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耐水化アルミニウム顔料分散液及びその製造方法、並びに水性インク組成物
説明

耐水化アルミニウム顔料分散液及びその製造方法、並びに水性インク組成物

【課題】水性塗料や水性インク組成物に配合されたときの白色化を防止でき、優れた金属光沢性を有すると共に、水分散性がとりわけ良好な耐水化アルミニウム顔料分散液を提供する。
【解決手段】本発明に係る耐水化アルミニウム顔料分散液は、アルミニウム顔料の表面をシリカ膜で被覆した耐水化アルミニウム顔料を水系媒体中に分散させた耐水化アルミニウム顔料分散液であって、前記シリカ膜の表面又は内部に、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル又はその塩(A)及びマレイン酸に由来する繰り返し単位を有する重合体(B)が導入されたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐水化アルミニウム顔料分散液及びその製造方法、並びに該耐水化アルミニウム顔料分散液を含有する水性インク組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷物上に金属光沢を有する塗膜を形成する手法として、真鍮、アルミニウム微粒子等から作製された金粉、銀粉を顔料に用いた印刷インキや金属箔を用いた箔押し印刷、金属箔を用いた熱転写方式等が用いられてきた。
【0003】
近年、印刷におけるインクジェットへの応用例が数多く見受けられ、その中の一つの応用例としてメタリック印刷があり、金属光沢を有するインクの開発が進められている。例えば、特許文献1には、アルキレングリコール等の有機溶媒をベースとしたアルミニウム顔料分散液およびそれを含有する非水系インク組成物が開示されている。
【0004】
その一方で、地球環境面及び人体への安全面等の観点から、有機溶媒をベースとした非水系インク組成物よりも水系インク組成物の開発が望まれているという実態がある。しかしながら、アルミニウム顔料は、水中に分散させると、水との反応により水素ガスを発生すると共にアルミナを形成して白色化する。これにより、アルミニウム顔料は、金属光沢を損なう場合がある。
【0005】
このような課題を解決するために、例えば特許文献2には、シリカ膜で表面を被覆して耐水性を向上させたアルミニウム顔料を、ポリカルボン酸又はその塩を含有する水溶液中に分散させた耐水化アルミニウム顔料分散液が開示されている。この耐水化アルミニウム顔料分散液によれば、アルミナの形成による白色化を防止できると共に、優れた金属光沢性を呈することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−174712号公報
【特許文献2】特開2011−132483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、シリカ膜で表面を被覆した耐水化アルミニウム顔料をポリカルボン酸又はその塩を含有する水溶液中に分散させただけの耐水化アルミニウム顔料分散液では、アルミニウム顔料同士の凝集をある程度抑制することはできるものの、未だ十分とは言えなかった。たとえば、前記耐水化アルミニウム顔料が配合されたインク組成物をインクジェットプリンターに適用した場合、前記耐水化アルミニウム顔料同士が凝集することによってノズルの目詰まりを起こし、インクの吐出安定性が損なわれる場合があった。
【0008】
本発明に係る幾つかの態様は、上記課題を解決することで、水性塗料や水性インク組成物に配合されたときの白色化を防止でき、優れた金属光沢性を有すると共に、水分散性がとりわけ良好な耐水化アルミニウム顔料分散液を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は前述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様又は適用例として実現することができる。
【0010】
[適用例1]
本発明に係る耐水化アルミニウム顔料分散液の一態様は、
アルミニウム顔料の表面をシリカ膜で被覆した耐水化アルミニウム顔料を水系媒体中に分散させた耐水化アルミニウム顔料分散液であって、
前記シリカ膜の表面又は内部に、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル又はその塩(A)及びマレイン酸に由来する繰り返し単位を有する重合体(B)が導入されたことを特徴とする。
【0011】
[適用例2]
本発明に係る耐水化アルミニウム顔料分散液の一態様は、
有機溶媒中にアルミニウム顔料を分散させたアルミニウム顔料分散液を準備する工程(a)と、
前記アルミニウム顔料分散液中にテトラエトキシシランを添加する工程(b)と、
ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル又はその塩(A)及びマレイン酸に由来する繰り返し単位を有する重合体(B)を有機溶媒中に溶解させた溶液を前記アルミニウム顔料分散液中に添加する工程(c)と、
前記アルミニウム顔料分散液中に含まれる前記有機溶媒の少なくとも一部を水系媒体に置換する工程(d)と、
を含む方法により得られることを特徴とする。
【0012】
適用例1又は適用例2の耐水化アルミニウム顔料分散液によれば、水性塗料や水性インク組成物に配合されたときの白色化を防止でき、優れた金属光沢性を有すると共に、水分散性がとりわけ良好となる。したがって、適用例1又は適用例2の耐水化アルミニウム顔料分散液を用いた水性インク組成物をインクジェットプリンターに適用した場合、耐水化アルミニウム顔料同士が凝集することによるノズルの目詰まりが抑制されるので、インクの吐出安定性が良好となる。
【0013】
[適用例3]
適用例2の耐水化アルミニウム顔料分散液において、前記水系媒体がマレイン酸に由来する繰り返し単位を有する重合体(B)が添加された水溶液であることができる。
【0014】
[適用例4]
適用例2又は適用例3の耐水化アルミニウム顔料分散液において、前記工程(b)において、塩基性触媒をさらに添加することを含むことができる。
【0015】
[適用例5]
適用例1ないし適用例4のいずれか一例の耐水化アルミニウム顔料分散液において、前記化合物(A)が、下記一般式(1)又は(2)で表される化合物であることができる。
【化1】

【化2】

(上記式中、mは8〜18の整数であり、nは2〜10の整数である。Rは、水素、ナトリウム、カリウム及びモノエタノールアミンから選択される1種であり、式(1)中に2つ存在するRは同一又は異なってもよい。)
【0016】
[適用例6]
適用例1ないし適用例5のいずれか一例において、前記アルミニウム顔料が、5nm以上30nm以下の平均厚みを有し、かつ、0.5μm以上3μm以下の50%平均粒子径を有する平板状粒子であることができる。
【0017】
[適用例7]
適用例1ないし適用例6のいずれか一例において、前記重合体(B)が、下記一般式(3)及び(4)で表される繰り返し単位の少なくとも一方と、下記一般式(5)及び(6)で表される繰り返し単位の少なくとも一方と、を有する共重合体であることができる。
【化3】

(式中、A及びAは、それぞれ独立に、水素、アルカリ金属又はアンモニウムを表す。)
【化4】

【化5】

【化6】

【0018】
[適用例8]
本発明に係る水性インク組成物の一態様は、適用例1ないし適用例7のいずれか一例の耐水化アルミニウム顔料分散液を含有することを特徴とする。
【0019】
[適用例9]
本発明に係る耐水化アルミニウム顔料分散液の製造方法の一態様は、
有機溶媒中にアルミニウム顔料を分散させたアルミニウム顔料分散液を準備する工程(a)と、
前記アルミニウム顔料分散液中にテトラエトキシシランを添加する工程(b)と、
ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル又はその塩(A)及びマレイン酸に由来する繰り返し単位を有する重合体(B)を有機溶媒中に溶解させた溶液を前記アルミニウム顔料分散液中に添加する工程(c)と、
前記アルミニウム顔料分散液中に含まれる前記有機溶媒の少なくとも一部を水系媒体に置換する工程(d)と、
を含むことを特徴とする。
【0020】
[適用例10]
適用例9の耐水化アルミニウム顔料分散液の製造方法において、前記水系媒体が、マレイン酸に由来する繰り返し単位を有する重合体(B)が添加された水溶液であることができる。
【0021】
[適用例11]
適用例9又は適用例10の耐水化アルミニウム顔料分散液の製造方法において、前記工程(b)において、塩基性触媒をさらに添加することを含むことができる。
【0022】
[適用例12]
適用例9ないし適用例11のいずれか一例の耐水化アルミニウム顔料分散液の製造方法において、前記化合物(A)が、下記一般式(1)又は(2)で表される化合物であることができる。
【化7】

