説明

耐水性球状粒子、それを含む樹脂組成物及びその製造方法、並びにその耐水性球状粒子の集合物であるフィラー及びそれを含む半導体樹脂封止剤

【課題】高熱伝導な酸化マグネシウムを多く含有しながら、緻密で球形度が良好で、封止樹脂への高充填が可能であり、それに加えて、耐水性が極めて良好な耐水性球状粒子、それを含む樹脂組成物及びその製造方法、並びにその耐水性球状粒子の集合物であるフィラー及びそれを含む半導体樹脂封止剤を提供することである。
【解決手段】酸化マグネシウムを含有する球状粒子の表面に、MgSiO、MgAl、MgSiO、MgAlSi18、MgAlSi12及びMgAl10Siから選択される少なくとも一つの相から構成される層が形成されており、長辺と短辺の比が平均で1.0〜1.15であることを特徴とする耐水性球状粒子である。また、酸化マグネシウムを含有する溶融粒子を冷却凝固することによって、該球状粒子の表層にMgSiO、MgAl、MgSiO、MgAlSi18、MgAlSi12及びMgAl10Siから選択される少なくとも一つの相を形成して、耐水性球状粒子を得ることを特徴とする耐水性球状粒子の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化マグネシウムを含有する球状粒子の表面にMgSiO、MgAl、MgSiO、MgAlSi18、MgAlSi12及びMgAl10Siから選択される少なくとも一つの相から構成される層が形成された耐水性球状粒子、それを含む樹脂組成物及びその製造方法、並びにその耐水性球状粒子の集合物であるフィラー及びそれを含む半導体樹脂封止剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体樹脂封止剤等の放熱フィラーとしては、球形度が良好で高充填が容易であり、また低価格であることから、球状非晶質シリカが多用されている。しかしながら、近年、半導体デバイスの高集積化、ハイパワー化等に伴い、半導体デバイスからの発熱量が増大し、当該用途等においては、より高熱伝導な球状の放熱フィラーが求められるようになり、そのため、高熱伝導な球状アルミナが多用されている。
【0003】
球状アルミナは、球状非晶質シリカに比して一桁大きな熱伝導率を有するものの、球形度、緻密性の点において、球状非晶質シリカに劣り、アルミナが本質的に有する高熱伝導性を十分発揮していない。球状アルミナは、一般に球状非晶質シリカと同様に溶融による球状化プロセスを経て製造されるが、球状非晶質シリカが凝固の際に融液の原子構造がほぼ維持されるために、凝固収縮が極めて小さく真球状になりやすいのに対して、球状アルミナの場合、低密度な融液から高密度な結晶質アルミナへの凝固であるために、凝固収縮が大きく、それによる欠陥の生成が避けられない。そのため、球状アルミナは、球としての形状性及び緻密性は球状非晶質シリカに大きく劣り、放熱フィラーとして用いる場合の充填性が悪くなってしまう。また、アルミナは、高硬度であるために、樹脂成形用の金型を著しく損耗させるという欠点がある。
【0004】
一方、酸化マグネシウムは、実用的な酸化物セラミックスの中においては最も熱伝導率が大きく、絶縁性も良好で、比較的低硬度であることから、放熱フィラーへの適用材料として期待されている。しかしながら、酸化マグネシウムは、高融点における溶融による緻密球状化が困難であるため、アルミナ以上に高充填可能な放熱フィラーの製造が困難であり、また表面積を小さくすることができないために、酸化マグネシウムの欠点である耐水性の悪さを回避することも困難である。以上のような理由から、酸化マグネシウムは、半導体樹脂封止剤等の放熱フィラーとして工業的に広く適用されるには至っていない。
【0005】
以上の観点から、酸化マグネシウムの球状化と耐水性について改善が施されている(特許文献1及び2参照)。特許文献1には、酸化マグネシウム粉末に対し、アルミナ及び/又はシリカ粒子を添加し、これをスプレードライヤーを用いて粒状化して球形顆粒物を得た後、かかる粒状化状態を崩すことなく、当該造粒物の少なくとも一部を溶融し、次いでこれを急速に冷却することによって、酸化マグネシウム系物質を製造することが開示されている。一方、特許文献2には、複酸化物により被覆され、かつ、平均形状係数が1.25以下であることを特徴とする球状被覆酸化マグネシウム粉末、及び酸化マグネシウム粉末の表面に融点が2773K以下の複酸化物を形成する元素の化合物を存在させ、高温中で溶融させることによって、被覆酸化マグネシウム粉末を製造することが開示されている。
【特許文献1】特許第2590491号公報
