説明

耐水化アルミニウム顔料分散液およびそれを含有する水性インク組成物、ならびに耐水化アルミニウム顔料分散液の製造方法

【課題】水性塗料や水性インク組成物に配合された時の白色化を防止すると共に、水分散性および金属光沢性に優れた耐水化アルミニウム顔料分散液を提供すること。
【解決手段】本発明に係る耐水化アルミニウム顔料分散液は、アルミニウム顔料をシリカ膜で被覆した耐水化アルミニウム顔料が、一般式(1)または式(2)で表される構造単位と、式(3)で表される構造単位と、を有する共重合体A、一般式(1)または式(2)で表される構造単位と、一般式(4)で表される構造単位と、を有する共重合体B、および一般式(1)または式(2)で表される構造単位と、一般式(5)で表される構造単位と、を有する共重合体C、から選択される少なくとも1種を含む水溶液中に分散されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐水化アルミニウム顔料分散液およびそれを含有する水性インク組成物、ならびに耐水化アルミニウム顔料分散液の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷物上に金属光沢を有する塗膜を形成する手法として、真鍮、アルミニウム微粒子等から作製された金粉、銀粉を顔料に用いた印刷インキや金属箔を用いた箔押し印刷、金属箔を用いた熱転写方式等が用いられてきた。
【0003】
近年、印刷におけるインクジェットへの応用例が数多く見受けられ、その中の一つの応用例としてメタリック印刷があり、金属光沢を有するインクの開発が進められている。例えば、特許文献1には、アルキレングリコール等の有機溶媒をベースとしたアルミニウム顔料分散液およびそれを含有する非水系インク組成物が開示されている。
【0004】
その一方で、地球環境面および人体への安全面等の観点から、有機溶媒をベースとした非水系インク組成物よりも水系インク組成物の開発が望まれているという実態がある。しかしながら、アルミニウム顔料は、水中に分散させると、水との反応により水素ガスを発生すると共にアルミナを形成して白色化する。これにより、アルミニウム顔料は、金属光沢を損なう場合がある。
【0005】
このため、例えば、特許文献2には、アルミニウム顔料の表面をシロキサン結合を有する加水分解縮合物で被覆した後に、水や界面活性剤を含む水系溶媒中に分散させることについて記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−174712号公報
【特許文献2】特開2004−131542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、表面にシロキサン結合の形成されたアルミニウム顔料を水系溶媒中に分散させると、アルミニウム顔料同士の凝集や、凝集に伴ってアルミニウム顔料の金属光沢が低下する場合があった。
【0008】
本発明に係る幾つかの態様は、上記課題を解決することで、水性塗料や水性インク組成物に配合された時の白色化を防止すると共に、水分散性および金属光沢性に優れた耐水化アルミニウム顔料分散液を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は前述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現することができる。
【0010】
[適用例1]
本発明に係る耐水化アルミニウム顔料分散液の一態様は、
アルミニウム顔料をシリカ膜で被覆した耐水化アルミニウム顔料が、
下記一般式(1)または下記式(2)で表される構造単位と、下記一般式(3)で表される構造単位と、を有する共重合体A、
下記一般式(1)または下記式(2)で表される構造単位と、下記一般式(4)で表される構造単位と、を有する共重合体B、
および下記一般式(1)または下記式(2)で表される構造単位と、下記一般式(5)で表される構造単位と、を有する共重合体C、
から選択される少なくとも1種を含む水溶液中に分散されてなることを特徴とする。
【0011】
【化1】

(式中AおよびAは、それぞれ独立に、水素、アルカリ金属、またはアンモニウムを表す。)
【0012】
【化2】

【0013】
【化3】

(式中mは、1以上5以下の整数を表す。)
【0014】
【化4】

(式中nは、1以上5以下の整数を表す。)
【0015】
【化5】

(式中oは、1以上5以下の整数を表す。Rは、アルキル基を表す。)
【0016】
適用例1の耐水化アルミニウム顔料分散液によれば、アルミニウム顔料の表面にシリカ膜が形成されることにより耐水性が付与され、水性塗料や水性インク組成物に配合された時においても金属光沢性を損なわない。また、シリカ膜で被覆されたアルミニウム顔料を、共重合体A、共重合体B、および共重合体Cから選択される少なくとも1種を含む水溶液中に分散させることで、耐水性や金属光沢性を損なわずに水分散性に優れた耐水化アルミニウム顔料分散液となる。
【0017】
[適用例2]
適用例1において、
前記アルミニウム顔料は、5nm以上30nm以下の平均厚みを有し、かつ、0.5μm以上3μm以下の50%平均粒子径を有する平板状粒子であることができる。
【0018】
[適用例3]
適用例1または適用例2において、
前記シリカ膜の厚みは、0.5nm以上10nm以下であることができる。
【0019】
[適用例4]
適用例1ないし適用例3のいずれか1例において、
前記耐水化アルミニウム顔料は、テトラエトキシシランで表面処理されたものであることができる。
【0020】
[適用例5]
適用例1ないし適用例4のいずれか1例において、
前記共重合体A、前記共重合体B、および前記共重合体Cの含有量の合計は、前記アルミニウム顔料1質量部に対して、0.02質量部以上1.5質量部以下であることができる。
【0021】
[適用例6]
適用例1ないし適用例5のいずれか1例において、
前記共重合体A、前記共重合体B、および前記共重合体Cの重量平均分子量は、それぞれ200以上50万以下であることができる。
【0022】
[適用例7]
本発明に係る水性インク組成物の一態様は、適用例1ないし適用例6のいずれか1例に記載の耐水化アルミニウム顔料分散液を含有する。
【0023】
[適用例8]
本発明に係る耐水化アルミニウム顔料分散液の製造方法の一態様は、
有機溶媒中にアルミニウム顔料を分散させたアルミニウム顔料分散液中に、テトラエトキシシランを添加して、前記アルミニウム顔料の表面に存在する水酸基と前記テトラエトキシシランとを反応させ、前記アルミニウム顔料の表面にシリカ膜を形成する第1工程と、
前記有機溶媒の少なくとも一部を除去する第2工程と、
界面活性剤水溶液を添加する第3工程と、
を有することを特徴とする。
【0024】
適用例8の耐水化アルミニウム顔料分散液によれば、アルミニウム顔料の表面にシリカ膜が形成されることにより耐水性が付与され、水性塗料や水性インク組成物に配合された時においても金属光沢性を損なわない。また、シリカ膜で被覆されたアルミニウム顔料を、界面活性剤水溶液中に分散させることで、耐水性や金属光沢性を損なわずに水分散性に優れた耐水化アルミニウム顔料分散液を得ることができる。
【0025】
[適用例9]
適用例8において、
前記界面活性剤は、ポリカルボン酸およびその塩の少なくとも一方であることができる。
【0026】
[適用例10]
適用例9において、
前記ポリカルボン酸およびその塩は、下記一般式(1)または下記式(2)で表される構造単位と、下記一般式(3)で表される構造単位と、を有する共重合体A、
下記一般式(1)または下記式(2)で表される構造単位と、下記一般式(4)で表される構造単位と、を有する共重合体B、
および下記一般式(1)または下記式(2)で表される構造単位と、下記一般式(5)で表される構造単位と、を有する共重合体C、
から選択される少なくとも1種であることを特徴とする。
【0027】
【化6】

