説明

耐切創性紡績糸及びそれを含む布帛

【課題】耐切創性に優れ且つ柔軟で着用性に優れる耐切創性紡績糸及びそれを含む布帛を提供する。
【解決手段】高強力有機繊維の短繊維と高収縮短繊維とを含む紡績糸であり、該高収縮短繊維の温水70℃、10分間における湿熱収縮率が40%以上であり、該高収縮短繊維の混綿率が該紡績糸全重量に対して5〜50重量%であることを特徴とする耐切創性紡績糸とする。また、上記耐切創性紡績糸を含む布帛とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐切創性紡績糸及びそれを含む布帛に関するものであり、さらに詳細には、収縮率の異なる短繊維からなる耐切創性だけでなく柔軟で着用性も良好な耐切創性紡績糸及びそれを含む布帛に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、手袋および作業衣、および自転車競技選手、オートレース選手、モーターボート選手などの競技用衣服、または作業用の軍手に要求される性能として、耐切創性、耐摩耗性が必要である。
【0003】
従来の技術としては、特開2000−178812号公報には、高強度・高弾性率繊維とステンレス繊維やチタンなどの金属細線からなる複合糸を混入したり、特開2004−360168号公報には芯糸にガラスフィラメントからなるマルチフィラメントからなるマルチフィラメントを用いている。特開2004−060112号公報には、耐切創性の優れたアラミド繊維を製編織物したもので、製品の全体または一部に使用して構成された防護具が使用されてきた。
【0004】
またアラミド繊維の場合には少量の使用では耐切創性効果が少ないため、目付を大きくして使用したり、特開平09−157981号公報には単糸繊度の大きい原糸や原綿を使用したり、更に基布または製品に樹脂加工して耐切創性を向上するなどの手段がとられていた。
しかしこれらの従来品は金属線やガラス繊維が切断されて手にささったり、繊維の目付けの大きいものや樹脂加工を施したもの等は製品が硬くなり、使用者の着用感が悪い上に、かかる特殊繊維では製編織しにくいという欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−178812号公報
【特許文献2】特開2004−360168号公報
【特許文献3】特開2004−060112号公報
【特許文献4】特開平09−157981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる従来技術の問題点を解消し、耐切創性に優れ且つ柔軟で着用性に優れる耐切創性紡績糸及びそれを含む布帛を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、下記結論に達したものである。
【0008】
すなわち、本発明によれば、高強力有機繊維の短繊維と高収縮短繊維とを含む紡績糸であり、該高収縮短繊維の温水70℃、10分間における湿熱収縮率が40%以上であり、該高収縮短繊維の混綿率が該紡績糸全重量に対して5〜50重量%であることを特徴とする耐切創性紡績糸が提供される。また、上記耐切創性紡績糸において、
好ましくは、上記紡績糸が、以下の式を満たしており、
0.149x−0.8458≦y≦0.149x+1.1542
(ここで、y:紡績糸の沸水収縮率(%)、x:高収縮短繊維の紡績糸全重量に対する混綿率(重量%))
好ましくは、上記高強力有機繊維が、全芳香族ポリアミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維、高強力ポリエステル繊維、高分子量および/または高強度ポリエチレン繊維、ポリアミドイミド繊維、ポリイミド繊維、ポリパラフェニレンスルフィド繊維、ポリオルトフェニレンスルフィド繊維、ポリベンズオキサゾール繊維およびポリベンズイミダゾール繊維からなる群から選ばれる少なくとも1種の繊維を含み、
好ましくは、上記高収縮短繊維が高収縮ポリエステル短繊維であり、
好ましくは、上記紡績糸の沸水収縮率と耐切創性保持率が以下の式を満たし、耐切創性保持率が85%以上である。
−1.193y+91.7≦z≦−1.193y+111.7
ここで、z:耐切創性保持率(%)、y:紡績糸の沸水収縮率(%)、
