説明

耐水性貼付製剤

【課題】コールドフローを抑制し、かつ入浴など長時間にわたり水に漬かる場合に、露出した粘着剤層端部からの薬物等の成分の溶出が抑制された、耐水性貼付製剤の提供。
【解決手段】支持体と、支持体の片面に形成された薬剤を含有する粘着剤層を有する貼付製剤であって、前記貼付製剤は、中央部と、中央部から延伸する周辺部を有し、前記周辺部の粘着剤層の少なくとも一部の側面端部は、前記支持体の側面端部より内側であり、前記周辺部の粘着剤層の厚さが、前記中央部の粘着剤層の厚さよりも小さい、貼付製剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬物を含有する粘着剤層が支持体の少なくとも片面に積層された、耐水性貼付製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
生体内へ薬物を投与して疾患治療または予防を行うための製剤として、例えば、肝臓の初回通過による薬物代謝や各種副作用を回避でき、しかも薬物を長時間にわたって持続的に投与可能な経皮吸収型の製剤がある。その中でも、施薬作業が容易で投与量を厳格に制御できることから、粘着剤中に薬物を含有させた貼付製剤の開発が行われている。
【0003】
貼付製剤は、一般に布帛やプラスチックフィルムなどからなる支持体、および該支持体上に積層された薬物を含有する粘着剤層を有し、該粘着剤層上に積層された剥離ライナーを備えた形態で、樹脂フィルムなどからなる包装体内に収容されて提供される。
【0004】
近年、多量の薬物を粘着剤層に保持させる目的で、より厚手の粘着剤層が採用される場合が多い。また、最近の貼付製剤の他の特徴として、皮膚貼付時のソフト感を向上させる目的で、あるいは剥離時の角質層剥離による皮膚刺激を軽減させる目的で、多量の液状成分を粘着剤層中に保持させた粘着剤層など、やわらかい粘着剤層が採用される傾向にある。このような貼付製剤においては、コールドフローと呼ばれる貼付製剤端部からの粘着剤層成分のはみ出しが問題となる。コールドフローは、粘着剤層の特性に依存して生じるものであって、特に粘着剤層が架橋されていない場合に多く発生する。また貼付製剤に長時間荷重がかかる状態、すなわち包装体内に貼付製剤が収容され、長期保存される際などに多く生じる。コールドフローによる悪影響として、はみ出した粘着剤層成分が包装体内面へ付着することによる貼付製剤の包装体からの取り出し性の悪化、衣服への付着、皮膚貼付時の貼付製剤のめくれや汚れ、薬効を含む貼付製剤の効果の低下などが挙げられる。
【0005】
このような問題に取り組んだ文献としては例えば、特許文献1がある。特許文献1の貼付製剤の断面形状において、端部の少なくとも一つの部位が、支持体の端部から剥離ライナーへ垂下した線分よりも、貼付製剤の中央部側に位置する。しかし、そのような粘着剤層の端部の露出面積は大きいことから、入浴など長時間水に浸かる場合、皮膚に貼付した貼付製剤の露出した粘着剤層の端部から、薬物等の成分が溶出し、薬効低下する場合がある。
【0006】
また、特許文献2には、いわゆる薬物含有貼付製剤ではないが、ハイドロコロイドドレッシング材であってその周辺部が型押しされることで、その厚さが中央部の厚さより小さいハイドロコロイドドレッシング材が開示されている。この文献には、「周縁部の厚みは厚すぎると、貼付中に端縁部がめくれやすく、また薄すぎると皮膚面に対する充分な接着性を確保できなくなったり、貼付中に皺が入りやすくなる。」と記載されているが、周辺部における粘着剤層側面端部を中央部側に位置することは記載も示唆もされておらず、水に触れることによる薬効低下等の問題はなんら教示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−45444号公報
【特許文献2】特開2000−37413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、コールドフローを抑制し、かつ入浴など長時間にわたり水につかる場合に、露出した粘着剤層端部からの薬物等の成分の溶出を抑制した、耐水性貼付製剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは鋭意検討した結果、貼付製剤の周辺部の粘着剤層の厚さを、中央部の粘着剤層の厚さよりも小さくし、かつ粘着剤層の側面端部を所定位置にすることで、周辺部における粘着剤層の露出面積を極小化することができ、その結果、意外にも、コールドフローを抑制し、また入浴など貼付製剤が水につかる際に、粘着剤層端部から薬物が溶出しにくくなることを見出した。すなわち、本発明は以下に示される内容を包含する。
〔1〕支持体と、支持体の片面に形成された薬剤を含有する粘着剤層を有する貼付製剤であって、
前記貼付製剤は、中央部と、中央部から延伸する周辺部を有し、
前記周辺部の粘着剤層の少なくとも一部の側面端部は、前記支持体の側面端部より内側であり、
前記周辺部の粘着剤層の厚さが、前記中央部の粘着剤層の厚さよりも小さい、耐水性貼付製剤。
〔2〕前記周辺部における粘着剤層の厚さが、1.5〜150μmであることを特徴とする、上記〔1〕記載の耐水性貼付製剤。
〔3〕前記中央部における粘着剤層の最も厚さが大きい箇所の厚さと、前記周辺部における粘着剤層の厚さの差が20〜2000μmであることを特徴とする、上記〔1〕または〔2〕記載の耐水性貼付製剤。
〔4〕前記支持体端部から前記周辺部における粘着剤層端部の最奥部までの距離が0.5〜5mmの範囲内であることを特徴とする、上記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の耐水性貼付製剤。
〔5〕周辺部における粘着剤層の幅が0.5〜5mmの帯状であることを特徴とする、上記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の耐水性貼付製剤。
〔6〕前記粘着剤層が、有機液状成分を含むことを特徴とする、上記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の耐水性貼付製剤。
〔7〕粘着剤層が架橋された粘着剤からなる、上記〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の耐水性貼付製剤。
〔8〕前記支持体に含まれる樹脂フィルムの厚さが1〜45μmであることを特徴とする、上記〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の耐水性貼付製剤。
