説明

耐水性クリーム状乃至ホイップ状造形材料

【課題】 クリーム状乃至ホイップ状をなし、超軽量であって、柔らかく、滑らかで絞り袋で絞り易く、かつ、造形後は自然乾燥でダレずに保形性があって耐水性が出ており、しかも発泡スチロールのように軽量乃至超軽量となる耐水性クリーム状乃至ホイップ状造形材料を提供することを目的とする。
【解決手段】 アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルの重合体あるいは共重合体を主成分とする水性エマルジョン45〜99.3質量%と、有機中空微小球粉粒体を水で湿潤させた有機中空微小球40〜0.12質量%と、水溶性糊剤7〜0.5質量%と、を含有する耐水性クリーム状造形材料であって、前記造形材料中の水分含量を45〜73%としたことを特徴とする、耐水性クリーム状乃至ホイップ状造形材料を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐水性クリーム状乃至ホイップ状造形材料に関し、詳しくはクリーム状乃至ホイップ状をなし、軽量乃至超軽量であって、柔らかく、滑らかで絞り袋で絞り易く、かつ、自然乾燥でダレずに保形性があって耐水性が出ており、しかも発泡スチロールのように超軽量ともなる耐水性クリーム状乃至ホイップ状造形材料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、これまでのクレー等を主材料とする高重量の粘土に代わり新たな用途を開発するものとして、ポリビニルアルコール系樹脂、水、有機中空微小球などを用いた、極めて軽量であって、しかもクリーム状乃至ホイップ状を呈した軽量造形材料が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このようなクリーム状乃至ホイップ状の軽量造形材料は、手工芸分野では、近時、例えばスイーツデコレーション(スイーツデコ)や携帯デコレーション(デコケータイ、ケータイアート)などとして人気を博している。
しかしながら、これまでのものは、耐水性が充分でなかったり、ペースト状であって粘性が強過ぎて絞り口の口金が絞り袋から外れてしまったり、或いは反対に弱過ぎて自然乾燥させたときにダレてしまったりするなどという問題があった。
【0004】
また、シリコーンを主剤として用いたクリーム状乃至ホイップ状の軽量造形材料も提案されている。
しかしながら、シリコーンは極めて高価であり、しかも絞り出し時に、伸びて切りにくく、必要以上に伸びてしまうばかりか、幼児が扱うにはやや硬いものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4115513号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来の問題を解決し、クリーム状乃至ホイップ状をなし、超軽量であって、柔らかく、滑らかで絞り袋で絞り易く、かつ、造形後は自然乾燥でダレずに保形性があって耐水性が出ており、しかも発泡スチロールのように軽量乃至超軽量となる耐水性クリーム状乃至ホイップ状造形材料を提供することを目的とするものである。
なお、一般に、ダレをなくそうとすると絞るときは硬くなり、反対に、絞るときが柔らかいとダレが生じるものであり、乾燥時にダレないことと、絞り易いこととは、一種相矛盾することであるが、本発明では、あくまで子供でも絞り袋で絞れるくらいの柔らかさがあって、しかもダレが生じないことを目的とし、そのために鋭意検討を重ね、本発明を完成するに至ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
即ち、請求項1に係る本発明は、
アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルの重合体あるいは共重合体を主成分とする水性エマルジョン45〜99.3質量%と、
有機中空微小球粉粒体を水で湿潤させた有機中空微小球40〜0.12質量%と、
水溶性糊剤7〜0.5質量%と、
を含有する耐水性クリーム状造形材料であって、
前記造形材料中の水分含量を45〜70%としたことを特徴とする、耐水性クリーム状乃至ホイップ状造形材料を提供するものである。
