説明

耐光性試験装置及び耐光性試験方法

【課題】耐光性試験に要する試験時間の短縮を図りながら、試料の損傷を防止できる耐光性試験装置及び耐光性試験方法を提供する。
【解決手段】耐光性試験装置1は、試料に対して光を出射するレーザ18と、試料を透過した光を受光する受光素子14と、レーザ18から出射された光の光量と受光素子14により受光された光の光量とに基づいて試料の光透過率を算出すると共に、光源を制御する制御部16とを備える。光透過率が所定の閾値より大きい場合には、第1の強度より強い第2の強度でレーザ光が試料に照射されるように制御されるので、試験時間を短縮することが可能となると共に、試料の光透過率が劣化し所定の閾値以下になった場合には、第1の強度でレーザ光が試料に照射されるように制御されるので、レーザ光のエネルギを吸収することにより試料に溶融等の損傷が生じることを防止することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料の耐光性を試験する耐光性試験装置及び耐光性試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、種々の光学部品の信頼性評価の1つとして耐光性試験が行われている。耐光性試験は、長時間にわたって所定の強度の光が照射された場合における光学部品の光透過率の劣化状況を評価することにより行われる。光学部品としては、例えばLED封止用部品やコーティング加工されたレンズのコート部分等が例示される。この耐光性試験では、例えば1000時間といった長時間の試験期間を要する場合がある。しかしながら、このような長時間に及ぶ試験は、昨今の製品開発のスピードに沿うものではない。試験期間を短縮するために、通常の使用状態よりも強い負荷をかけて試験を行い、通常の使用状態における劣化状態を推定する、いわゆる加速試験が行われる(例えば、特許文献1参照)。例えば、通常の使用状態における光の強度を所定の光量とし、その10倍の強度の照射光により加速試験を行えば、10分の1の時間で試験を行うことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−134084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、加速試験において試料の光透過率が低下すると、試料が照射光のエネルギを吸収し、試料に溶融等の損傷が発生し、試験の続行が不可能となる場合がある。耐光性試験では、試験中に光透過率の劣化が発生した場合であっても、予め設定した所定時間の試験を行い、所定時間経過時における光透過率等の特性を取得する必要がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、耐光性試験に要する試験時間の短縮を図りながら、試料の損傷を防止できる耐光性試験装置及び耐光性試験方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る耐光性試験装置は、試料の耐光性試験として、所定の強度で所定の時間にわたって光が照射された場合に相当する試料の光透過率を評価するための耐光性試験装置であって、試料に対して光を出射する投光手段と、試料を透過した光を受光する受光手段と、投光手段から出射された光の光量と受光手段により受光された光の光量とに基づいて試料の光透過率を算出すると共に、光源を制御する制御手段とを備え、制御手段は、試料の光透過率が所定の閾値より高い場合には、所定の強度より高い強度で光が試料に照射されるように光源を制御し、試料の光透過率が所定の閾値以下になった場合には、所定の強度で光が試料に照射されるように光源を制御することを特徴とする。
【0007】
また、上記目的を達成するために、本発明に係る耐光性試験方法は、試料の耐光性試験として、所定の強度で所定の時間にわたって光が照射された場合に相当する試料の光透過率を評価する耐光性試験方法であって、所定の強度より高い強度で光を試料に照射し、試料に照射した光の光量と試料を透過した光の光量とに基づいて試料の光透過率を算出する光透過率算出工程と、試料の光透過率が所定の閾値以下になった場合に、所定の強度で光が試料に照射されるように光源を制御する照射光制御工程とを含むことを特徴とする。
【0008】
