説明

耐化学薬品性で機械抵抗性の静電防止手袋

【課題】向上した機械抵抗、耐化学薬品透過性、静電気放電性(23℃及び50%の相対湿度において1.0×10Ω未満の垂直抵抗)を有する、手にフィットした手袋、及び製造方法を提供する。
【解決手段】ニトリル、クロロプレンラテックス、天然ラテックス、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ブチルラテックス、フッ素ラテックス、ポリエチレン、又はこれらの混合物からなる、少なくとも1つの耐化学薬品性ポリマー層12、14及び、アニオン性ポリマー及び耐化学薬品性ポリマーの混合物を含む少なくとも1つの導電性ポリマー層16を含む多重層からなり、標準的なラテックス含浸ライナーを用いて形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本出願は、2010年10月15日出願の米国特許出願61/393,712(参照として本明細書中に包含する)の優先権及び利益を主張する。
[0002]本発明は、耐化学薬品性及び機械抵抗性の静電防止手袋に関する。より詳しくは、本発明は、静電気放電性を有し、含浸ライニングプロセスを用いることによって製造される装着感のよい耐化学薬品性で機械抵抗性の手袋に関する。
【背景技術】
【0002】
[0003]静電防止であると宣伝されている市販されている幾つかのタイプの耐化学薬品性手袋があるが、殆どのものは例えば静電気放電性/約50%の相対湿度及び23℃において1.0×10Ω未満の垂直抵抗を要求する標準規格には適合していない。また、多くの所謂静電防止手袋は、電荷を分散させる電気導線及び他の金属アタッチメントが存在しているために取り扱いにくいという欠点を有する。
【0003】
[0004]歴史的には、必要な耐化学薬品性を得るためには、化学薬品に対して不浸透性の種々の膜を積層又は一緒に熱融着して耐化学薬品性の手袋を形成し、次に手袋に金属線又はメッシュを取り付けて静電気放電性を与えていた。これらのタイプの手袋は、装着者が手を動かすのが困難であった。したがって、装着感のよい耐化学薬品性の静電防止手袋に対する必要性が存在する。
【発明の概要】
【0004】
[0005]図面は本明細書の一部を形成する。
[0008]本発明は多くの異なる形態の態様が可能であるが、本開示は発明の原理の一例としてみなすべきであり、本発明を説明されている具体的な態様に限定することは意図しないという理解の下に、その具体的な態様を図面に示し、ここに詳細に記載する。
【0005】
[0009]本発明は、向上した耐化学薬品透過性及び向上した放電性を有する皮膚被覆物に関する。本発明は、かかる皮膚被覆物を形成する方法を包含する。皮膚被覆物は5本指の手袋であってよいが、親指しか有しないミトン、又は0〜5本の指の任意の組合せが存在するミトンであってもよい(図1参照)。かかる皮膚被覆物は手袋又はミトンに限定されず、エプロン、コート、帽子、スカーフ、靴、又は靴下などでもよい。
【0006】
[00010]本手袋によって、装着者の身体経由で電気の連続的な放電がもたらされるので、通常の化学薬品保護手袋を用いる場合よりも火花の発生及び爆発の危険性が非常に少ない。本手袋の耐化学薬品性及び静電防止性は、手袋内の耐化学薬品性ポリマー及び導電性ポリマーの存在によって得られる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】[0006]図1は、本発明にしたがって形成することができる手袋を図示する。
【図2】[0007]図2は、図1の手袋の断面の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[00011]一態様においては、手袋は導電性ポリマー層である1つの層を含む。導電性ポリマー層は、アニオン性ポリマー及び耐化学薬品性ポリマーの混合物を含む。アニオン性ポリマーは、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリ(スチレンスルホネート)のようなポリチオフェン類であってよい。更に、アニオン性ポリマーはイミダゾリウム塩であってよい。アニオン性ポリマーは、導電性ポリマー層中に約1〜約70重量%存在する。
【0009】
[00012]耐化学薬品性ポリマーは、ニトリルラテックス、クロロプレンラテックス、天然ラテックス、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ブチルラテックス、フッ素ラテックス、ポリエチレン、又はこれらの混合物であってよい。耐化学薬品性ポリマーは、導電性ポリマー層中に約50〜約99重量%存在する。他の態様においては、導電性ポリマー層中の耐化学薬品性ポリマーの量は約70重量%〜約90重量%の範囲である。更に他の態様においては、導電性ポリマー層中の耐化学薬品性ポリマーの量は約75重量%〜約85重量%の範囲である。
【0010】