【特許文献2】国際公開WO2005/033215号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の製造方法においては、アルミナ及びシリカ粒子とそれと接する酸化マグネシウム粉末の一部を溶融させて、すなわちアルミナ及びシリカ粒子を融剤として使用して酸化マグネシウム系物質を得ようとしているので、緻密で球形状が良好な球状酸化マグネシウム系粒子が得られるとは考えられない。したがって、特許文献1に記載の製造方法によって製造された酸化マグネシウム系物質によっては、封止樹脂への実質的な充填性を向上させることはできず、封止剤の熱伝導率を向上させることは困難であると考えられる。また、特許文献1に記載の製造方法においては、アルミナ及びシリカ粒子とそれと接する酸化マグネシウム粉末の一部が溶融凝固して生成すると推察される酸化マグネシウム以外の物質が、酸化マグネシウムを十分に被覆するとは考えられず、用途によっては、耐水性に問題が生じる可能性が高いと思われる。
【0007】
また、前記特許文献2に記載の製造方法においては、球状化前の酸化マグネシウムに、電融法、焼結法により製造された粉末を用いることで、得られる球状粉末内部における緻密性を向上させることは可能であるものの、球状被覆酸化マグネシウム粉末の球形度は、球状化前の酸化マグネシウム粉末の球形度に大きく依存すると思われ、当該粉末が粉砕プロセスを経て得られている限り、すべての球状被覆酸化マグネシウム粉末の球形度を高めることは困難であると思われる。また、球状化プロセスにおいて、複酸化物からなる被覆層の凝固に伴う収縮により、被覆層及び/又は被覆層と内部の酸化マグネシウムとの界面に欠陥が生成する可能性が高いと推察され、用途によっては、耐水性に問題が生じる可能性が高いと思われる。
【0008】
そこで、本発明は、高熱伝導な酸化マグネシウムを多く含有しながら、緻密で球形度が良好で、封止樹脂への高充填が可能であり、それに加えて、耐水性が極めて良好な耐水性球状粒子、それを含む樹脂組成物及びその製造方法、並びにその耐水性球状粒子の集合物であるフィラー及びそれを含む半導体樹脂封止剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上の目的を達成するために、本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、酸化マグネシウムを含有する球状粒子の表面に、MgSiO、MgAl、MgSiO、MgAlSi18、MgAlSi12及びMgAl10Siから選択される少なくとも一つの相から構成される層を形成することによって、高熱伝導な酸化マグネシウムを多く含有しながら、緻密で球形度が良好で、封止樹脂への高充填が可能であり、それに加えて、耐水性が極めて良好にすることができることを見出した。すなわち、本発明は、酸化マグネシウムを含有する球状粒子の表面に、MgSiO、MgAl、MgSiO、MgAlSi18、MgAlSi12及びMgAl10Siから選択される少なくとも一つの相から構成される層が形成されており、長辺と短辺の比が平均で1.0〜1.15であることを特徴とする耐水性球状粒子である。また、本発明は、耐水性球状粒子を含む樹脂組成物であり、さらに、本発明は、酸化マグネシウムを含有する溶融粒子を冷却凝固することによって、該球状粒子の表層にMgSiO、MgAl、MgSiO、MgAlSi18、MgAlSi12及びMgAl10Siから選択される少なくとも一つの相を形成して、耐水性球状粒子を得ることを特徴とする耐水性球状粒子の製造方法である。
【0010】
本発明に係る耐水性球状粒子は、高熱伝導性を示し、緻密性、高球形度を併せ持ち、半導体樹脂封止剤のフィラー等、絶縁性の放熱フィラーとして好適に用いられる。すなわち、本発明は、前記耐水性球状粒子の集合体であり、平均粒径が5〜500μmであることを特徴とするフィラーであり、またそのフィラーと樹脂を含む半導体樹脂封止剤である。
【発明の効果】
【0011】
以上のように本発明によれば、高熱伝導な酸化マグネシウムを多く含有しながら、緻密で球形度が良好で、封止樹脂への高充填が可能であり、それに加えて、耐水性が極めて良好な耐水性球状粒子、それを含む樹脂組成物及びその製造方法、並びにその耐水性球状粒子の集合物であるフィラー及びそれを含む半導体樹脂封止剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明に係る耐水性球状粒子において、前記酸化マグネシウムを含有する球状粒子は、(a)酸化マグネシウムからなる相とMgAlからなる相から構成される共晶組織を呈する球状粒子であるか、(b)酸化マグネシウムとMgSiOを主成分とすることが好ましい。
【0013】
前記酸化マグネシウムを含有する球状粒子が、(a)酸化マグネシウムからなる相とMgAlからなる相から構成される共晶組織を呈する球状粒子である場合、長辺と短辺の比が平均で1.0〜1.15であるが、1.0〜1.1であることが好ましい。球状粒子の長辺と短辺の比がこの範囲にあれば封止樹脂への充填性、成形性が特に優れたものとなるからである。このような範囲の球状粒子は、冷媒による急冷が凝固前の粒子同士の接触を抑制することができるので、後述する球状の溶融粒子を冷媒に投入して急冷することによって容易に得ることができる。