(式中AおよびAは、それぞれ独立に、水素、アルカリ金属、またはアンモニウムを表す。)
【0028】
【化7】

【0029】
【化8】

(式中mは、1以上5以下の整数を表す。)
【0030】
【化9】

(式中nは、1以上5以下の整数を表す。)
【0031】
【化10】

(式中oは、1以上5以下の整数を表す。Rは、アルキル基を表す。)
【0032】
[適用例11]
適用例8ないし適用例10のいずれか1例において、
第1工程、第2工程、第3工程の順に行うことができる。
【0033】
[適用例12]
適用例8ないし適用例11のいずれか1例において、
前記アルミニウム顔料は、5nm以上30nm以下の平均厚みを有し、かつ、0.5μm以上3μm以下の50%平均粒子径を有する平板状粒子であることができる。
【0034】
[適用例13]
適用例8ないし適用例12のいずれか1例において、
前記シリカ膜の厚みは、0.5nm以上10nm以下であることができる。
【0035】
[適用例14]
適用例10ないし適用例13のいずれか1例において、
前記共重合体A、前記共重合体B、および前記共重合体Cの重量平均分子量は、それぞれ200以上50万以下であることができる。
【0036】
[適用例15]
適用例8ないし適用例14のいずれか1例において、
前記界面活性剤の添加量は、前記アルミニウム顔料1質量部に対して、0.02質量部以上1.5質量部以下であることができる。
【0037】
[適用例16]
適用例8ないし適用例15のいずれか1例において、
前記有機溶媒は、ジエチレングリコールジエチルエーテルであることができる。
【0038】
[適用例17]
適用例8ないし適用例16のいずれか1例において、
前記第1工程は、さらに、アンモニアを添加する工程を含むことができる。
【0039】
[適用例18]
適用例8ないし適用例17のいずれか1例において、
前記第2工程は、遠心分離によって、前記有機溶媒と前記シリカ膜が形成された前記アルミニウム顔料とを分離させる操作を含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】XPS測定における光電子取出し角度を模式的に示した概念図。
【図2】本実施形態の耐水化アルミニウム顔料分散液における耐水化アルミニウム顔料の表面状態を示すSEM画像。
【図3】本実施形態の耐水化アルミニウム顔料分散液における耐水化アルミニウム顔料の断面状態を示すTEM画像。
【図4】本実施形態の耐水化アルミニウム顔料分散液における耐水化アルミニウム顔料の断面状態を示すTEM画像。
【図5】本実施形態の耐水化アルミニウム顔料分散液における耐水化アルミニウム顔料の断面状態を示すTEM画像。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下に本発明の好適な実施の形態について説明する。以下に説明する実施の形態は、本発明の一例を説明するものである。また、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形例も含む。
【0042】
1.耐水化アルミニウム顔料分散液の製造方法
本発明の一実施形態に係る耐水化アルミニウム顔料分散液の製造方法は、有機溶媒中にアルミニウム顔料を分散させたアルミニウム顔料分散液中に、テトラエトキシシランを添加して、前記アルミニウム顔料の表面に存在する水酸基と前記テトラエトキシシランとを反応させ、前記アルミニウム顔料の表面にシリカ膜を形成する第1工程と、前記有機溶媒の少なくとも一部を除去する第2工程と、界面活性剤水溶液を添加する第3工程と、を有することを特徴とする。
【0043】
以下、前述した各工程について詳細に説明する。
【0044】
1.1. 第1工程
まず、下記の(1)および(2)の工程により、有機溶媒中にアルミニウム顔料を分散させたアルミニウム顔料分散液を調製する。
【0045】
(1)シート状基材面に剥離用樹脂層とアルミニウムまたはアルミニウム合金層(以下、単に「アルミニウム層」という。)とが、順次積層された構造からなる複合化顔料原体を用意する。
【0046】
シート状基材としては、特に制限されないが、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルフィルム、ナイロン66、ナイロン6などのポリアミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、トリアセテートフィルム、ポリイミドフィルムなどの離型性フィルムが挙げられる。これらのうち、ポリエチレンテレフタレートまたはその共重合体が好ましい。
【0047】
シート状基材の厚さは、特に制限されないが、好ましくは10μm以上150μm以下である。10μm以上であれば、工程等で取扱い性に問題がなく、150μm以下であれば、柔軟性に富み、ロール化、剥離等に問題がない。
【0048】
剥離用樹脂層は、アルミニウム層のアンダーコート層であり、シート状基材面との剥離性を向上させるための剥離性層である。この剥離用樹脂層に用いる樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、セルロース誘導体、アクリル酸重合体または変性ナイロン樹脂が好ましい。
【0049】
上記例示した樹脂の1種または2種以上の混合物の溶液をシート状基材に塗布し乾燥させることにより、剥離用樹脂層を形成することができる。塗布後は、粘度調整剤などの添加剤を添加することもできる。
【0050】
剥離用樹脂層の塗布は、一般的に用いられているグラビア塗布、ロール塗布、ブレード塗布、エクストルージョン塗布、ディップ塗布、スピンコート法などの公知の技術を用いることができる。塗布・乾燥後、必要であればカレンダー処理により表面の平滑化を行うことができる。
【0051】
剥離用樹脂層の厚さは、特に制限されないが、好ましくは0.5μm以上50μm以下であり、より好ましくは1μm以上10μm以下である。0.5μm未満では分散樹脂としての量が不足し、50μmを超えるとロール化した場合、顔料層との界面で剥離しやすいものとなってしまう。
【0052】
アルミニウム層を積層させる手段としては、真空蒸着、イオンプレーティングまたはスパッタリング法を適用することが好ましい。
【0053】
また、アルミニウム層は、特開2005−68250号公報に例示されるように、保護層で挟まれていてもよい。該保護層としては、酸化ケイ素層、保護用樹脂層が挙げられる。
【0054】
酸化ケイ素層は、酸化ケイ素を含有する層であれば特に制限されるものではないが、ゾル−ゲル法によって、テトラアルコキシシランなどのシリコンアルコキシドまたはその重合体から形成されることが好ましい。シリコンアルコキシドまたはその重合体を溶解したアルコール溶液を塗布し、加熱焼成することにより、酸化ケイ素層の塗膜を形成する。
【0055】
保護用樹脂層としては、分散媒に溶解しない樹脂であれば特に制限されるものではないが、例えば、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、セルロース誘導体等を挙げることができる。これらのうち、ポリビニルアルコールまたはセルロース誘導体から形成されることが好ましい。
【0056】
上記例示した樹脂1種または2種以上の混合物の水溶液を塗布し乾燥させると、保護用樹脂層を形成することができる。塗布液には、粘度調整剤などの添加剤を添加することができる。酸化ケイ素および樹脂の塗布は、剥離用樹脂層の塗布と同様の手法により行われる。
【0057】
保護層の厚さは、特に制限されないが、50nm以上150nm以下の範囲が好ましい。50nm未満では機械的強度が不足であり、150nmを超えると強度が高くなりすぎるため粉砕・分散が困難となり、またアルミニウム層との界面で剥離してしまう場合がある。
【0058】
また、特開2005−68251号公報に例示されるように、「保護層」と「アルミニウム層」との間に色材層を有していてもよい。
【0059】
色材層は、任意の着色複合顔料を得るために導入するものであり、本実施形態に使用するアルミニウム顔料の金属光沢、光輝性、背景隠蔽性に加え、任意の色調、色相を付与できる色材を含有できるものであれば特に制限されるものではない。この色材層に用いる色材としては、染料、顔料のいずれでもよい。また、染料、顔料としては、公知のものを適宜使用することができる。
【0060】
この場合、色材層に用いられる「顔料」とは、一般的な工学の分野で定義される、天然顔料、合成有機顔料、合成無機顔料等を意味する。
【0061】
色材層の形成方法としては、特に制限されないが、コーティングにより形成することが好ましい。また、色材層に用いられる色材が顔料の場合は、色材分散用樹脂をさらに含むことが好ましく、該色材分散用樹脂としては、顔料と色材分散用樹脂と必要に応じてその他の添加剤等を溶媒に分散または溶解させ、溶液としてスピンコートで均一な液膜を形成した後、乾燥させて樹脂薄膜として作製されることが好ましい。なお、複合化顔料原体の製造において、上記の色材層と保護層の形成がともにコーティングにより行われることが、作業効率上好ましい。
【0062】
複合化顔料原体としては、剥離用樹脂層とアルミニウム層との順次積層構造を複数有する層構成も可能である。その際、複数のアルミニウム層からなる積層構造の全体の厚み、すなわち、シート状基材とその直上の剥離用樹脂層を除いた、アルミニウム層−剥離用樹脂層−アルミニウム層、または剥離用樹脂層−アルミニウム層の厚みは5000nm以下であることが好ましい。5000nm以下であると、複合化顔料原体をロール状に丸めた場合でも、ひび割れ、剥離を生じ難く、保存性に優れる。また、顔料化した場合も金属光沢性に優れており好ましいものである。また、シート状基材面の両面に、剥離用樹脂層とアルミニウム層とが順次積層された構造も挙げられるが、これらに制限されるものではない。
【0063】
(2)次いで、複合化顔料原体を有機溶媒中で、複合化顔料原体のシート基材面と剥離用樹脂層との界面を境界として、複合化顔料原体から剥離し、それを粉砕または微細化処理することにより、粗大粒子を含むアルミニウム顔料分散液が得られる。さらに、得られたアルミニウム顔料分散液をろ過し粗大粒子を除去することで、アルミニウムの平板状粒子を含有するアルミニウム顔料分散液を得ることができる。
【0064】
有機溶媒としては、アルミニウム顔料の分散安定性や、後述するテトラエトキシシランとの反応性を損なわないものであればよいが、極性有機溶媒であることが好ましい。極性有機溶媒としては、例えば、アルコール類(メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、イソプロピルアルコール、フッ化アルコール等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等)、カルボン酸エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等)、エーテル類(ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等)等が挙げられる。
【0065】
以上例示した極性有機溶媒の中でも、常温常圧下で液体であるアルキレングリコールモノエーテルまたはアルキレングリコールジエーテルであることがより好ましい。
【0066】
アルキレングリコールモノエーテルとしては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられる。
【0067】
アルキレングリコールジエーテルとしては、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル等が挙げられる。
【0068】
これらの中でも、アルミニウム顔料の分散安定性に優れる観点から、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルであることがさらに好ましい。また、アルミニウム顔料に光沢性および耐水性を付与する観点から、ジエチレングリコールジエチルエーテルであることが特に好ましい。
【0069】
シート状基材からの剥離処理法としては、特に制限されないが、複合化顔料原体を液体中に浸漬することによりなされる方法や、液体中に浸漬すると同時に超音波処理を行い剥離処理と剥離した複合化顔料の粉砕処理を行う方法が好ましい。
【0070】
上記のようにして得られた平板状粒子からなるアルミニウム顔料は、剥離用樹脂層が保護コロイドの役割を有し、溶剤中での分散処理を行うだけで安定な分散液を得ることが可能である。また、該アルミニウム顔料をインク組成物に用いる場合には、前記剥離用樹脂層由来の樹脂が記録媒体に対する接着性を付与する機能も担うことができる。
【0071】
以上の工程により得られたアルミニウム顔料分散液中のアルミニウム顔料の形状は、良好な耐水性や金属光沢性を付与する観点から平板状粒子であることが好ましい。
【0072】
ここで、「平板状粒子」とは、アルミニウム粒子の平面上の長径をX、短径をY、厚みをZとした場合、略平坦な面(X−Y平面)を有し、かつ、厚み(Z)が略均一である粒子をいう。より詳しくは、該アルミニウム粒子の略平坦な面(X−Y平面)の面積より求めた円相当径の50%平均粒子径R50(以下、単に「R50」ともいう。)が0.5μm以上3μm以下であって、かつ、厚み(Z)が5nm以上30nm以下であることを満たすものをいう。
【0073】
「円相当径」とは、アルミニウム粒子の略平坦な面(X−Y平面)を、該アルミニウム粒子の投影面積と同じ投影面積を持つ円と想定したときの当該円の直径である。例えば、アルミニウム粒子の略平坦な面(X−Y平面)が多角形である場合、その多角形の投影面を円に変換して得られた当該円の直径を、そのアルミニウム粒子の円相当径という。