【化8】

(上記式中、mは8〜18の整数であり、nは2〜10の整数である。Rは、水素、ナトリウム、カリウム及びモノエタノールアミンから選択される1種であり、式(1)中に2つ存在するRは同一又は異なってもよい。)
【0023】
[適用例13]
適用例9ないし適用例12のいずれか一例の耐水化アルミニウム顔料分散液の製造方法において、前記アルミニウム顔料が、5nm以上30nm以下の平均厚みを有し、かつ、0.5μm以上3μm以下の50%平均粒子径を有する平板状粒子であることができる。
【0024】
[適用例14]
適用例9ないし適用例13のいずれか一例の耐水化アルミニウム顔料分散液の製造方法において、前記重合体(B)が、下記一般式(3)及び(4)で表される繰り返し単位の少なくとも一方と、下記一般式(5)及び(6)で表される繰り返し単位の少なくとも一方と、を有する共重合体であることができる。
【化9】

(式中、A及びAは、それぞれ独立に、水素、アルカリ金属又はアンモニウムを表す。)
【化10】

【化11】

【化12】

【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に本発明の好適な実施の形態について説明する。以下に説明する実施の形態は、本発明の一例を説明するものである。また、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形例も含む。
【0026】
以下、耐水化アルミニウム顔料分散液の製造方法、耐水化アルミニウム顔料分散液、水性インク組成物の順に説明する。
【0027】
1.耐水化アルミニウム顔料分散液の製造方法
本発明の一実施形態に係る耐水化アルミニウム顔料分散液の製造方法は、有機溶媒中にアルミニウム顔料を分散させたアルミニウム顔料分散液を準備する工程(a)と、前記アルミニウム顔料分散液中にテトラエトキシシランを添加する工程(b)と、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル又はその塩(A)及びマレイン酸に由来する繰り返し単位を有する重合体(B)を有機溶媒中に溶解させた溶液を前記アルミニウム顔料分散液中に添加する工程(c)と、前記アルミニウム顔料分散液中に含まれる前記有機溶媒の少なくとも一部を水系媒体に置換する工程(d)と、を含むことを特徴とする。以下、前述した各工程について詳細に説明する。
【0028】
1.1.工程(a)
工程(a)は、有機溶媒中にアルミニウム顔料を分散させたアルミニウム顔料分散液を準備する工程である。
【0029】
まず、シート状基材面に剥離用樹脂層とアルミニウム又はアルミニウム合金層(以下、単に「アルミニウム層」という)とが、順次積層された構造からなる複合化顔料原体を用意する。
【0030】
シート状基材としては、特に制限されないが、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルフィルム、ナイロン66、ナイロン6等のポリアミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、トリアセテートフィルム、ポリイミドフィルム等の離型性フィルムが挙げられる。これらのうち、ポリエチレンテレフタレート又はその共重合体が好ましい。
【0031】
シート状基材の厚さは、特に制限されないが、好ましくは10μm以上150μm以下である。10μm以上であれば、工程等で取扱い性に問題がなく、150μm以下であれば、柔軟性に富み、ロール化・剥離等に問題がない。
【0032】
剥離用樹脂層は、アルミニウム層のアンダーコート層であり、シート状基材面との剥離性を向上させるための剥離性層である。この剥離用樹脂層に用いる樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、セルロース誘導体、アクリル酸重合体又は変性ナイロン樹脂が好ましい。
【0033】
上記例示した樹脂の1種又は2種以上の混合物の溶液をシート状基材に塗布し乾燥させることにより、剥離用樹脂層を形成することができる。塗布後は、粘度調整剤等の添加剤を添加することもできる。
【0034】
剥離用樹脂層の塗布は、一般的に用いられているグラビア塗布、ロール塗布、ブレード塗布、エクストルージョン塗布、ディップ塗布、スピンコート法等の公知の技術を用いることができる。塗布・乾燥後、必要であればカレンダー処理により表面の平滑化を行うことができる。
【0035】
剥離用樹脂層の厚さは、特に制限されないが、好ましくは0.5μm以上50μm以下であり、より好ましくは1μm以上10μm以下である。0.5μm未満では分散樹脂としての量が不足し、50μmを超えるとロール化した場合、顔料層との界面で剥離しやすいものとなってしまう。
【0036】
アルミニウム層を積層させる手段としては、真空蒸着、イオンプレーティング又はスパッタリング法を適用することが好ましい。
【0037】
また、アルミニウム層は、特開2005−68250号公報に例示されるように、保護層で挟まれていてもよい。該保護層としては、酸化ケイ素層、保護用樹脂層が挙げられる。
【0038】
酸化ケイ素層は、酸化ケイ素を含有する層であれば特に制限されるものではないが、ゾル−ゲル法によって、テトラアルコキシシラン等のシリコンアルコキシド又はその重合体から形成されることが好ましい。シリコンアルコキシド又はその重合体を溶解したアルコール溶液を塗布し、加熱焼成することにより、酸化ケイ素層の塗膜を形成することができる。
【0039】
保護用樹脂層としては、分散媒に溶解しない樹脂であれば特に制限されるものではないが、例えば、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、セルロース誘導体等を挙げることができる。これらのうち、ポリビニルアルコール又はセルロース誘導体から形成されることが好ましい。
【0040】
上記例示した樹脂1種又は2種以上の混合物の水溶液を塗布し乾燥させると、保護用樹脂層を形成することができる。塗布液には、粘度調整剤等の添加剤をさらに添加することができる。酸化ケイ素及び樹脂の塗布は、剥離用樹脂層の塗布と同様の手法により行われる。
【0041】
保護層の厚さは、特に制限されないが、50nm以上150nm以下の範囲が好ましい。50nm未満では機械的強度が不足であり、150nmを超えると強度が高くなりすぎるため粉砕・分散が困難となり、またアルミニウム層との界面で剥離してしまう場合がある。
【0042】
また、米国特許7303619号公報に例示されるように、複合化顔料原体は保護層とアルミニウム層との間に色材層を有していてもよい。
【0043】
色材層は、任意の着色複合顔料を得るために導入するものであり、本実施形態に使用するアルミニウム顔料の金属光沢、光輝性、背景隠蔽性に加え、任意の色調、色相を付与できる色材を含有できるものであれば特に制限されるものではない。この色材層に用いる色材としては、染料及び顔料のいずれでもよい。また、染料及び顔料としては、公知のものを適宜使用することができる。
【0044】
かかる場合、色材層に用いられる「顔料」とは、一般的な工学の分野で定義される、天然顔料、合成有機顔料、合成無機顔料等を意味する。
【0045】
色材層の形成方法としては、特に制限されないが、コーティングにより形成することが好ましい。また、色材層に用いられる色材が顔料の場合は、色材分散用樹脂をさらに含むことが好ましく、該色材分散用樹脂としては、顔料と色材分散用樹脂と必要に応じてその他の添加剤等を溶媒に分散または溶解させ、溶液としてスピンコートで均一な液膜を形成した後、乾燥させて樹脂薄膜として作製されることが好ましい。なお、複合化顔料原体の製造において、上記の色材層と保護層の形成がともにコーティングにより行われることが作業効率上好ましい。
【0046】
複合化顔料原体としては、剥離用樹脂層とアルミニウム層との順次積層構造を複数有する層構成も可能である。その際、複数のアルミニウム層からなる積層構造の全体の厚み、すなわち、シート状基材とその直上の剥離用樹脂層を除いた、アルミニウム層−剥離用樹脂層−アルミニウム層又は剥離用樹脂層−アルミニウム層の厚みは5000nm以下であることが好ましい。5000nm以下であると、複合化顔料原体をロール状に丸めた場合でも、ひび割れ、剥離を生じ難く、保存性に優れる。また、顔料化した場合も金属光沢性に優れており好ましい。また、シート状基材面の両面に、剥離用樹脂層とアルミニウム層とが順次積層された構造も挙げられるが、これらに制限されるものではない。
【0047】
次いで、複合化顔料原体を有機溶媒中で、複合化顔料原体のシート基材面と剥離用樹脂層との界面を境界として、複合化顔料原体から剥離し、それを粉砕または微細化処理することにより、粗大粒子を含むアルミニウム顔料分散液が得られる。さらに、得られたアルミニウム顔料分散液をろ過し粗大粒子を除去することで、アルミニウムの平板状粒子を含有するアルミニウム顔料分散液を得ることができる。
【0048】
有機溶媒としては、アルミニウム顔料の分散安定性や、後述するテトラエトキシシランとの反応性を損なわないものであればよいが、極性有機溶媒であることが好ましい。極性有機溶媒としては、例えばアルコール類(メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、イソプロピルアルコール、フッ化アルコール等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等)、カルボン酸エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等)、エーテル類(ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等)等が挙げられる。
【0049】
以上例示した極性有機溶媒の中でも、常温常圧下で液体であるアルキレングリコールモノエーテル又はアルキレングリコールジエーテルであることがより好ましい。
【0050】
