説明

耐水化アルミニウム顔料および耐水化アルミニウム顔料分散液、それらを含有する水性インク組成物、ならびに耐水化アルミニウム顔料分散液の製造方法

【課題】水性塗料や水性インク組成物に配合された時の白色化を防止すると共に、水分散性および金属光沢性に優れたアルミニウム顔料およびそれを含有する分散液を提供する。
【解決手段】本発明に係る耐水化アルミニウム顔料分散液の製造方法は、(a)有機溶媒中にアルミニウム顔料を分散させたアルミニウム顔料分散液中に、下記一般式(1)で示される化合物を含有する処理剤を加えて、前記アルミニウム顔料の表面に被膜を形成する工程と、(b)前記有機溶媒のうち少なくとも一部を除去する工程と、(c)ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルおよびその塩から選択される少なくとも1種を含有する水溶液を添加する工程と、を含むことを特徴とする。
【化12】


(式中、pは1〜3の整数を表し、qはp+q=3の関係を満たす整数を表し、rは2〜10の整数を表す。RおよびRは、それぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基を表し、Rは、アクリル基、アクリロイル基またはメタアクリロイル基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐水化アルミニウム顔料および耐水化アルミニウム顔料分散液、それらを含有する水性インク組成物、ならびに耐水化アルミニウム顔料分散液の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷物上に金属光沢を有する塗膜を形成する手法として、真鍮、アルミニウム微粒子等から作製された金粉、銀粉を顔料に用いた印刷インキや金属箔を用いた箔押し印刷、金属箔を用いた熱転写方式等が用いられてきた。
【0003】
近年、印刷におけるインクジェットへの応用例が数多く見受けられ、その中の一つの応用例としてメタリック印刷があり、金属光沢を有するインクの開発が進められている。例えば、特許文献1には、アルキレングリコール等の有機溶媒をベースとしたアルミニウム顔料分散液およびそれを含有する非水系インク組成物が開示されている。
【0004】
その一方で、地球環境面および人体への安全面等の観点から、有機溶媒をベースとした非水系インク組成物よりも水系インク組成物の開発が望まれているという実態がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−174712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、アルミニウム顔料は、水中に分散させると水との反応により水素ガスを発生すると共に、アルミナを形成することで白色化し金属光沢が損なわれるという問題があった。そのため、アルミニウム顔料を含有するインク組成物は、水をほとんど含有しない有機溶媒をベースとしたものにせざるを得なかった。
【0007】
本発明に係る幾つかの態様は、上記課題を解決することで、水性塗料や水性インク組成物に配合された時の白色化を防止すると共に、水分散性および金属光沢性に優れた耐水化アルミニウム顔料および耐水化アルミニウム顔料分散液を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現することができる。
【0009】
[適用例1]
本発明に係る耐水化アルミニウム顔料分散液の製造方法の一態様は、
(a)有機溶媒中にアルミニウム顔料を分散させたアルミニウム顔料分散液中に、下記一般式(1)で示される化合物を含有する処理剤を加え、前記アルミニウム顔料の表面に存在する水酸基と前記一般式(1)で示される化合物とを反応させて、前記アルミニウム顔料の表面に被膜を形成する工程と、
(b)前記有機溶媒のうち少なくとも一部を除去する工程と、
(c)ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルおよびその塩から選択される少なくとも1種を含有する水溶液を添加する工程と、
を含むことを特徴とする。
【0010】
【化1】

(式中、pは1〜3の整数を表し、qはp+q=3の関係を満たす整数を表し、rは2〜10の整数を表す。RおよびRは、それぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基を表し、Rは、アクリル基、アクリロイル基またはメタアクリロイル基を表す。)
【0011】
[適用例2]
適用例1の耐水化アルミニウム顔料分散液の製造方法において、前記処理剤は、さらに、アルコキシアルキルシランと、水と、を含有することができる。
【0012】
[適用例3]
適用例1または適用例2の耐水化アルミニウム顔料分散液の製造方法において、前記アルミニウム顔料は、5nm以上30nm以下の平均厚みを有し、かつ、0.5μm以上3μm以下の50%平均粒子径を有する平板状粒子であることができる。
【0013】
[適用例4]
適用例1ないし適用例3のいずれか一例の耐水化アルミニウム顔料分散液の製造方法において、前記被膜の厚さは、0.5nm以上10nm以下であることができる。
【0014】
[適用例5]
適用例1ないし適用例4のいずれか一例の耐水化アルミニウム顔料分散液の製造方法において、前記有機溶媒は、ジエチレングリコールジエチルエーテルまたはトリエチレングリコールモノブチルエーテルであることができる。
【0015】
[適用例6]
本発明に係る耐水化アルミニウム顔料分散液の一態様は、
下記一般式(1)で示される化合物を含有する処理剤でアルミニウム顔料を表面処理することにより、少なくともケイ素を含有する膜で被覆された耐水化アルミニウム顔料が、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルおよびその塩から選択される少なくとも1種を含有する水溶液中に分散されてなることを特徴とする。
【0016】
【化2】

(式中、pは1〜3の整数を表し、qはp+q=3の関係を満たす整数を表し、rは2〜10の整数を表す。RおよびRは、それぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基を表し、Rは、アクリル基、アクリロイル基またはメタアクリロイル基を表す。)
【0017】
[適用例7]
適用例6の耐水化アルミニウム顔料分散液において、前記処理剤は、さらに、アルコキシアルキルシランと、水と、を含有することができる。
【0018】
[適用例8]
適用例6または適用例7の耐水化アルミニウム顔料分散液において、前記ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルおよびその塩から選択される少なくとも1種の含有量は、前記アルミニウム顔料の含有量に対して、0.3倍以上7.0倍以下であることができる。
【0019】
[適用例9]
適用例6ないし適用例8のいずれか一例の耐水化アルミニウム顔料分散液において、前記アルミニウム顔料は、5nm以上30nm以下の平均厚みを有し、かつ、0.5μm以上3μm以下の50%平均粒子径を有する平板状粒子であることができる。
【0020】
[適用例10]
適用例6ないし適用例9のいずれか一例の耐水化アルミニウム顔料分散液において、前記ケイ素を含有する膜の厚さは、0.5nm以上10nm以下であることができる。
【0021】
[適用例11]
本発明に係る耐水化アルミニウム顔料の一態様は、
少なくとも下記一般式(1)で示される化合物がアルミニウム顔料の表面に化学的に結合した構造を有し、さらにポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルおよびその塩から選択される少なくとも1種を含有することを特徴とする。
【0022】
【化3】

(式中、pは1〜3の整数を表し、qはp+q=3の関係を満たす整数を表し、rは2〜10の整数を表す。RおよびRは、それぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基を表し、Rは、アクリル基、アクリロイル基またはメタアクリロイル基を表す。)
【0023】
[適用例12]
適用例11の耐水化アルミニウム顔料において、前記アルミニウム顔料の表面に、さらにアルコキシアルキルシランが化学的に結合した構造を有することができる。
【0024】
[適用例13]
適用例11または適用例12の耐水化アルミニウム顔料において、前記アルミニウム顔料は、5nm以上30nm以下の平均厚みを有し、かつ、0.5μm以上3μm以下の50%平均粒子径を有する平板状粒子であることができる。
【0025】
[適用例14]
適用例11ないし適用例13のいずれか一例の耐水化アルミニウム顔料において、X線光電子分光法(XPS)による元素分析において、光電子取出し角度を高角度にするにつれて、ケイ素の検出割合が同等または増加するものであることができる。
【0026】
[適用例15]
適用例14の耐水化アルミニウム顔料において、前記ケイ素の検出割合は、0.01%以上1%以下の範囲内であることができる。
【0027】
[適用例16]
適用例11ないし適用例15のいずれか一例の耐水化アルミニウム顔料において、ゼータ電位が負電位であり、かつ、前記ゼータ電位の絶対値が50mV以上80mV以下であることができる。
【0028】
[適用例17]
本発明に係る水性インク組成物の一態様は、適用例6ないし適用例10に記載の耐水化アルミニウム顔料分散液または適用例11ないし適用例16に記載の耐水化アルミニウム顔料を含有することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】XPS測定における光電子取出し角度を模式的に示した概念図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に本発明の好適な実施の形態について説明する。以下に説明する実施の形態は、本発明の一例を説明するものである。また、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形例も含む。なお、以下の明細書中において、「化学的に結合した」とは、アルミニウム顔料の表面に存在する水酸基と、下記一般式(1)で示される化合物および/またはアルコキシアルキルシランのアルコキシル基と、が加水分解反応により結合したことを意味する。
【0031】
1.耐水化アルミニウム顔料分散液の製造方法
本発明の一実施の形態に係る耐水化アルミニウム顔料分散液の製造方法は、
(a)有機溶媒中にアルミニウム顔料を分散させたアルミニウム顔料分散液中に、下記一般式(1)で示される化合物を含有する処理剤を加え、前記アルミニウム顔料の表面に存在する水酸基と下記一般式(1)で示される化合物とを反応させて、前記アルミニウム顔料の表面に被膜を形成する工程と、
(b)前記有機溶媒のうち少なくとも一部を除去する工程と、
(c)ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルおよびその塩から選択される少なくとも1種を含有する水溶液を添加する工程と、を含むことを特徴とする。
【0032】
【化4】

