説明

耐候性ハードコート組成物及び被覆物品

【課題】透明性、耐衝撃性、耐熱製などに優れたガラスに替わる耐候性ハードコート組成物を提供すること。
【解決手段】有機樹脂基材の少なくとも一方の面に直接被覆するための耐候性ハードコート組成物であって、下記成分を含む。(1)下記式(1-1)、(1-2)及び(1-3)で表されるアルコキシシラン並びにそれらの部分加水分解縮合物から選ばれる少なくとも1種を(共)加水分解・縮合することにより得られたシリコーンレジン、(R1)m(R2)nSi(OR3)4-m-n(1-1)、(R4O)3-p(R6)pSi-R8-Si(R7)q(OR5)3-q(1-2)、X-[(R15)Si(R16)y(OR17)3-y]z(1-3)、(2)有機系紫外線吸収性基及び反応性基を側鎖に有するビニル系共重合体、(3)硬化触媒、(4)溶剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機樹脂基材の少なくとも一方の面に直接被覆するための耐候性ハードコート組成物であって、(1)特定のシリコーンレジン、(2)特定のビニル系共重合体、(3)硬化触媒及び(4)溶剤を含む耐候性ハードコート組成物に関する。更に、このハードコート組成物を有機樹脂基材に被覆、硬化したハードコート層を積層してなる被覆物品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、透明板ガラスの代替として、非破砕性又はガラスよりも耐破砕性の大きい透明材料を使用することが広く行われるようになってきた。例えばプラスチック基材、特にポリカーボネート樹脂等は、透明性、耐衝撃性、耐熱性等に優れていることから、ガラスに代わる構造部材として建物や車両等の窓用、計器カバー等、種々の用途に現在用いられている。
【0003】
しかし、ガラスに比べて耐擦傷性、耐候性等の表面特性に劣ることから、ポリカーボネート樹脂成形品の表面特性を改良することが切望されており、最近では、車両の窓、道路用遮音壁等に屋外暴露10年以上でも耐え得るものが要望されている。
【0004】
ポリカーボネート樹脂成形品の耐候性を改良する手段としては、ポリカーボネート樹脂基材の表面に耐候性に優れたアクリル系樹脂フィルム等をラミネートする方法や、共押出等により樹脂表面に紫外線吸収剤を含有した樹脂層を設ける方法が提案されている。
【0005】
また、ポリカーボネート樹脂成形品の耐擦傷性を改良する方法としては、ポリオルガノシロキサン系、メラミン系等の熱硬化性樹脂をコーティングする方法や多官能性アクリル系の光硬化性樹脂をコーティングする方法が提案されている。
【0006】
一方、耐候性及び耐擦傷性を併せ持つ透明体を製造する方法としては、特開昭56−92059号公報及び特開平1−149878号公報(特許文献1,2)等に記載があり、多量の紫外線吸収剤を添加した下塗り層を介してコロイダルシリカ含有ポリシロキサン塗料の保護被膜を設けた紫外線吸収透明基板が知られている。
【0007】
しかしながら、下塗り層への多量の紫外線吸収剤の添加は、基材や下塗り層の上面に塗布されるコロイダルシリカ含有ポリシロキサン塗料による保護被膜との密着性を悪くしたり、加熱硬化工程中に、例えば揮発化することによって組成物中から除去されてしまったり、屋外で長期間に亘って使用した場合、徐々に紫外線吸収剤がブリードアウトしてクラックが生じたり、白化する或いは黄変するといった悪影響があった。更に、その上面のコロイダルシリカ含有ポリシロキサンからなる保護被膜層には、耐擦傷性の面から紫外線吸収剤を多量に添加できないという問題もあった。
【0008】
また、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収性ビニル系単量体あるいはベンゾフェノン系紫外線吸収性ビニル系単量体と、この単量体に共重合可能なビニル系単量体の混合物を塗料成分とし、これを用いて合成樹脂等の表面に保護塗膜を形成することが知られている(特開平8−151415号公報:特許文献3)。しかし、この保護被膜は、ビニル系重合体からなるため、耐擦傷性に限界がある。
【0009】
更に、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収性ビニル系単量体あるいはベンゾフェノン系紫外線吸収性ビニル系単量体、アルコキシシリル基含有ビニル系単量体、及びこれら単量体に共重合可能なビニル系単量体との共重合体を塗料成分とすることで、樹脂基材への密着性を保ちつつ耐候性を付与した多層積層樹脂物品が得られることが知られている[特開2001−114841号公報、特許第3102696号公報、特開2001−214122号公報、特開2001−47574号公報、特開2008−120986号公報、特開2008−274177号公報(特許文献4〜9)]。
【0010】
これらは共重合体含有塗料を下塗り剤とし、その被膜上にコロイダルシリカ含有ポリシロキサン樹脂被膜を形成することで耐擦傷性及び耐候性を付与した被覆物品を得ている。これらについてはポリシロキサン樹脂被膜との密着性及び耐候性はかなり改善されるものの、下塗り層のアルコキシシリル基の架橋ネットワーク化が十分に進行しないため、未硬化の残存アルコキシシリル基又はヒドロキシシリル基の経時での後架橋が生起し、被膜に歪みが生じ易いため、クラックや剥離といった不具合が発生し易く、長期の耐候性にはなお不十分であった。更に被膜が急激な環境温度変化、特に比較的高い温度での変化に曝されると、上記の後架橋によるクラックが発生し易いという欠点もあった。
【0011】
更に、特開2004−1393号公報(特許文献10)では、基材とプライマー層であるアクリル樹脂層との間の線膨張率の差及びプライマー層とポリシロキサン硬化層との間の線膨張率の差を規定することで、密着性、クラック性を改良している。しかしこのプライマー層には、紫外線吸収剤を多量に含むことができず、長期の耐候性にはなお不十分であった。
【0012】
以上のような有機樹脂基材の表面の下塗り層上にポリシロキサン硬質被膜を積層した物品の製造には、少なくとも2種類以上の塗料及びそれらを塗工する工程が必要である。近年、こうした煩雑な材料及び工程がしばしば問題となり、より簡単な材料構成及び工程が切望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開昭56−92059号公報
【特許文献2】特開平1−149878号公報
【特許文献3】特開平8−151415号公報
【特許文献4】特開2001−114841号公報
【特許文献5】特許第3102696号公報
【特許文献6】特開2001−214122号公報
【特許文献7】特開2001−47574号公報
【特許文献8】特開2008−120986号公報
【特許文献9】特開2008−274177号公報
【特許文献10】特開2004−1393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、長期に亘り、クラック、剥離、黄変といった欠点がなく、耐候性に優れた耐擦傷性被膜を形成するためのハードコート組成物、及びこれを用いた被覆物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、有機樹脂基材の表面に、特定のシリコーンレジン成分(1)と有機系紫外線吸収性基及び反応性基を側鎖に有するビニル系共重合体成分(2)とを含むハードコート組成物からなる硬化被膜を被覆することで、従来の有機樹脂基材、特にポリカーボネート成形基材の上に、下塗り層及びハードコート層の少なくとも2層が必要であったシステムを、ポリカーボネート成形基材の上に、耐候性ハードコート層の少なくとも1層を被覆する新しい簡便なシステムとすることを見出した。この耐候性ハードコート層は、特定のシリコーンレジン成分(1)と特定の有機系紫外線吸収性基及び反応性基を側鎖に有するビニル系共重合体成分(2)とを含む耐候性ハードコート組成物からなり、(1)成分のシリコーンレジン成分に起因すると推定される耐摩耗性を有すること、及び(2)成分のビニル系共重合体成分に由来する基材への密着性に優れる効果を有すること、更に(2)成分のビニル系共重合体成分を構成する有機系紫外線吸収性基に由来する高度な耐候性を併せ持つことを見出した。
【0016】
組成物構成成分として、特定のシリコーンレジン成分(1)及び有機系紫外線吸収性基と反応性基が側鎖に結合したビニル系共重合体(2)とを含む耐候性ハードコート組成物からなる被膜は、前記シリコーンレジン成分(1)中のシラノール同士のシロキサン架橋及び/又は本シラノールとビニル系共重合体(2)の反応性基との架橋反応とにより、耐擦傷性が発現する。更に、前記ビニル系共重合体(2)は、有機系紫外線吸収性基が側鎖に結合しており、かつ、該組成物からなる被膜内にてビニル系共重合体が架橋するため、紫外線吸収性基が被膜中で固定されることにより、紫外線吸収性基の被膜表面への移行が極めて起こり難くなり、外観の白化現象や密着性の低下がなくなる点、水、溶剤等への溶出・流出がなく経時による紫外線吸収効果の低下が少ない点、高温で熱硬化処理を行っても被膜から紫外線吸収性基が揮散しない点から、大幅に耐候性が向上、しかも長期に亘りその機能が維持されることを見出した。
【0017】
本発明は、下記に示す耐候性及び耐擦傷性を有する保護被膜を形成するのに好適な耐候性ハードコート組成物、及び該組成物を被覆した被覆物品を提供する。
[I]有機樹脂基材の少なくとも一方の面に直接被覆するための耐候性ハードコート組成物であって、下記成分を含むことを特徴とする耐候性ハードコート組成物。
(1)下記一般式(1−1)、(1−2)及び(1−3)で表されるアルコキシシラン並びにそれらの部分加水分解縮合物から選ばれる少なくとも1種を(共)加水分解・縮合することにより得られたシリコーンレジン、
(R1m(R2nSi(OR34-m-n (1−1)
(式中、R1及びR2は、各々独立に、水素原子、又は非置換もしくは置換の一価炭化水素基であり、置換基同士が相互に結合していてもよく、R3は、炭素数1〜3のアルキル基であり、m、nは、各々独立に、0又は1であり、かつm+nは、0、1又は2である。)
(R4O)3-p(R6pSi−R8−Si(R7q(OR53-q (1−2)
(式中、R4及びR5は、各々独立に、炭素数1〜3のアルキル基であり、R6及びR7は、各々独立に、水素原子、又は非置換もしくは置換の一価炭化水素基であり、R8は、酸素原子、フェニレン基、又は非置換もしくは置換の炭素数2〜10のアルキレン基であり、p、qは、各々独立に、0又は1である。)
X−[(R15)Si(R16y(OR173-yz (1−3)
(式中、Xは、1,3,5−トリメチルシクロトリシロキサン残基、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン残基、又はイソシアヌレート残基であり、R15は、炭素数1〜3のアルキレン基であり、R16は、水素原子、又は非置換もしくは置換の一価炭化水素基であり、R17は、炭素数1〜3のアルキル基であり、yは、0又は1であり、zは、3又は4である。)
(2)有機系紫外線吸収性基及びアルコキシシリル基、水酸基、エポキシ基、カルボン酸基、アミノ基から選ばれる反応性基を側鎖に有するビニル系共重合体、
(3)硬化触媒、
(4)溶剤。