請求項2に係る本発明は、水溶性糊剤に対する、アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルの重合体あるいは共重合体を主成分とする水性エマルジョンの使用割合が、前者1に対して、後者7〜200(質量比)である、請求項1記載の耐水性クリーム状乃至ホイップ状造形材料を提供するものである。
請求項3に係る本発明は、水溶性糊剤が、ポリビニルアルコール系水溶性糊剤、セルロース系水溶性糊剤、又はこれらの混合物である、請求項1又は2記載の耐水性クリーム状乃至ホイップ状造形材料を提供するものである。
請求項4に係る本発明は、ポリビニルアルコール系水溶性糊剤が、ポリビニルアルコール又は変性ポリビニルアルコールである、請求項3記載の耐水性クリーム状乃至ホイップ状造形材料を提供するものである。
請求項5に係る本発明は、セルロース系水溶性糊剤が、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、及びヒドロキシプロピル・メチルセルロースから選ばれた少なくとも1種のものである、請求項3又は4記載の耐水性クリーム状乃至ホイップ状造形材料を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、クリーム状乃至ホイップ状をなし、軽量乃至超軽量であって、柔らかく、しかも滑らかで絞り袋で絞り易い、耐水性クリーム状乃至ホイップ状造形材料が提供される。
従って、幼児などであっても、本当のケーキを作るときのような手軽さで、容易に絞り袋で絞ることができる。
また、本発明によれば、自然乾燥でダレずに保形性があって耐水性が出ており、しかも自然乾燥後、発泡スチロールのように超軽量ともなる耐水性クリーム状乃至ホイップ状造形材料が提供される。
即ち、本発明によれば、絞り袋で絞れるほどの柔軟性がありながら、その絞った状態が崩れないという保形性を持ち、さらに乾燥させた後の乾燥物が耐水性と強度とを有する、耐水性クリーム状乃至ホイップ状造形材料が提供される。
さらに、本発明により得られる耐水性クリーム状乃至ホイップ状造形材料は、シリコーンを主剤として用いた造形材料ほど、高価なものではない。
なお、本発明において耐水性があるとは、5日以上、好ましくは7日以上自然乾燥させた後の造形材料を、水に少なくとも60分間浸けておいても溶け出したりせず、また、水に浸けたまま指で5回以上こすっても崩れない(溶け出さない)程度のものであることを意味している。従って、出来上がった造形物を洗うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、耐水性クリーム状乃至ホイップ状造形材料に関し、
アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルの重合体あるいは共重合体を主成分とする水性エマルジョン45〜99.3質量%と、
有機中空微小球粉粒体を水で湿潤させた有機中空微小球40〜0.12質量%と、
水溶性糊剤7〜0.5質量%と、
を含有する耐水性クリーム状乃至ホイップ状造形材料であって、
前記造形材料中の水分含量を45〜70%としたことを特徴とするものである。
【0010】
本発明の耐水性クリーム状乃至ホイップ状造形材料は、アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルの重合体あるいは共重合体を主成分とする水性エマルジョンと、有機中空微小球粉粒体を水で湿潤させた有機中空微小球と、水溶性糊剤と、を含有するものである。
【0011】
まず本発明では、アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルの重合体あるいは共重合体を主成分とする水性エマルジョンを用いる。アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルの重合体あるいは共重合体を主成分とする水性エマルジョンを用いることにより、軽量で耐水性に優れたものとすることができる。また、アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルの重合体あるいは共重合体を主成分とする水性エマルジョンを用いると、柔軟性と強度が出て、乾燥も早い。
