説明

耐水性ボード

【課題】
本発明は、従来の木質ボードより耐水性が優れるとともに、硬質ポリウレタンフォームの廃材およびポリスチレンフォームの廃材を有効に利用することができ、つまりは、環境負荷の少ない材料で構成することを可能にしたボードを提供するものである。
【解決手段】
硬質ポリウレタンフォームの廃材を微粉砕したウレタン粉と、ポリスチレン樹脂からなる廃材を微粉砕したスチレン粉とからなる耐水性ボードに関するものである。また、該ウレタン粉の平均粒径が3mm以下であり、該スチレン粉の平均粒径が3mm以下である耐水性ボードに関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建築用としての床材、内装材、外装材の他、家具、家電製品、厨房設備などに広く用いられ、特に水廻りなどにも好適に使用できる耐水性ボードに関する。
【背景技術】
【0002】
木粉、木片等の木質材料に接着剤を添加して加圧成形してなる各種の木質ボードとしては、ハードボード、MDF、パーティクルボード、インシュレーションボード、配向性ボード(OSB)等があるが、水廻りの使用においては耐水性が不足気味であった。また、耐水性を向上させるために、特許文献1のようにパーティクルボードへ撥水性の組成物を付与する発明が開示されているが、それでも水廻りの使用における耐水性を満足できるものではなかった。
【0003】
一方、近年循環型社会を目指す法律が制定され、製品のリサイクル化要求が高まってきており、特に製品サイクルの短い家庭用冷蔵庫の硬質ポリウレタンフォームからなる断熱材は、家電リサイクル法によりリサイクルが義務付けられている。さらに自動販売機、ショーケース、保冷車、仮設ハウスなどの硬質ポリウレタンフォームからなる断熱材も問題視されてきた。
【特許文献1】特開平01-225684号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、従来の木質ボードよりも耐水性に優れたボードであるとともに、硬質ポリウレタンフォーム廃材およびポリスチレン樹脂からなる廃材の有効利用を図ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1の耐水性ボードは、硬質ポリウレタンフォームの廃材を微粉砕したウレタン粉と、ポリスチレン樹脂からなる廃材を微粉砕したスチレン粉とからなる。また、ウレタン粉の平均粒径が3mm以下であり、スチレン粉の平均粒径が3mm以下である前述の耐水性ボードに関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の耐水性ボードによれば、水廻りの使用において充分な耐水性が発揮された。その上、硬質ポリウレタンフォーム廃材およびポリスチレンフォーム廃材の有効利用ができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、この発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0008】
この発明の耐水性ボードは、硬質ポリウレタンフォームの廃材を微粉砕したウレタン粉と、ポリスチレン樹脂からなる廃材を微粉砕したスチレン粉とを混合し、熱加圧および冷却成形して得られるものであり、JIS A 5908に準拠する湿潤A法曲げ強度について従来のパーティクルボード等の木質ボードより優れたものである。すなわち、耐水性に優れたボードである。
【0009】
本発明の硬質ポリウレタンフォームの廃材を微粉砕したウレタン粉とは、建築分野の断熱材として使用されているもの、また廃冷蔵庫、廃自販機から回収した断熱材、建築断熱工事現場で発生する断熱パネルの端材や残材、建築物解体時で発生する断熱パネルの廃材、さらに断熱材を工場で生産する際に発生する廃材等を回収したものを、例えば高速粉砕機で微粉砕したものである。この粉砕物の平均粒径は、3mm以下に微粉砕したものが好ましく、平均粒径が3mm超えると、得られたボードは表面平滑性に欠けたり、耐水性が改善されない場合がある。微粉砕したウレタン粉の見かけ比重は0.03〜0.09g/ccのものが好ましい。なお、上記廃材に紙面材が含有されていてもよく、ウレタン粉に対して50重量%以下の量が好ましい。
【0010】