但し、(1)シリコーンレジンの固形分量と(2)ビニル系共重合体の固形分量の質量比率(1)/(2)が10/90〜50/50である。
[II](1)シリコーンレジンが、式(1−1)、(1−2)及び(1−3)のSiモル%の比率(1−1)/〔(1−2)+(1−3)〕で、50/50〜0/100であることを特徴とする[I]記載の耐候性ハードコート組成物。
[III]式(1−1)中のR1がメチル基又は紫外線吸収性基で置換された一価炭化水素基、m=1、n=0、R3がメチル基であり、式(1−2)中のR8が非置換もしくは置換の炭素数2〜8のアルキレン基、p,q=0、R4,R5がメチル基であり、かつ式(1−3)中のXがイソシアヌレート残基、y=0、R17がメチル基、z=3であることを特徴とする[I]又は[II]記載の耐候性ハードコート組成物。
[IV](1)シリコーンレジンが、式(1−2)及び(1−3)で表されるアルコキシシラン並びにそれらの部分加水分解縮合物から選ばれる少なくとも1種を加水分解・縮合することにより得られたシリコーンレジンであることを特徴とする[I]〜[III]のいずれかに記載の耐候性ハードコート組成物。
[V](1)シリコーンレジンが、式(1−3)で表されるアルコキシシラン及びその部分加水分解縮合物を加水分解・縮合することにより得られたシリコーンレジンであることを特徴とする[I]〜[III]のいずれかに記載の耐候性ハードコート組成物。
[VI](2)成分が、下記(2−1)〜(2−3)からなる単量体成分を共重合して得られる共重合体であることを特徴とする[I]〜[V]のいずれかに記載の耐候性ハードコート組成物。
(2−1)有機系紫外線吸収性基を有するビニル系単量体:5〜50質量%、
(2−2)アルコキシシリル基、水酸基、又はエポキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する反応性基含有ビニル系単量体:2〜30質量%、
(2−3)これら単量体と共重合可能な他の単量体:20〜93質量%。
[VII](2−2)成分が、水酸基含有ビニル系単量体であることを特徴とする[VI]記載の耐候性ハードコート組成物。
[VIII]更に、(5)水を含むことを特徴とする[I]〜[VII]のいずれかに記載の耐候性ハードコート組成物。
[IX]更に、(6)無機酸化物微粒子を含むことを特徴とする[I]〜[VIII]のいずれかに記載の耐候性ハードコート組成物。
[X](6)成分がシリカ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする[IX]記載の耐候性ハードコート組成物。
[XI]更に、(2)成分以外の有機系紫外線吸収剤及び/又は有機系紫外線安定剤を含むことを特徴とする[I]〜[X]のいずれかに記載の耐候性ハードコート組成物。
[XII]有機樹脂基材の少なくとも一方の面に直接、[I]〜[XI]のいずれかに記載の耐候性ハードコート組成物からなる硬化被膜で被覆した物品であって、その性状が、接着試験を少なくとも97%の割合で合格し、テーバー摩耗試験において15%未満のデルタヘイズ値(ΔHz)を示すことを特徴とする被覆物品。
[XIII]有機樹脂基材がポリカーボネート樹脂による成形基材であることを特徴とする[XII]記載の被覆物品。
【発明の効果】
【0018】
本発明の耐候性ハードコート組成物は、有機系紫外線吸収性物質を被膜内に大量に保持できるため耐光性が大幅に向上し、更にシロキサン架橋することで被膜内に有機系紫外線吸収剤が固定化されるため紫外線吸収剤の経時流失が防がれ、またビニル系共重合体とシリコーンレジンとが架橋することにより生じる有機−無機複合体は、線膨張係数が低下し、かつ耐候性に富むバインダーとなるため、耐水性、耐溶剤性、耐光性に優れた紫外線吸収性保護被膜を与える。本耐候性ハードコート組成物を、耐候性に劣る物品に被覆・硬化させれば、物品の着色や劣化を抑制し、良好な耐候性を付与できる。
本発明の耐候性ハードコート組成物により被膜を施された有機樹脂物品、特にポリカーボネート樹脂は、優れた透明性、耐候性を付与することができるばかりでなく、更に耐擦傷性、耐薬品性も併せて付与可能なため、車両、飛行機等の運送機の窓、風防、建物の窓、道路の遮音壁等屋外で使用される用途に好適なものである。
更に、本発明の耐候性ハードコート組成物を用いることで、従来よりも簡便な工程で被覆物品を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る耐候性ハードコート組成物の必須成分は、(1)特定のシリコーンレジン、(2)有機系紫外線吸収性基と反応性基とが側鎖に結合したビニル系共重合体、(3)硬化触媒、及び(4)溶剤である。
【0020】
シリコーンレジン(1)
本発明の耐候性ハードコート組成物の第一の成分である特定のシリコーンレジン(1)は、下記一般式(1−1)、(1−2)及び(1−3)で表されるアルコキシシラン並びにそれらの部分加水分解縮合物から選ばれる少なくとも1種を(共)加水分解・縮合することにより得られる。
(R1m(R2nSi(OR34-m-n (1−1)
(式中、R1及びR2は、各々独立に、水素原子、又は非置換もしくは置換の一価炭化水素基であり、置換基同士が相互に結合していてもよく、R3は、炭素数1〜3のアルキル基であり、m、nは、各々独立に、0又は1であり、かつm+nは、0、1又は2である。)
(R4O)3-p(R6pSi−R8−Si(R7q(OR53-q (1−2)
(式中、R4及びR5は、各々独立に、炭素数1〜3のアルキル基であり、R6及びR7は、各々独立に、水素原子、又は非置換もしくは置換の一価炭化水素基であり、R8は、酸素原子、フェニレン基、又は非置換もしくは置換の炭素数2〜10のアルキレン基であり、p、qは、各々独立に、0又は1である。)
X−[(R15)Si(R16y(OR173-yz (1−3)
(式中、Xは、1,3,5−トリメチルシクロトリシロキサン残基、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン残基、イソシアヌレート残基であり、R15は、炭素数1〜3のアルキレン基であり、R16は、水素原子、又は非置換もしくは置換の一価炭化水素基であり、R17は、炭素数1〜3のアルキル基であり、yは、0又は1であり、zは、3〜4の整数である。)
【0021】
上記式(1−1)中、R1及びR2は、水素原子又は非置換もしくは置換の好ましくは炭素数1〜30、特に1〜20の一価炭化水素基であり、例えば、水素原子;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基;フェニル基等のアリール基;クロロメチル基、γ−クロロプロピル基、3,3’,3’’−トリフルオロプロピル基等のハロゲン置換炭化水素基;γ−メタクリロキシプロピル基、γ−グリシドキシプロピル基、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル基、γ−メルカプトプロピル基、γ−アミノプロピル基、γ−イソシアネートプロピル基、ヒドロキシベンゾフェノンオキシプロピル基等の(メタ)アクリロキシ基、エポキシ基、メルカプト基、アミノ基、イソシアネート基、又は紫外線吸収性基置換の炭化水素基等を例示することができる。また、置換基同士が相互に結合したものとして、複数のイソシアネート基置換炭化水素基同士が結合したイソシアヌレート基も例示することができる。これらの中でも、特に耐擦傷性や耐候性が要求される用途に使用する場合にはアルキル基、紫外線吸収性基置換炭化水素基が好ましく、靭性や染色性が要求される場合にはエポキシ基、(メタ)アクリロキシ基、イソシアヌレート基置換炭化水素基が好ましい。更に、メチル基、紫外線吸収性基置換炭化水素基がより好ましい。
【0022】
また、R3は、炭素数1〜3のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基を例示することができる。これらの中でも、加水分解縮合の反応性が高いこと、及び生成するアルコールR3OHの蒸気圧が高く、留去のし易さ等を考慮すると、メチル基、エチル基が好ましい。更に、メチル基がより好ましい。
【0023】
上記式の例としては、m=0、n=0の場合、一般式:Si(OR34で表されるテトラアルコキシシラン、もしくはその部分加水分解縮合物である。このようなテトラアルコキシシラン、もしくはその部分加水分解縮合物の具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラメトキシシランの部分加水分解縮合物(商品名「Mシリケート51」多摩化学工業(株)製、商品名「MSI51」コルコート(株)製)、商品名「MS51」、「MS56」三菱化学(株)製)、テトラエトキシシランの部分加水分解縮合物(商品名「シリケート35」、「シリケート45」多摩化学工業(株)製、商品名「ESI40」、「ESI48」コルコート(株)製)、テトラメトキシシランとテトラエトキシシランとの共部分加水分解縮合物(商品名「FR−3」多摩化学工業(株)製、商品名「EMSi48」コルコート(株)製)等を挙げることができる。
【0024】
また、m=1、n=0あるいはm=0、n=1の場合、一般式:R1Si(OR33あるいはR2Si(OR33で表されるトリアルコキシシラン、もしくはその部分加水分解縮合物である。このようなトリアルコキシシラン、もしくはその部分加水分解縮合物の具体例としては、ハイドロジェントリメトキシシラン、ハイドロジェントリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリイソプロポキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、パーフルオロオクチルエチルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、ヒドロキシベンゾフェノンオキシプロピルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシランの部分加水分解縮合物(商品名「KC−89S」、「X−40−9220」信越化学工業(株)製)、メチルトリメトキシシランとγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランの部分加水分解縮合物(商品名「X−41−1056」信越化学工業(株)製)等を挙げることができる。
【0025】
m=1、n=1の場合、一般式:(R1)(R2)Si(OR32で表されるジアルコキシシラン、もしくはその部分加水分解縮合物である。このようなジアルコキシシラン、もしくはその部分加水分解縮合物の具体例としては、メチルハイドロジェンジメトキシシラン、メチルハイドロジェンジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルエチルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、メチルプロピルジメトキシシラン、メチルプロピルジエトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、ヒドロキシベンゾフェノンオキシプロピルメチルジメトキシシラン、及びこれらの部分加水分解縮合物等を挙げることができる。
【0026】