【0014】
本発明に係る耐水性球状粒子において、共晶組織とは、一つの液相(融液)が、冷却中に共晶温度において、分離して異なる複数の固相が晶出する反応、すなわち共晶反応によって生成する組織であり、層状、繊維又は棒状、又はそれに類する形状の規則性のある組織である。
【0015】
溶融凝固プロセスを経て製造される結晶質の球状粒子は、一般に結晶粒の集合組織を呈しており、多数の粒界の存在が実質的な熱伝導率を低下せしめ、物質固有の熱伝導率を得ることが困難である。これに対し、共晶組織は、構成相の連続性が高く、また、構成相間も整合性が良好な界面が形成されており、物質固有の熱伝導率が発揮されやすい。
【0016】
共晶温度は、一般的に、晶出する各固相の融点より低く、共晶反応を用いれば、所望の相の融点より低い温度のプロセスで相を晶出させることが可能になる。例えば、一般に酸化マグネシウムは、2824℃の高い融点を持つため、化学炎への投入による溶融は困難であるが、共晶反応又は共晶組成に近い組成での溶融凝固反応によれば、化学炎への投入による酸化マグネシウム相の晶出が可能になる。
【0017】
共晶組成の融液は、一般に、凝固温度が極めて低く、粘度が低く流動性が良く、また凝固収縮が小さいので、結晶質物への凝固であっても、他の組成の結晶質物への凝固に比べて球形状が良好な球状粒子を得やすい。また、共晶組成から組成比が大きく異ならない組成においても、共晶組成の融液及びその凝固と同様の特徴を有する。
【0018】
前記酸化マグネシウムを含有する球状粒子が、(b)酸化マグネシウムとMgSiOを主成分とする場合、本発明に係る耐水性球状粒子の長辺と短辺の比が平均で1.0〜1.1となる。この場合、前記酸化マグネシウムを含有する球状粒子が、Mg、Si及びOを主成分とする溶融粒子を冷却凝固することによって非晶質相を主相とする球状粒子を得たのち、該非晶質相を主相とする球状粒子を加熱することにより結晶化させることが好ましい。
【0019】
本発明に係る球状粒子は、その球状粒子の長辺と短辺の比が1.0〜1.1の範囲に調整されているので、封止樹脂への充填性、成形性が特に優れている。このような範囲の球状粒子は、非晶質の粒子を経由することにより、容易に得ることができる。すなわち、本発明においては、Mg、Si及びOを主成分とする溶融粒子を冷却して、一旦、Mg、Si及びOを主成分とする非晶質相から構成される球状粒子を得る。この非晶質相から構成される球状粒子は、特に、溶融粒子を液体冷媒による超急冷凝固することによって、非平衡状態での凝固が可能になり、溶融時の原子構造がほぼ維持された状態で凝固されるために、凝固収縮が極めて小さく、球形状が良好な球状粒子が得られやすい。ここで、「非晶質」とは、透過電子顕微鏡観察によって、結晶格子像を確認することができない相の原子構造を意味するが、結晶化前の球状粒子の主要構成相である非晶質相中に微量の結晶質相が含まれていても、結晶化後の球状粒子の球形度を始めとする特性を低下させることはないために、問題はない。得られた非晶質相から構成される球状粒子は、所定の温度に加熱されることで、酸化マグネシウム及びMgSiOに結晶化する。この際、球状粒子は等方的に収縮するため、前記非晶質の粒子が持つ良好な球形状が維持され、酸化マグネシウム及びMgSiOを主成分とする結晶質の球状粒子を得ることができる。
【0020】
本発明に係る耐水球状粒子において、酸化マグネシウムとMgSiOを主成分とするとは、非結晶化や結晶化を妨げない範囲で酸化マグネシウムとMgSiO以外の他の成分を微量に含ませても良いという趣旨であり、例えばA、P及びOが95重量%以上であることを意味する。また、Mg、Si及びOを主成分とするとは、Mg、Si及びOの非結晶化や結晶化を妨げない範囲でMg、Si及びO以外の他の成分を微量に含ませても良いという趣旨であり、例えばMg、Si及びOが95重量%以上であることを意味する。さらに、Mg、Al及びOを主成分とするとは、Mg、Al及びOの共晶組成化を妨げない範囲でMg、Al及びO以外の他の成分を微量に含ませても良いという趣旨であり、例えばMg、Al及びOが95重量%以上であることを意味する。また、非晶質相を主相とするとは、結晶質相を微量に含ませても良いという趣旨であり、例えば、非晶質相が95重量%以上であることを意味し、非晶質相のみから構成される場合、及び非晶質相の間に結晶質相が含まれる場合が含まれる。さらに、長辺とは、球状粒子の最も長い直径をいい、短辺とは、球状粒子の最も短い直径をいう。長辺と短辺の比の測定は、例えばレーザ顕微鏡を用いて行うことができる。本発明に係る耐水性球状粒子においては、レーザ顕微鏡を用いて、50個の球状粒子の測定を行い、その平均値を算出したものである。
【0021】
酸化マグネシウムを含有する球状粒子は、平均粒径が5〜500μmであることが好ましく、5〜200μmであることがさらに好ましい。球状粒子の平均粒径が5μm未満であると表面積が大きくなり、耐水性に問題が生じる可能性があり、球状粒子の平均粒径が500μmより大きくなると、半導体封止樹脂等への充填性が悪くなるからである。平均粒径の調整は、篩による分級によって行うことができる。