この耐光性試験装置及び耐光性試験方法によれば、所定の強度より高い強度の光を試料に照射して試験が行われるので、所定の強度の光のみを照射して試験が行われる場合と比較して試験時間を短縮することが可能となると共に、試料の光透過率が劣化し所定の閾値以下になった場合には、所定の強度で光が試料に照射されるように光源が制御されるので、試料が照射光のエネルギを吸収することにより試料に溶融等の損傷が生じることを防止することが可能となる。
【0009】
また、本発明の耐光性試験装置では、制御手段は、試料の光透過率が所定の閾値より高い場合には、所定の強度のn(nは1より大きい実数)倍の強度で前記光が前記試料に照射されるように前記光源を制御し、所定の時間の1/n倍の時間を経過する前に試料の光透過率が所定の閾値以下になった場合には、試料の光透過率が所定の閾値以下になるまでに要した時間のn倍の時間を所定の時間から減じた時間だけ、所定の強度で光が試料に照射されるように光源を制御することを特徴とする。この場合には、所定の強度で所定の時間にわたって光が照射された場合に相当する光量が試料に照射されたこととなるので、試料の損傷を防止しながら、所定の強度で所定の時間にわたって光が照射された場合に相当する試料の光透過率を取得することが可能となる。
【0010】
また、本発明の耐光性試験装置では、光源は、レーザ光を発するレーザ光源であることが好ましい。この場合には、好適に耐光性試験を実施することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、耐光性試験に要する試験時間の短縮を図りながら、試料の損傷を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態に係る耐光性試験装置及び耐構成試験装置の試料ホルダの模式図である。
【図2】耐光性試験装置の機能ブロック構成図である。
【図3】試料に照射光を照射した時間に対する光透過率の変化を示す図である。
【図4】耐光性試験方法の工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る耐光性試験装置の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0014】
図1(a)は、本実施形態に係る耐光性試験装置の模式図であり、図1(b)は、耐光性試験装置の試料ホルダの上面模式図である。図2は、耐光性試験装置の機能ブロック構成図である。
【0015】
図1(a)及び図2に示すように、耐光性試験装置1は、試料20の耐光性試験を行うための装置であり、光ファイバ10、コリメータレンズ11、試料ホルダ12、減衰フィルタ13、受光素子(受光手段)14、増幅回路15、制御部(制御手段)16、レーザドライバ17及びレーザ(投光手段)18を備えている。試料20は、例えばLED封止用部品やコーティング加工されたレンズのコート部分やプリズムといったものであり、それらの材料は、例えば樹脂やガラス等の光学部品である。
【0016】
光ファイバ10は、レーザ18で発せられたレーザ光をコリメータレンズ11に伝搬させるためのものである。
【0017】
コリメータレンズ11は光ファイバ10から入射されたレーザ光を平行光として出射するレンズである。コリメータレンズ11より発せられたレーザ光Lは、試料20に一様に照射される。
【0018】
試料ホルダ12は、試料20を耐光性試験装置1に設置するためのものである。図1(b)に示すように、試料ホルダ12は、上面から下面に達する孔から成る試料設置部12aを有している。試料20は、試料設置部12aの孔を塞ぐように試料ホルダ12の上面上に設置される。また、試料ホルダ12は、例えばガラスから成り、試料ホルダ12の上面には、レーザ光Lの透過を防止するためにクロムコートが施されている。
【0019】
減衰フィルタ13は、試料20を透過した透過光の光量を受光素子14で測定可能とするために、透過光の強度を適切な強度範囲まで減衰させるためのものである。
【0020】
受光素子14は、試料20を透過した透過光を減衰フィルタ13を介して受光し、透過光の光量に応じた電流を発生する素子である。ここで発生した電流は、増幅回路15に入力される。受光素子14は、例えばパワーメータにより構成される。なお、減衰フィルタ13及び受光素子14の各々には、試料ホルダ12上に設置された試料20ごとに対応する領域に分割されるように、遮光板が設けられている。これにより、試料20ごとの透過光の測定が可能となる。
【0021】
増幅回路15は、受光素子14より入力された電流を増幅し、透過光の光量に関する情報として制御部16に出力するために回路である。なお、受光素子14がパワーメータにより構成される場合には、増幅回路15は不要である。
