説明

耐候性蛍光顔料

【課題】有機蛍光染料の耐候性と耐薬品性を向上させる為、有機蛍光染料を蛍光顔料化し、且つ濃度消光を防いだ蛍光顔料の提供。
【解決手段】有機蛍光染料の内で最も耐候性の高いPerylene及び/又はその誘導体及び/又はNaphthalimideを多孔質シリカゲル内部に含浸させ、多孔質シリカゲル外部の樹脂が多孔質シリカゲル内部の有機蛍光染料と反応しないようにした構造の顔料。また有機蛍光染料の各分子又は分子群を多孔質シリカゲル内部の細孔に含浸することにより、有機蛍光染料の各分子又は分子群を互いに隔てて会合しないようにして、会合を防いだ結果濃度消光しない構造の蛍光顔料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐候性蛍光顔料の構造とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来赤く見える物体は、物体表面が光線中に含まれる赤色のみを反射し、その他の色を吸収するときその物体は赤く見える。反射率は90%を超えることはない。照らした光線中の赤成分の強さを100とすると反射光の赤の強さは最大でも90と暗い赤色である。
これは弁柄など赤い顔料を塗った物体(京都の弁柄格子など)が赤く見える
原理である。これを普通の顔料と呼び暗い顔料である。
しかし同じ赤でも弁柄の3倍も赤く見える顔料があれば、一際目立って鮮やかな赤色になる。普通の顔料よりも3倍明るい顔料のことを蛍光顔料と呼ぶ。
【0003】
蛍光顔料は近紫外線や可視光線(赤、青、緑)を照射されると、特定の色だけを反射して蛍光顔料を特定の色に見せるだけでなく、顔料自ら発光して特定の色の光を放射するので、普通の顔料の3倍も明るく見えるのである。
たとえば照らす光線中の赤成分の強さを100とすると、反射光と蛍光顔料の自家発光の和は300と3倍にも達する。
【0004】
一方蛍光を発する染料は多い。染料とは有機溶剤に溶解する化学物質のことである。
染料は有機溶剤中に分子として溶解しているので、蛍光染料又は蛍光物質のままでは、酸、アルカリ、日光、その他の影響で容易に蛍光としての輝度等を失うため、着色剤として安定させる為には顔料化の必要がある。
蛍光染料又は蛍光物質の上記の欠点をカバーするために、蛍光染料をカプセルに包みこんで、耐候性を向上させたものを蛍光顔料と呼ぶ。


【0005】
従来Rhodamin、Fluoresceinなどの蛍光染料が知られていた。
これらの蛍光染料を有機溶剤に溶解させて合成樹脂に混ぜ、合成樹脂を硬化させてから粉砕して樹脂を粉末化し、樹脂粉末内に蛍光染料を閉じ込め、有機蛍光顔料粉末にしていた。しかしこれらの粉末化樹脂・有機蛍光顔料は耐候性や耐溶剤性に問題があった。
具体的には戸外の太陽光の紫外線に暴露されると長くても3ヶ月ぐらいで色あせ(退色)してしまう。
加速試験はキセノンランプの強い紫外線を2000時間照射して行う。
DIN EN ISO 4892−2(Xenotest1200)が代表的な試験方法である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこの欠点を改善する手段を提供するものである。
即ち有機蛍光染料を透明のセラミック内に閉じ込めることにより耐候性や耐溶剤性を向上させる必要がある。一例を挙げるとエアブラウン社はFluorescein、Rhodamineなどの有機蛍光染料をポリエステル中に溶解させてポリエステル樹脂中に染料を閉じ込め顔料化している。
この顔料は耐溶剤性は優れているが、耐候性に問題がありXenotest1200
で加速試験をすると、わずか5時間でほぼゼロにまで退色してしまう。
(非特許文献1参照)。戸外の太陽光暴露では5日間に相当する。

【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の超耐候性・蛍光顔料は蛍光染料を透明セラミック・カプセルに包みこんで顔料化する。樹脂カプセルは用いない。
透明セラミック・カプセルは紫外線に強く、各種溶剤にも溶けない。そのため透明セラミックカプセル内に入っている有機蛍光染料は、透明セラミック・カプセル外の樹脂とセラミック・カプセルによって隔てられているので、本発明の蛍光顔料はカプセル外の樹脂とは反応せず、殆どの樹脂中に分散させ得るのである。また発明の超耐候性・蛍光顔料の蛍光成分は有機蛍光染料ではあっても、有機蛍光染料自体は透明セラミックの中に収納されているので、外貌はあたかも無機顔料の外貌を持っている。一般に無機顔料は樹脂カプセル内に染料を収納した有機顔料よりも耐候・耐光性が優れていることが知られている。
【0008】
またガラス転移温度が常温より低い合成樹脂、例えばポリオレフィン、ポリ塩化ビニリデン、テフロン、ポリフッ化ビニリデン等は常温でゴム状態である。
そのためこれらゴム状態の樹脂中に有機染料を溶解すると、有機染料分子は小さいのでゴム状態の樹脂内を動き回り、表面ににじみ出て所謂ブリードアウトという現象がおこる。しかし無機顔料は大きいのでブリードアウトは起こらない。本発明の蛍光顔料もその外貌は無機顔料なのでブリードアウトが起らない。
【0009】
また一般に有機蛍光染料は有機蛍光染料の分子同士が近寄りすぎると、互いに分子同士及び/又は複数個の分子群同士が会合して所謂濃度消光と呼ばれる現象が起こり、発する蛍光が極めて弱くなる現象がある。
本発明はこの欠点をも回避する手段を提供する。