式(1−1)の例示されたものの中でもメチルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシランの部分加水分解縮合物(商品名「KC−89S」、「X−40−9220」信越化学工業(株)製)、ヒドロキシベンゾフェノンオキシプロピルトリメトキシシランがより好ましい。
【0027】
第二のアルコキシシラン、もしくはその部分加水分解縮合物として、下記式(1−2)で示されるものが挙げられる。
(R4O)3-p(R6pSi−R8−Si(R7q(OR53-q (1−2)
(式中、R4及びR5は、各々独立に、炭素数1〜3のアルキル基であり、R6及びR7は、各々独立に、水素原子、又は非置換もしくは置換の一価炭化水素基であり、R8は、酸素原子、フェニレン基、又は非置換もしくは置換の炭素数2〜10のアルキレン基であり、p、qは、各々独立に、0又は1である。)
【0028】
式(2)中、R4又はR5は、炭素数1〜3のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基を例示することができる。これらの中でも、加水分解縮合の反応性が高いこと、及び生成するアルコールR3OHの蒸気圧が高く、留去のし易さ等を考慮すると、メチル基、エチル基が好ましい。更に、メチル基がより好ましい。
【0029】
6及びR7は、水素原子又は非置換もしくは置換の好ましくは炭素数1〜12、特に1〜8の一価炭化水素基であり、例えば、水素原子;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基;フェニル基等のアリール基;クロロメチル基、γ−クロロプロピル基、3,3’,3’’−トリフルオロプロピル基等のハロゲン置換炭化水素基;γ−メタクリロキシプロピル基、γ−グリシドキシプロピル基、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル基、γ−メルカプトプロピル基、γ−アミノプロピル基、γ−イソシアネートプロピル基等の(メタ)アクリロキシ基、エポキシ基、メルカプト基、アミノ基、イソシアネート基置換炭化水素基等を例示することができる。これらの中でも、特に耐擦傷性や耐候性が要求される用途に使用する場合にはアルキル基が好ましく、中でもメチル基がより好ましい。
【0030】
また、R8は、酸素原子、フェニレン基、又は非置換もしくは置換の炭素数2〜10のアルキレン基であり、二価のアルキレン基のうち好ましくは、非置換もしくはハロゲン置換の炭素数2〜10のアルキレン基であり、例えば、エチレン基、1,3−プロピレン基、1,4−ブチレン基、1,6−へキシレン基、1,8−オクチレン基、3,3,4,4,5,5,6,6−オクタフルオロ−1,8−オクチレン基、1,10−デカチレン基、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8−ドデカフルオロ−1,10−デシレン基等を例示することができる。これらの中でも、特に耐擦傷性や耐候性が要求される用途に使用する場合には、非置換もしくはハロゲン置換の炭素数2〜10のアルキレン基が好ましく、中でも、エチレン基、1,6−へキシレン基、3,3,4,4,5,5,6,6−オクタフルオロ−1,8−オクチレン基、1,10−デシレン基、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8−ドデカフルオロ−1,10−デシレン基がより好ましい。
【0031】
上記式(1−2)の例としては、ビスアルコキシシラン、もしくはその部分加水分解縮合物である。このようなビスアルコキシシラン、もしくはその部分加水分解縮合物の具体例としては、1,2−エチレンビス(トリメトキシシラン)、1,2−エチレンビス(メチルジメトキシシラン)、1,6−へキシレンビス(トリメトキシシラン)、1,6−へキシレンビス(メチルジメトキシシラン)、3,3,4,4,5,5,6,6−オクタフルオロ−1,8−オクチレンビス(トリメトキシシラン)、3,3,4,4,5,5,6,6−オクタフルオロ−1,8−オクチレンビス(メチルジメトキシシラン)等を挙げることができる。
【0032】
更に、第三のアルコキシシラン、もしくはその部分加水分解縮合物として、下記式(1−3)で示されるものが挙げられる。
X−[(R15)Si(R16y(OR173-yz (1−3)
(式中、Xは、1,3,5−トリメチルシクロトリシロキサン残基、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン残基、又はイソシアヌレート残基であり、R15は、炭素数1〜3のアルキレン基であり、R16は、水素原子、又は非置換もしくは置換の一価炭化水素基であり、R17は、炭素数1〜3のアルキル基であり、yは、0又は1であり、zは、3〜4の整数である。)
【0033】
式中、Xは、下記式(i)で示される1,3,5−トリメチルシクロトリシロキサン残基、下記式(ii)で示される1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン残基、又は下記式(iii)で示されるイソシアヌレート残基であり、これらの中でもイソシアヌレート残基が好ましい。
【0034】
【化1】

(式中、鎖線は結合手を示す。)
【0035】
15は、炭素数1〜3のアルキレン基であり、例えば、メチレン基、エチレン基、1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基を挙げることができる。これらの中でも1,3−プロピレン基が好ましい。
16は、式(1−2)中のR6,R7で示したものと同じ基が例示される。
17は、同じく、R4,R5で示したものと同じ基が例示される。
【0036】
上記式(1−3)の例としては、1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)シクロトリシロキサン、1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリス(3−トリエトキシシリルプロピル)シクロトリシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラキス(3−トリメトキシシリルプロピル)シクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラキス(3−トリエトキシシリルプロピル)シクロテトラシロキサン、トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、トリス(3−トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート等を挙げることができる。
【0037】
なお、上記式(1−1)〜(1−3)において、式(1−1)中のR1がメチル基又は紫外線吸収性基で置換された一価炭化水素基、m=1、n=0、R3がメチル基であり、式(1−2)中のR8が非置換もしくは置換の炭素数2〜8のアルキレン基、p,q=0、R4,R5がメチル基であり、かつ式(1−3)中のXがイソシアヌレート残基、y=0、R17がメチル基、z=3であることが好ましい。
【0038】
(1)成分のシリコーンレジンは、好ましくは前記(1−1)〜(1−3)成分を任意の割合で使用して調製すればよい。更に耐候性及び耐擦傷性を向上させるには、(1−1)/〔(1−2)+(1−3)〕のSiモル比で、50/50〜0/100の割合で使用することが好ましく、更には30/70〜0/100の割合で使用することが好ましい。この際、主成分となる(1−2)成分及び(1−3)成分の合計が50Siモル%未満では、ハードコート被膜の架橋密度が小さくなるために硬化性が低く、また硬化膜の硬度が低くなる傾向がある。
【0039】
なお、Siモル%は全Siモル中の割合であり、Siモルとは、モノマーであればその分子量が1モルであり、2量体であればその平均分子量を2で割った数が1モルである。
【0040】
(1)成分のシリコーンレジンを製造するに際しては、(1−1)成分、(1−2)成分及び(1−3)成分を公知の方法で(共)加水分解・縮合させればよい。例えば、(1−1)成分、(1−2)成分及び(1−3)成分のアルコキシシランもしくはその部分加水分解縮合物の単独又は混合物を、pHが1〜7.5、好ましくは2〜7の水で(共)加水分解させる。この際、水中にシリカゾル等の金属酸化物微粒子が分散されたものを使用してもよい。このpH領域に調整するため及び加水分解を促進するために、フッ化水素、塩酸、硝酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、クエン酸、マレイン酸、安息香酸、マロン酸、グルタール酸、グリコール酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸等の有機酸及び無機酸、もしくは表面にカルボン酸基やスルホン酸基を有する陽イオン交換樹脂等の固体酸触媒、あるいは酸性の水分散シリカゾル等の水分散金属酸化物微粒子を触媒に用いてもよい。また加水分解時にシリカゾル等の無機酸化物微粒子を水もしくは有機溶剤中に分散させたものを共存させてもよい。
【0041】
この加水分解において、水の使用量は(1−1)成分、(1−2)成分及び(1−3)成分のアルコキシシラン及び/又はその部分加水分解縮合物の合計100質量部に対して水20〜3,000質量部の範囲であればよいが、過剰の水の使用は、装置効率の低下ばかりでなく、最終的な組成物とした場合、残存する水の影響による塗工性、乾燥性の低下をも引き起こすおそれがある。更に保存安定性、耐擦傷性、耐クラック性を向上させるためには、50質量部以上150質量部未満とすることが好ましい。水が少ないと、得られるシリコーンレジンのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)分析におけるポリスチレン換算重量平均分子量が後述する最適領域にまで大きくならないことがあり、多すぎると、塗膜の耐クラック性を維持するための最適範囲にまで達しない場合がある。
【0042】
加水分解は、アルコキシシラン、もしくはその部分加水分解縮合物中に水を滴下又は投入したり、逆に水中にアルコキシシラン、もしくはその部分加水分解縮合物を滴下又は投入したりしてもよい。この場合、有機溶剤を含有してもよいが、有機溶剤を含有しないほうが好ましい。これは有機溶剤を含有するほど、得られるシリコーンレジンのGPC分析におけるポリスチレン換算重量平均分子量が小さくなる傾向があるためである。
【0043】
