説明

耐光性を向上した着色材組成物

【課題】染料を安定化する。
【解決手段】下記一般式(I):(Ar)n−Si−(OR)4-n(I)(式中、Arは電子供与性の置換基を有していてもよいナフチル基、ビフェニル基もしくはターフェニル基であり、Rは、同一または異なって炭素数1〜3のアルキル基であり、nは1または2である。)で表されるアリールアルコキシシランまたはそれを含む縮合物と染料を含有することを特徴とする着色材組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐光性を向上した着色材組成物に関し、特にカラーフィルタに用いるのに好適な着色材組成物およびそれを用いたカラーフィルタ並びに液晶表示装置に関する。また、本発明は、染料の耐光性を向上させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶駆動のディスプレイにおいて、特にカラー表示をするためには、液晶セル構成中にカラーフィルタが配置されている。カラーフィルタの構成は、一般的には、ガラス表面上に遮光用のブラック部、カラー表示用のRed(R)、Green(G)及びBlue(B)のカラーマトリックス、カラーマトリックスを保持する透明な膜、更に液晶を駆動するための透明電極膜の4つの部材層からなっている。カラーフィルタにおけるこれらの層のうちのカラーマトリックス層を形成するために、種々の方法、例えば、染料を用いた染色法、顔料を用いた各種の顔料分散手法が、従来、提案されている。
【0003】
顔料分散法により得られたカラーフィルタは染色法によるものに比べ、耐溶剤性や耐久性に優れるため現在、カラーフィルタの製造には顔料分散法が主流となっている。
【0004】
しかしながら、無機顔料粒子を用いる方法では、解像度、透明性、コントラストなどの向上に限界がある
染料を用いた染色法による液晶表示装置用のカラーフィルタの製造には、例えば、特許文献1に示されるように酸化チタンゾルを染料と共に含む組成物が知られている。特許文献1は、酸化チタンゾルを染料と併用することにより耐熱性・耐光性を高めることを目的としているが、その効果は不十分であった。
【0005】
特許文献2は、トリフェニルメタン系の染料に金属錯体を添加して染料の耐光性を高めた発明を開示しているが、封止条件下の評価であるため、耐光性の向上の程度は明らかではない。
【0006】
着色剤をシリカマトリクスに組み込む技術として特許文献3,非特許文献1及び2がある。特許文献3は耐沸騰水性、耐アルカリ水性に優れたコーティング膜を得ることを目的とし、実施例では着色剤として顔料が用いられ、非特許文献1,2は、疎水性色素分子がハイブリッドシリカゲルに組み込まれた構造を教示するのみであり、これらは、いずれも特定の染料の耐光性・耐熱性の向上について教示も示唆もしていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−72889
【特許文献2】特開平11−223720
【特許文献3】特開平10−204296
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Journal of Sol-Gel Science and Technology 26, 383-388, 2003
【非特許文献2】Chem. Mater. 1998, 10, 1582-1588
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
カラーフィルタの製法には、顔料分散法や電着法等の顔料で着色する方法、染色法や染料溶解法等の染料で着色する方法がある。着色材として染料を用いた場合、一般に、顔料を用いた場合に比べて発色性(色度および光透過率)にすぐれている。しかし、染料は、顔料に比べて耐光性および耐熱性に劣るといわれる。したがって、染料については、そうした耐性を向上させるための技術が熱望される。本発明では、特定の染料を用いた場合における耐光性の向上を目的とする。
【0010】
染料等の着色材(つまり、色材)の光退色については、酸化的な退色、特に光により生成した一重項酸素によるものが支配的に働くことが知られている。
【0011】
また、カラーフィルタは、パネル化して液晶表示装置の中に組み込まれるため、空気とは完全に遮断された状態である。そのため、カラーフィルタの色パターンの中の染料は、酸化的な退色が進行する環境ではなく、上記一重項酸素による褪色防止以外の染料の安定化手法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、上記課題に鑑み検討を重ねた結果、電子供与性の置換基で置換されていてもよいアリール基を有するアルコキシシランがバルクのπ電子ドナー性を高めることにより、染料の安定性、特に耐熱性、耐光性を高めることを見出し、本発明を完成した。
【0013】
本発明は、以下の着色材組成物及びカラーフィルタを提供するものである。
項1.