本発明では、上記水性エマルジョンを用いているため、極端に曲げたり、或いは強くぶつけたりしなければ、壊れることがなく、落としても壊れることがない。さらに、乾燥後でも本物のケーキなどのように光沢が出てくるので、見た目が美しくなるというメリットがある。
【0012】
本発明では、アクリル酸エステルの重合体あるいは共重合体を主成分とする水性エマルジョン、又はメタクリル酸エステルの重合体あるいは共重合体を主成分とする水性エマルジョンをそれぞれ単独で、或いはこれらを混合して用いることができる。
【0013】
ここでアクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルの重合体あるいは共重合体を構成するアクリル酸エステルとしては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ドデシルなどのアクリル酸アルキルエステルを挙げることができる。
また、アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルの重合体あるいは共重合体を構成するメタクリル酸エステルとしては、例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ドデシルなどのメタクリル酸アルキルエステルを挙げることができる。
【0014】
アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルの重合体あるいは共重合体を主成分とする水性エマルジョンとして具体的には、アクリル酸エステル重合体水性エマルジョン、アクリル酸エステル共重合体水性エマルジョン(例えば、アクリル酸メチル・アクリル酸ノルマルブチル共重合体水性エマルジョンなど)、アクリル酸エステル・メタクリル酸エステル共重合体水性エマルジョン(例えば、アクリル酸2−エチルヘキシル・メタクリル酸メチル共重合体水性エマルジョンなど)、メタクリル酸エステル重合体水性エマルジョン、メタクリル酸エステル共重合体水性エマルジョン(例えば、メタクリル酸メチル・メタクリル酸ノルマルブチル共重合体水性エマルジョンなど)等が挙げられる。
これらの中でも、アクリル酸エステル共重合体水性エマルジョン(例えば、アクリル酸メチル・アクリル酸ノルマルブチル共重合体水性エマルジョンなど)、アクリル酸エステル・メタクリル酸エステル共重合体水性エマルジョン(例えば、アクリル酸2−エチルヘキシル・メタクリル酸メチル共重合体水性エマルジョンなど)等が好適である。
【0015】
本発明では、造形材料中に、上記の如きアクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルの重合体あるいは共重合体を主成分とする水性エマルジョンを、45〜99.3質量%、好ましくは50〜90質量%、より好ましくは60〜80質量%の割合で含有させる。
ここで造形材料中における、上記水性エマルジョンの割合が99.3質量%を超えると、他の有機中空微小球粉粒体と水溶性糊剤の量が少なくなることから、ダレが生じてしまうため好ましくない。
一方、造形材料中における、上記水性エマルジョンの割合が45質量%未満であると、水に60分間分間浸けておいても溶け出したりはしないが、水に浸けたままこするとやや溶け出してしまうなど、耐水性に劣るものとなってしまい好ましくない。
特に上記水性エマルジョンを全く用いずに、ポリビニルアルコールなどの親水性の水溶性糊剤を使用して、特に耐水処理を行わない一般のホイップ状造形材料の場合、水に浸けると30分もしないうちに軟化し、触るとドロドロに溶け出してしまう。
【0016】
次に、本発明では、有機中空微小球粉粒体を水で湿潤させた有機中空微小球を用いる。有機中空微小球粉粒体を水で湿潤させた有機中空微小球を用いることにより、ホイップクリームに近いキメ、光沢、軽さを出すことができる。
【0017】
ここで有機中空微小球粉粒体は、有機材料からなる外殻(殻壁)を有し、その内部に空隙を有する微小球の粉粒体を指す。
有機中空微小球粉粒体としては、平均粒径が10〜150μmであり、比重が0.01〜0.8のものが用いられる。
この有機中空微小球粉粒体は、有機材料(アクリル系プラスチック)を熱膨張させて、上記平均粒径と比重を有する、中空状の微小マイクロカプセルとしたものである。
