説明

耐弾道性防護具物品

弾道防護具物品中で有用であるサブアセンブリは、複数の第1の連続フィラメントヤーンを含み、前記第1のヤーンが第1の方向で実質的に平行である第1層と;前記第1層に隣接しこれと接触し、かつ複数の第2の連続フィラメントヤーンを含み、前記第2のヤーンが第1の方向に対して傾斜している第2の方向で実質的に平行である第2層とを含み、ここで、第1および第2のヤーンは、1dtexあたり少なくとも25グラムの強力および3.6〜4.5パーセントの破断点伸びを有するパラ−アラミドヤーンを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パラ−アラミドフィラメントのサブアセンブリを含む耐弾道性防護具に関する。
【背景技術】
【0002】
ChiouおよびYangに対する国際公開第93/00564号パンフレットは、4.0%超の破断点伸び、600g/d未満のモジュラスおよび23g/d超の強度を示すp−アラミドヤーンで製造された織布を用いた積層弾道構造を開示している。
【0003】
Liらに対する米国特許第5,112,667号明細書は、耐衝撃性複合シェルを含むヘルメットについて教示している。複合シェルは、複数のプレプレグパケットを含む。各々のプレプレグパケットは少なくとも約2つ、好ましくは5〜20個のプレプレグ層を含む。2〜50個、好ましくは5〜20個のプレプレグパケットが存在する。各プレプレグ層はポリマーマトリクス内に埋め込まれた複数の一方向共平面繊維を含む。プレプレグパケット内の隣接する層の繊維は互いに45度〜90度の角度を成す。
【0004】
Citterioに対する米国特許第6,990,886号明細書は、互いに平行で、積重ねられた初期糸層を含み、それ自体も基本的に互いに平行である少なくとも第2の糸層上に結合層を介在させた完成した強化多層布を生産することのできる未完成の強化多層布において、第1の層のヤーンが第2の層のヤーンとの関係においてさまざまな方向に設定されており、2つの層は同様に、熱可塑性または熱硬化タイプの材料または水溶性または適切な溶剤中に溶解できる材料で作られた多数の結合糸によって接合されている未完成の強化多層布を開示している。
【0005】
Liらに対する米国特許第4,916,000号明細書および5,160,776号明細書は、1つ以上の層を含む改良型複合材において、前記層の少なくとも1つが、マトリクス材料中に、少なくとも約160グラム/デニールの引張りモジュラス、少なくとも約7g/デニールの強度および少なくとも約8ジュール/グラムの破断エネルギーを有する高強度フィラメントの網状組織を含み、前記層の厚み対前記フィラメントの相当直径の比が約12.8以下である改良型複合材および、前記複合材から形成された複合材物品を開示している。フィラメントの相当直径が小さくなればなるほど、また層が薄くなればなるほど、重量は同等であるが層がより厚くフィラメントの相当直径がより大きい複合材によって提供される保護に比べてさらに高い保護度が提供される。
【0006】
Liの特許は、所望の保護度が高くなればなるほど、物品の所与の重量あたりの物品中の層数は多くなり、その結果非常に薄い層が所望されることを教示している。しかしながら、高品質の薄層は生産が困難であり得、薄い材料の層を多数レイアップする場合製造上の問題が発生し得る。アラミド繊維を利用する大部分の多層防護具は、当初織布モデルから開発されたものであるか、またはモデルとして「繊維の網状組織」というあいまいな概念を用いて開発されていることから、厳密にパラ−アラミド一方向防護具構造、すなわち従来の織布の場合のように織り合わせることなく実質的に一方向の配置で繊維が整列されている繊維層を含む構造をテーマにした研究はわずかしかない。必要とされているのは、適切な弾道保護を提供するために過剰量の層の必要性を回避させるパラ−アラミド一方向を作り上げる有効な方法である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態において、本発明は、弾道防護具物品中で有用であるサブアセンブリであって、
