説明

耐力要素劣化診断ユニット、耐力要素劣化診断システム、建物、及び耐力要素劣化診断方法

【課題】仕上げ材を剥がさずに建物の耐力要素の劣化を診断できる耐力要素劣化診断ユニット、耐力要素劣化診断システム、建物、及び耐力要素劣化診断方法を得る。
【解決手段】ユニット建物10において、劣化診断対象の耐力要素が設定応力以上の応力を受けた場合は、被検知カプセル40の被覆部材44に亀裂が生じると共に破断して、被検知部材42及び着色塗料46が被覆部材44の外側に露出する。ここで、金属探知機60を用いて上フランジ23Aに電磁波を作用させたとき、被覆部材44が破断した部位では、被検知部材42における電磁誘導により流れる渦電流Iによって磁場Mが変化する。そして、この磁場Mの変化が検出部64で検出され、被検知部材42が検知される。これにより、ユニット建物10の外壁21を剥がさなくても、耐力要素の劣化を診断することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐力要素の劣化診断を行うための耐力要素劣化診断ユニット、耐力要素劣化診断システム、建物、及び耐力要素劣化診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、弾塑性体のエネルギー吸収部を有する耐力要素の劣化診断方法として、外力によるエネルギー吸収部の累積損傷値と、該エネルギー吸収部の表面に塗装された塗料の剥離量との間の相関関係を予め求めておき、外力発生後に該エネルギー吸収部の表面に塗装された塗料の剥離量から該エネルギー吸収部の劣化を診断する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−351742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示された先行技術による場合、仕上げ材を剥がさないと塗料の剥離量を確認できず、仕上げ材を残したままの耐力要素の劣化診断が困難であった。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、仕上げ材を剥がさずに建物の耐力要素の劣化を診断できる耐力要素劣化診断ユニット、耐力要素劣化診断システム、建物、及び耐力要素劣化診断方法を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明に係る耐力要素劣化診断ユニットは、電磁波で検知される材料で形成された被検知部材と、電磁波を遮断する材料で形成され前記被検知部材を被覆すると共に建物を構成する耐力要素に取り付けられ、予め設定された設定応力に相当する水平力が前記耐力要素に作用したときに該設定応力により破断して前記被検知部材を露出させる被覆部材と、を有する。
【0007】
請求項1の発明に係る耐力要素劣化診断ユニットでは、建物に地震などによる水平力が作用して耐力要素が塑性変形するとき、設定応力より小さい応力が耐力要素劣化診断ユニットに作用すると、耐力要素劣化診断ユニットの被覆部材は破断せず、被検知部材は露出しない。ここで、例えば、金属探知機を用いて、耐力要素劣化診断ユニットを取り付けた位置の耐力要素に電磁波を作用させたとき、設定応力よりも小さい応力を受けた部位では、被覆部材が破断していないため電磁波が遮断され、被検知部材が検知されない。これにより、検知した部位の耐力要素の塑性変形が予め設定された変形よりも小さく、劣化の程度が低いことが分かる。
【0008】
一方、設定応力以上の応力を受けた耐力要素では、耐力要素劣化診断ユニットの被覆部材が破断して被検知部材が露出するため、この部位に電磁波を作用させると、被検知部材で電磁誘導による渦電流が生じ、磁場の変化が検知される。これにより、検知した部位の耐力要素の塑性変形が、予め設定された変形よりも大きく、劣化が進んでいることが分かる。このように、耐力要素劣化診断ユニットを用いた場合は、建物の仕上げ材を剥がさなくても、建物の外側から電磁波を作用させることで建物の耐力要素の劣化を診断することができる。
【0009】
請求項2の発明に係る耐力要素劣化診断ユニットは、前記被覆部材の外周面には、前記設定応力に基づいて形成された凹部を含み、前記設定応力が前記耐力要素に作用したときに破断が促進される破断促進部が設けられている。
【0010】
請求項2の発明に係る耐力要素劣化診断ユニットでは、破断するための設定応力が、破断促進部における凹部の大きさを変更することで変更可能となるので、破断促進部を設けない構成に比べて設定応力の変更が簡単になる。さらに、狙いとは異なる設定応力に合わせて一定の厚さで作製された被覆部材が既にあるときに、後加工により被覆部材の外周面に形成される凹部の大きさを変更することで設定応力が変更されるので、被覆部材の使用の無駄を無くすことができる。
【0011】
請求項3の発明に係る耐力要素劣化診断ユニットは、前記被覆部材の内側には、前記被検知部材に加えて着色塗料が混入されている。
【0012】
請求項3の発明に係る耐力要素劣化診断ユニットでは、耐力要素が変形して被覆部材が破断すると、被検知部材が露出するとともに着色塗料が被覆部材の外側に流出する。そして、流出した着色塗料は、耐力要素の変形部位に広がる。これにより、耐力要素の変形箇所が特定された後、該耐力要素を交換するために仕上げ材を取り除いたときに、耐力要素の変形部位に付着した着色塗料が目印となるので、交換又は補修すべき耐力要素を短時間で見つけることができる。