(式中、pは1〜3の整数を表し、qはp+q=3の関係を満たす整数を表し、rは2〜10の整数を表す。RおよびRは、それぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基を表し、Rは、アクリル基、アクリロイル基またはメタアクリロイル基を表す。)
【0033】
以下、本実施の形態に係る耐水化アルミニウム顔料分散液の製造方法の一例について説明する。
【0034】
1.1.工程(a)
まず、下記の(1)ないし(2)の工程により、有機溶媒中にアルミニウム顔料を分散させたアルミニウム顔料分散液を調製する。
【0035】
(1)まず、シート状基材面に剥離用樹脂層とアルミニウムまたはアルミニウム合金層(以下、単に「アルミニウム層」という。)とが、順次積層された構造からなる複合化顔料原体を用意する。
【0036】
前記シート状基材としては、特に制限されないが、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルフィルム、ナイロン66、ナイロン6等のポリアミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、トリアセテートフィルム、ポリイミドフィルム等の離型性フィルムが挙げられる。これらのうち、ポリエチレンテレフタレートまたはその共重合体が好ましい。
【0037】
前記シート状基材の厚さは、特に制限されないが、好ましくは10〜150μmである。10μm以上であれば、工程等で取扱い性に問題がなく、150μm以下であれば、柔軟性に富み、ロール化、剥離等に問題がない。
【0038】
前記剥離用樹脂層は、アルミニウム層のアンダーコート層であり、シート状基材面との剥離性を向上させるための剥離性層である。この剥離用樹脂層に用いる樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、セルロース誘導体、アクリル酸重合体または変性ナイロン樹脂が好ましい。
【0039】
前記例示した樹脂の1種または2種以上の混合物の溶液をシート状基材に塗布し乾燥させることにより、剥離用樹脂層を形成することができる。塗布後は、粘度調整剤等の添加剤を添加することもできる。
【0040】
前記剥離用樹脂層の塗布は、一般的に用いられているグラビア塗布、ロール塗布、ブレード塗布、エクストルージョン塗布、ディップ塗布、スピンコート法等の公知の技術を用いることができる。塗布・乾燥後、必要であればカレンダー処理により表面の平滑化を行うことができる。
【0041】
剥離用樹脂層の厚さは、特に制限されないが、好ましくは0.5〜50μmであり、より好ましくは1〜10μmである。0.5μm未満では分散樹脂としての量が不足し、50μmを超えるとロール化した場合、アルミニウム層との界面で剥離しやすいものとなってしまう。
【0042】
前記剥離用樹脂層に前記アルミニウム層を積層させる手段としては、真空蒸着、イオンプレーティングまたはスパッタリング法を適用することが好ましい。
【0043】
また、前記アルミニウム層は、特開2005−68250号公報に例示されるように、保護層で挟まれていてもよい。該保護層としては、酸化ケイ素層、保護用樹脂層が挙げられる。
【0044】
前記酸化ケイ素層は、酸化ケイ素を含有する層であれば特に制限されるものではないが、ゾルゲル法によって、テトラアルコキシシラン等のシリコンアルコキシドまたはその重合体から形成されたものであることが好ましい。シリコンアルコキシドまたはその重合体を溶解したアルコール溶液を塗布し、加熱焼成することにより、酸化ケイ素層の塗膜を形成する。
【0045】
前記保護用樹脂層としては、分散媒に溶解しない樹脂であれば特に制限されるものではないが、例えば、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、セルロース誘導体等が挙げられる。これらのうち、ポリビニルアルコールまたはセルロース誘導体から形成されることが好ましい。
【0046】
前記例示した樹脂1種または2種以上の混合物の水溶液を塗布し乾燥させると、前記保護用樹脂層を形成することができる。塗布液には、粘度調整剤等の添加剤を添加することができる。前記酸化ケイ素および樹脂の塗布は、前記剥離用樹脂層の塗布と同様の手法により行われる。
【0047】
前記保護層の厚さは、特に制限されないが、50〜150μmの範囲が好ましい。50μm未満では機械的強度が不足であり、150μmを超えると強度が高くなりすぎるため粉砕・分散が困難となり、またアルミニウム層との界面で剥離してしまう場合がある。
【0048】
また、特開2005−68251号公報に例示されるように、前記「保護層」と「アルミニウム層」との間に色材層を有していてもよい。色材層は、任意の着色複合顔料を得るために導入するものであり、本実施の形態に使用するアルミニウム顔料の金属光沢、光輝性、背景隠蔽性に加え、任意の色調、色相を付与できる色材を含有できるものであれば特に制限されるものではない。この色材層に用いる色材としては、染料、顔料のいずれでもよい。また、染料、顔料としては、公知のものを適宜使用することができる。
【0049】
この場合、色材層に用いられる「顔料」とは、一般的な工学の分野で定義される、天然顔料、合成有機顔料、合成無機顔料等を意味する。
【0050】
前記色材層の形成方法としては、特に制限されないが、コーティングにより形成することが好ましい。また、色材層に用いられる色材が顔料の場合は、色材分散用樹脂をさらに含むことが好ましく、該色材分散用樹脂としては、顔料と、色材分散用樹脂と、必要に応じてその他の添加剤等と、を溶媒に分散または溶解させ、溶液としてスピンコートで均一な液膜を形成した後、乾燥させて樹脂薄膜として作製されることが好ましい。なお、複合化顔料原体の製造において、前記の色材層と保護層の形成がともにコーティングにより行われることが、作業効率上好ましい。
【0051】
前記複合化顔料原体としては、前記剥離用樹脂層とアルミニウム層との順次積層構造を複数有する層構成も可能である。その際、複数のアルミニウム層からなる積層構造の全体の厚み、すなわち、シート状基材とその直上の剥離用樹脂層を除いた、アルミニウム層−剥離用樹脂層−アルミニウム層、または剥離用樹脂層−アルミニウム層の厚みは5000nm以下であることが好ましい。5000nm以下であると、複合化顔料原体をロール状に丸めた場合でも、ひび割れ、剥離を生じ難く、保存性に優れる。また、顔料化した場合においても金属光沢性に優れており好ましい。また、シート状基材面の両面に、剥離用樹脂層とアルミニウム層とが順次積層された構造も挙げられるが、これらに制限されるものではない。
【0052】
(2)次いで、前記複合化顔料原体を有機溶媒中で、前記複合化顔料原体のシート基材面と剥離用樹脂層との界面を境界として剥離し、それを粉砕または微細化処理することにより、粗大粒子を含むアルミニウム顔料分散液を調製する。さらに、得られたアルミニウム顔料分散液をろ過し粗大粒子を除去することで、アルミニウムの平板状粒子を含有するアルミニウム顔料分散液を得ることができる。
【0053】
前記有機溶媒としては、アルミニウム顔料の分散安定性や、前記一般式(1)で示される化合物との反応性を損なわないものであれば制限されないが、極性有機溶媒であることが好ましい。極性有機溶媒としては、例えば、アルコール類(メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、イソプロピルアルコール、フッ化アルコール等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等)、カルボン酸エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等)、エーテル類(ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等)等が挙げられる。
【0054】
以上例示した極性有機溶媒の中でも、常温常圧下で液体であるアルキレングリコールモノエーテルまたはアルキレングリコールジエーテルであることがより好ましい。
【0055】
アルキレングリコールモノエーテルとしては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられる。
【0056】
アルキレングリコールジエーテルとしては、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル等が挙げられる。
【0057】
これらの中でも、アルミニウム顔料の分散安定性に優れる観点から、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルであることがさらに好ましい。また、アルミニウム顔料の光沢性および耐水性を付与する観点から、ジエチレングリコールジエチルエーテルであることが特に好ましい。
【0058】
前記シート状基材からの剥離処理法としては、特に制限されないが、前記複合化顔料原体を液体中に浸漬することによりなされる方法や、液体中に浸漬すると同時に超音波処理を行い剥離処理と剥離した複合化顔料の粉砕処理を行う方法が好ましい。
前記のようにして得られた平板状粒子からなるアルミニウム顔料は、剥離用樹脂層が保護コロイドの役割を有し、有機溶媒中での分散処理を行うだけで安定な分散液を得ることが可能である。また、該アルミニウム顔料をインク組成物に用いる場合には、前記剥離用樹脂層由来の樹脂が記録媒体に対する接着性を高める機能も担うことができる。
以上の工程により得られたアルミニウム顔料分散液中のアルミニウム顔料の形状は、良好な耐水性を付与する観点および良好な金属光沢性を有する観点から平板状粒子であることが好ましい。
【0059】
ここで、「平板状粒子」とは、アルミニウム粒子の平面上の長径をX、短径をY、厚みをZとした場合、略平坦な面(X−Y平面)を有し、かつ、厚み(Z)が略均一である粒子をいう。より詳しくは、該アルミニウム粒子の略平坦な面(X−Y平面)の面積より求めた円相当径の50%平均粒子径R50(以下、単に「R50」ともいう)が0.5μm〜3μmであって、かつ、厚み(Z)が5nm〜30nmであることを満たすものをいう。
【0060】
「円相当径」とは、アルミニウム粒子の略平坦な面(X−Y平面)を、該アルミニウム粒子の投影面積と同じ投影面積を持つ円と想定したときの当該円の直径である。例えば、アルミニウム粒子の略平坦な面(X−Y平面)が多角形である場合、その多角形の投影面を円に変換して得られた当該円の直径を、そのアルミニウム粒子の円相当径という。