【0022】
(a)酸化マグネシウムからなる相とMgAlからなる相から構成される共晶組織を呈する球状粒子である場合、酸化マグネシウムを含有する球状粒子を得るためには、先ず、Mg、Al及びOを主成分とする溶融粒子を冷却することによって球状に凝固させる工程を要する。また、(b)酸化マグネシウムとMgSiOを主成分とし、長辺と短辺の比が平均で1.0〜1.1である場合、酸化マグネシウムを含有する球状粒子を得るためには、先ず、Mg、Si及びOを主成分とする溶融粒子を冷却することによって球状に凝固させる工程を要する。溶融粒子とは、その構成成分が溶融状態を保った状態で球状化されたものである。このような溶融粒子は、例えば、フレーム法、アトマイズ法及びスピンディスク法によって得ることができ、特にフレーム法によることが好ましい。フレーム法は、一粒一粒が構成成分からなる粒子を融点以上の温度の高温域を通過させる方法であり、例えば、組成調製された粒子を化学炎又は熱プラズマ中に投入し溶融させ溶融状態の球状粒子を得る方法である。アトマイズ法は、坩堝等の中で構成成分からなる原料を溶融させて坩堝に開けられた吐出口より融液を噴出させる方法であり、スピンディスク法は、高速で回転するディスク上に融液を溶融状態を保った状態で衝突させる方法である。
【0023】
フレーム法は、スプレードライヤー等により粉末状の原料を造粒した粒子、及び原料を焼結又は溶融凝固させたバルク材料を粉砕し、所望の粒度分布になるように、調整した粒子等を用いることができ、その粒子をその凝集を抑制しながら化学炎又は熱プラズマ中に投入し、化学炎又は熱プラズマ中で溶融させることによって行われる。
【0024】
また、フレーム法は、原料のコロイド液や有機金属重合体等の所望の組成比の元素を含む液状の前駆物質などを用いることができ、その液状原料を、ノズル等を用いて化学炎又は熱プラズマ中に噴霧し、化学炎又は熱プラズマ中で溶剤又は分散媒を蒸発させた上で溶融させることによって行われる。ノズルと化学炎又は熱プラズマの間に低温の加熱域を設け、液状原料中の溶剤又は分散媒を蒸発させた上で、化学炎又は熱プラズマ中に投入することもできる。
【0025】
フレーム法において、化学炎の発生源としては、2400℃以上の高温が得られれば良く、例えば、酸素−アセチレンの混合ガスや、それに水素を加えた混合ガス等が高温を得やすいことから好適に用いられる。また、熱プラズマの発生源としては、酸素、窒素、アルゴン、炭酸ガス及びこれらの混合ガス、並びに水が用いられ、ガスが用いられる場合、誘導結合方式のプラズマ装置が用いられるが、水が用いられることが好ましい。
【0026】
アトマイズ法又はスピンディスク法の場合、原料としては、粉体、成形体、焼結体及び凝固体のいずれでも良く、また、これらの二つ以上が組み合わせたものでも良い。これら原料をその融点より高い融点を有する坩堝、例えば、Mo、W、Ta、Ir、Pt製等の坩堝、又は水などによって冷却が施されたCu製の坩堝等に収容した後、溶融させる。溶融方法は、原料をその融点以上の温度に加熱することが可能な方法であれば、いかなる方法でも良く、例えば、高周波、プラズマ、レーザ、電子ビーム、光又は赤外線等を用いることができる。原料の溶融は、原料が蒸発又は分解せず、且つ坩堝が著しく消耗しない雰囲気で行われることが好ましい。大気中、不活性ガス中、真空中等、原料と用いられる坩堝の材質に応じて、最適な雰囲気が選択される。
【0027】
アトマイズ法は、ガス圧等を用いて坩堝底部等にあけられた細孔より融液を噴出させることによって球状の溶融粒子を形成することができる。スピンディスク法は、坩堝を傾転させる、アトマイズ法の場合と同様にガス圧等を用いて坩堝底部等にあけられた細孔より融液を噴出させるなどによって、回転するディスクに融液を衝突させて、球状の溶融粒子を形成することができる。
【0028】
酸化マグネシウムを含有する球状粒子が(a)酸化マグネシウムからなる相とMgAlからなる相から構成される共晶組織を呈する球状粒子である場合、溶融前の原料の構成成分の割合を調整する必要がある。凝固直前の溶融粒子が共晶組成となるように原料の構成成分の割合を徴する必要があるが、球形状及び熱伝導率が良好な球状粒子を得るためには、必ずしも共晶点と呼ばれる特定の組成である必要はない。例えば、その原材料が溶融した際の酸化マグネシウムと酸化アルミニウムとしての重量比43:57〜57:43となるように調整されていることが必要である。このような原料の組成比にすることによって、均一な共晶組織が形成され易く、良好な球形状を有する球状粒子を得ることができる。溶融前の原料としては、一般的には、酸化マグネシウム及び酸化アルミニウムが用いられるが、溶融した際に酸化物になるものであれば良く、水酸化物、炭酸塩等を用いても良い。また、冷却工程は、例えば、球状の溶融粒子を冷媒に投入して急冷することによって行うことができる。上述した本発明に係る球状粒子の製造方法における原料の構成成分の割合であれば、球状の溶融粒子についての冷媒による冷却によって共晶組織を呈する球状粒子を得ることができる。