【0074】
平板状粒子の略平坦な面(X−Y平面)の面積より求めた円相当径の50%平均粒子径R50は、良好な金属光沢性および印字安定性を確保する観点から、好ましくは0.5μm以上3μm以下であることが好ましく、0.75μm以上2μm以下であることがより好ましい。R50が0.5μm未満の場合には、金属光沢が不足することがある。一方、R50が3μmを超える場合、印字安定性が低下することがある。
【0075】
平板状粒子の略平坦な面(X−Y平面)の面積より求めた円相当径の最大粒子径は、10μm以下であることが好ましい。最大粒子径を10μm以下にすることで、インクジェット記録装置のノズルや、インク流路内に設けられた異物除去フィルター等に該平板粒子が目詰まりすることを防止することができる。
【0076】
平板状粒子の平面上の長径X、短径Y、円相当径は、粒子像分析装置を用いて測定することができる。粒子像分析装置としては、例えば、フロー式粒子像分析装置FPIA−2100、FPIA−3000、FPIA−3000S(以上、シスメックス株式会社製)が挙げられる。
【0077】
平板状粒子の粒度分布(CV値)は、下記式(6)より求めることができる。
CV値=粒度分布の標準偏差/粒子径の平均値×100 ・・・(6)
【0078】
ここで、得られるCV値は、好ましくは60以下であり、より好ましくは50以下であり、特に好ましくは40以下である。CV値が60以下の平板状粒子を選択することで、印字安定性に優れるという効果が得られる。
【0079】
厚み(Z)は、金属光沢性を確保する観点から、5nm以上30nm以下であることが好ましく、より好ましくは10nm以上25nm以下である。厚み(Z)が5nm未満であると、アルミニウム粒子の表面にシリカ膜を形成したときに金属光沢性が低下する傾向がある。一方、厚み(Z)が30nmを超えても、金属光沢性が低下する傾向がある。
【0080】
アルミニウム顔料は、コストの観点および金属光沢性を確保する観点から、アルミニウムまたはアルミニウム合金であることが好ましい。アルミニウム合金を用いる場合、アルミニウム以外に添加する他の金属元素または非金属元素としては、例えば、銀、金、白金、ニッケル、クロム、錫、亜鉛、インジウム、チタン、銅などが挙げられる。
【0081】
ここで、アルミニウム顔料分散液に含まれるアルミニウム顔料を、洗浄する工程を設けてもよい。アルミニウム顔料の洗浄には、前述した有機溶媒を用いることができる。
【0082】
アルミニウム顔料分散液には、前述の剥離用樹脂層が含まれていたり、剥離用樹脂層がアルミニウム顔料に付着している場合がある。剥離用樹脂層に含まれる成分は、後述するテトラエトキシシランとアルミニウム顔料との反応を阻害する場合がある。そのため、アルミニウム顔料を洗浄することによって、剥離用樹脂層の成分を除去して、後述するテトラエトキシシランとアルミニウム顔料との反応性を向上させることができる。
【0083】
アルミニウム顔料の洗浄方法としては、特に限定されるものではないが、例えば以下のように行うことができる。
【0084】
まず、上記のアルミニウム顔料分散液から有機溶媒の少なくとも一部を除去する。有機溶媒の除去は、ろ過、遠心沈降または遠心分離等の操作により、有機溶媒とアルミニウム顔料とを分離してアルミニウム顔料分散液に含まれる有機溶媒を除去する。
【0085】
次に、アルミニウム顔料に洗浄用の有機溶媒を加えて、有機溶媒中にアルミニウム顔料を分散させた後、洗浄用の有機溶媒を除去する。なお、アルミニウム顔料を洗浄用の有機溶媒に分散させ、洗浄用の有機溶媒を除去する工程は、複数回行ってもよい。
【0086】
その後、アルミニウム顔料に前述した有機溶媒を加えて分散させることによって、アルミニウム顔料の洗浄されたアルミニウム顔料分散液を得ることができる。
【0087】
(3)次いで、アルミニウム顔料分散液中にテトラエトキシシラン(以下、「TEOS」ともいう。)を添加して撹拌する。これにより、アルミニウム顔料の表面に存在する水酸基とTEOSとが加水分解反応して、アルミニウム顔料の表面にシリカ膜を形成することができる。アルミニウム顔料を水中に分散させると、水素ガスの発生を伴い、アルミナの生成によりアルミニウム顔料が白色化する。そのため、アルミニウム顔料の表面をシリカ膜で覆うことにより耐水性を付与し、白色化によるアルミニウム顔料の金属光沢の消失を防ぐことができる。
【0088】
加水分解反応における反応温度は、好ましくは10℃以上150℃以下、より好ましくは20℃以上130℃以下である。10℃未満では、加水分解反応の進行が遅くなり、アルミニウム顔料表面のシリカ膜の形成が不十分となりやすい。150℃を超えると安全上格別の注意を要する。
【0089】
前記加水分解反応における反応時間は、好ましくは0.5時間以上200時間以下、より好ましくは1時間以上180時間以下である。反応時間が0.5時間未満では、加水分解反応が十分に完結しない場合があり、十分な耐水性および水分散性が得られない場合がある。200時間を超えると、アルミニウム顔料が凝集することがある。
【0090】
TEOSの添加量は、シリカ膜の厚みが0.5nm以上10nm以下、好ましくは5nmとなるような量を計算して決定すればよい。シリカ膜の厚みが10nmを超えると、金属光沢性が低下することがあるからである。
【0091】
TEOSの添加量は、具体的には、アルミニウム顔料1質量部に対して、好ましくは0.2質量部以上5質量部以下、より好ましくは0.5質量部以上4質量部以下、さらに好ましくは1質量部以上3質量部以下を添加する。TEOSの添加量が5質量部を超えると、未反応のTEOSによりアルミニウム顔料分散液が白濁化することがある。一方、0.2質量部未満では、アルミニウム顔料の表面に存在する水酸基を完全に被覆できないことがある。
【0092】
第1工程において、TEOSの添加後、さらに塩基性触媒としてアンモニアを添加することができる。アンモニアは、TEOSの加水分解反応を促進することができる。
【0093】
アンモニアの添加量は、アルミニウム顔料10質量部に対して、好ましくは1質量部以下、さらに好ましくは0.1質量部以下である。アンモニアの添加量が上記範囲を超えると、アルミニウム顔料分散液の粘度が上昇し、アルミニウム顔料分散液中のアルミニウム顔料が凝集し、金属光沢を維持できなくなる。
【0094】
1.2.第2工程
本実施形態に係る第2工程では、アルミニウム顔料分散液から有機溶媒の少なくとも一部を除去する。
【0095】
有機溶媒の除去は、ろ過、遠心沈降または遠心分離等の操作により、有機溶媒とシリカ膜の形成されたアルミニウム顔料とを分離してアルミニウム顔料分散液に含まれる有機溶媒を除去する。上記の操作の中でも簡便であることから、遠心分離により分離して有機溶媒を除去する方法が好ましい。これらの方法により、アルミニウム顔料分散液に含まれる有機溶媒の70%以上除去することが好ましく、80%以上除去することがより好ましい。
【0096】
1.3.第3工程
本実施形態に係る第3工程では、界面活性剤を水に溶解させて得られた界面活性剤水溶液をアルミニウム顔料分散液に添加して十分に攪拌する。本実施形態において、第1工程、第2工程、第3工程の順に行うことが好ましい。第2工程後に、第3工程の界面活性剤水溶液の添加を行うことによって、アルミニウム顔料の凝集を効果的に防ぐことができ、耐水化アルミニウム顔料分散液の分散性を向上できるためである。
【0097】
本明細書において、第2工程後に第3工程である界面活性剤水溶液を添加することを、「界面活性剤の後添加」という。一方、界面活性剤の後添加に対して、第2工程前に第3工程である界面活性剤水溶液を添加することを、「界面活性剤の先添加」という。界面活性剤の先添加を行うと、有機溶媒の影響により界面活性剤の効果を阻害し、アルミニウム顔料の凝集を引き起こす場合がある。
【0098】
本工程によって、前記工程で得られたアルミニウム顔料分散液中の有機溶媒を水系溶媒へと溶媒置換することができ、水分散性に優れた耐水化アルミニウム顔料分散液が得られる。また、本工程により得られた耐水化アルミニウム顔料分散液の溶媒は、水系溶媒をベースとするものであるため、容易に水性インク組成物に適用することができる。
【0099】
界面活性剤水溶液の添加後の撹拌時間は、特に限定されないが、3時間以上120時間以下であることが好ましい。撹拌時間が前記範囲内であると、金属光沢性を損なわずに水分散性に優れた耐水化アルミニウム顔料分散液を得ることができる。撹拌時間が120時間を超えると、アルミニウム顔料の凝集により金属光沢性が損なわれることがある。
【0100】
前記水は、イオン交換水、限外ろ過水、逆浸透水、蒸留水などの純水または超純水を用いることが好ましい。特に、これらの水を紫外線照射または過酸化水素添加などにより滅菌処理した水は、長期間に亘りカビやバクテリアの発生を抑制することができるので好ましい。
【0101】
前記界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、高分子界面活性剤等を用いることができる。
【0102】
アニオン性界面活性剤としては、脂肪酸系として高級脂肪酸塩およびα−スルホ脂肪酸メチルエステル塩、直鎖アルキルベンゼン系として直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、高級アルコール系としてアルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩、およびジオクチルスルホサクシネート塩、α−オレフィン系としてα−オレフィンスルホン酸塩、ノルマルパラフィン系としてアルカンスルホン酸塩等が挙げられる。アニオン性界面活性剤は、これらに限定されるものではない。
【0103】
カチオン性界面活性剤としては、第4級アンモニウム系としてアルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩およびアルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、アミン塩系としてN−メチルビスヒドロキエチルアミン脂肪酸エステル塩酸塩等が挙げられる。カチオン性界面活性剤は、これらに限定されるものではない。
【0104】
非イオン性界面活性剤としては、脂肪酸系としてショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルおよび脂肪酸アルカノールアミド、アルキルフェノール系としてポリオキシエチレンアルキルエーテル、アルキルグリコシドおよびポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルなどが挙げられる。非イオン性界面活性剤は、これらに限定されるものではない。
【0105】
両性界面活性剤としては、アミノ酸系としてアルキルアミノ脂肪酸塩、ベタイン系としてアルキルカルボキシルベタイン、アミンオキシド系としてアルキルアミンオキシドなどが挙げられる。両性界面活性剤は、これらに限定されるものではない。
【0106】
高分子界面活性剤としては、ポリカルボン酸系、ナフタレン系、メラミン系、アミノスルホン酸系の高分子界面活性剤等が挙げられる。ポリカルボン酸系界面活性剤としては、アクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、または無水マレイン酸と、オレフィン、スチレン、またはポリオキシアルキレンアルキルエーテルとの共重合体、アクリル酸とイタコン酸の共重合体、メタアクリル酸とイタコン酸の共重合体、マレイン酸または無水マレイン酸とスチレンとの共重合体、アクリル酸とメタアクリル酸との共重合体、アクリル酸とアクリル酸メチルエステルとの共重合体、アクリル酸と酢酸ビニルとの共重合体、アクリル酸とマレイン酸または無水マレイン酸との共重合体、並びにこれらの塩(例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムおよびアミン塩等)が挙げられる。なお、これらの共重合体は、交互共重合体、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等のいずれの形態であってもよい。
【0107】
界面活性剤としては、上記の中でも、高分子界面活性剤が好ましく、ポリカルボン酸およびその塩の少なくとも一方であることがより好ましく、以下に示す共重合体A、共重合体B、および共重合体Cから選択される少なくとも1種であることが特に好ましい。共重合体A、共重合体B、および共重合体Cは、それぞれ単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよい。
【0108】
共重合体A、共重合体B、および共重合体Cは、嵩高い分子構造を有している。そのため、共重合体A、共重合体B、および共重合体Cは、シリカ膜の形成されたアルミニウム顔料の表面に吸着後、分子構造に由来する立体障害作用により、シリカ膜の形成されたアルミニウム顔料同士の凝集を効果的に抑制できる。
【0109】
共重合体Aは、下記一般式(1)または下記式(2)で表される構造単位と、下記一般式(3)で表される構造単位と、を有する。共重合体Bは、下記一般式(1)または下記式(2)で表される構造単位と、下記一般式(4)で表される構造単位と、を有する。共重合体Cは、下記一般式(1)または下記式(2)で表される構造単位と、下記一般式(5)で表される構造単位と、を有する。共重合体A、共重合体B、および共重合体Cは、交互共重合体、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等のいずれの共重合体であってもよい。
【0110】
【化11】