下記一般式(I):
(Ar)n−Si−(OR)4- n (I)
(式中、Arは電子供与性の置換基を有するフェニル基または電子供与性の置換基を有していてもよいナフチル基、ビフェニル基もしくはターフェニル基であり、Rは、同一または異なって炭素数1〜3のアルキル基であり、nは1または2である。)
で表されるアリールアルコキシシランまたはそれを含む縮合物と染料を含有することを特徴とする着色材組成物。
項2.
電子供与性の置換基がメチル、エチル、メトキシ、エトキシ、フェノキシ、ヒドロキシ、メチレンジオキシ、アミノ、メチルアミノ、エチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノおよびアセチルオキシからなる群から選択される、項1に着色材組成物。
項3.
下記一般式(I):
(Ar)n−Si−(OR)4- n (I)
(式中、Arは電子供与性の置換基を有していてもよいアリール基であり、Rは、同一または異なって炭素数1〜3のアルキル基であり、nは1または2である。)
で表されるアリールアルコキシシランまたはそれを含む縮合物と染料を含有し、前記染料が、Acid Red、Acid Green、Acid Blue、Acid Yellow、Basic Red、Basic Green、Basic Blue、Basic Violet及びBasic Yellowからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする着色材組成物。
項4.
前記染料が、Acid Red 6、AcidRed 11、Acid Red 26、Acid Red 60、Acid Red 88、Acid Red 111、Acid Red 186、Acid Red 215、Acid Green 25、Acid Green 27、Acid Blue 1, Acid Blue 3, Acid Blue 9, Acid Blue 83, Acid Blue 90, Acid Blue 22、Acid Blue 25、Acid Blue 40、Acid Blue 78、Acid Blue 92、Acid Blue 113、Acid Blue 129、Acid Blue 167、Acid Blue 230、Acid Yellow 17、Acid Yellow 23、Acid Yellow 25、Acid Yellow 36、Acid Yellow 38、Acid Yellow 42、Acid Yellow 44、Acid Yellow 72、Acid Yellow 78、Basic Red 1、Basic Red 2、Basic Red 13、Basic Red 14、Basic Red 22、BasicRed 27、Basic Red 29、Basic Red 39、Basic Green 3、Basic Green 4 、Basic Blue 3、Basic Blue 7、Basic Blue 9、Basic Blue 41、Basic Blue66、Basic Violet 1、Basic Violet 3、Basic Violet 18、BasicViolet 39、Basic Yellow 11、Basic Yellow 23、Basic Yellow 25、Basic Yellow 28及びBasic Yellow 41からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする項1〜3のいずれかに記載の着色材組成物。
項5.
前記染料がAcid Blue 1, Acid Blue 3, Acid Blue 9, Acid Blue 83, Acid Blue 90及びBasic Blue 7からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、項4に記載の着色材組成物。
項6.
電子供与性置換基を有してもよいアリール含有シロキサン構造を有するシリカマトリクス中に染料を含有する有機無機複合体を樹脂層に分散してなり、前記有機無機複合体が項1〜5のいずれかに記載の着色材組成物のゾルゲル反応により得られたものである、カラーフィルタ。
項7.
項6に記載のカラーフィルタを有することを特徴とする液晶表示装置。
項8.
