説明

耐汚染性および/または耐湿性セキュリティドキュメントを製造するための方法

【課題】セキュリティドキュメントの耐汚染性および/または耐湿性を高めること
【解決手段】耐汚染性および/または耐湿性のセキュリティドキュメントを製造するための方法が提供される。本発明の方法は、耐汚染性および/または耐湿性組成物を支持体の孔に侵入させ、支持体の両面から過剰な組成物を除去するためにサイズプレスまたは他の同様なデバイスを使用することが望ましい。耐汚染性および/または耐湿性組成物は、標準的なコーティング方法の代わりにこのように塗布される際に、これらセキュリティドキュメント上またはその内部で使用できる非多孔性OVDが発生する光学的に可変な効果を不明瞭にすることはない。更に、本発明に従って耐汚染性および/または防水性とされたウィンドー付セキュリティドキュメント内のセキュリティデバイスの一部に載り、この部分に埋め込まれたファイバー(製紙ファイバー)の薄い層は、高い耐久性を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には耐汚染性および/または耐湿性セキュリティドキュメントを製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本願は、本明細書で全体を参考例として援用する、2006年10月27日に出願された米国仮特許出願第60/863,246号に基づく優先権を主張するものである。
【0003】
光学的に可変なセキュリティドキュメント、例えば薄膜、ホログラム、格子、マイクロプリズム、フォトクロミックおよび最近ではマイクロレンズに基づく膜構造体(以下、総称としてOVDと称す)は、銀行券のようなセキュリティドキュメントに価値を加えるものとして認識されている。かかるデバイスは、セキュリティドキュメントが偽造をよりしにくくしながら、種々の自己認証光学的効果を可能にしている。
【0004】
スティーンブリック氏外を発明者とする米国公開特許出願第2005/0180020A1号には、マイクロレンズに基づくOVDが記載されている。この参考文献に記載されている膜材料または構造体は、マイクロ画像を拡大するために非円筒形レンズの規則的な二次元アレイを使用しており、一実施形態では、(a)光学的スペーサーと、(b)光学的スペーサーの片面に位置する画像アイコンの規則的な平面状アレイと、(c)光学的スペーサーの反対の面に位置するレンズの規則的な周期的アレイを利用している。この膜構造体によって投影される画像は、オルソ視差の動きを含む多数の視覚的効果を示す。
【0005】
セキュリティドキュメント(例えば銀行券)の片面または両面にはセキュリティパッチの形態をしたOVDが取り付けられ、一方、ドキュメント内にはセキュリティストリップまたはスレッドの形態をしたOVDが部分的に埋め込まれ、これらOVDは、ドキュメントの片面または両面にある1つ以上の明瞭に構成されたウィンドー内で見ることができるようになっている。
【0006】
銀行券およびその他のセキュリティドキュメントの主な条件の1つは、このドキュメントが流通の影響に耐えなければならないことである。これらドキュメントは、耐久性がなければならず(例えば折り曲げ損傷、引き裂きおよび汚染に耐えなければならず)、更に耐湿性があり、耐薬品吸収性となっていなければならない。更に、ドキュメントに塗布されたプリントは、特に機械的な摩耗および誤って行われる洗濯のような苛酷な条件下でも良好に付着していなければならない。
【0007】
銀行券およびその他のセキュリティドキュメントが流通の影響をより受けないようにするために、メーカーおよび印刷業者は、ドキュメントを所定のニスおよびポリマーコーティング材料でコーティングしていた。紫外(UV)放射線で架橋可能なプレポリマー(100%の固体)または異なるホスト溶剤(樹脂固体含有物は、30〜50重量%の範囲である)との樹脂混合物から成るこれらニスまたはコーティング材料は、ドキュメントの表面をシールし、耐汚染性および耐湿性を高める。標準的なコーティング技術(例えばローラーコーティング、グラビアコーティング、エアナイフコーティング、ロールコーティイング、ブレードコーティング)を使用するドキュメントの製造法における最終ステップおよびほぼ最終のステップで塗布されるこれら表面コーティング材料は、一般にポストプリントニスと称されている。ドキュメントの表面の片側に塗布されるコーティング重量は、1平方メートル当たり0.5グラム(g/m)〜5.0g/mの範囲である。