〔9〕前記支持体が熱可塑性樹脂を含むことを特徴とする、上記〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の耐水性貼付製剤。
〔10〕前記熱可塑性樹脂がポリエチレンテレフタレートを含むことを特徴とする、上記〔9〕記載の耐水性貼付製剤。
〔11〕粘着剤層上にさらに剥離ライナーを積層することを特徴とする、上記〔1〕〜〔10〕のいずれかに記載の耐水性貼付製剤。
【発明の効果】
【0010】
本発明の耐水性貼付製剤は、貼付製剤の包装体からの取り出し性を向上し、また衣服への付着や皮膚貼付時のめくれや汚れを防止し、さらに入浴など長時間にわたり水に漬かる場合に露出した粘着剤層端部からの薬物等の成分の溶出を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明にかかる耐水性貼付製剤の一実施形態についての模式平面図および模式断面図ならびにその詳細である。
【図2】包装体に収容した状態の本発明にかかる耐水性貼付製剤の一実施形態を示す模式断面図である。
【図3】皮膚に貼付された状態の本発明にかかる耐水性貼付製剤の一実施形態を示す模式断面図である。
【図4】包装体から、本発明にかかる耐水性貼付製剤の一実施形態を取り出す様子を示す模式図である。
【図5】従来の貼付製剤と水との位置関係を示す模式断面図である。
【図6】本発明にかかる耐水性貼付製剤の一実施形態と水との位置関係を示す模式断面図である。
【図7】周辺部の形成工程の一実施形態を示す図である。
【図8】周辺部の形成工程の他の実施形態を示す図である。
【図9】実施例1、2および比較例1〜6の貼付製剤の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について図面を引用しつつ説明する。なお、図中の各要素を明示するため要素間の寸法比率は実際とは異なっている。
【0013】
図1は、本発明にかかる耐水性貼付製剤の一実施形態についての模式平面図(図1(a))および模式断面図(図1(b))ならびにその詳細(図1(c))である。本発明の耐水性貼付製剤は、支持体11と、薬物を含有する粘着剤層12を有し、さらに皮膚へ貼付する前に粘着面を保護するための粘着剤層12に積層される剥離ライナー13を有し得る。
【0014】
本発明の耐水性貼付製剤は、周辺部2と中央部1を有する(図1(a))。
ここで、周辺部2には、粘着剤層12の薄膜部12cが設けられ、中央部1における粘着剤層12は、厚膜部12aと、厚膜部12aから薄膜部12cに向けて粘着剤層12の厚さが薄くなる遷移部12bとからなる(図1(c))。中央部1における厚膜部12aの粘着剤層12の厚さdとしては、50〜5,000μmが例示され、好ましくは100〜4,000μmである。上記範囲にすることで、接着力の低下をより効果的に防止でき、かつ、粘着剤層12の形状を保持できることに加えて、本発明によりコールドフローをより効果的に抑制することが出来る。粘着剤層12の厚膜部12aの形状は、特に限定されないが、通常、平面状である。ここで、平面状とは、支持体11の表面に対して略一定の膜厚dで粘着剤層12が形成されていることをいう。
周辺部2における粘着剤層12の薄膜部12cの厚さdは、所要の皮膚接着力の確保と、コールドフロー抑制の観点から好ましくは1.5μm〜150μmである。なお、厚さdについても、幅dの範囲内において略一定であることが好ましい。膜厚の略一定とは、膜厚のばらつきが±25%以内であることを意味する。
【0015】
本発明の耐水性貼付製剤は、周辺部2の粘着剤層12の厚さdが中央部1の粘着剤層12の厚さdより小さいことを特徴とする。中央部1と周辺部2における粘着剤層12の最も厚さが大きい箇所の厚さの差(d−d)は、中央部1に包装体や衣服を支えさせ、貼付製剤本体の端部が包装体や衣服と接触する機会を低減させ、かつ中央部1の粘着剤層12に必要な粘着力を付与する観点から好ましくは20〜2,000μm、より好ましくは40〜1,500μmである。
【0016】
また図1の詳細a(図1(c))に示すように、本発明の貼付製剤は、貼付製剤の周辺部2における粘着剤層12の側面端部の少なくとも一部が、支持体11の側面端部に対して貼付製剤の中央部1側(すなわち、内側)に位置することを特徴とする。粘着剤層12の側面端部の断面形状において、支持体11の側面端部から粘着剤層12の最も中央部側に位置する部位までの支持体の露出面に平行な方向における距離(幅)d、すなわち、支持体11の側面端部から周辺部2における粘着剤層端部の最奥部までの部分3(以下、空隙部3ということがある)の幅dは、外部環境からの粘着剤層への影響を極小化する観点から好ましくは0.5〜5mm、より好ましくは1〜5mmである。なお、図1(c)のように粘着剤層端部が剥離ライナー13に対して垂直な場合には、空隙部3の幅dは端部断面方向のどの位置でも同じであるが、後出の図9(a)のように端部断面が凹型の場合には、断面中央部付近の最奥部と支持体端部間の空隙部3の幅が幅dに相当する。
【0017】
周辺部2における粘着剤層12を有する部分は、図1(c)に示すように、周辺部の粘着剤層12の幅dが0.5〜5mm、より好ましくは0.5〜3mmの帯状である部分を有することが好ましい。幅dを上記範囲内にすることによって、コールドフローをより効果的に抑制することができ、周辺部2の接着力低下をより効果的に防止することができる。なお、図1(c)に示すように粘着剤層における幅dの部分と中央部側との境界は、支持体11と粘着剤層12が接する面が平坦であるところまでである。十分に本発明の効果を達成するためには、このような帯状である部分を貼付製剤の各周辺部に有することが好ましい。
【0018】
図2は、包装体21に収容した状態の本発明にかかる耐水性貼付製剤の一実施形態を示す模式断面図である。図3は、皮膚22に貼付された状態の本発明にかかる耐水性貼付製剤の一実施形態を示す模式断面図である。図4は、包装体(図4(a))の2辺をハサミでまたはVノッチに従い開封し(図4(b)、(c))、包装体21に収容された本発明の耐水性貼付製剤24を取り出す(図4(d))一例を模式的に示したものである。
【0019】
本発明の耐水性貼付製剤は、周辺部2における粘着剤層の厚さが中央部1における粘着剤層の厚さよりも小さいため、貼付製剤の端部が包装体21または衣服23の内面と接触する機会が低減し、包装体21の内面または衣服23への付着を防止する(図2および図3)。また、貼付製剤端部に圧力がかかりにくくなることから、コールドフローを効果的に抑制することができる。その結果、包装体からよりスムーズに貼付製剤24を取り出すことができる(図4)。さらに、周辺部における粘着剤層側面端部が、支持体側面端部よりも内側(すなわち中央部側)に位置していることから、コールドフローがさらに効果的に抑制される。また、耐水性貼付製剤を皮膚22から剥離する際に、支持体側面端部を手でつまみやすく、より容易に剥離することができる。