項1〜5のいずれかに記載の着色材組成物のゾルゲル反応を行うことを特徴とする染料の耐光性を向上させる方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、発色性(色度および光透過率)、耐光性および耐熱性に優れた着色材組成物、空気とは完全に遮断された状態において耐光性および耐熱性が向上したカラーフィルタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】耐光性とアリールアルコキシシランのπ電子ドナー性との関係を示す。
【図2】本発明の液晶表示装置の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0016】
1 … 透明基板
2 … 遮光部
3 … 着色層
10 … カラーフィルタ
20 … 対向基板
30 … 液晶層
40 … 液晶表示装置
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書において、「置換基を有していてもよい」とは、置換基を有する場合と有しない場合の両方を包含する。例えば置換基を有していてもよいアリール基は、置換基を有しないアリール基と置換基を有するアリール基の両方を包含する。同様に、置換基を有していてもよいナフチル基、ビフェニル基もしくはターフェニル基は、無置換のナフチル基、ビフェニル基、ターフェニル基と、置換基を有するナフチル基、置換基を有するビフェニル基、置換基を有するターフェニル基を包含する。
【0018】
なお、置換基を有していてもよいアリール基には、置換基を有していてもよいフェニル基、置換基を有していてもよいナフチル基、置換基を有していてもよいビフェニル基置換基を有していてもよいターフェニル基が包含される。
【0019】
一般式(I)のアリールアルコキシシランのAr基において:
アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ターフェニル基が挙げられ、フェニル基が特に好ましい。
【0020】
本明細書においてアリール基の置換基はアリール基のπ電子ドナー性を制御する目的で導入され、染料の光による褪色を抑える効果があり、電子供与性の置換基が好ましい。すなわちアリール基のπ電子ドナー性によって染料の発色に寄与する電子状態を安定化できるためである。
【0021】
アリール基の置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、ヒドロキシ(OH),アミノ(NH)、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アシルオキシ、アルコキシアルキル、メチレンジオキシなどが挙げられる。置換基の数は、1〜3個、好ましくは1〜2個、特に1個である。置換基がハロゲン原子の場合には、置換基の数は1個または2個、特に1個が好ましい。
【0022】
ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、フッ素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0023】
アルキル基としては、炭素数1〜6の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基が挙げられ、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシルなどが挙げられる。
【0024】
アルコキシ基としては、炭素数1〜6の直鎖状若しくは分枝状のアルコキシ基が挙げられ、例えばメトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、1-メチルプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、2-メチル-ブトキシ基、ネオペンチルオキシ基、ペンタン-2-イルオキシ基などが挙げられる。
【0025】
アルキルチオ基としては、好ましくは炭素数1〜6の直鎖状若しくは分枝状のアルキルチオ基を示し、メチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、n-ブチルチオ基、イソブチルチオ基、sec−ブチルチオ基、tert−ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基などが挙げられる。
【0026】
アリールオキシ基としては、フェノキシ基、ナフトキシ基が挙げられる。
【0027】
モノ又はジアルキルアミノ基としては、前記の炭素数1〜6の直鎖または分枝を有するアルキル基によりモノ置換又はジ置換されたアミノ基が挙げられ、例えばメチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、メチルエチルアミノ基が挙げられる。
【0028】
アシルオキシ基としては、ホルミルオキシ基、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、n-ブチリルオキシ基、イソブチリルオキシ基、バレリルオキシ基、イソバレリルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基などの直鎖又は分枝を有する炭素数1〜7のアシルオキシ基が挙げられる。
