説明

耐汚染性帯電防止ハードコート積層体

【課題】簡単な工程で製造できる帯電防止性、耐擦傷性及び耐汚染性を併せもつハードコートシート、フィルム等の積層体の提供。
【解決手段】基材上に、帯電防止層およびハードコート層がこの順に積層された帯電防止ハードコート積層体であって、帯電防止層は導電性高分子、帯電防止剤および導電性金属酸化物から選択される一種以上を含む層であり、ハードコート層は防汚剤を含有し、活性エネルギー線により硬化した樹脂組成物からなる層であり、JIS L 1094により計測した摩擦帯電圧が、1000V以下である耐汚染性帯電防止ハードコート積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電防止性、耐摩擦傷性、および耐汚染性を有するハードコート積層体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光学部材の表面には、人が使用することによって、皮脂、汗、化粧品等の汚れや指紋などが付着する場合が多い。そのような汚れは、一度付着すると除去することは容易ではなく、付着した汚れが目立つために問題となる。また、摩擦等で帯電し、その表面に塵やゴミが付着し易くなるといった問題もある。加えて、表面における耐擦傷性が低く、表面にキズが付き易いために、透明性が著しく低下するといった問題もある。
これら汚れの問題を解決する手段として、表面上に、保護フィルムおよび/またはハードコート層を設けることによって、耐汚染性、耐擦傷性、耐摩耗性、帯電防止性などを向上させる技術が提案されている。
【0003】
特許文献1には、「(A)活性エネルギー線硬化性シリコーンアクリル共重合体;(B)活性エネルギー線硬化性多官能化合物;および(C)導電性材料;を含むハードコート用組成物であって、該(A)活性エネルギー線硬化性シリコーンアクリル共重合体が、(a−1)ポリシロキサンブロック、(a−2)活性エネルギー線硬化性二重結合基含有アクリルブロック、(a−3)フルオロアルキル基含有アクリルブロック、を有する、ハードコート用組成物」が開示されている。
【0004】
特許文献2には、「基材と、前記基材の表面にポリチオフェン構造と電子受容性ポリ酸構造とを有する導電性ポリマー成分、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、およびオルガノシロキサンを含む組成物を用いて形成され、かつ厚みが20nm〜500nmのコート層と、を有し、前記組成物に含まれる前記導電性ポリマー成分、前記メラミン樹脂、前記ポリエステル樹脂および前記オルガノシロキサンの合計質量に対する前記導電性ポリマー成分の質量比と、前記コート層の厚みとの積が、6nm〜15nmであることを特徴とする表面保護フィルム」が開示されている。
【0005】
上述のように、帯電防止性、耐擦傷性、耐汚染性共に問題解決する方法は提案されている。これらの方法では、単層内に帯電防止性、耐擦傷性、耐汚染性をもたせる成分が処方され、各性能をバランスよく発現させている。
【0006】
したがって、複数の性能を単層で発現させるため、それぞれの性能に絞って改良することが困難になる場合が多く、用途に応じた各性能の細かな調整が難しかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−143999号公報
【特許文献2】特開2009−107329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、帯電防止性、耐擦傷性及び耐汚染性を併せもつハードコートシート、フィルム等の積層体の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するため基材上へ、帯電防止層、耐汚染性ハードコート層の順に積層することで、本発明を完成するに至った。本発明は、ハードコート層を耐汚染素材含有の活性エネルギー線硬化樹脂とし、かつ、ハードコート層には帯電防止素材を含有させないことを主な特徴としている。
【0010】
すなわち、本発明は、
(1)基材上に、帯電防止層およびハードコート層がこの順に積層された帯電防止ハードコート積層体であって、前記帯電防止層は導電性高分子、帯電防止剤および導電性金属酸化物から選択される一種以上を含み、前記ハードコート層は防汚剤を含有し、活性エネルギー線により硬化した樹脂組成物からなり、前記帯電防止ハードコート積層体は、JIS L 1094により計測した摩擦帯電圧が1000V以下である耐汚染性帯電防止ハードコート積層体、
(2)前記ハードコート層の表面抵抗率が1013Ω/□以上であることを特徴とする上記(1)に記載の耐汚染性帯電防止ハードコート積層体、
(3)前記ハードコート層の硬度が、鉛筆硬度H以上である上記(1)または(2)に記載の耐汚染性帯電防止ハードコート積層体、
(4)前記基材がシートまたはフィルムである上記(1)〜(3)のいずれかに記載の耐汚染性帯電防止ハードコート積層体、
(5)基材上に、帯電防止層およびハードコート層をこの順に積層することを特徴とする耐汚染性帯電防止ハードコート積層体の製造方法、