アルキレングリコールモノエーテルとしては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられる。
【0051】
アルキレングリコールジエーテルとしては、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル等が挙げられる。
【0052】
これらの中でも、アルミニウム顔料の分散安定性に優れる観点から、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルであることがさらに好ましい。また、アルミニウム顔料に耐水性を付与する後の工程との連続性を考慮すると、ジエチレングリコールジエチルエーテルであることが特に好ましい。
【0053】
シート状基材からの剥離処理法としては、特に制限されないが、複合化顔料原体を液体中に浸漬することによりなされる方法や、液体中に浸漬すると同時に超音波処理を行い剥離処理と剥離した複合化顔料の粉砕処理を行う方法が好ましい。
【0054】
上記のようにして得られた平板状粒子からなるアルミニウム顔料は、剥離用樹脂層が保護コロイドの役割を有し、有機溶媒中での分散処理を行うだけで安定な分散液を得ることが可能である。
【0055】
上記の工程により得られたアルミニウム顔料分散液中のアルミニウム顔料は、平板状粒子となる。アルミニウム顔料が平板状粒子であると、特に良好な金属光沢性が得られやすい点で好ましい。ここで、「平板状粒子」とは、アルミニウム粒子の平面上の長径をX、短径をY、厚みをZとした場合、略平坦な面(X−Y平面)を有し、かつ、厚み(Z)が略均一である粒子をいう。より詳しくは、該アルミニウム粒子の略平坦な面(X−Y平面)の面積より求めた円相当径の50%平均粒子径R50(以下、単に「R50」ともいう。)が0.5μm以上3μm以下であって、かつ、厚み(Z)が5nm以上30nm以下であることを満たすものをいう。なお、本願発明のアルミニウム顔料が平板状に限定されるわけではない。
【0056】
また、「円相当径」とは、アルミニウム粒子の略平坦な面(X−Y平面)を、該アルミニウム粒子の投影面積と同じ投影面積を持つ円と想定したときの当該円の直径である。例えば、アルミニウム粒子の略平坦な面(X−Y平面)が多角形である場合、その多角形の投影面を円に変換して得られた当該円の直径を、そのアルミニウム粒子の円相当径という。
【0057】
平板状粒子の略平坦な面(X−Y平面)の面積より求めた円相当径の50%平均粒子径R50は、良好な金属光沢性および印字安定性を確保する観点から、好ましくは0.5μm以上3μm以下であることが好ましく、0.75μm以上2μm以下であることがより好ましい。R50が0.5μm未満の場合には、金属光沢性が不足することがある。一方、R50が3μmを超える場合、印字安定性が低下することがある。
【0058】
平板状粒子の平面上の長径X、短径Y、及び円相当径は、粒子像分析装置を用いて測定することができる。粒子像分析装置としては、例えば、フロー式粒子像分析装置FPIA−2100、FPIA−3000、FPIA−3000S(以上、シスメックス株式会社製)が挙げられる。
【0059】
平板状粒子の粒度分布(CV値)は、下記式(7)より求めることができる。
CV値=粒度分布の標準偏差/粒子径の平均値×100 ・・・(7)
ここで、得られるCV値は、好ましくは60以下であり、より好ましくは50以下であり、特に好ましくは40以下である。CV値が60以下の平板状粒子を選択することで、印字安定性に優れるという効果が得られる。
【0060】
厚み(Z)は、金属光沢性を確保する観点から、好ましくは5nm以上30nm以下であり、より好ましくは10nm以上25nm以下である。厚み(Z)が5nm未満であると、アルミニウム粒子の表面にシリカ膜を形成したときに金属光沢性が低下する傾向がある。一方、厚み(Z)が30nmを超えても、金属光沢性が低下する傾向がある。
【0061】
アルミニウム顔料は、コストの観点及び金属光沢性を確保する観点から、アルミニウム又はアルミニウム合金であることが好ましい。アルミニウム合金を用いる場合、アルミニウム以外に添加する他の金属元素又は非金属元素としては、例えば、銀、金、白金、ニッケル、クロム、錫、亜鉛、インジウム、チタン、銅などが挙げられる。
【0062】
なお、上記の工程により得られたアルミニウム顔料分散液に含まれるアルミニウム顔料を洗浄する工程を別途設けてもよい。アルミニウム顔料の洗浄には、前述した有機溶媒を用いることができる。
【0063】
アルミニウム顔料分散液には、前述の剥離用樹脂層が含まれていたり、剥離用樹脂層がアルミニウム顔料に付着している場合がある。剥離用樹脂層に含まれる成分は、後述するテトラエトキシシランとアルミニウム顔料との反応を阻害する場合がある。そのため、アルミニウム顔料を洗浄することによって、剥離用樹脂層の成分を除去して、後述するテトラエトキシシランとアルミニウム顔料との反応性を向上させることができる。
【0064】
アルミニウム顔料の洗浄方法としては、特に限定されるものではないが、例えば以下の方法により行うことができる。
【0065】
まず、上記のアルミニウム顔料分散液から有機溶媒の少なくとも一部を除去する。有機溶媒の除去は、ろ過、遠心沈降又は遠心分離等の操作により、有機溶媒とアルミニウム顔料とを分離してアルミニウム顔料分散液に含まれる有機溶媒を除去する。
【0066】
次に、アルミニウム顔料に洗浄用の有機溶媒を加えて、有機溶媒中にアルミニウム顔料を分散させた後、洗浄用の有機溶媒を除去する。なお、アルミニウム顔料を洗浄用の有機溶媒に分散させて洗浄用の有機溶媒を除去する操作は、複数回行ってもよい。
【0067】
その後、アルミニウム顔料に前述した有機溶媒を加えて分散させることによって、洗浄されたアルミニウム顔料を含有するアルミニウム顔料分散液を得ることができる。
【0068】
1.2.工程(b)
工程(b)は、前記工程(a)で得られたアルミニウム顔料分散液中にテトラエトキシシラン(以下、「TEOS」ともいう)を添加して攪拌する工程である。TEOSを添加して十分に攪拌することにより、アルミニウム顔料の表面に存在する水酸基とTEOSのシラノール基とが加水分解縮合して、アルミニウム顔料の表面にシリカ膜が形成される。これにより、アルミニウムと水が直接接触することを抑制できるため、アルミニウム顔料に耐水性が付与されるのである。
【0069】
加水分解縮合における反応温度は、好ましくは10℃以上150℃以下、より好ましくは20℃以上130℃以下である。10℃未満では、加水分解縮合の進行が遅くなり、アルミニウム顔料表面のシリカ膜の形成が不十分となりやすい。150℃を超えると安全上格別の注意を要する。
【0070】
加水分解縮合における反応時間は、好ましくは0.5時間以上200時間以下、より好ましくは1時間以上180時間以下である。反応時間が0.5時間未満では、加水分解縮合が十分に完結しない場合があり、十分な耐水性を有するアルミニウム顔料が得られない場合がある。200時間を超えると、アルミニウム顔料が凝集することがある。
【0071】
TEOSの添加量は、シリカ膜の厚みが0.5nm以上10nm以下、好ましくは5nmとなるような量を計算して決定すればよい。シリカ膜の厚みが10nmを超えると、金属光沢性が低下することがあるからである。
【0072】
より具体的には、TEOSの添加量は、アルミニウム顔料1質量部に対して、0.2質量部以上5質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上4質量部以下であることがより好ましく、1質量部以上3質量部以下であることが特に好ましい。TEOSの添加量が5質量部を超えると、未反応のTEOSが独立したシリカ粒子を形成する場合があり、これによりアルミニウム顔料分散液が白濁化することがある。一方、0.2質量部未満では、アルミニウム顔料の表面に存在する水酸基を完全に加水分解縮合できないことがある。
【0073】
なお、工程(b)では、TEOSの添加後、さらに塩基性触媒を添加して加水分解縮合を促進させてもよい。塩基性触媒としては、例えばアンモニア、トリアルキルアミン、エタノールアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、尿素、コリン、テトラアルキルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。これらの中でも、アンモニアが特に好ましい。
【0074】
塩基性触媒の添加量は、アルミニウム顔料10質量部に対して、好ましくは1質量部以下、さらに好ましくは0.1質量部以下である。塩基性触媒の添加量が上記範囲を超えると、アルミニウム顔料分散液の粘度が上昇したり、アルミニウム顔料分散液中のアルミニウム顔料が凝集し、金属光沢を維持できなくなる場合がある。
【0075】
1.3.工程(c)
工程(c)は、工程(b)で得られたアルミニウム顔料分散液中に、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル又はその塩(A)(以下、「化合物(A)」ともいう)及びマレイン酸に由来する繰り返し単位を有する重合体(B)(以下、「重合体(B)」ともいう)を有機溶媒中に溶解させた溶液を添加して攪拌する工程である。これにより、アルミニウム顔料の表面に形成されたシリカ膜の表面又は内部に化合物(A)及び重合体(B)が導入されて、水分散性を向上(すなわち、アルミニウム顔料同士の凝集を抑制)させることができる。
【0076】
まず、化合物(A)及び重合体(B)を有機溶媒中に添加して十分に攪拌することにより、化合物(A)及び重合体(B)を完全に溶解させた溶液を調製する。
【0077】
化合物(A)としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル又はその塩であれば特に制限されないが、下記一般式(1)又は(2)で表される化合物であることが好ましい。
【化13】