【0020】
図5および図6は、耐水性貼付製剤を皮膚22に貼付したヒトが、入浴した際における、水31の貼付製剤の側面端部への侵入の例を模式的に示したものである。図5は従来の貼付製剤と水31との位置関係を示す模式断面図で、図6は本発明にかかる耐水性貼付製剤の一実施形態と水31との位置関係を示す模式断面図である。図5では、水31が貼付製剤の粘着剤層12の側面端部に容易に接触し得、接触機会も多い。一方、図6では、水31が耐水性貼付製剤の粘着剤層12の側面端部に容易に接触し得ず、接触機会は少ない。この効果は、耐水性貼付製剤の側面端部において、支持体11の側面端部と皮膚22表面との間の空隙部41に存在する空気、並びに支持体11および粘着剤層12の疎水性のために、水が物理的、化学的に、耐水性貼付製剤の粘着剤層12の側面端部に容易にアクセスできないことによるものと推測される。
【0021】
(粘着剤層)
次に粘着剤層を形成するための組成物の調製方法および成分の配合量について説明する。以下に記載する各成分の配合量は、溶媒を除くすべての成分の配合量に対する各成分の配合量の割合を重量%単位で示したものである。
【0022】
粘着剤層は、必要に応じて薬物、粘着付与剤、有機液状成分などの成分とともに、粘着剤を溶媒の存在下、配合、混合することにより組成物を得、これを塗布などの方法により層状にし、乾燥することにより形成することができる。粘着剤層としては、皮膚接着性の観点から疎水性粘着剤層が好ましく、したがって非含水系の粘着剤層が好ましい。かかる観点から、溶媒としては有機溶剤が好ましい。
【0023】
有機溶剤としては、特に限定されないが、粘着剤層を構成する前記各成分との相溶性を有し、乾燥工程において容易に揮発させることができるものが好ましい。かかる有機溶剤としては、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素類、酢酸エチルなどのエステル類、エタノールなどのアルコール類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類などが挙げられ、これらは単独でまたは二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0024】
前記乾燥は、風乾により行ってもよく、乾燥装置、熱風、遠赤外線などを用いる公知の方法により行ってもよい。
【0025】
前記各成分の混合方法としては、制限されないが、ニーダー、プラネタリーミキサーなどの混練機、ホモジナイザーなどの分散機、プロペラ型翼攪拌機などの攪拌機などが挙げられ、これらは単独で使用することも二種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0026】
粘着剤層を構成する粘着剤としては、特に限定されないが、皮膚接着性等の点からアクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤が特に好適に使用される。上記アクリル系粘着剤は、アクリル系重合体からなるものであり、当該アクリル系重合体としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの単独重合体、あるいはこれらの共重合体が挙げられる。ゴム系粘着剤としては、例えば、ポリイソブチレン・ポリブテン系、スチレン・ジエン・スチレンブロック共重合体、スチレン・ブタジエン系、ニトリル系、クロロプレン系、ビニルピリジン系、ポリイソブチレン系、ブチル系、イソプレン・イソブチレン系等からなるゴム系粘着剤が挙げられる。
【0027】
粘着剤層は、架橋処理を施した架橋粘着剤層であってもよく、架橋処理を施していない非架橋粘着剤層であってもよい。ここで架橋処理とは、貼付製剤の皮膚接着力を十分に維持すること、および貼付製剤を皮膚表面から剥がす際の皮膚を引っ張り、皮膚の角質層を物理的に剥ぎ取るといった皮膚刺激を低く抑えることを両立させるために、粘着剤層に施される公知の処理を言い、架橋処理としては、化学架橋処理、イオン架橋処理、電子線や紫外線などによる物理架橋処理が挙げられる。架橋剤としては、酢酸亜鉛などの有機金属塩、金属アルコラート、金属キレート化合物、エポキシ化合物、アミド化合物、アミン化合物、酸無水物、有機過酸化物、イソシアネート化合物等が例示される。
【0028】
粘着剤層が非架橋粘着剤層である場合や、粘着剤層がゴム系粘着剤を含む粘着剤層である場合、コールドフローが起こりやすい傾向にあるが、本発明の耐水性貼付製剤は、粘着剤層が非架橋粘着剤層である場合や、粘着剤層がゴム系粘着剤を含む場合であってもコールドフローを効果的に抑制することができる点で有利である。
【0029】
上記アクリル系粘着剤は、アクリル系重合体からなるものであり、当該アクリル系重合体としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの単独重合体、或いはこれらの共重合体が挙げられる。ここで、(メタ)アクリル酸アルキルエステルにおけるアルキルとは、炭素数4 〜12の直鎖または分岐鎖状アルキルが好ましく、このような(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、具体的には、(メタ)アクリル酸ブチルエステル、(メタ)アクリル酸t−ブチルエステル、(メタ)アクリル酸ペンチルエステル、(メタ)アクリル酸ヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸ヘプチルエステル、(メタ)アクリル酸オクチルエステル、(メタ)アクリル酸イソオクチルエステル、(メタ)アクリル酸ノニルエステル、(メタ)アクリル酸イソノニルエステル、(メタ)アクリル酸デシルエステル、(メタ)アクリル酸ウンデシルエステル、(メタ)アクリル酸ドデシルエステル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルエステル等が挙げられる。当該(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、好ましくは50重量% 以上、より好ましくは60重量% 以上の割合で重合される。
【0030】
粘着剤組成におけるアクリル系粘着剤の配合割合は、好ましくは30〜95重量%、より好ましくは40〜90重量%の割合で配合することができる。30重量%未満であると粘着力不足、凝集力不足となり、95重量%を超えると相対的に薬物量が減って、十分な薬効が得にくくなる。
