説明

耐指紋性塗料

【課題】付着した指紋が目立ちにくい塗膜を形成することができる耐指紋性塗料を提供する。
【解決手段】塗料構成成分として、主骨格における炭素原子に対する酸素原子の組成比が0.01以上0.5以下である樹脂を含有する。主骨格に酸素原子を有する樹脂を含有するので、電気陰性度の高い酸素原子によって、指紋の主成分である皮脂の接触角が小さい被膜を形成することができ、指紋を大きく濡れ広がらせることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、付着した指紋が目立ちにくい塗膜を形成することができる耐指紋性塗料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
美観の向上のためや、視認性などの光学特性を得たりするために、基材の表面に塗料を塗布して塗膜を形成することが行なわれているが、指紋や手垢など人間の手の接触に伴う汚染物がこの塗膜の表面に付着すると、美観が損なわれたり、視認性などの光学特性が損なわれたりすることになる(尚、本発明において人間の手の接触に伴う指紋や手垢などの汚染物を「指紋」と記す)。例えば、ピアノや高級家具などの表面を鏡面仕上げするために塗装した塗膜に指紋が付着すると、美観が損なわれ見苦しくなる。あるいは、ディスプレイに施した塗膜の表面に指紋が付着すると、付着した指紋の表面で光が乱反射するため、視認性などの光学特性が損なわれる。
【0003】
そこで、塗膜の表面に指紋が付着することを防止するため、あるいは付着した指紋を除去し易くするため、例えば撥油性のフッ素を含有する塗料で塗膜を形成する方法などが従来から提案されている。しかし、撥油性のフッ素を含有する塗膜は、指紋の主成分である皮脂を完全にはじくことはできず、実用上有効なレベルの耐指紋性は得られない。また、撥油性の表面においては、指紋が凝集する傾向があり、かえって付着した指紋が目立ったり、光学特性が大きく損なわれたりする場合もある。
【0004】
一方、塗膜を親油性にすることによって、指紋の主成分である皮脂を濡れ広がらせて、指紋が目立たなくなるようにする方法がある(特許文献1参照)。例えば、金属やガラスの表面にアクリル等のクリアー塗膜を形成すると、表面の親油性が向上し、耐指紋性はやや向上する。しかしこの方法おいても、指紋が明らかに目立たないようにする実用レベルの耐指紋性を得ることは難しい。
【特許文献1】特開2001−35808号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、付着した指紋が目立ちにくい塗膜を形成することができる耐指紋性塗料を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に係る耐指紋性塗料は、塗料構成成分として、主骨格における炭素原子に対する酸素原子の組成比が0.01以上0.5以下である樹脂を含有して成ることを特徴とするものである。
【0007】
このように主骨格に電気陰性度の高い酸素原子を有する樹脂を含有する塗料は、指紋の主成分である皮脂の接触角が小さい被膜を形成することができるものであり、指紋を大きく濡れ広がらせて、付着した指紋が目立ちにくい塗膜を形成することができるものである。
【0008】
また請求項2の発明は、請求項1において、上記樹脂は、水酸基価が100mgKOH/g以上200mgKOH/g以下であることを特徴とするものである。
【0009】
この発明によれば、指紋がより濡れ広がり易い塗膜を形成することができるものである。
【0010】
また請求項3の発明は、請求項1又は2において、上記樹脂は、オイルフリーアルキド樹脂であって、硬化前の重量平均分子量が10000以下であることを特徴とするものである。
【0011】
この発明によれば、皮脂の接触角が低く、指紋がより濡れ広がり易い塗膜を形成することができるものである。
【0012】
また請求項4の発明は、請求項1又は2において、上記樹脂は、アクリル樹脂であって、5%以上50%以下の重量比のオイルフリーアルキド樹脂で変性されていることを特徴とするものである。
【0013】
この発明によれば、皮脂の接触角が低く、指紋がより濡れ広がり易い塗膜を形成することができるものである。