【0008】
より最近の傾向は、製造中または製造直後のいずれかにおいて、これらセキュリティドキュメントの製造で使用される基材にコーティング材料を塗布することである。プレプリントコーティング材料と一般に称されるこれら表面コーティング材料は、ドキュメントを耐湿性および耐汚染性にするように働く水性樹脂バインダー系と称すことができる。プレプリントコーティングは、ドキュメントの完成品の1〜15%を構成し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
不幸なことに、これら従来の技術のうちの1つまたは2つが加えられたセキュリティドキュメント内のOVDは、重ねられたニスまたはコーティング材料の結果として少なくとも一部が不明瞭となったり、またはそうでないにしても悪影響を受ける。当業者であれば容易に理解できるように、OVDは、新規でかつ特殊加工された視覚的かつ機械的検査ができる効果を発生するために、ユニークな表面トポグラフィに依拠している。これら表面をコーティング材料およびニスでカバーすると、これら特徴的な効果が不明瞭になったり、無効になったり、歪んだり、またはそうでないにしてもこれら効果が低下する。
【0010】
耐汚染性および耐湿性の条件が増すにつれ、一般に支持体に塗布されるプレプリントコーティング材料および/またはポストプリントニスの量も同じように増加する。一部のセキュリティ機能の性能および効果の低下と引き換えに、支持体の耐久性に関して妥協がなされる。更に、あるタイプのニスは、光散乱添加物または光拡散添加物を含み、ニスが塗布されて完成したドキュメント上で見られる光沢を低下させる。これら添加物は、更に一部のセキュリティ機能の効果も低下させる。
【0011】
OVDにより生じる光学的可変効果に対するこれら悪影響を防止するために、一部のメーカーは、(i)ドキュメントの耐湿性および耐汚染性の能力を低下させるプレプリントコーティング材料またはポストプリントニスのコート重量を極めて少なくし、(ii)プレプリントコーティング材料またはポストプリントニスと、所定のOVDセキュリティ機能との組み合わせを防止し、または(iii)プレプリントコーティング材料またはポストプリントニスを塗布する前に、ドキュメントの表面上の領域をブロックしているが、これらによってドキュメントの表面のかなりの領域が保護されない状態のままとなり、塗布プロセスが過度に複雑となる。
【0012】
標準的なコーティングの技術を使用する代わりに、サイズプレスまたは他の同様なデバイスによって耐汚染性および/または耐湿性組成物を塗布することにより、耐汚染性および/または耐湿性に関して妥協することなく、これらOVDの光学的効果を保存できることを、本発明者達は発見した。また、このように耐汚染性および/または耐湿性とされたウィンドー付きセキュリティドキュメント内のセキュリティデバイスの部分に載り、よってこれらに埋め込まれたファイバー(例えば製紙用ファイバー)の薄い膜は、耐久性を増すことをも発見した。
【課題を解決するための手段】
【0013】
したがって、本発明は一般的にはセキュリティドキュメントの製造に使用される、ある厚さを有する多孔性支持体に対して、耐汚染性および/または耐湿性を与えるための方法を提供するものである。本発明の方法は、(a)前記多孔性支持体の両面に耐汚染性および/または耐湿性組成物を塗布するステップと、(b)前記支持体の孔内に前記耐汚染性および/または耐湿性組成物を侵入させ、よって支持体の厚みの少なくとも一部にわたって組成物を侵入させ、分散させるステップと、(c)前記支持体の両面から過剰な組成物を除去するステップを備える。耐汚染性および/または耐湿性組成物を支持体の孔内に侵入させ、支持体の両側の面から過剰な組成物を除去するために、サイズプレス(例えばパドルまたはメータリング)もしくはその他の同様なデバイスを使用することが望ましい。
【0014】