有機中空微小球粉粒体の外殻(殻壁)を構成する有機材料としては、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリル酸エステル(メチルメタクリレート)などの各種組み合わせの共重合体が好ましく、具体的には例えば、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、メチルメタクリレート−アクリロニトリル共重合体等が挙げられる。
【0018】
この有機中空微小球粉粒体は、比重が極めて軽く、このため少量の使用でも嵩(容積)がある。また、この有機中空微小球粉粒体は、外殻(殻壁)を有する中空状のものであることから、適度な弾力を有している。
このように有機中空微小球粉粒体は、超軽量でしかも適度な弾力を有していることから、他の粉粒体と異なり、絞り袋で絞りやすい柔らかさと、絞ったときにダレない性質を兼ね備えた耐水性クリーム状乃至ホイップ状造形材料とするのに最適である。
【0019】
本発明では、この有機中空微小球粉粒体を水で湿潤させ、空隙の内部に水を内包させた有機中空微小球を用いる。
用いる有機材料や発泡倍率等の差異に起因する、外殻(殻壁)と空隙との割合などによっても異なるが、通常、この有機中空微小球粉粒体を水で湿潤させ、空隙の内部に水を内包させたときの固形分の割合は、9〜20%程度であり、水の割合が91〜80%程度である。このように有機中空微小球粉粒体を水で湿潤させ、空隙の内部に水を内包させた有機中空微小球(含水状態の有機中空微小球)は、市販されているので、本発明ではこのような市販品を用いることができる。例えば、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体からなる有機中空微小球(平均粒径20〜120μm、固形分10〜15%)や、メチルメタクリレート−アクリロニトリル共重合体からなる有機中空微小球(平均粒径20〜80μm、固形分15〜20%)等を挙げることができる。
【0020】
本発明では、有機中空微小球粉粒体を水で湿潤させた、有機中空微小球の状態において、造形材料中に40〜0.12質量%、好ましくは38〜0.8質量%、より好ましくは35〜質量%の割合で含有させる。
ここで造形材料中における、水で湿潤させた有機中空微小球の割合が40質量%を超えると、絞り袋に入れて絞る際に、絞れなくなるほど硬くなってしまい好ましくない。一方、造形材料中における、水で湿潤させた有機中空微小球の割合が0.12質量%未満であると、保形性が悪く、ダレて形状を保てなくなるため好ましくない。
【0021】
さらに、本発明では、水溶性のバインダーとして、水溶性糊剤を用いる。
本発明においては水溶性糊剤として、様々なものを用いることができる。
具体的には、例えばポリビニルアルコールや、このポリビニルアルコールを変性した変性ポリビニルアルコールなどからなるポリビニルアルコール系水溶性糊剤を用いることができる。また、メチルセルロース(MC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピル・メチルセルロースなどのセルロース系水溶性糊剤を用いることができる。
【0022】
本発明において水溶性糊剤としては、ポリビニルアルコール系水溶性糊剤、セルロース系水溶性糊剤、又はこれらの混合物が用いられる。とりわけポリビニルアルコール系水溶性糊剤とセルロース系水溶性糊剤との混合物が好ましく用いられる。ポリビニルアルコール系水溶性糊剤とセルロース系水溶性糊剤とは、相溶性に優れている。
ここでポリビニルアルコール系水溶性糊剤(特にポリビニルアルコール)は、粘性が出ても、保形性が充分でないため、多く入れる必要があるが、入れすぎると粘性が高くなりすぎたり、耐水性が劣るものとなりやすい。そこで、保形性を補助するために、メチルセルロース(MC)やカルボキシメチルセルロース(CMC)などのセルロース系水溶性糊剤を併用することが好ましい。但し、メチルセルロース(MC)やカルボキシメチルセルロース(CMC)などのセルロース系水溶性糊剤は、比較的水に対して弱く、耐水性が不充分なものとなりやすい。これらのことも考慮して、アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルの重合体あるいは共重合体を主成分とする水性エマルジョンの量を45〜99.3質量%の範囲に設定している。
【0023】