に関するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、帯電防止層、耐擦傷性及び耐汚染性をもつハードコート層を積層することにより耐汚染性帯電防止ハードコートのシート、フィルム及び成型物を比較的簡便に作製し提供することができる。帯電防止性、耐擦傷性により埃、キズが付きにくい積層体へ、さらに耐汚染性をもたせることにより接触による表面汚れを防止できる積層体とした。また、本発明によれば、基材の形体を選ばず、基材の一部に耐汚染性帯電防止ハードコート処理が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明で使用する基材は、フィルム、シート、成型物等であり、特に限定されない。基材がシートまたはフィルムであれば、ハードコート層表面だけでなく基材の裏面も帯電防止効果を及ぼすものであり、厚手もしくは立体状の基材を使用した場合は、基材上のハードコート層表面にのみ帯電防止効果を及ぼす。基材の厚さに応じて徐々に帯電防止効果が基材の裏面まで及ばなくなり、厚さが0.5mmを超えると帯電防止層の反対側基材面まで帯電防止効果を及ぼし難くなる。
本発明で使用する基材は、透明性および平滑性に優れるものが好ましく、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ガラス等から形成されるシートまたはフィルムが挙げられる。また、帯電防止層が積層される面はハードコート剤の濡れが阻害されないように表面処理されていることが好ましい。
【0013】
基材上に形成される帯電防止層は導電性高分子、帯電防止剤および導電性金属酸化物から選択される一種以上を含む。導電性高分子としては、例えば、既知の導電性高分子を使用することができ、具体的には以下に示すモノマーを重合させることにより製造された導電性高分子を挙げることができる。例えば、ピロール、N−メチルピロール、N−エチルピロール、N−フェニルピロール、N−ナフチルピロール、N−メチル−3−メチルピロール、N−メチル−3−エチルピロール、N−フェニル−3−メチルピロール、N−フェニル−3−エチルピロール、3−メチルピロール、3−エチルピロール、3−n−ブチルピロール、3−メトキシピロール、3−エトキシピロール、3−n−プロポキシピロール、3−n−ブトキシピロール、3−フェニルピロール、3−トルイルピロール、3−ナフチルピロール、3−フェノキシピロール、3−メチルフェノキシピロール、3−アミノピロール、3−ジメチルアミノピロール、3−ジエチルアミノピロール、3−ジフェニルアミノピロール、3−メチルフェニルアミノピロール、3−フェニルナフチルアミノピロール等のピロール誘導体、アニリン、o−クロロアニリン、m−クロロアニリン、p−クロロアニリン、o−メトキシアニリン、m−メトキシアニリン、p−メトキシアニリン、o−エトキシアニリン、m−エトキシアニリン、p−エトキシアニリン、o−メチルアニリン、m−メチルアニリン、p−メチルアニリン等のアニリン誘導体、チオフェン、3−メチルチオフェン、3−ブチルチオフェン、3−n−ペンチルチオフェン、3−n−ヘキシルチオフェン、3−n−ヘプチルチオフェン、3−n−オクチルチオフェン、3−n−ノニルチオフェン、3−n−デシルチオフェン、3−n−ウンデシルチオフェン、3−n−ドデシルチオフェン、3−メトキシチオフェン、3−ナフトキシチオフェン、3,4−エチレンジオキシチオフェン等のチオフェン誘導体が挙げられ、好ましくは、ピロール、アニリン、チオフェンおよび3,4−エチレンジオキシチオフェン等が挙げられ、より好ましくは、ピロールが挙げられる。市販の導電性高分子分散液として入手でき、基材上に塗布乾燥、紫外線照射、電子線照射、加熱硬化することにより帯電防止層を形成することができる。
【0014】
帯電防止剤としては、既知の界面活性剤、4級アンモニウム塩含有化合物、3級アミン含有化合物、カルボン酸含有化合物、リン酸含有化合物、スルホン酸含有化合物が挙げられ、コーティング剤に添加後、基材上に塗布乾燥することにより帯電防止層を形成することができる。市販の帯電防止コーティング剤として入手できる。
【0015】
導電性金属酸化物としては、例えば、ITO(酸化インジウムすず)、酸化亜鉛、二酸化チタン等が挙げられる。既知の方法で、基材上に薄膜として形成したものを、本発明に用いることができる。
【0016】
ハードコート成分としては、活性エネルギー線、例えば、紫外線や電子線の照射を受けることによって架橋し硬化する光硬化性樹脂を含むものであればよい。組成的には、光硬化型モノマー及び/又は光硬化型プレポリマーと、必要に応じてその他の樹脂、溶剤、架橋剤、光重合開始剤等各種添加剤を含むものである。本発明では特に、導電性、帯電防止素材を添加する必要がないため、導電性をもたない光硬化樹脂となり、ハードコート層は導電性をもたない。
【0017】
本発明では、導電性をもたないとは、帯電防止効果を奏するために必要とされる表面抵抗率が1012Ω/□を超えることを意味する。ハードコート成分として導電性、帯電防止素材を添加すると、ハードコート剤としての性能(流動性、均一性、表面平滑性、ポットライフ等)の低下を招き易くなるため、ハードコート剤には、導電性、帯電防止素材を添加しないことが好ましい。よって、ハードコート層の表面抵抗率は、一般的な光硬化樹脂と同じに1013Ω/□以上であることが好ましい。表面抵抗率の測定は、市販の測定器で計測することができる。
【0018】