【0029】
また、酸化マグネシウムを含有する球状粒子が、(b)酸化マグネシウムとMgSiOを主成分とし、長辺と短辺の比が平均で1.0〜1.1である場合、Mg、Si及びOを主成分とする溶融粒子は、例えば、酸化マグネシウムと二酸化ケイ素から得ることができ、その場合、溶融粒子の構成成分の酸化マグネシウムと二酸化ケイ素の割合は、前者よりモル比で65:35〜85:15の範囲であることが好ましい。この範囲より二酸化ケイ素の割合が大きくなると高熱伝導な球状粒子が得られなくなり、またこの範囲より酸化マグネシウムの割合が大きくなると球形状が良好な球状粒子を得ることが困難になるからである。また、この場合、球状の溶融粒子を冷却して非晶質相を主相とする球状粒子を得るが、この冷却工程は、溶融状態を保った状態で、冷媒に球状の溶融粒子を投入して急冷することによって、本発明に係る耐水球状粒子を得ることができる。Mg、Si及びOを主成分とする溶融粒子であれば、液体冷媒による急冷によって非平衡状態での凝固が可能になり、この球状粒子は、溶融時の原子構造がほぼ維持された状態で凝固されるために、凝固収縮が極めて小さく、球形状が良好な球状粒子が得られやすい。
【0030】
酸化マグネシウムを含有する球状粒子が(a)酸化マグネシウムからなる相とMgAlからなる相から構成される共晶組織を呈する球状粒子である場合、及び(b)酸化マグネシウムとMgSiOを主成分とし、長辺と短辺の比が平均で1.0〜1.1である場合いずれも、冷媒としては、非可燃性の液体が好ましく、水を分散媒としたAl、Si及びMgから選択される少なくとも一種の元素を含むコロイド状液体を好適に用いることができる。コロイド状液体の濃度は重量割合で、0.05〜10%の範囲にあることが好ましい。この範囲より濃度が低い場合は、球状粒子に耐水性を付与しうるに十分な表層を形成することができず、この範囲より濃度が高い場合は、球状粒子の球形度が悪くなる可能性があるからである。このような冷媒により溶融粒子を急冷することによって、表層がMgSiO、MgAl、MgSiO、MgAlSi18、MgAlSi12及びMgAl10Siのいずれか一以上の相から構成される。また、冷媒による急冷を用いることによって、凝固前の粒子同士の接触を抑制し、良好な球形状を作ることができる。
【0031】
得られた非晶質相を主相とする溶融粒子の長辺と短辺の比を平均で1.0〜1.1に調整しても良い。当該非晶質球状粒子は、液体冷媒による超急冷によって溶融時の原子構造がほぼ維持された状態で凝固されたものであり、凝固収縮が極めて小さく、球形状が良好な球状粒子が得られる。
【0032】
酸化マグネシウムを含有する球状粒子が、(b)酸化マグネシウムとMgSiOを主成分とし、長辺と短辺の比が平均で1.0〜1.1である場合、さらに、非晶質相を主相とする球状粒子を加熱することにより結晶化させるが、この際の加熱温度は、1350℃〜2100℃であることが好ましく、1450℃〜1800℃であることがさらに好ましい。このように加熱することにより、当該非晶質球状粒子を結晶化させて、酸化マグネシウムと、MgSiOから構成される球状粒子を得ることができる。得られた非晶質相から構成される球状粒子は所定の温度に加熱されることで、酸化マグネシウム及びMgSiOに結晶化する。この際、球状粒子は等方的に収縮するため、前記非晶質の粒子が持つ良好な球形状が維持された、酸化マグネシウム及びMgSiOから構成される結晶質の球状粒子を得ることができる。加熱の際の温度、時間、昇降温速度等を適宜選択することにより目的の球状粒子を得ることができる。この加熱処理は、非晶質相を主相とする球状粒子を1350℃〜2100℃で加熱することが可能な方法であればいかなる方法でも良く、抵抗加熱、サセプターを用いた高周波誘導加熱、レーザ加熱、電子ビーム加熱、光加熱、赤外線加熱等いかなる方式を用いても良い。
【0033】
一般的には、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム等のセラミックス製、又は、モリブデン、タンタル、白金、イリジウム等の高融点金属製の坩堝等に非晶質球状粒子を収容して坩堝ごと加熱を行う方法、非晶質球状粒子を所定の温度勾配と均熱領域が設けられた前記坩堝と同様の素材からなる管状炉中を移動させながら加熱を行う方法、又は、非晶質球状粒子を、所定の温度勾配と均熱領域が設けられた前記坩堝と同様の素材からなる縦型管状炉中を落下させながら加熱を行う方法等が採用される。
【0034】
非晶質球状粒子の加熱処理は、大気中、不活性ガス中、還元性ガス中、炭化水素ガス中、真空中などいかなる雰囲気で行われても良いが、用いられる坩堝及び加熱方式により制限を受ける場合がある。