(式中AおよびAは、それぞれ独立に、水素、アルカリ金属、またはアンモニウムを表す。)
【0111】
【化12】

【0112】
【化13】

(式中mは、1以上5以下の整数を表す。)
【0113】
【化14】

(式中nは、1以上5以下の整数を表す。)
【0114】
【化15】

(式中oは、1以上5以下の整数を表す。Rは、アルキル基を表す。)
【0115】
上記一般式(3)におけるmは、1以上5以下の整数であり、1以上3以下の整数であることが好ましい。また、上記一般式(4)におけるnは、1以上5以下であり、好ましくは1以上3以下である。また、上記一般式(5)におけるoは、1以上5以下であり、好ましくは1以上3以下である。
【0116】
共重合体A、共重合体B、および共重合体Cのそれぞれの重量平均分子量は、好ましくは2000以上50万以下であり、さらに好ましくは1万以上10万以下である。共重合体A、共重合体B、および共重合体Cの重量平均分子量が上記範囲を超えると、耐水化アルミニウム顔料分散液の粘度が高くなり、分散性が悪化する。一方、共重合体A、共重合体B、および共重合体Cの重量平均分子量が上記範囲未満であると、界面活性剤の立体障害効果が期待できなくなり、耐水化アルミニウム顔料分散液の分散性が悪化する。
【0117】
なお、重量平均分子量は、例えば、溶媒としてテトラヒドロフランを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定し、ポリスチレン換算分子量によって求めることができる。
【0118】
共重合体Aとしては、例えば、構造単位としてマレイン酸およびオレフィンを有する共重合体であるポリスターOM(商品名、日本油脂株式会社製)が挙げられる。共重合体Bとしては、例えば、構造単位としてマレイン酸およびスチレンを有する共重合体であるDSKディスコートN−10(商品名、第一工業製薬株式会社)が挙げられる。共重合体Cとしては、例えば、構造単位として無水マレイン酸およびポリオキシプロピレンアルキルエーテルを有する共重合体であるマリアリムAKM−0531(商品名、日本油脂株式会社製)が挙げられる。なお、共重合体Cとしては、さらに、構造単位としてスチレンを有していてもよい。
【0119】
界面活性剤の添加量は、アルミニウム顔料1質量部に対して、好ましくは0.02質量部以上1.5質量部以下、より好ましくは0.03質量部以上1.3質量部以下、さらに好ましくは0.03質量部以上1.2質量部以下である。界面活性剤の添加量が上記範囲を超えると、耐水化アルミニウム顔料分散液の分散性が悪化する場合がある。一方、界面活性剤の添加量が上記範囲未満であると、アルミニウム顔料の凝集が発生し、金属光沢を維持できなくなる。
【0120】
界面活性剤水溶液の添加量は、耐水化アルミニウム顔料分散液の全質量に対して、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上である。
【0121】
2.耐水化アルミニウム顔料分散液
本実施の形態にかかる耐水化アルミニウム顔料分散液は、上述した製造工程により製造することができる。本実施の形態にかかる耐水化アルミニウム顔料分散液は、アルミニウム顔料をシリカ膜で被覆した耐水化アルミニウム顔料が、共重合体A、共重合体B、および共重合体Cから選択される少なくとも1種を含む水溶液中に分散されてなることを特徴とする。
【0122】
本実施の形態にかかる耐水化アルミニウム顔料分散液によれば、アルミニウム顔料の表面にシリカ膜が形成されることにより耐水性が付与され、水性塗料や水性インク組成物に配合された時においても金属光沢性を損なわない。また、シリカ膜で被覆されたアルミニウム顔料を、共重合体A、共重合体B、および共重合体Cから選択される少なくとも1種を含む水溶液中に分散させることで、耐水性や金属光沢性を損なわずに水分散性に優れた耐水化アルミニウム顔料分散液となる。
【0123】
耐水化アルミニウム顔料は、テトラエトキシシランで表面処理されたものであることができる。前述したように、テトラエトキシシランでアルミニウム顔料の表面を処理することによって、耐水性の優れた耐水化アルミニウム顔料を得ることができる。
【0124】
アルミニウム顔料は、5nm以上30nm以下の平均厚みを有し、かつ、0.5μm以上3μm以下の50%平均粒子径(R50)を有する平板状アルミニウム粒子であることが好ましい。
【0125】
前述したように、アルミニウム顔料の平均厚みが5nm以上30nm以下であると、優れた金属光沢性を有する耐水化アルミニウム顔料を形成することができる。一方、平均厚みが5nm未満では金属光沢性が低下する傾向があり、30nmを超えても金属光沢性が低下する傾向がある。
【0126】
前述したように、アルミニウム顔料のR50が0.5μm以上3μm以下であると、良好な金属光沢性および印字安定性を確保することができる。R50が0.5μm未満の場合には、金属光沢性が不足することがある。一方、R50が3μmを超える場合、印字安定性が低下することがある。
【0127】
シリカ膜の厚みは、好ましくは0.5nm以上10nm以下であり、より好ましくは1nm以上9nm以下である。シリカ膜の厚みが0.5nm未満であると、アルミニウム顔料に十分な耐水性や水分散性を付与することができない。一方、シリカ膜の厚みが10nmを超えると、アルミニウム顔料に耐水性や水分散性を付与することはできるが、金属光沢性が低下する傾向がある。
【0128】
本実施の形態に係る耐水化アルミニウム顔料分散液は、X線光電子分光法(以下、「XPS」という。)による元素分析によって、その表面状態を特定することができる。XPSの原理は、概ね以下の通りである。
【0129】
XPSは、X線の照射により試料から放出される光電子のエネルギーを測定する分光法である。光電子は、大気中ではすぐに分子と衝突して散乱されてしまうため、装置を真空にしておく必要がある。また、固体試料の奥深くで放出された光電子は、試料内で散乱されて表面から脱出することができない。したがって、XPSは、試料表面からのみの光電子を測定することになるので、表面分析法として有効である。XPSでは、試料表面からおおよそ数nm以内の範囲を分析することができる。
【0130】
観測される光電子の運動エネルギーEは、hν−Eから、さらに結晶内の電子を試料表面の外に移すためのエネルギーφを引いた値、すなわち、
E=hν−E−φ …(7)
と表すことができる。但し、h:プランク定数、ν:振動数、E:電子の結合エネルギーである。前記式(7)から、Eの値は励起源のX線のエネルギーにより異なることが分かる。励起X線には、通常アルミニウムやマグネシウムをターゲットとするX線管からの特性X線を使用する。電子エネルギーの測定法は、特に制限されないが、代表的なものとして電子を静電場中に導き一定軌道を描くもののみを検出する静電場型がある。
【0131】
XPSにより、電子の結合エネルギーEを測定することができる。かかる結合エネルギーは、基本的に元素固有の値であるから元素の種類を特定することができる。また、光電子スペクトルの強度から各元素を定量することもできる。
【0132】
ところで、入射されたX線は試料の表面から内部へと進入するが、励起された光電子の平均自由工程が0.1nm〜数nmと小さいため、試料の表面近傍からのみ光電子を放出することになる。これにより、試料の表面近傍の分析が可能となる。しかしながら、試料の表面近傍に形成された層が数層に亘り存在するような場合において、該層の微量な組成を観測しようとしても正確に検出できないことがある。XPSでは、表面から数十Åを平均化した組成の相対量を観測しているからである。このように表面から数層の組成を観測する場合には、光電子の脱出深さの角度依存性を利用することができる。すなわち、光電子は等方的に試料の表面から放出されるが、光電子取出し角度によって光電子の固体表面からの脱出深さが異なる。この現象を利用すると、光電子取出し角度を試料表面に垂直な方向から斜め方向に変化させることにより脱出深さが小さくなり、より試料の表面近傍の情報を得ることができる。
【0133】
ここで、「光電子取出し角度」とは、試料表面と検出器とがなす角度である。図1に、XPS測定における光電子取出し角度を模式的に示した概念図を示す。
【0134】
図1(A)は、光電子取出し角度が90°である場合を示している。図1(A)に示すように、「光電子取出し角度が90°」とは、試料10における表面10aと検出器20とのなす角θが90°である場合をいう。図1(A)に示すように、このとき光電子の脱出深さは最大となり、試料表面10aから深さDまでの情報を検出することができる。
【0135】
図1(B)は、光電子取出し角度が30°である場合を示している。図1(B)に示すように、光電子取出し角度を30°に設定するためには、検出器20の位置を固定した上で試料10を検出器20に対して傾けることで調節する。光電子取出し角度が30°である場合、光電子の脱出深さdは、d=Dsin30°=0.5Dとなる。したがって、光電子取出し角度を30°に設定することで光電子の脱出深さが小さくなり、より表面近傍の情報を検出することができる。
【0136】
本実施の形態に係る耐水化アルミニウム顔料分散液において、アルミニウム顔料を被覆したシリカ膜の厚みは、前述したように0.5nm以上10nm以下であることが好ましいので、XPS測定装置の種類にもよるが光電子取出し角度を10°以上45°未満に設定しておくことが好ましい。前記範囲内の角度に設定しておくことにより、耐水化アルミニウム顔料のより表面近傍の状態を特定することができる。
【0137】
耐水化アルミニウム顔料の表面におけるシリカ膜の被覆率は、XPSにより測定されたC、O、Al、Si元素の組成比から算出することができる。
【0138】
以下、XPSを用いて測定されたC、O、Al、Si元素の組成比から耐水化アルミニウム顔料の表面におけるシリカ膜の被覆率を求める方法について説明する。
【0139】
まず、XPS測定から得られたC、O、Al、Si元素の組成比は、以下のように帰属することができる。
(1)Al
酸素と結合していない単体のAl(Al)と、酸素と結合した状態のAl(Al)と、に帰属することができる。Al−2pスペクトルのピークを分離し、そのピークの面積比から、酸素と結合していない単体のAl(Al)と酸素と結合した状態のAl(Al)との比率を求めることができる。
(2)Si
TEOS由来のSi(Si)に帰属することができる。
(3)O
Alと結合しているO(O)とSiと結合した状態のO(O)とに帰属することができる。
(4)C
検出されるCは、有機溶媒や界面活性剤等の一部であり、被膜の形成には関与しないとすることができる。
【0140】
以上の元素帰属から、耐水化アルミニウム顔料の表面におけるシリカ膜の被覆率は、下記式(8)から求めることができる。
【0141】
【数1】