【0061】
R50は、良好な金属光沢性および印字安定性を確保する観点から、好ましくは0.5μm〜3μmであることが好ましく、0.75μm〜2μmであることがより好ましい。R50が0.5μm未満の場合には、金属光沢が不足することがある。一方、R50が3μmを超える場合、印字安定性が低下することがある。
【0062】
前記平板状粒子の略平坦な面(X−Y平面)の面積より求めた円相当径の最大粒子径は、10μm以下であることが好ましい。最大粒子径を10μm以下にすることで、インクジェット記録装置のノズルや、インク流路内に設けられた異物除去フィルター等に該平板粒子が目詰まりすることを防止することができる。
【0063】
前記平板状粒子の平面上の長径X、短径Y、円相当径は、粒子像分析装置を用いて測定することができる。粒子像分析装置としては、例えば、フロー式粒子像分析装置FPIA−2100、FPIA−3000、FPIA−3000S(以上、シスメックス株式会社製)が挙げられる。
【0064】
前記平板状粒子の粒度分布(CV値)は、下記式(2)より求めることができる。
CV値=粒度分布の標準偏差/粒子径の平均値×100 …(2)
ここで、得られるCV値は、好ましくは60以下であり、より好ましくは50以下であり、特に好ましくは40以下である。CV値が60以下の平板状粒子を選択することで、印字安定性に優れるという効果が得られる。
【0065】
前記厚み(Z)は、金属光沢性を確保する観点から、好ましくは5nm以上30nm以下であり、より好ましくは10nm〜25nmである。厚み(Z)が5nm未満であると、アルミニウム粒子の表面に被膜を形成したときに金属光沢性が低下する傾向がある。一方、厚み(Z)が30nmを超えても、金属光沢性が低下する傾向がある。
【0066】
前記アルミニウム顔料は、コストの観点および金属光沢性を確保する観点から、アルミニウムまたはアルミニウム合金であることが好ましい。アルミニウム合金を用いる場合、アルミニウム以外に添加する他の金属元素または非金属元素としては、例えば、銀、金、白金、ニッケル、クロム、錫、亜鉛、インジウム、チタン、銅などが挙げられる。
【0067】
(3)次いで、前記アルミニウム顔料分散液中に、前記一般式(1)で示される化合物を含有する処理剤を添加して撹拌する。これにより、前記アルミニウム顔料の表面に存在する水酸基と前記一般式(1)で示される化合物のアルコキシル基とが加水分解反応して、前記アルミニウム顔料の表面に被膜を形成することができる。
【0068】
前記一般式(1)で示される化合物は、末端基(R−)としてアクリル基、アクリロイル基またはメタアクリロイル基を有するため、アルミニウム顔料の疎水性を高めることができる。これにより、アルミニウム顔料を耐水化することができ、被膜がケイ素を含有する膜で形成されているためアルミニウム顔料の金属光沢性が失われない。
【0069】
前記一般式(1)で示される化合物としては、例えば3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0070】
前記一般式(1)で示される化合物の添加量は、前記被膜の厚みが0.5nm〜10nm、好ましくは5nmとなる量(以下、この量を「1当量」という。)を計算して決定すればよい。被膜の厚さが10nmを超えると、金属光沢性が低下することがあるからである。具体的には、前記一般式(1)で示される化合物を、好ましくは1.0〜3.0当量、より好ましくは1.0〜2.0当量添加する。前記一般式(1)で示される化合物を前記範囲内となるように少し過剰に添加することで、目的とする被膜の厚みを有するアルミニウム顔料を確実に得ることができる。前記一般式(1)で示される化合物の添加量が3.0当量を超えると、未反応の一般式(1)で示される化合物により白濁することがある。一方、1.0当量未満では、アルミニウム顔料の表面に存在する水酸基を完全に被覆できないことがある。
【0071】
また、前記処理剤は、前記一般式(1)で示される化合物の他に、アルコキシアルキルシランと、水と、を含有することが好ましい。水を添加することによって前記一般式(1)で示された化合物およびアルコキシアルキルシランの末端基をシラノール化することができ、これを処理剤として用いることにより、アルミニウム顔料との反応性をより高めることができる。
【0072】
このような処理剤が好ましい理由は、前記一般式(1)で示される化合物のみを含有する処理剤を用いた場合、前記一般式(1)で示される化合物の分子構造が嵩高いため、その立体障害によって加水分解反応が阻害され、アルミニウム顔料の表面に未反応の水酸基が残存することがあるからである。このような未反応の水酸基の存在は、アルミニウム顔料の白色化を促進させてしまう。そこで、前記処理剤に分子構造が嵩高くないアルコキシアルキルシランと前記アルミニウム顔料の未反応の水酸基とを加水分解反応させて、未反応の水酸基を低減させることができる。
【0073】
以上のような観点から、前記アルコキシアルキルシランとして好ましい化合物は、トリメトキシメチルシラン、トリエトキシメチルシラン、トリプロポキシメチルシラン、トリメトキシエチルシラン、トリエトキシエチルシラン、トリメトキシフェニルシラン、トリエトキシフェニルシラン、ジメトキシジメチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、ジメトキシジエチルシラン、ジエトキシジエチルシラン、ジメトキシジフェニルシラン、ジエトキシジフェニルシラン等である。これらの中でも特に好ましい化合物は、トリメトキシメチルシランである。
【0074】
前記アルコキシアルキルシランの添加量は、好ましくは0.1〜2.0当量、より好ましくは0.5〜1.5当量である。アルコキシアルキルシランの添加量が2.0当量を超えると、未反応のアルコキシアルキルシランにより白濁することがある。一方、0.1当量未満では、アルミニウム顔料の表面に残存する水酸基を完全に被覆できないことがある。
【0075】
前記処理剤は、例えば前記一般式(1)で示される化合物およびアルコキシアルキルシランを混合したものに、水を添加して、40℃で1〜2時間程度撹拌することにより調製することができる。水の添加量は、特に制限されないが、前記処理剤の全質量に対して、好ましくは0.5〜50質量%、より好ましくは0.8〜40質量%である。前記範囲内で水を添加することにより、前記一般式(1)で示される化合物およびアルコキシアルキルシランの末端基を十分にシラノール化することができる。
【0076】
前記アルミニウム顔料と前記処理剤との加水分解反応における反応温度は、好ましくは10〜60℃、より好ましくは15〜40℃、特に好ましくは20〜30℃である。10℃未満では、加水分解反応の進行が遅くなり、アルミニウム顔料表面の被膜の形成が不十分となりやすい。一方、60℃を超えるとアルミニウム顔料分散液が硬化することがある。
【0077】
前記アルミニウム顔料と前記処理剤との加水分解反応における反応時間は、好ましくは0.5〜100時間、より好ましくは1〜72時間である。反応時間が0.5時間未満では、加水分解反応が十分に完結しない場合があり、十分な耐水性および金属光沢性が得られない場合がある。100時間を超えると、アルミニウム顔料が凝集することがある。
【0078】
なお、反応系におけるpHは、特に制限されず、酸性、中性、アルカリ性のいずれであってもよい。
【0079】
1.2.工程(b)
次いで、前記工程(a)で得られたアルミニウム顔料分散液中の有機溶媒のうち少なくとも一部を除去する。アルミニウム顔料分散液中の有機溶媒を分離する手段としては、ろ過、遠心沈降または遠心分離等が挙げられる。これらの手段により、前記有機溶媒と前記被膜の形成されたアルミニウム顔料とを分離して前記アルミニウム顔料分散液に含まれる有機溶媒を除去することができる。前記手段の中でも操作が簡便であることから、遠心分離により分離して有機溶媒を除去する手段が好ましい。本工程では、前記アルミニウム顔料分散液中に含まれる有機溶媒の70%以上除去することが好ましく、80%以上除去することがより好ましい。
【0080】
ここで、被膜が形成されたアルミニウム顔料を洗浄する工程を設けてもよい。洗浄に用いる溶媒としては、前述した有機溶媒の中から選択されることが好ましく、アルミニウム顔料分散液中に含まれていた有機溶媒と同一の有機溶媒であることがさらに好ましい。洗浄工程を別途設けることで、アルミニウム顔料分散液中に含まれる加水分解反応に不要な前記一般式(1)で示される化合物やアルコキシアルキルシランを除去することができる。また、アルミニウム顔料の表面に形成された被膜は、アルミニウム顔料の表面に化学結合したものと、さらにその表面に物理吸着したものと、により構成されていると考えられるが、洗浄工程を設けることでこれらのうち物理吸着したものを除去することができる。これにより、アルミニウム顔料の水分散性を向上させることができると共に、良好な金属光沢性を得ることができる。
【0081】
1.3.工程(c)
次いで、前記工程(b)によって有機溶媒のうち少なくとも一部が除去されたアルミニウム顔料分散液に、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルおよびその塩から選択される少なくとも1種を含有する水溶液(以下、「界面活性剤水溶液」ともいう。)を添加して十分に撹拌する。撹拌時間は、特に限定されないが、3時間〜120時間程度であることが好ましい。撹拌時間が前記範囲内であると、金属光沢性を損なわずに水分散性に優れたアルミニウム顔料分散液を得ることができる。撹拌時間が120時間を超えると、粒子の凝集により金属光沢性が損なわれることがある。
【0082】
本工程により、前記工程(b)で得られたアルミニウム顔料分散液中の有機溶媒を水系溶媒へと溶媒置換することができ、水分散性に優れたアルミニウム顔料分散液を得ることができる。また、本工程により得られたアルミニウム顔料分散液の溶媒は、水系溶媒をベースとするものであるため、容易に水性インク組成物に適用することができる。
【0083】
ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルとは、下記一般式(3)または(4)で示される化合物である。
【0084】
【化5】