ここでポリビニルアルコール系水溶性糊剤としては、ポリビニルアルコール又は変性ポリビニルアルコールが好ましく用いられる。変性ポリビニルアルコールとしては、例えばアルキル基をポリビニルアルコールの側鎖に導入した変性ポリビニルアルコール(ビニルアルコール−アルキルビニルエーテル共重合体)を挙げることができる。
また、セルロース系水溶性糊剤としては、例えばメチルセルロース(MC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピル・メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロースなどを挙げることができる。
これらの中でも特に、メチルセルロース(MC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、及びヒドロキシプロピル・メチルセルロースから選ばれた少なくとも1種のものが好ましく用いられる。
【0024】
水溶性糊剤として、ポリビニルアルコール系水溶性糊剤とセルロース系水溶性糊剤との混合物を用いる場合、その混合割合(質量比)は特に限定されないが、通常は、前者を3とすると、後者を2以下とする。
【0025】
本発明では、造形材料中に、上記の如き水溶性糊剤を7〜0.5質量%、好ましく6〜0.8質量%、より好ましくは5〜1.0質量%の割合で含有させる。
ここで造形材料中における、水溶性糊剤の割合が7質量%を超えると、粘性が高くなり過ぎ、絞り袋に入れて絞る際に、絞れなくなるほど硬くなってしまったり、耐水性に劣るものとなったりするため好ましくない。
一方、造形材料中における、水溶性糊剤の割合が0.5質量%未満であると、粘性が低くなり過ぎ、絞り袋に入れて絞った際に、伸びがなくなりダレが生じるため好ましくない。
【0026】
本発明は、上記材料を含有する耐水性クリーム状乃至ホイップ状造形材料であって、前記造形材料中の水分含量を45〜73%、好ましくは48〜71%、より好ましくは49〜70%としたことを特徴とするものである。
ここで前記造形材料中の水分含量が45%未満であると、粘性が高くなり過ぎ、絞り袋に入れて絞る際に、絞れなくなるほど硬くなってしまい好ましくない。
一方、前記造形材料中の水分含量が73%を超えると、ダレが生じ、形状を保てなくなるため好ましくない。
【0027】
本発明においては、水溶性糊剤に対する、アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルの重合体あるいは共重合体を主成分とする水性エマルジョンの使用割合が、前者1に対して、後者7〜200(質量比)であることが好ましく、特に前者1に対して、後者10〜94(質量比)であることがより好ましい。
水溶性糊剤に対する、アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルの重合体あるいは共重合体を主成分とする水性エマルジョンの使用割合が、上記範囲内であると、耐水性を充分なものとすることができる。
【0028】
なお、本発明の耐水性クリーム状乃至ホイップ状造形材料においては、本発明の特色を損なわない限り、上記した材料の他に、必要に応じて、他の材料、例えば、水を用いてもよい。
水の量は、造形材料全体の13%までとする。
水を用いることにより、柔らかさの調整を行うことができる。但し、水の量が多すぎると、ダレが生じやすくなり、角(エッジ)が立たなくなる。これを抑えるには水溶性糊剤を増やせばよいが、水溶性糊剤の量が多すぎたり、水の量が多すぎたりする場合には、耐水性がなくなってくるため、そのバランスを考える必要がある。
【0029】
また、他の材料として、顔料や食用色素を加えて、色を変えたり、有機中空微小球以外の粉粒体を入れて、質感の調整を行うことができる。そのような粉粒体として具体的には、ガラス製中空バルーンなどの無機中空微小球(ガラス材などの無機材料からなる外殻(殻壁)を有し、その内部に空隙を有する微小球);シラスバルーン;パーライト;コーンスターチ、小麦粉、馬鈴薯粉、アルファ澱粉などの澱粉類;酸化チタン;酸化亜鉛;パルプ粉;パルプ繊維などを挙げることができる。また、少量であれば、タルクや炭酸カルシウムなどの無機粉体を入れることもできる。但し、タルクや炭酸カルシウムなどの無機粉体は比重が重いため、ダレが生じやすいので注意が必要である。また、有機中空微小球に比べて弾力性に欠けるため、絞るときに力が必要となり、更には絞り袋にとっての負荷が多いため、袋が破けやすいので注意が必要である。