即ち有機溶剤を用いて有機蛍光染料を溶解した溶液を、多孔質シリカゲルの細孔に含浸させることを特徴とし、かつ前記多孔質シリカゲルの平均一次粒子径は1μ以上、15μ以下であり、その平均細孔径は2nm以上、24nm以下の多孔質シリカゲルであることを特徴とし、有機蛍光染料の各分子及び/又は複数個の分子群を前記多孔質シリカゲルの細孔に含浸させることにより、有機蛍光染料の各分子及び/又は複数個の分子群を前記細孔の壁により互いに隔てて、分子同士の会合を防ぎ、濃度消光を防いだ蛍光顔料とすることができる。
【0010】
前記多孔質シリカゲルの平均一次粒子径が1μ以上、15μ以下であれば、顔料として塗料の中に分散しやすくなり好都合なので、この一次粒子径を選ぶべきである。また平均細孔径が2nm以上、24nm以下の多孔質シリカゲルである理由は、蛍光染料の1分子ないし数分子を各細孔内に収納したとき、互いに会合して濃度消光しないようにするためである。シリカゲルの細孔の壁面は水酸基が出ており、この範囲の細孔径内で水酸基に捉えられた蛍光染料の分子は互いに引き離されて濃度消光しにくくなる。24nmの細孔径の場合は蛍光染料の多分子を収納しうるが、この場合は紫外線吸収剤や光安定剤も共に細孔内に収納するので、蛍光染料の各分子間には紫外線吸収剤や光安定剤の分子があることになり、蛍光染料の各分子は紫外線吸収剤や光安定剤の分子により互いに隔てられてやはり濃度消光しにくくなる。
またシリカゲルを選んだ理由は、シリカゲルは紫外線拡散効果を具備しており、シリカゲル自体が紫外線拡散剤として働き照射された紫外線を拡散して一点に集中させないようにできるからである。
【発明の効果】
【0011】
その結果本発明の蛍光顔料の耐紫外線特性は下記のような特性となり、戸外で用いても退色しない。
有機蛍光染料としてペリレンまたはナフタルイミドからなるBASF社製・Lumogen染料を溶剤に溶かして、平均一次粒子径4μ、平均細孔径21nmの多孔質シリカゲル中の細孔に含浸させ、蛍光顔料とし、本発明の蛍光顔料の紫外線暴露・加速試験を行なった。
【0012】
紫外線暴露・加速試験用・キセノンランプ暴露前の本発明の蛍光顔料の蛍光強度を100%とすると、暴露2000時間後の蛍光強度は

(1) RED(ピーク発光波長;613nm)=95%以上
(2) YELLOW(ピーク発光波長;490nm)=90%以上
(3) ORANGE(ピーク発光波長;539nm)=85%以上
(4) VIOLET(ピーク発光波長;413nm)=80%以上
(5) BLUE(ピーク発光波長;411nm)=80%以上
であった。
【0013】
2000時間は2000日の戸外のUV暴露に相当する。
2000日は5.5年に相当し、優に5.5年は戸外で使える。
また粉体の粒度は4μであり樹脂中への分散に適している。
耐熱性は300℃であった。
また戸外の紫外線に長期間耐えうるものは
Perylene 及び/又はその誘導体と Naphthalimide
の2種類だけである。
【0014】
また多孔質シリカゲルからなる透明セラミック・カプセルは多くの溶剤に耐え溶解しなかった。即ち
アルコール類、グリコール類、エステル類、ケトン類、グリコールエーテル類、ハロゲン化炭化水素溶剤、芳化族系溶剤、脂肪族系溶剤に溶解せず、
また各種可塑剤例えば
フタル酸ブチルベンゼル 、フタル酸ジブチル 、フタル酸ジオクチル 、アジピン酸ジオクチル に溶解しなかった。
これにより本発明の蛍光顔料を上記溶剤類に加えて塗料かすることが出来ることがわかった。
【0015】
また各種樹脂への分散性は殆どどんな樹脂にでも分散し、硬化不良は起こさなかった。
樹脂の一例は下記の通りである。
アルキド系樹脂、アクリル系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABS、アイオノマー、ポリアミド(ナイロン)、ポリカーボネート、硬質PVC、軟質PVC、ウレタン、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、他殆どの樹脂である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明を実施する最良の形態は次の通りである。
有機溶剤たとえばベンジルアルコールを用いて有機蛍光染料であるLumogen(BASF社製)を溶解した溶液を、多孔質シリカゲルの細孔に含浸させることを特徴とし、かつ前記多孔質シリカゲルの平均一次粒子径は1μ以上、15μ以下であり、その平均細孔径は2nm以上、24nm以下の多孔質シリカゲルであることを特徴とし、有機蛍光染料の各分子及び/又は複数個の分子群を前記多孔質シリカゲルの細孔に含浸させることにより、有機蛍光染料の各分子及び/又は複数個の分子群を前記細孔の壁により互いに隔てて、分子同士の会合を防ぎ、濃度消光を防いだ蛍光顔料を製造し、前記の耐候性、耐溶剤性を確認することが出来た。
【実施例1】
【0017】
本発明の有機蛍光染料として、次の有機蛍光染料を有機溶剤に溶解して、多孔質シリカゲルの細孔中に含浸させることが出来る。即ち

(a) Perylene 及び/又はその誘導体
(b) Naphthalimide
(c) Rhodamin
(d)Fluorescein
(e)Pyranine
(f)Thioindigo
(g)
4',6-diamidino-2-phenylindole(DAPI)
(h)
7-hydroxycoumarin
(i) SYBR Green
(j) Cyanine
(k) Ethidium bromide
(l) Stilbene
(m) Nile blue
(n) Nile red
(o) 5,12-Bis(phenylethynyl)naphthacene
(p) Pyranine
(q) Merocyanine
(r) 5,6,11,12-テトラフェニルテトラセン
(s)Isoindolinone
(t)Quinacridone
(u)Dioxazine violet
(v)アゾベンゼン
(w)すべての有機蛍光染料