【0031】
ゴム系粘着剤としては、例えば、ポリイソブチレン・ポリブテン系、スチレン・ジエン・スチレンブロック共重合体、スチレン・ブタジエン系、ニトリル系、クロロプレン系、ビニルピリジン系、ポリイソブチレン系、ブチル系、イソプレン・イソブチレン系等からなるゴム系粘着剤が挙げられる。中でも、薬剤に対する溶解性および皮膚接着性の点から、ポリイソブチレン、スチレン・ジエン・スチレンブロック共重合体〔例えば、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体(SBS) 、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(SIS) 等〕等が好ましく使用され、これらは混合して用いてもよい。
【0032】
ゴム系粘着剤は、適度な粘着力および薬剤溶解性を得るために、同一成分または異なる成分で平均分子量の異なるものを混合して使用することができる。例えば、ポリイソブチレンを例に挙げて説明すると、粘度平均分子量1,800,000〜5,500,000の高分子量のポリイソブチレン、粘度平均分子量40,000〜85,000の中分子量のポリイソブチレン、および必要によりさらに低分子量のポリイソブチレンとの混合物が好ましい。なお本発明における粘度平均分子量は、シュタウディンガーインデックス(J)を、20℃にてウベローデ粘度計のキャピラリー1のフロータイムからSchulz-Blaschke式により算出し、このJ値を用いて下式により求めるものである。
【0033】
【数1】

【0034】
ここで、高分子量のポリイソブチレンを10〜80重量%、好ましくは10〜50重量%、中分子量のポリイソブチレンを0〜90重量%、好ましくは10〜80重量%、低分子量のポリイソブチレンを0〜80重量%、好ましくは0〜60重量%の割合で配合することが好適である。なお、一般に得られる粘着剤層は、高分子量の成分の割合が増大すると硬質になり、低分子量の成分の割合が増大すると軟質になる。
【0035】
粘着剤層には、適度な粘着性を付与するために、例えば、ロジン系樹脂、ポリテルペン樹脂、クマロン−インデン樹脂、石油系樹脂、テルペン−フェノール樹脂、キシレン樹脂等の粘着付与剤が配合されていてもよく、これらは一種で、または二種以上を混合して用いられる。前記石油系樹脂としては、脂肪族系(C5系)石油樹脂、芳香族系(C9系)石油樹脂、共重合体系(C5−C9系)石油樹脂、および芳香族系(C9系)石油樹脂を部分水素添加または完全水素添加することによって得られる脂環族飽和炭化水素樹脂が例示される。脂環族飽和炭化水素樹脂としては、軟化点(環球法)90〜150℃のものが好ましい。粘着付与剤の配合量としては、限定されないが、適度な粘着性を付与し、配合量の増大に伴う粘着付与剤の効果を飽和させない観点から10〜40重量%が例示される。
【0036】
本発明の耐水性貼付製剤は、粘着剤層が薬物を含む。ここにいう薬物は特に限定されず、ヒトなどの哺乳動物にその皮膚を通して投与し得る、すなわち経皮吸収可能な薬物が好ましい。そのような薬物としては、具体的には、例えば、全身性麻酔薬、催眠・鎮静薬、抗癲癇薬、解熱鎮痛消炎薬、鎮暈薬、精神神経用薬、局所麻酔薬、骨格筋弛緩薬、自律神経用薬、鎮痙薬、抗パーキンソン薬、抗ヒスタミン薬、強心薬、不整脈用薬、狭心症治療薬、利尿薬、血圧降下薬、血管収縮薬、冠血管拡張薬、末梢血管拡張薬、動脈硬化用薬、循環器用薬、呼吸促進薬、気管支拡張薬、鎮咳去痰薬、ホルモン薬、化膿性疾患用外用薬、鎮痛・鎮痒・収斂・消炎用薬、寄生性皮膚疾患用薬、止血用薬、痛風治療用薬、糖尿病用薬、抗悪性腫瘍用薬、抗生物質、化学療法薬、麻薬、禁煙補助薬などが挙げられる。
【0037】
薬物の粘着剤層における割合は、その経皮吸収用薬物の効果を満たし、粘着剤の粘着特性を損なわない範囲であれば特に限定されないが、粘着剤層の全重量(但し、該粘着剤層が架橋剤を含む場合は架橋剤の重量を除く。)に基づき、好ましくは0.1〜60重量%、より好ましくは0.5〜40重量%含有されることが好ましい。0.1重量%より少ないと治療効果が十分でない恐れがあり、60重量%より多いと皮膚刺激発生の可能性がありまた経済的にも不利である恐れがある。
【0038】
所望により、粘着剤層は有機液状成分を含むことができる。有機液状成分としては、特に限定されず、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のグリコール類;オリーブ油、ヒマシ油、ラノリン等の油脂類;スクアラン、流動パラフィンのような炭化水素類;各種界面活性剤;エトキシ化ステアリルアルコール;オレイン酸モノグリセリド、カプリル酸モノグリセリド、ラウリル酸モノグリセリドのようなグリセリンモノエステル;ポリプロピレングリコールといったポリアルキレングリコールのジアルキルエステル;グリセリンジアセテートなどのグリセリンジエステル、グリセリントリアセテートなどのグリセリントリエステル、またはそれらの混合物;クエン酸トリエチルなどの脂肪酸アルキルエステル;長鎖アルコール;オレイン酸、カプリル酸のような高級脂肪酸;ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピルのような高級脂肪酸のアルキルエステル;N−メチルピロリドン、N−ドデシルピロリドンのようなピロリドン類;デシルメチルスルホキシドのようなスルホキシド類;1,3−ブタンジオール等が挙げられ、これらは一種でまたは二種以上を混合して使用することができる。
【0039】
有機液状成分は、好ましくは0〜60重量%、より好ましくは10〜60重量%、最も好ましくは20〜60重量%の割合で配合することができる。一般的に、10重量%以上配合すると、粘着剤層が可塑化しやすく、コールドフローが起こりやすいので、これを効果的に抑制できる本発明は有機液状成分を含む場合に特に有利である。なお、60重量%を超えて配合すると、粘着剤層が一定形状を保持することが困難となる可能性がある。
【0040】
(支持体)
支持体としては、特に限定されないが、実質的に薬物等不透過性であるもの、即ち粘着剤層の活性成分や添加剤等が支持体中を通って支持体背面から失われて含有量の低下を引き起こさないものが好ましい。
【0041】
具体的には、ポリエチレン系、ポリプロピレン系、ポリエステル系、ポリ酢酸ビニル系、エチレン/酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系等のプラスチックフィルム、アルミニウム箔、スズ箔等の金属箔、不織布、織布、紙等からなる単層フィルム、またはこれらの積層フィルム等を用いることができる。