【0029】
アルコキシアルキル基としては、メトキシメチル基、エトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基などが挙げられる。
【0030】
Rで表される炭素数1〜3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基が挙げられ、好ましくはメチル基またはエチル基である。
【0031】
nは、1または2、好ましくは1である。
【0032】
本発明の一般式(I)のアリールアルコキシシランは、1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、一般式(I)でn=3のアリールアルコキシランや、メチルトリアルコキシシラン、エチルトリアルコキシシラン、プロピルトリアルコキシシラン、テトラアルコキシシラン、さらには、アルコキシシラン化合物のケイ素をジルコニウム、アルミニウム、チタンなどに変えたアルコキシ化合物を、本発明の効果を損なわない範囲で併用してもよい。
【0033】
一般式(I)のアリールアルコキシシランは、モノマー(アリールアルコキシシラン自体)として組成物に配合してもよく、ダイマー、トリマーなどのオリゴマーのような部分的に縮合したシラン化合物として組成物に配合してもよく、あるいはポリマーとして着色材組成物に配合してもよい。ダイマー、トリマーなどのオリゴマー、あるいは、ポリマーとして配合する場合、これらは一般式(I)のアリールアルコキシシランをゾルゲル法などにより縮合したオリゴマーないしポリマーであってもよく、アルキル基ないしアリール基とSi原子が直接結合していてもよいアルコキシシラン化合物(シランカップリング剤)、アルコキシチタン化合物(チタンカップリング剤)、アルコキシジルコニウム化合物(ジルコニウムカップリング剤)、アルコキシアルミニウム化合物(アルミニウムカップリング剤)などの1種以上の化合物と一般式(I)のアリールアルコキシシランが縮合した化合物であってもよい。なお、一般式(I)のアリールアルコキシシランをゾルゲル法などにより縮合したオリゴマーないしポリマーは、同一の一般式(I)のアリールアルコキシシランを縮合してもよく、一般式(I)に含まれる2種以上のアリールアルコキシシランを縮合してもよい。縮合法としては、例えばアルコールなどの溶媒中で、酸ないしアルカリを触媒として用いるゾルゲル法が挙げられる。
【0034】
ゾルゲル法に用いる触媒、主として重縮合触媒としては、第三級アミンが挙げられる。例えば、N,N−ジメチルベンジルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン等があり、特にN,N−ジメチルベンジルアミンが好適である。その使用量は、アルコキシドおよび各カップリング剤の合計量100重量部当り、0.01〜1重量部、好ましくは約0.03重量部である。
【0035】
本発明の着色材組成物中の一般式(I)で表されるアリールアルコキシシランをゾルゲル法により反応させることで、電子供与性置換基を有してもよいアリール含有シロキサン構造を有するシリカマトリクス中に染料を含有する(シリカマトリクス中に染料が組み込まれた)有機無機複合体を得ることができる。この有機無機複合体を調製することで、染料の耐光性を向上させることができる。
【0036】
本発明においては、着色材組成物は第三級アミンに代えて、または第三級アミンとともに酸を含んでいてもよい。酸は、ゾルゲル法の触媒、主としてアルコキシドやシランカップリング剤等の加水分解のための触媒として用いられる。酸としては、硫酸、塩酸、硝酸等の鉱酸、ならびに酢酸、酒石酸等の有機酸が用いられる。酸の使用量は、アルコキシドおよびシランカップリング剤のアルコキシド分(例えばシリケート部分)の総モル量に対して、0.001〜0.05モルであり、好ましくは約0.01モルである。
【0037】
本明細書において、染料としては、特に限定されないが、例えば酸性染料、塩基性染料が好ましく用いられ、これら染料の少なくとも1種を用いることができる。酸性染料としては、Acid Red、Acid Green、Acid Blue、Acid Yellowが挙げられ、塩基性染料としては、Basic Red、Basic Green、Basic Blue、Basic Violet、Basic Yellowが挙げられる。