第1の想到できる実施形態では、本発明の方法は、多孔性支持体の表面に含まれる(または露出する)非多孔性OVDによって発生される光学的可変効果を不明瞭にすることなく、多孔性支持体に耐汚染性および/または耐湿性を与えるものであり、この方法は、支持体の少なくとも1つの表面に含まれるか、または前記表面内の1つ以上のウィンドーを通して露出した非多孔性セキュリティデバイスによって生じる光学的に可変な効果を不明瞭にすることなく、セキュリティドキュメントの製造に使用される多孔性支持体に耐汚染性および/または耐湿性を付与し、この方法は、
(a)1つ以上の非多孔性のOVDを支持する多孔性支持体の両面に、耐汚染性および/または耐湿性組成物を塗布するステップと、
(b)サイズプレスまたは他の同様なデバイスを使って耐汚染性および/または耐湿性組成物を前記支持体の前記孔に侵入させると共に、前記支持体の両面から過剰な組成物を除去し、よって前記非多孔性OVDの露出した表面に、前記耐汚染性および/または耐湿性組成物が実質的に存在しない状態にするステップとを備える。
本明細書で使用する「非多孔性OVD」なる用語は、実質的または基本的に多孔性でない表面を有するOVDを含み、これらOVDは多孔性支持体の表面に含まれる(または露出する)領域内だけが実質的にまたは基本的に非多孔性でない表面を有する。
【0015】
第2の想到される実施形態では、本発明の方法は、セキュリティデバイスのフレームを定め、少なくとも1つのウィンドーを形成し、このウィンドーを通して、前記デバイスが露出するようになっているセキュリティデバイスを支持する領域内のウィンドー付き多孔性支持体の耐久性を高めながら、1つ以上のセキュリティデバイスを支持するウィンドーが設けられた多孔質支持体に、耐汚染性および/または耐湿性を与えるものである。この方法は、
(a)内部に一部が埋め込まれ、前記支持体の少なくとも1つの表面上の1つ以上のウィンドー内で見ることができる1つ以上のセキュリティデバイスを有する前記多孔性支持体の両面に、耐汚染性および/または耐湿性組成物を塗布するステップと、
(b)サイズプレスまたは他の同様なデバイスを使って、耐汚染性および/または耐湿性組成物を前記支持体の前記孔に侵入させると共に前記支持体の両面から過剰な組成物を除去するステップとを備える。
【0016】
本発明は、ある厚みを有する少なくとも1つの多孔性支持体と、前記多孔性支持体の孔内に含まれ、前記多孔性支持体の両面にある有効な量の耐汚染性および/または耐湿性組成物とを備え、前記耐汚染性および/または耐湿性組成物は、前記多孔性支持体の厚みの少なくとも一部にわたって分散されている、耐汚染性および/または耐湿性セキュリティドキュメントも提供する。
【0017】
第1の想到できる実施形態では、本発明の耐汚染性および/または耐湿性セキュリティドキュメントは、前記支持体の上および/または前記支持体内に一部が含まれる1つ以上の非多孔性のOVDを更に含み、前記1つ以上の非多孔性OVDは、前記耐汚染性および/または耐湿性組成物が実質的に存在しない露出した表面を有する。本明細書で使用する「実質的に存在しない」なる用語は、非多孔性OVDが支持体の露出した表面にわずかに留まるかまたは微量の組成物しか有していないことを意味する。
【0018】
第2の想到できる実施形態では、本発明の耐汚染性および/または耐湿性セキュリティドキュメントは、ウィンドー付きセキュリティドキュメントであり、このドキュメントは内部に一部が埋め込まれ、1つ以上のウィンドー内で露出した1つ以上のセキュリティデバイスを有し、前記1つ以上のセキュリティデバイスを支持する前記セキュリティドキュメントの領域は、高い耐久性を示す。前記1つ以上のセキュリティデバイスは、前記耐汚染性および/または耐湿性組成物が実質的に存在しない表面を有する1つ以上の非多孔性の、光学的に可変なセキュリティストリップまたはスレッドであることが好ましい。
【0019】