このような粉粒体を入れた場合には、アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルの重合体あるいは共重合体を主成分とする水性エマルジョンの量や水の量を多くする必要が出てくる。
【0030】
次に、他の材料として、柔らかさの調整を行うために、グリセリン、プロピレングリコール、流動パラフィン、ポリエチレングリコールなどを用いることができる。しかもこれらを用いることにより、光沢を出すことができ、絞り袋に入れて絞った際に、より本物のホイップクリームに近い光沢が得られる。
また、他の材料として、保形性などを出すために、ポリ酢酸ビニル、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂などの酢酸ビニル系樹脂等を用いることもできる。
さらには、他の材料として、防腐剤、抗菌剤、防黴剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などを用いることもできる。
【0031】
本発明の耐水性クリーム状乃至ホイップ状造形材料は、上記した如き材料からなるものである。
本発明の耐水性クリーム状乃至ホイップ状造形材料の比重は、通常、0.05以上1以下、好ましくは0.1以上0.7以下と軽量乃至超軽量であり、有機中空微小球の量を多くした場合の組成によっては、例えば1%以上にした場合は発泡スチロールのように超軽量ともなる。
【0032】
本発明の耐水性クリーム状乃至ホイップ状造形材料は、基本的には上記した如き材料を均一に混合・混練することにより得られる。必要によって、常法により着色したものとすることができる。
得られた耐水性クリーム状乃至ホイップ状造形材料は、ポリエチレン、ポリプロピレン等のプラスチック材料で包装することにより、製品とされる。
使用する際には、これを適量絞り袋に入れた後に押し絞り、適当な形状に成形すればよい。なお、予め密封可能な絞り袋に入れた製品としておくこともできる。空気に触れなければ、固化することなく、長期間使用することができる。
得られた造形物は20分程度で表面が固まり、1日程度経過すると全体がほぼ固まる。
【0033】
なお、ここでいう絞り袋とは、ホイップクリーム絞り袋として市販されているもの(ポリエチレン、ポリプロピレンなどの樹脂製)を指しており、このようなホイップクリーム絞り袋の先端に口金(樹脂製又は金属製)を装填して用いる。口金に開けられている絞り出し口の形状(例えば、花型、円形、星形、三角形、四角形、五角形など)や大きさ等を変えたりすることにより、種々の形状(表面形状、外部形状)を有する造形物とすることができる。
【0034】
本発明によれば、クリーム状乃至ホイップ状をなし、軽量乃至超軽量であって、柔らかく、滑らかで絞り袋で絞り易く、かつ、自然乾燥でダレずに保形性があって耐水性が出ており、しかも発泡スチロールのように超軽量ともなる耐水性クリーム状乃至ホイップ状造形材料が得られる。
また、乾燥させた後の造形物は、エッジが立ったものとなることから、小さな口金を用いて細かな細工を施すこともできる。
さらに、本発明により得られる耐水性クリーム状乃至ホイップ状造形材料は、シリコーンを主剤として用いた造形材料ほど、高価なものではない。
【0035】
従って、本発明の耐水性クリーム状乃至ホイップ状造形材料は、特に絞り出し用の耐水性クリーム状乃至ホイップ状造形材料として、スイーツデコレーション(スイーツデコ)や携帯デコレーション(デコケータイ、ケータイアート)などの手工芸分野や装飾品分野を始めとして、DIYや建築分野などにおいても、各種造形作品の素材として有効に利用することが期待される。
【実施例】
【0036】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0037】
実施例1〜5及び比較例1〜5
(1)造形材料の製造
表1〜表2に示す処方にて、以下に示す各原料を混合・混練し、各種造形材料を製造した。
【0038】
次いで、得られた造形材料について、「柔らかさ」、「絞りやすさ」、「粘性」、「乾燥時のダレにくさ」を評価した。