がその有機蛍光染料であるが、戸外の紫外線に長期間耐えうるものは
現在のところ
(a) Perylene 及び/又はその誘導体
(b) Naphthalimide
の2種類だけである。

【実施例2】
【0018】
また実施例1で述べた有機蛍光染料を、次の有機溶剤に溶解して、多孔質シリカゲルの細孔中に含浸させることが出来る。即ち

(1)アルコール類、グリコール類;
エチルアルコール 、 ジエチレングリコール 、3−ヘプタノール 、 エチレングリコール、 イソプロピルアルコール 、 グリセリン 、メチルアルコール 、 ヘキシレングリコール 、テトラヒドロフランアルコール 、 プロピレングリコール 。
(2)エステル類、ケトン類;
酢酸ブチル 、 酢酸DPM 、アセトン 、イソホロン 、酢酸エチル 、
シクロヘキサノン 、シクロペンタノン、酢酸イソアミル 、ジイソブチルケトン 、酢酸イソプロピル 、 エチルアミルケトン 、酢酸カービトール 、メチルイソブチル 。
(3)グリコールエーテル類、ハロゲン化炭化水素溶剤;
ブチルエーテル 、メチレンクロライド 、エチルエーテル 、 テトラクロルエチレン 、イソブチル 、トクロルエチレン 、メチルカービトール 、メチルエーテル 。
(4)芳化族系溶剤、脂肪族系溶剤;
トルエン 、 ヘプタン 、キシレン 、 ミネラルスピリット 、
VM及びPナフサ 、ラクトルスピリット 。
(5)各種可塑剤;
フタル酸ブチルベンゼル 、フタル酸ジブチル 、フタル酸ジオクチル 、
アジピン酸ジオクチル 。
(6)その他
(a) Benzyl Alcohol
(b) Acetone
(c) Ethanol
(d)Methanol
(e)イソプロピルアルコール
(f)Solvent PM
(g) Et Acetate
(h) Bu Acetate
(i)Dimethyl Formamide
(j) White Spirit
(k) Xylene
(l) Toluene
(m) シクロペンタノン
(n) ジクロロメタン(塩化メチレン)
(o) 1,1,1トリクロロエタン
(p) トリクロロエタン
(q) 臭素系洗浄剤eクリーン21シリーズ(KKカネコ化学製)
(r) 樹脂溶解剤eソルブ21シリーズ(KKカネコ化学製)21シリーズeソルブ(s)トリクレン
(t)クロロフォルム
(u)炭化水素系溶剤類、アルコール系溶剤類、ケトン系溶剤類、エステル系溶剤類、エーテル系溶剤類、
グリコール及びそのエーテル又はエステル、ハロゲン系溶剤類、
アミン系溶剤類、アミド系溶剤類の内、少なくとも一つを含む溶剤。
以上である。
【実施例3】
【0019】
また本発明の蛍光顔料を次の樹脂に分散できる。いずれも硬化不良は起こさなかった。即ち
アルキド、アクリル系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリエチレン、
ポリプロピレン、ポリスチレン、ABS、アイオノマー、ポリアミド(ナイロン)、ポリカーボネート、アクリル、硬質PVC、ウレタン、シリコーン樹脂、
エポキシ樹脂、他殆どの樹脂である。
【実施例4】
【0020】
本発明の蛍光顔料を造るため、蛍光染料等と共に溶剤に溶かす紫外線吸収剤はベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤、ベンゼン環を有する紫外線吸収剤、ベンジルアルコール等の内少なくとも1種類を含む紫外線吸収剤である。
また本発明の蛍光顔料を造るため、蛍光染料等と共に溶剤に溶かす光安定剤はヒンダードアミン系光安定剤(HALS)等である。
【実施例5】
【0021】
また有機溶剤を用いて有機蛍光染料と紫外線吸収剤を溶解した溶液を、多孔質シリカゲルの細孔に含浸させることを特徴とし、かつ前記多孔質シリカゲルの平均一次粒子径は1μ以上、15μ以下であり、その平均細孔径は2nm以上、24nm以下の多孔質シリカゲルであり、有機蛍光染料の各分子及び/又は複数個の分子群と前記紫外線吸収剤の溶液を前記多孔質シリカゲルの細孔に含浸させることにより、有機蛍光染料の各分子及び/又は複数個の分子群を前記細孔の壁と紫外線吸収剤により互いに隔てて、分子同士の会合を防ぎ、濃度消光を防いだ蛍光顔料とすることを特徴とし、次に有機溶剤を蒸発させ、且つ紫外線吸収剤は残留させることを特徴とする蛍光顔料とすることができる。
【実施例6】
【0022】
また有機溶剤を用いて有機蛍光染料と紫外線吸収剤及び光安定剤を溶解した溶液を、多孔質シリカゲルの細孔に含浸させることを特徴とし、かつ前記多孔質シリカゲルの平均一次粒子径は1μ以上、15μ以下であり、その平均細孔径は2nm以上、24nm以下の多孔質シリカゲルであり、有機蛍光染料の各分子及び/又は複数個の分子群と前記紫外線吸収剤及び光安定剤の溶液を前記多孔質シリカゲルの細孔に含浸させることにより、有機蛍光染料の各分子及び/又は複数個の分子群を前記細孔の壁と紫外線吸収剤及び光安定剤により互いに隔てて、分子同士の会合を防ぎ、濃度消光を防いだ蛍光顔料とすることを特徴とし、次に有機溶剤を蒸発させ、且つ紫外線吸収剤及び光安定剤は残留させることを特徴とする蛍光顔料とすることができる。このとき細孔2内の紫外線吸収剤及び光安定剤は紫外線を有効に吸収し、また紫外線に対する安定化を図ることができるので、細孔2内の有機蛍光染料を紫外線から防護できる。
【実施例7】
【0023】
また合成樹脂分を含まない有機溶剤を用いて有機蛍光染料を溶解した溶液を、多孔質シリカゲルの細孔に含浸させることを特徴とし、かつ前記多孔質シリカゲルの平均一次粒子径は1μ以上、15μ以下であり、その平均細孔径は2nm以上、24nm以下の多孔質シリカゲルであり、有機蛍光染料の各分子及び/又は複数個の分子群を前記多孔質シリカゲルの細孔に含浸させることにより、有機蛍光染料の各分子及び/又は複数個の分子群を前記細孔の壁により互いに隔てて、分子同士の会合を防ぎ、濃度消光を防いだ蛍光顔料とし、且つ有機蛍光染料が分解、分裂しない範囲の温度で有機溶剤を蒸発させて蛍光顔料としたことを特徴とする蛍光顔料を得ることができる。

