説明

耐水性コーティング剤組成物

【課題】樹脂塗膜の強度や耐水性を悪化させることなく、表面酸価の高い、すなわち、耐透水性の良好な塗膜を形成できる組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】酸性基含有単量体(A)及び酸性基を有さない(メタ)アクリル系単量体(B)を含有する単量体混合物から得られる共重合体粒子を含有する水性分散液であり、上記酸性基含有単量体(A)の含有量が、上記単量体混合物全量に対して、2〜15重量%であり、かつ、上記共重合体粒子の表面酸価が6〜40mgKOH/gである水性分散液を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、屋内外用の塗料バインダーとして有用で、建築物、建材、モルタル、コンクリート等の建築用塗料として利用でき、中でも多孔質無機板やコンクリートのような多孔性の下地基材に好適な耐水性コーティング剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建築物の外壁材として、多孔質の無機板がその耐久性、耐汚染性、難燃性、断熱性が評価されて、広く使用されるようになっている。そして、耐久性向上や意匠性付与のため、この多孔質無機板に適用可能な塗料が求められている。
【0003】
しかしながら、多孔質無機板に直接仕上げ塗料や上塗り塗料を適用すると、塗膜の密着性が不足して剥がれが起きたり、塗装外観の不良が発生して、所期の効果が得られないことがある。これらの不良を回避するため、一般に下地処理用の塗料が使用されることが多いが、従来は、このような下地処理塗料は、有機溶剤を含むものが用いられており、安全面や環境面からその水性化が求められている。
【0004】
ところで、水性塗料を多孔質無機板のような多孔性の基材に塗布すると、基材の吸水性や多孔性のため、ピンホール等の塗膜欠陥が生じやすく、塗膜の耐水性が十分に得られない場合が多い。この塗膜欠陥を完全に解消することは困難であるが、コア−シェル型芳香族ビニル系樹脂を用いる耐水性の向上や、オルガノシランとの複合による耐水性の向上等が提案されている(特許文献1,2等参照)。
【0005】
また、ケト基やアルド基からなるカルボニル基を樹脂表面に多く存在させることにより、耐水性を向上させる方法が知られている(特許文献3参照)。
【0006】
しかしながら、これらの手法を用いた場合は、塗膜の耐水性は向上するものの、塗膜欠陥が発生した場所での耐水性確保ができないため、ピンホールからの水分の通過が起きて、耐透水性が不十分となることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−181605号公報
【特許文献2】特開2003−238272号公報
【特許文献3】特開2001−164126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、この発明は、樹脂塗膜の強度や耐水性を悪化させることなく、塗膜欠陥があっても、耐透水性の良好な塗膜を形成できる組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、所定割合の酸性基含有単量体(A)及び酸性基を有さない(メタ)アクリル系単量体(B)を含有する単量体混合物から得られる、所定の表面酸価を有する共重合体粒子を含有する水性分散液を耐水性コーティング剤組成物として用いることにより、上記課題を解決したのである。
【発明の効果】
【0010】
所定の表面酸価を有する共重合体粒子を含有する水性分散液を用いるので、塗工して塗膜を形成させたとき、塗膜表面の酸価を高めることができ、耐水性を向上させると共に、水と接触した場合の吸水・膨潤によって、塗膜の欠陥を塞ぐようにすることができ、耐透水性を改良することができる。
【0011】
また、酸性基含有単量体の含有量が低いので、得られる塗膜の強度を保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例2における表面酸価及びTHF全酸価の滴定曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
この発明にかかる耐水性コーティング剤組成物は、酸性基含有単量体(以下、「(A)成分」と称する。)及び酸性基を有さない(メタ)アクリル系単量体(以下、「(B)成分」と称する。)を含有する単量体混合物から得られる共重合体粒子を含有する水性分散液からなる組成物である。
【0014】
上記(A)成分は、酸性官能基を有する単量体である。この酸性官能基としては、カルボキシル基、スルホン酸基等があげられる。この中でも、粒子表面に配向しやすい点でカルボキシル基が好ましい。カルボキシル基を有する単量体の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、又はフマル酸やマレイン酸の半エステル化合物等があげられる。
