説明

耐摩耗性コーティング組成物およびコーティングされた物品

【課題】一般式RM(OR’)z−x(式中、Rは有機基であり、Mはケイ素、アルミニウム、チタン、および/またはジルコニウムであり、各R’は、独立に、アルキル基であり、zはMの原子価であり、xはz未満の数値であり、かつゼロとすることができる)のアルコキシドを含む、コーティング組成物を提供すること。
【解決手段】このコーティング組成物は、カチオン硬化性である。そのようなコーティング組成物から堆積されるハードコートで少なくとも部分的にコーティングされた物品、プラスチック基材の少なくとも一部の上にハードコートを堆積するための方法、および基材の接着性および耐摩耗性を改善するための方法も開示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐摩耗性コーティング組成物に関する。より詳細には、本発明は、一般式RM(OR’)z−xのアルコキシドおよび1種または複数種のカチオン硬化触媒を含むゾルを含む耐摩耗性硬化性コーティング組成物に関する。このコーティング組成物は、プライマーを用いることなく、有機基材に対する良好な接着性を示すことができる。
【背景技術】
【0002】
透明プラスチック基材を含めたプラスチック基材は、いくつかの用途、とりわけ、例えば、光学部品、例えば、窓および風防ガラス、度のないレンズおよび視力を矯正する眼科用レンズ、液晶ディスプレーの外側画面など、陰極線管、例えば、テレビおよびコンピュータ用のビデオディスプレー管、透明ポリマーフィルム、航空機用透明材(aircraft transparency)、および家庭用電化製品などに望まれている。引っかき傷、ならびに他の形態の劣化を最小限にするために、透明な「ハードコート」が、基材に対する保護層として、多くの場合施される。ハードコートと基材との間の接着性を高めるために、プライマーが多くの場合用いられる。その耐摩耗特性を維持すると同時に、プライマーを用いることなく、これらの基材に接着するハードコートが望まれている。さらに、他にも理由はあるが、生産性のために、化学線に曝されると急速に硬化できるハードコートも望まれている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
ある特定の観点では、本発明は、一般式RM(OR’)z−x(式中、Rは有機基であり、Mはケイ素、アルミニウム、チタン、および/またはジルコニウムであり、各R’は、独立に、アルキル基であり、zはMの原子価であり、xはz未満の数値であり、かつゼロとすることができる)のアルコキシドを含み、カチオン硬化性であるコーティング組成物に関する。
【0004】
他の観点では、本発明は、ハードコートで少なくとも部分的にコーティングされた物品に関する。このハードコートは、一般式RM(OR’)z−x(式中、Rは有機基であり、Mはケイ素、アルミニウム、チタン、および/またはジルコニウムであり、各R’は、独立に、アルキル基であり、zはMの原子価であり、xはz未満の数値であり、かつゼロとすることができる)のアルコキシドを含み、カチオン硬化性であるコーティング組成物から堆積される。
【0005】
さらに他の観点では、本発明は、プラスチック基材の少なくとも一部の上にハードコートを堆積するための方法に関する。これらの方法は、(a)一般式RM(OR’)z−x(式中、Rは有機基であり、Mはケイ素、アルミニウム、チタン、および/またはジルコニウムであり、各R’は、独立に、アルキル基であり、zはMの原子価であり、xはz未満の数値であり、かつゼロとすることができる)のアルコキシドを少なくとも部分的に加水分解するステップ、(b)基材の少なくとも一部の上にコーティング組成物を堆積するステップ、および(c)カチオン硬化性であるコーティング組成物を硬化させることによって、基材の少なくとも一部の上にハードコートを形成するステップを含む。
【0006】
さらに他の観点では、本発明は、基材表面の少なくとも一部にコーティング組成物を施すことによって、基材の耐摩耗性を改善するための方法に関する。
例えば、本発明は以下を提供する:
(項目1)
一般式RM(OR’)z−x(式中、Rは有機基であり、Mはケイ素、アルミニウム、チタン、および/またはジルコニウムであり、各R’は、独立に、アルキル基であり、zはMの原子価であり、xはz未満の数値であり、かつゼロとすることができる)のアルコキシドを含み、カチオン硬化性であるコーティング組成物。
(項目2)
前記アルコキシドが、グリシドキシ[(C〜C)アルキル]トリ(C〜C)アルコキシシランモノマーおよび/またはテトラ(C〜C)アルコキシシランモノマーを含む、項目1に記載のコーティング組成物。
(項目3)
前記グリシドキシ[(C〜C)アルキル]トリ(C〜C)アルコキシシランモノマーが、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを含む、項目2に記載のコーティング組成物。
(項目4)
前記テトラ(C〜C)アルコキシシランモノマーが、テトラメトキシシランおよび/またはテトラエトキシシランを含む、項目2に記載のコーティング組成物。
(項目5)
触媒をさらに含む、項目1に記載のコーティング組成物。
(項目6)
前記触媒が、酸性物質ならびに/または化学線および/もしくは熱エネルギーに曝されると酸を生成する物質を含む、項目5に記載のコーティング組成物。
(項目7)
化学線に曝されると酸を生成する前記物質が、カチオン性光開始剤を含む、項目6に記載のコーティング組成物。
(項目8)
ポリグリシジルエーテル基含有化合物および/またはポリグリシジルエステル基含有化合物を含むポリエポキシ化合物をさらに含む、項目1に記載のコーティング組成物。
(項目9)
前記ポリエポキシ化合物が、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセロール、トリメチロールプロパン、および/またはビスフェノールAのジグリシジルエーテルを含む、項目8に記載のコーティング組成物。
(項目10)
前記ポリエポキシ化合物が、樹脂固体の全重量に基づいて、9から50重量パーセントの範囲の量で存在する、項目8に記載のコーティング組成物。
(項目11)
前記組成物が、フリーラジカル重合可能な材料を実質的に含まない、項目1に記載のコーティング組成物。
(項目12)
前記組成物が、フリーラジカル重合開始剤を実質的に含まない、項目1に記載のコーティング組成物。
(項目13)
項目1に記載のコーティング組成物から堆積されるハードコートで少なくとも部分的にコーティングされたプラスチック基材。
(項目14)
前記基材が、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリ(尿素)ウレタン、ポリチオウレタン、ポリチオ(尿素)ウレタン、および/またはポリオール(アリルカーボネート)材料を含む、項目13に記載のプラスチック基材。
(項目15)
前記基材が、セルロースアセテート、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリエステル、ポリウレタン、ポリチオウレタン、ポリカーボネート、そのコポリマー、および/またはその混合物を含むフィルムを含む、項目13に記載のプラスチック基材。
(項目16)
前記ハードコートが、間に介在するプライマー層を伴うことなく、前記基材上に直接堆積される、項目13に記載のプラスチック基材。
(項目17)
一般式RM(OR’)z−x(式中、Rは有機基であり、Mはケイ素、アルミニウム、チタン、および/またはジルコニウムであり、各R’は、独立に、アルキル基であり、zはMの原子価であり、xはz未満の数値であり、かつゼロとすることができる)のアルコキシドを含み、カチオン硬化性である、コーティング組成物から堆積されるハードコートで少なくとも部分的にコーティングされた物品。
(項目18)
前記コーティング組成物が、ポリグリシジルエーテル基含有化合物および/またはポリグリシジルエステル基含有化合物を含むポリエポキシ化合物を含む、項目17に記載の物品。
(項目19)
プラスチック基材の少なくとも一部の上にハードコートを堆積するための方法であって、
(a)一般式RM(OR’)z−x(式中、Rは有機基であり、Mはケイ素、アルミニウム、チタン、および/またはジルコニウムであり、各R’は、独立に、アルキル基であり、zはMの原子価であり、xはz未満の数値であり、かつゼロとすることができる)のアルコキシドを少なくとも部分的に加水分解するステップ、および
(b)前記基材の少なくとも一部の上に前記コーティング組成物を堆積するステップ、および