光硬化性樹脂としては、多官能性(メタ)アクリル系モノマー及び/又は多官能性(メタ)アクリル系プレポリマーを含むものであることが好ましい。多官能性(メタ)アクリル系モノマーは、分子内にアクリロイル基又はメタクリロイル基(以下、(メタ)アクリロイル基ともいう)を2以上有するモノマーである。特に、分子内に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有するものを用いると、耐擦傷性に一層優れるので好ましい。多官能性(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の多官能性(メタ)アクリレートが挙げられる。このようなモノマーは、一種単独で用いても、また、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、多官能性(メタ)アクリル系プレポリマーとしては、例えばポリエステル(メタ)アクリレート系、エポキシ(メタ)アクリレート系、ウレタン(メタ)アクリレート系、ポリオール(メタ)アクリレート系などのいずれを用いることもできる。ポリエステル(メタ)アクリレート系プレポリマーは、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。また、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することによっても得ることができる。エポキシ(メタ)アクリレート系プレポリマーは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂又はノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応させてエステル化することにより得ることができる。ウレタン(メタ)アクリレート系プレポリマーは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアネートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。さらに、ポリオール(メタ)アクリレート系プレポリマーは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。このような(メタ)アクリレート系プレポリマーは一種単独で用いてもよく、また二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
必要に応じて、硬化した樹脂組成物のTgを調整する目的で、ラジカル重合性不飽和結合を有するモノマーを含めてもよい。例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、i−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等のアクリル酸又はメタクリル酸の置換基を有していてもよい炭素数1〜18、好ましくは6〜13のアルキルエステル、シクロアルキルエステル又は芳香族エステル、スチレン、(メタ)アクリロニトリル、或いは酢酸ビニル等が挙げられる。このような中でも、アクリロイル基を一つ有する単官能(メタ)アクリル系モノマーが好ましく、更に、単官能(メタ)アクリレート系モノマーが好ましい。また、特に、メチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレートが好ましい。これらは、一種単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
本発明において使用される防汚剤は、一般的に使用されている物であれば、使用できる。防汚剤は、市販品として入手可能であり、反応基を有しない防汚剤の具体例としては、DIC社製のメガファックシリーズ、例えば、MCF350−5、F445、F455、F178、F470、F475、F479、F477、TF1025、F478、F178K等が挙げられ、また東芝シリコーン社製のTSFシリーズ等、信越化学社製のX22シリーズ、KFシリーズ等、さらには、チッソ社製のサイラプレーンシリーズ、富士ケミカル社製のクリンベルシリーズ等が挙げられる。
【0021】
反応基を有する防汚剤の具体例としては、SUA1900L10(重量平均分子量4200)、およびSUA1900L6(重量平均分子量2470、以上、新中村化学社製)、Ebecryl350、Ebecryl1360、およびKRM7039(以上、ダイセルユーシービー社製)、デイフェンサTF3001、デイフェンサTF3000、およびデイフェンサTF3028(以上、DIC社製)、UVHC1105、およびUVHC8550(以上、GE東芝シリコーン社製)、ライトプロコートAFC3000(共栄社化学社製)、KNS5300(信越シリコーン社製)、ACS−1122(日本ペイント社製)、UT3971(日本合成社製)、オプツールDAC(ダイキン工業社製)などが挙げられる。防汚剤が、有機化合物の場合、その数平均分子量は限定されないが、500以上、10万以下であり、好ましくは750以上、7万以下であり、より好ましくは1000以上、5万以下である。
【0022】
防汚剤は、ポリオルガノシロキサン基、ポリオルガノシロキサン含有グラフトポリマー、ポリオルガノシロキサン含有ブロックポリマー、フッ素化アルキル基などを含有する2官能以上の多官能アクリレートを含んでなるものが好ましい。多官能アクリレートとしては、例えば、2官能アクリレートとして、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1、3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1、4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、1、6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1、9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1、10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレートモノステアレート、イソシアヌル酸エトキシ変性ジ(メタ)アクリレート(イソシアヌル酸EO変性ジ(メタ)アクリレート)、2官能ウレタンアクリレート、2官能ポリエステルアクリレート等が挙げられる。