【0142】
本実施形態に係る耐水化アルミニウム顔料の上記式(8)から算出されるシリカ膜の被覆率は、好ましくは30%以上90%以下であり、より好ましくは50%以上90%以下である。被覆率が上記範囲内であると、アルミニウム顔料に耐水性を付与することができ、水中に分散させても白色化することがない。被覆率が30%未満であると、十分な耐水性が得られないためアルミニウム顔料が白色化したり、十分な水分散性が得られないためアルミニウム顔料が凝集し黒色化することがある。一方、被覆率が90%を超えるには、技術的困難性を伴う。
【0143】
3.水性インク組成物
本実施の形態に係る水性インク組成物は、前述した耐水化アルミニウム顔料分散液を含有することを特徴とする。本明細書において、「水性インク組成物」とは、溶媒として水を70質量%以上含有するインク組成物のことをいう。水は、イオン交換水、限外ろ過水、逆浸透水、蒸留水などの純水または超純水を用いることが好ましい。特に、これらの水を紫外線照射または過酸化水素添加などにより滅菌処理した水は、長期間に亘りカビやバクテリアの発生を抑制することができるので好ましい。
【0144】
本実施形態に係る水性インク組成物中のアルミニウム顔料の濃度は、水性インク組成物の全質量に対して、好ましくは0.1〜3.0質量%、より好ましくは0.25〜2.5質量%、特に好ましくは0.5〜2.0質量%である。
【0145】
本実施の形態に係る水性インク組成物は、樹脂類、界面活性剤、アルカンジオール、多価アルコール、pH調整剤等を添加することができる。
【0146】
樹脂類は、アルミニウム顔料を記録媒体上に強固に定着させる機能を有する。樹脂類の成分としては、例えば、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、アクリロニトリル、シアノアクリレート、アクリルアミド、オレフィン、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、ビニルアルコール、ビニルエーテル、ビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルカルバゾール、ビニルイミダゾール、塩化ビニリデンの単独重合体もしくは共重合体、ウレタン樹脂、フッ素樹脂、天然樹脂等が挙げられる。なお、共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体のいずれの形態でも用いることができる。
【0147】
界面活性剤としては、アセチレングリコール系界面活性剤またはポリシロキサン系界面活性剤を含有することが好ましい。アセチレングリコール系界面活性剤およびポリシロキサン系界面活性剤は、記録媒体などの被記録面への濡れ性を高めてインクの浸透性を高めることができる。アセチレングリコール系界面活性剤としては、例えば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、2,4−ジメチル−5−ヘキシン−3−オールなどが挙げられる。また、アセチレングリコール系界面活性剤は、市販品を利用することもでき、例えば、オルフィンE1010、STG、Y(以上、日信化学社製)、サーフィノール104、82、465、485、TG(以上、Air Products and Chemicals Inc.製)が挙げられる。ポリシロキサン系界面活性剤としては、市販品を利用することができ、例えば、BYK−347、BYK−348(ビックケミー・ジャパン社製)などが挙げられる。さらに、水性インク組成物には、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤などのその他の界面活性剤を含有することもできる。
【0148】
アルカンジオールは、記録媒体などの被記録面への濡れ性を高めてインクの浸透性を高めることができる。アルカンジオールとしては、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオールなどの炭素数が4以上8以下の1,2−アルカンジオールであることが好ましい。これらの中でも炭素数が6以上8以下の1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオールは、記録媒体への浸透性が特に高いためより好ましい。
【0149】
多価アルコールは、例えば、水性インク組成物をインクジェット記録装置に適用した場合に、水性インク組成物の乾燥を抑制し、インクジェット記録ヘッド部分における水性インク組成物の目詰まりを防止することができる。多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオグリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなどが挙げられる。
【0150】
pH調整剤としては、例えば、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、アンモニア、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。
【0151】
また、本実施形態に係る水性インク組成物は、水溶性ロジンなどの定着剤、安息香酸ナトリウムなどの防黴剤・防腐剤、アロハネート類などの酸化防止剤・紫外線吸収剤、キレート剤、酸素吸収剤などの添加剤を含有させることができる。これらの添加剤は、1種単独で用いることもできるし、もちろん2種以上組み合わせて用いることもできる。
【0152】
本実施形態に係る水性インク組成物は、その用途は特に限定されず、例えば、筆記具、スタンプ、記録計、ペンプロッター、インクジェット記録装置等に適用することができる。
【0153】
本実施の形態に係る水性インク組成物の20℃における粘度は、好ましくは2mPa・s以上10mPa・s以下であり、より好ましくは3mPa・s以上5mPa・s以下である。水性インク組成物の20℃における粘度が前記範囲内にあると、ノズルから水性インク組成物が適量吐出され、水性インク組成物の飛行曲がりや飛散を一層低減することができるため、インクジェット記録装置に好適に使用することができる。
【0154】
4. 実施例
4.1 実施例1
膜厚100μmのPETフィルム上に、セルロースアセテートブチレート(ブチル化率35〜39%、関東化学社製)3.0質量%およびジエチレングリコールジエチルエーテル(日本乳化剤社製)97質量%からなる樹脂層塗工液をバーコート法によって均一に塗布し、60℃、10分間乾燥することで、PETフィルム上に樹脂層薄膜を形成した。
【0155】
次いで、真空蒸着装置(「VE−1010型真空蒸着装置」、真空デバイス社製)を用いて、上記の樹脂層上に平均膜厚20nmのアルミニウム蒸着層を形成した。
【0156】
次いで、上記方法にて形成した積層体を、ジエチレングリコールジエチルエーテル中、VS−150超音波分散機(アズワン社製)を用いて、剥離・微細化・分散処理を同時に行い、積算の超音波分散処理時間が12時間であるアルミニウム顔料分散液を作製した。
【0157】
得られたアルミニウム顔料分散液を、開き目5μmのSUSメッシュフィルターにてろ過処理を行い、粗大粒子を除去した。次いで、ろ液を丸底フラスコに入れ、ロータリーエバポレーターを用いてジエチレングリコールジエチルエーテルを留去した。これにより、アルミニウム顔料分散液を濃縮し、その後、そのアルミニウム顔料分散液の濃度調整を行い、5.0質量%のアルミニウム顔料分散液を得た。
【0158】
次いで、得られたアルミニウム顔料分散液5.0gをビーカーに投入し、これにシリカ原料であるTEOS0.57g、塩基性触媒である1モル/Lアンモニア水0.1gを添加して、7日間室温で攪拌することにより加水分解反応させた。これにより、アルミニウム顔料の表面にシリカ膜を形成させたアルミニウム顔料分散液を得た。
【0159】
次いで、それを遠心分離(10,000rpm、60分間)し、シリカ膜を形成させたアルミニウム顔料分散液に含まれる溶媒を除去した。その後、撹拌しながら、界面活性剤として0.2質量%のポリスターOMを含む水溶液(以下、「0.2%ポリスターOM水溶液」ともいう。)を、アルミニウム顔料の濃度が1.7質量%となる量を計算し添加した。このようにして、耐水化アルミニウム顔料分散液Aを得た。
【0160】
4.2 実施例2
上記「4.1 実施例1」において、0.2%ポリスターOM水溶液に代えて、1質量%のポリスターOM(以下、「1%ポリスターOM水溶液」ともいう。)を用いたこと以外は同様にした。このようにして、耐水化アルミニウム顔料分散液Bを得た。
【0161】
次に、得られた耐水化アルミニウム顔料分散液Bを同量に分けて、耐水化アルミニウム顔料分散液B−1、およびB−2を得た。
【0162】
4.3 実施例3
上記「4.1 実施例1」において、0.2%ポリスターOM水溶液に代えて、2質量%のポリスターOMを含む水溶液を用いたこと以外は同様にした。このようにして、耐水化アルミニウム顔料分散液Cを得た。
【0163】
4.4 実施例4
上記「4.1 実施例1」において調製した5.0質量%のアルミニウム顔料分散液5gをビーカーに投入し、これにTEOS0.57g、0.1モル/Lアンモニア水0.1gを添加して、7日間室温で攪拌することにより加水分解反応させた。これにより、アルミニウム顔料の表面にシリカ膜を形成させたアルミニウム顔料分散液を得た。
【0164】