(c)カチオン硬化性である前記コーティング組成物を硬化させるステップ
を含む方法。
(項目20)
プラスチック基材の耐摩耗性を改善するための方法であって、
(a)一般式RM(OR’)z−x(式中、Rは有機基であり、Mはケイ素、アルミニウム、チタン、および/またはジルコニウムであり、各R’は、独立に、アルキル基であり、zはMの原子価であり、xはz未満の数値であり、かつゼロとすることができる)のアルコキシドを少なくとも部分的に加水分解するステップ、および
(b)前記基材の少なくとも一部の上に前記コーティング組成物を堆積するステップ、および
(c)カチオン硬化性である前記コーティング組成物を硬化させることによって、前記基材の少なくとも一部の上にハードコートを形成するステップ
を含む方法。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下の詳細な説明の目的に関して、本発明は、反対に特に指定された場合を除き、様々な代替の改変およびステップ順序を想定できる、ということが理解されるべきである。さらに、任意の使用例以外に、または他に示された場合、例えば、本明細書および特許請求の範囲において用いられる成分の量を表すすべての数値は、すべての場合において、用語「約」によって修飾されていると理解されるべきである。したがって、反対に示されていない限り、以下の明細書および添付の特許請求の範囲に示される数値パラメーターは、本発明によって得られる所望の特性に応じて変動し得る近似値である。最低限でも、および特許請求の範囲に対する均等物の原則の適用を限定する試みとしてではなく、それぞれの数値パラメーターは、報告される有効桁の数値を踏まえて、および通常の丸めの技法(rounding technique)を適用することによって、少なくとも解釈されるべきである。
【0008】
本発明の広い範囲を示す数値範囲およびパラメーターは近似値であることにもかかわらず、特定の実施例に示される数値は、可能な限り正確に報告される。しかし、あらゆる数値は、そのそれぞれの試験測定において見出される標準偏差に必然的に起因する、ある特定の誤差を本質的に含む。
【0009】
また、本明細書で述べられるあらゆる数値範囲は、そこに包含されるすべての部分範囲を含むことが意図されることが理解されるべきである。例えば、「1から10」の範囲は、述べられた最小値の1と述べられた最大値の10との間の(およびこれらの値を含む)、すなわち、1に等しいか、1を超える最小値および10に等しいか、10未満の最大値を有する、すべての部分範囲を含むことが意図される。
【0010】
本願では、他に特に明言されていない限り、単数形の使用は、複数形を含み、複数形は、単数形を包含する。例えば、限定することなく、本願は、「アルコキシド」を含むコーティング組成物に言及する。このような「アルコキシド」への言及は、1種のアルコキシドを含むコーティング組成物ならびに2種以上の異なるアルコキシドの混合物を含むコーティング組成物を包含することを意味する。さらに、本願では、「または」の使用は、他に特に明言されていない限り、「および/または」を意味するが、「および/または」は、ある特定の場合において明確に用いられる場合もある。
【0011】
示したように、本発明のある特定の実施形態は、コーティング組成物、例えば、ハードコートを生成するのに適したコーティング組成物などに関する。本明細書で用いる場合、用語「ハードコート」は、耐チップ性、耐衝撃性、耐摩耗性、耐UV劣化性、耐湿性、および/または耐化学性のうちの1つまたは複数を提供する、コーティング、例えば、透明コートなどを指す。
【0012】
ある特定の実施形態では、本発明のコーティング組成物は、一般式RM(OR’)z−x(式中、Rは有機基であり、Mはケイ素、アルミニウム、チタン、および/またはジルコニウムであり、各R’は、独立に、アルキル基であり、zはMの原子価であり、xはz未満の数値であり、かつゼロとすることができる)のアルコキシドを含む。適当な有機基の例として、それだけに限らないが、アルキル、ビニル、メトキシアルキル、フェニル、γ−グリシドキシプロピルおよびγ−メタクリロキシプロピルが挙げられる。アルコキシドは、当技術分野で知られている、他の化合物および/またはポリマーとさらに混合する、かつ/または反応させることができる。オルガノアルコキシシラン、例えば上記式の中のものなどを少なくとも部分的に加水分解することから形成されるシロキサンを含む組成物は、特に適している。適当なアルコキシド含有化合物およびその作製方法の例は、米国特許第6355189号;同第6264859号;同第6469119号;同第6180248号;同第5916686号;同第5401579号;同第4799963号;同第5344712号;同第4731264号;同第4753827号;同第4754012号;同第4814017号;同第5115023号;同第5035745号;同第5231156号;同第5199979号;および同第6106605号に記載されており、そのすべては、本明細書に参照により組み込まれている。
【0013】
ある特定の実施形態では、アルコキシドは、グリシドキシ[(C〜C)アルキル]トリ(C〜C)アルコキシシランモノマーおよび/またはテトラ(C〜C)アルコキシシランモノマーを含む。本発明のコーティング組成物中に用いるのに適したグリシドキシ[(C〜C)アルキル]トリ(C〜C)アルコキシシランモノマーとして、グリシドキシメチルトリエトキシシラン、α−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、α−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、β−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、β−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、α−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、α−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−グリシドキシプロピル−トリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、その加水分解産物またはそのようなシランモノマーの混合物が挙げられる。
【0014】
本発明のコーティング組成物中で、グリシドキシ[(C〜C)アルキル]トリ(C〜C)アルコキシシランと組み合わせて用いることのできる、適当なテトラ(C〜C)アルコキシシランとして、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラペンチルオキシシラン、テトラヘキシルオキシシランおよびその混合物などの材料が挙げられる。
【0015】
ある特定の実施形態では、本発明のコーティング組成物中で用いられるグリシドキシ[(C〜C)アルキル]トリ(C〜C)アルコキシシランモノマーおよびテトラ(C〜C)アルコキシシランモノマーは、0.5:1から100:1、例えば0.75:1から50:1など、および場合によって、1:1から5:1の、グリシドキシ[(C〜C)アルキル]トリ(C〜C)アルコキシシランとテトラ(C〜C)アルコキシシランの重量比で存在する。
【0016】
ある特定の実施形態では、アルコキシド(または上述したその2種以上の組合せ)は、組成物の全重量に基づいた重量パーセントで、5から75重量パーセント、例えば、10から70重量パーセントなど、または場合によって、20から65重量パーセント、またはさらに他の場合では、25から60重量パーセントの量で、コーティング組成物中に存在する。
【0017】
ある特定の実施形態では、本発明のコーティング組成物は、シリカナノ粒子および重合可能な(メタ)アクリレート結合剤を含むシリカゾルを含む。本明細書で用いる場合、用語「シリカゾル」は、本発明では、重合可能な(メタ)アクリレートを含む結合剤中に分散した微粉化シリカ粒子のコロイド分散系を指す。本明細書で用いる場合、用語「シリカ」は、SiOを指す。本明細書で用いる場合、用語「ナノ粒子」は、1ミクロン未満の平均第一粒径を有する粒子を指す。ある特定の実施形態では、本発明で用いられるナノ粒子は、300ナノメートル以下、例えば、200ナノメートル以下、または場合によっては100ナノメートル以下、またはさらに他の場合では、50ナノメートル以下、または場合によっては20ナノメートル以下の平均第一粒径を有する。
【0018】