【0042】
支持体として多孔質体と樹脂フィルムの積層体を用いる場合、該積層体の多孔質体側に粘着剤層が積層される。多孔質体は、表面に凹凸を有し、該凹凸は、粘着剤層中に含まれ得る空隙(気泡)が移動し、または消失することを抑制すると考えられ、したがって多孔質体を用いれば、コールドフローを抑制し得る。また、多孔質体を用いれば、それ自体が空隙部(気泡)を有しており、これが貼付製剤の周辺部の粘着剤層に移動し、さらにはこれが粘着剤層中の気泡と融合して周辺部でさらに大きな気泡が形成され得るので、本発明の効果が増強されるものと考えられる。貼付製剤の端部から流出しようとする粘着剤層成分が気泡の空間に入り込み得るため、そのような気泡がコールドフローを効果的に抑制し得る。このような形態の支持体を用いると、本発明のコールドフロー抑制効果が一層高まり、かつ耐水性が向上する。
【0043】
このような多孔質体としては多孔質フィルムまたはシートが挙げられ、シートが厚さ200μm以上のものを指す場合には、多孔質フィルムがより好ましい。前記多孔質フィルムとしては、単層フィルムであっても積層フィルムであってもよく、多孔質体に対する粘着剤層の移動を抑制する投錨力を有するものを好適に使用することができる。具体的には紙、織布、不織布、編布、機械的に穿孔処理を施したフィルム・金属箔、およびこれらの積層体等が挙げられる。これらのうち取扱い性等の観点からは、特に紙、織布、不織布、およびこれらの積層体が好ましく、中でも不織布が好ましい。
【0044】
樹脂フィルムとしては、単層フィルムであっても、積層フィルムであってもよいが、非多孔質であり、活性成分に対して不透過性を示す樹脂からなるフィルムが好ましい。
【0045】
多孔質フィルムと樹脂フィルムは、同様の材質のものであってもよく、異なる材質のものであってもよい。これらのフィルムは公知の方法を用いて積層することができ、本発明の効果および貼付製剤の効果を損なわない範囲内で、酸化防止剤、顔料、帯電防止剤などの各種添加剤が適宜配合されていてもよく、表面にコロナ放電処理、紫外線照射処理などの処理が施されていてもよい。
【0046】
支持体を構成するこのような多孔質フィルムおよび樹脂フィルムの材質としては、例えば、ポリエステル、ナイロン、サラン(旭化成、米国ダウケミカル社の登録商標)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、サーリン(米国デュポン社の登録商標)、またはこれらの組み合わせ等が挙げられる。
【0047】
このような樹脂フィルムは、粘着剤層成分が、支持体の背面を透過して、含量が低下することを抑制する作用を有するとともに、粘着剤層が薬物を含む場合、いわゆる密封包帯療法(ODT)効果を達成するために好ましく用いられる。
【0048】
貼付製剤本体の周辺部に相当する領域を加圧、加熱する製造方法を採用する場合、支持体を構成する多孔質フィルムと樹脂フィルムの材質としては、上述の材料の中から、加熱され柔軟になった後変形し、冷却後変形された形状が維持される材料が好ましい。具体的には、熱可塑性樹脂、例えばポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン等が好ましく、特にポリエステル、例えばポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」と略することがある。)が好ましい。
【0049】
多孔質フィルムの厚さは、投錨力向上、貼付製剤全体の柔軟性および貼付操作性等の点から10〜100μmの範囲が好ましい。また、多孔質フィルムとして織布や不織布を用いる場合、効果的な大きさの気泡を確保する観点および投錨性の観点から、その目付量は好ましくは5〜50g/mであり、より好ましくは10〜30g/mである。
【0050】
本発明において、多孔質フィルムの厚さは、貼付製剤をルテニウム酸水溶液で染色した後、凍結ミクロトームにより切断した切断面をFE−SEM(Hitachi,S−4800)で倍率50〜1,000倍で撮像し、ゲージ目盛りを読むことで測定する。その際、多孔質フィルムの表面には凹凸が存在するが、断面写真においてその凸部10箇所を無作為に選択し、当該凸部における多孔質フィルムの厚さを算術平均して、多孔質フィルムの厚さとする。
【0051】
また、本発明において、多孔質フィルムの目付量は、上記多孔質フィルムの厚さに多孔質フィルムの比重(見かけ比重)を乗じて、多孔質フィルムの単位面積あたりの重量を計算することで求める。
【0052】
樹脂フィルムの厚さは特に限定されないが、好ましくは1〜45μmである。1μmより小さいと、加熱、加圧時に破壊が起き、貼付時に強度不足となる恐れがある。45μmより大きいと、樹脂フィルムの剛性により貼付時に皮膚に違和感を発生する可能性がある。なお、本発明において、樹脂フィルムの厚さは、上記多孔質フィルムの厚さと同様に測定する。
【0053】
したがって、本発明において望ましい支持体としては、1〜45μm厚のポリエステルフィルム(好ましくは、PETフィルム)と、目付量10〜30g/mのポリエステル(好ましくは、PET)製不織布との積層フィルムである。
【0054】
貼付製剤の貼付時の皮膚追従性および快適性を考慮すると積層された支持体の厚さは、好ましくは5〜200μmである。
【0055】
(剥離ライナー)
粘着剤層には、皮膚へ貼付製剤を貼付する前に粘着面を保護するための剥離ライナーを積層することができる。剥離ライナーの材質は、特に限定されないが、自体公知のものが挙げられ、具体的にはPETをはじめとするポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、各種アクリル系およびメタクリル系ポリマー、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリイミド、酢酸セルロース、再生セルロース(セロファン)、セルロイド等のプラスチックフィルム、あるいは上質紙またはグラシン紙等とポリオレフィンとのラミネートフィルム等が例示される。安全性、経済性、薬物移行性の点でポリエステルフィルムを用いることが好ましい。
【0056】
剥離ライナーは、粘着剤層との剥離を容易にするように粘着剤との界面側が易剥離処理されたものが好ましい。易剥離処理としては、限定されないが、公知の方法を用いて行うことができ、例えば硬化性シリコーン樹脂を主成分とする離型剤を用いてバーコート、グラビアコートなどの塗布方法により剥離処理層を形成する処理が挙げられる。
【0057】