【化14】

(上記式中、mは8〜18の整数であり、nは2〜10の整数である。Rは、水素、ナトリウム、カリウム及びモノエタノールアミンから選択される1種であり、式(1)中に2つ存在するRは同一又は異なってもよい。)
【0078】
重合体(B)を単独で有機溶媒中に添加しても溶解させることは困難であるが、上記一般式(1)又は(2)で表される化合物を添加することにより、重合体(B)を有機溶媒中に可溶化できるようになり、透明な溶液が得られる。この重合体(B)が完全に溶解した溶液を、前記工程(b)で得られたアルミニウム顔料分散液中へ添加して十分に攪拌することで、アルミニウム顔料の表面に形成されたシリカ膜の表面又は内部に化合物(A)及び重合体(B)を導入することができる。これにより、耐水性が付与されたアルミニウム顔料の水分散性が大幅に向上する。
【0079】
上記一般式(1)又は(2)中、mは8〜18の整数であり、12〜18の整数であることがより好ましい。そのメカニズムは明らかではないが、mが12〜18の整数であると、水分散性がさらに向上するだけでなく、耐水性及び金属光沢性の面でも良好な耐水化アルミニウム顔料分散液が得られる。
【0080】
市販されている上記一般式(1)又は(2)で表される化合物としては、例えば、プライサーフA208F(商品名、第一工業製薬株式会社製、ポリオキシエチレンアルキル(C8)エーテルリン酸エステル)、プライサーフA210D(商品名、第一工業製薬株式会社製、ポリオキシエチレンアルキル(C10)エーテルリン酸エステル)、プライサーフDB−01(商品名、第一工業製薬株式会社製、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸エステル・モノエタノールアミン塩)、プライサーフA208B(商品名、第一工業製薬株式会社製、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸エステル)、フォスファノールRD−720(商品名、東邦化学工業株式会社製、ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸ナトリウム)等が挙げられる。
【0081】
なお、化合物(A)のHLB値は、好ましくは5〜18であり、より好ましくは6〜16である。HLBの値が18を超えると、疎水性/親水性のバランスが親水性側となるため、有機溶媒中に溶解し難くなり、化合物(A)及び重合体(B)を溶解させた透明溶液が得られないことがある。一方、HLBの値が5未満では、疎水性/親水性のバランスが疎水性側となるため、後述する工程(d)で水系媒体中に置換する際に化合物(A)が析出することがあり好ましくない。
【0082】
重合体(B)としては、マレイン酸に由来する繰り返し単位を有する重合体であれば特に制限されないが、下記一般式(3)及び(4)で表される繰り返し単位の少なくとも一方と、下記一般式(5)及び(6)で表される繰り返し単位の少なくとも一方と、を有する共重合体であることが好ましい。
【化15】

