説明

耐力壁用パネル

【課題】軽量化および低コスト化が図れるとともに、面材の変形性能を確保しつつせん断耐力を有効に活用してエネルギー吸収性能を向上させることができる耐力壁用パネルを提供すること。
【解決手段】内装パネル4によって折板3の全体座屈を防止することにより、折板3の降伏せん断耐力までの変形性能および降伏後の変形性能を確保でき、エネルギー吸収能力に優れた耐力壁を構成することができる。さらに、折板3に生じる面内方向のせん断変形が内装パネル4に伝達しないまたは伝達されにくくできるので、内装パネル4の破損を防止することができ、地震後の内装パネル4等の補修が不要にできたり簡易化できたりするので、補修費用等の負担を軽減させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐力壁用パネルに関し、詳しくは、薄板軽量形鋼などからなる一対の枠材と、これら一対の枠材に渡って設けられる折板などの第1面材と、この第1面材に沿って設けられる第2面材とを備えた耐力壁用パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、耐力壁用パネルとして、枠組みの片面または両面に面材を固定した複層構造のパネルが提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
特許文献1に記載のパネルでは、枠組みの内部に細かいピッチで配置した複数の補強材(リブ)によって金属平板を細分化することで、せん断力が作用した際の金属平板のせん断座屈が防止できるように構成されている。
また、特許文献2、3に記載のパネルでは、薄鋼板の片面または両面に合板や石膏ボードが接着されて面材が構成されることで、薄鋼板と合板(または石膏ボード)とが一体的にせん断抵抗力を発揮し、パネルのせん断耐力向上が図られるようになっている。
【0003】
また、耐力壁用パネルとして、枠組みに面材としての折板を接合したパネルも利用されている(例えば、特許文献4参照)。
特許文献4に記載されたパネルでは、地震等の水平力が作用した際に、せん断力を負担した折板の谷部がせん断降伏する耐力と、枠組みに折板を固着するねじ周辺の支圧変形による耐力とを適宜に設定することで、折板のせん断座屈や枠組みの変形等による急激な耐力低下を防止することができ、パネルの変形性能が向上できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−8364号公報
【特許文献2】特開平9−279762号公報
【特許文献3】特開2002−161596号公報
【特許文献4】特開2009−209582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1〜4に記載の従来のパネルでは、それぞれ以下のような課題が存在する。
すなわち、特許文献1に記載のパネルでは、金属平板のせん断座屈を防止するために補強材のピッチを細かくする必要があり、補強材の部材数量が増加することから、パネルの重量や製造コストが増加するという問題がある。
また、特許文献2、3に記載のパネルでは、薄鋼板と合板や石膏ボードとが接着されているため、パネル全体のせん断耐力は向上できるものの、合板や石膏ボードがせん断力を負担することから、大きな変形領域で合板や石膏ボードが破損してしまい、破損した場合には補修の手間と費用が掛かってしまうという不都合がある。
一方、特許文献4に記載のパネルでは、ねじ周辺の折板を支圧変形させることでパネルのせん断耐力をコントロールしていることから、変形性能が高まるもののせん断耐力自体は増加せず、折板が保有する降伏せん断耐力を全て有効に活用することができない。
【0006】
本発明の目的は、軽量化および低コスト化が図れるとともに、面材の変形性能を確保しつつせん断耐力を有効に活用してエネルギー吸収性能を向上させることができる耐力壁用パネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の耐力壁用パネルは、互いに対向する少なくとも一対の枠材と、これら一対の枠材に渡って設けられる第1面材と、この第1面材の少なくとも一方の面に沿って設けられる第2面材とを備えた耐力壁用パネルであって、前記第1面材は、前記一対の枠材の長手方向に沿って第1固定手段によって固定されるとともに、当該第1面材の面内方向に作用する所定のせん断力でせん断降伏するように設定された鋼製面材で構成され、前記第2面材は、前記第1面材のせん断変形を許容しかつ当該第1面材の面外変形を規制可能な第2固定手段を介して前記枠材および第1面材の少なくとも一方に取り付けられていることを特徴とする。