本発明の目的に関して、平均粒径は、知られているレーザー散乱技法によって測定することができる。例えば、平均粒径は、Horiba Model LA 900レーザー回折粒度計を用いて決定することができ、これは、633nmの波長を有するヘリウム−ネオンレーザーを用いることによって粒子のサイズを測定し、粒子は球形を有すると想定し、すなわち、「粒径」は、粒子を完全に囲むことになる最小の球を指す。平均粒径は、粒子の代表的な試料の透過型電子顕微鏡(TEM)像の電子顕微鏡写真を視覚的に検査し、像内で粒子の直径を測定し、TEM像の拡大率に基づいて、測定した粒子の平均第一粒径を計算することによっても決定することができる。当業者は、そのようなTEM像を作製し、拡大率に基づいて第一粒径を決定する方法を理解するだろう。粒子の第一粒径は、粒子を完全に囲むことになる最小直径の球を指す。本明細書で用いる場合、用語「第一粒径(primary particle size)」は、粒子の凝集に反して、個々の粒子のサイズを指す。
【0019】
示したように、シリカゾルは、重合可能な(メタ)アクリレート結合剤を含む。本明細書で用いる場合、用語「(メタ)アクリレート」は、アクリレートおよびメタクリレートの両方を含むことを意味する。本発明のコーティング組成物中に存在するシリカゾル中の結合剤として用いるのに適した重合可能な(メタ)アクリレートとして不飽和(メタ)アクリレートモノマーおよびオリゴマー、例えば、モノ−、ジ−、トリ−、テトラ−、およびペンタ−(メタ)アクリレートなどが挙げられる。そのような材料の限定されない特定の例として、とりわけ、ヒドロキシエチルメタクリレート、トリメチロールプロパンホルマルアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、グリセリントリアクリレート、および/またはペンタエリトリトールテトラアクリレートが挙げられる。本発明で用いるのに適したシリカゾルは、市販されている。例として、Hanse chemie AG、Geesthacht、Germanyから入手可能なNanocryl(登録商標)製品目が挙げられる。これらの製品は、最大50重量%のシリカ含有量を有する低粘性ゾルである。
【0020】
本発明の実施形態では、コーティング組成物は、ポリエポキシ化合物、すなわち2個以上のエポキシ基を有する化合物をさらに含むことができる。そのような化合物として、例えば、ポリグリシジルエーテル基含有化合物および/またはポリグリシジルエステル基含有化合物を挙げることができる。ポリグリシジルエーテル化合物は、エピクロロヒドリンの、ビスフェノールAなどの多官能性フェノール、または15個以下の炭素原子を有する多官能性脂肪族もしくは脂環式アルコールとの反応により、二官能性フェノールのジグリシジルエーテル、二官能性アルコールのジグリシジルエーテル、三官能性アルコールのジグリシジルエーテル、三官能性アルコールのトリグリシジルエーテルなどを生成することによって調製することができる。そのような多官能性脂肪族または脂環式アルコールの例として、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセロール、ジグリセロール、エリトリトール、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ソルビトール、マンニトール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、1,4−ジヒドロキシメチルシクロヘキサンおよび2,2−ジ(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンを挙げることができる。
【0021】
ポリグリシジルエステル化合物は、エピクロロヒドリンの、8個以下の炭素を有する多官能性脂肪族または脂環式カルボン酸との反応により、ジカルボン酸のジグリシジルエステルを生成することによって調製することができる。そのようなカルボン酸の例として、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸およびヘキサヒドロテレフタル酸が挙げられる。
【0022】
コーティング組成物中に用いられるポリエポキシ化合物は、単独のポリグリシジルエーテル基含有化合物、ポリグリシジルエーテル基含有化合物の混合物、単独のポリグリシジルエステル基含有化合物、ポリグリシジルエステル基含有化合物の混合物、またはポリグリシジルエーテル基含有化合物およびポリグリシジルエステル基含有化合物の混合物とすることができる。本発明の特定の実施形態では、ポリエポキシ化合物は、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセロール、トリメチロールプロパン、および/またはビスフェノールAのジグリシジルエーテルを含む。そのような材料は、その開示が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第4211323号に記載されているように、エピクロロヒドリンの、多官能性アルコールまたはフェノールとの反応によって合成することができる。
【0023】
本発明のいくつかの実施形態では、ポリエポキシ化合物は、コーティング組成物中に存在することによって、コーティングの染色性(tintability)を高めることができる。そのような実施形態では、本発明のコーティング組成物中に存在することができるポリエポキシ化合物の量は、染色可能な(tintable)量である。染色可能な量は、硬化したコーティングが、本明細書で以下に説明される染色性試験において、1時間染色された後に、透過率において少なくとも50%の低減を示すように、コーティング組成物に加えるのに必要なポリエポキシ化合物の量であると、本明細書で定義される。
【0024】
本発明の目的に関して、本明細書で用いられる「染色性試験」は、基材に施されるコーティングの可染性を判定するための方法である。一般に、コーティングされた基材試料の初期透過率は、Hunterlab Colorimeterを用いて測定し、記録する。次いで、コーティングされた試料を、10%の黒色染料(BPI(BrainPower,Inc.)から市販されている)の水溶液の染料浴中に、197°Fから202°F(90℃から95℃)の範囲の温度で浸漬する。この試料を、この温度で、既定の期間浸漬し、次いで染料の残留物がなくなるまで、洗浄し、すすぐ。試料を乾燥させ、最終透過率を測定する。
【0025】
本発明の特定の実施形態では、染色可能量のポリエポキシ化合物により、染色性試験における染色の30分後に、少なくとも40パーセントの透過率までの低減、例えば、20分後に少なくとも30パーセントの透過率までの低減、または20分後に少なくとも20パーセントの透過率までの低減などを生じ得る。ポリエポキシ化合物の量は、9から50重量パーセント、例えば、12から40重量パーセント、または15から30重量パーセントなどの範囲とすることができ、重量パーセントは、組成物中に存在する樹脂固体の全重量に基づく。または、ポリエポキシ化合物の量は、列挙した範囲を含めた、これらの値の任意の組合せの間の範囲とすることができる。
【0026】
ある特定の実施形態では、コーティング組成物は、有機溶媒をさらに含むことができる。本発明のコーティング組成物中に存在する有機溶媒は、以下に述べるようなシランの加水分解によってin situで加えるか、または形成することができる。適当な有機溶媒は、コーティング組成物の固体成分を溶解または分散させるものである。コーティング組成物中に存在する最小量の溶媒は、溶媒和量、すなわち、コーティング組成物中の固体成分を可溶化するか、または分散させるのに十分な量である。適当な溶媒として、それだけに限らないが、以下のものが挙げられる。ベンゼン、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン、エタノール、テトラヒドロフルフリルアルコール、プロピルアルコール、プロピレンカーボネート、N−メチルピロリジノン、N−ビニルピロリジノン、N−アセチルピロリジノン、N−ヒドロキシメチルピロリジノン、N−ブチルピロリジノン、N−エチルピロリジノン、N−(N−オクチル)ピロリジノン、N−(n−ドデシル)ピロリジノン、2−メトキシエチルエーテル、キシレン、シクロヘキサン、3−メチルシクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸ブチル、テトラヒドロフラン、メタノール、プロピオン酸アミル、プロピオン酸メチル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、エチレングリコール、Union