当業者には、次の詳細な説明から、本発明の他の特徴および利点が明らかとなろう。特に明記しない限り、本明細書で使用するすべての科学技術用語は、本発明が属す技術の通常の知識を有するものが共通して理解するものと同じ意味を有する。本明細書で引用するすべての刊行物、特許出願、特許および他の参考文献は、全体を参考例として援用する。記載内容に矛盾があった場合、定義を記載する本明細書が基準となる。更に、材料、方法および例は、単なる説明のものにすぎず、限定的なものではない。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明によれば、標準的なコーティング技術の代わりにサイズプレスまたは他の同様なデバイスにより、耐汚染性および/または耐湿性材料を塗布しても、これら材料は銀行券または他のセキュリティドキュメントの上、またはその内部で使用されるOVDによって生じる光学的可変効果を不明瞭にしないことが発見された。サイズプレスまたは他の同様なデバイスにより、耐汚染性および/または耐湿性材料を塗布すると、ウィンドーが設けられた銀行券または他のセキュリティドキュメント内に埋め込まれたセキュリティストリップまたはスレッドの上に載る薄いファイバー層の耐久性が高まることも発見された。
【0021】
本発明を実施することにより、必要なコーティングおよびニス塗布機器に対して付随的な資本投資およびプレプリントコーティングおよびポストプリントニス塗布プロセスを不要にすることにより、セキュリティドキュメントに耐汚染性および/または耐湿性を付与することに対して時間的により効率的で、簡素化されたパスを提供する、改善されたプロセスの経済性を可能にできる。
【0022】
本明細書では、主に銀行券の製造時に使用するための本発明の耐汚染性および/または耐湿性セキュリティドキュメントについて説明するが、本発明はこのようなドキュメントだけに限定されるわけではない。本発明のセキュリティドキュメントは、小切手、IDカード、宝くじ券、パスポート、郵便スタンプ、株券および同様なものを含む種々の異なる物品を製造するのにも使用できる。
【0023】
上記のように、本発明の耐汚染性および/または耐湿性セキュリティドキュメントは、ある厚さを有する少なくとも1つの多孔性支持体と、前記支持体の孔内および両面に含まれる、ある効果的な量の耐汚染性および/または耐湿性組成物とを含み、前記耐汚染性および/または耐湿性組成物は、前記多孔性支持体の厚みの少なくとも一部にわたって分散する。
【0024】
本発明で使用するのに適した支持体は、毎分約2〜100ミリリットル(ml/min)、好ましくは約5〜50ml/minの多孔度を有する紙または紙状シート材料である。この多孔度はISO規格5636−3(1992年9月15日)に従って測定される空気透過度として定められる。この検査はスウェーデン、キスタのAB Lorentzen&Wettre社のL&W Bendtsen Testerを用いて行うことができる。
【0025】
単一プライまたはマルチプライのシート材料であるこれらシート材料は、マニラ麻、綿、リネン、木のパルプおよびそれらのブレンドのような種々のファイバーから製造できる。当業者に周知のように、銀行券には綿および綿とリネンのブレンドが好ましいが、銀行券でない有価証券ドキュメントでは、木のパルプが一般に使用されている。
【0026】
本発明で使用するようになっている耐汚染性および/または耐湿性組成物は、少なくとも一部が従来のプレプリントコーティングおよびポストプリントニスに見られる成分を含む水性組成物(例えば分散液)として調製することが好ましい。これら成分にはエステル結合を有する樹脂(例えばポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂)、ポリウレタン樹脂、機能性ポリウレタン樹脂(例えばカルボキシルポリウレタン樹脂)、およびコーポリマー(例えばウレタン−アクリル樹脂、ポリエーテル−ウレタン樹脂、スチレンアクリレート樹脂)およびそれらの混合物のような熱可塑性樹脂が含まれる。
【0027】
上記成分の他に、本発明の耐汚染性および/または耐湿性組成物は他の溶剤、補助溶剤、および希釈剤だけでなく、抗微生物剤、触媒、架橋剤(例えばシラン架橋剤)、発泡防止剤、顔料(例えば二酸化チタン)、可塑剤、安定化剤、表面活性剤または湿潤化剤、および粘性調節剤(これらに限定されない)を含む添加剤を含むことが好ましいが、かかる溶剤、協同溶剤、希釈剤または添加剤が、結果として生じるセキュリティドキュメントの望ましい性質に悪影響を与えないことを条件とする。
【0028】
好ましい実施形態では、耐汚染性および/または耐湿性組成物は水性ポリマー分散液であり、ポリマー分散液に生じる分散粒子の平均粒径は約50〜150ナノメータ(nm)(好ましくは約70〜140nm)の範囲である。
【0029】
