説明

耐水耐油紙及びその製造方法

【課題】本発明の目的は、環境問題の懸念されない炭素鎖長が6以下のパーフルオロアルキル基のフッ素系耐油剤を使用して、耐油性、耐水性、透気性などの特性が食品用耐水耐油紙として実用上に耐え得る耐水耐油紙を得ることである。
【解決手段】本発明に係る耐水耐油紙は、多孔質繊維を主成分とした基紙に、パーフルオロアルキル化合物を含有するフッ素系耐油剤を浸透させて付着させた耐水耐油紙において、パーフルオロアルキル化合物は、炭素鎖長が6以下のパーフルオロアルキル基を有する化合物であり、かつ、フッ素系耐油剤の付着量が固形分として0.3g/m以上であり、かつ、フッ素系耐油剤を浸透させて付着させた基紙を乾燥させた後にさらに温度エージング処理がなされたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙皿や食品包装などに使用される耐水耐油紙及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
耐油紙は、JIS P 0001:1998「紙・板紙及びパルプ用語」において、「1)耐油性をもたせた紙の総称。参考:高度に叩解した化学パルプを用いて抄造した紙、及び油脂類に対して抵抗性をもつように化学処理及び/又は塗工した紙がある。2)グリース又は脂肪の浸透に対して極めて大きな抵抗力をもった紙又は板紙。参考:ある種の紙、例えばカーボン原紙は、これらの物質の浸透を完全に阻止する。」と定義されている。
【0003】
耐油紙としては、例えば、グラシン紙、ポリエチレン加工紙、塩化ビニリデン加工紙、防湿セロハン紙又はアルミ箔ラミネート紙がある。
【0004】
耐油紙には、耐油性に加え透気性が要求されるものがあり、例えば、ハンバーガー等の包装用紙には、油脂分を通過させない耐油性と、水蒸気を通過させる透気性の両方が要求される。しかし、前記グラシン紙などは、基紙を高密度に仕上げることによって基紙の空隙を減らす機構又は耐油剤の材料を塗工、含浸若しくは貼合によって基紙の空隙を塞ぐ機構を有するので、良好な耐油性は得られるが、透気性が得られない。
【0005】
耐油性を付与しつつ透気性を得るためには、加工処理面の臨界表面張力を油性物質の表面張力より小さくする方法がある。このような機能を付与する薬品を耐油剤と称し、過フッ素炭化水素のアクリルレート又は過フッ素炭化水素のリン酸エステル等のフッ素系化合物を含有したフッ素系耐油剤を用いる方法が耐油紙の製造方法の主流となっている。フッ素系耐油剤を用いる方法では、紙の表面張力を下げて、油の濡れ性を低下させて油の浸透を防止する機構であり、基紙の空隙を減らす又は塞ぐ必要はないため、一般的な基紙と同等の透気性が維持される。さらに、フッ素系耐油剤を用いれば、耐油紙の使用時において、油は表面で十分に弾かれるため、気体が通過する空隙が油によって塞がれにくく、その結果、透気性の低下が生じにくい。これらの理由から、フッ素系耐油剤で処理した耐油剤が広く使用されている(例えば、特許文献1又は特許文献2を参照。)。また、同時にフッ素系耐油剤は、耐水性も付与できることを特徴としている。
【0006】
【特許文献1】特開2000−169735号公報
【特許文献2】特開2001−98033号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、近年フッ素系耐油剤メーカーから電子レンジなどで加熱したときに炭素鎖長8以上のパーフルオロアルキル化合物のオフガスが発生する問題が提起されている。また、フッ素系耐油剤の原材料として使用され、最終製品中に残存の可能性のあるパーフルオロオクタン酸の世界的な環境負荷への懸念等の問題もあり、炭素鎖長8以上のパーフルオロアルキル化合物を含むフッ素系耐油剤の食品用耐水耐油紙への使用が停止されてきている。さらに、これらの問題を解決するために、炭素鎖長が6以下のパーフルオロアルキル基のフッ素系耐油剤が提案されているが、耐油性、耐水性などの特性については、炭素鎖長が8以上のパーフルオロアルキル基のフッ素系耐油剤よりも劣っているのが現状である。
【0008】