(1)成分のシリコーンレジンを得るには、前記の加水分解に続いて、縮合させる。縮合は、加水分解に続いて連続的に行えばよく、通常、液温が常温又は100℃以下の加熱下で行われる。100℃より高い温度ではゲル化する場合がある。更に80℃以上、常圧又は減圧下にて、加水分解で生成したアルコールを留去することにより、縮合を促進させてもよい。更に、縮合を促進させる目的で、塩基性化合物、酸性化合物、金属キレート化合物等の縮合触媒を添加してもよい。縮合工程の前又は最中に、縮合の進行度及び濃度を調整する目的で有機溶剤を添加してもよく、またシリカゾル等の無機酸化物微粒子を水もしくは有機溶剤中に分散させたものを添加してもよい。一般的にシリコーンレジンは縮合が進行すると共に、高分子量化し、水や生成アルコールへの溶解性が低下していくため、添加する有機溶剤としては、シリコーンレジンをよく溶解し、沸点が80℃以上の比較的極性の高い有機溶剤が好ましい。このような有機溶剤の具体例としてはイソプロピルアルコール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、ジアセトンアルコール等のアルコール類;メチルプロピルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール等のケトン類;ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、アニソール、ジオキサン、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエーテル類;酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸シクロヘキシル等のエステル類等を挙げることができる。
【0044】
加水分解・縮合により得られたシリコーンレジンのGPC分析におけるポリスチレン換算重量平均分子量は、1,500以上であることが好ましく、1,500〜50,000であることがより好ましく、2,000〜20,000であることが更に好ましい。分子量がこの範囲より低いと、塗膜の靱性が低く、クラックが発生し易くなる傾向があり、一方、分子量が高すぎると、硬度が低くなる傾向があり、また塗膜中の樹脂が相分離するために塗膜白化を引き起こす場合がある。
【0045】
耐候性ハードコート組成物の第二の成分である(2)成分は、有機系紫外線吸収性基及び反応性基を側鎖に有するビニル系共重合体である。このようなビニル系共重合体としては、有機系紫外線吸収性基がビニル系共重合体主鎖と結合していることが好ましく、更に反応性基もビニル系共重合体主鎖と結合していることが好ましい。このような共重合体は、(2−1)有機系紫外線吸収性基を有するビニル系単量体と、(2−2)反応性基含有ビニル系単量体と、(2−3)これら単量体と共重合可能な他の単量体とからなる単量体成分を共重合して得ることができる。
【0046】
ここで、(2−1)成分の有機系紫外線吸収性基を有するビニル系単量体については、分子内に紫外線吸収性基とビニル重合性基を含有していれば、如何なるものでも使用することができる。
【0047】
このような有機系紫外線吸収性基を有するビニル系単量体(2−1)の具体例としては、分子内に紫外線吸収性基を有する(メタ)アクリル系単量体が示され、下記一般式(2−1−1)で表されるベンゾトリアゾール系化合物、及び一般式(2−1−2)で表されるベンゾフェノン系化合物を挙げることができる。
【0048】
【化2】

(式中、Yは水素原子又は塩素原子を示す。R9は水素原子、メチル基、又は炭素数4〜8の第3級アルキル基を示す。R10は直鎖状又は分岐鎖状の炭素数2〜10のアルキレン基を示す。R11は水素原子又はメチル基を示す。nは0又は1を示す。)
【0049】
【化3】

(式中、R11は上記と同じ意味を示す。R12は非置換又は置換の直鎖状もしくは分岐鎖状の炭素数2〜10のアルキレン基を示す。R13は水素原子又は水酸基を示す。R14は水素原子、水酸基、又は炭素数1〜6のアルコキシ基を示す。)
【0050】
上記一般式(2−1−1)において、R9で示される炭素数4〜8の第3級アルキル基としては、tert−ブチル基、tert−ペンチル基、tert−ヘキシル基、tert−ヘプチル基、tert−オクチル基、ジtert−オクチル基等を挙げることができる。
10で示される直鎖状又は分岐鎖状の炭素数2〜10のアルキレン基としては、例えば、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、1,1−ジメチルテトラメチレン基、ブチレン基、オクチレン基、デシレン基等を挙げることができる。
【0051】
また、上記一般式(2−1−2)において、R12で示される直鎖状又は分岐鎖状の炭素数2〜10のアルキレン基としては、上記R10で例示したものと同様のもの、あるいはこれらの水素原子の一部をハロゲン原子で置換した基等を挙げることができる。R14で示される炭素数1〜6のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等を挙げることができる。
【0052】
上記一般式(2−1−1)で表されるベンゾトリアゾール系化合物の具体例としては、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、
2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−(メタ)アクリロキシメチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、
2−[2’−ヒドロキシ−5’−(2−(メタ)アクリロキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、
2−[2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−(2−(メタ)アクリロキシエチル)フェニル]−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、
2−[2’−ヒドロキシ−3’−メチル−5’−(8−(メタ)アクリロキシオクチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール
等を挙げることができる。
【0053】
上記一般式(2−1−2)で表されるベンゾフェノン系化合物の具体例としては、例えば、
2−ヒドロキシ−4−(2−(メタ)アクリロキシエトキシ)ベンゾフェノン、
2−ヒドロキシ−4−(4−(メタ)アクリロキシブトキシ)ベンゾフェノン、
2,2’−ジヒドロキシ−4−(2−(メタ)アクリロキシエトキシ)ベンゾフェノン、
2,4−ジヒドロキシ−4’−(2−(メタ)アクリロキシエトキシ)ベンゾフェノン、
2,2’,4−トリヒドロキシ−4’−(2−(メタ)アクリロキシエトキシ)ベンゾフェノン、
2−ヒドロキシ−4−(3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、
2−ヒドロキシ−4−(3−(メタ)アクリロキシ−1−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン
等を挙げることができる。
【0054】
上記紫外線吸収性ビニル系単量体としては、式(2−1−1)で表されるベンゾトリアゾール系化合物が好ましく、中でも2−[2’−ヒドロキシ−5’−(2−(メタ)アクリロキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾールが好適に使用される。
更に、上記紫外線吸収性ビニル系単量体は、1種を単独で又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0055】
有機系紫外線吸収性基を有するビニル系単量体(2−1)の使用量は、共重合組成で5〜50質量%、特に5〜30質量%が好ましい。5質量%未満では良好な耐候性が得られず、また、50質量%を超えると塗膜の密着性が低下したり、白化等の塗膜外観不良を引き起こしたりする場合がある。
【0056】
(2−2)の反応性基含有ビニル系単量体は、一分子中に1個のビニル重合性官能基と、1個以上の反応性基を含有するものであれば、如何なるものでも使用することができる。
【0057】
ビニル重合性官能基としては、ビニル基、ビニルオキシ基、(メタ)アクリルオキシ基、(α−メチル)スチリル基を含む炭素数2〜12の有機基を示すことができる。具体的には、ビニル基、5−ヘキセニル基、9−デセニル基、ビニルオキシメチル基、3−ビニルオキシプロピル基、(メタ)アクリルオキシ基等が挙げられる。反応性、入手のし易さから、(メタ)アクリルオキシ基を使用することが好ましい。
【0058】
反応性基としては、アルコキシシリル基、水酸基、エポキシ基、カルボン酸基、アミノ基等を挙げることができる。反応性、入手のし易さから、アルコキシシリル基、水酸基、エポキシ基を使用することが好ましい。
【0059】
反応性基含有ビニル系単量体(2−2)としては、例えば、水酸基含有ビニル系単量体である2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート、ポリプロピレングリコールメタクリレート、ポリ(エチレングリコールプロピレングリコール)メタクリレート、ポリ(エチレングリコールテトラメチレングリコール)メタクリレート、ポリ(プロピレングリコールテトラメチレングリコール)メタクリレート、グリセロールメタクリレート、ポリカプロラクトンメタクリレート、又はこれらのアクリレート類、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシプロピルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、シクロヘキセンジメタノールジビニルエーテル等を挙げることができる。これらの中でも、入手のし易さ及び反応性等から、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、又はこれらのアクリレート類が好ましい。
【0060】
また(2−2)としては、アルコキシシリル基含有ビニル系単量体であるメタクリロキシメチルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシウンデシルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、メタクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、アクリロキシメチルトリメトキシシラン、アクリロキシウンデシルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、スチリルトリメトキシシラン、スチリルメチルジメトキシシラン、スチリルトリエトキシシラン等を挙げることができる。これらの中でも、入手のし易さ、取り扱い性、架橋密度及び反応性等から、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、メタクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アクリロキシプロピルメチルジメトキシシランが好ましい。
【0061】
更に、(2−2)の例として、エポキシ基含有ビニル系単量体の代表的なグリシジルメタクリレートが好ましく使用できる。
【0062】
これらの中でも、水酸基含有ビニル系単量体である、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、これらのアクリレートを使用することがより好ましい。
【0063】
(2−2)の反応性基を含有するビニル系単量体の量は、共重合組成で2〜30質量%、特に3〜20質量%の範囲が好ましい。2質量%未満では得られるビニル系共重合体の(1)成分のシリコーンレジンとの相溶性が十分でなく、塗膜が白化する場合がある。またビニル系共重合体の反応性基とシリコーンレジン中のシラノールとの架橋により3次元ネットワークの形成が不十分となり、塗膜の耐熱性、耐久性が改良されない場合がある。また30質量%を超えるとビニル系共重合体の極性が高くなり、煮沸密着性が低下する場合がある。