次いで、それを遠心分離(10,000rpm、60分間)し、シリカ膜を形成させたアルミニウム顔料分散液に含まれる溶媒を除去した。その後、撹拌しながら0.2%ポリスターOM水溶液をアルミニウム顔料濃度が5.0質量%となる量を計算して添加した。このようにして、耐水化アルミニウム顔料分散液Dを得た。
【0165】
4.5 実施例5
上記「4.1 実施例1」において、ポリスターOMに代えて、マリアリムAKM−0531を用いたこと以外は同様にした。このようにして、耐水化アルミニウム顔料分散液Eを得た。
【0166】
4.6 実施例6
上記「4.2 実施例2」において、ポリスターOMに代えて、マリアリムAKM−0531を用いたこと以外は同様にした。このようにして、耐水化アルミニウム顔料分散液Fを得た。
【0167】
4.7 実施例7
上記「4.1 実施例1」において、塩基性触媒を加えなかったこと以外は、同様にした。このようにして、耐水化アルミニウム顔料分散液Gを得た。
【0168】
4.8 実施例8
上記「4.1 実施例1」において、0.2%ポリスターOM水溶液に代えて、0.1質量%のDSKディスコートN−10を含む水溶液を用いたこと以外は同様にした。このようにして、耐水化アルミニウム顔料分散液Hを得た。
【0169】
4.9 実施例9
上記「4.2 実施例2」において、ポリスターOMに代えて、DSKディスコートN−10を用いたこと以外は同様にした。このようにして、耐水化アルミニウム顔料分散液Iを得た。
【0170】
4.10 実施例10
上記「4.1 実施例1」において得られた5.0質量%のアルミニウム顔料分散液を遠心分離(12,000rpm、30分間)して、アルミニウム顔料分散液に含まれる溶媒を除去した。
【0171】
次に、分離されたアルミニウム顔料に洗浄用の有機溶媒であるテトラヒドロフランを加えて24時間撹拌した後、遠心分離(12,000rpm、30分間)して、テトラヒドロフランを除去した。なお、これらの操作は2回行った。
【0172】
その後、アルミニウム顔料にジエチレングリコールジエチルエーテルを加えて、5.0質量%のアルミニウム顔料分散液を得た。
【0173】
次いで、得られたアルミニウム顔料分散液5.0gをビーカーに投入し、これにTEOS0.57g、1モル/Lアンモニア水0.1gを添加して、6日間室温で攪拌した後昇温して、105℃で5時間撹拌することによって、加水分解反応させた。これによりアルミニウム顔料の表面にシリカ膜を形成させたアルミニウム顔料分散液を得た。
【0174】
次いで、それを遠心分離(10,000rpm、60分間)し、シリカ膜を形成させたアルミニウム顔料分散液に含まれる溶媒を除去した。その後、撹拌しながら、1%ポリスターOM水溶液をアルミニウム顔料の濃度が1.7質量%となる量を計算して添加した。このようにして、耐水化アルミニウム顔料分散液Jを得た。
【0175】
4.11 実施例11
上記「4.10 実施例10」において、加水分解の反応条件を、6日間室温で攪拌した後昇温して、105℃で4時間撹拌して、さらに昇温して115℃で5時間撹拌したことに代えた以外は、同様にした。このようにして、耐水化アルミニウム顔料分散液Kを得た。
【0176】
4.12 比較例1
上記「4.4 実施例4」において、TEOSを添加しなかったこと以外は、同様にした。このようにして、耐水化アルミニウム顔料分散液Lを得た。
【0177】
4.13 比較例2
上記「4.1 実施例1」において調製した5.0質量%アルミニウム顔料分散液5gをビーカーに投入し、これにTEOS0.57g、1モル/Lアンモニア水0.1gを添加して、1日室温で攪拌することにより加水分解反応させた。
【0178】
次いで、それを遠心分離(10,000rpm、60分間)し、溶媒を除去した。その後、撹拌しながらアルミニウム顔料濃度が5.0質量%となるように蒸留水を添加した。このようにして、耐水化アルミニウム顔料分散液Mを得た。
【0179】
4.14 比較例3
上記「4.2 実施例2」において、ポリスターOMに代えて、セラモD−134(ポリアクリル酸アンモニウム塩、第一工業製薬株式会社製)を用いた以外は同様にした。このようにして、耐水化アルミニウム顔料分散液Nを得た。
【0180】
4.15 比較例4
上記「4.2 実施例2」において、ポリスターOMに代えて、シャロールAH−103P(ポリアクリル酸アンモニウム、第一工業製薬株式会社製)を用いた以外は同様にした。このようにして、耐水化アルミニウム顔料分散液Oを得た。
【0181】
4.16 比較例5
上記「4.2 実施例2」において、ポリスターOMに代えて、ディスコールN−509(ポリアルキレンポリアミンアルキレンオキシド付加物、第一工業製薬株式会社製)を用いた以外は同様にした。このようにして、耐水化アルミニウム顔料分散液Pを得た。
【0182】
4.17 比較例6
上記「4.2 実施例2」において、ポリスターOMに代えて、ピッツコールK−30L(ポリビニルピロリドン、第一工業製薬株式会社製)を用いた以外は同様にした。このようにして、耐水化アルミニウム顔料分散液Qを得た。
【0183】
4.18 比較例7
上記「4.2 実施例2」において、ポリスターOMに代えて、プライサーフM−208B(ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸エステル・モノエタノールアミン塩、第一工業製薬株式会社製)を用いた以外は同様にした。このようにして、耐水化アルミニウム顔料分散液Rを得た。
【0184】
4.19 比較例8
上記「4.13 比較例2」において、0.1モル/Lアンモニア水(塩基性触媒)を加えなかった以外は同様にした。このようにして、耐水化アルミニウム顔料分散液Sを得た。
【0185】
4.20 比較例9
上記「4.13 比較例2」において、0.1モル/Lアンモニア水に代えて、ジエチルアミン0.04gを加えた以外は同様にした。このようにして、耐水化アルミニウム顔料分散液Tを得た。
【0186】
4.21 比較例10
上記「4.13 比較例2」において、TEOSに代えて、テトラメトキシシラン(以下、「TMOS」ともいう。)0.57gを加えた以外は同様にした。このようにして、耐水化アルミニウム顔料分散液Uを得た。
【0187】
4.22 比較例11
上記「4.13 比較例2」において、TEOSに代えて、メチルシリケート51(メチルシリケート縮合物、扶桑化学工業株式会社製)0.57gを加えた以外は同様にした。このようにして、耐水化アルミニウム顔料Vを得た。
【0188】
4.23 参考例1
上記「4.1 実施例1」において調製した5.0質量%のアルミニウム顔料分散液5gをビーカーに投入し、これにTEOS0.57g、0.1モル/Lアンモニア水0.1gを添加して、1日室温で攪拌することにより加水分解反応させた。その後、これに1%ポリスターOM水溶液を添加して、5日間室温で攪拌した(界面活性剤の先添加)。次いで、それを遠心分離(10,000rpm、60分間)して溶媒を除去した後、撹拌しながらアルミニウム顔料濃度が5.0質量%となるように蒸留水を添加した。このようにして、耐水化アルミニウム顔料分散液Wを得た。
【0189】
4.24 参考例2
上記「4.23 参考例1」において、界面活性剤をポリスターOMから、マリアリムAKM−0531に代えた以外は同様にした。このようにして、耐水化アルミニウム顔料分散液Xを得た。
【0190】
4.25 評価試験
4.25.1 耐水性評価試験
サンプル瓶に水2mLを入れ、さらに得られた耐水化アルミニウム顔料分散液(以下、単に「分散液」という。)A〜Xのいずれか1種を2mL滴下して、25℃恒温下に静置した。その経時変化を目視により観察することで、分散液の耐水性を評価した。分散液の耐水性の評価基準は、以下のとおりである。耐水性評価試験の結果を表1〜表3に示す。
「AAA」・・耐水性が極めて良好(70日後の時点でも白色化せず)
「AA」・・・耐水性が良好(30日後の時点で白色化せず)
「A」・・・・耐水性がやや良好(10日後の時点で白色化せず)
「B」・・・・耐水性が不良(10日後の時点で白色化)
「C」・・・・耐水性が極めて不良(7日後の時点で白色化)
【0191】
4.25.2 分散性評価試験
サンプル瓶に水2mLを入れ、さらに得られた分散液A〜Xのいずれか1種を2mL滴下して、25℃恒温下に静置した。その経時変化を目視により観察することで、分散液の分散性を評価した。分散液の分散性は、分散液の粘度上昇、アルミニウム顔料同士の凝集による分散液の黒色化によって評価した。分散液の分散性の評価基準は、以下のとおりである。分散性評価試験の結果を表1〜表3に示す。
「AAA」・・分散性が極めて良好
「AA」・・・分散性が良好
「A」・・・・分散性がやや良好
「B」・・・・分散性が不良
「C」・・・・分散性が極めて不良
【0192】
4.25.3 光沢性の評価
分散液A〜Xのいずれか1種を印画紙(「PM写真用紙(光沢)型番:KA450PSK」、セイコーエプソン社製)に滴下・塗布して、室温で1日間乾燥させた。得られたサンプルを目視および走査型電子顕微鏡(S−4700(株)日立ハイテクノロジーズ社製、以下「SEM」ともいう。)で観察することで、アルミニウム顔料の印字性を評価した。アルミニウム顔料の印字性の評価基準は、以下のとおりである。光沢性評価試験の結果を表1〜表3に示す。
「AA」・・・光沢性が良好(金属光沢性に優れており、鏡面光沢を有していた。)
「A」・・・・光沢性がやや良好(金属光沢性に優れているが、ややマット調となっていた。)
「B」・・・・光沢性が不良(マット調であった。)
【0193】
【表1】