【0014】
また請求項5の発明は、請求項1乃至4のいずれかにおいて、上記樹脂の水酸基の数1に対してアミノ基の数が0.4以上0.95以下となる量で、メラミン硬化剤を含有して成ることを特徴とするものである。
【0015】
この発明によれば、皮脂の接触角が低く、指紋がより濡れ広がり易い塗膜を形成することができるものである。
【0016】
また請求項6の発明は、請求項1乃至4のいずれかにおいて、上記樹脂の水酸基の数1に対してイソシアネート基の数が0.4以上0.95以下となる量で、イソシアネート系硬化剤を含有して成ることを特徴とするものである。
【0017】
この発明によれば、皮脂の接触角が低く、指紋がより濡れ広がり易い塗膜を形成することができるものである。
【0018】
また請求項7の発明は、請求項1乃至6のいずれかにおいて、HLBが10以上18以下である非イオン系界面活性剤が固形分重量比率で5%以上含有されていることを特徴とするものである。
【0019】
この発明によれば、親水性を付与した塗膜を形成することができ、汗を含む指紋を濡れ広がらせて目立たなくなるようにすることができるものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、主骨格における炭素原子に対する酸素原子の組成比が0.01以上0.5以下である樹脂を含有するので、電気陰性度の高い酸素原子によって、指紋の主成分である皮脂の接触角が小さい被膜を形成することができるものであり、指紋を大きく濡れ広がらせて、付着した指紋が目立ちにくい塗膜を形成することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0022】
本発明に係る耐指紋性塗料は、膜形成成分である塗料構成主成分の樹脂として、主骨格における炭素原子に対する酸素原子の組成比が0.01以上0.5以下であるものを用いるものである。ここで、樹脂の主骨格とは、樹脂を構成する高分子の主鎖であって側鎖を含まないものをいうものであり、また炭素原子に対する酸素原子の組成比とは、炭素原子の数に対する酸素原子の数の比をいうものである。
【0023】
このような樹脂としては特に限定されるものではないが、例えば、アルキド樹脂、オイルフリーアルキド樹脂、オイルフリーアルキド変性アクリル樹脂、ポリエーテル樹脂、アルキド変性アクリル樹脂、ポリエーテル変性アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂などを挙げることができる。またこれらの樹脂を、主骨格における炭素原子に対する酸素原子の組成比が0.01以上0.5以下となる条件下で、任意の配合比率でブレンドしてもよい。
【0024】
これらの中でも、硬化前の重量平均分子量が10000以下であるオイルフリーアルキド樹脂が好ましい。オイルフリーアルキド樹脂は油脂成分等を含まない純アルキド樹脂(ホリエステル樹脂の一種)であり、エステル結合として主骨格に酸素原子を有するものである。重量平均分子量の下限は特に限定されるものではないが、塗膜強度を得るために、重量平均分子量は1000以上であることが望ましい。また、5%以上50%以下の重量比のオイルフリーアルキド樹脂で変性されたアクリル樹脂も好ましい。これらオイルフリーアルキド樹脂や、オイルフリーアルキド変性アクリル樹脂を膜形成成分として塗料に含有することによって、指紋による汚れが目立たなくなる効果を顕著に有する塗膜を得ることができ、また耐久性や耐薬品性にも優れた塗膜を得ることができるものである。
【0025】
樹脂の主骨格は主として炭素原子から構成されるが、電気陰性度の高い酸素原子をこの主骨格に一定の割合で含むことにより、主骨格に酸素原子を含まない樹脂を膜形成成分とする塗料によって形成される塗膜に比して、表面自由エネルギーが高い塗膜を形成することができるものであり、このため、塗膜の表面に液体が接触した際に濡れ広がりが生じ易くなる。ここで、樹脂の主骨格に該当しない側鎖に含まれる酸素原子は、樹脂が硬化した後も側鎖がある程度の分子内運動の自由度を有するため、表面自由エネルギーを最小にしようとする働きから塗膜の内部方向へと配向することにより、塗膜の表面の極性や表面自由エネルギーへの寄与が小さいが。上記のように樹脂の主骨格に含まれる酸素原子は、硬化後は自由な分子内運動を行えないため、塗膜の表面の極性や表面自由エネルギーに大きく寄与するものである。