【0015】
上記(B)成分は、上記のような酸性官能基を有さない(メタ)アクリル系の単量体をいう。この(B)成分としては、アルキル残基の炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、アルキル残基の炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、エチレンオキサイド基の数が1〜100個の(ポリ)オキシエチレン(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド基の数が1〜100個の(ポリ)オキシプロピレン(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド基の数が1〜100個の(ポリ)オキシエチレンジ(メタ)アクリレート等があげられる。
【0016】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル等があげられる。
【0017】
上記(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル等があげられる。
【0018】
上記(ポリ)オキシエチレン(メタ)アクリレートの具体例としては、(メタ)アクリル酸エチレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール等があげられる。
【0019】
上記(ポリ)オキシプロピレン(メタ)アクリレートの具体例としては、(メタ)アクリル酸プロピレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸プロピレングリコール、(メタ)アクリル酸ジプロピレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸ジプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸テトラプロピレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸テトラプロピレングリコール等があげられる。
【0020】
上記(ポリ)オキシエチレンジ(メタ)アクリレートの具体例としては、ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール等があげられる。
【0021】
上記単量体混合物には、必要に応じて、さらに芳香族ビニル系化合物(以下、「(C)成分」と称する。)を含有させてもよい。この(C)成分としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等があげられる。
【0022】
上記(A)成分の含有量は、上記単量体混合物全量に対し、2重量%以上が好ましく、2.5重量%以上がより好ましい。2重量%より少ないと、得られる上記共重合体粒子の酸価が低くなり、塗膜を形成したとき、十分な耐水性を発揮できない場合がある。一方、上記(A)成分の含有量の上限は、15重量%がよく、12重量%が好ましく、10重量%がより好ましい。15重量%より多いと、得られる塗膜の強度が低下し、結果的に耐水性も低下する傾向がある。
【0023】
上記(C)成分の含有量は、上記(B)成分に対し、10重量%以上がよく、20重量%以上が好ましく、30重量%以上がより好ましい。10重量%より少ないと、疎水成分が少なくなって、耐水性が低下する傾向がある。一方、上記(C)成分の含有量の上限は、70重量%がよく、60重量%が好ましく、50重量%がより好ましい。70重量%より多いと、この(C)成分の単独重合体が生成して、ゲル化することがある。
【0024】
上記単量体混合物には、この発明の目的を阻害しない範囲で、上記各成分に相当しない他の単量体等を混合することができる。このような単量体としては、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類、(メタ)アクリロニトリル等のシアン化ビニル類、エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン類、ブタジエン等のジエン類、塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロオレフィン類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、n−酪酸ビニル、安息香酸ビニル、p−t−ブチル安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニル、2−エチルヘキサン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ラウリン酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル類、酢酸イソプロペニル、プロピオン酸イソプロペニル等のカルボン酸イソプロペニルエステル類、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等のビニルエーテル類、酢酸アリル、安息香酸アリル等のアリルエステル類、アリルエチルエーテル、アリルグリシジルエーテル、アリルフェニルエーテル等のアリルエーテル類等があげられる。