【0085】
【化6】

(式中、Rはそれぞれアルキル基、アルキレン基またはフェニル基であり、nはそれぞれ2〜10の整数である。)
【0086】
前記一般式(3)および(4)中のRは、アルキル基(C2m+1−)であることが好ましく、m=8〜18であることがより好ましく、m=12(ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸エステル)であることが特に好ましい。市販されているポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルとしては、例えば、NIKKOL DDP−2、DDP−4、DDP−6、DDP−10、TLP−4、TCP−5、TDP−2、TDP−6、TDP−8、TDP−10(以上、日光ケミカルズ株式会社製)、プライサーフ AL、A210D、A−208B、A219B(以上、第一工業製薬株式会社製)、アデカコール CS−1361E(ADEKA社製)、フォスファノール RD−720(東邦化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0087】
ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩としては、前記一般式(3)または(4)で示されるポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルのナトリウム塩、カリウム塩、モノエタノールアミン塩等が挙げられる。これらの中でも、下記一般式(5)または(6)で示されるモノエタノールアミン塩であることが好ましい。
【0088】
【化7】

【0089】
【化8】

(式中、Rはそれぞれアルキル基、アルキレン基またはフェニル基であり、nはそれぞれ2〜10の整数である。)
【0090】
前記一般式(5)および(6)中のRは、アルキル基(C2m+1−)であることが好ましく、m=8〜18であることがより好ましく、m=12(ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸エステルモノエタノールアミン塩)であることが特に好ましい。市販されているポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩としては、NIKKOL DLP−10、DOP−8NV(以上、日光ケミカルズ株式会社製)、プライサーフM−208F、M−208B(以上、第一工業製薬株式会社製)、アデカコール CS−1361E(ADEKA社製)、フォスファノール RD−720(東邦化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0091】
なお、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルまたはその塩のHLB値は、好ましくは5〜18であり、より好ましくは6〜16である。HLBの値が18を超えると、疎水性/親水性のバランスが親水性側となるため、耐水化アルミニウム顔料の表面に吸着しずらくなり、良好な水分散性が得られないことがある。これにより、アルミニウム顔料の表面が水分により侵食され、水素ガスの発生を伴うことがある。一方、HLBの値が5未満では、疎水性/親水性のバランスが疎水性側となるため、水に溶解しずらいといった問題が生じるため、使用に適さない。
【0092】
ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルまたはその塩の含有量は、前記アルミニウム顔料の含有量に対して、好ましくは0.3倍以上7.0倍以下、より好ましくは0.6倍以上5.0倍以下の濃度となるように調製する。含有量が前記範囲内であると、金属光沢性を損なわずに水分散性に優れた耐水化アルミニウム顔料分散液を得ることができる。
【0093】
2.耐水化アルミニウム顔料およびそれを含有する分散液
2.1.耐水化アルミニウム顔料分散液
本発明の一実施形態に係る耐水化アルミニウム顔料分散液は、前述した製造方法により製造することができる。すなわち、本実施の形態に係る耐水化アルミニウム顔料分散液は、前記一般式(1)で示される化合物を含有する処理剤でアルミニウム顔料を表面処理することにより、少なくともケイ素を含有する膜で被覆された耐水化アルミニウム顔料が、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルおよびその塩から選択される少なくとも1種を含有する水溶液中に分散されてなることを特徴とする。
【0094】
本実施の形態に係る耐水化アルミニウム顔料分散液によれば、アルミニウム顔料の表面に少なくともケイ素を含有する被膜が形成されることにより耐水性が付与され、水性塗料や水性インク組成物に配合された時においても金属光沢性が損なわれない。また、少なくともケイ素を含有する膜で被覆された耐水化アルミニウム顔料を、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルおよびその塩から選択される少なくとも1種を含有する水溶液中に分散させることで、耐水性や金属光沢性を損なわずに水分散性に優れた耐水化アルミニウム顔料分散液となる。
【0095】
前述したように、前記アルミニウム顔料は、5nm以上30nm以下の平均厚みを有し、かつ、0.5μm以上3μm以下の50%平均粒子径(R50)を有する平板状アルミニウム粒子であることが好ましい。前記アルミニウム顔料の平均厚みが5nm以上30nm以下であると、優れた金属光沢性を有する耐水化アルミニウム顔料を形成することができる。一方、平均厚みが5nm未満では金属光沢性が低下する傾向があり、30nmを超えても金属光沢性が低下する傾向がある。前記R50が0.5μm以上3μm以下であると、良好な金属光沢性および印字安定性を確保することができる。R50が0.5μm未満の場合には、金属光沢性が不足することがある。一方、R50が3μmを超える場合、印字安定性が低下することがある。
【0096】
前記少なくともケイ素を含有する被膜の厚さは、好ましくは0.5nm以上10nm以下、より好ましくは1nm以上9nm以下である。少なくともケイ素を含有する被膜の厚みが0.5nm未満であると、アルミニウム顔料に十分な耐水性や水分散性を付与することができない。一方、少なくともケイ素を含有する被膜の厚みが10nmを超えると、アルミニウム顔料に耐水性や水分散性を付与することはできるが、金属光沢性が低下する傾向がある。
【0097】
2.2.耐水化アルミニウム顔料
本発明の一実施形態に係る耐水化アルミニウム顔料分散液中に含まれる耐水化アルミニウム顔料は、前述した製造方法によって製造されるものであるから、少なくとも前記一般式(1)で示される化合物がアルミニウム顔料の表面に化学的に結合した構造を有し、さらにポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルおよびその塩から選択される少なくとも1種を含有することを特徴とする。また、前述した製造方法によれば、アルミニウム顔料の表面に、前記一般式(1)で示される化合物だけでなく、さらにアルコキシシランが化学的に結合した構造を有する耐水化アルミニウム顔料を得ることもできる。
【0098】
本実施の形態に係る耐水化アルミニウム顔料は、XPSを用いることによって、その表面近傍に存在する元素の定性分析や定量分析を行うことができるが、XPSの原理は概ね以下の通りである。
【0099】
XPSは、X線の照射により試料から放出される光電子のエネルギーを測定する分光法である。光電子は、大気中ではすぐに分子と衝突して散乱されてしまうため、装置を真空にしておく必要がある。また、固体試料の奥深くで放出された光電子は、試料内で散乱されて表面から脱出することができない。したがって、XPSは、試料表面からのみの光電子を測定することになるので、表面分析法として有効である。XPSでは、試料表面からおおよそ数nm以内の範囲を分析することができる。
【0100】
観測される光電子の運動エネルギーEは、hν−Eから、さらに結晶内の電子を試料表面の外に移すためのエネルギーφを引いた値、すなわち、
E=hν−E−φ …(7)
と表すことができる。但し、h:プランク定数、ν:振動数、E:電子の結合エネルギーである。上記式(7)から、Eの値は励起源のX線のエネルギーにより異なることが分かる。励起X線には、通常アルミニウムやマグネシウムをターゲットとするX線管からの特性X線を使用する。電子エネルギーの測定法は、特に制限されないが、代表的なものとして電子を静電場中に導き一定軌道を描くもののみを検出する静電場型がある。
【0101】
XPSにより、電子の結合エネルギーEを測定することができる。かかる結合エネルギーは、基本的に元素固有の値であるから元素の種類を特定することができる。また、光電子スペクトルの強度から各元素を定量することもできる。
【0102】
ところで、入射されたX線は試料の表面から内部へと進入するが、励起された光電子の平均自由工程が0.1nm〜数nmと小さいため、試料の表面近傍からのみ光電子を放出することになる。これにより、試料の表面近傍の分析が可能となる。しかしながら、試料の表面近傍に形成された層が数層に亘り存在するような場合において、該層の微量な組成を観測しようとしても正確に検出できないことがある。XPSでは、表面から数十Åを平均化した組成の相対量を観測しているからである。このように表面から数層の組成を観測する場合には、光電子の脱出深さの角度依存性を利用することができる。すなわち、光電子は等方的に試料の表面から放出されるが、光電子取出し角度によって光電子の固体表面からの脱出深さが異なる。この現象を利用すると、光電子取出し角度を試料表面に垂直な方向から斜め方向に変化させることにより脱出深さが小さくなり、より試料の表面近傍の情報を得ることができる。
【0103】
ここで、「光電子取出し角度」とは、試料表面と検出器とがなす角度である。光電子取出し角度は、XPSの測定原理上、0°以上90°以下となる。図1に、XPS測定における光電子取出し角度を模式的に示した概念図を示す。
【0104】
図1(A)は、光電子取出し角度が90°である場合を示している。図1(A)に示すように、「光電子取出し角度が90°」とは、試料10における表面10aと検出器20とのなす角θが90°である場合をいう。図1(A)に示すように、このとき光電子の脱出深さは最大となり、試料表面10aから深さDまでの情報を検出することができる。
【0105】
図1(B)は、光電子取出し角度が30°である場合を示している。図1(B)に示すように、光電子取出し角度を30°に設定するためには、検出器20の位置を固定した上で試料10を検出器20に対して傾けることで調節する。光電子取出し角度が30°である場合、光電子の脱出深さdは、d=Dsin30°=0.5Dとなる。したがって、光電子取出し角度を30°に設定することで光電子の脱出深さが小さくなり、より表面近傍の情報を検出することができる。
【0106】