そこで、本発明は、このような問題点を解決すべく創案されたものである。その目的は、環境問題の懸念されない炭素鎖長が6以下のパーフルオロアルキル基のフッ素系耐油剤を使用して、耐油性、耐水性及び透気性を食品用耐水耐油紙としての実用レベルにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、多孔質繊維を主成分とした基紙に、炭素鎖長が6以下のパーフルオロアルキル基のフッ素系耐油剤を浸透し、付着させ、かつ、温度エージング処理をすることによって解決できることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明に係る耐油紙は、多孔質繊維を主成分とした基紙に、パーフルオロアルキル化合物を含有するフッ素系耐油剤を浸透させて付着させた耐水耐油紙において、前記パーフルオロアルキル化合物は、炭素鎖長が6以下のパーフルオロアルキル基を有する化合物であり、かつ、前記フッ素系耐油剤の付着量が固形分として0.3g/m以上であり、かつ、前記フッ素系耐油剤を浸透させて付着させた基紙を乾燥させた後にさらに温度エージング処理がなされたことを特徴とする。
【0010】
本発明に係る耐油紙では、前記フッ素系耐油剤の付着量が固形分として2g/m以下であることが好ましい。多孔質繊維間の隙間をフッ素系耐油剤が塞いで透気性を低下させることがなく、また必要以上のフッ素系耐油剤を使用することもない。
【0011】
本発明に係る耐油紙では、TAPPI UM 557「Repellency of Paper and Board to Grease,Oil,and Waxes(Kit Test)」で規定する耐油度が5級以上であり、かつ、JIS P 8117:1998「紙及び板紙−透気度試験方法−ガーレー試験機法」で規定する透気抵抗度が50秒以下であり、かつ、JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法No.68:2000「紙及び板紙−はっ水性試験方法」で規定するはっ水度がR4以上であることが好ましい。温度エージングを行なうことによって、耐油度、透気抵抗度及びはっ水度の3つの条件を満足させることができる。
【0012】
また、本発明に係る耐水耐油紙の製造方法は、多孔質繊維を主成分とした基紙を抄造する工程と、前記基紙に炭素鎖長が6以下のパーフルオロアルキル基を有する化合物を含有するフッ素系耐油剤を前記基紙の少なくとも片面側から浸透させる工程と、前記基紙を乾燥させ、前記基紙に前記フッ素系耐油剤を固形分として0.3g/m以上付着させる工程と、40℃以上で3日間以上の温度エージング処理を行なう工程と、を有することを特徴とする。
【0013】
本発明に係る耐水耐油紙の製造方法では、抄紙機に付属する塗工機によって前記フッ素系耐油剤を前記基紙に浸透させることが好ましい。耐水耐油紙の生産効率を高めることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の耐水耐油紙は、透気性が一般的な紙と同等でありながら、食品用耐水耐油紙としての実用レベルにある耐油性と耐水性を有する耐水耐油紙である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明について実施形態を示して詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。また、本発明の効果を奏する限り、実施形態を変形してもよい。
【0016】
本実施形態に係る耐水耐油紙は、多孔質繊維を主成分とした基紙に、パーフルオロアルキル化合物を含有するフッ素系耐油剤を浸透させて付着させた耐水耐油紙において、パーフルオロアルキル化合物は、炭素鎖長が6以下のパーフルオロアルキル基を有する化合物であり、かつ、フッ素系耐油剤の付着量が固形分として0.3g/m以上であり、かつ、フッ素系耐油剤を浸透させて付着させた基紙を乾燥させた後にさらに温度エージング処理がなされている。
【0017】
ここで本実施形態に係る耐水耐油紙は、例えば、多孔質繊維を主成分とした基紙を抄造する工程と、基紙に炭素鎖長が6以下のパーフルオロアルキル基を有する化合物を含有するフッ素系耐油剤を前記基紙の少なくとも片面側から浸透させる工程と、基紙を乾燥させ、基紙にフッ素系耐油剤を固形分として0.3g/m以上付着させる工程と、40℃以上で3日間以上の温度エージング処理を行なう工程と、を有する製造方法によって得られる。
【0018】
多孔質繊維は、入手の容易さなどから木材パルプ繊維を主成分とするが、それ以外の非木材パルプ繊維を使用してもよい。木材パルプには、針葉樹クラフトパルプ、広葉樹クラフトパルプ、サルファイトパルプ等の化学パルプ、ストーングラインドパルプ、サーモメカニカルパルプ、リファイナーグラインドパルプの機械パルプ、又は、新聞、コート紙、上質紙等から得られる再生パルプを使用することができる。また、これらを適宜配合して使用することもできる。
【0019】