【0025】
上記共重合体粒子を含む水性分散液は、上記単量体混合物を、乳化剤を用いて、常法によって乳化重合を行なうことによって製造される。例えば、あらかじめ適量の水や上記乳化剤を仕込んだ反応容器内に、上記重合成分及び重合開始剤、連鎖移動剤等を一括、分割又は連続して仕込み、撹拌しながら乳化状態下、所定の反応条件で重合させることにより、製造することができる。
【0026】
上記重合時における単量体混合物の濃度を、15〜60重量%、好ましくは30〜50重量%とすると、得られる分散液の粘度が低くなり、取扱い性の面から好ましい。
【0027】
上記乳化剤は、特に限定されるものでなく、アニオン性、カチオン性、ノニオン性の乳化剤を使用することができる。アニオン性の乳化剤としては、脂肪酸石鹸、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリール硫酸塩、p−スチレンスルホン酸塩等のアニオン性界面活性剤や、反応型アニオン性界面活性剤があげられる。この反応型アニオン性界面活性剤としては、例えば、三洋化成(株)製:エレミノール(商標)JS−2、JS−20、花王(株)製:ラテムル(商標)S−180A、S−180、PD−104、第一工業製薬(株)製:アクアロン(商標)HS−10、HS−5、BC−10、BC−5、KH−10、旭電化工業(株)製:アデカリアソープ(商標)SE−10N、SR−10、メタアクリル酸スルホアルキルエステルの塩、p−スチレンスルホン酸の塩、旭電化工業(株)製アデカリアソープSDX−730、SDX−731、SDX−334(商品名)等のアンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のリン酸エステル基を有する界面活性剤等があげられる。
【0028】
さらに、カチオン性の乳化剤としては、ラウリルアミン塩酸塩、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライド、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、アルキルアンモニウムハイドロオキサイド、ポリオキシエチレンアルキルアミン等があげられる。
【0029】
また、上記ノニオン性の乳化剤としては、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、オキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー等のノニオン性界面活性剤や、反応型ノニオン性界面活性剤等があげられる。
【0030】
この反応型ノニオン性界面活性剤としては、例えば、第一工業製薬(株)製:アクアクロン(商標)RN−20、RN−30、RN−50、旭電化工業(株)製:アデカリアソープ(商標)ER−10、ER−20、ER−30、ER−40等があげられる。
【0031】
上記乳化剤の使用量は、単量体混合物に対し、0.05〜20重量%が好ましく、1〜5重量%がより好ましい。0.05重量%より少ないと、重合時の分散安定性が悪化する傾向がある。一方、20重量%より多いと、耐水性が低下する傾向がある。
【0032】
上記乳化重合の際に使用される重合開始剤としては、一般に用いられるラジカル重合開始剤を用いることができ、その代表例としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス(2,4−ジメチル)バレロニトリル等のアゾ化合物、t−ブチルヒドロキシルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等の過酸化物等があげられる。これらは単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。この重合開始剤の使用量は、上記単量体混合物100重量部に対して0.01〜3重量部が好ましい。
【0033】
上記乳化重合反応の反応温度は、20〜95℃が好ましく、また、反応時間は、2〜8時間が好ましい。
【0034】
上記の乳化重合によって、上記単量体混合物の重合によって生じた共重合体粒子を含む水性分散液が得られる。
【0035】