【0035】
本発明に係る耐水性球状粒子は、球形状が良好なため、極めて流動性が良く、樹脂に充填する際に極めて良好な成形性を示す。得られた耐水性球状粒子は、所望の充填率が得られるよう分級された後、必要に応じて表面処理が施されて更に充填率を向上させることができる。表面処理剤としては、一般にシラン系カップリング剤が用いられるが、他にチタネート系及びアルミネート系カップリング剤を用いることもできる。
【0036】
本発明に係る樹脂組成物は、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、及びポリイミド樹脂等の樹脂原料に上述した耐水性球状粒子が充填されていることが好ましく、またシリコーンゴム等に充填されても良い。また、本発明に係る樹脂組成物は、成形時、必要に応じて硬化剤、硬化促進剤等が添加される。
【0037】
本発明に係るフィラーは、本発明に係る耐水性球状粒子の集合体であり、その平均粒径は5〜500μmの範囲であることが好ましい。この範囲未満の場合は、粒子の表面積が大きくなり耐水性に問題が生じる可能性があり、この範囲を越える場合は、半導体封止樹脂等への充填性が悪くなるからである。平均粒径の調整は、篩による乾式または湿式の分級によって容易に行うことができ、その用途に応じて適切な目の粗さの篩を選択して所望の粒度分布を有するフィラーを得ることができる。
【0038】
本発明に係る半導体樹脂封止剤は、本発明に係るフィラーと樹脂から構成される前記樹脂組成物からなる。半導体樹脂封止剤とは、集積回路を外部の熱やゴミ、湿気、衝撃などから守る樹脂組成物であり、一定以上の電気的絶縁性、耐水性に加え、優れた成形性および放熱性(高熱伝導性)が要求される。本発明に係るフィラーは、球形状および熱伝導性が良好な球状粒子の集合体であり、流動性が良く成形性が良好で、充填率を高くすることが可能であるため、本発明に係るフィラー及び樹脂からなる半導体樹脂封止剤は、優れた熱伝導性を有し、特に発熱量が大きな高性能集積回路に好適に用いられる。
【0039】
本発明に係る半導体樹脂封止剤は、樹脂が固形材である場合、圧縮成形法やトランスファ成形法等により成形される。圧縮成形法は、金型のキャビティ内で樹脂を溶融させ圧縮しフィラーを成形するように硬化させて、予めキャビティ内に設置された、基板上のICチップ、ダイパッド、ボンディングワイヤのすべて、及びリードフレームの一部を封止する方法であり、トランスファ成形法は、金型のキャビティ外のポットで樹脂を溶融させて、小さな穴を通して溶融樹脂およびフィラーをキャビティ内に送り、キャビティ内でフィラーを成形するように硬化させて、圧縮成形法と同様に各部品を封止する方法である。
【0040】
また、本発明に係る半導体樹脂封止剤は、樹脂が液状封止材である場合、液状樹脂とフィラーを混合し、ディスペンサー等により必要な箇所に注入する、また塗布する等した後、必要に応じて脱溶媒を行い、次いでフィラーを成形するように硬化させて封止を行うことができる。
【0041】
いずれの方法であっても、フィラーの含有率は60〜90重量%程度であることが好ましい。フィラーの含有率が、この範囲より少ないと、当該フィラーの良好な熱伝導性の効果が得にくく、またこの範囲より多いと、成形が困難になる。樹脂は、目的に応じて多様な種類から選択され、その硬化剤、硬化促進剤はそれに応じて選択され、また成形温度もそれらにより最適な条件が選択される。
【実施例】
【0042】
実施例1
次に、本発明に係る耐水性球状粒子の実施例1について説明する。実施例1に係る耐水性球状粒子の原料としては、MgO粉末(高純度化学研究所社製MGO12PB)及びα−Al(住友化学工業社製AKP−30)粉末を用いた。MgO粉末及びα−Al粉末を重量比で55:45の割合で水を用いた湿式ボールミルによって混合し、スプレードライヤーを用いて得られたスラリーを造粒乾燥して平均粒径25μmの顆粒状の粒子を得た。
【0043】
得られた顆粒状の粒子を、酸素及びアセチレンの混合ガスの燃焼により形成された火炎中に、混合ガスの噴出方向と平行に供給し、火炎中で溶融球状化した後、火炎先端を流動状態にある濃度2重量%のAlを含有するコロイド液中へ入射させることで溶融粒子を流水中へ投入し凝固させた。
【0044】
得られた球状粒子は平均粒径17μmであり、その長辺と短辺の比は平均で1.13であった。この球状粒子はCu−Kα線を用いたX線回折、球状粒子断面の走査電子顕微鏡観察により、表層がMgAl、で構成され、表層以外の部分が酸化マグネシウムからなる相と、MgAlからなる相から構成される共晶組織を呈していることがわかった。
【0045】