CarbideによってCELLOSOLVE工業用溶媒として販売されている、エチレングリコールのモノ−およびジアルキルエーテル、およびその誘導体、Dow Chemicalによって、それぞれDOWANOL(登録商標)PMおよびPMA溶媒として販売されている、プロピレングリコールメチルエーテルおよびプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ならびにこのような列挙した溶媒の混合物。
【0027】
ある特定の実施形態では、アルコキシドは、他の組成物成分と組み合わせる前に、少なくとも部分的に加水分解することができる。そのような加水分解反応は、米国特許第6355189号のコラム3、7から28行に記載されており、その引用された部分は、本明細書に参照により組み込まれている。
【0028】
ある特定の実施形態では、加水分解性アルコキシド(複数も)の加水分解に必要な量で、水が提供される。例えば、ある特定の実施形態では、水は、1モルの加水分解性アルコキシド当たり少なくとも1.5モルの水の量で存在する。ある特定の実施形態では、十分な場合、大気水分で適切となり得る。他の実施形態では、加水分解触媒が存在することによって、加水分解縮合反応を触媒することができる。適当な加水分解触媒の限定されない例として、酸性物質、例えば、有機酸、無機酸、またはその混合物を挙げることができる。そのような物質の限定されない例として、酢酸、ギ酸、グルタル酸、マレイン酸、硝酸、塩酸、リン酸、フッ化水素酸、硫酸またはその混合物が挙げられる。
【0029】
例えば、ルイス酸および/またはブレンステッド酸などの、化学線および/または熱エネルギーに曝されると酸を生成する任意の物質を、本発明のコーティング組成物中で、加水分解縮合触媒として用いることができる。酸生成化合物の限定されない例として、オニウム塩およびヨードシル塩、芳香族ジアゾニウム塩、メタロセニウム塩、o−ニトロベンズアルデヒド、米国特許第3991033号に記載されている、ポリオキシメチレンポリマー、米国特許第3849137号に記載されている、o−ニトロカルビノールエステル、米国特許第4086210号に記載されている、o−ニトロフェニルアセタール、そのポリエステルおよびエンドキャップ誘導体(end−capped derivative)、スルホン酸エステルまたはスルホン酸エステル基に対してα位もしくはβ位にカルボニル基を含有する芳香族アルコール、芳香族アミドもしくはイミドのN−スルホニルオキシ誘導体、芳香族オキシムスルホネート、キノンジアジド、ならびに鎖中にベンゾイン基を含有する樹脂、例えば、米国特許第4368253号に記載されているものなどが挙げられる。これらの放射線活性酸触媒の例は、米国特許第5451345号にも開示されている。ある特定の実施形態では、加水分解縮合触媒として有用な酸生成化合物は、カチオン性光開始剤、例えばオニウム塩などを含む。そのような物質の限定されない例として、ジアリールヨードニウム塩およびトリアリールスルホニウム塩が挙げられ、これらは、Sartomer CompanyからSarCat(登録商標)CD−1012およびCD−1011として市販されている。他の適当なオニウム塩は、米国特許第5639802号のコラム8、59行からコラム10、46行に記載されている。そのようなオニウム塩の例として、4,4’−ジメチルジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、フェニル−4−オクチルオキシフェニルフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ドデシルジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、[4−[(2−テトラデカノール)オキシ]フェニル]フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネートおよびその混合物が挙げられる。
【0030】
本発明のコーティング組成物中に用いられる加水分解縮合触媒の量は、広く変動し、用いられる特定の材料に依存し得る。加水分解縮合反応を触媒および/または開始するのに必要な量、例えば触媒量のみが必要とされる。ある特定の実施形態では、酸性物質および/または酸生成物質は、組成物の全重量に基づいて、0.01から5重量パーセントの量で用いることができる。
【0031】
以前に述べたように、本発明のコーティング組成物は、カチオン硬化性である。すなわち、化合物は、カチオン硬化触媒を含むことにより、カチオン硬化または重合機構によって硬化される。適当な硬化触媒として、例えば、化学線での硬化が望まれる場合、上述した任意のカチオン性光開始剤、または例えば、熱エネルギーへの暴露での硬化が望まれる場合、潜在性酸触媒を挙げることができる。適当な潜在性酸触媒の例として、任意の様々な塩を挙げることができるが、ただし、加熱するとカチオンが少なくともある程度揮発し、それによって酸を生成するという条件がある。具体的な例として、それだけに限らないが、King Industriesからすべて市販されている、アンモニウムヘキサフルオロアンチモネート、SbFの四級塩(例えば、NACURE(登録商標)XC−7231)、SbFのt−アミン塩(例えば、NACURE(登録商標)XC−9223)、フリフル酸(friflic acid)のZn塩(例えば、NACURE(登録商標)A202およびA218)、トリフルオロメタンスルホン酸の四級塩(例えば、NACURE(登録商標)XC−A230)、およびトリフルオロメタンスルホン酸のジエチルアミン塩(例えば、NACURE(登録商標)A233)、および/またはその混合物が挙げられる。化学線および熱硬化の両方を用いる、二重硬化条件が望まれる場合、上述した硬化触媒の両方の種類を、本発明のコーティング組成物中に含めることができる。
【0032】
本発明のコーティング組成物は、当技術分野で周知の1種または複数種の標準的な添加剤、例えば、流動添加剤(flow additive)、レオロジー調節剤、界面活性剤、接着性促進剤なども含むことができる。ある特定の実施形態では、本発明のコーティング組成物は、UV吸収材を含む。
【0033】
ある特定の実施形態では、本発明のコーティング組成物は、引用した部分が、参照により本明細書に組み込まれている、米国特許出願第11/116552号の[0004]から[0007]に記載されている種類のオルガノシロキサンポリオールを含む。このような材料は、用いられる場合、コーティング組成物の全固体重量に基づいて、1から25重量パーセント、例えば、2から15または5から10重量パーセントの量で、コーティング組成物中に多くの場合存在する。
【0034】
ある特定の実施形態では、本発明のコーティング組成物は、任意のフリーラジカル重合可能な材料を実質的に含まないか、または場合によって、完全に含まない。そのような材料の例は、一官能性、二官能性、三官能性、四官能性、または五官能性モノマーまたはオリゴマー脂肪族、脂環式または芳香族(メタ)アクリレートである。本明細書で用いる場合、用語「実質的に含まない」は、考察中の材料は、仮にあったとしても、偶発的な不純物として組成物中に存在するだけであることを意味する。言い換えれば、この材料は、組成物の特性に影響しない。本明細書で用いる場合、用語「完全に含まない」は、この材料は、組成物中に全く存在しないことを意味する。
【0035】
ある特定の実施形態では、本発明のコーティング組成物は、任意のフリーラジカル重合開始剤を、実質的に含まないか、または場合によって、完全に含まない。そのような材料には、化学線に曝されるとフリーラジカルを形成する任意の化合物が含まれる。そのような材料の具体的な例は、ある特定の実施形態では、本発明のコーティング組成物に実質的にまたは完全に存在しないが、ベンゾイン、ベンジル、ベンジルケタール、アントラキノン、チオキサントン、キサントン、アクリジン誘導体、フェナゼン誘導体、キノキサリン誘導体、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−O−ベンゾイルオキシム、1−アミノフェニルケトン、1−ヒドロキシフェニルケトン、およびトリアジン化合物である。他のフリーラジカル重合開始剤は、ある特定の実施形態では、本発明のコーティング組成物に実質的にまたは完全に存在しないが、アセトフェノン、ベンジルケタールおよびベンゾイルホスフィンオキシドである。別の分類のフリーラジカル重合開始剤は、ある特定の実施形態では、本発明のコーティング組成物に実質的にまたは完全に存在しないが、化学線を吸収し、フリーラジカルを生成することのできる、イオン染料−対イオン化合物(ionic dye−counter ion compound)、例えば、欧州特許出願公開EP223587および米国特許第4751102号、同第4772530号および同第4772541号に記載されている材料などである。結果として、本発明のある特定の実施形態には、コーティング組成物の全重量に基づく重量パーセントで、1重量パーセント以下、または場合によって、0.5重量パーセント以下、またはさらに他の場合では、0.1重量パーセント以下のフリーラジカル重合開始剤しか含まれない。