(式中、A及びAは、それぞれ独立に、水素、アルカリ金属又はアンモニウムを表す。)
【化16】

【化17】

【化18】

【0083】
なお、上記の共重合体は、交互共重合体、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等のいずれの共重合体であってもよい。
【0084】
上記の共重合体は、嵩高い分子構造を有しており、アルミニウム顔料の表面に形成されたシリカ膜の表面に導入されると、その立体障害作用によってアルミニウム顔料同士の凝集を抑制できるものと考えられる。
【0085】
上記の共重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは2000以上50万以下であり、より好ましくは1万以上10万以下である。重量平均分子量が上記範囲を超えると、アルミニウム顔料分散液の粘度が高くなり、水分散性が悪化する場合がある。一方、重量平均分子量が上記範囲未満であると、上記共重合体の立体障害効果が期待できなくなり、アルミニウム顔料分散液の水分散性が悪化する場合がある。なお、重量平均分子量は、例えば、溶媒としてテトラヒドロフランを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定し、ポリスチレン換算分子量によって求めることができる。
【0086】
市販されている上記の共重合体としては、例えば、ポリスターOM(商品名、日油株式会社製、無水マレイン酸−ジイソブチレン共重合体のナトリウム塩、Mw5000)、デモールEP(商品名、花王株式会社製、マレイン酸−ジイソブチレン共重合体)等が挙げられる。
【0087】
また、化合物(A)及び重合体(B)を溶解させる有機溶媒としては、上記工程(a)で例示した有機溶媒を使用することができるが、上記工程(a)で使用した有機溶媒と同一又は類似の化学構造を有する有機溶媒であることが好ましい。このようにすることで、アルミニウム顔料分散液中に含まれる有機溶媒と化合物(A)及び重合体(B)を溶解させた透明溶液とが任意に混ざり合うことができるため好ましい。したがって、上記工程(a)でも説明したように、有機溶媒としては、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルであることがより好ましく、ジエチレングリコールジエチルエーテルであることが特に好ましい。
【0088】
化合物(A)及び重合体(B)を含有する透明溶液における、化合物(A)の含有量は、重合体(B)を完全に可溶化させることができる量であれば特に制限されない。また、重合体(B)の含有量は、有機溶媒中に完全に可溶化できる量であれば特に制限されず、化合物(A)の含有量に応じて適宜調節することができる。
【0089】
化合物(A)及び重合体(B)を含有する透明溶液は、上記有機溶媒中に化合物(A)及び重合体(B)を添加して十分に攪拌することにより得られる。攪拌時間は、好ましくは5時間以上、より好ましくは8時間以上24時間以下である。
【0090】
次いで、得られた透明溶液を上記アルミニウム顔料分散液中に添加して十分に攪拌する。攪拌時間は、好ましくは12時間以上、より好ましくは18時間以上48時間以下である。反応時間が12時間以上であると、化合物(A)及び重合体(B)のシリカ膜への導入が十分なものとなり、良好な水分散性を付与することができる。
【0091】
1.4.工程(d)
工程(d)は、前記工程(c)で得られたアルミニウム顔料分散液中に含まれる有機溶媒の少なくとも一部を水系媒体に置換する工程である。
【0092】
工程(d)によって、前記工程(c)で得られたアルミニウム顔料分散液中の有機溶媒を水系媒体へと置換することができ、水分散性に優れた耐水化アルミニウム顔料分散液が得られる。また、工程(d)により得られた耐水化アルミニウム顔料分散液の溶媒は、水系媒体をベースとするものであるため、容易に水性インク組成物に適用することができる。
【0093】
水系媒体としては、例えば、水又は界面活性剤水溶液等の水を主成分とする媒体であればよい。前記水は、イオン交換水、限外ろ過水、逆浸透水、蒸留水などの純水または超純水を用いることが好ましい。特に、これらの水を紫外線照射または過酸化水素添加などにより滅菌処理した水は、長期間に亘りカビやバクテリアの発生を抑制することができるので好ましい。
【0094】
界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、高分子界面活性剤等が挙げられる。これらの中でも、高分子界面活性剤であることがより好ましく、マレイン酸に由来する繰り返し単位を有する重合体(B)であることがより好ましく、上記一般式(3)及び(4)で表される繰り返し単位の少なくとも一方と、上記一般式(5)及び(6)で表される繰り返し単位の少なくとも一方と、を有する共重合体であることが特に好ましい。
【0095】
界面活性剤の添加量は、アルミニウム顔料1質量部に対して、好ましくは0.05質量部以上2.0質量部以下、より好ましくは0.1質量部以上1.5質量部以下、特に好ましくは0.1質量部以上1.2質量部以下となるように添加するとよい。界面活性剤の添加量が上記範囲を超えると、耐水化アルミニウム顔料分散液の水分散性が悪化する場合がある。一方、界面活性剤の添加量が上記範囲未満であると、アルミニウム顔料の凝集が発生し、金属光沢性を維持できなくなる場合がある。
【0096】
前記工程(c)で得られたアルミニウム顔料分散液中に含まれる有機溶媒の除去は、ろ過、遠心沈降又は遠心分離等の操作により、有機溶媒とシリカ膜が表面に形成されたアルミニウム顔料とを分離してアルミニウム顔料分散液中に含まれる有機溶媒を除去する。上記の操作の中でも簡便であることから、遠心分離により分離して有機溶媒を除去する方法が好ましい。これらの方法により、アルミニウム顔料分散液に含まれる有機溶媒の70%以上除去することが好ましく、80%以上除去することがより好ましい。
【0097】
次いで、有機溶媒の少なくとも一部が除去されたアルミニウム顔料分散液に上記の水系媒体を添加して十分に攪拌する。水系媒体の添加後の撹拌時間は、特に制限されないが、3時間以上120時間以下であることが好ましい。攪拌時間が前記範囲内であると、金属光沢性が損なわれずに水分散性に優れた耐水化アルミニウム顔料分散液を得ることができる。
【0098】
以上のような工程(a)〜工程(d)を経ることによって、水性塗料や水性インク組成物に配合されたときの白色化を防止でき、優れた金属光沢性を有すると共に、水分散性がとりわけ良好な耐水化アルミニウム顔料分散液を製造することができる。
【0099】
2.耐水化アルミニウム顔料分散液
本実施の形態に係る耐水化アルミニウム顔料分散液は、上述した製造方法により得られるものである。すなわち、本実施の形態に係る耐水化アルミニウム顔料分散液は、有機溶媒中にアルミニウム顔料を分散させたアルミニウム顔料分散液を準備する工程(a)と、前記アルミニウム顔料分散液中にテトラエトキシシランを添加する工程(b)と、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル又はその塩(A)及びマレイン酸に由来する繰り返し単位を有する重合体(B)を有機溶媒中に溶解させた溶液を前記アルミニウム顔料分散液中に添加する工程(c)と、前記アルミニウム顔料分散液中に含まれる前記有機溶媒の少なくとも一部を水系媒体に置換する工程(d)と、を含む方法により得られることを特徴とする。
【0100】
また、上述した製造方法により得られる耐水化アルミニウム顔料は、以下のような特徴を有している。すなわち、本実施の形態に係る耐水化アルミニウム顔料分散液は、アルミニウム顔料の表面をシリカ膜で被覆した耐水化アルミニウム顔料を水系媒体中に分散させた耐水化アルミニウム顔料分散液であって、前記シリカ膜の表面又は内部に、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル又はその塩(A)及びマレイン酸に由来する繰り返し単位を有する重合体(B)が導入されたことを特徴とする。
【0101】
本実施の形態に係る耐水化アルミニウム顔料分散液によれば、アルミニウム顔料の表面にシリカ膜が形成されることにより耐水性が付与されるので、水性塗料や水性インク組成物に配合されたときの白色化を防止でき、優れた金属光沢性を有している。また、シリカ膜の表面又は内部に、化合物(A)及び重合体(B)が導入されているので、水分散性にとりわけ優れた耐水化アルミニウム顔料分散液となる。
【0102】
前述したように、シリカ膜が形成される前のアルミニウム顔料は、5nm以上30nm以下の平均厚みを有し、かつ、0.5μm以上3μm以下の50%平均粒子径(R50)を有する平板状アルミニウム粒子であることが好ましい。
【0103】
シリカ膜の厚みは、好ましくは0.5nm以上10nm以下であり、より好ましくは1nm以上9nm以下である。シリカ膜の厚みが0.5nm未満であると、アルミニウム顔料に十分な耐水性や水分散性を付与することができない。一方、シリカ膜の厚みが10nmを超えると、アルミニウム顔料に耐水性や水分散性を付与することはできるが、金属光沢性が低下する傾向がある。
【0104】
アルミニウム顔料の表面に形成されたシリカ膜の表面又は内部に化合物(A)や重合体(B)が導入されているか否かの判断は、例えば、X線光電子分光法(以下、「XPS」ともいう)による元素分析や、H−NMRスペクトル、13C−NMRスペクトル、31P−NMRスペクトルによる化合物の同定等の手段により判断することができる。
【0105】
XPSは、X線の照射により試料から放出される光電子のエネルギーを測定する分光法である。光電子は、大気中ではすぐに分子と衝突して散乱されてしまうため、装置を真空にしておく必要がある。また、固体試料の奥深くで放出された光電子は、試料内で散乱されて表面から脱出することができない。したがって、XPSは、試料表面からのみの光電子を測定することになるので、表面分析法として有効である。XPSでは、試料表面からおおよそ数nm以内の範囲を分析することができる。
【0106】
3.水性インク組成物
本実施の形態に係る水性インク組成物は、前述した耐水化アルミニウム顔料分散液を含有することを特徴とする。本明細書において「水性インク組成物」とは、溶媒として水を50質量%以上、好ましくは70質量%以上含有するインク組成物のことをいう。水は、イオン交換水、限外ろ過水、逆浸透水、蒸留水などの純水または超純水を用いることが好ましい。特に、これらの水を紫外線照射または過酸化水素添加などにより滅菌処理した水は、長期間に亘りカビやバクテリアの発生を抑制することができるので好ましい。