【0008】
以上の本発明によれば、鋼製面材で構成される第1面材がせん断降伏することで、その降伏せん断耐力までフルに活用するとともに、この第1面材の面外変形を第2面材で規制することで、せん断降伏した第1面材の面外座屈を防止することができ、座屈による急激な耐力低下を引き起こすことなく降伏後も第1面材の変形性能を確保することができる。従って、従来のように補強材を細かいピッチで設けなくても第1面材の面外座屈を防止することができるので、パネルの軽量化や低コスト化を図りつつ、所定のせん断耐力を有しかつ変形性能に優れたパネルを構成することができ、パネルのエネルギー吸収性能を向上させることができる。さらに、第2面材を取り付けるための第2固定手段は、第1面材のせん断変形を許容するように構成されていることから、第1面材がせん断変形しても第2面材はせん断変形しない、つまり第2面材にせん断力が作用しない(あるいは小さなせん断力しか作用しない)ようにでき、第2面材の破損を防止することができる。従って、パネルに地震力等が作用して第1面材のせん断変形によってエネルギーを吸収した後においても、第2面材は初期の状態を維持することができ、その補修が不要にできることから補修費用等の負担を軽減させることができる。
【0009】
この際、本発明の耐力壁用パネルでは、前記第1面材は、前記一対の枠材間に渡る方向に延びる山部と谷部とを有した折板から構成されるとともに、前記谷部を前記枠材に当接させて固定され、前記第1固定手段は、前記折板の谷部と前記枠材との一方を貫通して他方に固着する第1固着部材を有して構成されていることが好ましい。
このような構成によれば、第1面材を折板で構成し、その谷部を第1固着部材で枠材に固定することで、折板の谷部がせん断降伏した際の応力を枠材に確実に伝達することができ、パネルのせん断耐力を確実に発揮させることができる。
【0010】
そして、本発明の耐力壁用パネルでは、前記第2面材は、前記枠材の反対側から前記折板の山部に当接して設けられ、前記第2固定手段は、前記第2面材と前記折板の山部または谷部とを貫通して前記枠材に固着する第2固着部材を有して構成されていることが好ましい。
このような構成によれば、前述のように折板の谷部をせん断降伏させるメカニズムにおいて、折板の山部に当接して第2面材を設けることで、せん断降伏した谷部の変形が第2面材に伝達されにくくでき、第2面材の破損をさらに確実に防止することができる。
【0011】
さらに、本発明の耐力壁用パネルでは、前記折板の山部または谷部には、前記第2固着部材の軸径よりも大きな孔径の挿通孔が形成され、この挿通孔に前記第2固着部材が挿通されていることが好ましい。
このような構成によれば、第2固着部材が貫通する折板の山部や谷部に大きな孔径の挿通孔を形成しておき、この挿通孔に第2固着部材の軸部を挿通させることで、パネルの面内方向に関して第2固着部材と折板とが干渉することを防止でき、この面内方向における第1面材から第2面材へのせん断力の伝達を確実に遮断することができる。
【0012】
一方、本発明の耐力壁用パネルでは、前記第2面材は、前記第1面材の一方および他方の面に沿う一対で設けられ、前記第2固定手段は、前記一対の第2面材および前記第1面材を貫通する第2固着部材と、この第2固着部材とともに前記一対の第2面材を接近方向に締め付ける締付部材とを有して構成され、前記第1面材または第2面材には、前記第2固着部材の軸径よりも大きな孔径の挿通孔が形成され、この挿通孔に前記第2固着部材が挿通されていてもよい。
このような構成によれば、一対の第2面材で挟み込むことで第1面材の面外座屈を防止することができる。この場合でも、第1面材または第2面材に形成した孔径の大きな挿通孔に第2固着部材を挿通させることで、第1面材から第2面材へのせん断力の伝達を確実に遮断することができる。
【0013】
この際、本発明の耐力壁用パネルでは、前記第1面材は、前記一対の枠材間に渡る方向に延びる山部と谷部とを有した折板から構成されるとともに、前記谷部を前記枠材に当接させて固定され、前記第1固定手段は、前記折板の谷部と前記枠材との一方を貫通して他方に固着する第1固着部材を有して構成され、前記第2固定手段の第2固着部材は、前記折板の山部を貫通して設けられていることが好ましい。