好ましい染料は、Acid Red 6、AcidRed 11、Acid Red 26、Acid Red 60、Acid Red 88、Acid Red 111、Acid Red 186、Acid Red 215、Acid Green 25、Acid Green 27、Acid Blue 1, Acid Blue 3, Acid Blue 9, Acid Blue 83, Acid Blue 90, Acid Blue 22、Acid Blue 25、Acid Blue 40、Acid Blue 78、Acid Blue 92、Acid Blue 113、Acid Blue 129、Acid Blue 167、Acid Blue 230、Acid Yellow 17、Acid Yellow 23、Acid Yellow 25、Acid Yellow 36、Acid Yellow 38、Acid Yellow 42、Acid Yellow 44、Acid Yellow 72、Acid Yellow 78からなる群から選ばれる酸性染料と、Basic Red 1、Basic Red 2、Basic Red 13、Basic Red 14、Basic Red 22、BasicRed 27、Basic Red 29、Basic Red 39、Basic Green 3、Basic Green 4 、Basic Blue 3、Basic Blue 7、Basic Blue 9、Basic Blue 41、Basic Blue66、Basic Violet 1、Basic Violet 3、Basic Violet 18、BasicViolet 39、Basic Yellow 11、Basic Yellow 23、Basic Yellow 25、Basic Yellow 28、Basic Yellow 41からなる群から選ばれる塩基性染料の少なくとも1種が挙げられる。
【0038】
一般式(I)のアリールアルコキシシランとしては、4−ヒドロキシフェニルトリメトキシシラン、4−ヒドロキシフェニルトリエトキシシラン、4−メトキシフェニルトリメトキシシラン、4−メトキシフェニルトリエトキシシラン、2,4−ジメトキシフェニルトリメトキシシラン、2,4−ジメトキシフェニルトリエトキシシラン、3,5−ジメトキシフェニルトリメトキシシラン、3,5−ジメトキシフェニルトリエトキシシラン、2,4,6−トリメトキシフェニルトリメトキシシラン、3,4,5−トリメトキシフェニルトリメトキシシラン、4−(2−メトキシ)エトキシフェニルトリメトキシシラン、4−アミノフェニルトリメトキシシラン、4−アミノフェニルトリエトキシシラン、2,4−ジアミノフェニルトリメトキシシラン、4−ジメチルアミノフェニルトリメトキシシラン、4−メルカプトフェニルトリメトキシシラン、4−メチルチオフェニルトリメトキシシラン、4−グリシジルフェニルトリメトキシシラン、4−グリシジルオキシフェニルトリメトキシシラン、4−グリシジルオキシフェニルトリエトキシシラン、4−(2−エポキシ)エトキシフェニルトリメトキシシラン、4−(2−エポキシ)エトキシフェニルトリエトキシシラン、4−シアノフェニルトリメトキシシラン基等が挙げられる。
【0039】
本発明の着色材組成物において、一般式(I)の化合物と染料は、これらの合計を100重量部とした場合、一般式(I)の化合物40〜95重量部と染料60〜5重量部、好ましくは一般式(I)の化合物50〜90重量部と染料50〜10重量部が挙げられる。
【0040】
本発明の着色材組成物において、染料の分散性を向上させるために分散剤を添加してもよい。ただし、その添加量や種類によっては耐久性を損なうことがあるので注意を要する。分散剤は染料とゾルゲルの混合時において、染料を媒体中に均一に分散させその状態を安定化させるために使用される。分散剤の種類としては界面活性剤やシランカップリング剤がある。ここでいう界面活性剤は一つの分子内に親水性の部位と親油性の部位が共有結合で結ばれた構造をした物質を指し、低分子であっても高分子であってもよい。親水性の部位としてはアニオン型(酸)、カチオン型(塩基、オニウム塩(NR4+))、あるいはノニオン型がある。ノニオン型とは、イオン解離性を持たないポリエチレンエキサイド(PEO:polyethylene oxide)やポリオールが一般的で、これらは水素結合によって酸素原子が水和されpHによらず親水性を示す。シランカップリング剤は分子内に反応結合する官能基,および無機材料と反応結合する官能基を同時に有する有機ケイ素化合物である。好適にはシランカップリング剤が用いられ、具体例としてはグリシジロキシアルキルトリアルコキシシラン、メタクリロキシトリアルコキシシラン、ハロアルキルトリアルコキシシラン、アミノアルキルトリアルコキシシランなどを用いることができる。特にハロアルキルトリアルコキシシランが染料の媒質中への分散性向上と安定性の付与の点で好ましい。
【0041】
本発明のカラーフィルタは、常法に従い、本発明の着色材組成物を従来の染料または顔料の代わりに用いて製造できる。
【0042】
例えば、本発明の着色材組成物、バインダー樹脂、光重合性モノマー、光重合開始剤及び溶剤を含有する着色レジストを用いた液晶表示用のカラーフィルタの製造方法は、バインダー樹脂、光重合性モノマーおよび光重合開始剤を含む透明感光性樹脂に本発明の着色材組成物を分散ないし混合した感光液を透明ガラス基板上に塗布して感光性樹脂層を形成する。次に、この感光性樹脂層上に所定形状の開口パターンを有するマスクを載置し、露光・現像を行い第一着色層を形成する。同様にして第二着色層、第三着色層を形成して、R、G、Bの各着色層を備えたカラーフィルタを得ることができる。
【0043】