本発明のスチレン樹脂からなる廃材を微粉砕したスチレン粉とは、熱可塑性樹脂であり、100℃以上に加熱すると溶融し、ウレタン粉と接着するものである。また、スチレン粉の代わりに、他の熱可塑性樹脂である例えばポリエチレンフォームを微粉砕したものやポリ塩化ビニルフォームを微粉砕したものを用いた場合、加熱すると溶融しウレタン粉と接着するが、板状に成形すると経時で収縮が起こるので寸法が安定しない。
【0011】
本発明のスチレン樹脂からなる廃材を微粉砕したスチレン粉とは、建築分野の断熱材として使用されているもの、建築断熱工事現場で発生する断熱パネルの端材や残材、建築物解体時で発生する断熱パネルの廃材、さらに断熱材を工場で生産する際に発生する廃材、漁箱等の容器の廃材,緩衝材の廃材等、つまりスチレン樹脂から成形された廃材(発泡体に限らず)等を回収し、それらを例えば高速粉砕機で微粉砕したものである。この粉砕物の平均粒径は、3mm以下に微粉砕したものがよく、平均粒径が3mm超えると、例えば熱プレス等を使用してスチレン粉を加熱溶融する際、そのスチレン粉の中央部にまで熱が伝わり難くなるので、充分な溶融ができずウレタン粉と密に接着し難くなる。その結果、ボード中に空隙部が発生し、物性が低下する虞がある。なお、粉砕したポリスチレンフォームの見かけ比重は0.1〜0.4g/ccのものが好ましい。
【0012】
そして、本発明の耐水性ボードは、ウレタン粉とスチレン粉とを均一に混合し、通常のパーティクルボードなどの製造設備を用い、熱加圧および冷却成形することによって製造される。
【0013】
なお、本発明のウレタン粉とスチレン粉との混合には、従来から使用されているリボンブレンダー、高速回転ミキサー、タンブラーなどの混合設備を使用でき、均一に混合することができる。
【0014】
本発明の耐水性ボードの製造は、例えばスチールベルトを用いて、その上に、ウレタン粉とスチレン粉の混合材料を供給し、その後、プレス板やプレスベルトで熱加圧および冷却成形することで製造したり、或いは型枠に該混合材料を均一に撒布し、例えば温度170℃に加熱したプレス板で加圧し、その後プレス板の温度が50℃になるまで冷却することで製造したり、或いは押し出し機を使用して板状にすることで製造してもよい。なお、プレス板やプレスベルトで熱加圧および冷却成形する前に、目的とする形状に予備圧縮してから熱加圧及び冷却成形すれば、得られる耐水性ボードの品質が安定する。
【0015】
この熱加圧の方法は、熱源として例えば蒸気を使用してプレス板、或いはスチールベルト等を加熱して加圧成形する。
【0016】
また、冷却する方法は、加熱されたプレス板やスチールベルト等を水冷、或いは空冷して所定温度まで冷却する。この際、熱加圧時のボードに対する圧力よりも緩くすることで、冷却後における成形品の変形(反りや膨れ)等を少なくすることができる。
【0017】
なお、本発明の耐水性ボードにおいて、木粉チップや木片チップ、防腐剤、防黴剤、防虫剤、防火剤、撥水剤、寸法安定剤を強度等の物性に影響を与えない範囲で使用することは、何ら問題がない。
【実施例】
【0018】
以下、この発明を実施例により説明するが、この発明はこれらに限定されるものではない。
【0019】
この実施例では、次のものを用いた。
【0020】
ウレタン粉(以下、PU粉とする。)として、住宅の解体時に発生した硬質ポリウレタンフォームの廃材をターボミル(ターボ工業社製)で平均粒径が1mm以下に粉砕し、見かけ比重が0.15のものを使用した。
【0021】
スチレン粉(以下、PS粉とする。)として、梱包用として使用済みのポリスチレンフォームを減容してインゴットを得、これを該ターボミルで平均粒径が0.5mm以下に粉砕し、見かけ比重が0.44のものを使用した。
【0022】
また、各実施例および各比較例で用いる構成材料とその配合量(PU粉と、PS粉またはPE粉(フローセン UF、住友精化製)との合計を100として各成分の配合割合を表した)を表1に示した。
【0023】
常態曲げ強度および湿潤A法曲げ強度は、JIS A 5908に準拠して測定した。
また、反りの物性評価は、200mm×200mm角で6mm厚のボードを得、このボードの反りが、1mm以下のものを○、1mmを超えるものを×とした。
(実施例1)
PU粉/PS粉=60/40の重量比で高速回転ミキサーに投入混合し、混合粉を得た。
【0024】
次に、この混合粉を型枠に均一に撒布し、温度170℃に加熱したプレス板で5分間加圧し、その後プレス板の温度が50℃になるまで冷却し、耐水性ボードを得た。