このような構成によれば、一対の第2面材で挟み込んで第1面材の面外座屈を防止する構造においても、第1面材を折板で構成して谷部を枠材に固定した場合に、山部に第2固着部材を貫通させて一対の第2面材を取り付けることで、せん断降伏した谷部の変形が第2面材に伝達されにくくでき、第2面材の破損をさらに確実に防止することができる。
【0014】
さらに、本発明の耐力壁用パネルでは、前記挿通孔の孔径は、前記第2固着部材の軸径の200%〜400%の範囲で大きく形成されていることが好ましい。
このような構成によれば、挿通孔の孔径と第2固着部材の軸径とを適宜に設定することで、第2面材を確実に保持しつつ第1面材から第2面材へのせん断力の伝達を遮断して、第2面材の破損を確実に防止することができる。
【0015】
また、本発明の耐力壁用パネルでは、前記第2面材は、前記第1面材の一方側である屋内側を覆って設けられる内装パネル、および前記第1面材の他方側である屋外側を覆って設けられる外装パネル、の少なくとも一方のパネルで構成されていることが好ましい。
このような構成によれば、第1面材の屋内側に設けられる石膏ボード等の下地用の内装パネルで第2面材を構成したり、第1面材の屋外側に設けられる断熱板や外装下地等の外装パネルで第2面材を構成したりすることで、第1面材の座屈を防止する機能に加えて内装下地や外装下地として第2面材を有効利用することができる。そして、内外装下地として第2面材を利用した場合でも、前述のように第2面材の破損が防止できることから、その補修が不要にできて補修費用等の負担を軽減させることができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のような本発明の耐力壁用パネルによれば、第1面材の面外変形を第2面材で規制することで、せん断降伏した第1面材の面外座屈を防止することができ、座屈による急激な耐力低下を引き起こすことなく降伏後も第1面材の変形性能を確保することができる。従って、本発明の耐力壁用パネルによって地震等のエネルギーを効果的に吸収できることから、このパネルを用いて耐震性に優れかつ経済的な耐力壁が構成できるとともに、第2面材の破損が防止できることから、エネルギー吸収後の補修費用等の負担も軽減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態に係る耐力壁用パネルを示す三面図である。
【図2】前記耐力壁用パネルを示す分解斜視図である。
【図3】前記耐力壁用パネルの正面図、横断面図および縦断面図である。
【図4】前記実施形態の変形例に係る耐力壁用パネルの正面図、横断面図および縦断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る耐力壁用パネルを示す分解斜視図である。
【図6】前記耐力壁用パネルの正面図、横断面図および縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の各実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、第2実施形態以降において、次の第1実施形態で説明する構成部材と同じ構成部材、および同様な機能を有する構成部材には、第1実施形態の構成部材と同じ符号を付し、それらの説明を省略または簡略化する。
【0019】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
本実施形態の耐力壁用パネル1は、枠組壁工法建築物等における適宜な階の柱および上下の梁などに固定され、当該建築物の耐力壁として利用されるものであって、図1および図2に示すように、薄板軽量形鋼(リップ溝形鋼)から四周枠組みされた枠体2と、この枠体2の一方の面である屋内側側面に固定される第1面材(鋼製面材)としての折板3と、この折板3よりもさらに屋内側に取り付けられる第2面材としての内装パネル4とを有して構成されている。つまり、枠組壁工法建築物は、耐力壁の枠体2が薄板軽量形鋼から構成されるとともに、水平力負担要素(耐震要素)である面材が折板3から構成されたスチールハウスであり、この建築物の外壁は、耐力壁用パネル1の屋外側に設けられる断熱材や外装材(サイディング)等と、耐力壁用パネル1の内装パネル4に設けられるクロス等の内装仕上げ材とを有して構成される。なお、耐力壁用パネル1は、建築物の外壁を構成するものに限らず、当該パネル1の片面または両面に内装仕上げ材を設けた内壁として利用されるものであってもよい。