【0036】
本発明のコーティング組成物は、任意の適当な方法によって調製することができ、本明細書の実施例は、そのような一方法を例示する。例えば、コーティング組成物は、上述したアルコキシドを少なくとも部分的に加水分解し、次いでこの少なくとも部分的に加水分解された材料にシリカゾルを加えることによって調製することができる。本発明のコーティング組成物は、任意の適当な基材に施すことができるが、多くの場合、基材は、熱可塑性基材などのプラスチック基材、例えば、ポリマー有機材料である。
【0037】
本発明のコーティング組成物のための基材として用いることのできるポリマー有機材料の例として、ポリマー、すなわち、ビス(アリルカーボネート)モノマー、ジエチレングリコールジメタクリレートモノマー、ジイソプロペニルベンゼンモノマー、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレートモノマー、エチレングリコールビスメタクリレートモノマー、ポリ(エチレングリコール)ビスメタクリレートモノマー、エトキシ化フェノールビスメタクリレートモノマー、アルコキシ化多価アルコールアクリレートモノマー、例えば、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレートモノマーなど、ウレタンアクリレートモノマー、例えば、米国特許第5373033号に記載されているものなど、およびビニルベンゼンモノマー、例えば、米国特許第5475074号に記載されているものなど、およびスチレンの、ホモポリマーおよびコポリマー;ポリマー、すなわち、一官能性(メタ)アクリレートモノマー、多官能性、例えば、二官能性または多官能性の、アクリレートおよび/またはメタクリレートモノマー、ポリ(C〜C12アルキルメタクリレート)、例えば、ポリ(メチルメタクリレート)など、ポリ(オキシアルキレン)ジメタクリレート、ポリ(アルコキシ化フェノールメタクリレート)、セルロースアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリウレタン、ポリチオウレタン、熱可塑性ポリカーボネート、ポリエステル、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリスチレン、ポリ(αメチルスチレン)、コポリ(スチレン−メチルメタクリレート)、コポリ(スチレン−アクリロニトリル)、ポリビニルブチラールの、ホモポリマーおよびコポリマー;ならびにポリマー、すなわち、ジアリリデンペンタエリトリトールのホモポリマーおよびコポリマー、特にポリオール(アリルカーボネート)モノマー、例えば、ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)、アクリレートモノマー、例えば、エチルアクリレート、ブチルアクリレートとのコポリマー、ならびにその混合物が挙げられる。ポリマー有機材料のさらなる例は、米国特許第5753146号のコラム8、62行からコラム10、34行に開示されており、その開示が参照により本明細書に組み込まれている。
【0038】
透明コポリマーおよび透明ポリマーのブレンドも、基材として適している。好ましくは、コーティング組成物のための基材は、熱可塑性ポリカーボネート樹脂、例えば、商標LEXANで販売されている、ビスフェノールAおよびホスゲンから得られるカーボネート結合樹脂など;ポリエステル、例えば、商標MYLARで販売されている材料など;ポリ(メチルメタクリレート)、例えば、商標PLEXIGLASで販売されている材料など;ポリオール(アリルカーボネート)モノマー、特に商標CR−39(登録商標)で販売されている、ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)の重合物(polymerizate)、ならびにポリオール(アリルカーボネート)、例えばジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)の、他の共重合可能なモノマー材料とのコポリマー、例えば、酢酸ビニルとのコポリマー、例えば80〜90パーセントのジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)と10〜20パーセントの酢酸ビニル、特に80〜85パーセントのビス(アリルカーボネート)と15〜20パーセントの酢酸ビニルとのコポリマー、ならびに米国特許第4360653号および同第4994208号に記載されているような、末端ジアクリレート官能性を有するポリウレタンとのコポリマーなどの重合物;米国特許第5200483号に記載されているような、その末端部分がアリルまたはアクリリル官能基を含有する、脂肪族ウレタンとのコポリマー;ポリ(酢酸ビニル)、ポリビニルブチラール、ポリウレタン、ポリチオウレタン;ジエチレングリコールジメタクリレートモノマー、ジイソプロペニルベンゼンモノマー、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレートモノマー、エチレングリコールビスメタクリレートモノマー、ポリ(エチレングリコール)ビスメタクリレートモノマー、エトキシ化フェノールビスメタクリレートモノマーおよびエトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレートモノマーからなる群のメンバーのポリマー;セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートブチレート、ポリスチレン、ならびにスチレンのメチルメタクリレート、酢酸ビニル、アクリロニトリルとのコポリマー、ならびにこれらの混合物から調製される、光学的に透明な重合有機材料である。
【0039】
本発明の特定の実施形態では、基材は、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリ(尿素)ウレタン、ポリチオウレタン、ポリチオ(尿素)ウレタン、および/またはポリオール(アリルカーボネート)材料を含む。本発明のさらなる実施形態では、プラスチック基材は、セルロースアセテート、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリエステル、ポリウレタン、ポリチオウレタン、ポリカーボネート、そのコポリマー、および/またはその混合物を含むフィルム、例えばキャストフィルムなどを含む。
【0040】
本発明のコーティング組成物の、光学的に透明な重合物、すなわち、光学的用途、例えば、光学有機樹脂モノマーから作製されるレンズ、すなわち、度のないレンズおよび眼科用レンズなどに適した材料との使用が、より詳細に企図されている。光学的に透明な重合物は、1.48から2.00、例えば、1.50から1.75または1.55から1.66の範囲の屈折率を有することができる。企図された一実施形態では、本明細書に以下に説明されるように、本発明による染色可能なコーティングは、ポリマー有機材料に施され、固定染料(static dye)、フォトクロミック化合物またはその混合物から選択される着色剤を吸収する。ポリマー有機材料は、レンズの形状である。
【0041】
以前に述べたように、染料または着色剤を、本発明の硬化したコーティング中に混合することができるが、ただし、硬化したコーティングは、当技術分野に記載される様々な方法によって「染色可能」であるという条件がある。そのような方法には、基材表面内に着色剤を溶解させるか、または分散させること、例えば、着色剤の熱溶液中に基材を浸漬することによる、もしくは基材表面上に着色剤を堆積させ、着色剤を基材中に熱的に移動させることによる、着色剤の基材中への吸収が含まれる。用語「吸収」または「吸収させる」は、着色剤の基材中への浸透、着色剤の基材中への溶媒補助移動吸収、気相移動および他のそのような移動機構を意味し、含む。
【0042】