− 複数の第1の連続フィラメントヤーンを含み、前記第1のヤーンが第1の方向で実質的に平行である、第1層と;
− 前記第1層に隣接しこれと接触し、かつ複数の第2の連続フィラメントヤーンを含み、前記第2のヤーンが第1の方向に対して傾斜している第2の方向で実質的に平行である、第2層と;
を含み、
第1および第2のヤーンが、1dtexあたり少なくとも25グラムの強度および3.6〜4.5パーセントの破断点伸びを有するパラ−アラミドヤーンを含む、サブアセンブリに関する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、連続マルチフィラメントパラ−アラミドヤーンの層を少なくとも2層含む、弾道防護具において有用なサブアセンブリ内での3.6〜4.5パーセントの破断点伸びを有するパラ−アラミドヤーンの使用に向けられている。層の1つの内部にあるヤーンは、隣接する層内のヤーンの実質的に平行な方向から傾斜している実質的に平行な方向で配向されている。「傾斜している」という用語は、隣接する層内のヤーンが互いに対して異なる角度で配向されていることを意味する。ヤーンが事実上全て1つの方向に整列させられている層は、一方向層またはUD層として公知である。本明細書で使用される一方向またはUDという用語には同様に、単一織(uni−weavesまたはuniweaves)と呼ばれることのある非常に不平衡な織布も含まれている。パラ−アラミド単一織布は、90パーセント超、そしてより典型的には95パーセント超の、縦ヤーン方向に配向されたパラ−アラミドヤーンを有し、このヤーンは横ヤーン方向に織り合わされた非常にわずかな軽量安定化用ヤーンによって所定の場所に保持されている。多くの場合、これらの横ヤーンはレイアップ中パラ−アラミドヤーンの一方向性を維持するものの最終的な弾道防護具物品が成形された時点で本質的に消失する熱可塑性ヤーンである。
【0009】
一実施形態において、サブアセンブリは2つのUD層を含み、第1の層中の第1のヤーンはゼロ度または縦方向に配向されており、一方第2の層中の第2のヤーンは第1層中のヤーンに90度または横方向に直交して配向されており、このような用語は当業者にとって周知である。
【0010】
別の実施形態においては、第1および第2の層を付着させるために、少なくとも1本の追加のまたは第3のヤーンが横断する方向に織り交ぜられている。この目的に適したヤーンには、ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ポリアミド繊維、アラミド繊維、ポリアレンアゾール繊維、ポリピリドアゾール繊維、ポリベンズアゾール繊維およびそれらの混合物からなる群から選択された繊維が含まれる。
【0011】
これら第3のヤーンはかがり縫い(stitched)または縦編み(warp knitting)プロセスにより挿入することができ(これらの技法は両方共熟練者が充分理解しているものである)、あるいは、2つのUD層を第3のヤーンと合わせて付着する他のあらゆる技法により挿入することができる。
【0012】
さらなる実施形態において、第1および第2の層内のヤーンは、互いに直交しているものの、縦方向との関係において+45度および−45度の角度で配置されている。その他の実施形態は、隣接する層内のヤーンの間に他のクロスプライ角度を含んでいる。これらの実施形態の一部において、隣接する層内のヤーンは互いに直交している必要はない。
【0013】
各々のUD層は30〜300g/m2の坪量を有する。一部の好ましい実施形態において、各々のUD層の坪量は45〜250g/m2である。一部の最も好ましい実施形態において、各UD層の坪量は55〜200g/m2である。一部の最も好ましい実施形態においては、サブアセンブリ層は両方共、同じ坪量を有する。
【0014】