剥離処理層の厚さは、剥離性および塗膜の均一性確保の観点から0.01〜5μmが好ましい。剥離処理層が形成された剥離ライナーの厚みとしては、取り扱い性の点で通常10〜200μmであり、好ましくは50〜100μmである。
【0058】
(製造方法)
本発明の貼付製剤は、例えば次のような方法で製造することができる。
貼付製剤の周辺部の粘着剤層の厚さを、中央部の粘着剤層の厚さより小さくするためには、貼付製剤周辺部を加圧する工程が挙げられる。また、貼付製剤の側面端部に粘着剤層のない貼付製剤を製造するためには、例えば(i)支持体または剥離ライナーに粘着剤層を塗工する際に、貼付製剤の側面端部に対応する領域に粘着剤層を塗工しない、いわゆるパターン塗工、または(ii)支持体または剥離ライナーに粘着剤層を塗工した後に、貼付製剤の側面端部に対応する領域の粘着剤層を除去する方法、が挙げられる。
【0059】
本発明の耐水性貼付製剤は、例えば次のような方法により効率的に製造し得る。
薬物を含有する粘着剤層が支持体の片面全面に積層されており、少なくとも一部に中央部と周辺部とを有する貼付製剤であって、貼付製剤の周辺部における粘着剤層側面端部の少なくとも一部が、貼付製剤の周辺部における支持体側面端部に対して貼付製剤中央部側に位置し、かつ周辺部における粘着剤層の厚さが、中央部における粘着剤層の厚さよりも小さいことを特徴とする貼付製剤の製造方法であって、
(a)支持体上に粘着剤層が積層され、粘着剤層上に剥離ライナーが積層された粘着シートを用意する工程;および
(b)該粘着シートの、貼付製剤において周辺部となるべき領域を、その支持体側から、第一温度の第一押し型で加圧して、第一加圧された粘着シートを得る第一加圧工程;
を含む方法が挙げられる。
好ましくは、工程(b)に続いて、
(c)該得られた第一加圧された粘着シートの、貼付製剤において周辺部となるべき領域の全部または一部を、第一温度より低い第二温度の第二押し型で加圧する第二加圧工程;を実施することで、側面端部の粘着剤層のない貼付製剤を、確実に製造することができる。該周辺部となるべき領域の一部は、該周辺部となるべき領域の外縁が好ましい。
上記工程を模式的に説明したのが図7または図8である。
【0060】
打ち抜き工程は、第二加圧工程の後に行うことが好ましい。押し型の形状は、支持体に向かう面が実質的に平面であり、該平面形状は、貼付製剤の周辺部に対応する形状であればよい。具体的には例えば、貼付製剤の平面形状が略矩形である場合、押し型の平面形状は、同軸状の2つの矩形で境界付けられる。
【0061】
まず、図7のプロセスについて説明する。
支持体110、粘着剤層120、剥離ライナー130からなる積層体を、支持体110側を上向けて台(図示しない)上に載置する。押し型101により、高温下で支持体110側から加圧する(第一加圧工程S01、図7(a))。押し型101は、所定の幅と高さを有する断面矩形の凸部102を有し、凸部102の内周側が、粘着剤の中央部121と周辺部122との境界と略同一形状である。第一加圧工程S01では、粘着剤層120および支持体110は高温下にプレスされているため、押型101による加圧を解除(第一加圧解除工程S02、図7(b))しても、押し圧された形状がほぼ維持される。次に、常温付近で同一箇所を同一の押し型101を用いて再度、強く加圧する(第二加圧工程S03、図7(c))。第二加圧を解除すると(第二加圧解除工程S04、図7(d))、支持体110の復元力が働き、支持体110は、第一加圧解除工程S02時の形状に戻ろうとする。この状態で、加圧部の略中央部を裁断すると、支持体110の復元力により、周辺部の粘着剤120が、中央部121の方向に引き込まれる。その結果として、周辺部122の粘着剤120の一部が、支持体110の端面から内側に引き込まれ、空隙部123が形成された形状となる(打ち抜き後S05、図7(e))。
【0062】
図8は、第二加圧工程S03で用いる第2押し型103として、第一加圧工程S01で用いた押し型101の凸部102よりも幅方向に薄くした凸部104を用いるものである。このように、第一加圧工程S01と第二加圧工程S03とで押し型の形状を変えることでも周辺部の粘着剤の形状を制御することができる。
【0063】
<第一加圧工程の条件(支持体を型押し形状に成形)>
押し型の第一温度は、好ましくは80〜200℃、より好ましくは90〜180℃である。80℃以上であることで、加熱、加圧される貼付製剤の周辺部、およびその隣接する領域の支持体を熱で柔軟にし、所望の型押し形状に成形することができる。200℃以下であることで加熱、加圧される貼付製剤の周辺部の支持体、粘着剤層および剥離ライナーに対して過剰な熱的負荷を抑制することができる。
【0064】
加圧する圧力は好ましくは1.0×10〜1.0×10N/m、より好ましくは1.0×10〜5.0×10N/mである。1.0×10N/m以上であることで、加熱・加圧される貼付製剤の周辺部、およびその隣接する領域の支持体を所望の型押し形状に成形することができる。1.0×10N/m以下であることで、加熱、加圧される貼付製剤の周辺部の支持体に対して、過剰な機械的負荷を抑制することができる。
【0065】
加圧する時間は好ましくは0.01〜5秒であり、より好ましくは0.05〜3秒である。上記範囲内とすることで、貼付製剤の周辺部の支持体を確実に所望の形状に成形することができ、かつ加熱、加圧される貼付製剤の周辺部、およびその隣接する領域の粘着剤層へ過剰な熱的負荷を抑制することができ、さらに製造効率の点からも好ましい。
【0066】
型押し時、押し型と貼付製剤を載置する台の間のギャップは、(支持体の厚さ+周辺部の粘着剤層の厚さ+剥離ライナーの厚さ)とほぼ同程度であることが好ましい。ただし支持体および剥離ライナーの厚さのバラツキを考慮し、(支持体の厚さ+周辺部の粘着剤層の厚さ+剥離ライナーの厚さ)±10μmであっても良い。上記範囲内とすることで、貼付製剤の周辺部の支持体を確実に所望の形状に成形することができ、かつ貼付製剤の周辺部の粘着剤層を所望の厚さにすることができる。
【0067】
<第二加圧工程の型押し条件(周辺部端部の粘着剤層を除去)>
押し型の第二温度は、常温近傍の15〜50℃が好ましい。上記範囲内とすることで、加圧される貼付製剤の周辺部、およびその隣接する領域の粘着剤層へ熱的負荷を掛けることがなく、かつ第一加圧工程で所望の形状に成形された支持体を、さらに余分に成形することを抑制することができる。
【0068】
加圧する圧力は好ましくは1.0×10〜1.0×10N/m、より好ましくは1.0×10〜5.0×10N/mである。1.0×10N/m以上であることで、加圧される貼付製剤の周辺部の粘着剤層を効率的に除去することができる。1.0×10N/m以下であることで、加圧される貼付製剤の周辺部の支持体および剥離ライナーに対して、過剰な機械的負荷を抑制することができる。