得られた球状粒子をエポキシシランカップリング剤で処理し、この球状粒子を100%とした場合に、この球状粒子に対して、20重量%のノボラックエポキシ樹脂、10重量%のノボラックフェノール、0.4重量%の硬化促進剤及び0.4重量%のカルナバワックスを加えて100℃で混錬し粉砕した。得られた粉末を170℃で7MPaの圧力でプレス成形して直径20mm、厚さ3mmの成形物を得た。得られた成形物の熱伝導率をレーザフラッシュ法により測定したところ、3.31W/mKの値を得た。また、この成形物を120℃の2気圧水蒸気中に200時間保持して吸湿率の測定を行ったところ、吸水率は0.3%であり、成形物の外観に変化は認められなかった。
【0046】
実施例2
次に、本発明に係る耐水性球状粒子の実施例2について説明する。実施例1と同様に、MgO粉末及びα−Al粉末を用い、MgO粉末及びα−Al粉末の重量比を45:55の割合にした以外は、実施例1と同様の方法で造粒乾燥して平均粒子径24μmの顆粒状の粒子を得て、実施例1と同様の方法で溶融球状化させたのち、凝固させ球状粒子を得た。得られた球状粒子は、平均粒子径16μmであり、その長辺と短辺の比は平均で1.10であった。この球状粒子はCu−Kα線を用いたX線回折、球状粒子断面の走査電子顕微鏡観察により、表層がMgAl、で構成され、表層以外の部分が酸化マグネシウムからなる相と、MgAlからなる相から構成される共晶組織を呈していることがわかった。
【0047】
得られた球状粒子をエポキシシランカップリング剤で処理し、この球状粒子を100%とした場合に、この球状粒子に対して、20重量%のノボラックエポキシ樹脂、10重量%のノボラックフェノール、0.4重量%の硬化促進剤及び0.4重量%のカルナバワックスを加えて100℃で混錬し粉砕した。得られた粉末を170℃で7MPaの圧力でプレス成形して直径20mm、厚さ3mmの成形物を得た。得られた成形物の熱伝導率をレーザフラッシュ法により測定したところ、3.04W/mKの値を得た。また、この成形物を120℃の2気圧水蒸気中に200時間保持して吸湿率の測定を行ったところ、吸水率は0.3%であり、成形物の外観に変化は認められなかった。
【0048】
実施例3
次に、本発明に係る耐水性球状粒子の実施例3について説明する。実施例2に係る耐水性球状粒子の原料としては、MgO粉末(高純度化学研究所社製MGO12PB)及びSiO粉末(高純度化学研究所社製SIO07PB)を用いた。MgO粉末及びSiO粉末をモル比で前者から80:20の割合で水を用いた湿式ボールミルによって混合し、得られたスラリーをスプレードライヤーを用いて造粒乾燥して平均粒径25μmの顆粒状の粒子を得た。
【0049】
得られた顆粒状の粒子を、酸素及びアセチレンの混合ガスの燃焼により形成された火炎中に、混合ガスの噴出方向と平行に供給し、火炎中で溶融球状化した後、火炎先端を流動状態にある濃度2重量%のSiOを含有するコロイド液中へ入射させることで溶融粒子を流水中へ投入し凝固させた。
【0050】
得られた球状粒子は平均粒径22μmであり、その長辺と短辺の比は平均で1.04であった。この球状粒子はCu−Kα線を用いたX線回折、透過電子顕微鏡観察及び透過電子顕微鏡に設置された半導体X線検出器による特性X線の分析により、表層が約0.1μmのMgSiOで、表層以外の部分がMg、Si及びOからなる非晶質相から構成されていることがわかった。
【0051】
得られた球状粒子をMgO製坩堝に収容して空気中1550℃で熱処理した。得られた球状粒子は平均粒径18μmであり、その長辺と短辺の比は平均で1.07であった。この球状粒子はCu−Kα線を用いたX線回折及び球状粒子切断面の走査電子顕微鏡観察により、表層がMgSiOから構成され、表層以外の部分がMgO及びMgSiOから構成されていることがわかった。
【0052】
得られた球状粒子をエポキシシランカップリング剤で処理し、この球状粒子を100%とした場合に、この球状粒子に対して、20重量%のノボラックエポキシ樹脂、10重量%のノボラックフェノール、0.4重量%の硬化促進剤及び0.4重量%のカルナバワックスを加えて100℃で混錬し粉砕した。得られた粉末を170℃で7MPaの圧力でプレス成形して直径20mm、厚さ3mmの成形物を得た。得られた成形物の熱伝導率をレーザフラッシュ法により測定したところ、3.15W/mKの値を得た。また、この成形物を120℃の2気圧水蒸気中に200時間保持して吸湿率の測定を行ったところ、吸水率は0.3%であり、成形物の外観に変化は認められなかった。
【0053】
実施例4
次に、本発明に係る耐水性球状粒子の実施例4について説明する。実施例3と同様の原料を用い、実施例3と同様の方法によって、平均粒子径25μmの顆粒状の粒子を得た。
【0054】
得られた顆粒状の粒子を、酸素及びアセチレンの混合ガスの燃焼により形成された火炎中に、混合ガスの噴出方向と平行に供給し、火炎中で溶融球状化した後、火炎先端を流動状態にある濃度2重量%のMgOを含有するコロイド液中へ入射させることで溶融粒子を流水中へ投入し凝固させた。
【0055】