耐切創性保持率(%)=耐切創性紡績糸の耐切創性(N)/高強力繊維の短繊維のみからなる紡績糸の耐切創性(N)×100
さらに別の態様としては、上記耐切創性紡績糸を含む布帛である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の耐切創性紡績糸は、高強力有機繊維の短繊維と高収縮短繊維を含むことにより、高強力有機繊維が外層部に配され、しかもバルキー性に優れた構造となり、高強力有機繊維のみの紡績糸と同等あるいはそれ以上の耐切創性を有し、且つ柔軟性にも優れている。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の耐切創性紡績糸(以下、単に紡績糸と称することがある)は、高強力有機繊維の短繊維と高収縮短繊維を含む紡績糸である。
本発明で使用する高強力有機繊維は、紡績糸やそれを含む布帛として高い耐切創性を得るため、強度が5cN/dtex以上が好ましく、8cN/dtex以上がより好ましく、10cN/dtex以上がさらに好ましい。
【0011】
上記高強力有機繊維としては、具体的には、パラ系アラミド繊維、メタ系アラミド繊維等の全芳香族ポリアミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維、高強力PET繊維、PEN繊維等の高強力ポリエステル繊維、高分子量および/または高強度ポリエチレン(PE)繊維、ポリアミドイミド(PAI)繊維、ポリイミド(PI)繊維、ポリパラフェニレンスルフィド(PPS)繊維、ポリオルトフェニレンスルフィド(OPF)繊維、ポリベンズオキサゾール(PBO)繊維およびポリベンズイミダゾール(PBI)繊維、からなる群から選ばれる少なくとも1種以上を好ましく例示することができる。中でも、主鎖中に芳香族環を有するポリアミドからなる全芳香族ポリアミド繊維、特にパラ系アラミド繊維が好ましく、さらにポリ−p−フェニレンテレフタルアミド(PPTA)、共重合タイプのコポリパラフェニレン−3,4’オキシジフェニレンテレフタルアミド(PPODPA)が好ましく挙げられる。
【0012】
また、紡績糸等に耐切創性とともに難燃性も付与する場合は、高強力有機繊維として、または、高強力有機繊維と混合して、前記の全芳香族ポリアミド繊維、ポリフェニレンスルフィド(PPS)繊維、ポリイミド(PI)繊維、ポリベンズイミダゾール(PBI)繊維、ポリベンズオキサゾール(PBO)繊維、ポリアミドイミド(PAI)繊維、ポリエーテルイミド(PEI)繊維などや、難燃アクリル繊維、ポリクラール繊維、難燃ポリエステル繊維、難燃綿繊維、難燃レーヨン繊維、難燃ビニロン繊維、難燃ウール繊維、パイロメックス等の耐炎化繊維、炭素繊維などを用いてもよい。
【0013】
上記の高強力有機繊維には、本発明の目的を損なわない範囲内で安定剤、酸化防止剤、難燃剤、帯電防止剤、蛍光増白剤、触媒、また酸化チタン等無機粒子などが添加されていてもよい。
【0014】
また本発明で使用する高強力有機繊維は短繊維であり、紡績糸工程を通過するのであれば繊度、カット長さ、あるいは捲縮を施す場合は捲縮数など限定されるものではないが、例えば、繊度は0.5〜10dtex、カット長は20〜100mm、さらに繊度は1〜5dtex、カット長は30〜70mmを好ましく例示することができる。なお、該短繊維は公知の方法で製造することができる。
【0015】
一方、本発明で使用する高収縮短繊維は、温水70℃、10分間における湿熱収縮率が40%以上といった高収縮性を有している必要があり、該湿熱収縮率が40%未満では、紡績糸やこれを含む布帛において十分な耐切創性や柔軟性が得られず好ましくない。上記湿熱収縮率は好ましくは45%以上であり、より好ましくは50%以上であり、あまり高すぎても取り扱い性が低下し収縮処理をした後の布帛が硬くなる傾向にあるため100%以下が好ましく、80%以下がより好ましく、70%以下がさらに好ましい。
【0016】
上記高収縮短繊維としては高収縮ポリエステル短繊維を好ましく挙げることができ、具体的には高収縮特性を有する、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリエチレンナフタレート繊維、全芳香族ポリエステル繊維等の高収縮ポリエステル繊維の短繊維が好ましく挙げられる。特に全芳香族ポリエステル繊維は耐切創性を高く維持する上で好ましい。