【0064】
反応性基含有ビニル系単量体(2−2)は、前記単量体を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0065】
次に、上記単量体(2−1)及び(2−2)と共重合可能な他の単量体(2−3)としては、共重合可能な単量体であれば特に制限されないが、環状ヒンダードアミン構造を有する(メタ)アクリル系単量体、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、アルキルビニルエーテル、アルキルビニルエステル、スチレン、及びこれらの誘導体等を挙げることができる。
【0066】
環状ヒンダードアミン構造を有する(メタ)アクリル系単量体の具体例としては、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニルメタクリレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニルメタクリレート等が挙げられ、これらの光安定剤は2種以上併用してもよい。
【0067】
(メタ)アクリル酸エステル及びその誘導体の具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸イソヘキシル、(メタ)アクリル酸n−ヘプチル、(メタ)アクリル酸イソヘプチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n−ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸n−デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸n−ウンデシル、(メタ)アクリル酸n−ドデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸4−メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸4−t−ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸ベンジル等の一価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル類;
2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシプロピル(メタ)アクリレート、3−メトキシプロピル(メタ)アクリレート、2−メトキシブチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、4−メトキシブチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート(エチレングリコール単位数は例えば2〜20)、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート(プロピレングリコール単位数は例えば2〜20)等のアルコキシ(ポリ)アルキレングリコールの(メタ)アクリル酸エステル類;
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(エチレングリコール単位数は例えば2〜20)、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート(プロピレングリコール単位数は例えば2〜20)等の多価アルコールのポリ(メタ)アクリル酸エステル類;コハク酸モノ[2−(メタ)アクリロイルオキシエチル]、コハク酸ジ[2−(メタ)アクリロイルオキシエチル]、アジピン酸モノ[2−(メタ)アクリロイルオキシエチル]、アジピン酸ジ[2−(メタ)アクリロイルオキシエチル]、フタル酸モノ[2−(メタ)アクリロイルオキシエチル]、フタル酸ジ[2−(メタ)アクリロイルオキシエチル]等の非重合性多塩基酸と(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルとの(ポリ)エステル類;(メタ)アクリル酸2−アミノエチル、(メタ)アクリル酸2−(N−メチルアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(N−エチルアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(N,N−ジエチルアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピル、(メタ)アクリル酸4−(N,N−ジメチルアミノ)ブチル等のアミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリル酸グリシジル等のエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル類等を挙げることができる。
【0068】
(メタ)アクリロニトリルの誘導体の具体例としては、α−クロロアクリロニトリル、α−クロロメチルアクリロニトリル、α−トリフルオロメチルアクリロニトリル、α−メトキシアクリロニトリル、α−エトキシアクリロニトリル、シアン化ビニリデン等を挙げることができる。
(メタ)アクリルアミドの誘導体の具体例としては、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシ(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメトキシ(メタ)アクリルアミド、N−エトキシ(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエトキシ(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノメチル(メタ)アクリルアミド、N−(2−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N’−エチレンビス(メタ)アクリルアミド等を挙げることができる。
【0069】
アルキルビニルエーテルの具体例としては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル等を挙げることができる。
アルキルビニルエステルの具体例としては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、アクリル酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、ステアリン酸ビニル等を挙げることができる。
スチレン及びその誘導体の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等を挙げることができる。
【0070】
これらの単量体のうち、(メタ)アクリル酸エステル誘導体が好ましく、特に(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸4−メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸4−t−ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等が好ましい。
共重合可能な他の単量体(2−3)は、前記単量体を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0071】
共重合可能な他の単量体(2−3)の使用量は、共重合組成で20〜93質量%、特に50〜92質量%の範囲が好ましい。単量体(2−3)が多すぎると得られるビニル系共重合体と(1)のシリコーンレジンとの架橋が不十分となり、耐熱性、耐久性が改善されなかったり、良好な耐候性が得られない場合がある。
【0072】
前記ビニル系共重合体(2)において、有機系紫外線吸収性基を含有するビニル系単量体(2−1)と、反応性基を含有するビニル系単量体(2−2)と、前記共重合可能な他の単量体(2−3)との共重合反応は、これら単量体を含有する溶液にジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等のパーオキサイド類又はアゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物から選択されるラジカル重合用開始剤を加え、加熱下(50〜150℃、特に70〜120℃で1〜10時間、特に3〜8時間)に反応させることにより容易に得られる。
【0073】
なお、このビニル系共重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量は、1,000〜300,000、特に5,000〜250,000であることが好ましい。分子量が大きすぎると粘度が高くなりすぎて合成しにくかったり、取り扱いづらくなる場合があり、小さすぎると塗膜の白化等の外観不良を引き起こしたり、十分な接着性、耐久性、耐候性が得られない場合がある。
【0074】
また(1)成分のシリコーンレジン固形分量と(2)成分のビニル系共重合体固形分量の比率(1)/(2)は、質量比で、10/90〜50/50の範囲であり、特に、15/85〜45/55の範囲がより好ましい。質量比10/90より(1)成分が少ないと、ハードコート層としての耐擦傷性が十分でない場合がある。また質量比50/50より(2)成分が少ないと、基材との密着性が低下する場合がある。
【0075】
(3)成分は、通常用いられる硬化触媒が使用できる。具体的には、シリコーンレジン(1)中に含まれる、シラノール基、アルコキシ基等の縮合可能基が縮合する反応を促進する硬化触媒であり、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラート、プロピオン酸ナトリウム、プロピオン酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、ギ酸ナトリウム、ギ酸カリウム、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキサイド、テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド、テトラメチルアンモニウムアセテート、n−ヘキシルアミン、トリブチルアミン、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、ジシアンジアミド等の塩基性化合物類;テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、チタンアセチルアセトナート、アルミニウムトリイソブトキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド、トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム、ジイソプロポキシ(エチルアセトアセテート)アルミニウム、過塩素酸アルミニウム、塩化アルミニウム、コバルトオクチレート、コバルトアセチルアセトナート、鉄アセチルアセトナート、スズアセチルアセトナート、ジブチルスズオクチレート、ジブチルスズラウレート等の含金属化合物類;p−トルエンスルホン酸、トリクロル酢酸等の酸性化合物類などが挙げられる。この中で特にプロピオン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、ギ酸ナトリウム、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキサイド、テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド、トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム、ジイソプロポキシ(エチルアセトアセテート)アルミニウムが好ましい。