本発明の硬化した染色可能なコーティング中に吸収させることのできる染料または着色剤として、固定染料、フォトクロミック化合物、またはその混合物が挙げられる。本明細書で用いる場合、用語の固定染料は、紫外光に曝しても実質的に色が変化しない、すなわち非フォトクロミック染料である。用いることのできる固定染料の分類は、それだけに限らないが、アゾ染料、アントロキノン染料(anthroquinone dye)、キサンテン染料、アジメ染料(azime dye)およびその混合物が挙げられる。固定染料および固定染料の組合せは、染色され、硬化したコーティングにおいて、所望の色お
よび可視光の透過率、例えば、染色性試験でHunter分光光度計を用いて測定された場合の、15パーセントの透過率を提供するのに十分な量で一般に存在する。染料は、染色可能なコーティング中に吸収させることによって、透過率を1または2パーセントから最大90パーセント(この範囲に入る任意の数値を含めて)低減することができる。
【0043】
フォトクロミック化合物は、紫外線を含めた放射線、例えば、太陽光または水銀ランプの光の中の紫外放射線などに曝されると可逆的な色の変化を示す。本発明のコーティング中で着色剤として用いられるフォトクロミック化合物は、単独で、または1種もしくは複数種の他の適切で相補的な有機フォトクロミック化合物、すなわち、400と700ナノメートルの範囲内に少なくとも1つの活性化吸収極大を有し、活性化されると適切な色調に変色する有機フォトクロミック化合物と組み合わせて用いることができる。
【0044】
有機フォトクロミック化合物として、ナフトピラン、例えば、ナフト[1,2−b]ピランおよびナフト[2,1−b]ピラン、キノピラン(quinopyran)、インデノナフトピラン、オキサジン、例えば、ベンゾオキサジン、ナフトオキサジンおよびスピロ(インドリン)ピリドベンゾオキサジン、フェナントロピラン、例えば、置換2H−フェナントロ[4,3−b]ピランおよび3H−フェナントロ[1,2−b]ピラン化合物、ベンゾピラン、例えば、ピラン環の2位に置換基を有するベンゾピラン化合物、金属−ジチオゾネート(metal−dithiozonate);フルギド、フルギミドおよびそのようなフォトクロミック化合物の混合物を挙げることができる。本発明の硬化したコーティングは、所望通りに、1種のフォトクロミック化合物、フォトクロミック化合物の混合物、またはフォトクロミック化合物と固定染料の混合物を吸収することができる。コーティング中に混合されるフォトクロミック化合物の量は、重要ではないが、ただし、活性化すると裸眼で認識できるフォトクロミック効果をもたらすのに十分な量が用いられるという条件がある。一般に、そのような量は、フォトクロミック量として示される。用いられる特定の量は、所望の色の強度、その光輝、およびフォトクロミック着色剤を混合するのに用いられる方法に多くの場合依存する。一般に、混合されるフォトクロミック化合物が多いほど、ある特定の限界まで色の強度は大きくなる。フォトクロミック化合物をポリマー基材中に混合するための方法は、米国特許第4286957号;同第4880667号;同第5789015号;および同第5975696号に開示されており、その開示は、参照により本明細書に組み込まれている。
【0045】
用いられる前述のフォトクロミック化合物の相対量は、変動し、そのような化合物の活性種の色の相対強度、最終的な所望の色、およびフォトクロミック着色剤のコーティングへの施用方法にある程度依存することになる。典型的な工業用の吸収プロセスでは、受容するコーティング中に混合される全フォトクロミック化合物の量は、フォトクロミック着色剤が、混合されるか、施される表面の1平方センチメートル当たり、約0.05から約2.0、例えば、0.2から約1.0ミリグラムの範囲となる場合がある。
【0046】
そのような基材にコーティング組成物を施す前に、基材表面を洗浄によって処理することができる。プラスチックについての有効な処理技法として、超音波洗浄;有機溶媒の水性混合物、例えば50:50のイソプロパノール:水またはエタノール:水の混合物を用いた洗浄;UV処理;活性ガス処理、例えば、低温プラズマまたはコロナ放電を用いた処理、および化学処理、例えば、ヒドロキシ化、すなわち、フルオロ界面活性剤も含有することのできる、アルカリ、例えば、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムの水溶液を用いた表面のエッチングなどが挙げられる。ポリマー有機材料の表面処理が記載され、その引用した部分が、参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第3971872号のコラム3、13から25行;米国特許第4904525号のコラム6、10から48行;および米国特許第5104692号のコラム13、10から59行を参照されたい。
【0047】
本発明のコーティング組成物は、例えば、フローコーティング、ディップコーティング、スピンコーティング、ロールコーティング、カーテンコーティングおよびスプレーコーティングを含めた、任意の従来のコーティング技法を用いて、基材に施すことができる。コーティング組成物の、基材への施用は、必要に応じて、粉塵または汚染物質を実質的に含まない環境、例えばクリーンルームで行うことができる。本発明のプロセスによって作製されるコーティングは、0.1から50ミクロン(μm)、例えば、2から20μmなど、および場合によって、2から10μm、例えば5μmの厚さの範囲とすることができる。
【0048】
本発明のコーティング組成物を基材に施した後、周囲温度で最大1時間、コーティングを光に曝し、次いで、用いられている特定のコーティングおよび/または基材に基づいて当業者が決定することのできる、適切な温度および時間でコーティングをベーキングすることなどによって、コーティングが硬化される。本明細書で用いる場合、用語「硬化した」および「硬化すること」は、硬化される、すなわち架橋されるように意図されたコーティングの成分の、少なくとも部分的な架橋を指す。ある特定の実施形態では、架橋密度、すなわち架橋の程度は、完全な架橋の35から100パーセントの範囲である。架橋の存在および程度、すなわち架橋密度は、様々な方法、例えば、その引用した部分が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第6803408号のコラム7、66行からコラム8、18行に記載されているような、Polymer Laboratories MK III DMTA分析計を用いた動的機械熱分析(DMTA)などによって求めることができる。
【0049】
ある特定の実施形態では、上述したように、化学線に曝されると酸を生成する物質が本発明のコーティング組成物中に存在する場合、このコーティング組成物は、熱的にコーティングを硬化した後に、熱硬化プロセスの間に同時に、または熱硬化プロセスの代わりに、コーティングされた基材に硬化量の紫外光を照射することによって、少なくとも部分的に硬化することができる。照射ステップの間、コーティングされた基材は、室温、例えば22℃に維持することができるか、または基材への損傷が起こる温度未満の高温に加熱することができる。
【0050】
基材表面にコーティング組成物を施した後、コーティングは硬化される。取扱い目的のために、コーティングされた基材は、最初に乾燥させ、次いで硬化してもよい。コーティングは、周囲温度または周囲より高いが硬化温度より低い温度、例えば最大80℃で乾燥させることができる。その後、乾燥した、コーティングされた表面を、30分から16時間の期間、80℃と130℃の間、例えば120℃に加熱することによって、コーティングを硬化させる。コーティングを乾燥および硬化するために様々な温度が提供されてきたが、本明細書に開示された温度以外の温度も用いることができることが、当業者によって認識されよう。コーティングを硬化するための追加の方法には、赤外、紫外、可視または電子放射線をコーティングに照射することが含まれる。
【0051】
コーティング組成物中に光重合開始剤が存在する場合、熱的にコーティングを硬化した後に、または熱硬化プロセスの間に同時に、コーティングされた基材に、硬化量の紫外光を照射することができる。照射ステップの間、コーティングされた基材は、室温、例えば22℃に維持することができるか、または基材への損傷が起こる温度未満の高温に加熱することができる。
【0052】
本発明のある特定の実施形態では、本発明のコーティング組成物を、基材にあらかじめ施された1つまたは複数のコーティング層に施すことができることが企図されている。そのようなあらかじめ施されるコーティング層は、例えば、フォトクロミックコーティング組成物、他の機能性コーティング剤、例えば、偏光コーティング剤、反射防止コーティング組成物、中間コーティング組成物、および/または追加の保護コーティング組成物などから堆積することができる。そのようなコーティングは、当技術分野において知られている。