【0017】
上記高収縮ポリエステル繊維としては、ポリエステル未延伸繊維を、温水高倍率延伸及び/又は延伸熱セットを非熱化するなどして、高配向低結晶化したポリエステル繊維を例示することができる。
【0018】
また、高収縮ポリエステル繊維の他の例としては、ポリエステルの酸成分としてテレフタル酸以外の酸成分やエチレングリコール以外のジオール成分を共重合した変性ポリエステルポリマーからなるポリエステル繊維を好ましく例示することができる。該変性ポリエステルポリマーとして、ガラス転移温度(Tg)が65℃以下で、エチレンテレフタレート単位を主体の骨格とし、これに例えばイソフタル酸等の芳香族酸成分やアジピン酸等の脂肪族酸成分が共重合されていることが好ましい。
【0019】
上記高収縮短繊維には、本発明の目的を損なわない範囲内で安定剤、酸化防止剤、難燃剤、帯電防止剤、蛍光増白剤、触媒、また酸化チタン等無機粒子などが添加されていてもよい。
また、上記高収縮短繊維の強度は、前記の高強力有機繊維のように高い必要は無いが、これと同様に高強力の短繊維を用いてもかまわない。
【0020】
さらに、本発明で使用する高収縮短繊維は、高強力有機繊維の短繊維と同様、紡績糸工程を通過するのであれば繊度、カット長さ、あるいは捲縮を施す場合は捲縮数など限定されるものではないが、例えば、繊度は0.5〜10dtex、カット長は20〜100mm、さらに繊度は1〜5dtex、カット長は30〜70mmを好ましく例示することができる。なお、高収縮短繊維と高強力有機繊維の短繊維とは、繊度やカット長がそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。また、該短繊維は公知の方法で製造することができる。
【0021】
本発明において、上記高収縮短繊維の混綿率は紡績糸全重量に対して5〜50重量%である。高収縮短繊維の混綿率が5重量%未満の場合は柔軟性が得られず、一方、50重量%を超える場合は耐切創性が低下し好ましくない。上記の高収縮短繊維の混綿率は好ましくは10〜40重量%、より好ましくは15〜35重量%である。
【0022】
高収縮短繊維を上記混綿率で含有することにより、紡績糸及びそれを含む布帛の耐切創性が高くなり且つ柔軟性が向上する理由については明確ではないが、以下のことが推定される。すなわち、本発明の紡績糸を製編織などして布帛とした後、通常布帛に施される精錬、染色、熱セットなどにおける、温水または沸水による湿熱処理やヒーター等による乾熱処理によって、高収縮短繊維が高強力有機繊維の短繊維対比大きく収縮し、紡績糸の外層部には高強力有機繊維の短繊維が多く存在し、内層部には高収縮短繊維が多く存在する構造となり、かつ紡績糸が膨らみバルキー性に優れた紡績糸となり柔軟性が向上するが、外層部に多く存在する高強力有機繊維によって十分な耐切創性をも維持することが可能となり、柔軟性と耐切創性という相反する特性を両立することができると考えられる。
上記観点から高強力有機繊維の温水70℃、10分間における湿熱収縮率は40%未満であり、10%以下が好ましく、5%以下がより好ましく、3%以下がさらに好ましい。
【0023】
本発明の紡績糸は、上記の両方の短繊維を用い、公知の紡績糸工程により製造することができ、例えば、高強力有機繊維の短繊維と高収縮短繊維とを、混綿し、カード、クロスラッパーを経由する公知の方法により紡績糸とする。
【0024】
本発明のおいては、紡績糸の沸水収縮率yが、以下の範囲を満足することが好ましい。
0.149x−0.8458≦y≦0.149x+1.1542
ここで、yは紡績糸の沸水収縮率(%)、xは高収縮繊維の紡績糸全重量に対する混綿率(重量%)であり、5〜50重量%である。
【0025】
紡績糸の沸水収縮率は、高収縮短繊維の混綿率が同一でも繊度、カット長等や紡績工程の条件により変化しやすく上記の範囲を満足するとき紡績糸及びそれを含む布帛は、耐切創性が高収縮短繊維を含まない場合と同等の性能を示し、柔軟性も良好である。一方、上記範囲を外れる場合は耐切創性と柔軟性を満足することができない傾向にある。