1つの好ましい実施形態においては、層内で使用されるヤーンは、実質的に平担化されたフィラメントアレイを形成し、このアレイの中で個々のヤーン束を検出することは困難である。この実施形態では、フィラメントは層内に均一に配置されており、このことはすなわち、平担化されたアレイの厚みには20パーセント未満の差異しか存在しないことを意味している。1つのヤーンからのフィラメントは隣接するヤーンの隣りにシフトして納まり、その層内でフィラメントの連続アレイを形成する。所望される場合、樹脂を層の表面に塗布することができ、一部の好ましい実施形態では、樹脂は均一なフィラメント層に部分的または完全に浸透または含浸する。
【0015】
一変形実施形態においては、平担化されたヤーン束の間に小さな空隙が存在するような形でヤーンを位置づけすることができ、あるいは、明白なヤーン構造を保持しながらヤーンが他の束に対して突き当たるような形でヤーンを位置づけしてもよい。別個の束が存在する場合、これらの束に樹脂を塗布することができる。所望される場合、樹脂が実質的にヤーン束の表面上に残って、フィラメントに含浸しないように、樹脂または塗布方法を選択することができる。あるいは、平担化されたヤーン束に樹脂を完全にまたは部分的に含浸させることもできる。
【0016】
第1および第2の一方向層は、複数の連続フィラメントを有する複数のヤーンを含む。撚糸よりも高い耐弾道性を提供すること、そして撚糸よりも広い縦横比まで広がりUD層を横断してより一貫性ある繊維被覆率を可能にするため、不撚糸が好ましい。本明細書の目的では、「フィラメント」という用語は、長さとその長さに対して垂直なその断面積を横断する幅との比率が高い、相対的に可撓性があり巨視的に均質な物体として定義される。フィラメントの横断面は任意の形状を有することができるが、典型的には円形または豆形である。フィラメントは任意の長さであり得る。好ましくは、フィラメントは連続フィラメントである。パッケージ内のボビン上に紡糸されたマルチフィラメントヤーンは、複数の連続フィラメントを含む。
【0017】
ヤーンは、1dtexあたり少なくとも25グラムのヤーン強度および1dtexあたり少なくとも500グラムのモジュラスを有する。さらに、ヤーンは100〜2,000dtexの線密度および3.6〜4.5パーセントの破断点伸びを有する。より好ましくは、ヤーンは400〜1800dtexの線密度および1dtexあたり少なくとも30グラムの強度を有する。さらに一部の他の実施形態においては、ヤーンは、500dtex未満の線密度を有し、100〜500dtexの範囲が特に有用である。より低い線密度の2つの前駆体ヤーンを集合させるかまたは合わせて練紡することにより、完成ヤーンを作製してもよい。例えば各々850dtexの線密度を有する2本の前駆体ヤーンを、1700dtexの線密度を有する完成ヤーンの形に集合させることができる。
【0018】
一実施形態において、特定の高い伸びを有するパラ−アラミドヤーンを使用することにより、弾道性能を著しく喪失することなくサブアセンブリ内でさらに厚みのある層を使用することが可能になると考えられている。3.6%〜4.5%の破断点伸びおよび1dtexあたり少なくとも25グラムの強度を有する層を構成するヤーンと併せて、層を構成するフィラメントの相当直径に対するUD層の厚みの比率が少なくとも13である2つのUD層を含むサブアセンブリにより、完成物品をより少ない数のサブアセンブリを用いて組立て、それでもなお性能要件を満たすことが可能になる。こうして組立プロセスにおける生産性が改善される。より厚みの大きい層はより多くのフィラメントひいてはより優れた充填密度を有し、したがってフィラメントおよび/またはヤーン間の空隙を削減するという点において、より厚みのあるUD層をサブアセンブリ内で使用することでも品質の改善が得られる。UD層内の空隙は、対弾道性能に影響を及ぼすものである。
【0019】
最終的サブアセンブリの一部の実施形態において、第1または第2の層の厚み対第1または第2の層を構成するフィラメントの相当直径の比率は、少なくとも13、より好ましくは少なくとも16、そして最も好ましくは少なくとも19である。フィラメントの「相当直径」とは、層を構成するフィラメントの平均断面積に等しい断面積を有する円の直径を意味する。比率は、最初にサブアセンブリ中の層の厚みを決定し、典型的には最終サブアセンブリの平均厚みを測定し、次に層の数で除し、その後層中で使用される1本のフィラメントの有効直径により除すことによって計算される。典型的には、全ての層は同じ坪量を有し、全ての層が同じフィラメントを有する。第1および第2のヤーン層の間に追加の樹脂が存在する場合、層の厚みは、サブアセンブリまたは物品の全体的厚みをまず決定し、その厚みをサブアセンブリまたは物品内の糸層数で除すことによって計算される。