【0020】
耐力壁用パネル1の枠体2は、それぞれリップ溝形鋼からなる枠材である上枠材21、下枠材22および左右の縦枠材23と、上枠材21と下枠材22とに渡って架設される縦桟24とを有して構成されている。各枠材21,22,23および縦桟24は、それぞれ屋内外方向に延びるウェブ25と、このウェブ25の屋内側および屋外側の両端部に連続する一対のフランジ26とを有して断面略コ字形(C字形)に形成されている。このような枠体2において、左右の縦枠材23によって一対の枠材が構成され、これら左右の縦枠材23に対し、折板3が第1固定手段としての複数のタッピングビス5によって固定され、内装パネル4が第2固定手段としての複数の長ネジ6によって固定されている。なお、折板3は、その上下端縁が上枠材21および下枠材22にタッピングビス5で固定されるとともに、左右方向の中央部が縦桟24にタッピングビス5で固定されている。なお、枠体2は、縦桟24を有したものに限らず、縦桟24が省略されてもよいし、あるいは2本以上の縦桟24が設けられていてもよい。
【0021】
折板3は、左右の縦枠材23間に渡る方向に延びて交互に設けられる山部31と谷部32と、これらを連結する傾斜部33とを有して形成され、谷部32がタッピングビス5で縦枠材23および縦桟24に接合されている。タッピングビス5は、枠体2と反対側から折板3の谷部32を貫通するとともに縦枠材23や縦桟24の屋外側のフランジ26に螺合する第1固着部材であって、このようなタッピングビス5を締め付けることによって、谷部32の屋内側側面をフランジ26に当接させた状態で折板3が枠体2に接合されるようになっている。このような折板3は、地震荷重のような水平力が耐力壁用パネル1に作用した場合に、各々の谷部32がせん断力を負担する斜材として機能するとともに、傾斜部33および山部31が弦材として機能するトラス機構を形成することで、水平力を負担できるようになっており、谷部32がせん断降伏するメカニズム状態において所定のせん断耐力を発揮するように構成されている。
【0022】
内装パネル4は、石膏ボード等の非金属板材で構成され、その左右の両端縁が長ネジ6によって縦枠材23に固定されている。長ネジ6は、図3にも示すように、枠体2と反対側から内装パネル4を貫通し、さらに折板3の谷部32を貫通するとともに、縦枠材23の屋外側のフランジ26に螺合する第2固着部材であって、このような長ネジ6を締め付けることによって、内装パネル4の屋内側側面を折板3の山部31表面に当接させた状態で内装パネル4が枠体2に取り付けられるようになっている。このように取り付けられた内装パネル4が折板3の山部31に当接することで、前述のように折板3の谷部32がせん断力を負担した場合にも、この折板3の屋外側への面外変形が内装パネル4によって規制され、折板3の全体座屈が防止できるようになっている。また、折板3の谷部32には、長ネジ6の軸径の200%〜400%の範囲で大きな孔径を有する挿通孔34が予め形成されており、この挿通孔34に長ネジ6が挿通されることで、折板3の谷部32がせん断降伏して変形した場合でも、谷部32と長ネジ6とが互いに干渉しないように構成されている。
【0023】
なお、本実施形態における耐力壁用パネルは、図1〜図3に示した耐力壁用パネル1に限らず、次の図4に示す耐力壁用パネル1Aであってもよい。
すなわち、図4に示す耐力壁用パネル1Aにおいて、第2固定手段(第2固着部材)である長ネジ6は、枠体2と反対側から内装パネル4を貫通し、さらに折板3の山部31を貫通するとともに、縦枠材23の屋外側のフランジ26に螺合することで、内装パネル4を枠体2に取り付けるように構成されている。ここで、折板3の山部31には、長ネジ6を挿通させるための前述の挿通孔34が形成されておらず、長ネジ6の螺合時に山部31を貫通するようになっており、従って、長ネジ6は面内方向に山部31と係合した状態で設けられている。このような耐力壁用パネル1Aでは、前述と同様に、折板3の屋外側への面外変形が内装パネル4によって規制されることで、折板3の全体座屈が防止できるようになっている。また、折板3の山部31と長ネジ6が係合するものの、この係合位置が当該山部31の山高寸法分だけ谷部32から離隔しているため、谷部32のせん断変形を長ネジ6の倒れによって吸収でき、内装パネル4に変形が生じにくいようにできる。なお、耐力壁用パネル1Aにおいても、長ネジ6が貫通する山部31に前記挿通孔34と同様の挿通孔を形成して長ネジ6を挿通させてもよい。