得られた球状粒子は平均粒径22μmであり、その長辺と短辺の比は平均で1.04であった。この球状粒子はCu−Kα線を用いたX線回折、透過電子顕微鏡観察及び透過電子顕微鏡に設置された半導体X線検出器による特性X線の分析により、表層が約0.2μmのMgSiOで、表層以外の部分がMg、Si及びOからなる非晶質相から構成されていることがわかった。
【0056】
得られた球状粒子をMgO製坩堝に収容して空気中1550℃で熱処理した。得られた球状粒子は平均粒径18μmであり、その長辺と短辺の比は平均で1.07であった。この球状粒子はCu−Kα線を用いたX線回折及び球状粒子切断面の走査電子顕微鏡観察により、表層がMgSiOから構成され、表層以外の部分がMgO及びMgSiOから構成されていることがわかった。
【0057】
得られた球状粒子をエポキシシランカップリング剤で処理し、この球状粒子を100%とした場合に、この球状粒子に対して、20重量%のノボラックエポキシ樹脂、10重量%のノボラックフェノール、0.4重量%の硬化促進剤及び0.4重量%のカルナバワックスを加えて100℃で混錬し粉砕した。得られた粉末を170℃で7MPaの圧力でプレス成形して直径20mm、厚さ3mmの成形物を得た。得られた成形物の熱伝導率をレーザフラッシュ法により測定したところ、3.15W/mKの値を得た。また、この成形物を120℃の2気圧水蒸気中に200時間保持して吸湿率の測定を行ったところ、吸水率は0.5%であり、成形物の外観に変化は認められなかった。
【0058】
比較例
次に、本発明に係る球状粒子の比較例について説明する。比較例に係る球状粒子の原料として、実施例1と同程度の粒度分布になるように分級によって粒度調整された電融マグネシアを実施例1と同様の方法で成形した。成形物の熱伝導率をレーザフラッシュ法により測定したところ、3.01W/mKの値を得た。また、この成形物を120℃の2気圧水蒸気中に200時間保持して吸湿率の測定を行ったところ、吸水率は3.1%であり、成形物の表面には複数のクラックが発生した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化マグネシウムを含有する球状粒子の表面に、MgSiO、MgAl、MgSiO、MgAlSi18、MgAlSi12及びMgAl10Siから選択される少なくとも一つの相から構成される層が形成されており、長辺と短辺の比が平均で1.0〜1.15であることを特徴とする耐水性球状粒子。
【請求項2】
前記酸化マグネシウムを含有する球状粒子が、酸化マグネシウムからなる相とMgAlからなる相から構成される共晶組織を呈する球状粒子であることを特徴とする請求項1記載の耐水性球状粒子。
【請求項3】
長辺と短辺の比が平均で1.0〜1.1であり、前記酸化マグネシウムを含有する球状粒子が、酸化マグネシウムとMgSiOを主成分とすることを特徴とする請求項1記載の耐水性球状粒子。
【請求項4】
前記酸化マグネシウムを含有する球状粒子が、Mg、Si及びOを主成分とする溶融粒子を冷却凝固することによって非晶質相を主相とする球状粒子を得たのち、該非晶質相を主相とする球状粒子を加熱することにより結晶化させたことを特徴とする請求項3記載の耐水性球状粒子。
【請求項5】
請求項1乃至4いずれか記載の耐水性球状粒子を含む樹脂組成物。
【請求項6】
酸化マグネシウムを含有する溶融粒子を冷却凝固することによって、該球状粒子の表層にMgSiO、MgAl、MgSiO、MgAlSi18、MgAlSi12及びMgAl10Siから選択される少なくとも一つの相を形成して、請求項1記載の耐水性球状粒子を得ることを特徴とする耐水性球状粒子の製造方法。
【請求項7】
前記冷却凝固は、水を分散媒としたAl、Si及びMgのいずれか一以上の元素が含まれたコロイド状液体からなる冷媒に前記溶融粒子を投入することによって行われることを特徴とする請求項7記載の耐水性球状粒子の製造方法。
【請求項8】
溶融粒子は、Mg、Al及びOを主成分とし、その原材料が溶融した際の酸化マグネシウムと酸化アルミニウムとしての重量比が43:57〜57:43となるように調整されていることを特徴とする請求項6又は7記載の耐水性球状粒子の製造方法。
【請求項9】
前記溶融粒子は、Mg、Si及びOを主成分とし、
その溶融粒子を冷却凝固することによって非晶質相を主相とする球状粒子を得て、該非晶質相を主相とする球状粒子を加熱することにより結晶化させることを特徴とする請求項6又は7記載の耐水性球状粒子の製造方法。
【請求項10】
請求項1乃至4いずれか記載の耐水性球状粒子の集合体であり、平均粒径が5〜500μmであることを特徴とするフィラー。
【請求項11】
請求項10記載のフィラーと樹脂を含む半導体樹脂封止剤。

【公開番号】特開2009−215134(P2009−215134A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−62521(P2008−62521)
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】