【0020】
本発明のヤーンは、パラ−アラミドポリマーで作られたフィラメントを用いて製造される。アラミドという用語は、アミド(−CONH−)結合の少なくとも85%が直接2つの芳香族環に付着されているポリアミドを意味する。適切なアラミド繊維は、Interscience Publishers、1968年刊のW.Blackら、による「Man−Made Fibres−Science and Technology」、第2巻297頁「Fibre−Forming Aromatic Polyamides」という表題の節中に記載されている。アラミド繊維およびその生産は同様に、米国特許第3,767,756号明細書;4,172,938号明細書;3,869,429号明細書;3,869,430号明細書;3,819,587号明細書;3,673,143号明細書;3,354,127号明細書;および3,094,511号明細書中でも開示されている。
【0021】
好ましいパラ−アラミドは、PPD−Tと呼ばれるポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)である。PPD−Tとは、p−フェニレンジアミンおよびテレフタロイルクロリドのモル対モル重合の結果として得られるホモポリマーと同様に、少量の他のジアミンとp−フェニレンジアミンの均質混合および少量の他の二酸塩化物とテレフタロイルクロリドの均質混合の結果として得られるコポリマーも意味する。概して、他のジアミンおよび他の二酸塩化物はp−フェニレンジアミンまたはテレフタロイルクロリドの最高約10モルパーセント程度の高い量または恐らくはそれよりもわずかに高い量で使用可能であるが、ここで他のジアミンおよび二酸塩化物が重合反応と干渉する反応基を全く有していないことだけが条件となる。PPD−Tは同様に、例えば2,6−ナフタロイルクロリドまたはクロロ−またはジクロロテレフタロイルクロリドまたは3,4’−ジアミノジフェニルエーテルなどの他の芳香族ジアミンおよび他の芳香族二酸塩化物の均質混合の結果得られるコポリマーも意味する。一部の好ましい実施形態において、サブアセンブリのヤーンは唯一PPD−Tフィラメントのみで構成されており、一部の好ましい実施形態において、サブアセンブリ内の層はPPD−Tヤーンのみで構成されている。換言すると、一部の好ましい実施形態において、サブアセンブリ中の全てのフィラメントはPPD−Tフィラメントである。
【0022】
アラミドと共に添加剤を使用することができ、最高10重量パーセント以上程度の他のポリマー材料をアラミドとブレンドできるということが発見されている。アラミドのジアミンに置換された10パーセント以上程度の他のジアミン、または二酸塩化物またはアラミドに置換された10パーセント以上程度の他の二酸塩化物を有するコポリマーを使用することができる。
【0023】
一部の実施形態においては、第1および第2の層の中に複数の第1および第2のヤーンが別個のヤーン束として存在し、これらの別個のヤーン束はこれらのヤーン束を外部表面上でコーティングするポリマー樹脂をさらに有している。あるいは、所望される場合、樹脂を部分的または完全にヤーン内に含浸させることもできる。一部の実施形態では、第1または第2の糸層内の樹脂の重量は、層内のヤーンおよび樹脂の総重量に基づいて8〜30パーセント、より好ましくは12〜25パーセントである。適切な樹脂としては、ポリエチレン類、架橋ポリエチレン類、ポリプロピレン類、エチレンコポリマー類、プロピレンコポリマー類およびその他のオレフィンポリマー類またはコポリマー類が含まれる。他の有用な樹脂の例は、ブロックコポリマー類、不飽和ポリエステル類、フェノール樹脂類、ポリブチラール類、エポキシ樹脂類およびポリウレタン樹脂類を含む熱可塑性エラストマーである。