より好ましい実施形態では、耐汚染性および/または耐湿性水性ポリマー分散液は、ポリウレタン樹脂、ポリエーテル−ウレタン樹脂および/またはウレタン−アクリル樹脂(分散液のうちの樹脂固形分は30〜50乾燥重量%、好ましくは約35〜45乾燥重量%の範囲である)の粒子または固形分を含む。より好ましい実施形態では、耐汚染性および/または耐湿性水性ポリマー分散液は、更に1つ以上の顔料、例えば二酸化チタン顔料と、オプションとしての1つ以上の架橋剤とを含む。(顔料および架橋剤を含まない)かかるポリウレタン分散液の一例は、米国ニューハンプシャー州ニューポートのRoymal,Inc.社から商品名NOTEGUARD PRIMERポリウレタン分散液として入手できる。
【0030】
組成物の全乾燥重量に基づき、約10〜40乾燥重量%、(好ましくは約15〜30乾燥重量%、より好ましくは約20〜25乾燥重量%)の範囲の全固形分を有する水性組成物を得るように、成分と水とを混合することにより、耐汚染性および/または耐湿性組成物が製造される。水性組成物のpHは、5.5〜9.5の間、好ましくは6.0〜8.0であることが好ましい。
【0031】
組成物を多孔性支持体に塗布する直前に、組成物に顔料を添加することが望ましい。多孔性支持体、すなわちベースシートへの樹脂ピックアップおよび混入の透明化効果に反作用するように顔料が使用される。ベースシートに組成物を塗布する直前に組成物に顔料を添加することによって、安定化剤が均質性を保証しなくてもよいようになる。またこれによって、異なる条件を有する異なる紙のグレードに対して、これら組成物をカスタム化することが可能となり、更に特定の等級を製造する間にバッチごとに調節することも可能となる。
【0032】
多孔性支持体に対して、耐汚染性および/または耐湿性を与えるための本発明の方法は、(a)前記多孔性支持体の両面に耐汚染性および/または耐湿性組成物を塗布するステップと、(b)前記支持体の孔内に前記耐汚染性および/または耐湿性組成物を侵入させ、よって支持体の厚みの少なくとも一部にわたって組成物を侵入させ、分散させるステップと、(c)前記支持体の両面から過剰な組成物を除去するステップを備える。耐汚染性および/または耐湿性組成物を支持体の孔内に侵入させると共に、支持体の両側の面から過剰な組成物を除去するように、サイズプレスもしくはその他の同様なデバイスを使用することが望ましい。
【0033】
当業者に周知のように、ファイバーウェブが製紙装置の「ウェット端部」を離間する際に、かなりの量の水を含むファイバーウェブがプレス部分、(例えば一連の大重量の回転シリンダ)に向けられ、このプレス部分はウェブをプレスしてウェブから水分を除去するように働き、更にウェブをコンパクト化し、ウェブの水分を一般に約70重量%まで減少させる。
【0034】
プレス加工の後に、紙のウェブは製紙装置のうちのメイン乾燥部分内で乾燥される。製紙装置のうちの一般に最長部分となっているこの乾燥部分では、ウェブの両面に高温の空気またはスチームで加熱されたシリンダが接触し、水を紙の約5重量%のレベルまで蒸発させることによってウェブを実質的に乾燥させる。
【0035】
次に、乾燥されたウェブ、すなわち支持体は、サイズプレスで表面がサイジングされる。本発明により、サイズプレスは、支持体の両側から支持体の間隙内に効果的な量(すなわち、サイズプレス処理された支持体の全乾燥重量%に基づく、約5〜20乾燥重量%、好ましくは約7.5〜12.5乾燥重量%)の耐汚染性および/または耐湿性組成物を侵入させるのに使用される。このサイズプレスは支持体の両面から過剰な組成物を除去するのにも使用される。このように、支持体の厚みの少なくとも一部にわたる組成物の浸透および分散が達成される。
【0036】
サイズプレスによって処理された支持体は、次に製紙装置のうちの二次乾燥部分内で約4〜6%の湿分レベルまで乾燥される。
【0037】
この結果得られるセキュリティドキュメントのガーレイ(Gurley)多孔度は、約15000〜300000秒の範囲にあることが好ましく、約40000〜150000秒の範囲にあることがより好ましい。ガーレイ多孔度の値はTAPPI検査方法T−460 om−06(2006年)を使って測定される。
【0038】
耐汚染性および/または耐湿性組成物は、耐久性の優れたセキュリティドキュメントを提供できる。更に、セキュリティドキュメントの印刷適性は悪影響を受けず、実際に改良できる。