【0013】
請求項4の発明に係る耐力要素劣化診断システムは、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の耐力要素劣化診断ユニットと、前記耐力要素劣化診断ユニットに電磁波を作用させて前記被検知部材を検知する検知手段と、を有する。
【0014】
請求項4の発明に係る耐力要素劣化診断システムでは、建物に地震などによる水平力が作用して耐力要素が塑性変形するとき、設定応力より小さい応力が耐力要素劣化診断ユニットに作用すると、耐力要素劣化診断ユニットの被覆部材は破断せず、被検知部材は露出しない。ここで、検知手段を用いて、耐力要素劣化診断ユニットを取り付けた位置の耐力要素に電磁波を作用させたとき、設定応力よりも小さい応力を受けた部位では、被覆部材が破断していないため電磁波が遮断され、被検知部材が検知されない。これにより、検知した部位の耐力要素の塑性変形が予め設定された変形よりも小さく、劣化の程度が低いことが分かる。
【0015】
一方、設定応力以上の応力を受けた耐力要素では、耐力要素劣化診断ユニットの被覆部材が破断して被検知部材が露出するため、この部位に検知手段で電磁波を作用させると、被検知部材で電磁誘導による渦電流が生じ、磁場の変化が検知される。これにより、検知した部位の耐力要素の塑性変形が、予め設定された変形よりも大きく、劣化が進んでいることが分かる。このように、建物の仕上げ材を剥がさなくても、建物の外側から電磁波を作用させることで建物の耐力要素の劣化を診断することができる。
【0016】
請求項5の発明に係る建物は、耐力要素と、前記耐力要素に取り付けられる請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の耐力要素劣化診断ユニットと、を有する。
【0017】
請求項5の発明に係る建物では、建物が水平力を受けたとき、設定応力以上の応力を受けた耐力要素では、耐力要素の塑性変形により耐力要素劣化診断ユニットの被覆部材が破断して被検知部材が露出するため、この部位に電磁波を作用させると、被検知部材で電磁誘導による渦電流が生じ、磁場の変化が検知される。これにより、検知した部位の耐力要素の塑性変形が、予め設定された変形よりも大きく、劣化が進んでいることが分かる。このように、建物の仕上げ材を剥がさなくても、建物の外側から電磁波を作用させることで建物の耐力要素の劣化を診断することができる。
【0018】
請求項6の発明に係る建物は、前記耐力要素は柱又は梁であり、前記耐力要素劣化診断ユニットが、前記柱又は前記梁の長手方向及び短手方向の少なくとも一方向に複数設けられている。
【0019】
請求項6の発明に係る建物では、耐力要素への耐力要素劣化診断ユニットの取り付け範囲が増加するので、耐力要素に対して設定応力の誤差分に相当する範囲で変動した応力が作用したときに、いずれかの耐力要素劣化診断ユニットで被覆部材の破断が生じることになる。これにより、劣化部位の特定の精度を上げることができる。
【0020】
請求項7の発明に係る建物は、複数の前記耐力要素劣化診断ユニットの前記設定応力が異なっている。
【0021】
請求項7の発明に係る建物では、耐力要素が変形したとき、異なる設定応力の耐力要素劣化診断ユニットのうち、実際の応力に近い設定応力となっている耐力要素劣化診断ユニットの被覆部材が破断する。ここで、被覆部材が破断した耐力要素劣化診断ユニットの設定応力のデータを複数得られるので、1つの耐力要素劣化診断ユニットを用いた場合に比べて実際に作用した応力を特定し易くなり、劣化部位の特定の精度を上げることができる。
【0022】
請求項8の発明に係る建物は、複数の前記耐力要素劣化診断ユニットが、前記柱又は前記梁から同一距離に設けられている。
【0023】
請求項8の発明に係る建物では、柱又は梁から同一距離で、耐力要素への耐力要素劣化診断ユニットの取り付け範囲が増加するので、梁又は柱に対して設定応力の誤差分に相当する範囲で変動した応力が作用したときに、いずれかの耐力要素劣化診断ユニットで被覆部材の破断が生じることになる。これにより、劣化部位の特定の精度を上げることができる。
【0024】
請求項9の発明に係る耐力要素劣化診断方法は、電磁波で検知される材料で形成された被検知部材と、電磁波を遮断する材料で形成され前記被検知部材を被覆すると共に建物を構成する耐力要素に取り付けられ、予め設定された設定応力が前記耐力要素に作用したときに破断して前記被検知部材を露出させる被覆部材と、を有する耐力要素劣化診断ユニットを取り付けた前記耐力要素に応力が作用した後に、前記耐力要素に電磁波を作用させて前記被検知部材を検知する検知工程を有する。
【0025】
請求項9の発明に係る耐力要素劣化診断方法では、建物に地震などによる水平力が作用して耐力要素が塑性変形するとき、設定応力より小さい応力が耐力要素劣化診断ユニットに作用すると、耐力要素劣化診断ユニットの被覆部材は破断せず、被検知部材は露出しない。ここで、耐力要素劣化診断ユニットを取り付けた位置の耐力要素に電磁波を作用させたとき、設定応力よりも小さい応力を受けた部位では、被覆部材が破断していないため電磁波が遮断され、被検知部材が検知されない。これにより、検知した部位の耐力要素の塑性変形が予め設定された変形よりも小さく、劣化の程度が低いことが分かる。