【0107】
本実施形態に係る水性インク組成物中の耐水化アルミニウム顔料の濃度は、水性インク組成物の全質量に対して、好ましくは0.1〜5.0質量%、さらに好ましくは0.1〜3.0質量%、より好ましくは0.25〜2.5質量%、特に好ましくは0.5〜2.0質量%である。
【0108】
本実施の形態に係る水性インク組成物は、樹脂類、界面活性剤、アルカンジオール、多価アルコール、pH調整剤等を添加することができる。
【0109】
樹脂類は、耐水化アルミニウム顔料を記録媒体上に強固に定着させる機能を有する。樹脂類としては、例えば、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、アクリロニトリル、シアノアクリレート、アクリルアミド、オレフィン、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、ビニルアルコール、ビニルエーテル、ビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルカルバゾール、ビニルイミダゾール、塩化ビニリデンの単独重合体もしくは共重合体、ウレタン樹脂、フッ素樹脂、天然樹脂等が挙げられる。なお、上記の共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体のいずれの形態でも用いることができる。
【0110】
界面活性剤としては、アセチレングリコール系界面活性剤又はポリシロキサン系界面活性剤を含有することが好ましい。アセチレングリコール系界面活性剤及びポリシロキサン系界面活性剤は、記録媒体等の被記録面への濡れ性を高めてインクの浸透性を高めることができる。アセチレングリコール系界面活性剤としては、例えば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、2,4−ジメチル−5−ヘキシン−3−オールなどが挙げられる。また、アセチレングリコール系界面活性剤は、市販品を利用することもでき、例えば、オルフィンE1010、STG、Y(以上、日信化学工業株式会社製)、サーフィノール104、82、465、485、TG(以上、Air Products and Chemicals Inc.製)が挙げられる。ポリシロキサン系界面活性剤としては、市販品を利用することができ、例えば、BYK−347、BYK−348(以上、ビックケミー・ジャパン株式会社製)等が挙げられる。さらに、水性インク組成物には、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤などのその他の界面活性剤を含有することもできる。
【0111】
アルカンジオールは、記録媒体等の被記録面への濡れ性を高めてインクの浸透性を高めることができる。アルカンジオールとしては、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオール等の炭素数が4以上8以下の1,2−アルカンジオールであることが好ましい。これらの中でも炭素数が6以上8以下の1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオールは、記録媒体への浸透性が特に高いためより好ましい。
【0112】
多価アルコールは、例えば、水性インク組成物をインクジェット記録装置に適用した場合に、水性インク組成物の乾燥を抑制し、インクジェット記録ヘッド部分における水性インク組成物の目詰まりを防止することができる。多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオグリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等が挙げられる。
【0113】
pH調整剤としては、例えば、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、アンモニア、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。
【0114】
また、本実施形態に係る水性インク組成物は、水溶性ロジン等の定着剤、安息香酸ナトリウム等の防黴剤・防腐剤、アロハネート類等の酸化防止剤・紫外線吸収剤、キレート剤、酸素吸収剤等の添加剤を含有させることができる。これらの添加剤は、1種単独で用いることもできるし、もちろん2種以上組み合わせて用いることもできる。
【0115】
本実施形態に係る水性インク組成物は、その用途は特に限定されず、例えば、筆記具、スタンプ、記録計、ペンプロッター、インクジェット記録装置等に適用することができる。
【0116】
本実施の形態に係る水性インク組成物の20℃における粘度は、好ましくは2mPa・s以上10mPa・s以下であり、より好ましくは3mPa・s以上5mPa・s以下である。水性インク組成物の20℃における粘度が前記範囲内にあると、ノズルから水性インク組成物が適量吐出され、水性インク組成物の飛行曲がりや飛散を一層低減することができるため、インクジェット記録装置に好適に使用することができる。
【0117】
4.実施例
4.1.実施例1
4.1.1.工程(a)
膜厚100μmのPETフィルム上に、セルロースアセテートブチレート(ブチル化率35〜39%、関東化学株式会社製)3.0質量%及びジエチレングリコールジエチルエーテル(日本乳化剤株式会社製)97質量%からなる樹脂層塗工液をバーコート法によって均一に塗布し、60℃、10分間乾燥することで、PETフィルム上に樹脂層薄膜を形成した。次いで、真空蒸着装置(「VE−1010型真空蒸着装置」、株式会社真空デバイス製)を用いて、上記の樹脂層上に平均膜厚20nmのアルミニウム蒸着層を形成した。次いで、上記方法にて形成した積層体を、ジエチレングリコールジエチルエーテル中、VS−150超音波分散機(アズワン株式会社製)を用いて、剥離・微細化・分散処理を同時に行い、積算の超音波分散処理時間が12時間であるアルミニウム顔料分散液を作製した。得られたアルミニウム顔料分散液を、開き目5μmのSUSメッシュフィルターにてろ過処理を行い、粗大粒子を除去した。次いで、ろ液を丸底フラスコに入れ、ロータリーエバポレーターを用いてジエチレングリコールジエチルエーテルを留去した。これにより、アルミニウム顔料分散液を濃縮し、その後、そのアルミニウム顔料分散液の濃度調整を行い、5.0質量%のアルミニウム顔料分散液を得た。
【0118】
4.1.2.工程(b)
次いで、得られたアルミニウム顔料分散液100質量部をビーカーに投入し、これにテトラエトキシシラン(TEOS)10.4質量部、塩基性触媒である1mol/Lアンモニア水2質量部を添加して、7日間室温で攪拌することにより加水分解縮合させた。これにより、シリカ膜が表面に形成されたアルミニウム顔料を含有するアルミニウム顔料分散液を得た。
【0119】
4.1.3.工程(c)
次いで、ジエチレングリコールジエチルエーテル50質量部をビーカーに投入し、これに化合物(A)としてフォスファノールRD−720(商品名、東邦化学工業株式会社製、ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸ナトリウム)30質量部、重合体(B)としてポリスターOM(商品名、日油株式会社製、無水マレイン酸−ジイソブチレン共重合体のナトリウム塩、Mw5000)12質量部を添加して、1日間室温で攪拌することにより透明溶液を得た。このようにして得られた透明溶液を先のアルミニウム顔料分散液に添加して、さらに1日間室温で攪拌した。
【0120】
4.1.4.工程(d)
次いで、それを遠心分離(10,000rpm、60分間)し、その上澄み液であるアルミニウム顔料分散液中に含まれるジエチレングリコールジエチルエーテルを除去した。その後、0.2質量%のポリスターOMを含む水溶液(以下、「0.2%ポリスターOM水溶液」ともいう)を、アルミニウム顔料の濃度が1.7質量%となるように添加して十分に攪拌することにより、耐水化アルミニウム顔料分散液Aを得た。
【0121】
4.2.実施例2〜6、比較例1〜4
化合物(A)及び重合体(B)として表1に記載したものを使用したこと以外は、上記の「4.1.実施例1」と同様にして、耐水化アルミニウム顔料分散液B〜Jを得た。
【0122】
4.3.比較例5
「4.1.実施例1」において工程(c)を省略したこと以外は、「4.1.実施例1」と全く同様にして耐水化アルミニウム顔料分散液Kを得た。
【0123】
4.4.評価試験
4.4.1.耐水性評価試験
サンプル瓶に水2mLを入れ、さらに得られた耐水化アルミニウム顔料分散液A〜Kのいずれか1種を2mL滴下して、25℃恒温下に静置した。その経時変化を目視により観察することで、耐水化アルミニウム顔料分散液の耐水性を評価した。耐水性の評価基準は、以下の通りである。耐水性評価試験の結果を表1に併せて示す。
「AAA」・・160日後の時点でも白色化せず
「AA」・・130日後の時点でも白色化せず
「A」・・100日後の時点でも白色化せず
「B」・・・70日後の時点で白色化せず
「C」・・・・30日後の時点で白色化せず
【0124】
4.4.2.水分散性評価試験
20μmのフィルター(MILIPORE社製、ナイロンネットフィルター(型番:NY2004700))に対して、耐水化アルミニウム顔料分散液A〜Kがどれだけ通過するかにより、水分散性を評価した。水分散性の評価基準は、以下の通りである。水分散性評価試験の結果を表1に併せて示す。
「A」・・・・フィルター通過量が50mL以上
「B」・・・・フィルター通過量が10mL以上50mL未満
「C」・・・・フィルター通過量が10mL未満
【0125】
4.4.3.光沢性の評価
耐水化アルミニウム顔料分散液A〜Kのいずれか1種を印画紙(「PM写真用紙(光沢)型番:KA450PSK」、セイコーエプソン株式会社製)に滴下・塗布して、室温で1日間乾燥させた。得られたサンプルを目視及び走査型電子顕微鏡(S−4700、株式会社日立ハイテクノロジーズ製、以下「SEM」ともいう)により観察することで、耐水化アルミニウム顔料の光沢性を評価した。耐水化アルミニウム顔料の光沢性の評価基準は、以下の通りである。光沢性評価試験の結果を表1に併せて示す。
「A」・・・光沢性が良好(金属光沢性に優れており、鏡面光沢を有する。)
「B」・・・・光沢性がやや良好(金属光沢性に優れているが、ややマット調である。)
【0126】
4.4.5.評価結果
表1に、実施例1〜6及び比較例1〜5で得られた耐水化アルミニウム顔料分散液の耐水性、水分散性、光沢性の評価試験の結果を示す。
【0127】
【表1】