本実施の形態に係る耐水化アルミニウム顔料は、光電子取出し角度を高角度にするにつれて、XPSによって検出される各元素(炭素、酸素、アルミニウム、ケイ素)の検出割合のうちケイ素の検出割合が、同等または増加するものであることが好ましい。
【0107】
ここで「同等」とは、完全に同一の検出割合を示す場合に限定されず、光電子取出し角度ごとに測定されるケイ素の検出割合の最大値と最小値との差が0.1%の範囲内となる場合も含まれる。また、「増加する」とは、縦軸をケイ素の検出割合、横軸に光電子取出し角度のsin値としたグラフにおいて、光電子取出し角度のsin値の増加に伴いケイ素の検出割合が単調増加する傾向があることをいう。
【0108】
前述したように光電子取出し角度を小さくすればするほど、耐水化アルミニウム顔料のより表面近傍の情報が得られる。したがって、光電子取出し角度を高角度にするにつれてXPSによって検出されるケイ素の検出割合が同等である(すなわち、光電子取出し角度の角度依存性がない)ということは、アルミニウム顔料の表面に前記一般式(1)で示される化合物および/またはアルコキシアルキルシランが結合することにより被膜が形成されており、かつ、耐水化アルミニウム顔料の最表面から被膜方向に数nm進入した領域内において、該被膜の組成がほぼ同一であることを示している。
【0109】
また、光電子取出し角度を高角度にするにつれてXPSによって検出されるケイ素の検出割合が増加するということは、アルミニウム顔料の表面に前記一般式(1)で示される化合物および/またはアルコキシアルキルシランが結合することにより被膜が形成されており、かつ、耐水化アルミニウム顔料の最表面から被膜方向に数nm進入した領域内において、該被膜の表面近傍よりも内部の方が前記一般式(1)で示される化合物および/またはアルコキシアルキルシランの密度が高いということを示している。
【0110】
このような構造を有する耐水化アルミニウム顔料によれば、アルミニウム顔料の表面に前記一般式(1)で示される化合物および/またはアルコキシアルキルシランが化学的に結合されることにより数nm程度の被膜を形成しているので、金属光沢性を損なうことなく耐水性が付与される。
【0111】
前記ケイ素の検出割合は、いずれの光電子取出し角度においても0.01%以上1%以下であることが好ましい。ケイ素の検出割合が前記範囲内にあれば、アルミニウム顔料の表面に化学的に結合した前記一般式(1)で示される化合物および/またはアルコキシアルキルシランの単分子膜が形成されていると推測され、該単分子膜上にさらに物理吸着した前記一般式(1)で示される化合物および/またはアルコキシアルキルシランが除去されている状態であると考えられるため好ましい。
【0112】
また、本実施の形態に係る耐水化アルミニウム顔料において、ゼータ電位が負電位であり、かつ、前記ゼータ電位の絶対値が50mV以上80mV以下であることが好ましく、55mV以上70mV以下であることがより好ましい。ゼータ電位の絶対値が50mV以上80mV以下であると、静電反発力により分散安定性が高く、金属光沢性に優れた耐水化アルミニウム顔料分散液を得ることができる。ゼータ電位の絶対値が50mV未満である場合、耐水化アルミニウム顔料の凝集が起こりやすい傾向が見られる。
【0113】
ゼータ電位は、ゼータ電位測定装置(シスメックス株式会社製、形式「ゼータサイザーNano−ZS」)を用いて測定することができる。
【0114】
3.水性インク組成物
本発明の一実施形態に係る水性インク組成物は、前述した耐水化アルミニウム顔料分散液または前述した耐水化アルミニウム顔料を含有することを特徴とする。前述した耐水化アルミニウム顔料分散液は、水系溶媒をベースとするものであるため、容易に水性インク組成物に適用することができる。本明細書において、「水性インク組成物」とは、溶媒として水を70質量%以上含有するインク組成物のことをいう。水は、イオン交換水、限外ろ過水、逆浸透水、蒸留水などの純水または超純水を用いることが好ましい。特に、これらの水を紫外線照射または過酸化水素添加などにより滅菌処理した水は、長期間に亘りカビやバクテリアの発生を抑制することができるので好ましい。
【0115】
本実施の形態に係る水性インク組成物中のアルミニウム顔料の濃度は、水性インク組成物の全質量に対して、好ましくは0.1〜3.0質量%、より好ましくは0.25〜2.5質量%、特に好ましくは0.5〜2.0質量%である。
【0116】
本実施の形態に係る水性インク組成物は、必要に応じて、界面活性剤、多価アルコール、pH調整剤等の添加剤を添加してもよい。
【0117】
界面活性剤としては、例えばアセチレングリコール系界面活性剤またはポリシロキサン系界面活性剤が挙げられる。これらの界面活性剤は、被記録面への濡れ性を高め、インクの浸透性を向上させる効果がある。アセチレングリコール系界面活性剤としては、例えば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、2,4−ジメチル−5−ヘキシン−3−オール等が挙げられる。また、アセチレングリコール系界面活性剤は、市販品を利用することもでき、例えばオルフィンE1010、STG、Y(以上、日信化学株式会社製)、サーフィノール104、82、465、485、TG(以上、Air Products and Chemicals Inc.製)が挙げられる。ポリシロキサン系界面活性剤としては、市販品を利用することができ、例えばBYK−347、BYK−348(ビックケミー・ジャパン株式会社製)等が挙げられる。さらに、本実施の形態に係る水性インク組成物には、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤等のその他の界面活性剤を添加してもよい。
【0118】
多価アルコールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオグリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等が挙げられる。これらの多価アルコールは、本実施の形態に係る水性インク組成物をインクジェット記録装置に適用した場合に、水性インク組成物の乾燥を防止し、インクジェット記録ヘッド部分における目詰まりを防止する効果がある。
【0119】
pH調整剤としては、特に制限されず、例えばリン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、アンモニア、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。
【0120】
なお、本実施の形態に係る水性インク組成物の用途は、特に限定されるものではなく、筆記具、スタンプ、記録計、ペンプロッター、インクジェット記録装置等に適用することができる。
【0121】
例えばインクジェット用途の場合、水性インク組成物の20℃における粘度は、好ましくは2〜10mPa・sであり、より好ましくは3〜5mPa・sである。水性インク組成物の20℃における粘度が前記範囲内にあると、ノズルから水性インク組成物が適量吐出され、水性インク組成物の飛行曲がりや飛散を一層低減することができるため、インクジェット記録装置に好適に使用することができる。
【0122】
4.実施例
4.1.実施例1〜3
4.1.1.アルミニウム顔料分散液の調製
膜厚100μmのPETフィルム上に、セルロースアセテートブチレート(ブチル化率35〜39%、関東化学株式会社製)3.0質量%およびジエチレングリコールジエチルエーテル(日本乳化剤株式会社製)97質量%からなる樹脂層塗工液をバーコート法によって均一に塗布し、60℃、10分間乾燥することで、PETフィルム上に樹脂層薄膜を形成した。
【0123】
次いで、真空蒸着装置(「VE−1010型真空蒸着装置」、株式会社真空デバイス製)を用いて、前記の樹脂層上に平均膜厚20nmのアルミニウム蒸着層を形成した。
【0124】
次いで、前記方法にて形成した積層体を、ジエチレングリコールジエチルエーテル中、VS−150超音波分散機(アズワン株式会社製)を用いて、剥離・微細化・分散処理を同時に行い、積算の超音波分散処理時間が12時間であるアルミニウム顔料分散液を作製した。
【0125】
得られたアルミニウム顔料分散液を、開き目5μmのSUSメッシュフィルターにてろ過処理を行い、粗大粒子を除去した。次いで、ろ液を丸底フラスコに入れ、ロータリーエバポレーターを用いてジエチレングリコールジエチルエーテルを留去した。これにより、アルミニウム顔料分散液を濃縮し、その後、そのアルミニウム顔料分散液の濃度調整を行い、5質量%のアルミニウム顔料分散液(以下、「原分散液」ともいう。)を得た。
【0126】
4.1.2.有機基導入反応工程
まず、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(商品名「KBM−503」、信越化学工業株式会社製)1.25当量と、トリメトキシメチルシラン(東京化成工業株式会社製)1.25当量と、の混合物に対して、1当量となるように水を添加して、40℃で1〜2時間撹拌することにより処理剤を調製した。
【0127】
次いで、得られた原分散液100gをビーカーへ投入し、前記処理剤の全量を添加して、3日間室温で撹拌することにより加水分解反応させた。このようにして、アルミニウム顔料の表面にケイ素を含有する被膜が形成された耐水化アルミニウム顔料分散液を得た。
【0128】
4.1.3.洗浄工程
得られた耐水化アルミニウム顔料分散液を遠心分離(12,000rpm、60分間)し、70質量%に相当する量の溶媒を除去した。その後、その除去した溶媒と同量のジエチレングリコールジエチルエーテルを添加して十分に撹拌した。さらに、これを遠心分離(12,000rpm、60分間)し、70質量%に相当する量の溶媒を除去した。この操作を2回繰り返すことにより、耐水化アルミニウム顔料の洗浄を行った。
【0129】
4.1.4.分散工程
5質量%のプライサーフM−208B水溶液(以下、「界面活性剤水溶液」ともいう。)を別に準備した。次いで、その除去した溶媒と同量のプライサーフM−208B水溶液を添加して、1日間室温で撹拌することにより目的とする耐水化アルミニウム顔料分散液を得た。
【0130】
以上の工程により、3ロット(実施例1〜3)の耐水化アルミニウム顔料分散液を得た。
【0131】
4.1.5.XPS測定による表面分析
得られた耐水化アルミニウム顔料をポリテトラフルオロエチレン製メンブランフィルターに滴下し、乾燥させたものをXPS測定用サンプルとした。次に、XPS測定用サンプルを下記に示すX線光電子分光装置の試料台に固定して、下記の測定条件で耐水化アルミニウム顔料の表面におけるC、O、Si、Al、Pの存在比を測定した。
【0132】
<測定条件1>
・X線光電子分光装置:ESCA5800(アルバック・ファイ社製)
・X線源 :Mg−Kα線
・光電子取出し角度 :30°,45°,70°
上記測定条件における各ロット(実施例1〜3)のXPS測定結果を表1および表2に示す。
【0133】
【表1】