【0026】
一方、設定応力以上の応力を受けた耐力要素では、耐力要素劣化診断ユニットの被覆部材が破断して被検知部材が露出するため、この部位に電磁波を作用させると、被検知部材で電磁誘導による渦電流が生じ、磁場の変化が検知される。これにより、検知した部位の耐力要素の塑性変形が、予め設定された変形よりも大きく、劣化が進んでいることが分かる。このように、建物の仕上げ材を剥がさなくても、建物の外側から電磁波を作用させることで建物の耐力要素の劣化を診断することができる。
【発明の効果】
【0027】
以上説明したように、請求項1に記載の本発明に係る耐力要素劣化診断ユニットによれば、仕上げ材を剥がさずに建物の耐力要素の劣化を診断できるという優れた効果を有する。
【0028】
請求項2に記載の本発明に係る耐力要素劣化診断ユニットによれば、設定応力の変更を簡単に行うことができるとともに、被覆部材の使用の無駄を無くすことができるという優れた効果を有する。
【0029】
請求項3に記載の本発明に係る耐力要素劣化診断ユニットによれば、交換又は補修すべき耐力要素を短時間で見つけることができるという優れた効果を有する。
【0030】
請求項4に記載の本発明に係る耐力要素劣化診断システムによれば、建物の仕上げ材を剥がさずに建物の耐力要素の劣化を診断することができるという優れた効果を有する。
【0031】
請求項5に記載の本発明に係る建物によれば、建物の仕上げ材を剥がさずに建物の耐力要素の劣化を診断することができるという優れた効果を有する。
【0032】
請求項6に記載の本発明に係る建物によれば、耐力要素の劣化部位の特定の精度を上げることができるという優れた効果を有する。
【0033】
請求項7に記載の本発明に係る建物によれば、耐力要素の劣化部位の特定の精度を上げることができるという優れた効果を有する。
【0034】
請求項8に記載の本発明に係る建物によれば、耐力要素の劣化部位の特定の精度を上げることができるという優れた効果を有する。
【0035】
請求項9に記載の本発明に係る耐力要素劣化診断方法によれば、仕上げ材を剥がさずに建物の耐力要素の劣化を診断できるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】第1実施形態に係るユニット建物を示す斜視図である。
【図2】第1実施形態に係る柱及び梁に被検知カプセルを取り付けた状態を示す斜視図である。
【図3】(A)、(B)第1実施形態に係る被検知カプセルの平断面図又は縦断面図である。
【図4】(A)、(B)第1実施形態に係る被検知カプセルの他の実施例における平面図又は縦断面図である。
【図5】(A)、(B)第1実施形態に係る被検知カプセルの破断状態における平断面図又は縦断面図である。
【図6】(A)第1実施形態に係る被検知カプセルの非破断状態での電磁波による検知状態を示す模式図である。(B)実施形態に係る被検知カプセルの破断状態での電磁波による検知状態を示す模式図である。
【図7】第2実施形態に係る柱及び梁の長手方向沿って複数の被検知カプセルを取り付けた状態を示す斜視図である。
【図8】(A)、(B)第2実施形態に係る被検知カプセルの平断面図又は縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る耐力要素劣化診断ユニット、耐力要素劣化診断システム、建物、及び耐力要素劣化診断方法について説明する。
【0038】
図1には、建物の一例としてのユニット建物10が示されている。ユニット建物10は、予め工場内で組み立てられた複数の箱型の建物ユニット12を現地で基礎(図示省略)上に据え付けることにより構築された一階部分14と、同様に一階部分14の上に複数の箱型の建物ユニットを据え付けることにより構築された二階部分16と、二階部分16の上に据え付けられた屋根部(図示省略)と、を含んで構成されており、一階部分14と二階部分16の周囲には、複数のパネル材で構成された外壁21(図6(A)、(B)参照)が取り付けられている。なお、図1では、ユニット建物10の桁方向を矢印Y方向、妻方向を矢印X方向、桁方向及び妻方向と直交する高さ方向を矢印Z方向で示している。
【0039】
建物ユニット12は、矩形枠状に構成された天井フレーム22及び床フレーム24と、天井フレーム22と床フレーム24とを繋ぐ4本の柱26とによって構成されている。天井フレーム22、床フレーム24、柱26は、耐力要素の一例である。そして、天井フレーム22は、矢印Y方向に架設された天井桁梁23と、矢印X方向に架設された天井妻梁25とを含んで構成されている。なお、一例として、天井フレーム22及び床フレーム24は溝形鋼で構成されており、柱26は角型で筒状の鋼管柱で構成されている。
【0040】
図2には、柱26、天井桁梁23、及び天井妻梁25で形成された仕口部30周辺の構造が示されている。仕口部30では、柱26の矢印Y方向の側面26Aに天井桁梁23の一端が溶接されており、柱26の矢印X方向の側面26Bに天井妻梁25の一端が溶接されている。なお、側面26Aと側面26Bは互いに隣接配置されている。
【0041】