【0026】
このように、塗料の膜形成成分として主骨格に酸素原子を有するものを用いることによって、塗膜の表面自由エネルギーを高めて指紋の主成分である皮脂の接触角が小さくなるようにすることができるものであり、塗膜に指紋が付着しても指紋を濡れ広がらせることによって、指紋が目立ちにくくなるようにすることができるものである。ここで、指紋の主成分の皮脂は中性脂肪(トリグリセリドなど)および中性脂肪が分解した脂肪酸(オレイン酸やパルミチン酸など)からなるものであり、皮脂の代表的な成分であるオレイン酸の付着性、ぬれ性や付着時の目立ちやすさが、耐指紋性を左右する。そして、塗料の膜形成成分の樹脂として主骨格における炭素原子に対する酸素原子の組成比が0.01以上0.5以下であるものを用いることによって、オレイン酸の接触角が15度以下の塗膜を形成することができるものである。このように塗膜の表面のオレイン酸接触角が15度以下であると、塗膜に指紋が付着しても、指紋を大きく濡れ広がらせることができるものであり、指紋が目立たないようにして、耐指紋性を高めることができるものである。
【0027】
樹脂の主骨格における炭素原子に対する酸素原子の組成比が0.01未満の場合、形成される塗膜の表面自由エネルギーが低く、さらにオレイン酸と接触した際の界面自由エネルギーが大きくなるため、オレイン酸の接触角を15度以下にすることは難しい。逆に、樹脂の主骨格における炭素原子に対する酸素原子の組成比が0.5を超える場合、形成される塗膜の極性が高過ぎるため、オレイン酸の極性との乖離が大きくなり、オレイン酸と接触した際の界面自由エネルギーが大きくなって、この場合もオレイン酸の接触角を15度以下にすることは難しい。このため、本発明では塗料の膜形成成分として、主骨格における炭素原子に対する酸素原子の組成比が0.01以上0.5以下である樹脂を含有するものを用いるものである。
【0028】
特に主骨格における炭素原子に対する酸素原子の組成比が0.01以上0.5以下である樹脂を膜形成成分として形成される塗膜は、極性がオレイン酸の極性に近似したものとなり、オレイン酸と接触した際の界面自由エネルギーが小さくなるために、さらにオレイン酸が濡れ広がり易くなるものである。
【0029】
また、塗料に膜形成成分として含有される樹脂は、水酸基価が100mgKOH/g以上200mgKOH/g以下であることがより望ましい。樹脂の水酸基価が100mgKOH/g以上200mgKOH/g以下である場合、形成される塗膜の極性がオレイン酸の極性に近似したものとなり、オレイン酸と接触した際の界面自由エネルギーが小さくなるために、オレイン酸がより濡れ広がり易くなるものである。
【0030】
塗料に含有される樹脂として上記のようにオイルフリーアルキド樹脂やオイルフリーアルキド変性アクリル樹脂を用いる場合、これにメラミン硬化剤を配合して、熱硬化性オイルフリーアルキドメラミン塗料や熱硬化性オイルフリーアルキド変性アクリルメラミン塗料として使用することができる。メラミン硬化剤としてはメラミン樹脂などを用いることができるが、メラミン硬化剤の配合量は、オイルフリーアルキド樹脂やオイルフリーアルキド変性アクリル樹脂の水酸基の数を1とすると、メラミン硬化剤のアミノ基の数が0.4以上、0.95以下となるように設定するのが好ましい。
【0031】
上記の配合量のメラミン硬化剤でオイルフリーアルキド樹脂やオイルフリーアルキド変性アクリル樹脂を硬化させて形成される塗膜には、硬化後も硬化反応に使用されなかった水酸基が塗膜内部に残留するものであり、この水酸基によって塗膜の表面自由エネルギーが高くなって、塗膜の表面に液体が接触した際に液体がより濡れ広がり易くなるので、オレイン酸の接触角を低下させて、耐指紋性を高めることができるものである。オイルフリーアルキド樹脂やオイルフリーアルキド変性アクリル樹脂の水酸基数に対するメラミン硬化剤のアミノ基の数が0.4未満の場合、水酸基が過剰に残留するために塗膜の耐水性が低下するおそれがあり、また架橋密度が低下するために指紋の成分が塗膜中に浸透する場合があって、逆に耐指紋性が大きく低下するおそれがある。オイルフリーアルキド樹脂やオイルフリーアルキド変性アクリル樹脂の水酸基数に対するメラミン硬化剤のアミノ基の数が0.95を超える場合は、残留する水酸基が少なくなるので、上記のようなオレイン酸の接触角を低下させる効果を高く得ることが難しくなる。