【0134】
【表2】

【0135】
さらに、実施例1の耐水化アルミニウム顔料について、測定条件を以下のように変更したこと以外は上記の方法と同様にしてXPS測定を行った。
<測定条件2>
・X線光電子分光装置:ESCA1000(アルバック・ファイ社製)
・X線源 :単色化Al−Kα線
・光電子取出し角度 :15°
<測定条件3>
・X線光電子分光装置:ESCA5800(アルバック・ファイ社製)
・X線源 :Mg−Kα線
・光電子取出し角度 :30°
測定条件2における測定結果を表3に、測定条件3における測定結果を表4にそれぞれ示す。
【0136】
【表3】

【0137】
【表4】

【0138】
なお、表3および表4に記載のAl(atom%)には、Al単体で存在しているものとAl−Oの状態で存在しているものとが含まれる。Al単体で存在しているものは、74.10eVにピークが認められ、Al−Oの状態で存在しているものは、76.70eVにピークが認められる。よって、これらのピークを分離することにより、Al単体で存在しているものとAl−Oの状態で存在しているものとの比率を求めることができる。その結果、測定条件2および測定条件3のいずれの条件においても、Al単体で存在しているものが12%、Al−Oの状態で存在しているものが82%であった。
【0139】
4.1.6.XPS測定による分析結果
表1によれば、実施例1のケイ素の存在比は、光電子取出し角度30°では0.04%、45°では0.3%、70°では0.8%であった。実施例2のケイ素の存在比は、光電子取出し角度30°では0.1%、45°では0.4%、70°では0.8%であった。実施例3のケイ素の存在比は、光電子取出し角度30°では0.2%、45°では0.8%、70°では0.8%であった。以上の結果から、実施例1〜3に係る耐水化アルミニウム顔料は、光電子取出し角度を高角度にするにつれてXPSによって検出されるケイ素の検出割合が増加する傾向が認められた。このことから、アルミニウム顔料の表面に3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランおよびトリメトキシメチルシランが化学的に結合することにより被膜が形成されており、かつ、耐水化アルミニウム顔料の最表面から被膜方向に数nm進入した領域内において、該被膜の表面近傍よりも内部の方が3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランおよびトリメトキシメチルシランの密度が高いということが示された。
【0140】
表3および表4の結果からも、実施例1の分散液中に含まれる耐水化アルミニウム顔料は、その表面近傍においてSiの存在が確認できることから、アルミニウム顔料の表面に3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランおよびトリメトキシメチルシランが結合していることが示唆された。また、Pの存在も確認できることから、さらにその表面にポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸エステルモノエタノールアミン塩が存在していることが示唆された。
【0141】
4.2.実施例4〜10、比較例1
実施例1における界面活性剤水溶液の代わりに、表5に記載の界面活性剤を5質量%含有する水溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして実施例4〜10、比較例1の耐水化アルミニウム顔料分散液を調製した。
【0142】
4.3.実施例11〜14
実施例1における「5質量%」のプライサーフM−208B水溶液の代わりに、表6に記載の濃度のプライサーフM−208B水溶液を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例11〜14の耐水化アルミニウム顔料分散液を調製した。
【0143】
4.4.比較例2
実施例1の「4.1.2.有機基導入反応工程」以後の工程を次のように変更した。
原分散液100gをビーカーへ投入し、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン(商品名「A−1100」、日本ユニカー社製)1.2当量を添加して、3日間室温で撹拌することにより加水分解反応させた。これにより、アルミニウム顔料の表面に被膜を形成させた。このようにして、比較例2の耐水化アルミニウム顔料分散液を得た。
【0144】
4.5.比較例3
実施例1の「4.1.2.有機基導入反応工程」以後の工程を次のように変更した。
原分散液100gをビーカーへ投入し、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(商品名「A−187」、日本ユニカー社製)1.2当量を添加して、3日間室温で撹拌することにより加水分解反応させた。これにより、アルミニウム顔料の表面に被膜を形成させた。
【0145】
次いで、加水分解反応後のアルミニウム顔料分散液を取出し、それを丸底フラスコへ移し、1質量%の濃度となるようにカチオン重合開始剤(商品名「サンエイドSI−80L」、三新化学工業株式会社製)を添加して、撹拌下100℃で5時間重合反応させた。これにより、アルミニウム顔料の表面に形成された被膜を緻密化させた。このようにして、比較例3の耐水化アルミニウム顔料分散液を得た。
【0146】
4.6.比較例4
実施例1の「4.1.2.有機基導入反応工程」以後の工程を次のように変更した。
原分散液100gをビーカーへ投入し、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン(商品名「A−1100」、日本ユニカー社製)1.2当量を添加して、3日間室温で撹拌することにより加水分解反応させた。これにより、アルミニウム顔料の表面に被膜を形成させたアルミニウム顔料分散液Iを得た。
【0147】
一方、原分散液100gをビーカーへ投入し、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(商品名「A−187」、日本ユニカー社製)1.2当量を添加して、3日間室温で撹拌することにより加水分解反応させた。これにより、アルミニウム顔料の表面に被膜を形成させたアルミニウム顔料分散液IIを得た。
【0148】
次いで、得られたアルミニウム顔料分散液Iおよびアルミニウム顔料分散液IIを混合撹拌下室温で1日反応させた。これにより、アルミニウム顔料の表面に形成された被膜を緻密化させた。このようにして、比較例4の耐水化アルミニウム顔料分散液を得た。
【0149】
4.7.比較例5
実施例1の「4.1.2.有機基導入反応工程」以後の工程を次のように変更した。
原分散液100gをビーカーへ投入し、トリメトキシメチルシラン(東京化成工業社製)1.2当量を添加して、1日間室温で撹拌した。このようにして、アルミニウム顔料の表面に存在する水酸基をキャッピング処理した比較例5の耐水化アルミニウム顔料分散液を得た。
【0150】
4.8.比較例6
「4.1.1.アルミニウム顔料分散液の調製」で得られた原分散液を比較例6のアルミニウム顔料分散液とした。
【0151】
なお、表5または表6に記載の界面活性剤の種類の略称は、それぞれ下記の商品名(化合物)を表す。
・「M−208B」(商品名「プライサーフM−208B」、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸エステルモノエタノールアミン塩(HLB値=6〜8)、第一工業製薬株式会社製)
・「A−208B」(商品名「プライサーフA−208B」、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸エステル(HLB値=6)、第一工業製薬株式会社製)
・「A−219B」(商品名「プライサーフA−219B」、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸エステル(HLB値=16)、第一工業製薬株式会社製)
・「A−210D」(商品名「プライサーフA−210D」、ポリオキシエチレンデシルエーテルリン酸エステル(HLB値=6〜8)、第一工業製薬株式会社製)
・「AL」(商品名「プライサーフAL」、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテルリン酸エステル、第一工業株式会社製)
・「M−208F」(商品名「プライサーフM−208F」、ポリオキシエチレンオクチルエーテルリン酸エステルモノエタノールアミン塩(HLB値=9〜12)、第一工業製薬株式会社製)
・「CS」(商品名「アデカコールCS−1361E」、ポリオキシエチレンフェニルエーテルリン酸エステルナトリウム塩(HLB値=8〜15)、株式会社ADEKA製)
・「RD」(商品名「フォスファノールRD−720」、ポリオキシエチレンオクタデシルエーテルリン酸エステルナトリウム塩(HLB値=14.4)、東邦化学工業株式会社製)
・「K−30L」(商品名「ピッツコールK−30L」、ポリビニルピロリドン(HLB値=8〜12)、第一工業製薬株式会社製)
【0152】
4.9.耐水化アルミニウム顔料分散液の評価試験
4.9.1.耐水性評価試験
サンプル瓶に水2mLを入れ、さらに得られた耐水化アルミニウム顔料分散液(以下、単に「分散液」という。)のいずれか1種を1滴滴下して、25℃恒温下に静置した。その経時変化を目視により観察することで、分散液の耐水性を評価した。分散液の耐水性の評価基準は、以下のとおりである。
「◎」:6月経過後においても特に変化が認められず、銀片形状を保持していた。
「○」:1月後の時点で水素ガスの発生が認められた。