【0194】
【表2】

【0195】
【表3】

【0196】
4.25.4 シリカ膜の被覆率の測定
(1)測定条件1
上記工程により得られた直後の分散液A〜G、J〜M、S〜Xのいずれか1種をポリテトラフルオロエチレン製メンブランフィルターに滴下し、乾燥させたものを被覆率測定用サンプルとした。次に、被覆率測定用サンプルを下記に示すX線光電子分光装置の試料台に固定して、下記の測定条件1で耐水化アルミニウム顔料の表面のC、O、Si、Alの存在比を測定した。
[測定条件1]
・X線光電子分光装置:ESCA5800(アルバック・ファイ社製)
・X線源 :Mg−Kα線
・X線照射角度 :30°
【0197】
また、得られた各種元素の存在比から、上記式(8)により耐水化アルミニウム顔料におけるシリカ膜の被覆率を算出した。各種元素の存在比およびシリカ膜の被覆率を表4および表5に示す。
【0198】
なお、表4および表5に記載のAl(atom%)には、上述したようにAl単体で存在しているものとAl−Oの状態で存在しているものとが含まれる。これらのピークを分離することにより、Al単体で存在しているものとAl−Oの状態で存在しているものとの比率を求めることができる。その結果、実施例1〜7、実施例10、比較例1〜2、比較例8〜11、および参考例1〜2では、Al単体で存在しているものが18%、Al−Oの状態で存在しているものが82%であった。また、実施例11では、Al単体で存在しているものが20%、Al−Oの状態で存在しているものが80%であった。
【0199】
【表4】

【0200】
【表5】

【0201】
(2)測定条件2
分散液Jおよび分散液Kについては、上記「(1)測定条件1」の測定に加えて、下記の測定条件2でアルミニウム顔料の表面のC、O、Si、Alの存在比を測定した。
[測定条件2]
・X線光電子分光装置:ESCA1000(アルバック・ファイ社製)
・X線源 :単色化Al−Kα線
・X線照射角度 :15°
【0202】
また、得られた各種元素の存在比から、上記式(8)により耐水化アルミニウム顔料におけるシリカ膜の被覆率を算出した。各種元素の存在比およびシリカ膜の被覆率を表6に示す。
【0203】
なお、表6における実施例10では、Al単体で存在しているものが18%、Al−Oの状態で存在しているものが82%であった。また、表6における実施例11では、Al単体で存在しているものが16%、Al−Oの状態で存在しているものが84%であった。
【0204】
【表6】

【0205】
(3)測定条件3
実施例2の分散液B−2については、上記「(1)測定条件1」の測定に加えて、シリカ膜の被覆率の経時変化を検証するために以下の条件で試験を行った。
【0206】
具体的には、実施例2の分散液B−2を140日間、25℃恒温下に静置した後、上記「(1)測定条件1」と同様の試験方法でC、O、Si、Alの存在比を測定した。
【0207】
また、得られた各種元素の存在比から、上記式(8)により耐水化アルミニウム顔料におけるシリカ膜の被覆率を算出した。各種元素の存在比およびシリカ膜の被覆率を表7に示す。
【0208】
なお、表7における実施例2では、Al単体で存在しているものが18%、Al−Oの状態で存在しているものが82%であった。
【0209】
【表7】

【0210】
4.25.5 SEMおよびTEMによる観察
(1)SEMによる観察
分散液Aを印画紙(「PM写真用紙(光沢)型番:KA450PSK」、セイコーエプソン社製)に滴下・塗布して、室温で1日間乾燥させた。そして、SEM(S−4700(株)日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて、得られたサンプルの表面状態を観察した。そのSEM画像を図2に示す。
【0211】
(2)TEMによる観察
透過型電子顕微鏡TecnaiG2f30(フィリップス社製、以下「TEM」ともいう。)を用いて、上記「4.25.5(1)」により得られたサンプルの断面状態を観察した。そのTEM画像を図3〜図5に示す。
【0212】
4.25.6 水性インク組成物の光沢度の評価
(1)水性インク組成物の調製(実施例12、比較例3)
表8の組成となるように、上記「4.1 実施例1」により調製した分散液A58.8質量部、グリセリン10質量部、トリメチロールプロパン5質量部、1,2−ヘキサンジオール1質量部、オルフィンE1010(アセチレングリコール系界面活性剤、日信化学社製)1質量部、トリエタノールアミン1質量部に、イオン交換水を加えて100質量部とし、混合撹拌した。このようにして、アルミニウム顔料を1質量%含有する実施例12の水性インク組成物Aを得た。
【0213】
また、上記水性インク組成物Aの調製において、分散液Aに代えて、20質量部の分散液Wを加えた以外は同様にして、アルミニウム顔料を1質量%含有する参考例3の水性インク組成物Wを得た。
【0214】
(2)評価サンプルの作製
インクジェットプリンターPX−G930(セイコーエプソン株式会社製)の専用カートリッジに、上記の水性インク組成物を充填したインクカートリッジを作製した。次に、得られたインクカートリッジをインクジェットプリンターPX−G930のブラック列に装着し、これ以外のノズル列には市販のインクカートリッジを装着した。なお、ブラック列以外に装着した市販のインクカートリッジは、ダミーとして用いるものであり、本実施例の評価では使用しないので、本発明の効果に関与するものではない。
【0215】
次に、上記のプリンターを用いて、ブラック列に装着された上記の水性インク組成物を写真用紙<光沢>(セイコーエプソン株式会社製)上に吐出して、ベタパターン画像が印刷された記録物を得た。なお、印刷条件は、1ドット当たりの吐出インク重量を20ngとし、解像度を縦720dpi、横720dpiとした。
【0216】
(3)画像の評価方法
得られた画像について、光沢度計MULTI Gloss 268(コニカミノルタ社製)を用いて、60度の光沢度を測定した。得られた画像の光沢度の評価基準は、以下のとおりである。光沢度評価試験の結果を表8に示す。
「A」・・・光沢度300以上(クリアな金属光沢)
「B」・・・光沢度250以上300未満(つや消しの金属光沢)
「C」・・・光沢度200以上250未満(金属光沢なし)
「D」・・・測定不能(水性インク組成物を吐出できなかった)
【0217】
【表8】