天井桁梁23は、前述のように溝形鋼で構成されており、矢印Z方向に間隔をあけて対向配置された平板状の上フランジ23A、下フランジ23Bと、上フランジ23A、下フランジ23Bと直交配置されると共に上フランジ23A、下フランジ23Bのそれぞれの一端を繋ぐ平板状のウェブ23Cとで構成されている。同様に、天井妻梁25は、溝形鋼で構成されており、矢印Z方向に間隔をあけて対向配置された平板状の上フランジ25A、下フランジ25Bと、上フランジ25A、下フランジ25Bと直交配置されると共に上フランジ25A、下フランジ25Bのそれぞれの一端を繋ぐ平板状のウェブ25Cとで構成されている。
【0042】
ここで、上フランジ23Aの上面、下フランジ23Bの下面、上フランジ25Aの上面、下フランジ25Bの下面、柱26の側面26A、及び柱26の側面26Bには、耐力要素劣化診断ユニットの一例としての被検知カプセル40が複数取り付けられている。なお、被検知カプセル40は、詳細を後述する検知手段の一例としての金属探知機60(図6(A)、(B)参照)とともに、耐力要素劣化診断システムの一例としての診断システム20を構成している。また、本実施形態では、一例として、ユニット建物10の各部に同じ被検知カプセル40が取り付けられているものとして説明するが、上フランジ23Aの上面、下フランジ23Bの下面、上フランジ25Aの上面、下フランジ25Bの下面、柱26の側面26A、及び柱26の側面26Bで設定応力の異なる被検知カプセル40を取り付けてもよい。
【0043】
次に、被検知カプセル40について説明する。
【0044】
図3(A)、(B)に示すように、被検知カプセル40は、被検知部材42と、被検知部材42を被覆する被覆部材44とを含んで構成されており、本実施形態では、さらに、被覆部材44の内側に被検知部材42と共に着色塗料46が内包されている。
【0045】
被検知部材42は、電磁波で検知される(電磁波を遮断しない)材料で構成されるものであり、一例として、金属粉であるアルミ粉を用いている。なお、アルミ粉の大きさは、電磁波で検知可能となる大きさが予め実験により決定されている。本実施形態では、被検知部材42を粉状としているが、他の例として金属片(金属板)であってもよい。また、被検知部材42として、アルミの他に使用可能な材料は、例えば、銅、亜鉛、スズ、クロム、ニッケル等の非鉄金属が挙げられる。
【0046】
被覆部材44は、電磁波を遮断する材料で構成され外殻を形成するものであり、一例として、金属箔である銅箔を用いている。ここで、被検知カプセル40が取り付けられる部材(耐力要素の部位)については、劣化したと診断される塑性変形量と、この塑性変形量を生じさせる大きさの水平力(設定水平力)とが予め設定されている。そして、被検知カプセル40については、被検知カプセル40を取り付けた部材が設定水平力により変形したときに、被覆部材44が破断し始める応力(以後、この応力を設定応力と記載する)が予め設定されている。
【0047】
被覆部材44の厚さt(図3(B)参照)は、被検知カプセル40に設定応力が作用したとき、破断歪が生じて被覆部材44が破断するように予め設定されている。なお、本実施形態では、被覆部材44を金属箔(銅箔)としているが、他の例として、薄い金属板で形成された箱体であってもよい。また、被覆部材44として、銅の他に使用可能な材料は、例えばアルミが挙げられる。
【0048】
図3(B)に示すように、被検知カプセル40は、被覆部材44の底面である取付面40Cが、耐力要素である柱26、天井桁梁23、及び天井妻梁25(図2参照)の各部に接着剤(図示省略)で貼り付けられることにより、取り付けられるようになっている。なお、本実施形態では、後述する金属探知機60(図6(A)、(B)参照)の電磁波が、被覆部材44における取付面40Cとは反対側の面である検知対象面40Bに作用するように、各部材の大きさ及び配置間隔が設定されている。このため、被覆部材44における厚さtの設定とは、被覆部材44の検知対象面40B側の厚さtを設定することを意味している。
【0049】
一方、着色塗料46は、被検知カプセル40が取り付けられる部材の色とは異なる色の塗料であり、一例として赤色塗料を用いている。なお、着色塗料46は、被検知部材42の検知のためにも電磁波を遮断しない材料で構成される必要があり、電磁波を遮断するような特殊塗料を用いることはできない。
【0050】
ここで、被検知カプセル40の製法としては、例えば、被覆部材44を一端が開口した袋状に形成しておき、この開口側から被検知部材42及び着色塗料46を入れた後、開口を圧着して形成する方法がある。または、袋状に形成した被覆部材44に孔部を形成し、この孔部から被検知部材42及び着色塗料46を入れて、孔部をシール部材により封止する方法が挙げられる。ただし、圧着した部位の強度又は封止したシール部材の強度が、被検知カプセル40に設定応力が作用したときに耐えられる強度にしておく必要がある。
【0051】
図2に示すように、被検知カプセル40は、柱26、天井桁梁23、及び天井妻梁25の各部において、長手方向と直交する方向に3個ずつ横並びで取り付けられている。ここで、被検知カプセル40の長手方向の中央位置を40Aとして、柱26の側面26Aから上フランジ23A又は下フランジ23Bに設けられた被検知カプセル40の中央位置40Aまでの距離が、それぞれY1で揃えられ同一距離とされている。
【0052】
また、柱26の側面26Bから上フランジ25A又は下フランジ25Bに設けられた被検知カプセル40の中央位置40Aまでの距離が、それぞれX1で揃えられ同一距離とされている。さらに、柱26において、下フランジ23Bの下面から側面26Aに設けられた被検知カプセル40の中央位置40Aまでの距離がZ1、下フランジ25Bの下面から側面26Bに設けられた被検知カプセル40の中央位置40Aまでの距離がZ1で揃えられ同一距離とされている。