本発明で使用するバインダー樹脂には、光重合性モノマーに対して相溶性がある線状有機高分子重合体であって、溶剤に可溶で現像可能なものを好ましく用いることができる。具体的には、メタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体、ポリイミド樹脂等を用いることができる。
【0044】
本発明で使用する光重合性モノマーには、少なくとも1個の付加重合可能なエチレン性不飽和基を有し、沸点が常温において100℃以上のものが好ましい。具体的には、単官能のアクリレートやメタクリレート、多官能アルコールにエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加させた後メタクリレート化したもの等を用いることができる。さらに、ポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂とメタクリル酸との反応生成物であるエポキシアクリレート類等の多官能アクリレートやメタアクリレート、光硬化性モノマー及びオリゴマー、ブチラール樹脂、スチレン−マレイン酸共重合体、ポリ酢酸ビニル、フェノール樹脂等を用いることができるが、反応性の理由から、多官能性アクリレートモノマーを使用するのが好ましい。
【0045】
本発明に使用する光重合開始剤には、ビシナールポリケトアルドニル化合物、α−カルボニル化合物、アシオインエーテル、多岐キノン化合物、トリアリルイミダゾールダイマー/p−アミノフェニルケトンの組合せ、トリオキサジアゾール化合物等が挙げられ、好ましくは、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン(イルガキュア369:商品名、チバスペシャルティケミカルズ社製)が挙げられる。
【0046】
本発明で使用する溶剤には、グリコールエーテル系、そのアセテート系、酢酸エステル系、ケトン系の溶剤が適宜使用可能である。特に、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが好適に使用できる。
【0047】
本発明の着色材組成物はアルコール系溶媒中に染料とアルコキシシランと水を加えたものに、酸触媒として塩酸を添加して得られるゾル液を、透明基板上に塗布し、加熱乾燥させることで製膜することができる。
【0048】
本発明で用いられるアルコール系溶媒としては、着色材組成物中の各成分とは反応せず、これらを溶解もしくは分散可能な有機溶剤であれば特に限定されるものではない。具体的には、メチルアルコール、エチルアルコール、N−プロピルアルコール、i−プロピルアルコールなどのアルコール系溶剤、メトキシアルコール、エトキシアルコールなどのセロソルブ系溶剤、メトキシエトキシエタノール、エトキシエトキシエタノールなどのカルビトール系溶剤などを好適に用いることができる。
【0049】
これらの溶剤は単独もしくは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0050】
本発明に用いられる透明基板としては、可視光に対して透明な基材であれば特に限定されるものではない。具体的には、石英ガラス、無アルカリガラス、合成石英板等の可撓性のない透明なリジッド材、あるいは、透明樹脂フィルム、光学用樹脂板等の可撓性を有する透明なフレキシブル材が挙げられる。
【0051】
塗布方法としては、特に限定されるものではなく、例えばスプレーコート法、ディップコート法、バーコート法、ロールコート法、スピンコート法等を挙げることができる。
【0052】
上記着色材組成物を塗布した後は、溶剤を除去するために塗膜を乾燥させる。例えばホットプレートやオーブン等を用いて塗膜を加熱することによって乾燥させることができる。
【0053】
次に、本発明の液晶表示装置について説明する。本発明の液晶表示装置は上記カラーフィルタを有することを特徴とするものである。
【0054】
このような本発明の液晶表示装置について、図を参照しながら説明する。図2は、本発明の液晶表示装置の一例を示す概略図である。図2に例示するように本発明の液晶表示装置40は、カラーフィルタ10と、TFTアレイ基板等を有する対向基板20と、上記カラーフィルタ10と上記対向基板20との間に形成された液晶層30とを有するものである。本発明のカラーフィルタ10は、透明基板1と、遮光部2と、着色層3とを有するものである。
【0055】
本発明によれば、上記カラーフィルタが用いられていることにより、高品質かつ優れた耐光性の液晶表示装置とすることができる。
【0056】
本発明の液晶表示装置の駆動方式としては、特に限定されるものではなく一般的に液晶表示装置に用いられている駆動方式を採用することができる。このような駆動方式としては、例えば、TN方式、IPS方式、OCB方式、および、MVA方式等を挙げることができる。本発明においてはこれらのいずれの方式であっても好適に用いることができる。
【0057】
また、対向基板としては、本発明の液晶表示装置の駆動方式等に応じて適宜選択して用いることができる。
【0058】
本発明における液晶層は、カラーフィルタおよび対向基板間に設けられるものである。液晶層を構成する液晶としては、本発明の液晶表示装置の駆動方式等に応じて、誘電異方性の異なる各種液晶、およびこれらの混合物を用いることができる。