【0076】
(3)成分の配合量は、(1)成分のシリコーンレジンを硬化させるのに有効な量であればよく、特に限定されるものではないが、具体的には、シリコーンレジンの固形分に対し、0.0001〜30質量%であることが好ましく、より好ましくは0.001〜10質量%である。0.0001質量%未満であると硬化が不十分となり、硬度が低下する場合があり、30質量%より多いと塗膜にクラックが発生し易くなる場合や、耐水性が低下する場合がある。
【0077】
(4)成分は溶剤であり、(1)〜(3)成分を溶解する又は分散するものであれば特に限定されるものではないが、極性の高い有機溶剤が主溶剤であることが好ましい。有機溶剤の具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、ジアセトンアルコール等のアルコール類;メチルプロピルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール等のケトン類;ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、アニソール、ジオキサン、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸シクロヘキシル等のエステル類などを挙げることができ、これらからなる群より選ばれた1種もしくは2種以上の混合物を使用することができる。
【0078】
(4)成分の添加量としては、耐候性ハードコート組成物の固形分濃度を1〜30質量%、特に5〜25質量%とする量を用いることが好ましい。この範囲外では該組成物を塗布、硬化した塗膜に不具合が生じることがある。上記範囲未満の濃度では塗膜にタレ、ヨリ、マダラが発生し易くなり、所望の硬度、耐擦傷性が得られない場合がある。また上記範囲を超える濃度では、塗膜の流れスジ、白化、クラックが生じ易くなるおそれがある。
【0079】
耐候性ハードコート組成物は、(5)水を含んでいてもよい。水は新たに添加してもよいし、(1)シリコーンレジン中に存在する(共)加水分解の残存水をそのまま用いてもよい。(5)水を加えることで、(1)シリコーンレジンと(2)反応性基含有ビニル系共重合体との架橋反応を一部促進することができ、(1)成分と(2)成分とが反応した複合体の形成が容易となる。この複合体は、耐候性ハードコート組成物を硬化させた際に形成されるものであり、予め組成物中に一部存在していると、硬化がより促進されるため、好ましい。
【0080】
使用する水は特に制限はないが、酸性ないし中性が好ましい。水を酸性にする物質としては、ハードコート被膜にした際に塗膜中に残存しないものが好ましい。ハードコート被膜中に残存すると、期待した密着性、耐クラック性が得られない場合がある。より好ましくは有機酸がよく、具体的には、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、しゅう酸等の有機カルボン酸を挙げることができる。中でも被膜中に残存しないような揮発性を考慮すると、ギ酸、酢酸が好ましい。
水の使用量は、(2)ビニル系共重合体に相溶し、均一になれば、特に制限はない。具体的にはビニル系共重合体(2)中における反応性基1モルに対して、5モル未満の水量であることが好ましく、0.1モル以上5モル未満の水量がより好ましく、更に好ましくは0.3〜3モルの水量である。水の使用量が多すぎると保存安定性が低下することがあり、保存中又は使用中に増粘もしくはゲル化する場合がある。
【0081】
耐候性ハードコート組成物は、(6)無機酸化物微粒子を含んでいてもよい。無機酸化物微粒子の例としては、シリカ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム等があり、塗膜の硬度、耐擦傷性を特に高めたい場合や紫外線吸収性能を増強したい場合に、適量添加することができる。粒子径5〜200nm程度のナノサイズの微粒子が水や有機溶剤の媒体に分散している形態であり、市販されている水分散、有機分散タイプが使用可能である。シリカとしての具体的な例としては、日産化学工業(株)製スノーテックス−O、OS、OL、メタノールシリカゾル等を挙げることができる。
【0082】
また、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウムとしては、十分に光触媒活性が低いものを使用することができる。一般的な酸化物微粒子は紫外線遮蔽作用を有すると同時に光触媒としても機能する。このような酸化物微粒子を紫外線遮蔽剤としてコーティング剤に使用した場合、光触媒によるバインダーの劣化に伴うクラックが発生するが、上記の光触媒活性が十分に低いものを使用することでクラック発生が抑制される。このような光触媒活性が十分に低い酸化物微粒子の例としては、酸化物微粒子の表面をシリカ等の酸化物もしくは水酸化物で被覆し、好ましくは更に加水分解性シランにより表面処理されている表面被覆した酸化物微粒子である。例えば、酸化物微粒子の表面をAl、Si、ZrあるいはSn等のアルコキシドを用い、これを加水分解することで酸化物被覆を施したもの、又は、ケイ酸ナトリウム水溶液等を用い、中和させることにより表面に酸化物や水酸化物を析出させたもの、更には析出した酸化物や水酸化物を加熱して結晶性を高めたもの等を例示することができる。このような酸化物微粒子は、市販されているものが使用可能である。具体的な例として、CIKナノテック(株)製ZNTANB15WT%−E16、同E34、RTTDNB15WT%−E68、同E88等を挙げることができる。
【0083】
(6)無機酸化物微粒子の配合量は、(1)、(2)、(3)成分の合計100質量部に対して0〜40質量部の範囲であることが好ましい。配合する場合は、2質量部以上であることが好ましい。
【0084】
耐候性ハードコート組成物に、基材の黄変、表面劣化を助ける目的で、本発明の(2)成分以外の有機系紫外線吸収剤及び/又は有機系紫外線安定剤を添加することもできるが、本発明の耐候性ハードコート組成物と相溶性が良好で、かつ揮発性の低い有機系紫外線吸収剤及び/又は有機系紫外線安定剤が好ましい。
【0085】
有機系紫外線吸収剤としては、主骨格がヒドロキシベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系、トリアジン系である化合物誘導体が好ましい。更に側鎖にこれら有機系紫外線吸収剤を含有するビニルポリマー等の重合体、及び他のビニルモノマーとの共重合体、又はシリル化変性された有機系紫外線吸収剤、その(部分)加水分解縮合物等を用いることができる。
【0086】
具体的には、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−ベンジロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジエトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジプロポキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジブトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシ−4’−プロポキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシ−4’−ブトキシベンゾフェノン、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2−(2−ヒドロキシ−5−t−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート、2−(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシフェニル)−4,6−ジフェニルトリアジン、2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロキシエトキシ)ベンゾフェノンの(共)重合体、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールの(共)重合体、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノンとγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランとの反応物、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンとγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランとの反応物、これらの(部分)加水分解物等が挙げられる。これらの有機系紫外線吸収剤は2種以上を併用してもよい。
【0087】
有機系紫外線吸収剤の配合量は、(1)、(2)、(3)成分の合計100質量部に対して0〜100質量部が好ましく、配合する場合、好ましくは0.3〜50質量部、特に0.3〜30質量部である。
【0088】