【0053】
なお、距離X1、Y1、Z1は、ユニット建物10が水平力を受けた際に、柱26、天井桁梁23、及び天井妻梁25において塑性化が想定される位置を有限要素法による計算又は実験で求めることにより得られる。一例として、天井桁梁23の梁せいをDとして、端部から2D以内の範囲に塑性化が想定される位置を設定する。なお、被検知カプセル40は、柱(柱26)と梁(天井桁梁23、天井妻梁25)のいずれか一方に取り付けていてもよいが、柱と梁のどちらが降伏していても劣化診断できるように柱、梁の両方に取り付けておくことが好ましい。
【0054】
図4(A)、(B)には、本実施形態の被検知カプセル40の他の実施例として、被検知カプセル50が示されている。被検知カプセル50は、前述の被検知カプセル40の被覆部材44に換えて、被覆部材44よりも厚い銅箔からなる被覆部材52が用いられており、内部の被検知部材42及び着色塗料46は同じ構成となっている。
【0055】
被覆部材52の外周面(平面視で短手方向の外周面)には、被覆部材52の破断を促進させるための破断促進部の一例としてのミシン目54が形成されている。ミシン目54は、周方向に沿って間隔をあけて複数形成された凹部56を含んで構成されており、凹部56の深さΔdは、前述の設定応力によってミシン目54が破断するように設定されている。これにより、ミシン目54では、前述の設定応力が耐力要素及び被検知カプセル50に作用したときに破断が促進され、被検知部材42が露出しやすくなっている。このように、設定応力に合わせて、厚さtを変更したり、あるいはミシン目54の凹部56の大きさを変更することにより、被覆部材44、52を予め決められた設定応力で破断させることができる。
【0056】
次に、金属探知機60について説明する。
【0057】
図6(A)に示すように、金属探知機60は、検知コイル62と、検知コイル62への通電及び検知コイル62の起電力の変化を検出する検出部64とを有している。検知コイル62は、検出部64の端子に接続されており、検出部64から交流電流を流されることにより電磁波である磁場Mを発生させるようになっている。そして、検出部64は、検知コイル62に予め設定された交流電流を流すとともに検知コイル62の起電力を測定し、この検知コイル62の起電力の変化を検出することで、被検知部材42の有無を検出するようになっている。なお、図6(A)の状態では、被検知部材42が被覆部材44の外側に露出していないので、金属探知機60では検出されない。
【0058】
一方、図6(B)に示すように、被検知部材42が被覆部材44の外側に露出している状態で金属探知機60により探知が行われたとき、被検知部材42が磁場Mに近づくと、被検知部材42では磁場Mを打ち消す向きに渦電流Iが流れ、磁場Mに対する反作用磁場(図示省略)が生じる。この反作用磁場は、検知コイル62の起電力に変化を与えるため、検出部64で検知された起電力の変化により、被検知部材42の存在を探知(検知)できる。なお、図6(A)、(B)において示された検知コイル62の巻き数、磁場Mの広がり(大きさ、方向)、及び渦電流Iの大きさは、説明を分かり易くするために模式図としてそれぞれ設定したものであり、実際の数、大きさ、方向とは異なっている。
【0059】
(作用)
次に、第1実施形態の作用について説明する。
【0060】
図2に示すように、建物ユニット12を構築する時点において、一例として、柱26の側面26A、26B、天井桁梁23の上フランジ23A、下フランジ23B、天井妻梁25の上フランジ25A、下フランジ25Bに被検知カプセル40を取り付ける。続いて、図1に示すように、複数の建物ユニット12を据え付け、ユニット建物10を構築する。
【0061】
ここで、図1に示すように、ユニット建物10に地震などによる水平力Fが作用して各耐力要素が塑性変形するとき、図3(A)、(B)に示すように、設定応力より小さい応力が被検知カプセル40に作用した場合は、被検知カプセル40の被覆部材44は破断せず、被検知部材42は被覆部材44の外側に露出しない。
【0062】
この場合、図6(A)に示すように、一例として、金属探知機60を用いて外壁21を通して上フランジ23Aに電磁波を作用させたとき、被覆部材44が破断していないため、被覆部材44により電磁波が遮断され、磁場Mが変化せず、被検知部材42が検知されない。これにより、金属探知機60で検知した部位の耐力要素(天井桁梁23)の塑性変形が予め設定された変形よりも小さく、劣化の程度が低いと診断できる。
【0063】
一方、図1に示すように、ユニット建物10に地震などによる水平力Fが作用して各耐力要素が塑性変形するとき、図5(A)、(B)に示すように、耐力要素(ここでは天井桁梁23)が設定応力以上の応力を受けた場合は、被検知カプセル40の被覆部材44に亀裂が生じると共に破断して、被検知部材42及び着色塗料46が被覆部材44の外側に露出(流出)する。
【0064】