【0024】
以上の本実施形態によれば、以下の効果が得られる。
すなわち、内装パネル4によって折板3の全体座屈を防止しつつ、折板3に生じる面内方向のせん断変形が内装パネル4に伝達しないまたは伝達されにくくできるので、折板3の降伏せん断耐力までの変形性能および降伏後の変形性能を確保できるとともに、内装パネル4の破損を防止することができる。従って、折板3の面外座屈を防止するための補強材を細かいピッチで多数設けなくてもよいことから、耐力壁用パネル1,1Aの軽量化や低コスト化を図りつつ、エネルギー吸収能力に優れた耐力壁を構成することができる。さらに、折板3の座屈を防止する内装パネル4が内装仕上げの下地材を兼用しているので、部材数量をさらに低減させて低コスト化を図ることができるとともに、この内装パネル4への変形の伝達が抑制されて破損が防止できることから、地震後の内装パネル4および内装仕上げ材等の補修が不要にできたり簡易化できたりするので、補修費用等の負担を軽減させることができる。
【0025】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態の耐力壁用パネル1Bを図5および図6に基づいて説明する。
本実施形態では、第2面材の取付枚数および取付形態が前記第1実施形態と相違するものの、その他の構成は第1実施形態と略同様である。以下、相違点について詳しく説明する。
耐力壁用パネル1Bは、枠体2に固定された折板3に対し、屋内側(一方側)および屋外側(他方側)に対向して一対の第2面材が取り付けられており、屋内側の第2面材として前記内装パネル4と同様の内装パネル4Aが設けられ、屋外側の第2面材として断熱パネル7が設けられている。これらの内装パネル4Aおよび断熱パネル7は、第2固定手段としての長ネジ6(第2固着部材)および座金8(締付部材)によって折板3に取り付けられている。
【0026】
具体的に、長ネジ6は、枠体2と反対側から内装パネル4Aを貫通し、折板3の山部31を貫通するとともに、断熱パネル7を貫通してから、その先端に座金8が螺合されるようになっている。従って、長ネジ6と座金8とを締め付けることによって、内装パネル4Aの屋内側側面を折板3の山部31表面に当接させ、断熱パネル7の屋外側側面を折板3の谷部32表面に当接させた状態で、内装パネル4Aおよび断熱パネル7が折板3に取り付けられ、これらの内装パネル4Aおよび断熱パネル7で挟み込むことで折板3の面外変形が規制され、折板3の全体座屈が防止できるようになっている。また、折板3の山部31には、長ネジ6の軸径の200%〜400%の範囲で大きな孔径を有する挿通孔35が予め形成されており、この挿通孔35に長ネジ6が挿通されることで、折板3がせん断降伏して変形した場合でも、山部31と長ネジ6とが互いに干渉しないように構成されている。
【0027】
以上の耐力壁用パネル1Bによっても前記耐力壁用パネル1,1Aと同様の効果が得られるとともに、折板3の座屈を防止する断熱パネル7が断熱材を兼用しているので、部材数量をさらに低減させて低コスト化を図ることができる。さらに、折板3の山部31と長ネジ6とが互いに干渉せず、折板3の変形が内装パネル4Aおよび断熱パネル7に伝達しにくいことから、内装パネル4Aや断熱パネル7の破損が防止でき、地震後の補修が不要にできたり簡易化できたりするので、補修費用等の負担を軽減させることができる。
【0028】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
例えば、前記各実施形態においては、本発明の耐力壁用パネル1,1A,1Bを枠組壁工法建築物に設置するものとしたが、耐力壁用パネルの設置対象としては、住宅等の比較的小規模な建築物に限定されるものではなく、さらにスチールハウスに限定されるものでもなく、各種構造形式の建築物や任意の用途の建築物などに本発明の耐力壁用パネルが利用可能である。
【0029】
また、耐力壁用パネル1,1A,1Bの第1面材である鋼製面材としては、折板3に限らず、平板状の鋼板や縞鋼板、パンチングメタル等の孔開き鋼板などの適宜な鋼板が使用可能であり、さらには、棒状あるいは線状の鋼棒やワイヤ等を格子状などに組み合わせた面材であってもよい。
また、耐力壁用パネル1,1A,1Bの第2面材としては、内装パネル4,4Aや断熱パネル7の他に、鋼板であってもよいし、木質合板や、ALC等のセメント成型版、コンクリート製のプレキャスト版(PCa版)、ガラス製や樹脂製、磁器、陶器製の板など、任意の材質から形成された板材が利用可能である。