多孔質繊維は、叩解機によって、カナディアン・フリーネス・スタンダード(CFS)が550〜250mlとなるように叩解処理することが好ましく、450〜300mlとすることがより好ましい。基紙の透気性の調整の目的で、叩解処理の程度(CFS)を適宜調整する。ここで、叩解処理を進めると、多孔質繊維の多孔性も上がる。
【0020】
基紙は、多孔質繊維を主成分とするが、それ以外に無機繊維や填料を混合してもよい。また、その他必要に応じて、染料、紙力剤、湿潤紙力増強剤等の公知の内添剤を添加することもできる。
【0021】
基紙の抄造は、長網抄紙機、円網抄紙機、トップワイヤーの付いた長網抄紙機、短網抄紙機又はそれらのコンビネーション抄紙機等で行われるが、これに限定されるものではない。
【0022】
フッ素系耐油剤としては、炭素鎖長が6以下のパーフルオロアルキル基を有する化合物を含有するフッ素系耐油剤を使用する。炭素鎖長が7以上のパーフルオロアルキル基を有する化合物を使用すると、環境負荷への懸念等の問題が生じる。炭素鎖長が6以下のパーフルオロアルキル基を有する化合物のうち、炭素鎖長が大きいものほど好ましく、炭素鎖長が5又は6のパーフルオロアルキル基を有する化合物がより好ましい。炭素鎖長が大きい方が、耐油性が良好となるからであり、炭素鎖長6が最も好ましい。
【0023】
フッ素系耐油剤の溶液には、必要に応じて添加剤を添加することができる。このような添加剤としては、例えば、分散剤、消泡剤、増粘剤、耐水化剤、可塑剤、蛍光増白剤、着色顔料、着色染料、還元剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、香料又は脱臭剤がある。
【0024】
フッ素系耐油剤の基紙への浸透は、抄紙機に付属する塗工機で行なうオンマシン塗工によってもよいし、抄紙機と切り離された塗工機で行なうオフマシン塗工によってもよいが、本実施形態に係る耐油紙の製造方法では、フッ素系耐油剤を浸透させる工程において、抄紙機に付属する塗工機によってフッ素系耐油剤を基紙に浸透させることが好ましい。その結果、耐油紙の生産効率が高まる。抄紙機に付属する塗工機としては、サイズプレス、ゲートロール、シムサイザー等一般的に抄紙機に付属する塗工機を使用することができる。
【0025】
フッ素系耐油剤を浸透させた基紙の乾燥は、多筒式抄紙機やヤンキー抄紙機等一般的に抄紙機に付属するドライヤーを使用することができる。乾燥によって、基紙にフッ素系耐油剤が付着する。フッ素系耐油剤の付着量は固形分として0.3g/m以上とする。0.5g/m以上とすることがより好ましい。フッ素系耐油剤の付着量が固形分として0.3g/m未満であると、付着量不足のため、耐油度、はっ水度が食品耐水耐油紙として実用に耐えない。また,フッ素系耐油剤の付着量は固形分として2g/m以下であることが好ましい。フッ素系耐油剤の付着量が固形分として2g/mを超えると、多孔質繊維間の隙間をフッ素系耐油剤が塞いで透気性を低下させる場合があり、また必要以上のフッ素系耐油剤を使用することとなってしまう。なお、本発明においては、上述のとおり、フッ素系耐油剤の溶液には添加剤が含まれる場合があるが、フッ素系耐油剤の付着量とは、炭素鎖長が6以下のパーフルオロアルキル基を有する化合物の付着量と同じであるとして求めてもよい。
【0026】
基紙の乾燥工程における乾燥温度は、例えば90〜130℃である。
【0027】
また、本実施形態に係る耐水耐油紙は、通常の抄紙機で行われる、プレス圧、乾燥温度、カレンダー圧、抄造速度等を調節することによって、好ましい平滑度や脱水状態のものとすることができる。
【0028】
本実施形態に係る耐水耐油紙は、乾燥工程後、さらに最終処理として、温度エージング(熱エージング)処理を行なう。ここで、耐水耐油紙を40℃以上、より好ましくは50〜80℃にて、3日間以上、より好ましくは5〜10日間の温度エージング(熱エージング)処理を行なうことが好ましい。40℃未満であると、エージング時間が長くなるか、或いははっ水性が向上しないなどの処理が充分完了しない場合がある。エージング時間が3日間未満であると、はっ水性が向上しないなどの処理が充分完了しない場合があり、10日間を超えると、処理が完了済みの状態が続き、時間の浪費となる場合がある。なお、温度エージング処理は、エージングルームに保管して行なうことが好ましい。温度エージング処理を行なう場合、耐水耐油紙の巻き取り製品のまま行なうが、耐水耐油紙を所定の大きさに裁断した後に行なってもよい。
【0029】