【0022】
制御部16は、増幅回路15から透過光の光量に関する情報を取得し、試料20に照射した照射光の光量と透過光の光量とに基づいて試料20の光透過率を算出すると共に、試料20に対して出射するレーザ光の強度に関する情報をレーザドライバ17に送出することによりレーザ18を制御する部分である。レーザ18の制御の詳細については後述する。制御部16は、例えばコンピュータにより構成される。また、制御部16は、アナログ回路により構成されることとしても良い。
【0023】
なお照射光の光量に関する情報は、例えば、試料20を試料ホルダ12に設置していない状態において、レーザ光Lを受光素子14に照射させることにより予め測定することができる。ここで取得した照射光の光量に関する情報は、制御部16に送出される。
【0024】
レーザドライバ17は、制御部16よりレーザ光の強度に関する情報を取得し、取得した強度に関する情報に応じてレーザ18を駆動する。
【0025】
レーザ18は、レーザ光を発生する光源であり、その強度は、レーザドライバ17により駆動制御される。レーザ18で発生したレーザ光は、光ファイバ10、コリメータレンズ11を介して、試料20に出射される。
【0026】
続いて、図3及び図4を用いて、本実施形態の耐光性試験方法における工程及び照射光の強度の制御について説明する。図3は、試料20に照射光を照射した時間に対する光透過率の変化を示す図である。図4は、耐光性試験装置1により実施される耐光性試験方法の工程を示すフローチャートである。耐光性試験では、所定の強度で所定の時間にわたって光が照射された場合に相当する試料20の光透過率が取得され、光透過率の劣化状態により試料20の耐光性が評価される。ここで照射される光の「所定の強度」は、例えば試料20の通常の使用状態において照射される光の強度であり、以降の説明において「第1の強度」とする。
【0027】
まず、制御部16による制御に基づき、第1の強度のn(nは1より大きい実数)倍の強度のレーザ光Lを試料20に照射する(S1)。以降の説明において、第1の強度のn倍の強度を「第2の強度」とする。第1の強度よりも強い強度のレーザ光Lを照射することにより、試料20には通常の使用状態よりも強い負荷がかけられることとなる(加速試験)。したがって、耐光性試験に要する試験期間を短縮することが可能となる。そして、第2の強度のレーザ光Lを照射した状態で、予め定めた所定時間相当の時間が経過したか否かを判定する(S2)。ここでは、第1の強度のn倍の第2の強度のレーザ光を照射しているので、所定時間相当の時間は、所定時間の1/nの時間となる。例えば、所定時間が1000時間であり、第2の強度が第1の強度の10倍である場合には、所定時間相当の時間は100時間(1000時間×(1/10))となる。ステップS2において所定時間相当の時間が経過したと判定された場合には、耐光性試験の工程は終了し、所定時間相当の時間が経過していないと判定された場合には、工程はステップS3に進められる。
【0028】
続いて、第2の強度のレーザ光Lが試料20に照射され続けている状態で光透過率Tを測定し(S3)、測定された光透過率Tが所定の閾値Tth以下であるか否かを判定する(S4)。光透過率Tの測定は、試料20に照射された光量と透過光の光量とに基づいて、制御部16が算出することにより行われる。ここで、光透過率Tに関する所定の閾値Tthは、例えば95%と設定することができる。そして、光透過率Tが所定の閾値Tth以下になるまで、第2の強度のレーザ光Lが試料20に照射され続けている状態で、ステップS2〜S4の工程が繰り返される。ステップS2〜S4の工程の繰り返しは、図3における時間Rに相当する。
【0029】
光透過率Tが所定の閾値Tth以下になった場合には、制御部16は、第1の強度でレーザ光Lが試料20に照射されるようにレーザドライバ17及びレーザ18を制御する(S5)。これにより、試料20が照射されたレーザ光のエネルギを吸収することにより試料20に溶融等の損傷が生じることを防止することが可能となる。
【0030】
さらに、予め定めた所定時間相当の時間が経過するまで、第1の強度のレーザ光Lを試料20に照射し続け、所定時間相当の時間が経過した場合には、耐光性試験の工程は終了する(S6)。即ち、所定時間の1/n倍の時間を経過する前に(S2)、試料20の光透過率Tが所定の閾値Tth以下になった場合には(S4)、試料20の光透過率Tが所定の閾値Tth以下になるまでに要した時間のn倍の時間を所定時間から減じた時間だけ、第1の強度でレーザ光Lが試料20に照射される。