上記共重合体粒子の表面酸価は、6mgKOH/g以上が必要で、10mgKOH/g以上が好ましい。表面酸価がこのような範囲にあると、適度な吸水性を塗膜が有するようになり、塗膜にピンホール等の欠陥が存在しても、水が接触した際に塗膜が膨潤して、この欠陥を塞ぐ形となり、結果的に塗膜全体の耐透水性がよくなる。6mgKOH/gより小さいと、塗布時の造膜性が悪化して、耐水性や耐透水性が低下する傾向がある。一方、表面酸価の上限は、40mgKOH/gが必要で、30mgKOH/gが好ましい。40mgKOH/gより大きいと、親水性が強くなりすぎて、塗膜の耐水性が低下する傾向がある。
【0036】
本発明において、表面酸価が高い共重合体粒子を得る方法としては、以下の方法があげられる。
(1)酸性基含有単量体(A)の使用量を多くして、共重合体全体の酸価を高くする。
(2)酸性基を有さない(メタ)アクリル系単量体(B)として、(A)との共重合の際に、(A)より重合反応性が高く、かつ、重合時に(B)の連鎖が生成しやすいものを選び(これは、共重合反応性比r1,r2より推定できる。)、反応末期に相対的に(A)の残留量が多くなって重合体粒子の表面近傍で(A)の組成比の高い共重合体が生成するようにする。
(3)各単量体(A),(B)と、それから生成する重合体、及び水性媒体との親和性を比較して、単量体の、重合体及び水性媒体への分配比率が、(B)は重合体側に、(A)は水性媒体側により多くなるように、(A)及び(B)の種類・量を選択・調整する。
【0037】
酸性基含有単量体(A)を例にとれば、アクリル酸とメタクリル酸では、メタクリル酸の方が、相対的に重合体への親和性が高いため、粒子内部に取り込まれやすく、一方、アクリル酸は水性媒体側に分配されやすいため、粒子表面に出やすくなる。このため、両者を同じ量用いた場合、アクリル酸を用いた場合の方が、表面酸価が高くなりやすいものと考えられる。
【0038】
上記共重合体の表面酸価は、上記水性分散液に水酸化ナトリウムを加えながら電導度を測定することにより測定できる。すなわち、水酸化ナトリウム添加量と電導度との関係のグラフから変曲点を見出し、その変曲点付近の接線の交点における水酸化ナトリウム添加量から表面酸価を算出することができる。
【0039】
本発明の分散液から得られた被膜の耐透水性が優れている理由は不明であるが、このように表面酸価の高い共重合体粒子を含む分散液を塗布して得られる被膜は、結果として、その表面の酸価が高くなる。そして、こうした被膜が水に接触した際の吸水能が大きくなって、面積膨張が大きくなり、透水を阻止することができるようになると推定される。
【0040】
製造された水性分散液は、そのまま、耐水性コーティング剤組成物として使用することができる。また、この水性分散液に、必要に応じて、顔料などの着色剤、ワックス、消泡剤、可塑剤、造膜助剤などを、この発明の効果を阻害しない範囲内で添加してもよい。特に、共重合体成分に対して、可塑性、軟化性を有するような造膜助剤を、例えば、共重合体に対して、5〜50重量%添加して、最低造膜温度を20℃以下、好ましくは10℃以下とすると、良好な被膜が得られるので、耐水性等の点でより好ましい。この耐水性コーティング剤組成物は、上塗り又は下塗り用の塗料、シーラントその他のコーティング剤として使用することができる。
【0041】
得られた耐水性コーティング剤組成物は、これを塗工することにより、塗膜等にフィルム化することができる。この塗工方法としては、任意の方法を採用することができ、例えば、塗布、浸漬、噴霧等の方法があげられる。
【0042】
上記耐水性コーティング剤組成物をフィルム化したときの面積膨張率は、3%以上が好ましく、5%以上がより好ましい。3%より小さいと、面積膨張による止水・防水効果が不足する傾向がある。一方、面積膨張率の上限は、30%がよく、25%が好ましく、20%がより好ましい。30%より大きいと、含水量が多くなりすぎたり、あるいは含水によって塗膜の強度が低下したりして、結果的に耐水性が悪化する傾向がある。
【0043】
上記耐水性コーティング剤組成物を基材に塗布して得られる塗膜や、キャスティング等によって得られるフィルム等は、耐水性や強度に優れる。
【実施例】
【0044】
以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例によって限定されるものではない。まず、実施例及び比較例で行った試験及び評価方法並びに使用した原材料について説明する。
【0045】
[塗料の調整]
(ミルベース)
酸化チタン(TITONE R−61N(商品名),堺化学工業(株)製)40重量部、炭酸カルシウム(NS−100N(商品名)、日東粉化工業(株)製)40重量部、顔料分散剤(SNディスパーサント5034(商品名)、サンノプコ(株)製)0.5重量部、ノニオン界面活性剤(エマルゲンA−500(商品名)、花王(株)製)0.5重量部、消泡剤(SNデフォーマー113(商品名)、サンノプコ(株)製)0.5重量部をイオン交換水20重量部とよく混合し、次いで、ガラスビーズを加えて高速分散機(T.K.ホモディスパー(商品名)、特殊機化(株)製)で1時間分散処理を行った。その後、ガラスビーズを100メッシュのナイロン紗でろ別し、ミルベースを調整した。