温度エージング処理を行なう前後では、外観上観察される形態変化が見られないが、特にはっ水性が良好になるという変化が生じる。40℃以上で3日間以上の温度エージング処理が終了すると、本実施形態に係る耐水耐油紙は、TAPPI UM 557「Repellency of Paper and Board to Grease,Oil,and Waxes(Kit Test)」で規定する耐油度が5級以上の耐油性を有し、JIS P 8117:1998「紙及び板紙−透気度試験方法−ガーレー試験機法」で規定する透気抵抗度が50秒以下の透気性を有し、かつ、JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法No.68:2000「紙及び板紙−はっ水性試験方法」で規定するはっ水度がR4以上の耐水性を有することとなる。耐油性、透気性及び耐水性が上記条件を満足するかを確認することで、温度エージング処理が適切に終了したか否かの判断ができる。
【0030】
以下、本発明について実施例を挙げて詳細に説明するが、本発明の内容は実施例に限定されるものではない。なお、「%」及び「部」は、固形分換算での「質量%」及び「質量部」を示す。
【0031】
(実施例1)
[塗料の調製]
フッ素系耐油剤(商品名:AG−E060、旭硝子社製)を使用して、水で希釈して塗料を調製した。なお、このフッ素系耐油剤には、炭素鎖長が6のパーフルオロアルキル基を有する化合物が主成分として含有されている。
[基紙の抄造]
針葉樹パルプ(N−BKP)と広葉樹パルプ(L−BKP)とを、それぞれ30%と70%との割合に混合し、叩解機によって、カナディアン・フリーネス・スタンダード(CFS)400mlとなるように叩解処理した。これらのパルプスラリーに、全パルプ100部に対して、湿潤強度剤としてホリアミドエピクロルヒドリン(商品名:WS−4020、星光PMC製)を0.3部、硫酸バンドを0.14部添加し、長網抄紙機で抄紙して坪量50g/mの基紙を得た。
[塗料の浸透]
そして前記基紙をそのまま長網抄紙機に設備されているサイズプレスにて、前記[塗料の調製]に示す塗料を固形分として1g/mとなるように浸透させ、ドライヤーで乾燥し、フッ素系耐油剤を付着させた。
[エージング]
さらに、50℃で5日間のエージング処理を行い、実施例1の耐水耐油紙を得た。
【0032】
(実施例2)
実施例1において、エージング処理の期間を7日間に変更した以外は、実施例1と同じ方法で実施例2の耐水耐油紙を得た。
【0033】
(実施例3)
実施例1において、塗料を固形分として2g/mとなるように浸透・付着させた以外は、実施例1と同じ方法で実施例3の耐水耐油紙を得た。
【0034】
(実施例4)
実施例1において、エージング処理の温度を60℃に変更した以外は、実施例1と同じ方法で実施例4の耐水耐油紙を得た。
【0035】
(実施例5)
実施例1において、塗料を固形分として0.5g/mとなるように浸透・付着させた以外は、実施例1と同じ方法で実施例5の耐水耐油紙を得た。
【0036】
(実施例6)
実施例1において、塗料を固形分として0.3g/mとなるように浸透・付着させた以外は、実施例1と同じ方法で実施例6の耐水耐油紙を得た。
【0037】
(比較例1)
実施例1において、エージング処理を行なわない以外は、実施例1と同じ方法で比較例1の耐水耐油紙を得た。
【0038】
(比較例2)
[塗料の調製]において、フッ素系耐油剤を炭素鎖長が8以上のパーフルオロアルキル基を含む耐油剤フッ素系耐油剤(商品名:AG−530、旭硝子社製)を使用して水で希釈して塗料を調製することと、エージング処理を行なわない以外は、実施例1と同じ方法で比較例2の耐水耐油紙を得た。
【0039】
(比較例3)
[塗料の調製]において、フッ素系耐油剤を炭素鎖長が8以上のパーフルオロアルキル基を含む耐油剤フッ素系耐油剤(商品名:AG−530、旭硝子社製)を使用して水で希釈して塗料を調製することと、エージング処理を行なわない以外は、実施例3と同じ方法で比較例2の耐水耐油紙を得た。
【0040】
(比較例4)
実施例1において、塗料を固形分として0.2g/mとなるように浸透・付着させた以外は、実施例1と同じ方法で比較例4の耐水耐油紙を得た。
【0041】
上記の実施例1、2、3、4、5及び6並びに比較例1、2、3及び4の各試料について、耐油度、透気抵抗度及びはっ水度を測定した。これらの測定結果は、表1に示した。次に測定方法について説明する。
【0042】
(1)耐油度
TAPPI UM 557「Repellency of Paper and Board to Grease,Oil,and Waxes(Kit Test)」によって測定した。現在市販されているフッ素系耐油剤を用いた耐水耐油紙の耐油度は、5級以上であることから、一般的な使用において問題の発生しない耐油度が5級以上を実用レベルとした。