【0128】
なお、表1に記載した化合物(A)及び重合体(B)は、それぞれ以下の通りである。
・「フォスファノールRD−720」(商品名、東邦化学工業株式会社製、ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸エステルナトリウム塩、HLB値=14.4)
・「プライサーフDB−01」(商品名、第一工業製薬株式会社製、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸エステル・モノエタノールアミン塩)
・「プライサーフA208B」(商品名、第一工業製薬株式会社製、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸エステル、HLB値=6)
・「プライサーフA208F」(商品名、第一工業製薬株式会社製、ポリオキシエチレンアルキル(C8)エーテルリン酸エステル)
・「プライサーフA210D」(商品名、第一工業製薬株式会社製、ポリオキシエチレンアルキル(C10)エーテルリン酸エステル、HLB値=6〜8)
・「プライサーフDBS」(商品名、第一工業製薬株式会社製、アルキル(C4)リン酸エステルナトリウム)
・「サーフィノール465」(商品名、日信化学工業株式会社製、アセチレンジオールのエチレンオキサイド付加物、HLB値=13)
・「ポリスターOM」(商品名、日油株式会社製、無水マレイン酸−ジイソブチレン共重合体のナトリウム塩、Mw5000)
・「デモールEP」(商品名、花王株式会社製、マレイン酸−ジイソブチレン共重合体)
・「シャロールAN103P」(商品名、第一工業製薬株式会社製、ポリアクリル酸ナトリウム)
・「セラモD−134」(商品名、第一工業製薬株式会社製、ポリアクリル酸アンモニウム)
【0129】
表1によれば、「ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル又はその塩(A)」及び「マレイン酸に由来する繰り返し単位を有する重合体(B)」を溶解させた透明溶液を添加する工程(c)を経て得られた実施例1〜6の耐水化アルミニウム顔料分散液は、耐水性、水分散性、光沢性の評価がいずれも良好であった。これらの中でも、化合物(A)として前記一般式(1)又は(2)中のmが12〜18の化合物を使用した場合、特に良好な結果が得られた。
【0130】
なお、得られた実施例1と比較例5の耐水化アルミニウム顔料分散液のそれぞれをポリテトラフルオロエチレン製メンブランフィルターに滴下して乾燥させたものをXPS測定用サンプルとし、X線光電子分光装置(Quantum2000、アルバック・ファイ社製)を用い、X線源:単色化AlKα線、分析径:φ100μmとして設定をして、元素分析を行った。その結果を表2に示す。表2より、C、O、Na、Si、Al、Pの存在を確認することができた。このことから、実施例1で得られた耐水化アルミニウム顔料には、シリカ膜、化合物(A)及び重合体(B)の存在が推定できる。
【0131】
【表2】