【0025】
得られた耐水性ボードを用い、常態曲げ強度および湿潤A法曲げ強度(N/mm)、反りの試験を行った。
【0026】
その結果を表1に示す。
【0027】
同表から明らかなように、常態曲げ強度は14.9N/mmであり、湿潤A法曲げ強度はパーティクルボードより優れた13N/mmであった。また、反りは、1mm以下であった。
【0028】
(実施例2)
PU/PS=40/60の重量比で混合した以外は、実施例1と同様とした。
得られた耐水性ボードを用い、常態曲げ強度および湿潤A法曲げ強度(N/mm)、反りの試験を行った。
【0029】
その結果を表1に示す。
【0030】
同表から明らかなように、常態曲げ強度は15.9N/mmであり、湿潤A法曲げ強度はパーティクルボードより優れた14.6N/mmであった。また、反りは、1mm以下であった。
【0031】
(実施例3)
PU/PS=30/70の重量比で混合した以外は、実施例1と同様とした。
得られた耐水性ボードを用い、常態曲げ強度および湿潤A法曲げ強度(N/mm)、反りの試験を行った。
【0032】
その結果を表1に示す。
【0033】
同表から明らかなように、常態曲げ強度は17.2N/mmであり、湿潤A法曲げ強度はパーティクルボードより優れた16.3N/mmであった。また、反りは、1mm以下であった。
【0034】
(実施例4)
PU/PS=20/80の重量比で混合した以外は、実施例1と同様とした。
得られた耐水性ボードを用い、常態曲げ強度および湿潤A法曲げ強度(N/mm)、反りの試験を行った。
【0035】
その結果を表1に示す。
【0036】
同表から明らかなように、常態曲げ強度は19.3N/mmであり、湿潤A法曲げ強度は18.8N/mmと両曲げ強度ともにパティクルボードより優れたものであった。また、反りは、1mm以下であった。
【0037】
(比較例1)
PS粉を用いていない以外は、実施例1と同様とした。
【0038】
得られた耐水性ボードを用い、常態曲げ強度および湿潤A法曲げ強度(N/mm)、反りの試験を行った。
【0039】
その結果を表1に示す。
【0040】
同表から明らかなように、常態曲げ強度は10N/mmであり、湿潤A法曲げ強度は8.4N/mmであった。また、反りが1mm以下であった。
【0041】
(比較例2)
PU粉砕物を用いていない以外は、実施例1と同様とした。
【0042】
得られた耐水性ボードを用い、常態曲げ強度および湿潤A法曲げ強度(N/mm)、反りの試験を行った。
【0043】
その結果を表1に示す。
【0044】
同表から明らかなように、常態曲げ強度は32.2N/mmであり、湿潤A法曲げ強度は31.8N/mmであった。また、反りが1mmを超えるものであり、例えば床材等の施工に際して、表面の凹凸がひどく施工し難いものであった。
【0045】
(比較例3)
PU/PE=40/60とした以外は、実施例1と同様とした。
【0046】
得られた耐水性ボードを用い、常態曲げ強度および湿潤A法曲げ強度(N/mm)、反りの試験を行った。
【0047】
その結果を表1に示す。
【0048】
同表から明らかなように、常態曲げ強度は3N/mmであり、湿潤A法曲げ強度は2.7N/mmであったので、両強度ともパーティクルボードより劣っていた。また、反りは1mmを超えるものであり、例えば床材等の施工に際して、表面の凹凸がひどく施工し難いものであった。
(参照例)
市販のパーティクルボードから、200×200mm角で6mm厚の大きさのボードを得た。
【0049】
このボードを用い、常態曲げ強度および湿潤A法曲げ強度(N/mm)の試験を行った。
【0050】
その結果を表1に示す。
【0051】
同表から明らかなように、常態曲げ強度は18N/mmであり、湿潤A法曲げ強度は4N/mmであったので、水廻りに使用することが困難である。
【0052】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬質ポリウレタンフォームの廃材を微粉砕したウレタン粉と、ポリスチレン樹脂からなる廃材を微粉砕したスチレン粉とからなることを特徴とする耐水性ボード。
【請求項2】
ウレタン粉の平均粒径が3mm以下であり、スチレン粉の平均粒径が3mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の耐水性ボード。