【0026】
また、本発明においては、紡績糸の沸水収縮率y(%)と耐切創性保持率z(%)は以下の式の関係にあり、紡績糸の沸水収縮率y(%)が上記の範囲にあれば耐切創性保持率を85%以上とすることができる。
−1.193y+91.7≦z≦−1.193y+111.7
ここで、yは紡績糸の沸水収縮率(%)、zは耐切創性保持率(%)であり、以下の式で求めた値である。
耐切創性保持率(%)=耐切創性紡績糸の耐切創性(N)/高強力繊維の短繊維のみからなる紡績糸の耐切創性(N)×100
【0027】
上記の範囲を満足するとき紡績糸及びそれを含む布帛は、高収縮短繊維を含まない、すなわち高強力有機繊維の短繊維のみからなる紡績糸と同等かそれ以上の耐切創性を示し、なおかつ柔軟性も良好である。本発明においては、耐切創性保持率zが100%を超える場合もあり、その理由については明らかではないが、前述のように紡績糸のバルキー性が向上するためと考えられる。上記布帛に含まれる紡績糸の含有量は、布帛の全重量を基準として30重量%以上が好ましく、50重量%以上がより好ましく、70重量%以上がさらに好ましい。
【0028】
布帛の形態としては、織物、編物、不織布などが挙げられ、より本発明の効果が得られる上で織物または編物が好ましい。織物または編物は、一般に施される、精錬や染色工程、熱セット等での温水または沸水処理、乾熱処理等によって、高収縮短繊維が収縮し上記のように紡績糸及びそれを含む布帛はバルキー性が増し、高い耐切創性を保持したまま柔軟性を著しく向上させることができる。
【実施例】
【0029】
以下、実施例を挙げて、本発明の構成および効果を詳細に説明する。なお、実施例に用いた評価項目の測定は、下記の方法で行った。
(1)短繊維の湿熱収縮率(%)
JIS L1015に準拠し、70℃温水中に10分間浸漬処理した際の収縮率を求めた。
(2)紡績糸の沸水収縮率(%)
JIS L1095に準拠し、熱水寸法変化率を求めた。
(3)紡績糸の耐切創性、耐切創性保持率
IS013997に基づき、TDM−100の装置を用い、45度方向に耐切創性紡績糸からなる布帛サンプルをセット後、試験を行い、切創ストローク長が20mmの時の荷重(N)を読み取り、これを該耐切創性紡績糸の耐切創性(N)とした。
耐切創性保持率は、後述する比較例1の、高強力有機繊維の短繊維である帝人アラミド株式会社製Twaron1072のみを用いた紡績糸の耐切創性を基準として以下の式より求めた。
耐切創性保持率(%)=耐切創性紡績糸の耐切創性(N)/高強力繊維の短繊維のみからなる紡績糸(比較例1)の耐切創性(N)×100
【0030】
[実施例1]
帝人ファイバー株式会社製高収縮ポリエステル原綿RA08 SD2.1T51(繊度2.1dtex、繊維長51mm、強度3.4cN/dtex、伸度75%、70℃湿熱収縮率55%)を20重量%と、帝人アラミド株式会社製Twaron1072 1.7T51(繊度1.7dtex、繊維長51mm、強度15.7cN/dtex、伸度4%、70℃湿熱収縮率0%)を80重量%混綿し、綿番手36/1の耐切創性紡績糸を得た。この耐切創性紡績糸の沸水収縮率は、2.5%であった。
これを双撚(S9T/inch)し、丸編した後沸騰水に20分浸漬した。得られた編物は目付が649g/m、厚みが2.55mm、密度が0.255g/cmであった。また、該編物を用いて測定した耐切創性紡績糸の耐切創性(IS013997)が11.6N、耐切創性保持率が100%であり、柔軟性に極めて優れていた。
【0031】
[実施例2]
高収縮ポリエステル原綿RA08の混綿率20重量%、Twaron1072の混綿率80重量%を、それぞれ、高収縮ポリエステル原綿RA08の混綿率30重量%、Twaron1072の混綿率70重量%に変更した以外は実施例1と同様にして綿番手36/1の耐切創性紡績糸を得た。得られた耐切創性紡績糸の沸水収縮率は5.0%であった。
上記耐切創性紡績糸を用いて実施例1と同様にして編物を得た。得られた編物は、目付が651g/m、厚みが2.53mm、密度が0.257g/cmであった。また、該編物を用いて測定した耐切創性紡績糸の耐切創性(IS013997)が11.0N、耐切創性保持率が95%であり、柔軟性は実施例1よりさらに優れていた。
【0032】