【0024】
UD層のヤーンに樹脂をコーティングするかまたは含浸させるための典型的な方法には、UD層を樹脂と接触させるステップが含まれる。樹脂は溶液、エマルジョン、メルトまたはフィルムの形をとることができる。樹脂が溶液、エマルジョンまたはメルトである場合、UD層を樹脂の中に浸漬し、余剰の樹脂をドクターブレードまたはコーティングロールで除去することができる。ナイフオーバーロールコーティングプロセスにおいて樹脂浴の下を通過するにつれてUD層の表面上に樹脂を被着させてもよい。次のステップは、乾燥させて溶剤を除去するかまたは冷却してメルトを凝固させその後圧延ステップに付すことによって、樹脂が含浸されたUD層を固着させることにある。コーティングされたまたは含浸されたUD層は次に再度巻き取られ、本発明に係る用途のために切断される。樹脂がフィルムの形をしている場合、樹脂フィルムをUD層の一方のおよび両方の表面上に設置し、カレンダー内で熱と圧力によりUD層上またはその中に固着させる。繊維内への樹脂含浸度は、圧延条件によって制御される。本明細書中に記載されているプロセスは全て当業者にとって周知のものであり、F.C. Campbell著「Manufacturing Processes for Advanced Composites」、Elsevier、2004の第2.9章中にさらに詳述されている。
【0025】
対弾道物品は、以上の実施形態中で記述されている通りの複数のサブアセンブリを組み合わせることによって生産可能である。本発明は、軟質および硬質両方の身体防護具に応用可能である。軟質防護具物品は、含浸用樹脂を全く含んでいないことが多く、一方硬質防護具物品はほとんど常に含浸された樹脂構成要素を有している。軟質防護具の例としては、身体の一部分を発射体から保護するチョッキまたはジャケットなどの保護衣料が含まれる。硬質防護具の例としては、ヘルメットや車両用保護プレートがある。サブアセンブリは、完成したアセンブリ全体を通してオフセットされたヤーン整列を維持するような形で位置づけされることが好ましい。例えば、物品の第2のサブアセンブリは、第1のサブアセンブリの上面に設置され、第2のサブアセンブリの最下層を構成するヤーンの方向性が第1のサブアセンブリの最上層を含むヤーンの方向性に対しオフセットされるようになっている。使用されるサブアセンブリの実際の数は、製造中の各物品の設計上のニーズに応じて変動するものである。一例としては、防弾チョッキパックのためのアセンブリは、典型的に4.6〜5.3kg/m2の間の合計面密度を有する。こうして、サブアセンブリの数は、この重量目標を達成するように選択され、この数は典型的には10〜30である。車両硬質防護プレート用には、サブアセンブリの数は、約4.5cmの厚みを有する硬化されたプレス加工済み複合プレートを形成するのに必要とされる量であると考えられる。ヘルメット用には、硬化したプレートの厚みは約0.6cm〜1.3cmである。
【0026】
試験方法
以下の実施例では、以下の試験方法が使用された。
【0027】
線密度:ヤーンまたは繊維の線密度は、ASTM D1907−97およびD885−98中に記載されている手順に基づいてヤーンまたは繊維の公知の長さを秤量することによって決定される。デシテックスまたは「dtex」は、10,000メートルのヤーンまたは繊維のグラム単位の重量として定義づけされる。デニール(d)は、デシテックス(dtex)の9/10倍である。
【0028】
ヤーンの機械特性:試験すべきヤーンを条件づけし、その後ASTM D885−98に記載されている手順に基づき引張り試験に付した。Instron(登録商標)テスター上でヤーンを破断させることにより、強度(切断強さ)、弾性率および破断点伸びを判定した。
【0029】
面密度:層の10cm×10cmの試料の重量を測定することによって、UD層の面密度を決定した。サブアセンブリまたは最終物品の面密度は、サブアセンブリまたは物品の10cm×10cmの重量であった。