その為実施例7は合成樹脂とシリコーン系撥水材を含む特許4087166(特許文献2)には抵触しない。

【実施例8】
【0024】
また有機溶剤を用いて有機蛍光染料を溶解した溶液を、多孔質シリカゲルの細孔に含浸させることを特徴とし、かつ前記多孔質シリカゲルの平均一次粒子径は1μ以上、15μ以下であり、その平均細孔径は2nm以上、24nm以下の多孔質シリカゲルであり、有機蛍光染料の各分子及び/又は複数個の分子群を前記多孔質シリカゲルの細孔に含浸させることにより、有機蛍光染料の各分子及び/又は複数個の分子群を前記細孔の壁により互いに隔てて、分子同士の会合を防ぎ、濃度消光を防いだ蛍光顔料群とする。次に前記とは別の溶液に紫外線吸収剤及び/又は光安定剤溶解させた溶液を前記蛍光顔料群に加え、蛍光顔料群の顔料群と顔料群の隙間に紫外線吸収剤及び/又は光安定剤を溶解させた溶液を含浸させ蛍光顔料群とすることができる。多孔性シリカゲル多数個群の外側から紫外線を照射したとき、紫外線吸収剤及び/又は光安定剤は紫外線を有効に吸収し、また紫外線に対する安定化を図ることができるので細孔2内の有機蛍光染料を紫外線から防護できる。

【実施例9】
【0025】
また本発明において製造した蛍光顔料を加温することにより、前記多孔質シリカゲルの細孔に含浸された有機溶剤の大部分あるいは全部を蒸散させることを特徴とする蛍光顔料とすることができる。
【実施例10】
【0026】
また本発明において製造した蛍光顔料を常温で放置することにより、前記多孔質シリカゲルの細孔に含浸された有機溶剤の一部を蒸散させることを特徴とする蛍光顔料とすることができる。
【実施例11】
【0027】
図1は多孔性シリカゲルの1つを示す模式図である。シリカを球1で代表させて示す。シリカ球1は稠密なシリカであり、シリカ球1の内部には細孔は無い。このシリカ球1の表面には図示しない水酸基が出ている。シリカ球1は多数個が互いに連なって固着しており多孔性シリカゲル粒子の一つを形成している。シリカ球1同士の間には細孔2が形成されている。その細孔のいくつかを球間の細孔2で代表させて示す。
本発明で用いる多孔性シリカゲルはシリカゲルの骨格の中に複雑な細孔2が設けられている。この細孔2の中に図示しない有機蛍光染料の一分子ないしは数分子群が挿入されるので、有機蛍光染料の各分子は引き離され濃度消光しない。有機蛍光染料を図示しない溶剤に溶解した後、細孔2に含浸させることで細孔2内に挿入できる。多孔性シリカゲルの1つの平均粒径は1μ以上、15μ以下であり、その平均細孔径は2nm以上、24nm以下である。
【実施例12】
【0028】
図2は多孔性シリカゲルの1つを示す模式図である。シリカを球1で代表させて示す。シリカ球1は稠密なシリカであり、シリカ球1の内部には細孔は無い。このシリカ球1の表面には図示しない水酸基が出ている。シリカ球1は多数個が互いに連なって固着しており多孔性シリカゲル粒子の一つを形成している。シリカ球1同士の間には細孔2が形成されている。その細孔のいくつかを球間の細孔2で代表させて示す。
本発明で用いる多孔性シリカゲルはシリカゲルの骨格の中に複雑な細孔2が設けられている。この細孔2の中に図示しない有機蛍光染料の一分子ないしは数分子群が挿入されるので、有機蛍光染料の各分子は引き離され濃度消光しない。有機蛍光染料を図示しない溶剤に溶解した後、細孔2に含浸させることで細孔2内に挿入できる。

また図2の多孔性シリカゲル1つの外側を示す番号3の位置には図示しない紫外線吸収剤や光安定剤を配置する。まず図3のような多孔性シリカゲル多数個の群を造って置き、多孔性シリカゲル多数個の外側から図示しない溶剤に溶解させた紫外線吸収剤や光安定剤を含浸させることで多孔性シリカゲル1つの外側を示す番号3の位置に紫外線吸収剤や光安定剤を配置できる。このとき細孔2内には紫外線吸収剤や光安定剤は殆ど入らないことが特徴である。しかし多孔性シリカゲル多数個の外側から紫外線を照射したとき、この紫外線吸収剤や光安定剤は紫外線を有効に吸収し、また紫外線に対する安定化を図れるので、細孔2内の有機蛍光染料を紫外線から防護出来る。
多孔性シリカゲルの1つの平均粒径は1μ以上、15μ以下であり、その平均細孔径は2nm以上、24nm以下である。