[比較例1]
Twaron1072のみを用いた以外は実施例1と同様にして綿番手36/1の紡績糸を得た。得られた紡績糸の沸水収縮率は0%であった。
上記紡績糸を用いて実施例1と同様にして編物を得た。得られた編物は、目付が645g/m、厚みが2.49mm、密度が0.251g/cmであった。また、該編物を用いて測定した耐切創性紡績糸の耐切創性(IS013997)が11.0Nであり、柔軟性が極めて悪いものであった。
【0033】
[比較例2]
高収縮ポリエステル原綿RA08のみ用いた以外は実施例1と同様にして綿番手36/1の紡績糸を得た。得られた紡績糸の沸水収縮率は50%であった。
上記紡績糸を用いて実施例1と同様にして編物を得た。該編物を用いて測定した耐切創性紡績糸の耐切創性(IS013997)が8N、耐切創性保持率が73%であり、編物は収縮が大きく柔軟性が極めて悪いものであった。
【0034】
[比較例3]
高収縮ポリエステル原綿RA08の混綿率20重量%、Twaron1072の混綿率80重量%を、それぞれ、高収縮ポリエステル原綿RA08の混綿率55重量%、Twaron1072の混綿率45重量%に変更した以外は実施例1と同様にして綿番手36/1の耐切創性紡績糸を得た。得られた耐切創性紡績糸の沸水収縮率は4.0%であった。
上記耐切創性紡績糸を用いて実施例1と同様にして編物を得た。得られた編物の柔軟性は良好であったが、該編物を用いて測定した耐切創性紡績糸の耐切創性(IS013997)が9.5N、耐切創性保持率が92%であった。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の耐切創性紡績糸およびこれを含む布帛は、柔軟性が良好でありかつ耐切創性に優れており、作業用手袋および作業衣、および自転車競技選手、オートレース選手、モーターボート選手などの競技用衣服として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高強力有機繊維の短繊維と高収縮短繊維とを含む紡績糸であり、該高収縮短繊維の温水70℃、10分間における湿熱収縮率が40%以上であり、該高収縮短繊維の混綿率が該紡績糸全重量に対して5〜50重量%であることを特徴とする耐切創性紡績糸。
【請求項2】
紡績糸が、以下の式を満たす請求項1記載の耐切創性紡績糸。
0.149x−0.8458≦y≦0.149x+1.1542
ここで、y:紡績糸の沸水収縮率(%)、x:高収縮短繊維の紡績糸全重量に対する混綿率(重量%)
【請求項3】
高強力有機繊維が、全芳香族ポリアミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維、高強力ポリエステル繊維、高分子量および/または高強度ポリエチレン繊維、ポリアミドイミド繊維、ポリイミド繊維、ポリパラフェニレンスルフィド繊維、ポリオルトフェニレンスルフィド繊維、ポリベンズオキサゾール繊維およびポリベンズイミダゾール繊維からなる群から選ばれる少なくとも1種の繊維を含む請求項1または2に記載の耐切創性紡績糸。
【請求項4】
高収縮短繊維が高収縮ポリエステル短繊維である請求項1〜3のいずれかに記載の耐切創性紡績糸。
【請求項5】
紡績糸の沸水収縮率と耐切創性保持率が以下の式を満たし、耐切創性保持率が85%以上である請求項1〜4のいずれかに記載の耐切創性紡績糸。
−1.193y+91.7≦z≦−1.193y+111.7
ここで、z:耐切創性保持率(%)、y:紡績糸の沸水収縮率(%)、
耐切創性保持率(%)=耐切創性紡績糸の耐切創性(N)/高強力繊維の短繊維のみからなる紡績糸の耐切創性(N)×100
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の耐切創性紡績糸を含む布帛。

【公開番号】特開2012−202001(P2012−202001A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−67820(P2011−67820)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(303013268)帝人テクノプロダクツ株式会社 (504)
【Fターム(参考)】