【0032】
また、オイルフリーアルキド樹脂やオイルフリーアルキド変性アクリル樹脂にイソシアネート系硬化剤を配合して、熱硬化性あるいは常温硬化性のオイルフリーアルキドウレタン塗料やオイルフリーアルキド変性アクリルウレタン塗料として使用することもできる。イソシアネート系硬化剤としてはMDIやTDI等のイソシアネート樹脂などを用いることができるが、イソシアネート系硬化剤の配合量は、オイルフリーアルキド樹脂やオイルフリーアルキド変性アクリル樹脂の水酸基の数を1とすると、イソシアネート系硬化剤のイソシアネート基の数が0.4以上、0.95以下となるように設定するのが好ましい。
【0033】
上記の配合量のイソシアネート系硬化剤でオイルフリーアルキド樹脂やオイルフリーアルキド変性アクリル樹脂を硬化させて形成される塗膜には、硬化後も硬化反応に使用されなかった水酸基が塗膜内部に残留するものであり、この水酸基によって塗膜の表面自由エネルギーが高くなって、塗膜の表面に液体が接触した際に液体がより濡れ広がり易くなるので、オレイン酸の接触角を低下させて、耐指紋性を高めることができるものである。オイルフリーアルキド樹脂やオイルフリーアルキド変性アクリル樹脂の水酸基数に対するイソシアネート系硬化剤のイソシアネート基の数が0.4未満の場合、水酸基が過剰に残留するために塗膜の耐水性が低下するおそれがあり、また架橋密度が低下するために指紋の成分が塗膜中に浸透する場合があって、逆に耐指紋性が大きく低下するおそれがある。オイルフリーアルキド樹脂やオイルフリーアルキド変性アクリル樹脂の水酸基数に対するイソシアネート系硬化剤のイソシアネート基の数が0.95を超える場合は、残留する水酸基が少なくなるので、上記のようなオレイン酸の接触角を低下させる効果を高く得ることが難しくなる。
【0034】
さらに本発明の塗料には、HLBが10以上18以下である非イオン系界面活性剤を含有させることが好ましい。このような非イオン系界面活性剤を含有する塗料で形成した塗膜は、親水性が顕著に向上する。指紋は汗を含むため、水分の付着性や濡れ性も耐指紋性を左右するものであり、指紋を濡れ広がらせることによって指紋による汚れが目立たなくなる効果を発現させるには、塗膜の表面は親水性が高い方がより望ましいのである。非イオン系界面活性剤のHLBが10未満の場合、非イオン系界面活性剤は極性成分が小さいために、親水性を向上させる効果を十分に得ることができない。逆にHLBが18を超える場合は、形成される塗膜の耐水性が著しく低下するものである。塗料中の非イオン系界面活性剤の含有量は、固形分重量比率で5%以上であることが好ましい。非イオン系界面活性剤の固形分重量比率が5%未満の場合、上記のような親水性を十分に発現させることが難しくなるものである。塗料中の非イオン系界面活性剤の含有量の上限は特に限定されないが、実用上、固形分重量比率で20%が上限である。
【0035】
このようなHLBが10以上18以下である非イオン系界面活性剤としては特に限定されるものでないが、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン誘導体、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油などを挙げることができる。
【0036】
本発明の塗料には、上記のような主骨格における炭素原子に対する酸素原子の組成比が0.01から0.5である樹脂や、HLBが10以上18以下である非イオン系界面活性剤の他に、耐指紋性の向上以外の塗料や塗膜として求められる性能を発現するために各種の成分を含むことができる。このような成分としては、例えば、溶剤、硬化剤、顔料、レベリング剤、湿潤剤、防腐剤などを挙げることができる。
【0037】