【0053】
適当なフォトクロミックコーティング剤の限定されない例として、上述した任意のフォトクロミック材料を含むコーティング剤を挙げることができる。例えば、本明細書で限定しないが、フォトクロミックコーティング剤は、フォトクロミックポリウレタンコーティング剤、例えば、米国特許第6187444号に記載されたものなど;フォトクロミックアミノプラスト樹脂コーティング剤、例えば、米国特許第4756973号、同第6432544B1号および同第6506488号に記載されたものなど;フォトクロミックポリシランコーティング剤、例えば、米国特許第4556605号に記載されたものなど;フォトクロミックポリ(メタ)アクリレートコーティング剤、例えば、米国特許第6602603号、同第6150430号および同第6025026号、およびWIPO公開WO01/02449A2に記載されたものなど;ポリ無水物フォトクロミックコーティング剤、例えば、米国特許第6436525号に記載されたものなど;フォトクロミックポリアクリルアミドコーティング剤、例えば、米国特許第6060001号に記載されているものなど;フォトクロミックエポキシ樹脂コーティング剤、例えば、米国特許第4756973号および同第6268055B1号に記載されているものなど;ならびにフォトクロミックポリ(尿素−ウレタン)コーティング剤、例えば、米国特許第6531076号に記載されているものなどとすることができる。前述の米国特許および国際公開の明細書は、本明細書に参照により具体的に組み込まれている。
【0054】
本明細書で用いる場合、用語「中間コーティング」は、2つのコーティング間の特性に勾配をもたらすのに役立つコーティングを意味する。例えば、本明細書で限定しないが、中間コーティングは、比較的硬いコーティングと比較的柔らかいコーティングの間の硬さに勾配をもたらすのに役立ち得る。中間コーティングの限定されない例には、放射線硬化アクリレートベース薄手フィルムが含まれる。
【0055】
追加の保護コーティングの限定されない例として、オルガノシランを含む、追加の耐摩耗性コーティング、放射線硬化アクリレートベース薄手フィルムを含む耐摩耗性コーティング、無機材料、例えば、シリカ、チタニアおよび/またはジルコニアなどに基づいた耐摩耗性コーティング、紫外光硬化性である種類の有機耐摩耗性コーティング、酸素バリヤー性コーティング、UV遮蔽コーティング、ならびにその組合せを挙げることができる。例えば、限定されない一実施形態によれば、保護コーティングは、放射線硬化アクリレートベース薄手フィルムの第1のコーティングおよびオルガノシランを含む第2のコーティングを含むことができる。市販の保護コーティング製品の限定されない例として、それぞれSDC Coatings,Inc.およびPPG Industries,Inc.から入手可能なSILVUE(登録商標)124およびHI−GARD(登録商標)コーティング剤が挙げられる。
【0056】
以下の実施例は、本発明を例示しているが、本発明を、この実施例の細部に限定するものとして見なされるべきではない。別段の指定のない限り、以下の実施例において、ならびに本明細書全体にわたって、すべての部およびパーセンテージは重量による。
【実施例】
【0057】
(実施例1)
1.05グラムの70%硝酸を7000.00グラムのDI水と混合することによって希硝酸溶液を調製した。
【0058】
グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(1371.5グラム)およびテトラメトキシシラン(783.0グラム)を、撹拌機を備えた清潔な反応容器に加え、混合した。反応容器の内容物を、氷/水浴を用いて冷却した。反応容器中のシラン混合物の温度が、約10℃に到達したとき、あらかじめ希釈した硝酸溶液(676.5グラム)を、勢いよく撹拌しながら30分の期間にわたって加えた。あらかじめ希釈した硝酸の量は、シランを完全に加水分解するのに必要な、およそ化学量論量の水を含有していた。発熱反応の結果として、温度の上昇が観察された。氷/水浴により、最高反応温度を30〜35℃に保持した。最高温度に到達した後、反応容器の内容物を20〜25℃に冷却し、この温度で維持し、3時間撹拌した。この時間の後、25%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシドのメタノール溶液数滴を反応容器中に徐々に加えることによって、混合物のpHを5.5に調節した。Dowanol(登録商標)PMアセテート(557.0グラム)、Dowanol(登録商標)PMグリコールエーテル(557グラム)、BYK−306(5.2グラム)、および50%のトリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェート塩のプロピレンカーボネート溶液51.0グラムを、これに撹拌しながら加え、得られる混合物を30分間撹拌した。得られた溶液を、公称0.45ミクロンのカプセルフィルターを通して濾過し、使用するまで4℃で保管した。実施例1の溶液は、約40%の全固体量を有した。
【0059】
(実施例2)
適当な容器中で、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(全固体量で10重量パーセント)を、実施例1の溶液に混合しながら加えることによって、実施例2の溶液を作製した。
【0060】
(実施例3)
適当な容器に、実施例1の生成物(2012グラム)を加えた。Dowanol(登録商標)PMアセテート(282.0グラム)、Dowanol(登録商標)PMグリコールエーテル(282グラム)を、これに撹拌しながら加えた。得られた実施例3の溶液は、約30%の全固体量を有した。
【0061】
(実施例4)
グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(760.0グラム)を、撹拌機を備えた清潔な反応容器に加え、氷/水浴中に置いた。反応容器中のシランの温度が、約20℃に到達したとき、あらかじめ希釈した硝酸溶液(173.8グラム)を、勢いよく撹拌しながら加えた。発熱反応の結果として、温度の上昇が観察された。氷/水浴により、最高反応温度を30〜35℃に保持した。最高温度に到達した後、反応容器の内容物を20〜25℃に冷却し、この温度で維持し、3時間撹拌した。この時間の後、25%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシドのメタノール溶液数滴を反応容器中に徐々に加えることによって、混合物のpHを5.5に調節した。Dowanol(登録商標)PMアセテート(525.0グラム)、Dowanol(登録商標)PMグリコールエーテル(525グラム)、BYK−306(2.0グラム)、および50%のトリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェート塩のプロピレンカーボネート溶液20.0グラムを、これに撹拌しながら加え、得られた混合物を30分間撹拌した。得られた溶液を、公称0.45ミクロンのカプセルフィルターを通して濾過し、使用するまで4℃で保管した。実施例4の溶液は、約30%の全固体量を有した。
【0062】
(実施例5)
実施例3の溶液(25グラム)および実施例4の溶液(25グラム)を、適当な容器に加え、30分間撹拌することによって、実施例5の溶液を作製した。
【0063】
(実施例6)
Sola Optical USAからの、光学等級熱可塑性ポリカーボネート製の4個のコーティングされていないレンズ、およびPPG Industries,Inc.からの4つのTRIVEX(登録商標)レンズ材料を、せっけん水で洗浄し、脱イオン水ですすぎ、イソプロピルアルコールですすぎ、窒素ガス流下で乾燥させた。熱可塑性ポリカーボネートレンズは、直径65mmであり、TRIVEX(登録商標)レンズ材料のレンズは、直径78mmであった。
【0064】
PPG Industries,Inc.から入手可能な、CR−39(登録商標)モノマー製の4個のコーティングされていないレンズを、アセトンで浄化し、せっけん水で洗浄し、脱イオン水ですすぎ、50℃に維持された超音波浴中の12.5重量パーセントの水酸化ナトリウム溶液中に3分間浸漬し、続いて50℃に維持された脱イオン水を含む2つの超音波浴中ですすぎ、イソプロピルアルコールですすぎ、60℃に維持された対流オーブン中で乾燥させた。レンズは、直径70mmであった。
【0065】