【0029】
図3は多数個のシリカゲル粒子群からなる顔料の総体を示す図である。
シリカゲル粒子同士の隙間を隙間3で示す。隙間3は図2の番号3で示す隙間と同一の隙間を示す。番号4は一個のシリカゲル粒子を示す。番号1はシリカゲル粒子4内の稠密なシリカ粒子を示し、図1の番号1で示すシリカ粒子と同一のものを示す。
【0030】
また請求項1から請求項5や実施例1から実施例12に示す構造を持つ蛍光顔料を本発明の複合物質として定義することができる。

また請求項1から請求項5や実施例1から実施例12に示す構造を持つ複合物質である蛍光顔料を製造する方法として請求項1から請求項5に示す方法を定義することが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は以上のように構成され、前述のような効果があるので、次のような用途が開けた。即ち、

(1) 波長変換用蛍光体;
本発明の蛍光顔料をシリコーン樹脂やエポキシ樹脂に分散させて照明機器に被せ、照明機器の光を波長変換して各色の照明を製造できる。例えば電照看板のカバーをこの蛍光顔料を用いて製造すると従来の非蛍光顔料よりも3倍明るい蛍光を発する。

(2) 液晶用・波長変換蛍光体;
液晶のカラーフィルターは現在非蛍光体を用いている。これを本発明の蛍光顔料に変えるとより明るい液晶が実現できるはずである。

(3) EL用・波長変換蛍光体;同上の理由で適用できる。

(4) 各種樹脂の蛍光着色材;
例えばLumogen染料を例にとる。Lumogen染料単体を樹脂に溶解しようとすると、わずかにアクリル樹脂に1wt%ほどしか溶解しない。しかしLumogen染料を多孔質シリカゲルの細孔内に閉じ込めて顔料化した本発明の蛍光顔料は1wt%を遥かに超えてアクリル中に分散できる。
またアクリル樹脂に止まらず、ほとんどすべての樹脂に分散できる。
これは顔料特有の性質であり、顔料外部の樹脂と顔料内部の蛍光染料が多孔質シリカゲルからなる透明セラミック・カプセルで隔てられているので、染料と樹脂が相互作用をしないためである。即ち顔料化の効果が出ている。

(5) 水性塗料用・蛍光色材;同上の理由で色材が製造できる。

(6) 油性塗料用・蛍光色材;同上。

(7) ペーパー塗料用・蛍光色材;同上。

(8) ビニール塗料用・蛍光色材;同上。

(9) スクリーンインキ用・蛍光色材;同上。

(10) 水性ポスターカラー用・蛍光色材;同上。
【0032】
特許庁電子図書館で先行技術を検索した。
良く知られているように、バイオの分野では、多孔質でない稠密なシリカのナノサイズのビーズ表面に、蛍光染料を固定して蛍光マーカーとし、フローサイトメトリーで用いている。
しかしこのような稠密なシリカ・ナノビーズの表面に蛍光染料、蛍光色素を固定したシリカ・ナノビーズは本発明の蛍光顔料とはまったく別物であることは明白である。
【0033】
なぜなら本発明は多孔質シリカゲルの一細孔内に蛍光染料の一分子ないし数分子を侵入させ、分子または分子群同士を細孔の壁により互いに隔てて会合しないようにし、濃度消光を防いだ構造を採ることを特徴としているので、シリカビーズの表面だけに蛍光染料を固定した構造とは本質的に異なる構造だからである。
【0034】
特許出願を検索する検索式は、
検索式=多孔質 & シリカゲル & (蛍光染料+蛍光色素)& 蛍光顔料
で 0件を検索した。
【0035】
また検索式=多孔質 & シリカゲル & (蛍光顔料+蛍光染料+蛍光色素)
で6件を検索した。
(特許文献1)
1.特開2007-131641
固体支持体上での標識化オリゴヌクレオチド

およびアナログの合成のための方法および組成物
2.特表2003-511059
PNA−DNAキメラプローブを用いた

テンプレート依存型ライゲーション
3.特表2002-537401
固体支持体上での標識化オリゴヌクレオチド

およびアナログの合成のための方法および組成物
4.特許3789817 PNA−DNAキメラプローブを用いた

テンプレート依存型ライゲーション
5.特公平05-036062 発光消臭材、年金不納抹消(抵触せず)
6.特公平03-024984 CO2測定装置、年金不納抹消(抵触せず)

【0036】
また検索式=多孔質 & シリカゲル & 蛍光顔料
で 1件を検索した。
1.特公平05-036062 発光消臭材、年金不納抹消(抵触せず)

【0037】
また検索式=多孔質 &(蛍光染料+蛍光色素)& 蛍光顔料
で2件を検索した。
1.特開平11-163417 発光ダイオード(アパタイトとTiO2;抵触せず、本権利消滅)
2.再表2007/086609
描画玩具及びそれを用いた描画玩具セット(抵触せず)

【0038】
また検索式=多孔質 &(蛍光顔料+蛍光染料+蛍光色素)
で46件を検索した。
1.特開2009-178155
生体内に分布したsiRNA、

もしくは細胞に取り込まれたsiRNAの簡便な精密定量

2.特開2008-224600
反応量測定方法
3.特開2008-096189
蛍光測定法と、蛍光測定のための測定用チップ

及びその製造方法
4.特開2007-131641
固体支持体上での標識化オリゴヌクレオチド

およびアナログの合成のための方法および組成物
5.特開2007-007421
滅菌あるいは消毒処理の効果を迅速に

判定する装置および方法
6.特開2006-256045
筆記具(抵触せず)
7.特開2006-136274
微生物検査用粘着性シート及びその製造方法、

並びに、該粘着性シートを用いた微生物検査方法及び検査用キット
8.特開2006-029990
反応検出チップ
9.特開2005-327658
色変換膜、発光装置、面光源(抵触せず、取下)
10.特開2005-263647
エマルション粒子含有造影剤(抵触せず、取下)
11.特開2005-253412
マイクロウェルアレイチップ、その製造方法