即ち、市販されているホイップクリーム絞り袋の先端にステンレス製の口金(花8切10mm口径)を装填して、そこに得られた造形材料を30gずつ入れ、握力が10kgから30kg程度の女性のパネラー5名で絞ってもらい、1つの重さが1〜2gの円錐状のホイップに数個絞り出し、絞りやすい柔らかさかどうかを、「柔らかさ」、「絞りやすさ」、「粘性」に分けて評価してもらった。また、乾燥させ始めてから5分後に形状の変化を目視により確認し、「乾燥時のダレにくさ」を評価した。
【0039】
さらに、得られた造形物について、これを7日間自然乾燥させた後の「硬さ」と「光沢」を評価した。また、自然乾燥後の造形物について、2種の耐水性試験を行った。まず「耐水性試験I」では、60分間水に浸けて様子を見たときの評価を示し、次に「耐水性試験II」では、水中に浸けて指で5回以上こすったときの評価を示した。さらに、「吸水試験」を行い、吸水量を測定した。吸水試験は、自然乾燥後の造形物を水に浸けて、1時間後、2時間後、3時間後の各吸水量を測定することにより行った。測定値は、自然乾燥後の造形物10gを各3個ずつ測定したときの平均値を示した。吸水量は、自然乾燥後の造形物を20℃の水に浸けて、1時間毎に取り出し、水分を拭き取ってから計量した。
【0040】
これらの結果を表1〜表2に示す。また、パネラーのコメントも併せて示した。
なお、評価は、5人のパネラーにより○、△、×の3段階で示した。○は5人中4人以上が良い評価を与えたもの、△は5人中1人から3人が良い評価を与えたもの、×は5人中良い評価を与えたものがいないもの、をそれぞれ示した。
【0041】
また、実施例及び比較例についての水分量の内訳を表3、表4に示した。
【0042】
・有機中空微小球A:比重0.025±0.005、平均粒径30〜60μmの有機中空微小球粉粒体〔アクリロニトリル−塩化ビニリデン共重合体〕を水分89%で湿潤させたものを使用(固形分11%)
・有機中空微小球B:比重0.03±0.01、平均粒径40〜70μmの有機中空微小球粉粒体〔メチルメタクリレート−アクリロニトリル共重合体〕を水分82%で湿潤させたものを使用(固形分18%)
・無機中空微小球:平均粒径40μmのホウケイ酸ガラスを素材とした真球状の中空ガラス
・パルプ繊維:繊維長1〜2mm
・炭酸カルシウム:JIS K5101に準じ平均粒子径3〜4ミクロンの汎用品の物
・アクリル共重合体水性エマルジョンA:アクリル酸2−エチルヘキシル・メタクリル酸メチル共重合体水性エマルジョン、不揮発分含量:50%のものを使用
・アクリル共重合体水性エマルジョンB:アクリル酸エステル・メタクリル酸エステル共重合体水性エマルジョン、不揮発分含量:34%のものを使用
・PVA(ポリビニルアルコール):20℃、4%濃度で20mPa・sの粘度のものを使用
・ビニルアルコール−アルキルビニルエーテル共重合体(変性PVA):20℃、2%濃度で60mPa・sの粘度のものを使用
・メチルセルロース:20℃、2%濃度で20mPa・sの粘度のものを使用
・CMC(カルボキシメチルセルロース):200cpの粘度のものを使用
【0043】
【表1】

【0044】
【表2】

【0045】
【表3】

【0046】
【表4】

【0047】
表1、2の結果より、次のことが分かる。
比較例1のように、有機中空微小球を用いずに、これと同量の炭酸カルシウムを用いた場合、粘性はあるものの、保形性が悪く、ダレて形状を保てなかった。乾燥させたものを水に浸けて60分経っても溶けなかったが、指でこするとぬるぬるして溶け出した。CMCが多いため、耐水性に欠けるものとなったと思われる。
【0048】
次に、比較例2のように、アクリル共重合体水性エマルジョンの量が少ない場合、水中に60分間浸けておくと溶け出し、水に浸けたままこするとぬるぬるして溶け出してしまった。また、アクリル共重合体水性エマルジョンの量が少なく、しかも水分含量が多すぎるため、柔らかすぎダレて形状を保てなかった。さらに乾燥後は脆くなり、光沢も充分ではなかった。また、吸水性が高すぎる為、水の中で形状が崩壊したことから、吸水量を計測することができなかった。
【0049】
また、比較例3のように、比較例2よりは増えているものの、アクリル共重合体水性エマルジョンの量が不足する場合、やはり柔らかすぎダレて形状を保てなかった。水に60分間浸けておいても溶けなかったものの、水中に浸けたままこすると少し溶けてしまった。