【0030】
弾道貫通性能:弾道貫通性能の統計的尺度はV50であり、これは、発射された銃弾または断片の50%が防護具装置を貫通する一方で、残りの50%の発射は貫通しない平均速度である。パラメータは、標的に対する発射体の経路の傾斜角度がゼロ度で測定される。5.56mmの発射体シミュレーション断片(FSP)に対する耐性を、38m/sの衝突時速度内で完全または部分貫通を3対用いてMIL−STD−662Fにより試験し、一方7.62mmのFSPは、38m/sの衝突時速度内で3対の完全および部分貫通を用いてMIL−P−46593Aによって試験した。
【0031】
標準電子顕微鏡技術によって、UD層厚みおよび相当フィラメント直径を決定することができる。
【実施例】
【0032】
以下の実施例は、本発明を例証するために提供されるものであり、いかなる形であれそれを限定するものとして解釈されるべきではない。全ての部分および百分率は、別段の指示のないかぎり重量によるものである。
【0033】
実施例1
本実施例では、一方向(UD)層を、1dtexあたり31グラム−力の強度および3.80%の破断点伸びという公称機械的特性を有するパラ−アラミドで製造した。各層の85重量%は、パラ−アラミド連続フィラメントヤーンで構成され、15重量%はヤーン表面を横断して均等に展延されたポリプロピレン結合材であった。各UD層の坪量は平均181g/m2であった。第1層内の一方向ヤーンが第2層内の一方向ヤーンに対し90度で配向されるような形で2つの層を集合させることによって、サブアセンブリを形成した。サブアセンブリの公称坪量は362g/m2であった。各UD層内のヤーンの方向性がいずれの側のUD層内のヤーンの方向性に対しても90度の方向性を有するような形で27のサブアセンブリを最終的物品アセンブリの形に合わせて積重ねた。アセンブリの合計面密度は9.8kg/m2であった。その後、最終的物品アセンブリを、メーカーの推奨事項にしたがって、177℃のプラテン温度そして34気圧で加熱プレス内において成形し、その結果、9.8kg/m2の面密度を保持する硬化した硬質防護具パネルを得た。硬化した硬質防護具パネルを水ジェットを用いて46cm×46cmの正方形に切断した。その後、切断した正方形を、各コーナーでしゃこ万力を用いて剛性鋼フレームに取付け、5.56mmおよび7.62mmのFSPに対し試験した。得られたV50結果は、表1に示されている。
【0034】
実施例A
実施例1に対する比較として、Gold Shield(登録商標)GV−2112という商標名で入手可能なパラ−アラミドヤーンで製造されたクロスプライの一方向材料を、Honeywell Specialty Materials、Morristown、NJから入手した。この材料は、それぞれの層中のヤーンの方向性が0°/90°/0°/90°である4つの固着されたエラストマー樹脂コーティングのUD層として供給され、これは本明細書中で定義されている2つのサブアセンブリを組合せたものと等価である。この4層構造の合計面密度は222g/m2であり、個別のUD層の面密度は55.5g/m2であった。UD層は、1dtexあたり30グラム−力および3.45%の破断点伸びという公称機械的特性を有するTeijin Twaron USA Inc.、Conyers、GAから入手可能な2000グレードのパラ−アラミドヤーンを含んでいた。実施例1にあるように、各UD層内のヤーンの方向性がいずれの側のUD層内のヤーン方向性に対しても90度の方向性を有するような形に44枚の供給されたままの状態の「4層UDクロスプライアセンブリ」(または本明細書で定義されている88枚の2層サブアセンブリ)を共に積重ねて、9.8kg/m2の面密度を有する最終的物品アセンブリを製造した。その後、最終的物品アセンブリを、メーカーの推奨事項の通りに(115℃の最低温度と3.4MN/m2の圧力)加熱プレス内で成形し、結果として得た硬化した硬質防護具パネルは、公称9.8kg/m2の面密度を保持していた。実施例1にあるように、成形したパネルを水ジェットで46cm×46cmの正方形に切断し、これらを次に各コーナーでしゃこ万力を用いて剛性鋼フレームに取付け、5.56mmおよび7.62mmのFSPに対し試験した。得られたV50結果は、表1に示されている。