【0039】
1つ以上の非多孔性OVDを使用するセキュリティドキュメントに関して、耐汚染性および/または耐湿性組成物はこれらOVDによって発生される光学的に可変な効果を減少することなく、耐久性に優れたセキュリティドキュメントを提供する。より詳細に説明すれば、非多孔性OVDが存在する基板の領域では、OVDはサイズプレスの流体圧力が増加するにつれ、組成物をOVDの表面から除去するように作用する。OVDの表面には支持体の孔内およびそれらの両面に存在する組成物が実質的に存在しない状態のままとなっている。
【0040】
ウィンドーが設けられたセキュリティドキュメントでは、部分的に埋め込まれたセキュリティデバイスを支持するセキュリティドキュメントの部分は、引き裂きおよび割れが生じる傾向が少ない状態として、高い耐久性を示す。
【0041】
当業者に周知のように銀行券または他のセキュリティドキュメントの表面内に一部が埋め込まれ、一部が露出しているセキュリティストリップまたはスレッドは、一般にウィンドー付きスレッドと称されている。スレッドの埋め込まれた領域は、スレッドのフレームを定め、スレッドが露出する少なくとも1つのウィンドーを形成するように働く紙の薄い層によってカバーされる。製紙業界で使用される任意の技術の結果として、このような紙の薄い膜を得ることができる。例えばスレッドをシリンダモールド製紙装置、シリンダバット装置、フォードリナー製紙装置または公知のタイプの同様な装置に送り込むことができ、これら装置において、セキュリティスレッド上に製紙ファイバーまたは製紙ストックのサスペンションをデポジット(または選択的にデポジット)するか、またはスレッドのまわりに形成するか、または既に形成されているウェブから変位させる。別の例として、ラミネート技術またはウェットラミネート技術だけでなく、スレッドの選択された領域上にファイバーサスペンションを噴霧する技術を使用して、部分的埋め込みを行うことができる。重なるボーダーおよびブリッジはセキュリティスレッドの一部をカバーするだけでなく、紙構造体の別個に取り付けられた部分とは異なり、一体的部分となる。
【0042】
セキュリティドキュメントまたは銀行券が流通中に耐えることができる劣化効果をシミュレートする1つの方法は、Bartz,W.J.およびCrane,T.T.両氏による刊行物「銀行券および光特性の耐久性を評価するための流通シミュレート方法」、SPIE第6075巻、カリフォルニア州サンノゼ、2006年1月に記載されている。この刊行物は実際に流通する銀行券で見られる劣化、例えば汚染、しわ、引き裂き、エッジのほぐれおよび緩みをシミュレートする、Crane & Co.,Inc.によって開発された検査方法について述べている。記載されている検査方法は、以下、「流通シミュレート方法」と称し、この方法は、旋盤に取り付けられたタンブラーを使用する。各コーナーにおいて銀行券の見本の重量が測定され、3回の30分サイクルの間、ガラスビード、金属ディスクおよび合成汚染混合物の媒体内で見本をタンブリングする。このサイクルの間に銀行券のサンプルの物理的劣化が生じる。流通シミュレート方法の条件を受けた後に銀行券がどれだけ良好に初期の光学的および物理的性質を維持しているかによって、耐久性を判断する。
【0043】
流通シミュレート方法の上記条件を受けたセキュリティスレッドを含む銀行券は、ある状況ではセキュリティスレッドをカバーしている薄い紙の層に脆弱さを呈する。この脆弱性は、例えば薄い紙の層の割れまたは引き裂きによって例示される。本発明にしたがって製造された非多孔性のマイクロレンズに基づく光学的に可変なセキュリティスレッドを含むウィンドー付き銀行券に関する1つの見解は、セキュリティスレッドをカバーする薄い紙の層は流通シミュレート方法によって課された劣化効果に耐えるということである。このような改良された強度、すなわち高められた耐久性が視覚的に明らかであり、無傷のままで、かつ引き裂きおよび割れを生じない薄い紙の層によって示される。
【0044】
以上で、本発明の種々の実施形態について説明したが、これら実施形態は単なる例として示したものであり、これら実施形態だけに限定されないと理解すべきである。したがって、本発明の要旨および範囲は、これら実施形態のいずれによっても限定されない。
【0045】