【0218】
4.25.7 評価結果
(1)実施例1〜12について
実施例1〜11の分散液A〜Kは、いずれもアルミニウム顔料をシリカ膜で被覆した耐水化アルミニウム顔料が、共重合体A、共重合体B、および共重合体Cから選択される少なくとも1種を含む水溶液中に分散されてなる。このため、表1に示すように、耐水性評価試験、分散性評価試験、および光沢性評価試験の結果が良好であり、優れた耐水化アルミニウム顔料分散液を得ることができた。
【0219】
これらの中でも特に、実施例2の分散液B−1、B−2、実施例8の分散液H、実施例10の分散液J、および実施例11の分散液Kは、分散性が極めて良好であることが確認できた。
【0220】
表4に示すように、実施例1〜7の分散液A〜G、および実施例10〜11の分散液J〜Kは、それぞれシリカ膜の被覆率が30%以上であった。実施例1〜7の分散液A〜G、および実施例10〜11の分散液J〜Kは、良好な耐水性、分散性、および光沢性を有していることから、シリカ膜の被覆率が30%以上あれば、アルミニウム顔料の表面がシリカ膜で十分に被覆されており、良好なシリカ膜が形成されていることが示唆された。
【0221】
また、表4および表7に示すように、実施例2の分散液B−2は、140日経過後であっても、分散直後の被覆率と同等であることが確認できた。このため、実施例2の分散液B−2は、アルミニウム顔料の表面に良好なシリカ被覆膜が形成されており、分散安定性に優れており、分散液B−2に含まれているアルミニウム顔料の耐水性に優れていることが示された。
【0222】
図2は、実施例1の分散液Aによって作製されたサンプルの表面状態を示すSEM画像である。これにより、記録媒体上に平板状のアルミニウム顔料が重なるように配置されていることが確認できた。また、図3は、実施例1の分散液Aによって作製されたサンプルの断面状態を示すTEM画像であり、複数のアルミニウム顔料片が重なり合って配置されていることが確認できた。
【0223】
図4は、図3の(a)部分を拡大したTEM画像である。図4に示すように、平板状のアルミニウム顔料1片において、アルミニウム顔料の表面が約4.5nmのシリカ層によって覆われていることが確認できた。これにより、アルミニウム顔料は、シリカ被覆膜によって十分に保護されており、シリカ被覆膜によって耐水性が付与されていることが示された。
【0224】
なお、図4から、アルミニウム層とシリカ層との間に、約4.5nmの厚みの酸化アルミニウムを含む層が形成されていることが確認できた。この酸化アルミニウムを含む層は、アルミニウム顔料の表面に存在する水酸基とTEOSとが加水分解反応した後に生じたもの、およびTEOSと反応していないアルミニウム顔料の表面に存在する水酸基に由来するものと考えられる。
【0225】
また、図5は、実施例1の分散液Aによって作製されたサンプルの断面状態を示すTEM画像である。図5の(b)に示す通り、アルミニウム顔料の端部においても、シリカ膜が良好に形成されていることが確認できた。これにより、アルミニウム顔料の表面がシリカ膜によって十分に保護されており、アルミニウム顔料の耐水性がシリカ膜によって向上されることが示された。
【0226】
表8に示すように、実施例1の分散液Aを用いて調製された実施例12に係る水性インク組成物Aは、光沢度評価試験の結果、良好な金属光沢を有していることが示された。これにより、実施例1の分散液Aは、インクジェット記録装置に好適に使用できることが示された。
【0227】
(2)比較例1〜11、参考例1〜3について
比較例1の分散液Lは、TEOSを添加する工程を行っていないため、耐水性評価試験において耐水性が極めて不良であった。
【0228】
比較例2の分散液Mおよび比較例8の分散液Sは、水系溶媒中に共重合体A、共重合体B、および共重合体Cを含有していない。そのため、分散性評価試験において凝集が発生し、かつ、光沢性評価試験においても塗膜の光沢性が得られなかった。
【0229】
比較例3〜7の分散液N〜Rは、水系溶媒中に共重合体A、共重合体B、および共重合体Cを含まず、これら以外の成分の界面活性剤を含有している。そのため、分散性評価試験において凝集が発生し、かつ、光沢性評価試験においても塗膜の光沢性が得られなかった。
【0230】
比較例9の分散液Tは、水系溶媒中に共重合体A、共重合体B、および共重合体Cを含まず、塩基性触媒としてジエチルアミンを含んでいる。これにより、著しく凝集が発生したので、耐水性評価試験および光沢性評価試験の実施を中止した。
【0231】
比較例10の分散液Uは、水系溶媒中に共重合体A、共重合体B、および共重合体Cを含有しておらず、さらにシリカ原料にTEOSを用いていない。そのため、耐水性が良好ではなかった。
【0232】
比較例11の分散液Vは、水系溶媒中に共重合体A、共重合体B、および共重合体Cを含有しておらず、さらにシリカ原料にTEOSを用いていない。そのため、分散性評価試験において凝集が発生し、かつ、光沢性評価試験においても塗膜の光沢性が得られなかった。
【0233】
参考例1の分散液Wおよび参考例2の分散液Xは、分散性および塗膜の光沢性に優れていなかった。これにより、界面活性剤の先添加を行うと、耐水化アルミニウム顔料分散液の分散性および塗膜の光沢性が低下することが示された。
【0234】
また、表8に示すように、参考例1の分散液Wを用いて調製された参考例3に係る水性インク組成物Wは、インクジェット記録装置から吐出することができず、光沢度を測定することができなかった。そのため、参考例1の分散液Wは、インクジェット記録装置に用いることが困難であることが示された。
【0235】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0236】
10…試料、10a…(試料の)表面、20…検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム顔料をシリカ膜で被覆した耐水化アルミニウム顔料が、
下記一般式(1)または下記式(2)で表される構造単位と、下記一般式(3)で表される構造単位と、を有する共重合体A、
下記一般式(1)または下記式(2)で表される構造単位と、下記一般式(4)で表される構造単位と、を有する共重合体B、
および下記一般式(1)または下記式(2)で表される構造単位と、下記一般式(5)で表される構造単位と、を有する共重合体C、
から選択される少なくとも1種を含む水溶液中に分散されてなることを特徴とする、耐水化アルミニウム顔料分散液。
【化16】

(式中AおよびAは、それぞれ独立に、水素、アルカリ金属、またはアンモニウムを表す。)
【化17】

【化18】

(式中mは、1以上5以下の整数を表す。)
【化19】

(式中nは、1以上5以下の整数を表す。)
【化20】

(式中oは、1以上5以下の整数を表す。Rは、アルキル基を表す。)
【請求項2】
請求項1において、
前記アルミニウム顔料は、5nm以上30nm以下の平均厚みを有し、かつ、0.5μm以上3μm以下の50%平均粒子径を有する平板状粒子であることを特徴とする、耐水化アルミニウム顔料分散液。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記シリカ膜の厚みは、0.5nm以上10nm以下である、耐水化アルミニウム顔料分散液。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、
前記耐水化アルミニウム顔料は、テトラエトキシシランで表面処理されたことを特徴とする、耐水化アルミニウム顔料分散液。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項において、
前記共重合体A、前記共重合体B、および前記共重合体Cの重量平均分子量は、それぞれ200以上50万以下である、耐水化アルミニウム顔料分散液。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項において、
前記共重合体A、前記共重合体B、および前記共重合体Cの含有量の合計は、前記アルミニウム顔料1質量部に対して、0.02質量部以上1.5質量部以下である、耐水化アルミニウム顔料分散液。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の耐水化アルミニウム顔料分散液を含有する、水性インク組成物。
【請求項8】
有機溶媒中にアルミニウム顔料を分散させたアルミニウム顔料分散液中に、テトラエトキシシランを添加して、前記アルミニウム顔料の表面に存在する水酸基と前記テトラエトキシシランとを反応させ、前記アルミニウム顔料の表面に被覆膜を形成する第1工程と、
前記有機溶媒の少なくとも一部を除去する第2工程と、
界面活性剤水溶液を添加する第3工程と、
を有することを特徴とする、耐水化アルミニウム顔料分散液の製造方法。
【請求項9】
請求項8において、
前記界面活性剤は、ポリカルボン酸およびその塩の少なくとも一方である、耐水化アルミニウム顔料分散液の製造方法。
【請求項10】
請求項9において、
前記ポリカルボン酸およびその塩は、
下記一般式(1)または下記式(2)で表される構造単位と、下記一般式(3)で表される構造単位と、を有する共重合体A、
下記一般式(1)または下記式(2)で表される構造単位と、下記一般式(4)で表される構造単位と、を有する共重合体B、
および下記一般式(1)または下記式(2)で表される構造単位と、下記一般式(5)で表される構造単位と、を有する共重合体C、
から選択される少なくとも1種である、耐水化アルミニウム顔料分散液の製造方法。
【化21】

(式中AおよびAは、それぞれ独立に、水素、アルカリ金属、またはアンモニウムを表す。)
【化22】

【化23】

(式中mは、1以上5以下の整数を表す。)
【化24】

(式中nは、1以上5以下の整数を表す。)
【化25】

(式中oは、1以上5以下の整数を表す。Rは、アルキル基を表す。)
【請求項11】
請求項8ないし請求項10のいずれか1項において、
第1工程、第2工程、第3工程の順に行うことを特徴とする、耐水化アルミニウム顔料分散液の製造方法。
【請求項12】
請求項8ないし請求項11のいずれか1項において、
前記アルミニウム顔料は、5nm以上30nm以下の平均厚みを有し、かつ、0.5μm以上3μm以下の50%平均粒子径を有する平板状粒子であることを特徴とする、耐水化アルミニウム顔料分散液の製造方法。
【請求項13】
請求項8ないし請求項12のいずれか1項において、
前記シリカ膜の厚みは、0.5nm以上10nm以下である、耐水化アルミニウム顔料分散液の製造方法。
【請求項14】
請求項10ないし請求項13のいずれか1項において、
前記共重合体A、前記共重合体B、および前記共重合体Cの重量平均分子量は、それぞれ200以上50万以下である、耐水化アルミニウム顔料分散液の製造方法。
【請求項15】
請求項8ないし請求項14のいずれか1項において、
前記界面活性剤の添加量は、前記アルミニウム顔料1質量部に対して、0.02質量部以上1.5質量部以下である、耐水化アルミニウム顔料分散液の製造方法。
【請求項16】
請求項8ないし請求項15のいずれか1項において、
前記有機溶媒は、ジエチレングリコールジエチルエーテルである、耐水化アルミニウム顔料分散液の製造方法。
【請求項17】
請求項8ないし請求項16のいずれか1項において、
前記第1工程は、さらに、アンモニアを添加する工程を含む、耐水化アルミニウム顔料分散液の製造方法。
【請求項18】
請求項8ないし請求項17のいずれか一項において、
前記第2工程は、遠心分離によって、前記有機溶媒と前記シリカ膜が形成された前記アルミニウム顔料とを分離させる操作を含む、耐水化アルミニウム顔料分散液の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−132483(P2011−132483A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−14170(P2010−14170)
【出願日】平成22年1月26日(2010.1.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】