【0043】
(2)透気抵抗度
JIS P 8117:1998「紙及び板紙−透気度試験方法−ガーレー試験機法」によって測定した。透気抵抗度の値は、一定面積を空気100mlが通過する時間を示す。よって、透気抵抗度の値が大きいほど空気が通過し難いことを示す。透気抵抗度50秒以下を実用レベルとした。
【0044】
(3)はっ水度
JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法No.68:2000「紙及び板紙−はっ水性試験方法」によって測定した。はっ水度R4以上であると紙のはっ水度が視感で明確に確認できることから、一般的な使用において問題の発生しないはっ水度がR4以上を実用レベルとした。
【0045】
【表1】

【0046】
実施例1、2、3、4、5及び6では、炭素鎖長が6のフッ素系耐油剤を使用し、フッ素耐油剤の付着量を0.3g/m以上として温度エージングを行なったので、何れも耐油度が5級以上、透気抵抗度が50秒以下、はっ水度がR4以上であり、食品用耐水耐油紙としての実用レベルのものが得られた。
【0047】
比較例1では、炭素鎖長が6のフッ素系耐油剤を使用し、エージング処理を行なわない場合であるが、はっ水度がR2となり、食品用耐水耐油紙の実用上のレベルにはなかった。
【0048】
比較例2及び3では、炭素鎖長8以上のフッ素系耐油剤を使用し、エージング処理を行っていない場合であるが、何れも、耐油度、透気抵抗度、はっ水度に関しては良好であり、食品用耐水耐油紙として実用レベルのものであった。しかし、オフガスが発生し、世界的な環境負荷や安全性を考慮しなければならない。
【0049】
比較例4では、炭素鎖長が6のフッ素系耐油剤を使用して、エージング処理を行っているが、その付着量が0.2g/mのために、耐油度、はっ水度が食品耐水耐油紙として実用上に耐えないことが分かった。
【0050】
なお、前記実施例と同様に炭素鎖長が5のフッ素系耐油剤を使用した場合でも、耐油度が5級以上、透気抵抗度が50秒以下、はっ水度がR4以上で食品用耐水耐油紙として実用レベルのものが得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質繊維を主成分とした基紙に、パーフルオロアルキル化合物を含有するフッ素系耐油剤を浸透させて付着させた耐水耐油紙において、
前記パーフルオロアルキル化合物は、炭素鎖長が6以下のパーフルオロアルキル基を有する化合物であり、かつ、前記フッ素系耐油剤の付着量が固形分として0.3g/m以上であり、かつ、前記フッ素系耐油剤を浸透させて付着させた基紙を乾燥させた後にさらに温度エージング処理がなされたことを特徴とする耐水耐油紙。
【請求項2】
前記フッ素系耐油剤の付着量が固形分として2g/m以下であることを特徴とする請求項1に記載の耐水耐油紙。
【請求項3】
TAPPI UM 557「Repellency of Paper and Board to Grease,Oil,and Waxes(Kit Test)」で規定する耐油度が5級以上であり、かつ、JIS P 8117:1998「紙及び板紙−透気度試験方法−ガーレー試験機法」で規定する透気抵抗度が50秒以下であり、かつ、JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法No.68:2000「紙及び板紙−はっ水性試験方法」で規定するはっ水度がR4以上であることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の耐水耐油紙。
【請求項4】
多孔質繊維を主成分とした基紙を抄造する工程と、
前記基紙に炭素鎖長が6以下のパーフルオロアルキル基を有する化合物を含有するフッ素系耐油剤を前記基紙の少なくとも片面側から浸透させる工程と、
前記基紙を乾燥させ、前記基紙に前記フッ素系耐油剤を固形分として0.3g/m以上付着させる工程と、
40℃以上で3日間以上の温度エージング処理を行なう工程と、
を有することを特徴とする耐水耐油紙の製造方法。
【請求項5】
抄紙機に付属する塗工機によって前記フッ素系耐油剤を前記基紙に浸透させることを特徴とする請求項4に記載の耐水耐油紙の製造方法。

【公開番号】特開2009−120996(P2009−120996A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−297664(P2007−297664)
【出願日】平成19年11月16日(2007.11.16)
【出願人】(000241810)北越製紙株式会社 (196)
【Fターム(参考)】