上記の組成で形成される本発明の耐指紋性塗料は、種々の塗装対象に塗装して塗膜を形成することによって、耐指紋性を付与することができるものである。塗装する対象は特に限定されるものではないが、例えば、ピアノや高級家具など表面に光沢を有し、指紋が付着すると美観を損なうものや、ディスプレイや光学ディスクなど、指紋が付着すると視認性や光応答性などの光学特性を損なうものなどに適用することができる。
【0038】
本発明の耐指紋性塗料を塗布する方法は、特に限定されるものではなく、例えば、スプレー、ロールコーター、フローコーター、ディップコーター、バーコーター、刷毛塗り、静電塗装などの任意の方法を使用することができる。
【0039】
また本発明の耐指紋性塗料を塗布した後に硬化する方法についても特に限定されるものではなく、例えば、溶剤の揮発によって硬化させる方法、メラミンやイソシアネートなどの架橋性の硬化剤を用いて熱硬化させる方法、紫外線重合開始剤を添加して紫外線照射により硬化させる方法や、電子線照射によって硬化させる方法などを挙げることができる。
【実施例】
【0040】
次に、本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0041】
(実施例1)
主骨格における炭素原子に対する酸素原子の組成比が0.4、硬化前の重量平均分子量が4000、水酸基価が130mgKOH/gであるオイルフリーアルキド樹脂に、このオイルフリーアルキド樹脂の水酸基1に対してアミノ基の数が1.2となる配合量で、アミノ基を有するブチルメラミン樹脂を架橋性硬化剤として配合し、これをキシレンおよびブチルセロソルブを溶剤として混合することによって、耐指紋性を有する熱硬化性のオイルフリーアルキド塗料を得た。
【0042】
そして基材として厚み2mmで10cm角のガラス板を用い、その表面に#20のバーコーターで上記の塗料を塗布し、150℃で20分間加熱して塗料を硬化させることによって、膜厚20μmの塗膜を形成し、評価用サンプルを得た。
【0043】
(実施例2)
アクリル樹脂を重量比30%のオイルフリーアルキド樹脂で変性することにより、主骨格における炭素原子に対する酸素原子の組成比が0.07、水酸基価が110mgKOH/gのオイルフリーアルキド変性アクリル樹脂を得た。そしてこのオイルフリーアルキド変性アクリル樹脂に、このオイルフリーアルキド変性アクリル樹脂の水酸基1に対してアミノ基の数が1.2となる配合量で、アミノ基を有するブチルメラミン樹脂を架橋性硬化剤として配合し、これをキシレンおよびブチルセロソルブを溶剤として混合することによって、耐指紋性を有する熱硬化性のオイルフリーアルキド変性アクリルメラミン塗料を得た。
【0044】
そして実施例1と同様にガラス板にこの塗料を塗布して硬化させることによって、評価用サンプルを得た。
【0045】
(実施例3)
実施例1で得た熱硬化性のオイルフリーアルキドメラミン塗料に、HLBが15.3のポリオキシエチレンラウリルエーテルを固形分重量比で10%添加することにより、耐指紋性を有する熱硬化性の非イオン系界面活性剤含有オイルフリーアルキドメラミン塗料を得た。
【0046】
そして実施例1と同様にガラス板にこの塗料を塗布して硬化させることによって、評価用サンプルを得た。
【0047】
(実施例4)
実施例1と同じオイルフリーアルキド樹脂に、このオイルフリーアルキド樹脂の水酸基1に対してアミノ基の数が0.8となる配合量で、アミノ基を有するブチルメラミン樹脂を架橋性硬化剤として配合し、これをキシレンおよびブチルセロソルブを溶剤として混合することによって、耐指紋性を有する熱硬化性のオイルフリーアルキドメラミン塗料を得た。
【0048】
そして実施例1と同様にガラス板にこの塗料を塗布して熱硬化させることによって、表面評価用サンプルを得た。
【0049】
(実施例5)
実施例1と同じオイルフリーアルキド樹脂に、このオイルフリーアルキド樹脂の水酸基1に対してイソシアネート基の数が0.8となる配合量で、イソシアネート基を有するイソシアネート樹脂を架橋性硬化剤として配合し、これをキシレンおよびブチルセロソルブを溶剤として混合することによって、耐指紋性を有する常温硬化性のオイルフリーアルキドウレタン塗料を得た。
【0050】