この場合、図6(B)に示すように、金属探知機60を用いて外壁21を通して上フランジ23Aに電磁波を作用させたとき、被覆部材44が破断した部位では電磁波が遮断されず、被検知部材42で電磁誘導により流れる渦電流Iによって磁場Mが変化する。そして、この磁場Mの変化が検出部64で検出され、被検知部材42が検知される。これにより、検知した部位である天井桁梁23の塑性変形が、予め設定された変形よりも大きく、劣化が進んでいることが診断できる。このように、被検知カプセル40を用いると共にユニット建物10の外側から電磁波を作用させることにより、ユニット建物10の仕上げ材である外壁21を剥がさなくても、ユニット建物10の耐力要素の劣化を診断することができる。
【0065】
また、図5(A)、(B)に示すように、ユニット建物10では、一例として、天井桁梁23が変形して被覆部材44が破断すると、被検知部材42が露出するとともに着色塗料46が被覆部材44の外側に流出する。そして、流出した着色塗料46は、天井桁梁23の変形部位に広がる。これにより、例えば、金属探知機60によって天井桁梁23の変形箇所が特定された後、該天井桁梁23を交換又は補修するために仕上げ材である外壁21(図6(A)、(B)参照)を取り除いたときに、天井桁梁23の変形部位に付着した着色塗料46が目印となるので、着色塗料46を用いない場合に比べて、交換又は補修すべき耐力要素及び部位を短時間で見つけることができる。
【0066】
さらに、図2に示すように、ユニット建物10では、柱26から同一距離X1、Y1、又は天井桁梁23、天井妻梁25から同一距離Z1で、それぞれ3個の被検知カプセル40が取り付けられているので、柱26、天井桁梁23、天井妻梁25への被検知カプセル40の取り付け範囲が拡がっている。これにより、設定応力から誤差分ずれた応力が柱26、天井桁梁23、天井妻梁25に作用したときに、3個のうちいずれかの被検知カプセル40で被覆部材44の破断が生じることになる。このため、被検知カプセル40を1個のみ用いる場合に比べて、柱26、天井桁梁23、天井妻梁25の劣化部位の特定の精度を上げることができる。
【0067】
一方、ユニット建物10において、被検知カプセル40に換えて、図4(A)、(B)に示す他の実施例としての被検知カプセル50を用いた場合は、破断するための設定応力が、ミシン目54における凹部56の大きさを変更することで変更可能となるので、ミシン目54を設けない構成に比べて設定応力の変更が簡単になる。さらに、狙いとは異なる設定応力に合わせて一定の厚さtで作製された被覆部材52が既にあるときに、被検知カプセル50の構成を用いれば、後加工により被覆部材52の外周面に形成される凹部56の大きさ及び深さΔdを変更することで設定応力が変更されるので、被覆部材52の使用の無駄を無くすことができる。
【0068】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る耐力要素劣化診断ユニット、耐力要素劣化診断システム、建物、及び耐力要素劣化診断方法について説明する。なお、前述した第1実施形態と基本的に同一の構成には、前記第1実施形態と同一の符号を付与してその説明を省略する。
【0069】
図7には、第2実施形態のユニット建物70の一部が示されている。ユニット建物70は、第1実施形態のユニット建物10と耐力要素(天井桁梁23、天井妻梁25、柱26)は同じであり、複数の被検知カプセル40に換えて、被検知カプセル72A、72B、72C、72D、72E、72F、74A、74B、74C、74D、74E、74F、76A、76B、76C、76D、76E、76Fを用いている点が異なる。なお、被検知カプセル72A〜72F、74A〜74F、76A〜76Fは、設定応力の違いを除いて同様の構成となっているため、被検知カプセル単体について説明する場合は、被検知カプセル72Aについて説明し、他の被検知カプセル72B〜72F、74A〜74F、76A〜76Fについての説明を省略する。
【0070】
図8(A)、(B)に示すように、被検知カプセル72Aは、被検知部材73と、被検知部材73を被覆する被覆部材75とを含んで構成されており、本実施形態では、さらに、被覆部材75の内側に被検知部材73と共に着色塗料46が内包されている。
【0071】
被検知部材73は、電磁波で検知される(電磁波を遮断しない)材料で構成されるものであり、一例として、アルミ板を用いている。なお、アルミ板の大きさは、電磁波で検知可能となる大きさが予め実験により決定されている。本実施形態では被検知部材73を板状としているが、他の例として金属粉であってもよい。また、被検知部材73として、アルミの他に使用可能な材料は、例えば、銅、亜鉛、スズ、クロム、ニッケル等の非鉄金属が挙げられる。
【0072】
被覆部材75は、電磁波を遮断する材料で構成され外殻を形成するものであり、一例として、金属箔である銅箔を用いている。ここで、被検知カプセル72Aが取り付けられる部材(耐力要素の部位)が劣化したと診断される塑性変形量と、この塑性変形量を生じさせる大きさの水平力(設定応力)とが予め設定されている。そして、被覆部材75の厚さt(図8(A)参照)は、この設定応力によって被覆部材75が破断するように設定されている。なお、本実施形態では被覆部材75を銅箔としているが、他の例として、薄い金属板で形成された箱体であってもよい。また、被覆部材75として銅の他に使用可能な材料は、例えばアルミが挙げられる。
【0073】