[00013]他の態様においては、導電性ポリマー層は、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリ(スチレンスルホネート)及びニトリルの混合物を含む。更に他の態様においては、導電性ポリマー層は、約1〜約70%のアニオン性ポリマー及び約50〜約99%の耐化学薬品性ポリマーの混合物を含む。更に他の態様においては、導電性ポリマー層は、約1〜約70%のポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリ(スチレンスルホネート)及び約50〜約99%のニトリルの混合物を含む。
【0011】
[00014]また、本方法は、接着剤、消泡剤、増粘剤、安定剤、着色剤、抗菌剤、繊維、香料、又はこれらの混合物を含む1種類以上の添加剤を添加することを含み得る。
[00015]更に他の態様においては、手袋は多重層を含む。これらの多重層は、少なくとも1つの耐化学薬品性ポリマー層及び少なくとも1つの導電性ポリマー層を含む。耐化学薬品性ポリマー層は、ニトリル、クロロプレンラテックス、天然ラテックス、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ブチルラテックス、フッ素ラテックス、ポリエチレン、又はこれらの混合物を含む耐化学薬品性ポリマーを含む。一態様においては、耐化学薬品性ポリマーはニトリルを含む。
【0012】
[00016]手袋の導電性ポリマー層は、アニオン性ポリマー及び耐化学薬品性ポリマーの混合物を含む。アニオン性ポリマーは、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリ(スチレンスルホネート)又はイミダゾリウム塩の少なくとも1つである。一態様においては、アニオン性ポリマーはポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリ(スチレンスルホネート)を含む。
【0013】
[00017]一態様においては、導電性ポリマー層は、約1〜約70%のアニオン性ポリマー及び約50〜約99%の耐化学薬品性ポリマーの混合物を含む。他の態様においては、導電性ポリマー層は、約1〜約70重量%のポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)ポリ(スチレンスルホネート)及び約50〜約99重量%のニトリルラテックスを含む。
【0014】
[00018]耐化学薬品性ポリマー層はニトリルラテックス層であってよいが、クロロプレンラテックス、天然ラテックス、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ブチルラテックス、フッ素ラテックス、ポリエチレン、又はこれらの混合物のような手袋に耐化学薬品性を付与する任意の材料が有用である。
【0015】
[00019]手袋は、接着剤、着色剤、抗菌剤、繊維、香料、又はこれらの混合物を含む1種類以上の添加剤を更に含有し得る。
[00020]場合によっては、手袋は、皮膚に隣接して配置する装着層も含む。装着層は、天然繊維、合成繊維、ポリエステル、ポリウレタン、ニトリルラテックス、クロロプレンラテックス、ポリビニルアルコール、ブチルラテックス、フッ素ラテックス、又はラテックスラバーであってよい。一態様においては、装着層はフロック加工した綿のライナーのようなテキスタイル材料である。
【0016】
[00021]手袋が、その所期の用途のために十分に装着感がよく、柔軟である限りにおいて、手袋が有し得る層の数に関する限定は設けられていないと理解すべきである。また、2重層の存在に関する限定もない。層の空間的配置に関する制限はない。
【0017】
[00022]一態様の手袋(10)は、多重層から構成され、装着時に皮膚に接する綿の装着層(18)(フロックライナー)、ニトリルラテックス及びポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリ(スチレンスルホネート)の混合物の1つの導電性ポリマー層(16)、及びニトリルの2つの耐化学薬品性ポリマー層(12、14)の合計で4つの層を含む(図2参照)。
【0018】
[00023]層の厚さは、耐化学薬品性ポリマー層及び導電性ポリマー層のそれぞれに関して約0.01mm〜約3mmの範囲である。装着層の厚さは約0mm〜約6mmの範囲である。
【0019】
[00024]本発明はまた、耐化学薬品性の静電防止手袋を形成する方法も想定する。標準的なラテックスタイプの含浸ライナー上で含浸させることができる耐化学薬品性のアニオン性ポリマー層が含まれている。
【0020】
[00025]耐化学薬品性の静電防止手袋を形成する方法は、手の形の型をニトリルラテックス及びポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリ(スチレンスルホネート)の混合物中に浸漬して、型の上に混合物の連続層を堆積させ、次に被覆された型を混合物から取り出すこと;被覆された型をニトリルラテックス中に浸漬して、被覆された型の上にニトリルラテックスの連続層を堆積させ、型をニトリルラテックス浸漬溶液から取り出すこと;型をニトリルフォーム中に浸漬して、型の上にニトリルフォームの連続層を堆積させ、型をニトリルフォーム浸漬溶液から取り出すこと;を含む。次に、手袋を型から剥ぎ取ることができる。所望の場合には、対をなしている浸漬工程と及び取り出し工程とを独立して複数回繰り返して多重層を形成することができる。更に、装着層を加えることができる。