以上で本発明について説明した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セキュリティドキュメントの製造に使用され、ある厚みを有する多孔性支持体に対し、耐汚染性および/または耐湿性を付与するための方法であって、前記多孔性支持体の両面に耐汚染性および/または耐湿性組成物を塗布するステップと、前記支持体の孔内に前記耐汚染性および/または耐湿性組成物を侵入させ、よって支持体の厚みの少なくとも一部にわたって組成物を侵入させ、分散させるステップと、前記支持体の両面から過剰な組成物を除去するステップを備え、さらに
前記多孔性支持体は、前記支持体の少なくとも1つの表面上に含まれるか、またはその表面内の1つ以上のウィンドーを通して露出した1つ以上の非多孔性の光学的に可変なセキュリティデバイスを有し、
(a)多孔性支持体の両面に、耐汚染性および/または耐湿性組成物を塗布するステップと、
(b)サイズプレスまたは他の同様なデバイスを使って、耐汚染性および/または耐湿性組成物を前記支持体の前記孔に侵入させると共に、前記支持体の両面から過剰な組成物を除去し、よって前記1つ以上の非多孔性の光学的に可変なセキュリティデバイスの露出した表面に、前記耐汚染性および/または耐湿性組成物が実質的に存在しない状態にするステップとを備える方法。
【請求項2】
前記多孔性支持体は、内部に一部が埋め込まれ前記支持体の少なくとも1つの表面の1つ以上のウインドー内で見ることができる少なくとも1つのセキュリティデバイスを有するウインドー付き支持体であり、その支持体の耐久性は1つ以上のセキュリティデバイスを支持する領域内において高められ、これらの領域はセキュリティデバイスのフレームを定め、セキュリティデバイスが露出している少なくとも1つのウインドーを通して形成されている請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記多孔性支持体の両面に耐汚染性および/または耐湿性組成物を塗布する前に、前記多孔性支持体は、ISO規格5636−3(1992年)に従って測定された、毎分約2〜100mlの範囲の多孔度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記多孔性支持体は、毎分約5〜50mlの範囲の多孔度を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記耐汚染性および/または耐湿性組成物は、エステル結合を有する樹脂、ポリウレタン樹脂、機能性ポリウレタン樹脂およびそれらのコーポリマー並びに混合物の群から選択された1つ以上の熱可塑性樹脂を含む水性組成物である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記耐汚染性および/または耐湿性組成物は、約50〜150ナノメートルの範囲の平均粒径を有する分散粒子を含む水性ポリマー分散液である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記水性ポリマー分散液は、ポリウレタン樹脂、ポリエーテル−ウレタン樹脂、ウレタン−アクリル樹脂およびそれらの混合物の群から選択された、約10〜40乾燥重量%の樹脂粒子または固体を含む、請求項6の記載の方法。
【請求項8】
前記水性ポリマー分散液は、1つ以上の顔料、およびオプションとして1つ以上の架橋剤を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
処理された前記支持体の全乾燥重量に基づき、約5〜20乾燥重量%の前記耐汚染性および/または耐湿性組成物を、前記支持体の両側から前記支持体の前記孔内に侵入させる、請求項1に記載の方法。

【公開番号】特開2013−32011(P2013−32011A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−200055(P2012−200055)
【出願日】平成24年9月12日(2012.9.12)
【分割の表示】特願2009−534574(P2009−534574)の分割
【原出願日】平成19年9月24日(2007.9.24)
【出願人】(503457611)クレイン アンド カンパニー インコーポレーテッド (8)
【Fターム(参考)】