そして基材として厚み2mmで10cm角のガラス板を用い、その表面に#20のバーコーターで上記の塗料を塗布し、常温で24時間放置して塗料を硬化させることによって、膜厚20μmの塗膜を形成し、耐指紋性付与鏡面仕上げ建材の表面を評価するためのサンプルを得た。
【0051】
(比較例1)
主骨格における炭素原子に対する酸素原子の組成比が0、水酸基価が100mgKOH/gであるアクリル樹脂に、このアクリルの水酸基1に対してアミノ基の数が1.2となる配合量で、アミノ基を有するブチルメラミン樹脂を架橋性硬化剤として配合し、これをキシレンおよびブチルセロソルブを溶剤として混合することによって、熱硬化性のアクリル塗料を得た。
【0052】
そして実施例1と同様にガラス板にこの塗料を塗布して硬化させることによって、評価用サンプルを得た。
【0053】
実施例1〜5及び比較例1で得た評価用サンプルを用い、塗膜のオレイン酸静止接触角と、水接触角、耐指紋性を測定した。
【0054】
オレイン酸静止接触角は、塗膜の表面に0.3mgのオレイン酸の液滴を着滴させた後5秒後の接触角を接触角計(協和界面(株)製「CA−DT」)を用いて測定した。
【0055】
また水静止接触角は、塗膜の表面に0.3mgの水滴を着滴させた後5秒後の接触角を接触角計(協和界面(株)製「CA−DT」)を用いて測定した。
【0056】
耐指紋性については、塗膜の表面に指紋を付着させた後、任意の入射角(受光面の法線が光の方向に対してなす角)で白色蛍光灯を光源とする光を指紋にあて、その正反射光を観察した際に、指紋を目視で確認できるようになる入射角の値によって評価を行った。耐指紋性が良好な場合は、指紋を目視で確認できる入射角の値が大きくなる。
【0057】
【表1】

【0058】
表1にみられるように、各実施例のものはいずれも比較例1に比べて、オレイン酸の接触角が小さく、また指紋を目視で確認できるようになる入射角が小さく、耐指紋性が優れていることが確認される。また、界面活性剤を配合した実施例3では表面の親水性が高まり、耐指紋性も向上することが確認される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗料構成成分として、主骨格における炭素原子に対する酸素原子の組成比が0.01以上0.5以下である樹脂を含有して成ることを特徴とする耐指紋性塗料。
【請求項2】
上記樹脂は、水酸基価が100mgKOH/g以上200mgKOH/g以下であることを特徴とする請求項1に記載の耐指紋性塗料。
【請求項3】
上記樹脂は、オイルフリーアルキド樹脂であって、硬化前の重量平均分子量が10000以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の耐指紋性塗料。
【請求項4】
上記樹脂は、アクリル樹脂であって、5%以上50%以下の重量比のオイルフリーアルキド樹脂で変性されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の耐指紋性塗料。
【請求項5】
上記樹脂の水酸基の数1に対してアミノ基の数が0.4以上0.95以下となる量で、メラミン硬化剤を含有して成ることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の耐指紋性塗料。
【請求項6】
上記樹脂の水酸基の数1に対してイソシアネート基の数が0.4以上0.95以下となる量で、イソシアネート系硬化剤を含有して成ることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の耐指紋性塗料。
【請求項7】
HLBが10以上18以下である非イオン系界面活性剤が固形分重量比率で5%以上含有されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の耐指紋性塗料。

【公開番号】特開2007−314609(P2007−314609A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−143304(P2006−143304)
【出願日】平成18年5月23日(2006.5.23)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】