロイドシリカを製造するためのシリルアクリレートが次式:
【化3】

[式中、Rは水素又はメチルであり、RはC1−8アルキレン基であり、RはC1−13アルキル又はアリール基であり、RはC1−8アルキル基であり、aは0〜3である]を有する、請求項2記載の放射線硬化性コーティング組成物。
【請求項6】
界面活性剤又は均展剤を含む、請求項1〜5のいずれか1項記載の放射線硬化性コーティング組成物。
【請求項7】
当該組成物の紫外線劣化を防止するのに有効な量の少なくとも1種類のヒンダードアミン光安定剤を含む、請求項1〜6のいずれか1項記載の放射線硬化性コーティング組成物。
【請求項8】
5〜40重量%のシリルアクリレート改質コロイドシリカ、50〜90重量%の多官能性アクリレート、0.5〜5重量%の成分(B)、1〜20重量%の成分(C)、及び0.1〜4.0重量%の少なくとも1種類のヒンダードアミン光安定剤、及び界面活性剤又は均展剤を含む、請求項2記載の放射線硬化性コーティング組成物。
【請求項9】
5〜40重量%のシリルアクリレート改質コロイドシリカ(ただし、該シリカは15〜30nmの平均粒度を有していて、ヘキサンジオールジアクリレート中のシラン官能化コロイドシリカである)、50〜90重量%の六官能性ポリウレタンアクリレート、0.5〜5.0重量%の2,4,6−トリメチルベンゾイルトリフェニルホスフィンオキシド、1〜20重量%の次式
【化4】

[式中、Ar及びAr′は独立に置換又は非置換の単環式又は多環式アリール基であり、R′はH或いは−Si(OR(ただしRはC〜Cアルキル基である)をもつ炭素数約10未満の線状又は枝分れアルキル基である]のジベンゾイルレゾルシノール誘導体UV吸収剤、及び0.1〜4.0重量%の少なくとも1種類のヒンダードアミン光安定剤、及び界面活性剤又は均展剤を含んでなる放射線硬化性コーティング組成物であって、当該コーティングがアルコール又はグリコールエーテル型の溶剤又はそれらの混合物中に稀釈されている、放射線硬化性コーティング組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項記載の組成物で被覆された固体基材。

【公開番号】特開2008−179823(P2008−179823A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−26619(P2008−26619)
【出願日】平成20年2月6日(2008.2.6)
【分割の表示】特願平9−217475の分割
【原出願日】平成9年8月12日(1997.8.12)
【出願人】(506390498)モーメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・インク (85)
【Fターム(参考)】