図7に示すように、被検知カプセル72A〜72Fは、上フランジ25Aの上面又は下フランジ25Bの下面において、天井妻梁25の長手方向(矢印X方向)及び短手方向(矢印Y方向)に設けられている。具体的には、柱26を上側として天井妻梁25を平面視した状態で、左上に被検知カプセル72A、中央上に被検知カプセル72B、右上に被検知カプセル72C、左下に被検知カプセル72D、中央下に被検知カプセル72E、右下に被検知カプセル72Fが取り付けられている。
【0074】
被検知カプセル72A、72B、72Cは、柱26から同一距離に配置されており、被検知カプセル72D、72E、72Fは、柱26から被検知カプセル72A、72B、72Cよりも遠い側で、且つ同一距離に配置されている。また、被検知カプセル72Eは、第1実施形態の被検知カプセル40(図2参照)の設定応力と同じ設定応力となっているが、被検知カプセル72A、72B、72C、72D、72Fは、この設定応力からそれぞれずらした設定応力となっている。即ち、被検知カプセル72A〜72Fの設定応力が異なっている。
【0075】
同様に、被検知カプセル74A〜74Fは、上フランジ23Aの上面又は下フランジ23Bの下面において、天井桁梁23の長手方向(矢印Y方向)及び短手方向(矢印X方向)に設けられている。具体的には、柱26を上側として天井桁梁23を平面視した状態で、右上に被検知カプセル74A、中央上に被検知カプセル74B、左上に被検知カプセル74C、右下に被検知カプセル74D、中央下に被検知カプセル74E、左下に被検知カプセル74Fが取り付けられている。
【0076】
被検知カプセル74A、74B、74Cは、柱26から同一距離に配置されており、被検知カプセル74D、74E、74Fは、柱26から被検知カプセル74A、74B、74Cよりも遠い側で、且つ同一距離に配置されている。また、被検知カプセル74A〜74Fは、被検知カプセル74Eの設定応力を中心値として、それぞれずらした設定応力となっている。即ち、被検知カプセル74A〜74Fの設定応力が異なっている。
【0077】
さらに、被検知カプセル76A〜76Fは、側面26A、26Bにおいて、柱26の長手方向(矢印Z方向)及び短手方向(矢印X方向又はY方向)に設けられている。具体的には、側面26Bにおいて、天井妻梁25を上側として柱26を平面視した状態で、左上に被検知カプセル76A、中央上に被検知カプセル76B、右上に被検知カプセル76C、左下に被検知カプセル76D、中央下に被検知カプセル76E、右下に被検知カプセル76Fが取り付けられている。
【0078】
被検知カプセル76A、76B、76Cは、天井妻梁25から同一距離に配置されており、被検知カプセル76D、76E、76Fは、天井妻梁25から被検知カプセル76A、76B、76Cよりも遠い側で、且つ同一距離に配置されている。また、被検知カプセル76A〜76Fは、被検知カプセル76Eの設定応力を中心値として、それぞれずらした設定応力となっている。即ち、被検知カプセル76A〜76Fの設定応力が異なっている。なお、側面26Aにおける被検知カプセル76A〜76Fの説明は、同様であるため省略する。
【0079】
(作用)
次に、第2実施形態の作用について説明する。
【0080】
図7のユニット建物70において、地震などによる水平力が作用して各耐力要素が塑性変形するとき、図8(A)に示すように、設定応力より小さい応力が被検知カプセル72Aに作用した場合は、被検知カプセル72Aの被覆部材75は破断せず、被検知部材73は露出されない。この場合、金属探知機60(図6(A)参照)を用いて検知を行っても、被覆部材75により電磁波が遮断されるため、磁場が変化せず、被検知部材73が検知されない。これにより、金属探知機60で検知した部位の耐力要素の塑性変形が、予め設定された変形よりも小さく、劣化の程度が低いことが診断できる。
【0081】
一方、図7のユニット建物70において、地震などによる水平力が作用して各耐力要素が塑性変形するとき、図8(B)に示すように、耐力要素(ここでは天井妻梁の上フランジ25A)が設定応力以上の応力を受けた場合は、被検知カプセル72Aの被覆部材75に亀裂が生じると共に破断して、被検知部材73が破断箇所で露出するとともに、着色塗料46が被覆部材75の外側に流出する。
【0082】
この場合、金属探知機60(図6(A)参照)を用いて検知を行うと、破断箇所では被検知部材73が露出しているため、この部位で生じる渦電流により磁場が変化して、被検知部材73が検知される。これにより、金属探知機60で検知した部位の耐力要素の塑性変形が、予め設定された変形よりも大きく、劣化が進んでいることが診断できる。このように、被検知カプセル72Aを用いると共にユニット建物70の外側から電磁波を作用させることにより、ユニット建物70の仕上げ材である外壁21を剥がさなくても、ユニット建物70の耐力要素の劣化を診断することができる。
【0083】
また、ユニット建物70では、被検知カプセル72A〜72F、74A〜74F、76A〜76Fを用いることにより、耐力要素への取り付け範囲が拡がる(増加する)ので、耐力要素に対して、設定応力の誤差分だけずれた応力が作用したときに、いずれかの被検知カプセル72A〜72F、74A〜74F、76A〜76Fで被覆部材75の破断が生じることになる。これにより、1箇所のみ被検知カプセルを取り付ける場合に比べて、劣化部位の特定の精度を上げることができる。
【0084】