【0069】
加圧する時間は好ましくは0.1〜10秒であり、より好ましくは0.5〜5秒である。上記範囲内とすることで、貼付製剤の周辺部の粘着剤を確実に除去することができ、かつ製造効率の点からも好ましい。
【0070】
型押し時、押し型とその台の間のギャップは、(支持体の厚さ+剥離ライナーの厚さ)とほぼ同程度であることが好ましい。ただし支持体および剥離ライナーの厚さのバラツキを考慮し、(支持体の厚さ+剥離ライナーの厚さ)±10μmであっても良い。上記範囲内とすることで、貼付製剤の周辺部の粘着剤を確実に除去することができ、さらに支持体および剥離ライナーへの過剰な機械的負荷を抑制することができる。
【0071】
打ち抜き手段としては特に限定されず、レーザー、押し切り刃などが挙げられる。切断寸法の調整および位置合わせが容易であり、きれいな端面が得られることから、好ましくは押し切り刃ダイセット(オス型およびメス型)で打ち抜く。
【実施例】
【0072】
以下、実施例および比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。
【0073】
(実施例1)
<粘着剤層を形成するための組成物の調製>
不活性ガス雰囲気下、アクリル酸2−エチルヘキシル95重量部、アクリル酸5重量部および過酸化ベンゾイル0.2重量部を、酢酸エチル中60℃にて溶液重合させてアクリル系粘着剤の溶液を調製した。
アクリル系粘着剤、有機液状成分(パルミチン酸イソプロピル)、および薬物(硝酸イソソルビド)を、43:40:17の重量比で、酢酸エチルの存在下、混合した。さらに架橋剤としてコロネートHL(日本ポリウレタン工業(株)製)を、アクリル系粘着剤固形分100重量部に対して0.15重量部混合し、粘着剤層を形成するための組成物を得た。
【0074】
<粘着シートの作製>
上記組成物を、PET製の剥離ライナー(厚さ75μm)の軽剥離面に、乾燥後の粘着剤層の厚さが200μmとなるように塗布し、乾燥器により乾燥させ(100℃)、粘着剤層が形成された剥離ライナーを得た。粘着剤層が形成された面を、厚さ20μmのポリエチレン製フィルムと、アルミニウム薄膜層と、厚さ15μmのPET製フィルムとの積層体(支持体全体の厚さは35μm)である支持体のPET製フィルム面と圧着することにより貼り合せ、粘着シートを得た。この粘着シートを、外面が12μm厚のPETフィルム、内面が30μm厚のポリアクリロニトリル系樹脂フィルムからなる包装材料(外寸600mm×250mm、内寸580mm×230mm)で密封包装した後、70℃の恒温器内に48時間静置して、粘着剤層の架橋反応を促進させ、貼付製剤打ち抜き用粘着シートを作製した。
【0075】
<耐水性貼付製剤の作製>
同軸上の2つのほぼ正方形の形状により輪郭付けられる平面形状を有する、押し型(外寸33.5mm×33.5mm、内寸27.5mm×27.5mm、凸部の高さ5mm)を用いて、貼付製剤打ち抜き用粘着シートの支持体表面を加熱、加圧した(加熱温度:120℃、圧力:2.9×10N/m、加熱・加圧時間:1秒、ギャップ:160μm)。さらに同型の押し型を用いて、同一箇所を再度加圧した(温度:25℃、圧力:2.9×10N/m、加圧時間:3秒、ギャップ:110μm)。加熱および加圧した領域が、後に得られる貼付製剤の周辺部に対応するように、加熱および加圧された粘着シートから、トムソン刃を用いて貼付製剤と剥離ライナーを同時に打ち抜き、本発明の耐水性貼付製剤を得た。得られた耐水性貼付製剤は、輪郭が約30.5mmの一辺長の略正方形であり、そのすべての周辺部に幅約1.5mmの帯状の周辺部を有し、該周辺部の内側に略正方形の中央部を有するものであった。
(外形形状:約30.5mmの正方形状、中央部:約27.5mmの正方形状、周辺部:約1.5mm幅、空隙部:約1.4mm幅)
【0076】
(実施例2)
<粘着剤層を形成するための組成物の調製>
高分子量のポリイソブチレン1(粘度平均分子量4,000,000)、低分子量のポリイソブチレン2(粘度平均分子量80,000)、粘着付与剤(脂環族飽和炭化水素樹脂、軟化点100℃(環球法))、有機液状成分(パルミチン酸イソプロピル)、および薬物(ツロブテロール)を、15:20:20:35:10の重量比で、ヘキサンの存在下、混合し粘着剤層を形成するための組成物を得た。
【0077】
<粘着シートの作製>
上記組成物を、PET製の剥離ライナー(厚さ75μm)の軽剥離面に、乾燥後の粘着剤層の厚さが200μmとなるように塗布し、乾燥器により乾燥させ(70℃)、粘着剤層が形成された剥離ライナーを得た。粘着剤層が形成された面を、厚さ12μmのPET製フィルムである支持体と圧着することにより貼り合わせて貼付製剤打ち抜き用粘着シートを作製した。
【0078】
<耐水性貼付製剤の作製>
同軸上の2つのほぼ正方形の形状により輪郭付けられる平面形状を有する、押し型(外寸33.5mm×33.5mm、内寸27.5mm×27.5mm、凸部の高さ5mm)を用いて、貼付製剤打ち抜き用粘着シートの支持体表面を加熱、加圧した(加熱温度:120℃、圧力:2.9×10N/m、加熱・加圧時間:1秒、ギャップ:130μm)。さらに同型の押し型を用いて、同一箇所を再度加圧した(温度:25℃、圧力:2.9×10N/m、加圧時間:3秒、ギャップ:90μm)。加熱および加圧した領域が、後に得られる耐水性貼付製剤の周辺部に対応するように、加熱および加圧された粘着シートから、トムソン刃を用いて貼付製剤と剥離ライナーを同時に打ち抜き、本発明の耐水性貼付製剤を得た。得られた耐水性貼付製剤は、輪郭が約30.5mmの一辺長の略正方形であり、そのすべての周辺部に幅約1.5mmの帯状の周辺部を有し、該周辺部の内側に略正方形の中央部を有するものであった。
(外形形状:約30.5mmの正方形状、中央部:約27.5mmの正方形状、周辺部:約1.5mm幅、空隙部:約1.3mm幅)
【0079】
(比較例1)
2回目の加圧工程をなくしたこと以外は実施例1と同様に作製し、貼付製剤を得た。(外形形状:約30.5mmの正方形状、中央部の形状:約27.5mmの正方形状、周辺部:約1.5mm幅)
【0080】
(比較例2)
1回目および2回目の加圧工程をなくし、打ち抜いた後の貼付製剤の端部の粘着剤層をピンセットで掻き出したこと以外は実施例1と同様に作製し、貼付製剤を得た。
(外形形状:約30.5mmの正方形状、中央部の形状:約27.7mmの正方形状、空隙部:約1.4mm幅)
【0081】
(比較例3)