「△」:10日後の時点で水素ガスの発生が認められた。
「×」:1日後の時点で水素ガスの発生が認められ、白色または黒色化した。
【0153】
4.9.2.水分散性評価試験
サンプル瓶に水2mLを入れ、さらに得られた分散液のいずれか1種を1滴滴下して、25℃恒温下に静置した。その経時変化を目視により観察することで、分散液の水分散性を評価した。なお、評価時には手でサンプル瓶を軽く振とうした。分散液の水分散性の評価基準は、以下のとおりである。
「◎」:6月経過後においても特に変化が認められず、銀片形状を保持していた。
「○」:1月後の時点で凝集が認められた。
「△」:10日後の時点で凝集が認められた。
「×」:添加直後の時点で凝集が認められた。
【0154】
4.9.3.金属光沢性評価試験
前記工程により得られた分散液のいずれか1種を印画紙(「PM写真用紙(光沢)型番:KA450PSK」、セイコーエプソン社製)に滴下・塗布して、室温で1日間乾燥させた。得られたサンプルを目視および走査型電子顕微鏡で観察することで、アルミニウム顔料の印字物における金属光沢性を評価した。アルミニウム顔料の金属光沢性の評価基準は、以下のとおりである。
「◎」:金属光沢性に優れており、鏡面光沢を有していた。
「○」:金属光沢性に優れているが、ややマット調となっていた。
「△」:マット調であった。
「×」:黒色化していた。
【0155】
4.9.4.平均ゼータ電位の測定
実施例1、実施例11、実施例12の各分散液について、ゼータ電位測定装置(シスメックス株式会社製、形式「ゼータサイザーNano−ZS」)を用いてゼータ電位の測定を行った。なお、ゼータ電位の測定は、連続して5回測定し、その平均値を平均ゼータ電位とした。その結果を表6に併せて示す。
【0156】
4.9.5.評価結果
表5に、実施例1〜10および比較例1の分散液の耐水性、水分散性、金属光沢性の評価試験の結果を示す。表6に、実施例11〜14の分散液の耐水性、水分散性、金属光沢性の評価試験、および平均ゼータ電位の測定結果を示す。表7に、比較例2〜6の分散液の耐水性、水分散性、金属光沢性の評価試験の結果を示す。
【0157】
【表5】

【0158】
【表6】

【0159】
【表7】

【0160】
表5によれば、実施例1〜3の分散液は、耐水性および水分散性の点で極めて優れていると共に、印字物の金属光沢性にも優れていることが確認された。金属光沢性評価試験で得られたサンプルをSEMで観察したところ、アルミニウムの薄片が規則的にスタッキングしていることが確認された。
【0161】
実施例4の分散液は、耐水性および水分散性の点で優れていると共に、印字物の金属光沢性にも優れていることが確認された。実施例4の分散液は、実施例1〜3の分散液よりも耐水性および水分散性の点でやや劣るものの十分な性能を有していた。金属光沢性評価試験で得られたサンプルをSEMで観察したところ、アルミニウムの薄片が規則的にスタッキングしていることが確認された。
【0162】
実施例5〜10の分散液は、実施例1〜3の分散液よりも全ての評価項目で劣っていたが、製品として良品の範疇であった。これらの中でも実施例9および実施例10の分散液は、実施例4の分散液と同程度の水分散性を有していた。また、実施例10の分散液は、実施例4の分散液と同程度の耐水性を有していた。印字物は、ややマット調となり光沢性を失っていた。金属光沢性評価試験で得られたサンプルをSEMで観察したところ、いずれの分散液においても水の侵食によりアルミニウム薄片のエッジが溶解していることが確認された。これにより、アルミニウム薄片の重なりが厚くなったため金属光沢性が失われたものと考えられる。
【0163】
これに対して比較例1の分散液は、耐水性試験において1日後にガスが発生すると共に、アルミニウム顔料が黒色化した。また、水分散性試験においても、添加直後から凝集が認められた。そして、印字物についても黒色化し、金属光沢性が全く得られなかった。
【0164】
以上の結果より、実施例1〜10の分散液は、耐水性、水分散性、金属光沢性のいずれの評価項目においても製品として良品の範疇であった。但し、使用するポリオキシエチレンエーテルリン酸エステルまたはその塩の種類によって、分散液としての性能に差異が認められた。
【0165】
表6の結果よれば、実施例11の分散液は、実施例1の分散液よりも耐水性および水分散性の点でやや劣っていたが、製品として良品の範疇であった。これは、界面活性剤の添加量が少なかったために、アルミニウム顔料の表面に付着したプライサーフM−208Bの量が不足することにより凝集が起こりやすくなったものと考えられる。なお、平均ゼータ電位の値が−23mVであることからも裏付けされる。また、印字物は、ややマット調となり光沢性を失っていた。金属光沢性評価試験で得られたサンプルをSEMで観察したところ、いずれの分散液においても水の侵食によりアルミニウム薄片のエッジが溶解していることが確認された。これにより、アルミニウム薄片の重なりが厚くなったため金属光沢性が失われたものと考えられる。
【0166】
実施例12の分散液は、実施例11の分散液よりも全ての項目で優れていたが、実施例1の分散液よりは全ての項目で劣っていた。プライサーフM−208Bの添加量が3質量%であると平均ゼータ電位の値が−50mVとなり、5質量%であると平均ゼータ電位の値が−60mVとなることから、プライサーフM−208Bの増量に伴い平均ゼータ電位の絶対値が大きくなる傾向が確認された。
【0167】
実施例13および実施例14の分散液は、耐水性および水分散性の点では実施例1の分散液と同程度の性能を有していた。しかしながら、印字物は、金属光沢性を有しているものの、ややマット調となった。
【0168】
以上の結果より、実施例1、11〜14の分散液は、耐水性、水分散性、金属光沢性のいずれの評価項目においても製品として良品の範疇であった。但し、使用する界面活性剤(プライサーフM−208B)の添加量によって、分散液としての性能に差異が認められた。
【0169】
表7の結果によれば、比較例2の分散液は、アルミニウム顔料の表面に存在する水酸基にアミノ基を有するアルコキシシランを反応させたものであるが、耐水性、分散性、光沢性のいずれにおいても良好な結果が得られなかった。アミン系は塩基性となるため、アルミニウム顔料の白色化が起こりやすいものと考えられる。また、光沢性評価試験で得られたサンプルをSEMで観察したところ、アルミニウムの薄片が一部凝集していることが確認された。
【0170】
比較例3の分散液は、アルミニウム顔料の表面に存在する水酸基にグリシジル基を有するアルコキシシランを反応させた後、自己架橋させたものであるが、耐水性、分散性、光沢性のいずれにおいても良好な結果が得られなかった。
【0171】
比較例4の分散液は、アルミニウム顔料の表面に存在する水酸基にグリシジル基を有するアルコキシシランおよびアミノ基を有するアルコキシシランを反応させたものであるが、耐水性、分散性、光沢性のいずれにおいても良好な結果が得られなかった。
【0172】
比較例5の分散液は、アルミニウム顔料の表面に存在する水酸基をトリメトキシメチルシランのみで被覆したものであるが、耐水性、分散性、光沢性のいずれにおいても良好な結果が得られなかった。
【0173】
比較例6の分散液は、原分散液であるが、無処理の場合には耐水性、分散性、光沢性のいずれにおいても良好な結果が得られなかった。
【0174】
4.10.水性インク組成物の評価
4.10.1.水性インク組成物の調製
以下の組成となるように、分散液、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,2−ヘキサンジオール、オルフィンE1010(アセチレングリコール系界面活性剤、日信化学株式会社製)、トリエタノールアミンを混合し、さらに100質量部となるようにイオン交換水を加えて、混合撹拌した。
【0175】
<水性インク組成物の組成>
アルミニウム顔料(固形分) 1質量部
グリセリン 10質量部
トリメチロールプロパン 5質量部
1,2−ヘキサンジオール 1質量部
オルフィンE1010 1質量部
トリエタノールアミン 1質量部
イオン交換水 残部
合計 100質量部
なお、分散液には、実施例1、比較例2、比較例6の分散液のいずれか1種を使用した。
【0176】
4.10.2.評価サンプルの作製
インクジェットプリンターPX−G930(セイコーエプソン株式会社製)の専用カートリッジに、上記の水性インク組成物を充填したインクカートリッジを作製した。次に、得られたインクカートリッジをインクジェットプリンターPX−G930のブラック列に装着し、これ以外のノズル列には市販のインクカートリッジを装着した。なお、ブラック列以外に装着した市販のインクカートリッジは、ダミーとして用いるものであり、本実施例の評価では使用しないので、本発明の効果に関与するものではない。
【0177】
次に、上記のプリンターを用いて、ブラック列に装着された上記の水性インク組成物を写真用紙<光沢>(セイコーエプソン株式会社製)上に吐出することにより、ベタパターン画像の印刷された記録物を得た。なお、印刷条件は、1ドット当たりの吐出インク重量を20ngとし、解像度を縦720dpi、横720dpiとした。
【0178】
4.10.3.画像の評価方法
得られた画像について、光沢度計MULTI Gloss 268(コニカミノルタ社製)を用いて、60°の光沢度を測定した。得られた画像の光沢度の評価基準は、以下のとおりである。光沢度評価試験の結果を表8に示す。
【0179】
「A」:光沢度300以上(クリアな金属光沢)
「B」:光沢度250以上300未満(つや消しの金属光沢)
「C」:光沢度200以上250未満(金属光沢なし)
「D」:測定不能(水性インク組成物を吐出できなかった)
【0180】
【表8】