さらに、ユニット建物70では、耐力要素が変形したとき、異なる設定応力の被検知カプセル72A〜72F、74A〜74F、76A〜76Fのうち、実際の応力に近い設定応力となっている被検知カプセルで破断が生じる。ここで、被覆部材75が破断した被検知カプセル72A〜72F、74A〜74F、76A〜76Fの設定応力のデータを複数得られるので、1つの被検知カプセルを用いた場合に比べて、実際に作用した応力を特定し易くなる。
【0085】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されない。
【0086】
ユニット建物10、70は、複数の建物ユニット12で構成されるものに限らず、鉄骨軸組構造のものであってもよい。また、被検知カプセル40は、天井フレーム22だけでなく床フレーム24に設けてもよく、柱26の下部に設けてもよい。さらに、被検知カプセル40は、柱26、天井フレーム22、床フレーム24の長手方向に2箇所、又は3箇所以上の複数箇所で取り付けてもよい。また、被検知部材42は、電磁波で検知可能なものであれば、有機系の材料であってもよく、金属に限定されない。
【0087】
また、被検知カプセルは、着色塗料46が封入されていないものであってもよい。さらに、被検知カプセル50を除く他の被検知カプセルにおいて、ミシン目54が外周面に形成されていてもよい。そして、被検知カプセル50において、ミシン目54が、長手方向に間隔をあけて複数形成されていてもよい。加えて、被検知カプセル40を長手方向又は短手方向で2つに分割し、この分割位置を他の材料で接合(接続)して形成するようにしてもよい。
【0088】
設定応力(破断歪)は、Aランク(至急対策必要)、Bランク(近々に対策必要)、Cランク(次回点検時までに対策必要)というように、ランク分けして設定しておいてもよい。また、耐力要素としては、柱、梁に限らず、例えば、ブレース材に被検知カプセルを取り付けてもよい。
【符号の説明】
【0089】
10 ユニット建物(建物)
12 柱(耐力要素)
14 梁(耐力要素)
20 診断システム(耐力要素劣化診断システム)
40 被検知カプセル(耐力要素劣化診断ユニット)
42 被検知部材
44 被覆部材
46 着色塗料
54 ミシン目(破断促進部)
56 凹部
60 金属探知機(検知手段)
70 ユニット建物(建物)
72A 被検知カプセル(耐力要素劣化診断ユニット)
74A 被検知カプセル(耐力要素劣化診断ユニット)
76A 被検知カプセル(耐力要素劣化診断ユニット)
F 水平力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波で検知される材料で形成された被検知部材と、
電磁波を遮断する材料で形成され前記被検知部材を被覆すると共に建物を構成する耐力要素に取り付けられ、予め設定された設定応力に相当する水平力が前記耐力要素に作用したときに該設定応力により破断して前記被検知部材を露出させる被覆部材と、
を有する耐力要素劣化診断ユニット。
【請求項2】
前記被覆部材の外周面には、前記設定応力に基づいて形成された凹部を含み、前記設定応力が前記耐力要素に作用したときに破断が促進される破断促進部が設けられている請求項1に記載の耐力要素劣化診断ユニット。
【請求項3】
前記被覆部材の内側には、前記被検知部材に加えて着色塗料が混入されている請求項1又は請求項2に記載の耐力要素劣化診断ユニット。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の耐力要素劣化診断ユニットと、
前記耐力要素劣化診断ユニットに電磁波を作用させて前記被検知部材を検知する検知手段と、
を有する耐力要素劣化診断システム。
【請求項5】
耐力要素と、
前記耐力要素に取り付けられる請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の耐力要素劣化診断ユニットと、
を有する建物。
【請求項6】
前記耐力要素は柱又は梁であり、
前記耐力要素劣化診断ユニットが、前記柱又は前記梁の長手方向及び短手方向の少なくとも一方向に複数設けられている請求項5に記載の建物。
【請求項7】
複数の前記耐力要素劣化診断ユニットの前記設定応力が異なっている請求項6に記載の建物。
【請求項8】
複数の前記耐力要素劣化診断ユニットが、前記柱又は前記梁から同一距離に設けられている請求項6又は請求項7に記載の建物。
【請求項9】
電磁波で検知される材料で形成された被検知部材と、電磁波を遮断する材料で形成され前記被検知部材を被覆すると共に建物を構成する耐力要素に取り付けられ、予め設定された設定応力が前記耐力要素に作用したときに破断して前記被検知部材を露出させる被覆部材と、を有する耐力要素劣化診断ユニットを取り付けた前記耐力要素に応力が作用した後に、前記耐力要素に電磁波を作用させて前記被検知部材を検知する検知工程を有する耐力要素劣化診断方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−2754(P2012−2754A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−139656(P2010−139656)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【出願人】(504093467)トヨタホーム株式会社 (391)
【Fターム(参考)】