【0021】
[00026]本方法はまた、接着剤、消泡剤、増粘剤、安定剤、着色剤、抗菌剤、繊維、香料、又はこれらの混合物を含む1種類以上の添加剤を添加することを含み得る。
[00028]上記から、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく数多くの変更及び修正を行うことができることが認められるであろう。ここに示す具体的な物品及び/又は方法に関する限定は、意図しておらず又は暗示していないことを理解すべきである。勿論、特許請求の範囲内の全てのかかる修正を請求項によってカバーすることが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの耐化学薬品性ポリマー層及び少なくとも1つの導電性ポリマー層を含む多重層を含む耐化学薬品性の静電防止手袋。
【請求項2】
耐化学薬品性ポリマー層が、ニトリル、クロロプレンラテックス、天然ラテックス、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ブチルラテックス、フッ素ラテックス、ポリエチレン、又はこれらの混合物を含む耐化学薬品性ポリマーを含む、請求項1に記載の手袋。
【請求項3】
耐化学薬品性ポリマーがニトリルを含む、請求項2に記載の手袋。
【請求項4】
導電性ポリマー層が、アニオン性ポリマー及び耐化学薬品性ポリマーの混合物を含む、請求項1に記載の手袋。
【請求項5】
アニオン性ポリマーがポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリ(スチレンスルホネート)又はイミダゾリウム塩の少なくとも1つを含む、請求項4に記載の手袋。
【請求項6】
アニオン性ポリマーがポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリ(スチレンスルホネート)を含む、請求項4に記載の手袋。
【請求項7】
導電性ポリマー層が、約1〜約70%のアニオン性ポリマー及び約50〜約99%の耐化学薬品性ポリマーの混合物を含む、請求項1に記載の手袋。
【請求項8】
導電性ポリマー層が、約1〜約70重量%のポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリ(スチレンスルホネート)及び約50〜約99重量%のニトリルラテックスを含む、請求項1に記載の手袋。
【請求項9】
綿、ポリエステル、ポリウレタン、天然繊維、合成繊維、ニトリルラテックス、クロロプレンラテックス、ポリビニルアルコール、ブチルラテックス、フッ素ラテックス、又はラテックスラバーの少なくとも1つを含む装着層を更に含む、請求項1に記載の手袋。
【請求項10】
接着剤、着色剤、抗菌剤、繊維、香料、又はこれらの混合物を含む1種類以上の添加剤を更に含む、請求項1に記載の手袋。
【請求項11】
ニトリル及びポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリ(スチレンスルホネート)の混合物の少なくとも1つの層;
少なくとも1つのニトリル層;及び
少なくとも1つの装着層;
を含む耐化学薬品性の静電防止手袋。
【請求項12】
装着層が、ポリエステル、ポリウレタン、天然繊維、合成繊維、ニトリルラテックス、クロロプレンラテックス、ポリビニルアルコール、ブチルラテックス、フッ素ラテックス、ラテックスラバー、又はこれらの混合物の少なくとも1つの層を含む、請求項11に記載の手袋。
【請求項13】
ニトリル及びポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリ(スチレンスルホネート)の混合物の層が、約1〜約70重量%のポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリ(スチレンスルホネート)及び約50〜約99重量%のニトリルを含む、請求項11に記載の手袋。
【請求項14】
接着剤、着色剤、抗菌剤、繊維、香料、又はこれらの混合物を含む1種類以上の添加剤を更に含む、請求項11に記載の手袋。
【請求項15】
耐化学薬品性ポリマー及びアニオン性ポリマーの混合物を含む導電性ポリマー層を含む耐化学薬品性の静電防止手袋。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−140741(P2012−140741A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−227140(P2011−227140)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】