【0031】
例えば、所定時間が1000時間であり、第2の強度が第1の強度の10倍である場合において、100時間(1000時間×(1/10))を経過する前である90時間経過時に試料20の光透過率Tが所定の閾値Tth以下になった場合には、100時間(1000時間−(90時間×10))だけ、第1の強度でレーザ光Lが試料20に照射される(S5〜S6)。従って、この場合には、ステップS6において100時間が経過すると、所定時間相当の時間が経過したこととなる。ステップS6において経過する時間は、図3における時間Rに相当する。この場合における試験時間の合計は190時間(90時間(R)+100時間(R))となり、この時点で取得される試料20の光透過率は、第1の強度で所定の時間(1000時間)にわたって光が照射された場合の光透過率に相当する。以上説明した耐光性試験方法では、試料20の損傷を防止すると共に、810時間(1000時間−190時間)の試験時間の短縮が可能となる。
【0032】
以上説明したように、本実施形態の耐光性試験装置1及び耐光性試験方法によれば、第1の強度(所定の強度)より強い第2の強度のレーザ光Lにより試験が行われるので、試験時間を短縮することが可能となると共に、試料20の光透過率Tが劣化し所定の閾値Tth以下になった場合には、レーザ光Lの強度が第1の強度に制御されるので、レーザ光Lのエネルギを吸収することにより試料に溶融等の損傷が生じることを防止することが可能となる。
【0033】
なお、本実施形態では、光源としてレーザを用いているが、例えばLED、メタルハライドランプを用いても良い。
【符号の説明】
【0034】
1…耐光性試験装置、10…光ファイバ、11…コリメータレンズ、12…試料ホルダ、12…試料ホルダ、13…減衰フィルタ、14…受光素子(受光手段)、15…増幅回路、16…制御部(制御手段)、17…レーザドライバ、18…レーザ(投光手段)、20…試料。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料の耐光性試験として、所定の強度で所定の時間にわたって光が照射された場合に相当する前記試料の光透過率を評価するための耐光性試験装置であって、
前記試料に対して前記光を出射する投光手段と、
前記試料を透過した前記光を受光する受光手段と、
前記投光手段から出射された前記光の光量と前記受光手段により受光された前記光の光量とに基づいて前記試料の光透過率を算出すると共に、前記光源を制御する制御手段と
を備え、
前記制御手段は、
前記試料の光透過率が所定の閾値より高い場合には、前記所定の強度より高い強度で前記光が前記試料に照射されるように前記光源を制御し、
前記試料の光透過率が前記所定の閾値以下になった場合には、前記所定の強度で前記光が前記試料に照射されるように前記光源を制御する
ことを特徴とする耐光性試験装置。
【請求項2】
前記制御手段は、
前記試料の光透過率が所定の閾値より高い場合には、前記所定の強度のn(nは1より大きい実数)倍の強度で前記光が前記試料に照射されるように前記光源を制御し、
前記所定の時間の1/n倍の時間を経過する前に前記試料の光透過率が前記所定の閾値以下になった場合には、前記試料の光透過率が前記所定の閾値以下になるまでに要した時間のn倍の時間を前記所定の時間から減じた時間だけ、前記所定の強度で前記光が前記試料に照射されるように前記光源を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の耐光性試験装置。
【請求項3】
前記投光手段は、レーザ光を発するレーザ光源であることを特徴とする請求項1または2に記載の耐光性試験装置。
【請求項4】
試料の耐光性試験として、所定の強度で所定の時間にわたって光が照射された場合に相当する前記試料の光透過率を評価する耐光性試験方法であって、
前記所定の強度より高い強度で前記光を前記試料に照射し、前記試料に照射した前記光の光量と前記試料を透過した前記光の光量とに基づいて前記試料の光透過率を算出する光透過率算出工程と、
前記試料の光透過率が所定の閾値以下になった場合に、前記所定の強度で前記光が前記試料に照射されるように前記光源を制御する照射光制御工程と
を含むことを特徴とする耐光性試験方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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