【0059】
図2に示すように本発明の液晶表示装置は、通常、上記カラーフィルタが用いられたカラーフィルタと、上記対向基板と、上記液晶層とを有するものとされるが、本発明の液晶表示装置はこのような構成に限られるものではなく、一般的にカラーフィルタが用いられた液晶表示装置として公知の構成とすることができる。
【0060】
液晶層の形成方法としては、一般に液晶セルの作製方法として用いられる方法を使用することができ、例えば、真空注入方式や液晶滴下方式等が挙げられる。
【0061】
真空注入方式では、例えば、あらかじめカラーフィルタおよび対向基板を用いて液晶セルを作製し、液晶を加温することにより等方性液体とし、キャピラリー効果を利用して液晶セルに液晶を等方性液体の状態で注入し、接着剤で封鎖することにより液晶層を形成することができる。その後、液晶セルを常温まで徐冷することにより、封入された液晶を配向させることができる。
【0062】
また液晶滴下方式では、例えば、カラーフィルタの周縁にシール剤を塗布し、このカラーフィルタを液晶が等方相になる温度まで加熱し、ディスペンサー等を用いて液晶を等方性液体の状態で滴下し、カラーフィルタおよび対向基板を減圧下で重ね合わせ、シール剤を介して接着させることにより、液晶層を形成することができる。その後、液晶セルを常温まで徐冷することにより、封入された液晶を配向させることができる。
【0063】
本発明の着色材組成物ないしカラーフィルタを用いた表示装置として、有機EL表示装置を挙げることができる。
【0064】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と、実質的に同一の構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなる場合であっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0065】
以下、本発明を実施例を用いてさらに詳細に説明するが、本発明がこれら実施例に限定されないことはいうまでもない。
実施例1
フェニルトリアルコキシシランを用いたゾルゲル-染料色材組成物
メタノール5.3重量部、Acid Blue 90 0.43重量部、クロロプロピルトリメトキシシラン0.1重量部を混合し、室温で20時間撹拌した。このものにフェニルトリメトキシシラン1.0重量部、純水0.27重量部、0.5N塩酸0.091重量部を加え、さらに室温で20時間撹拌した。このものをメンブレンフィルタを用い濾過し、不溶物を除いた。
【0066】
得られた溶液を厚み0.7mmのガラス基板(NHテクノグラス(株)製、NA35)上に、スピンコートにより上記ゾルゲル-染料色材組成物溶液を塗布した。その後、150℃のホットプレート上で2分間加熱乾燥を行い、上記ゾルゲル−染料色材組成物塗膜を得た。
【0067】
実施例2
4−メトキシフェニルトリアルコキシシランを用いたゾルゲル-染料色材組成物
フェニルトリメトキシシラン1.0重量部を4−メトキシフェニルトリエトキシシラン1.3重量部に変えた以外は実施例1に記載の方法と同様にしてゾルゲル−染料色材組成物塗膜を得た。
【0068】
比較例1
テトラアルコキシシランを用いたゾルゲル-染料色材組成物
フェニルトリメトキシシラン1.0重量部をテトラメトキシシラン0.77重量部に変えた以外は実施例1に記載の方法と同様にしてゾルゲル−染料色材組成物塗膜を得た。
【0069】
比較例2
ペンタフルオロフェニルアルコキシシランを用いた-染料色材組成物
フェニルトリメトキシシラン1.0重量部をペンタフルオロフェニルアルコキシシラン1.66重量部に変えた以外は実施例1に記載の方法と同様にしてゾルゲル−染料色材組成物塗膜を得た。
<評価>
得られた上記塗膜を耐光性試験に供した。
耐光性試験はアトラス社製、CiウェザオメータにXeランプを付し、内側フィルタとしてCIRA、外側フィルタとしてソーダライムを用いた条件で行った。照射量は400nm換算で40 mW/mの照度で300kJ/mであった。この耐光試験前後の塗膜の透過率ピーク値とL、a、bをオリンパス社製顕微分光装置OSP−SP200を用いて測定した。得られた値から透過率ピークの減少率およびΔEabを算出し表1にまとめた。
ΔE = (Δa2+Δb2+ΔL21/2
【0070】
【表1】

【0071】
上記表において、減少率が小さい、色差ΔEが小さいほうが耐光性が高い。
【0072】
化学構造的にフェニル基をもたない(π電子ドナー性がない)比較例1に比べ、フェニル基をもつ実施例1では透過率ピークの減少率と色差がともに小さく、耐光性が高い。
【0073】
フェニル基に電子供与性基をもつ実施例2では実施例1に比べて、色差が若干大きくなるが、透過率ピークの減少率は小さくなっており、透過率の低下を抑制する効果が見られた。
【0074】
比較例2では実施例1にくらべ、透過率ピークの減少率が大きくなるとともに、色差が著しく大きくなり、より耐光性が低い。ベンゼン環上水素基が電子求引性基であるフルオロ基で5つ置換されていることでπ電子ドナー性が低く、逆にπ電子アクセプター性が強くなった結果、染料のカチオン性を不安定化し、光による褪色を促進したものと考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I):