【0132】
一方、比較例1及び比較例2では、工程(c)において化合物(A)の代わりに他の界面活性剤を使用している。そのため、重合体(B)をジエチレングリコールジエチルエーテル中に完全に溶解させることができず、やや濁った溶液となった。そのため、アルミニウム顔料の表面に形成されたシリカ膜への界面活性剤及び重合体(B)の導入が不十分であったと考えられる。その結果、比較例1では耐水性が不良となり、比較例2では耐水性、水分散性、光沢性のいずれもが不良となった。
【0133】
比較例3及び比較例4では、工程(c)において重合体(B)の代わりにポリアクリル酸ナトリウム又はポリアクリル酸アンモニウムを使用している。そのため、耐水化アルミニウム顔料同士の十分な立体障害効果が得られないと考えられる。その結果、比較例3及び比較例4では水分散性が不良となると共に、耐水性、光沢性も不良となった。
【0134】
比較例5では、工程(c)が省略されている。そのため、アルミニウム顔料の表面に形成されたシリカ膜に化合物(A)が導入されず、しかも重合体(B)の導入が不十分であったと考えられる。その結果、耐水性が不良となると共に、水分散性がやや損なわれた。
【0135】
4.5.水性インク組成物の評価
4.5.1.水性インク組成物の調製
以下の組成となるように、耐水化アルミニウム顔料分散液、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,2−ヘキサンジオール、オルフィンE1010(アセチレングリコール系界面活性剤、日信化学株式会社製)、トリエタノールアミンを混合し、さらに100質量部となるようにイオン交換水を加えて、混合撹拌した。
【0136】
<水性インク組成物の組成>
耐水化アルミニウム顔料分散液(固形分) 1質量部
グリセリン 10質量部
トリメチロールプロパン 5質量部
1,2−ヘキサンジオール 1質量部
オルフィンE1010 1質量部
トリエタノールアミン 1質量部
イオン交換水 残部
合計 100質量部
なお、耐水化アルミニウム顔料分散液としては、実施例1、比較例2、比較例5の耐水化アルミニウム顔料分散液A、H、Kのいずれか1種を使用した。
【0137】
4.5.2.評価サンプルの作製
インクジェットプリンターPX−G930(セイコーエプソン株式会社製)の専用カートリッジに、上記の水性インク組成物を充填したインクカートリッジを作製した。次に、得られたインクカートリッジをインクジェットプリンターPX−G930のブラック列に装着し、これ以外のノズル列には市販のインクカートリッジを装着した。なお、ブラック列以外に装着した市販のインクカートリッジは、ダミーとして用いるものであり、本実施例の評価では使用しないので、本発明の効果に関与するものではない。
【0138】
次に、上記のプリンターを用いて、ブラック列に装着された上記の水性インク組成物を写真用紙<光沢>(セイコーエプソン株式会社製)上に吐出することにより、ベタパターン画像の印刷された記録物を得た。なお、印刷条件は、1ドット当たりの吐出インク重量を20ngとし、解像度を縦720dpi、横720dpiとした。
【0139】
4.5.3.画像の評価方法
得られた画像について、光沢度計MULTI Gloss 268(コニカミノルタ社製)を用いて、60°の光沢度を測定した。得られた画像の光沢度の評価基準は、以下のとおりである。光沢度評価試験の結果を表3に示す。
「A」:光沢度300以上(クリアな金属光沢)
「B」:光沢度250以上300未満(つや消しの金属光沢)
「C」:光沢度200以上250未満(金属光沢なし)
「D」:測定不能(水性インク組成物を吐出できなかった)
【0140】
【表3】

【0141】
表3に示すように、実施例1の耐水化アルミニウム顔料分散液を用いて作製された水性インク組成物は、光沢度が360となり、クリアな金属光沢を有する画像を印刷することができた。
【0142】
一方、比較例2及び比較例5の耐水化アルミニウム顔料分散液を用いて作製された水性インク組成物は、インクジェット記録装置のヘッドからインクを吐出することができず、画像を記録することができなかった。これは、水性インク組成物中で耐水化アルミニウム顔料が凝集し、粒径が増大することによりヘッド部分の目詰まりが起きたことによるものと考えられる。
【0143】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム顔料の表面をシリカ膜で被覆した耐水化アルミニウム顔料を水系媒体中に分散させた耐水化アルミニウム顔料分散液であって、
前記シリカ膜の表面又は内部に、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル又はその塩(A)及びマレイン酸に由来する繰り返し単位を有する重合体(B)が導入されたことを特徴とする、耐水化アルミニウム顔料分散液。
【請求項2】
有機溶媒中にアルミニウム顔料を分散させたアルミニウム顔料分散液を準備する工程(a)と、
前記アルミニウム顔料分散液中にテトラエトキシシランを添加する工程(b)と、
ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル又はその塩(A)及びマレイン酸に由来する繰り返し単位を有する重合体(B)を有機溶媒中に溶解させた溶液を前記アルミニウム顔料分散液中に添加する工程(c)と、
前記アルミニウム顔料分散液中に含まれる前記有機溶媒の少なくとも一部を水系媒体に置換する工程(d)と、
を含む方法により得られる、耐水化アルミニウム顔料分散液。
【請求項3】
前記水系媒体が、マレイン酸に由来する繰り返し単位を有する重合体(B)が添加された水溶液である、請求項2に記載の耐水化アルミニウム顔料分散液。
【請求項4】
前記工程(b)において、塩基性触媒をさらに添加することを含む、請求項2又は請求項3に記載の耐水化アルミニウム顔料分散液。
【請求項5】
前記化合物(A)が、下記一般式(1)又は(2)で表される化合物である、請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の耐水化アルミニウム顔料分散液。
【化19】

【化20】

(上記式中、mは8〜18の整数であり、nは2〜10の整数である。Rは、水素、ナトリウム、カリウム及びモノエタノールアミンから選択される1種であり、式(1)中に2つ存在するRは同一又は異なってもよい。)
【請求項6】
前記アルミニウム顔料が、5nm以上30nm以下の平均厚みを有し、かつ、0.5μm以上3μm以下の50%平均粒子径を有する平板状粒子である、請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の耐水化アルミニウム顔料分散液。
【請求項7】
前記重合体(B)が、下記一般式(3)及び(4)で表される繰り返し単位の少なくとも一方と、下記一般式(5)及び(6)で表される繰り返し単位の少なくとも一方と、を有する共重合体である、請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の耐水化アルミニウム顔料分散液。
【化21】

(式中、A及びAは、それぞれ独立に、水素、アルカリ金属又はアンモニウムを表す。)
【化22】

【化23】

【化24】

【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の耐水化アルミニウム顔料分散液を含有する、水性インク組成物。
【請求項9】
有機溶媒中にアルミニウム顔料を分散させたアルミニウム顔料分散液を準備する工程(a)と、
前記アルミニウム顔料分散液中にテトラエトキシシランを添加する工程(b)と、
ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル又はその塩(A)及びマレイン酸に由来する繰り返し単位を有する重合体(B)を有機溶媒中に溶解させた溶液を前記アルミニウム顔料分散液中に添加する工程(c)と、
前記アルミニウム顔料分散液中に含まれる前記有機溶媒の少なくとも一部を水系媒体に置換する工程(d)と、
を含む、耐水化アルミニウム顔料分散液の製造方法。
【請求項10】
前記水系媒体が、マレイン酸に由来する繰り返し単位を有する重合体(B)が添加された水溶液である、請求項11に記載の耐水化アルミニウム顔料分散液の製造方法。
【請求項11】
前記工程(b)において、塩基性触媒をさらに添加することを含む、請求項9又は請求項10に記載の耐水化アルミニウム顔料分散液の製造方法。
【請求項12】
前記化合物(A)が、下記一般式(1)又は(2)で表される化合物である、請求項9ないし請求項11のいずれか一項に記載の耐水化アルミニウム顔料分散液の製造方法。
【化25】

【化26】

(上記式中、mは8〜18の整数であり、nは2〜10の整数である。Rは、水素、ナトリウム、カリウム及びモノエタノールアミンから選択される1種であり、式(1)中に2つ存在するRは同一又は異なってもよい。)
【請求項13】
前記アルミニウム顔料が、5nm以上30nm以下の平均厚みを有し、かつ、0.5μm以上3μm以下の50%平均粒子径を有する平板状粒子である、請求項9ないし請求項12のいずれか一項に記載の耐水化アルミニウム顔料分散液の製造方法。
【請求項14】
前記重合体(B)が、下記一般式(3)及び(4)で表される繰り返し単位の少なくとも一方と、下記一般式(5)及び(6)で表される繰り返し単位の少なくとも一方と、を有する共重合体である、請求項9ないし請求項13のいずれか一項に記載の耐水化アルミニウム顔料分散液の製造方法。
【化27】

(式中、A及びAは、それぞれ独立に、水素、アルカリ金属又はアンモニウムを表す。)
【化28】

【化29】

【化30】


【公開番号】特開2013−64053(P2013−64053A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−202914(P2011−202914)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】