及び被検体の活性検定方法
12.特開2005-249429
反応検出チップ
13.特開2005-214670
簡便な検出法、検出装置及び検出キットとその製法
14.特開2004-255627
印刷物(インキ受容層が多孔質の体質顔料、抵触せず)
15.特開2004-154979
記録材(顔料と染料のインクジェット、抵触せず)
16.特開2004-077387
タンパク質検出方法及びタンパク質検出装置
17.特開2003-118291
蛍光マーキングステイン及びペン(抵触せず、取下)
18.特開2000-281821
樹脂成形物表面層の改質方法およびそのための装置

および表面層が改質された樹脂成形物、

および樹脂成形物表面層の着色方法

およびそのための装置および表面層が着色された樹脂成形物、

および表面層の改質により機能性を付与された樹脂成形


(無関係、抵触せず;産総研の特許)
19.特開2000-052682
筆記具(無関係、抵触せず)
20.特開平11-318492 蛍光発生性基質を含有する組成物(抵触せず、拒絶)
21.特開平11-163417 発光ダイオード(アパタイトとTiO2;抵触せず、本権利消滅)
22.特開平07-235378 電界発光素子の製造方法および電界発光素子

(EL、抵触せず)
23.特開平06-300763 蛍光免疫測定用蛍光マイクロビーズ

及びその製造方法
24.特開平06-166832 微粉末エッグシェルおよびその焼却灰を

原料 とした書画用絵の具の製造法(抵触せず、取り下げ)
25.特表2008-545621
強化された拡大性と内部官能基性をもった

樹枝状ポリマー(抵触せず)
26.特表2008-529506
細菌同定方法
27.特表2008-504045
ゲル配合物およびその使用(抵触せず)
28.特表2007-533798
特定の粒径、形状、形態および組成を有する

ポリマー粒子の製造方法(抵触せず)
29.特表2007-531882
側方流動方式、材料、及び方法
30.特表2007-523337
サンプリング装置、方法及びその使用
31.特表2007-517946
消すことのできないインクジェットインク組成物

(多孔質基板上にインクジェット印刷、抵触せず)
32.特表2006-510389
集光性多発色団を用いてポリヌクレオチドを検出

及び分析するための方法並びに組成物
33.特表2006-510002
細菌又はウイルス病原体及び汚染物質を検出

又は定量化するための検定
34.特表2006-509514
細菌を同定するための方法および装置
35.特表2003-511059
PNA−DNAキメラプローブを用いた

テンプレート依存型ライゲーション
36.特表2003-511046
DNAシークエンシング反応液からの

染料標識ジデオキシターミネーターの除去
37.特表2002-537401
固体支持体上での標識化オリゴヌクレオチド

およびアナログの合成のための方法および組成物
38.特表2001-519530
自己コード化ファイバーオプチックスセンサー
39.再表2007/086609
描画玩具及びそれを用いた描画玩具セット

(抵触せず)
40.特許4048920
記録材(不透明基材上に多孔質構造のインク受容層、

抵触せず)
41.特許3821609
筆記具(抵触せず)
42.特許3789817
PNA−DNAキメラプローブを用いた
テンプレート依存型ライゲーション
43.特許3688291
消去可能なインクおよびそれを使用するためのマーカー
44.特許3682465
樹脂成形物表面層の改質方法およびそのための

装置および表面層が改質された樹脂成形物、

および樹脂成形物表面層の着色方法

およびそのための装置および表面層が着色された樹脂成形物、

および表面層の改質により機能性を付与された樹脂成形物

(抵触せず)
45.特公平05-036062 発光消臭材、年金不納抹消(抵触せず)
46.特公平03-024984 CO2測定装置、年金不納抹消(抵触せず)

【0039】
また検索式=(蛍光+顔料+染料)&(ペリレン+ナフタルイミド)&シリカゲル
で2件を検索した。
特表2002-529570 多孔質金属酸化物の着色方法

及びそれによって着色された材料
(チバ;取り下げ;本出願はシリカゲルを除外している。抵触せず)

特表2002-506470 顔料着色された多孔質材料(チバ;取り下げ;
シリカゲルを含むが、溶媒可溶性の顔料前駆体
例えばペリレンをシリカゲルに含浸させた後、加熱または照射
により顔料前駆体例えばペリレンを分裂させることを条件にしている。(抵触せず)
【0040】
また検索式=シリカゲル & (蛍光顔料+蛍光染料+蛍光色素)
で13件を検索した。