有機系紫外線安定剤としては、分子内に1個以上の環状ヒンダードアミン構造を有し、本発明のハードコート組成物との相溶性がよく、また低揮発性のものが好ましい。紫外線光安定剤の具体例としては、3−ドデシル−1−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)ピロリジン−2,5−ジオン、N−メチル−3−ドデシル−1−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)ピロリジン−2,5−ジオン、N−アセチル−3−ドデシル−1−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)ピロリジン−2,5−ジオン、セバシン酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)、セバシン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジノールとトリデカノールとの縮合物、8−アセチル−3−ドデシル−7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ[4,5]デカン−2,4−ジオン、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β,β’−テトラメチル−3,9−(2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン)ジエタノールとの縮合物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β,β’−テトラメチル−3,9−(2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン)ジエタノールとの縮合物、また、光安定剤を固定化させる目的で、特公昭61−56187号公報にあるようなシリル化変性の光安定剤、例えば2,2,6,6−テトラメチルピペリジノ−4−プロピルトリメトキシシラン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジノ−4−プロピルメチルジメトキシシラン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジノ−4−プロピルトリエトキシシラン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジノ−4−プロピルメチルジエトキシシラン、更にこれらの(部分)加水分解物等が挙げられ、これらの光安定剤は2種以上併用してもよい。
【0089】
有機系紫外線光安定剤の配合量は、(1)、(2)、(3)成分の合計100質量部に対して0〜10質量部であることが好ましい。配合する場合、好ましくは0.03〜10質量部、特に0.03〜7.5質量部である。
【0090】
更に、本発明の耐候性ハードコート組成物には、必要に応じて、pH調整剤、レベリング剤、脱水剤、増粘剤、顔料、染料、金属粉、酸化防止剤、熱線反射・吸収性付与剤、可撓性付与剤、帯電防止剤、防汚性付与剤、撥水性付与剤等を本発明の効果に悪影響を与えない範囲内で添加することができる。
【0091】
例えば、耐候性ハードコート組成物の更なる保存安定性を得るために、液のpHを、好ましくは2〜7、より好ましくは3〜6とするのがよい。pHがこの範囲外であると、貯蔵性が低下することがあるため、pH調整剤を添加し、上記範囲に調整することもできる。耐候性ハードコート組成物のpHが上記範囲外にあるときは、この範囲より酸性側であれば、アンモニア、エチレンジアミン等の塩基性化合物を添加してpHを調整すればよく、塩基性側であれば、塩酸、硝酸、酢酸、クエン酸等の酸性化合物を用いてpHを調整すればよい。しかし、その調整方法は特に限定されるものではない。
【0092】
ここで、耐候性ハードコート組成物の塗布方法としては、通常の塗布方法で有機樹脂基材の上にコーティングすることができ、例えば、刷毛塗り、スプレー、浸漬、フローコート、ロールコート、カーテンコート、スピンコート、ナイフコート等の各種塗布方法を選択することができる。
【0093】
耐候性ハードコート組成物を塗布した後の硬化層は、空気中に放置して風乾させてもよいし、加熱してもよい。硬化温度、硬化時間は限定されるものではないが、基材の耐熱温度以下で10分〜2時間加熱するのが好ましい。具体的には80〜135℃で30分〜2時間加熱するのがより好ましい。
【0094】
得られるハードコート層の塗膜の厚みは特に制限はなく、使用用途により適宜選択すればよいが、0.1〜50μmであることが好ましく、塗膜の硬さ、耐擦傷性、長期的に安定な密着性、及び長期の耐候性を満足するためには、特に3〜25μmが好ましい。
【0095】
また、塗膜の平滑化をはかるため、フロラードFC−4430(住友スリーエム(株)製)、KP−341(信越化学工業(株)製)等のフッ素系あるいはシリコーン系の界面活性剤を効果量添加してもよい。また、この塗膜の硬化を促進させるためにネオスタンU−810(日東化成(株)製)、B−7(日本曹達(株)製)、オルガチックスZA−60、TC−200(松本製薬工業(株)製)等の架橋硬化触媒を触媒量添加してもよい。
【0096】
このような耐候性ハードコート組成物の硬化被膜を被覆した被覆物品は、ハードコート層中の(2)成分中の有機系紫外線吸収性基の効果によって、長期の耐候性が得られる。
【0097】
有機樹脂基材
本発明で用いられる有機樹脂基材としては、プラスチック材料(有機樹脂基材)であればよく、特にポリカーボネート、ポリスチレン、アクリル樹脂、変性アクリル樹脂、ウレタン樹脂、チオウレタン樹脂、ハロゲン化ビスフェノールAとエチレングリコールの重縮合物、アクリルウレタン樹脂、ハロゲン化アリール基含有アクリル樹脂、含硫黄樹脂等が好ましい。更にこれらの樹脂基材の表面が処理されたもの、具体的には、化成処理、コロナ放電処理、プラズマ処理、酸やアルカリ液での処理、及び基材本体と基材表層が異なる種類の樹脂で形成されている積層基体を用いることもできる。積層基体の例としては、共押し出し法やラミネート法により製造されるポリカーボネート樹脂基材の表層にアクリル樹脂層もしくはウレタン樹脂層が存在する積層基体、又はポリエステル樹脂基材の表層にアクリル樹脂層が存在する積層基体等が挙げられる。
【0098】
この場合、本発明によれば、有機樹脂基材、特にポリカーボネート樹脂による成形基材の少なくとも一方の面に直接、上記した耐候性ハードコート組成物からなる硬化被膜で被覆した物品であって、その性状が、初期密着性及び煮沸密着性試験を少なくとも97%の割合で合格し、テーバー摩耗試験において15%未満のデルタヘイズ値(ΔHz)を示す被覆物品を得ることができる。
ここで、初期密着性及び煮沸密着性試験とは、ASTM D870に準じた方法であり、カミソリ刃を用いて被膜に1mm間隔で縦、横11本ずつ切れ目を入れて100個の碁盤目を作製し、セロテープ(登録商標、ニチバン(株)製)をよく付着させた後、90°手前方向に急激に剥がした時、被膜が剥離せずに残存した面積を%で表示するものである。
また、テーバー摩耗試験とは、ASTM D1044に準じた方法であり、テーバー摩耗試験機にて摩耗輪CS−10Fを装着し、荷重500g下での500回転後のヘイズを測定し、試験後と試験前のヘイズ差をデルタヘイズ(ΔHz)%で表したものである。
【実施例】
【0099】
以下、合成例、実施例、及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において%は質量%、部は質量部を示す。また、粘度はJIS Z 8803に基づいて測定した25℃での値であり、重量平均分子量は、標準ポリスチレンを基準としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。
【0100】
<シリコーンレジン(1)の合成>
[合成例1]
2Lのフラスコに、メチルトリメトキシシラン272g(2.0Siモル)及びテトラメチルシラン15g(0.1Siモル)を仕込み、液温が約10℃になるよう冷却後、スノーテックスO(日産化学工業(株)製:水分散シリカゾル、平均粒子径15〜20nm、SiO220%含有品)211g、0.25Nの酢酸水溶液93gを滴下し、内温が40℃を超えないように冷却しながら加水分解を行った。滴下終了後、40℃以下で1時間、次いで、60℃にて3時間撹拌し、加水分解を完結させた。
その後、シクロヘキサノン300gを投入し、加水分解で生成したメタノールを、常圧にて液温が92℃になるまで加熱留去すると共に、縮合させた後、希釈剤としてイソプロパノール400g、酢酸1.6g、及び25%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(TMAH)1.6gを加え、撹拌した後、濾紙濾過を行い、不揮発分濃度19.2%、GPC分析による重量平均分子量2,510、分散度1.84の無色透明のシリコーンレジン溶液を得た。
得られたシリコーンレジン溶液に、塗膜表面を平滑にするレベリング剤としてポリエーテル変性シリコーンKP−341(信越化学工業(株)製)0.1gを添加し、撹拌して、シリコーンレジン溶液(1−a)を得た。
【0101】
[合成例2]
1Lのフラスコに、1,2−エチレンビス(トリメトキシシラン)65g(0.48Siモル)、IPA−ST(日産化学工業(株)製:イソプロパノール分散シリカゾル、平均粒子径15〜20nm、SiO2 30%含有品)300g、イソプロパノール100g、レバチットK2649DR(ランクセス(株)製:陽イオン交換樹脂)2gを仕込み、室温下、純水40gを投入し、引き続き、内温が40℃にて3時間撹拌し、加水分解・縮合を完結させた。室温まで冷却後、アセチルアセトン170g、アルミニウムアセチルアセトナト6g、レベリング剤としてポリエーテル変性シリコーンKP−341(信越化学工業(株)製)0.1gを添加し、撹拌して、不揮発分濃度20.2%、GPC分析による重量平均分子量1,830、分散度1.72のシリコーンレジン溶液(1−b)を得た。
【0102】
[合成例3]
1,2−エチレンビス(トリメトキシシラン)代わりにヒドロキシベンゾフェノンオキシプロピルトリメトキシシラン40g(0.12Siモル)、1,6−へキシレンビス(トリメトキシシラン)19.6g(0.12Siモル)を用いた以外は合成例2と同様の操作を行い、イソプロパノールで不揮発分濃度20%になるように調製し、不揮発分濃度19.4%、GPC分析による重量平均分子量2,050、分散度1.82のシリコーンレジン溶液(1−c)を得た。
【0103】
[合成例4]
1,2−エチレンビス(トリメトキシシラン)の代わりにX−12−965(トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、信越化学工業(株)製)49.5g(0.24Siモル)を用いた以外は合成例2と同様の操作を行い、イソプロパノールで不揮発分濃度20%になるように調製し、不揮発分濃度18.9%、GPC分析による重量平均分子量1,830、分散度2.05のシリコーンレジン溶液(1−d)を得た。
【0104】
<有機系紫外線吸収性基及び反応性基を側鎖に有するビニル系重合体(2)の合成>
[合成例5]
撹拌機、コンデンサー及び温度計を備えた2リットルフラスコに溶剤としてジアセトンアルコール167gを仕込み、窒素気流下にて80℃に加熱した。ここに予め調製しておいた単量体混合溶液(2−[2’−ヒドロキシ−5’−(2−メタクリロキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール(RUVA−93、大塚化学(株)製)81.0g、2−ヒドロキシエチルメタクリレート67.5g、メチルメタクリレート301.5g、ジアセトンアルコール335g)を混合したもののうち390g、及び予め調製しておいた重合開始剤としての2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)2.3gをジアセトンアルコール177.7gに溶解した溶液のうち80gを順次投入した。80℃で30分反応させた後、残りの単量体混合溶液と残りの重合開始剤溶液を同時に80〜90℃で1.5時間かけて滴下した。更に80〜90℃で5時間撹拌して、有機系紫外線吸収性基及び水酸基を側鎖に有するビニル系重合体(2−a)を得た。
得られた有機系紫外線吸収性基及び水酸基を側鎖に有するビニル系重合体(2−a)の不揮発分濃度40.3%、粘度8,180mPa・s、またその共重合体中の紫外線吸収性単量体の含有量は18%、水酸基含有ビニル系単量体量は15%であった。また、GPC分析による重量平均分子量は62,300であった。