【0181】
4.10.4.評価結果
表8に示すように、実施例1の分散液を用いて作製された水性インク組成物は、光沢度が360となり、クリアな金属光沢を有する画像を印刷することができた。
【0182】
一方、比較例2および比較例3の分散液を用いて作製された水性インク組成物は、インクジェット記録装置のヘッドからインクを吐出することができず、画像を記録することができなかった。これは、水性インク組成物中でアルミニウム顔料が凝集し、粒径が増大することによりヘッド部分の目詰まりが起きたことによるものと考えられる。
【0183】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0184】
10…試料、10a…(試料の)表面、20…検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)有機溶媒中にアルミニウム顔料を分散させたアルミニウム顔料分散液中に、下記一般式(1)で示される化合物を含有する処理剤を加え、前記アルミニウム顔料の表面に存在する水酸基と前記一般式(1)で示される化合物とを反応させて、前記アルミニウム顔料の表面に被膜を形成する工程と、
(b)前記有機溶媒のうち少なくとも一部を除去する工程と、
(c)ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルおよびその塩から選択される少なくとも1種を含有する水溶液を添加する工程と、
を含む、耐水化アルミニウム顔料分散液の製造方法。
【化9】

(式中、pは1〜3の整数を表し、qはp+q=3の関係を満たす整数を表し、rは2〜10の整数を表す。RおよびRは、それぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基を表し、Rは、アクリル基、アクリロイル基またはメタアクリロイル基を表す。)
【請求項2】
請求項1において、
前記処理剤は、さらに、アルコキシアルキルシランと、水と、を含有する、耐水化アルミニウム顔料分散液の製造方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記アルミニウム顔料は、5nm以上30nm以下の平均厚みを有し、かつ、0.5μm以上3μm以下の50%平均粒子径を有する平板状粒子である、耐水化アルミニウム顔料分散液の製造方法。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項において、
前記被膜の厚さは、0.5nm以上10nm以下である、耐水化アルミニウム顔料分散液の製造方法。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか一項において、
前記有機溶媒は、ジエチレングリコールジエチルエーテルまたはトリエチレングリコールモノブチルエーテルである、耐水化アルミニウム顔料分散液の製造方法。
【請求項6】
下記一般式(1)で示される化合物を含有する処理剤でアルミニウム顔料を表面処理することにより、少なくともケイ素を含有する膜で被覆された耐水化アルミニウム顔料が、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルおよびその塩から選択される少なくとも1種を含有する水溶液中に分散されてなることを特徴とする、耐水化アルミニウム顔料分散液。
【化10】

(式中、pは1〜3の整数を表し、qはp+q=3の関係を満たす整数を表し、rは2〜10の整数を表す。RおよびRは、それぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基を表し、Rは、アクリル基、アクリロイル基またはメタアクリロイル基を表す。)
【請求項7】
請求項6において、
さらに、前記処理剤は、アルコキシアルキルシランと、水と、を含有する、耐水化アルミニウム顔料分散液。
【請求項8】
請求項6または請求項7において、
前記ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルおよびその塩から選択される少なくとも1種の含有量は、前記アルミニウム顔料の含有量に対して、0.3倍以上7.0倍以下である、耐水化アルミニウム顔料分散液。
【請求項9】
請求項6ないし請求項8のいずれか一項において、
前記アルミニウム顔料は、5nm以上30nm以下の平均厚みを有し、かつ、0.5μm以上3μm以下の50%平均粒子径を有する平板状粒子である、耐水化アルミニウム顔料分散液。
【請求項10】
請求項6ないし請求項9のいずれか一項において、
前記ケイ素を含有する膜の厚さは、0.5nm以上10nm以下である、耐水化アルミニウム顔料分散液。
【請求項11】
少なくとも下記一般式(1)で示される化合物がアルミニウム顔料の表面に化学的に結合した構造を有し、さらにポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルおよびその塩から選択される少なくとも1種を含有することを特徴とする、耐水化アルミニウム顔料。
【化11】

(式中、pは1〜3の整数を表し、qはp+q=3の関係を満たす整数を表し、rは2〜10の整数を表す。RおよびRは、それぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基を表し、Rは、アクリル基、アクリロイル基またはメタアクリロイル基を表す。)
【請求項12】
請求項11において、
前記アルミニウム顔料の表面に、さらにアルコキシアルキルシランが化学的に結合した構造を有する、耐水化アルミニウム顔料。
【請求項13】
請求項11または請求項12において、
前記アルミニウム顔料は、5nm以上30nm以下の平均厚みを有し、かつ、0.5μm以上3μm以下の50%平均粒子径を有する平板状粒子である、耐水化アルミニウム顔料。
【請求項14】
請求項11ないし請求項13のいずれか一項において、
X線光電子分光法(XPS)による元素分析において、光電子取出し角度を高角度にするにつれて、ケイ素の検出割合が同等または増加することを特徴とする、耐水化アルミニウム顔料。
【請求項15】
請求項14において、
前記ケイ素の検出割合は、0.01%以上1%以下の範囲内である、耐水化アルミニウム顔料。
【請求項16】
請求項11ないし請求項15のいずれか一項において、
ゼータ電位が負電位であり、かつ、前記ゼータ電位の絶対値が50mV以上80mV以下である、耐水化アルミニウム顔料。
【請求項17】
請求項6ないし請求項10に記載の耐水化アルミニウム顔料分散液または請求項11ないし請求項16に記載の耐水化アルミニウム顔料を含有する、水性インク組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2011−140609(P2011−140609A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−14231(P2010−14231)
【出願日】平成22年1月26日(2010.1.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】