【0046】
(塗料)
評価対象の水性分散液100重量部(有り姿)に対して、テキサノールCS−12(商品名、チッソ(株)製)を、最低造膜温度が0℃となるような量だけ加えた(実施例1の場合は13重量%)後、この水性分散液中の樹脂固形分20重量部に対して、上記ミルベース38.5重量部を加えて、耐透水性試験用塗料とした。
【0047】
[試験及び評価方法]
<耐透水性>
JIS A 6909:透水試験B法にしたがい、24時間後の透水量を測定し、以下の基準で評価した。
○:透水量が1cc未満
△:透水量が1cc以上、5cc未満
×:透水量が5cc以上
【0048】
<クリア皮膜膨潤率>
得られた水性分散液を用いて厚み200μmのシートを作製し、20mm×20mmのシート片(クリア皮膜)を切り出した。得られたクリア皮膜をイオン交換水に24時間浸漬し、浸漬前後のクリア皮膜の面積を測定して、下記式から膨潤率を算出した。
膨潤率(%)=(浸漬前後のクリア皮膜の面積差/浸漬前のクリア皮膜の面積)×100
【0049】
<表面酸価>
得られた水性分散液をイオン交換水で固形分濃度が1.67重量%となるように調整し、その120g(固形分2g)をビーカーに入れた。これに電気電導度計を浸漬した後、5分間撹拌した。その後、0.05N水酸化ナトリウム水溶液(関東化学(株)製)を1.0ml/minで滴下し、電位差滴定を行った。
【0050】
得られた滴定曲線は、例えば図1の表面酸価のグラフに示されたようになる。そして、このグラフの変曲点付近の接線を引き、その交点における上記水酸化ナトリウム水溶液の滴定量(図1のa)を読み出し、下記の式から表面酸価を算出した。
・表面酸価(mg KOH/g polymer)=[(滴定量(ml)×F×0.05(N)×40(g/mol))/2(g)]×[(56.1(g/mol)/40.0(g/mol))]
なお、上記式中、Fは、滴定液のファクターを示す。
【0051】
<全酸価>
得られた水性分散液を固形分として2.5g含むように採取し、これにテトラヒドロフラン(THF)40gを加えて溶解し、0.1Nメタノール性水酸化カリウム溶液(関東化学(株)製)を用いて、pH滴定を自動滴定装置(平沼産業(株)製)を用いて実施した。なお、この全酸価は、THFを用いて行ったので、「THF全酸価」と称する。
【0052】
得られた滴定曲線は、例えば図1のTHF全酸価のグラフに示された通りとなり、pH10以上で変曲点を示す。この変曲点の接線中点を滴定終点(図1のb)とし、下記の式からTHF全酸価を算出した。
・THF全酸価(mg KOH/g polymer)=[(滴定量(ml)×F×0.1(N)×56.1(g/mol))/2.5(g)]
なお、上記式中、Fは、滴定液のファクターを示す。
【0053】
[使用原材料]
(1)酸性基含有単量体((A)成分)
・アクリル酸…大阪有機化学工業(株)製、以下、「AA」と略する。
・メタクリル酸…三菱ガス化学(株)製、以下、「MAA」と略する。
・イタコン酸…磐田化学工業(株)製、以下、「IA」と略する。
【0054】
(2)(メタ)アクリル系単量体((B))成分)
・メタクリル酸メチル…三菱レイヨン(株)製、以下、「MMA」と略する。
・アクリル酸2−エチルヘキシル…三菱化学(株)製、以下、「2EHA」と略する。
【0055】
(3)芳香族ビニル系化合物((C)成分)
・スチレン…三菱化学(株)製、以下、「SM」と略する。
【0056】
(実施例1〜8、比較例1〜3)
攪拌機、還流冷却機及び原料投入口を備えた1Lフラスコ内に、イオン交換水60重量部、及び反応型アニオン性乳化剤としてアデカリアソープSR−10(商品名、旭電化工業(株)製)を、0.2重量部仕込み、その内温を65℃に保ちながら、重合開始剤として、過硫酸アンモニウム(APS)0.3重量部を添加した後、イオン交換水を41重量部、上記乳化剤を2.5重量部、及び表1に記載の単量体を表1に記載の量ずつ混合した乳化混合液を滴下液として、3時間かけて滴下した。
滴下終了後、内温を75℃に昇温し、1時間後に、t−ブチルハイドロパーオキサイド(カヤブチルH−70(商品名)、化薬ヌーリー(株)製)0.1重量部とイオン交換水0.1重量部との混合液、及びロンガリット(商品名、三菱ガス化学(株)製)0.03重量部とイオン交換水1.0重量部との混合液を添加した。引き続き内温75℃で2時間熟成した。得られた分散液を30℃に冷却した後、水及び25重量%アンモニア水を用いて、表1に記載のpH及び固形分となるように、水性分散液を調整した。
【0057】