熱可塑性ポリカーボネートのコーティングされていないレンズを、重量に基づいて10%のヘキサンジオールジアクリレートのDowanol(登録商標)PMグリコールエーテル溶液でコーティングした。レンズが1100rpmで回転している間に、レンズの中心の上に位置し、ヘキサンジオールジアクリレート溶液を供給しながら3から5秒の時間に端部へ移動するピペットから約3グラムのヘキサンジオールジアクリレート溶液を供給した。溶液の供給を開始した後、レンズを合計で11秒間回転させた。得られたコーティングされたレンズは、Fusion UV Systems,Inc.の装置で、紫外「タイプD」ランプ下で、1分当たり3フィートの速度のコンベヤーベルト上で支持しながら、それぞれのレンズを1cm当たり約2.5から5ジュールのUVA線量に曝して硬化させた。コーティングされたレンズを硬化するのに用いた紫外線量は、Electronic Instrumentation and Technology,Inc.からのUV Power PuckTM電気光学放射計によって測定した。次いでこのレンズを、ヘキサンジオールジアクリレートの溶液に用いた同じコーティング手順を用いて、実施例2の溶液でスピンコーティングした。
【0066】
TRIVEX(登録商標)レンズ材料およびCR−39(登録商標)モノマーで作製したコーティングされていないレンズを、ヘキサンジオールジアクリレートの溶液に用いた同じコーティング手順を用いて、実施例1の溶液でスピンコーティングした。
【0067】
実施例の溶液でコーティングされたすべてのレンズは、Fusion UV Systems,Inc.の装置で、紫外「タイプD」ランプ下、1分当たり3フィートの速度のコンベヤーベルト上で支持しながら硬化させた。それぞれのレンズは、UV Power
PuckTM電気光学放射計によって測定した場合で、約6J/cmのUVA線量に曝した。
【0068】
それぞれのレンズタイプの2個を、Bayer試験(COLTS(登録商標)LaboratoriesのSOP#L−11−10−06)に従ってBayer耐摩耗性について試験した。それぞれのレンズタイプの他の2個は、報告される結果が、試験レンズの初期と最終のパーセント曇り度の間の、パーセント曇り度の差異を表すことを除いて、スチールウール摩耗(COLTS(登録商標)LaboratoriesのSOP#L−11−12−05)に従ってスチールウール試験で耐摩耗性について試験した。前述の試験方法の両方は、参照により本明細書に組み込まれている。それぞれの試験について、対照すなわちコーティングされていないレンズを含めた。試験結果を表1に示す。
【0069】
【表1】

それぞれのレンズ材料の2個の試料について、表1に記載したBayer摩耗試験の試験結果は、CR−39(登録商標)モノマーから作製したホモポリマー製のコーティングされていないレンズのパーセント曇り度を、コーティングされた試験レンズのパーセント曇り度で除することによって計算した。得られた数値は、CR−39(登録商標)モノマーのコーティングされていないレンズと比較して、コーティングされた試験レンズが、どの程度より耐摩耗性であるかを示す。実施例1および2でコーティングされた試料についての結果は、より高いBayer摩耗結果を示し、CR−39(登録商標)モノマーのレンズ材料ならびに他のコーティングされていないレンズ材料よりも、摩耗に対する高い耐性を示している。
【0070】
実施例1および2でコーティングされた試料について報告したスチールウール試験の試験結果は、コーティングされていないレンズ材料よりも、初期パーセント曇り度と最終パーセント曇り度との間のより小さいパーセント曇り度の差異の展開を示した。
【0071】
表2において、以下のことを除いて、上述した同じ手順を用いてコーティングしたCR−39(登録商標)製のレンズについて、Bayer試験結果ならびにスチールウール試験結果を報告する。2個ではなく、1個のレンズを、実施例3、4および5でコーティングし、1個の対照(コーティングされていない)レンズを含め、スチールウール試験において、5.0ポンド(2.3kg)の加重の代わりに、6.8ポンド(3.1kg)の加重を用いた。
【0072】
【表2】

実施例3、4および5でコーティングされた試料について、Bayer摩耗試験の試験結果は、コーティングされていない対照レンズよりも、高い耐摩耗性を示し、スチールウール試験において、より小さいパーセント曇り度の差異の展開を示した。
【0073】
(実施例5)
以下の材料のそれぞれの3インチ×3インチ(7.62cm×7.62cm)フィルム×10ミル(254.0ミクロン)の2つの試料を、1分当たり100ミリリットル(mL)の酸素の流速、100ワットの電力で、1分間、酸素プラズマで処理し、次いで、実施例3の溶液でコーティングした:XYLEX(登録商標)7300CL(GEからポリカーボネート/ポリカプロラクトンであると報告されている);TAC(LOFOからセルローストリアセテートであると報告されている);CAB K7874(Kodakからポリビニルアルコールフィルムに積層したセルロースアセテートブチレートフィルムであると報告されている)のセルロースアセテートブチレートフィルム側への施用;およびCAB K7874のポリビニルアルコールフィルム側の施用。実施例3の溶液は、フィルムを9秒間回転させたことを除いて、先に述べた手順に従って施した。コーティングされたフィルムは、400ワット/インチのヨウ化ガリウム水銀ランプの下を、1分当たり6フィート(1分当たり0.183m)で移動する、EYE Ultraviolet Conveyorラインで紫外放射線に曝すことによって硬化させた。Eye装置の第1のランプはオフにし、コンベヤーの上7.0インチに位置した第2のランプは、Highに設定した。UV Power PuckTM電気光学放射計によって測定した場合の、コーティングされたフィルムを硬化させるのに用いたUVA紫外線量は、0.5から1.0ジュール/cmであった。比較目的のために、硬化したさらなるコーティングを有さないXYLEX(登録商標)7300CLのフィルムを、比較例1として含めた。
【0074】
実施例3の溶液でコーティングされたフィルムおよび比較例(CE)1のフィルムを、上述したColts Laboratories手順による、Bayer耐摩耗性およびスチールウール摩耗ならびにASTM D−3359−93のテープ試験によって接着性を測定するための標準試験法−方法B(Standard Test Method for Measuring Adhesion by Tape Test−Method B)による初期接着性について試験した。2枚のフィルムに対する試験結果の算術平均を表3に報告する。
【0075】
【表3】

実施例3の溶液でコーティングされたXYLEX(登録商標)7300CLについての試験結果は、比較実施例(CE)1として試験したコーティングされていないフィルムよりも、高いレベルのBayer耐摩耗性および曇り度における低いパーセント変化を示した。実施例3でコーティングされた他のフィルムも同程度に高いBayer耐摩耗性および低いスチールウール試験結果を示した。それぞれのコーティングされたフィルムは、初期接着性試験に合格した。これは、ASTM D 3359−97の12.9節に記載されている「5B」の評点に等しい。
【0076】
前述の説明において開示した概念から逸脱することなく、本発明に対して改変を行うことができることが、当業者によって容易に理解されよう。そのような改変は、特許請求の範囲で、その言語によって、別に特に明言されていない限り、添付の特許請求の範囲内に含まれると見なされるべきである。したがって、本明細書に詳細に説明した特定の実施形態は、例示的であるだけであり、添付の特許請求の範囲の全範囲およびそのあらゆる均等物に与えられる本発明の範囲を限定しない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載される発明。

【公開番号】特開2012−52141(P2012−52141A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−263603(P2011−263603)
【出願日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【分割の表示】特願2009−504387(P2009−504387)の分割
【原出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(599087017)ピーピージー インダストリーズ オハイオ,インコーポレイテッド (267)
【Fターム(参考)】