【0105】
[合成例6〜9]
単量体の種類と配合量を表1のように変えて、合成例4と同様の操作で有機系紫外線吸収性基及び水酸基を側鎖に有するビニル系重合体(2−b)〜(2−e)を得た。
【0106】
<無機酸化物微粒子(6)成分>
(6)成分として下記を用いた。
6−a:日産化学工業(株)製 PMA−ST(プロピレングリコールメチルエーテルアセテートに分散したシリカゾル、固形分濃度30%)
6−b:シーアイ化成(株)製RTTDNB15WT%−E88(直流アークプラズマ法で製造した酸化チタン微粒子をシリカ被覆した後、分散剤を用いて、混合アルコールに分散した分散体、固形分濃度15%、平均粒子径(体積平均粒子径D50)99nm)。
【0107】
<耐候性ハードコート組成物の調製>
[実施例1]
合成例5のビニル系共重合体(2−a)35g、プロピレングリコールメチルエーテル15gをよく混合させた後、合成例1のシリコーンレジン溶液(1−a)30gを加え、よく撹拌して、ナイロンメッシュストレーナー(#100)を用いて濾過して、耐候性ハードコート組成物(a)を得た。
【0108】
[実施例2〜5、比較例1〜3]
表2のように、ビニル系共重合体及びシリコーンレジン溶液の種類と配合量を変えて、場合によっては添加剤を加え、実施例1と同様の操作で耐候性ハードコート組成物(b)〜(e)及び比較例1(f)〜3(h)を得た。
【0109】
<被覆物品の調製及び評価>
[実施例6〜10]
実施例の耐候性ハードコート組成物(a)〜(e)を、表面清浄化したレキサン(Lexan)ポリカーボネート板(150mm×150mm×5mm厚)に硬化塗膜として約9〜14μmになるようにフローコートし、120℃にて60分加熱硬化させ、ハードコート層を被覆した物品を得た。得られた物品について下記評価を行い、その結果を表3に示す。
【0110】
[比較例4〜6]
比較例1〜3で調製した耐候性ハードコート組成物を用いて、実施例6〜10と同様の操作により被覆物品を得た。得られた物品について、下記の評価を行い、その結果を表4に示す。
【0111】
硬化被膜の評価方法
<透明性 Hz>
被覆物品のヘイズをヘイズメーター(NDH2000:日本電色工業(株))にて測定した。
【0112】
<耐擦傷性 ΔHz>
ASTM D1044に準じ、テーバー摩耗試験機にて摩耗輪CS−10Fを装着し、荷重500g下での500回転後のヘイズを測定し、試験後と試験前のヘイズ差(ΔHz)を測定した。
【0113】
<初期密着性>
ASTM D870に準じ、カミソリ刃を用いて、被膜に1mm間隔で縦、横11本ずつ切れ目を入れて100個の碁盤目を作製し、セロテープ(登録商標、ニチバン(株)製)をよく付着させた後、90°手前方向に急激に剥がした時、被膜が剥離せずに残存した面積を%で表示した。
【0114】
<耐水密着性>
被覆物品を65℃に保ったイオン交換水中に3日間浸漬した後、前記初期密着性と同様にして密着性試験を行った。
【0115】
<煮沸密着性>
被覆物品を沸騰したイオン交換水に6時間浸漬した後、前記初期密着性と同様にして密着性試験を行った。
【0116】
<耐候性試験>
岩崎電気(株)製アイスーパーUVテスターW−151を使用し、[ブラックパネル温度63℃、湿度50%RH、照度50mW/cm2、降雨10秒/1時間で5時間]→[ブラックパネル温度30℃、湿度95%RHで1時間]を1サイクルとして、このサイクルを繰り返す条件で40サイクル及び70サイクルの試験を行った。
耐候性試験前後に、JIS K7103に準拠して黄変度の変化(ΔYI)を測定した。
また、被膜のクラック及び剥離の状態を下記評価基準にて目視又は顕微鏡(倍率250倍)にて観察した。
【0117】
<クラック>
耐候性試験後の被膜外観を下記の基準で評価した。
○:異常なし
△:僅かにクラックあり
×:塗膜全体にクラックあり
【0118】
<剥離>
耐候性試験後の被膜の状態を下記の基準で評価した。
○:異常なし
△:一部で剥離あり
×:全面剥離
【0119】
【表1】

【0120】
(注)
RUVA−1:2−[2’−ヒドロキシ−5’−(2−メタクリロキシエチル)フェニル
]−2H−ベンゾトリアゾール(RUVA−93、大塚化学(株)製)
RUVA−2:2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロキシエチル)ベンゾフェノン(BP
−1A、大阪有機化学工業(株)製)
HEMA :2−エチルヒドロキシメタクリレート
MPTMS :γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン
GMA :グリシジルメタクリレート
MMA :メチルメタクリレート
EMA :エチルメタクリレート
MHALS :1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルメタクリレート
【0121】
【表2】

【0122】
(注)
PGM :プロピレングリコールメチルエーテル
DAA :ジアセトンアルコール
T400 :トリアジン系紫外線吸収剤(Tinuvin400、チバ・スペシャリティー製)
【0123】
【表3】

【0124】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機樹脂基材の少なくとも一方の面に直接被覆するための耐候性ハードコート組成物であって、下記成分を含むことを特徴とする耐候性ハードコート組成物。
(1)下記一般式(1−1)、(1−2)及び(1−3)で表されるアルコキシシラン並びにそれらの部分加水分解縮合物から選ばれる少なくとも1種を(共)加水分解・縮合することにより得られたシリコーンレジン、
(R1m(R2nSi(OR34-m-n (1−1)
(式中、R1及びR2は、各々独立に、水素原子、又は非置換もしくは置換の一価炭化水素基であり、置換基同士が相互に結合していてもよく、R3は、炭素数1〜3のアルキル基であり、m、nは、各々独立に、0又は1であり、かつm+nは、0、1又は2である。)
(R4O)3-p(R6pSi−R8−Si(R7q(OR53-q (1−2)
(式中、R4及びR5は、各々独立に、炭素数1〜3のアルキル基であり、R6及びR7は、各々独立に、水素原子、又は非置換もしくは置換の一価炭化水素基であり、R8は、酸素原子、フェニレン基、又は非置換もしくは置換の炭素数2〜10のアルキレン基であり、p、qは、各々独立に、0又は1である。)
X−[(R15)Si(R16y(OR173-yz (1−3)
(式中、Xは、1,3,5−トリメチルシクロトリシロキサン残基、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン残基、又はイソシアヌレート残基であり、R15は、炭素数1〜3のアルキレン基であり、R16は、水素原子、又は非置換もしくは置換の一価炭化水素基であり、R17は、炭素数1〜3のアルキル基であり、yは、0又は1であり、zは、3又は4である。)
(2)有機系紫外線吸収性基及びアルコキシシリル基、水酸基、エポキシ基、カルボン酸基、アミノ基から選ばれる反応性基を側鎖に有するビニル系共重合体、
(3)硬化触媒、
(4)溶剤。
但し、(1)シリコーンレジンの固形分量と(2)ビニル系共重合体の固形分量の質量比率(1)/(2)が10/90〜50/50である。
【請求項2】
(1)シリコーンレジンが、式(1−1)、(1−2)及び(1−3)のSiモル%の比率(1−1)/〔(1−2)+(1−3)〕で、50/50〜0/100であることを特徴とする請求項1記載の耐候性ハードコート組成物。
【請求項3】
式(1−1)中のR1がメチル基又は紫外線吸収性基で置換された一価炭化水素基、m=1、n=0、R3がメチル基であり、式(1−2)中のR8が非置換もしくは置換の炭素数2〜8のアルキレン基、p,q=0、R4,R5がメチル基であり、かつ式(1−3)中のXがイソシアヌレート残基、y=0、R17がメチル基、z=3であることを特徴とする請求項1又は2記載の耐候性ハードコート組成物。
【請求項4】
(1)シリコーンレジンが、式(1−2)及び(1−3)で表されるアルコキシシラン並びにそれらの部分加水分解縮合物から選ばれる少なくとも1種を加水分解・縮合することにより得られたシリコーンレジンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の耐候性ハードコート組成物。
【請求項5】
(1)シリコーンレジンが、式(1−3)で表されるアルコキシシラン及びその部分加水分解縮合物を加水分解・縮合することにより得られたシリコーンレジンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の耐候性ハードコート組成物。
【請求項6】
(2)成分が、下記(2−1)〜(2−3)からなる単量体成分を共重合して得られる共重合体であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の耐候性ハードコート組成物。
(2−1)有機系紫外線吸収性基を有するビニル系単量体:5〜50質量%、
(2−2)アルコキシシリル基、水酸基、又はエポキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する反応性基含有ビニル系単量体:2〜30質量%、
(2−3)これら単量体と共重合可能な他の単量体:20〜93質量%。
【請求項7】
(2−2)成分が、水酸基含有ビニル系単量体であることを特徴とする請求項6記載の耐候性ハードコート組成物。
【請求項8】
更に、(5)水を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載の耐候性ハードコート組成物。
【請求項9】
更に、(6)無機酸化物微粒子を含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項記載の耐候性ハードコート組成物。
【請求項10】
(6)成分がシリカ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項9記載の耐候性ハードコート組成物。
【請求項11】
更に、(2)成分以外の有機系紫外線吸収剤及び/又は有機系紫外線安定剤を含むことを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項記載の耐候性ハードコート組成物。
【請求項12】
有機樹脂基材の少なくとも一方の面に直接、請求項1〜11のいずれか1項記載の耐候性ハードコート組成物からなる硬化被膜で被覆した物品であって、その性状が、接着試験を少なくとも97%の割合で合格し、テーバー摩耗試験において15%未満のデルタヘイズ値(ΔHz)を示すことを特徴とする被覆物品。
【請求項13】
有機樹脂基材がポリカーボネート樹脂による成形基材であることを特徴とする請求項12記載の被覆物品。

【公開番号】特開2012−219159(P2012−219159A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85068(P2011−85068)
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】