1.特開2009-001012
難燃性膜材(拒絶、抵触せず) 2.特開2008-131027 ハイパワーダイオードホルダー構造とパッケージ組合わせ
3.特開2007-131641
固体支持体上での標識化オリゴヌクレオチド組成物 4.特開2003-335962 難燃性膜材用シート及び難燃性膜材(抵触せず) 5.特表2007-532882 抗体結合体の質量分析(抵触せず) 6.特表2005-516595
ヘテロ配座ポリヌクレオチドおよび使用方法 7.特表2003-511059 PNA−DNAキメラプローブを用いたライゲーション
8.特表2003-511045
RNA結合化合物の同定方法 9.特表2003-507024 PNA−DNAキメラの3’末端でのポリメラーゼ伸長
10.特表2002-537401
固体支持体上での標識化オリゴヌクレオチド組成物 11.特許3789817 PNA−DNAキメラプローブを用いたテンプレート依存型
ライゲーション
12.特公平05-036062 発光消臭材、年金不納抹消(抵触せず)
13.特公平03-024984 CO2測定装置、年金不納抹消(抵触せず)
【0041】
また検索式=シリカゲル &(蛍光顔料+蛍光染料+蛍光色素)
&(紫外線吸収+光安定)
で0件を検索した。
【0042】
また検索式=多孔質 &(蛍光顔料+蛍光染料+蛍光色素)
&(紫外線吸収+光安定)
で1件を検索した。
1.特表2008-545621
強化された拡大性と内部官能基性をもった樹枝状ポリマ
ー(抵触せず)
【0043】
(特許文献2)
特許4087166 着色粉体(合成樹脂と水分散型シリコン系撥水剤、および染料または顔料を多孔質粉体中に含むことを必須要件にしている。従って合成樹脂や水分散型シリコン系撥水剤を含まない本発明は抵触せず)

【0044】

上記を精査の結果、本発明の蛍光顔料とその製造方法は上記何れの先願にも抵触しない。上記先行技術を精査し抵触しないものは(抵触せず)と付記した。本発明はバイオ関係の特許にはすべて抵触しないので、バイオ関係には特に(抵触せず)との付記は付けていない。

【0045】
(非特許文献1)エアブラウン社・蛍光顔料カタログ; (http://www.arbrown.com/product/pigments_dyes/dya/pdf/Color.pdf)
【0046】
上記のように本発明は有機蛍光染料の内で最も耐候性の高いPerylene 及び/又はその誘導体及び/又は Naphthalimide(商品名;Lumogen;BASF社製)
を多孔質シリカゲル内部に含浸させ、多孔質シリカゲル外部の樹脂が多孔質シリカゲル内部の有機蛍光染料と反応しないようにした構造の顔料なのできわめて耐候性と耐薬品性に優れ、且つ濃度消光を防いだ構造の顔料なので、産業上きわめて有用である。
【0047】
また本発明と類似の作用を有し、類似の効果が得られる、ここに示さなかった多くの実施例は均等の原則に従い、本発明と同一の発明とみなされることは明白である。
更に明細書中に示した総ての実施例及び上記のここに示さなかった多くの実施例を、明細書中に述べられた要素技術を用いて実施する場合、その要素技術はすべて公知の技術を用いて実施できるので、本発明の構成が完成しているのは明白である。