得られた水性分散液を用いて、上記の評価を行った。その結果を表1に示す。また、実施例2における電導度−滴定量曲線(表面酸価測定)、及びpH−滴定量曲線(THF全酸価測定)を図1に示す。表面酸価測定の結果、滴定初期に、電導度の低下が見られ、その後ほぼ一定値となり、そして、変曲点付近から急上昇する傾向があることがわかった。
【0058】
(比較例4)
比較例1で得られた水性分散液に、下記のようにして調製したポリカルボン酸1重量部(固形分)を加えた。得られた水性分散液を用いて、上記の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0059】
[ポリカルボン酸(比較例4用の酸価調整用添加剤)の製造]
攪拌機、還流冷却器及び原料投入口を備えた1Lフラスコ内に、イオン交換水462重量部、ヘキサメタリン酸ナトリウム(太洋化学工業(株)製)0.11重量部をイオン交換水2.9重量部に加えた混合液を仕込んだ後、内温を80℃に保ちながら80重量%アクリル酸を52.4重量部加えて、30分間撹拌する。ここに、無水重亜硫酸ナトリウム0.16重量部と過硫酸アンモニウム0.52重量部のレドックス系重合開始剤を加えて、80℃を維持し、60分間、撹拌下で重合を行って、固形分8.4重量%、pH2.1のポリカルボン酸水溶液を得た。
【0060】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシル基含有単量体(A)、カルボキシル基を有さない(メタ)アクリル系単量体(B)、及び芳香族ビニル系化合物(C)を含有する単量体混合物から得られる共重合体粒子を含有する水性分散液であり、
上記カルボキシル基含有単量体(A)の含有量が、上記単量体混合物全量に対して、2〜15重量%であり、かつ、上記共重合体粒子の表面酸価が10〜40mgKOH/gである水性分散液からなる耐透水性コーティング剤組成物。
【請求項2】
フィルム化したときのクリア皮膜膨潤率が3〜30%である請求項1に記載の耐透水性コーティング剤組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の耐透水性コーティング剤組成物を、多孔質無機質板からなる下地基材に塗布して得られる耐透水性塗膜。
【請求項4】
カルボキシル基含有単量体(A)、カルボキシル基を有さない(メタ)アクリル系単量体(B)、及び芳香族ビニル系化合物(C)を含有する単量体混合物から得られる共重合体粒子であり、
上記カルボキシル基含有単量体(A)の含有量が、上記単量体混合物全量に対して2〜15重量%であり、かつ、上記共重合体粒子の表面酸価が10〜40mgKOH/gである共重合体粒子を下記の(1)〜(3)のいずれかの方法を用いて乳化重合を行うことにより製造する共重合体粒子の製造方法。
(1)カルボキシル基含有単量体(A)の使用量を多くして、共重合体全体の酸価を高くする。
(2)カルボキシル基を有さない(メタ)アクリル系単量体(B)として、カルボキシル基含有単量体(A)との共重合の際に、カルボキシル基含有単量体(A)より重合反応性が高く、かつ、重合時に(B)の連鎖が生成しやすいものを選び、反応末期に相対的に(A)の残留量が多くなって重合体粒子の表面近傍で(A)の組成比の高い共重合体が生成するようにする。
(3)各単量体(A),(B)と、それから生成する重合体、及び水性媒体との親和性を比較して、単量体の、重合体及び水性媒体への分配比率が、(B)は重合体側に、(A)は水性媒体側により多くなるように、(A)及び(B)の種類・量を選択・調整する。
【請求項5】
上記カルボキシル基含有単量体(A)がアクリル酸、メタクリル酸、及びイタコン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項4に記載の共重合体粒子の製造方法。
【請求項6】
芳香族ビニル系化合物(C)の含有量が、上記単量体混合物全量に対して、20重量%以上70重量%以下である請求項4又は5に記載の共重合体粒子の製造方法。
【請求項7】
請求項4乃至6のいずれかに記載の共重合体粒子の製造方法によって製造される共重合体粒子を含有する水性分散液。
【請求項8】
請求項7に記載の水性分散液を含有する耐透水性コーティング剤組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2011−80090(P2011−80090A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−1807(P2011−1807)
【出願日】平成23年1月7日(2011.1.7)
【分割の表示】特願2005−166693(P2005−166693)の分割
【原出願日】平成17年6月7日(2005.6.7)
【出願人】(000211020)中央理化工業株式会社 (65)
【Fターム(参考)】