(Ar)n−Si−(OR)4- n (I)
(式中、Arは電子供与性の置換基を有するフェニル基または電子供与性の置換基を有していてもよいナフチル基、ビフェニル基もしくはターフェニル基であり、Rは、同一または異なって炭素数1〜3のアルキル基であり、nは1または2である。)
で表されるアリールアルコキシシランまたはそれを含む縮合物と染料を含有することを特徴とする着色材組成物。
【請求項2】
電子供与性の置換基がメチル、エチル、メトキシ、エトキシ、フェノキシ、ヒドロキシ、メチレンジオキシ、アミノ、メチルアミノ、エチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノおよびアセチルオキシからなる群から選択される、請求項1に着色材組成物。
【請求項3】
下記一般式(I):
(Ar)n−Si−(OR)4- n (I)
(式中、Arは電子供与性の置換基を有していてもよいアリール基であり、Rは、同一または異なって炭素数1〜3のアルキル基であり、nは1または2である。)
で表されるアリールアルコキシシランまたはそれを含む縮合物と染料を含有し、前記染料が、Acid Red、Acid Green、Acid Blue、Acid Yellow、Basic Red、Basic Green、Basic Blue、Basic Violet及びBasic Yellowからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする着色材組成物。
【請求項4】
前記染料が、Acid Red 6、AcidRed 11、Acid Red 26、Acid Red 60、Acid Red 88、Acid Red 111、Acid Red 186、Acid Red 215、Acid Green 25、Acid Green 27、Acid Blue 1, Acid Blue 3, Acid Blue 9, Acid Blue 83, Acid Blue 90, Acid Blue 22、Acid Blue 25、Acid Blue 40、Acid Blue 78、Acid Blue 92、Acid Blue 113、Acid Blue 129、Acid Blue 167、Acid Blue 230、Acid Yellow 17、Acid Yellow 23、Acid Yellow 25、Acid Yellow 36、Acid Yellow 38、Acid Yellow 42、Acid Yellow 44、Acid Yellow 72、Acid Yellow 78、Basic Red 1、Basic Red 2、Basic Red 13、Basic Red 14、Basic Red 22、BasicRed 27、Basic Red 29、Basic Red 39、Basic Green 3、Basic Green 4 、Basic Blue 3、Basic Blue 7、Basic Blue 9、Basic Blue 41、Basic Blue66、Basic Violet 1、Basic Violet 3、Basic Violet 18、BasicViolet 39、Basic Yellow 11、Basic Yellow 23、Basic Yellow 25、Basic Yellow 28及びBasic Yellow 41からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の着色材組成物。
【請求項5】
前記染料がAcid Blue 1, Acid Blue 3, Acid Blue 9, Acid Blue 83, Acid Blue 90及びBasic Blue 7からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項4に記載の着色材組成物。
【請求項6】
電子供与性置換基を有してもよいアリール含有シロキサン構造を有するシリカマトリクス中に染料を含有する有機無機複合体を樹脂層に分散してなり、前記有機無機複合体が請求項1〜5のいずれかに記載の着色材組成物のゾルゲル反応により得られたものである、カラーフィルタ。
【請求項7】
請求項6に記載のカラーフィルタを有することを特徴とする液晶表示装置。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれかに記載の着色材組成物のゾルゲル反応を行うことを特徴とする染料の耐光性を向上させる方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−242032(P2010−242032A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−95294(P2009−95294)
【出願日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【出願人】(504132272)国立大学法人京都大学 (1,269)
【Fターム(参考)】