【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】図1は多孔性シリカゲルの1つを示す模式図である。シリカゲルを球1で代表させて示す。シリカゲルの細孔を球間の細孔2で代表させて示す。 本発明で用いる多孔性シリカゲルはシリカゲルの骨格の中に複雑な細孔2が設けられている。この細孔2に図示しない有機蛍光染料の一分子ないしは数分子群が挿入される。有機蛍光染料を図示しない溶剤に溶解した後、細孔2に含浸させることで細孔2内に挿入する。
【図2】図2は多孔性シリカゲルの1つを示す模式図である。シリカゲルを球1で代表させて示す。シリカゲルの細孔を球間の細孔2で代表させて示す。 本発明で用いる多孔性シリカゲルはシリカゲルの骨格の中に複雑な細孔2が設けられている。この細孔2に図示しない蛍光染料の一分子ないしは数分子群が含浸される。また図2の多孔性シリカゲル1つの外側を示す番号3の位置には図示しない紫外線吸収剤や光安定剤を配置する。まず図3のような多孔性シリカゲル多数個の群を造って置き、多孔性シリカゲル多数個の外側から図示しない溶剤に溶解させた紫外線吸収剤や光安定剤を含浸させることで多孔性シリカゲル1つの外側を示す番号3の位置に紫外線吸収剤や光安定剤を配置する。
【図3】図3は多数個のシリカゲル粒子群からなる顔料の総体を示す図である。シリカゲル粒子同士の隙間を隙間3で示す。隙間3は図2の番号3で示す隙間と同一の隙間を示す。番号4は一個のシリカゲル粒子を示す。番号1はシリカゲル粒子内の稠密なシリカ粒子を示し、図1の番号1で示すシリカ粒子と同一のものを示す。
【符号の説明】
【0049】
1;シリカゲル粒子中の稠密なシリカ球の一つを示す。
2;シリカゲル粒子内の細孔の一つを示す。
3;シリカゲル粒子1つの外側の空間、即ちシリカゲル粒子間の空間を番号3で示す。
4;シリカゲル粒子を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶剤を用いて有機蛍光染料と紫外線吸収剤を溶解した溶液を、多孔質シリカゲルの細孔に含浸させることを特徴とし、かつ前記多孔質シリカゲルの平均一次粒子径は1μ以上、15μ以下であり、その平均細孔径は2nm以上、24nm以下の多孔質シリカゲルであり、有機蛍光染料の各分子及び/又は複数個の分子群と前記紫外線吸収剤の溶液を前記多孔質シリカゲルの細孔に含浸させることにより、有機蛍光染料の各分子及び/又は複数個の分子群を前記細孔の壁と紫外線吸収剤により互いに隔てて、分子同士の会合を防ぎ、濃度消光を防いだ蛍光顔料とすることを特徴とし、次に有機溶剤を蒸発させ、且つ紫外線吸収剤は残留させることを特徴とする蛍光顔料。
【請求項2】
有機溶剤を用いて有機蛍光染料と紫外線吸収剤及び光安定剤を溶解した溶液を、多孔質シリカゲルの細孔に含浸させることを特徴とし、かつ前記多孔質シリカゲルの平均一次粒子径は1μ以上、15μ以下であり、その平均細孔径は2nm以上、24nm以下の多孔質シリカゲルであり、有機蛍光染料の各分子及び/又は複数個の分子群と前記紫外線吸収剤及び光安定剤の溶液を前記多孔質シリカゲルの細孔に含浸させることにより、有機蛍光染料の各分子及び/又は複数個の分子群を前記細孔の壁と紫外線吸収剤及び光安定剤により互いに隔てて、分子同士の会合を防ぎ、濃度消光を防いだ蛍光顔料とすることを特徴とし、次に有機溶剤を蒸発させ、且つ紫外線吸収剤及び光安定剤は残留させることを特徴とする蛍光顔料。
【請求項3】
合成樹脂分を含まない有機溶剤を用いて有機蛍光染料を溶解した溶液を、多孔質シリカゲルの細孔に含浸させることを特徴とし、かつ前記多孔質シリカゲルの平均一次粒子径は1μ以上、15μ以下であり、その平均細孔径は2nm以上、24nm以下の多孔質シリカゲルであり、有機蛍光染料の各分子及び/又は複数個の分子群を前記多孔質シリカゲルの細孔に含浸させることにより、有機蛍光染料の各分子及び/又は複数個の分子群を前記細孔の壁により互いに隔てて、分子同士の会合を防ぎ、濃度消光を防いだ蛍光顔料とし、且つ有機蛍光染料が分解、分裂しない範囲の温度で有機溶剤を蒸発させて蛍光顔料としたことを特徴とする蛍光顔料。
【請求項4】
有機溶剤を用いて有機蛍光染料を溶解した溶液を、多孔質シリカゲルの細孔に含浸させることを特徴とし、かつ前記多孔質シリカゲルの平均一次粒子径は1μ以上、15μ以下であり、その平均細孔径は2nm以上、24nm以下の多孔質シリカゲルであり、有機蛍光染料の各分子及び/又は複数個の分子群を前記多孔質シリカゲルの細孔に含浸させることにより、有機蛍光染料の各分子及び/又は複数個の分子群を前記細孔の壁により互いに隔てて、分子同士の会合を防ぎ、濃度消光を防いだ蛍光顔料群とし、次に前記蛍光顔料群に紫外線吸収剤及び/又は光安定剤を加えたことを特徴とする蛍光顔料。
【請求項5】
請求項1から請求項4において用いる有機蛍光染料は少なくとも次に挙げる有機蛍光染料の何れかであることを特徴とする蛍光顔料。
(a) Perylene 及び/又はその誘導体
(b) Naphthalimide
(c) Rhodamin
(d)Fluorescein
(e)Pyranine
(f)Thioindigo
(g)
4',6-diamidino-2-phenylindole(DAPI)
(h)
7-hydroxycoumarin
(i) SYBR Green
(j) Cyanine
(k) Ethidium bromide
(l) Stilbene
(m) Nile blue
(n) Nile red
(o) 5,12-Bis(phenylethynyl)naphthacene
(p) Pyranine
(q) Merocyanine
(r) 5,6,11,12-テトラフェニルテトラセン
(s)Isoindolinone
(t)Quinacridone
(u)Dioxazine violet
(v)アゾベンゼン
(w)すべての有機蛍光染料
【請求項6】
請求項1から請求項4において用いる有機溶剤は、少なくとも次に挙げる有機溶剤の何れかであることを特徴とする蛍光顔料。
(a) Benzyl Alcohol
(b) Acetone
(c) Ethanol
(d)Methanol
(e)イソプロピルアルコール
(f)Solvent PM
(g) Et Acetate
(h) Bu Acetate
(i)Dimethyl Formamide
(j) White Spirit
(k) Xylene
(l) Toluene
(m) シクロペンタノン
(n) ジクロロメタン(塩化メチレン)
(o) 1,1,1トリクロロエタン
(p) トリクロロエタン
(q) 臭素系洗浄剤eクリーン21シリーズ(KKカネコ化学製)
(r) 樹脂溶解剤eソルブ21シリーズ(KKカネコ化学製)21シリーズeソルブ
(s)トリクレン
(t)クロロフォルム
(u)炭化水素系溶剤類、アルコール系溶剤類、ケトン系溶剤類、エステル系溶剤類、エーテル系溶剤類、
グリコール及びそのエーテル又はエステル、ハロゲン系溶剤類、
アミン系溶剤類、アミド系溶剤類の内、少なくとも一つを含む溶剤。
【請求項7】
請求項1から請求項4において製造した蛍光顔料を加温することにより、前記多孔質シリカゲルの細孔に含浸された有機溶剤の大部分あるいは全部を有機蛍光染料が分解、分裂しない範囲の温度で有機溶剤を蒸発させることを特徴とする蛍光顔料。
【請求項8】
請求項1から請求項4において製造した蛍光顔料を常温で放置することにより、前記多孔質シリカゲルの細孔に含浸された有機溶剤の一部を蒸発させることを特徴とする蛍光顔料。
【請求項9】
請求項1から請求項4において用いる紫外線吸収剤はベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤、ベンゼン環を有する紫外線吸収剤、ベンジルアルコールの内少なくとも1種類を含む紫外線吸収剤であることを特徴とする蛍光顔料。
【請求項10】
請求項1から請求項4において用いる光安定剤はヒンダードアミン系光安定剤(HALS)であることを特徴とする蛍光顔料。
【請求項11】
請求項1から請求項10に示す構造を持つ蛍光顔料の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−132319(P2011−132319A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−291606(P2009−291606)
【出願日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(398034733)エス・ジー・ケイ有限会社 (7)
【Fターム(参考)】