【0030】
その他、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0031】
1,1A,1B…耐力壁用パネル、2…枠体、3…折板(第1面材、鋼製面材)、4,4A…内装パネル(第2面材)、5…タッピングビス(第1固定手段、第1固着部材)、6…長ネジ(第2固定手段、第2固着部材)、7…断熱パネル(第2面材、外装パネル)、8…座金(締付部材)、23…縦枠材(一対の枠材)、31…山部、32…谷部、34,35…挿通孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する少なくとも一対の枠材と、これら一対の枠材に渡って設けられる第1面材と、この第1面材の少なくとも一方の面に沿って設けられる第2面材とを備えた耐力壁用パネルであって、
前記第1面材は、前記一対の枠材の長手方向に沿って第1固定手段によって固定されるとともに、当該第1面材の面内方向に作用する所定のせん断力でせん断降伏するように設定された鋼製面材で構成され、
前記第2面材は、前記第1面材のせん断変形を許容しかつ当該第1面材の面外変形を規制可能な第2固定手段を介して前記枠材および第1面材の少なくとも一方に取り付けられていることを特徴とする耐力壁用パネル。
【請求項2】
請求項1に記載の耐力壁用パネルにおいて、
前記第1面材は、前記一対の枠材間に渡る方向に延びる山部と谷部とを有した折板から構成されるとともに、前記谷部を前記枠材に当接させて固定され、
前記第1固定手段は、前記折板の谷部と前記枠材との一方を貫通して他方に固着する第1固着部材を有して構成されていることを特徴とする耐力壁用パネル。
【請求項3】
請求項2に記載の耐力壁用パネルにおいて、
前記第2面材は、前記枠材の反対側から前記折板の山部に当接して設けられ、
前記第2固定手段は、前記第2面材と前記折板の山部または谷部とを貫通して前記枠材に固着する第2固着部材を有して構成されていることを特徴とする耐力壁用パネル。
【請求項4】
請求項3に記載の耐力壁用パネルにおいて、
前記折板の山部または谷部には、前記第2固着部材の軸径よりも大きな孔径の挿通孔が形成され、この挿通孔に前記第2固着部材が挿通されていることを特徴とする耐力壁用パネル。
【請求項5】
請求項1に記載の耐力壁用パネルにおいて、
前記第2面材は、前記第1面材の一方および他方の面に沿う一対で設けられ、
前記第2固定手段は、前記一対の第2面材および前記第1面材を貫通する第2固着部材と、この第2固着部材とともに前記一対の第2面材を接近方向に締め付ける締付部材とを有して構成され、
前記第1面材または第2面材には、前記第2固着部材の軸径よりも大きな孔径の挿通孔が形成され、この挿通孔に前記第2固着部材が挿通されていることを特徴とする耐力壁用パネル。
【請求項6】
請求項5に記載の耐力壁用パネルにおいて、
前記第1面材は、前記一対の枠材間に渡る方向に延びる山部と谷部とを有した折板から構成されるとともに、前記谷部を前記枠材に当接させて固定され、
前記第1固定手段は、前記折板の谷部と前記枠材との一方を貫通して他方に固着する第1固着部材を有して構成され、
前記第2固定手段の第2固着部材は、前記折板の山部を貫通して設けられていることを特徴とする耐力壁用パネル。
【請求項7】
請求項4から請求項6のいずれかに記載の耐力壁用パネルにおいて、
前記挿通孔の孔径は、前記第2固着部材の軸径の200%〜400%の範囲で大きく形成されていることを特徴とする耐力壁用パネル。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれかに記載の耐力壁用パネルにおいて、
前記第2面材は、前記第1面材の一方側である屋内側を覆って設けられる内装パネル、および前記第1面材の他方側である屋外側を覆って設けられる外装パネル、の少なくとも一方のパネルで構成されていることを特徴とする耐力壁用パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−252302(P2011−252302A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−125854(P2010−125854)
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】