【0050】
また、比較例4のように、アクリル共重合体水性エマルジョンを全く用いなかった場合柔らかく絞りやすいものの、乾燥時にダレが生じ、乾燥後も柔らかすぎて強度が落ち光沢がなく、しかも水中に60分間浸けておくと溶け出し、水に浸けたままこすると溶け出してしまった。また、吸水性が高すぎる為、水の中で形状が崩壊したことから、吸水量を計測することができなかった。
【0051】
さらに比較例5のように、アクリル共重合体水性エマルジョン量が少ない一方、有機中空微小球の量が多く、しかもパルプ繊維が用いられていることから、水分が多く必要な為、粘土状となり、絞ることができなくなってしまった。
【0052】
これに対して、本願実施例によれば、評価を試みた全ての評価項目について、次のように良い評価が得られた。
まず柔らかさについて、柔らかすぎず硬すぎず、良い評価が得られた。次に、絞りやすさについても、柔らかすぎず硬すぎず、良い評価が得られた。また、粘性については、柔らかすぎず強すぎず、良い評価が得られた。さらに、乾燥時のダレにくさについては、ダレが生じることなく、良い評価が得られた。
また、7日間自然乾燥させた後の硬さについて、柔らかくなく、硬いが脆くもなく、良い評価が得られた。さらにこのときの光沢について、充分な光沢があると良い評価が得られた。
次に、60分間水に浸けて様子を見たときの評価を示す耐水性試験Iにおいて、溶け出すことが全くなく、良い評価が得られた。
また、水中に浸けて指で5回以上こすったときの評価を示す耐水性試験IIにおいて、溶け出したりすることが全くなく、良い評価が得られた。
なお、水性エマルジョンの割合が多くなるにつれて、一般にダレが生じやすい傾向が出てくるが、実施例5のように、水性エマルジョンが99.25質量%と極めて多い場合には、むしろ乾燥が速いことから、ダレが生ずる前に乾いてしまい、乾くと透明感が出て、光沢も出ることが分かった。これはアクリル固形分が多く、全体の水分が少なくなる為でもある。また、水分含量も一般には少なくなるにつれて粘性が高くなり、絞りにくくなってくる傾向が出てくるが、実施例5の場合、有機中空微小球や水溶性糊剤が少ないため、水分が50%弱ではあるものの、柔らかく絞り易いことが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルの重合体あるいは共重合体を主成分とする水性エマルジョン45〜99.3質量%と、
有機中空微小球粉粒体を水で湿潤させた有機中空微小球40〜0.12質量%と、
水溶性糊剤7〜0.5質量%と、
を含有する耐水性クリーム状造形材料であって、
前記造形材料中の水分含量を45〜73%としたことを特徴とする、耐水性クリーム状乃至ホイップ状造形材料。
【請求項2】
水溶性糊剤に対する、アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルの重合体あるいは共重合体を主成分とする水性エマルジョンの使用割合が、前者1に対して、後者7〜200(質量比)である、請求項1記載の耐水性クリーム状乃至ホイップ状造形材料。
【請求項3】
水溶性糊剤が、ポリビニルアルコール系水溶性糊剤、セルロース系水溶性糊剤、又はこれらの混合物である、請求項1又は2記載の耐水性クリーム状乃至ホイップ状造形材料。
【請求項4】
ポリビニルアルコール系水溶性糊剤が、ポリビニルアルコール又は変性ポリビニルアルコールである、請求項3記載の耐水性クリーム状乃至ホイップ状造形材料。
【請求項5】
セルロース系水溶性糊剤が、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、及びヒドロキシプロピル・メチルセルロースから選ばれた少なくとも1種のものである、請求項3又は4記載の耐水性クリーム状乃至ホイップ状造形材料。

【公開番号】特開2013−112806(P2013−112806A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−263183(P2011−263183)
【出願日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【出願人】(596019721)
【Fターム(参考)】