【0035】
実施例2
最終的物品アセンブリが38枚のサブアセンブリと14.7kg/m2の面密度を有していたという点を除いて実施例1を反復した。弾道試験も同様に実施例1の通りであり、結果は表1に示されている。
【0036】
実施例B
実施例2に対する比較として、本明細書中で定義されている通りの132枚の2層サブアセンブリと等価である66枚の供給されたままの状態の「4層UDクロスプライアセンブリ」から、14.7kg/m2の面密度を有する最終物品アセンブリを組立てたという点を除いて、実施例Aを反復した。弾道試験もまた実施例Aの通りであり、結果は表1に示されている。
【0037】
表1は、実施例1、2、AおよびBからの結果を示している。最も注目に値するのは、UD層の38枚のサブアセンブリから構築された14.7kg/m2のより高い面密度を有する物品のV50が、111枚のより軽量でより薄いUD層から構築された同一の重量の物品のV50に匹敵するということである。1つの物品を製造するために必要とされる層の数の60%超の削減は、製造中の有意な生産性増大を実現させる。
【0038】
表1


【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾道防護具物品中で有用であるサブアセンブリであって、
− 複数の第1の連続フィラメントヤーンを含み、前記第1のヤーンが第1の方向で実質的に平行である、第1層と;
− 前記第1層に隣接しこれと接触し、かつ複数の第2の連続フィラメントヤーンを含み、前記第2のヤーンが前記第1の方向に対して傾斜している第2の方向で実質的に平行である、第2層と;
を含み、
前記第1および第2のヤーンが、1dtexあたり少なくとも25グラムの強度および3.6〜4.5パーセントの破断点伸びを有するパラ−アラミドヤーンを含む、サブアセンブリ。
【請求項2】
前記第1または第2の層の厚み対前記第1または第2のヤーンの個々の連続フィラメントの相当直径の比が少なくとも13である、請求項1に記載のサブアセンブリ。
【請求項3】
前記第1および第2の層を合わせて付着させる少なくとも1つの追加の第3のヤーンをさらに含む、請求項1に記載のサブアセンブリ。
【請求項4】
前記第3のヤーンが、ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ポリアミド繊維、アラミド繊維、ポリアレンアゾール繊維、ポリピリドアゾール繊維、ポリベンズアゾール繊維およびそれらの混合物からなる群から選択された繊維を含む、請求項3に記載のサブアセンブリ。
【請求項5】
前記第2の層中の前記第2ヤーンが前記第1層内の前記第1ヤーンに対して直交して配向されている、請求項1に記載のサブアセンブリ。
【請求項6】
前記複数の第1および第2のヤーンが、別個のヤーン束として前記第1および第2の層内に存在しており、前記別個のヤーン束が、これらのヤーン束を外部表面上でコーティングするポリマー樹脂をさらに有している、請求項1に記載のサブアセンブリ。
【請求項7】
前記第1および第2の層中の前記複数の第1および第2のヤーンの少なくとも一部分にポリマー樹脂が含浸されている、請求項1に記載のサブアセンブリ。
【請求項8】
請求項1に記載の複数の前記サブアセンブリを含む弾道防護具物品。

【公表番号】特表2012−522968(P2012−522968A)
【公表日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−504722(P2012−504722)
【出願日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際出願番号】PCT/US2010/029736
【国際公開番号】WO2011/022090
【国際公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】