1回目および2回目の加圧工程をなくしたこと以外は実施例1と同様に作製し、貼付製剤を得た。
(外形形状:約30.5mmの正方形状、中央部の形状:約30.5mmの正方形状、周辺部:なし)
【0082】
(比較例4)
2回目の加圧工程をなくしたこと以外は実施例2と同様に作製し、貼付製剤を得た。
(外形形状:約30.5mmの正方形状、中央部の形状:約27.5mmの正方形状、周辺部:約1.5mm幅)
【0083】
(比較例5)
1回目および2回目の加圧工程をなくし、打ち抜いた後の貼付製剤の端部の粘着剤層をピンセットで掻き出したこと以外は実施例2と同様に作製し、貼付製剤を得た。
(外形形状:約30.5mmの正方形状、中央部の形状:約27.9mmの正方形状、空隙部:約1.3mm幅)
【0084】
(比較例6)
1回目および2回目の加圧工程をなくしたこと以外は実施例2と同様に作製し、貼付製剤を得た。
(外形形状:約30.5mmの正方形状、中央部の形状:約30.5mmの正方形状、周辺部:なし)
【0085】
実施例1、2の貼付製剤の模式断面図を図9(a)に、比較例1、4を図9(b)に、比較例2、5を図9(c)に、比較例3、6を図9(d)にそれぞれ示す。
【0086】
実施例1、2および比較例1〜6の貼付製剤を、下記評価項目について評価した。
【0087】
(試験例1)
<貼付製剤形状の評価>
貼付製剤をトリミング用剃刀で裁断し、その断面をデジタルマイクロスコープ((株)キーエンス、VHX−600、倍率1000倍)で観察し、周辺部、中央部における粘着剤層の厚さを計測した。さらに粘着剤層側面の断面形状を観察し、支持体側面端部から、粘着剤層の最も中央部側に位置する部位までの距離を計測した。結果を表1に示す。
【0088】
(試験例2)
<製剤周囲からの薬物の水中放出率の評価>
支持体が外側となるように貼付製剤を回転シリンダー上に貼付し、試験液(40℃の蒸留水400mL)中にシリンダー全体およびシリンダー上の貼付製剤を浸漬させ、試験液中でシリンダーを50rpmの速度で回転させた。30分後に試験液を採取し、採取した試験液中の薬物をHPLC法で定量して薬物放出量を算出した。この薬物放出量を、HPLC法で定量した貼付製剤の薬物含量で除することにより、薬物放出率を算出した。結果を表1に示す。
【0089】
【表1】

【0090】
表1から明らかなように、実施例1および2は、それぞれ30分間水中に浸漬したときの薬物放出率が、どの比較例よりも顕著に少ない数値を示した。この結果は、(1)周辺部における粘着剤層の厚さが、中央部における粘着剤層の厚さよりも小さいこと、かつ、(2)貼付製剤の周辺部における粘着剤層側面端部が支持体側面端部よりも内側にあること、という2つの作用に起因した効果であると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明の耐水性貼付製剤は、コールドフローを抑制し、かつ入浴など長時間にわたり水に漬かる場合に、露出した粘着剤層端部からの薬物等の成分の溶出を抑制した貼付製剤として好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0092】
1 中央部
2 周辺部
3 空隙部
11 支持体
12 粘着剤層
12a 厚膜部
12b 遷移部
12c 薄膜部
13 剥離ライナー
21 包装体
22 皮膚
23 衣服
24 貼付製剤
31 水
41 空隙部
101 押し型
102 押し型の凸部
103 第二押し型
104 第二押し型の凸部
110 支持体
120 粘着剤層
121 粘着剤中央部
122 粘着剤周辺部
123 空隙部
130 剥離ライナー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、支持体の片面に形成された薬剤を含有する粘着剤層を有する貼付製剤であって、
前記貼付製剤は、中央部と、中央部から延伸する周辺部を有し、
前記周辺部の粘着剤層の少なくとも一部の側面端部は、前記支持体の側面端部より内側であり、
前記周辺部の粘着剤層の厚さが、前記中央部の粘着剤層の厚さよりも小さい、耐水性貼付製剤。
【請求項2】
前記周辺部における粘着剤層の厚さが、1.5〜150μmであることを特徴とする、請求項1記載の耐水性貼付製剤。
【請求項3】
前記中央部における粘着剤層の最も厚さが大きい箇所の厚さと、前記周辺部における粘着剤層の厚さの差が20〜2000μmであることを特徴とする、請求項1または2記載の耐水性貼付製剤。
【請求項4】
前記支持体端部から前記周辺部における粘着剤層端部の最奥部までの距離が0.5〜5mmの範囲内であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の耐水性貼付製剤。
【請求項5】
周辺部における粘着剤層の幅が0.5〜5mmの帯状であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の耐水性貼付製剤。
【請求項6】
前記粘着剤層が、有機液状成分を含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の耐水性貼付製剤。
【請求項7】
粘着剤層が架橋された粘着剤からなる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の耐水性貼付製剤。
【請求項8】
前記支持体に含まれる樹脂フィルムの厚さが1〜45μmであることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の耐水性貼付製剤。
【請求項9】
前記支持体が熱可塑性樹脂を含むことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の耐水性貼付製剤。
【請求項10】
前記熱可塑性樹脂がポリエチレンテレフタレートを含むことを特徴とする、請求項9記載の耐水性貼付製剤。
【請求項11】
粘着剤層上にさらに剥離ライナーを積層することを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の耐水性貼付製剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−57595(P2011−57595A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−207563(P2009−207563)
【出願日】平成21年9月8日(2009.9.8)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】