3官能アクリレートとしては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンEO変性トリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EO変性トリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化グリセリルトリ(メタ)アクリレート、3官能ポリエステルアクリレート等が挙げられる。4官能アクリレートとしては、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。5官能以上のアクリレートとしては、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が挙げられる。
【0023】
防汚剤の添加量は、活性エネルギー線硬化型(メタ)アクリレート樹脂100重量部に対し、0.1〜5.0重量部、好ましくは0.3〜3.0重量部である。防汚剤の添加量は、要するに、充分な防汚機能が発揮され、かつハードコートフィルムの硬度を低下させることなく、しかも、防汚剤が含まれていても、フィルムの耐擦傷性の劣化を生じることがない量であるのが、好ましい。
【0024】
本発明の耐汚染性帯電防止ハードコート積層体は、画像表示装置等埃や汚れ付着を嫌う用途で有効に使用できるため、本発明の積層体が透明であると用途が広がり好ましい。よって、帯電防止層及びハードコート層が透明であることが好ましい。
【0025】
ハードコート成分としては、形成するハードコート層を鉛筆硬度H以上にし得るものが好ましい。積層体としてのハードコート層表面の鉛筆硬度は、使用する基材の材質、厚みに影響されることがあるため、ハードコート成分のみで積層体としてのハードコート層の鉛筆硬度は確定されないが、市販のエネルギー線硬化型ハードコート剤から選択して利用することができる。また、帯電防止層が接着補強の役割を成すことが期待されるため、ハードコート剤を基材へ直にコートする場合よりも、本発明では密着性に優れることが予想される。
【0026】
導電性高分子または帯電防止剤を含む組成物による帯電防止層の形成は、該組成物を基材上にコーティングし、必要により乾燥を行うことにより達成される。基材へのコーティング方法は、特に限定されず、グラビア印刷、インクジェット印刷、ディッピング、スプレー、スピンコーター、ロールコーター、バーコーター等を用いてコーティングすることができる。
【0027】
ハードコート層の形成は、ハードコート成分、所望により更なる成分、および必要に応じて溶媒を添加してハードコート液を調製した後、これを基材平面上に形成された帯電防止層上にコーティングし、必要により乾燥、活性エネルギー線照射処理を行うことにより達成される。基材帯電防止層へのコーティング方法は、特に限定されず、グラビア印刷、インクジェット印刷、ディッピング、スプレー、スピンコーター、ロールコーター、バーコーター等を用いてコーティングすることができる。
【0028】
本発明のハードコート層の厚さは、0.5mmを超えないことが好ましい。0.5mmを超えると帯電防止効果が有効に発揮されないことがある。ハードコート層が0.5mmを超えない場合は、帯電防止効果が有効に発揮される。また、帯電防止層とハードコート層との間、及び/又はハードコート層の上に積層した場合は、帯電防止層上の各層全体の厚さが0.5mmを超えないことが好ましい。
【0029】
本発明による積層体のハードコート層表面のJIS L 1094により計測した摩擦帯電圧は1000V以下である。1000Vを超えると、帯電防止効果が小さくなる。摩擦帯電圧は好ましくは250V以下であり、測定値が低ければ低いほど帯電防止効果は確実なものとなる。
【0030】
本発明では、帯電防止層の組成物により帯電防止性能を、ハードコート層の組成物により耐擦傷性能、耐汚染性能を調整できるため、各性能について細かな調整が可能となる。
【実施例】
【0031】
以下の実施例により本発明を詳しく説明する。但し、実施例により本発明を限定するものではない。なお、実施例、比較例中の部数や%は、断り書きがない限り、質量部、質量%を表す。
【0032】
<耐汚染性ハードコーティング剤の調整>
汎用ハードコーティング剤(東京インキ社製、商品名:UVトップHC106−1)100部、フッ素系防汚剤(ダイキン工業社製、商品名:オプツールDAC)3部を汎用混合機を用いて混合撹拌を行い耐汚染性ハードコーティング剤を得た。
【0033】
耐汚染性ハードコーティング剤によるコート層の表面抵抗率を、JIS K6911に準拠し、下記装置、条件により計測した結果、1×1015Ω/□以上であった。
(表面抵抗率の測定方法)
ポリエチレンテレフタレートフィルムの処理面上に耐汚染性ハードコーティング剤をバーコーター#8で塗布し、ドライヤーで揮発成分を留去後、80W/cmのエネルギーの高圧水銀灯を使用し照射距離10cm,ライン速度10m/minで紫外線を照射してハードコートフィルムを作製し、高抵抗率計(三菱化学社製、ハイレスターUP 型番:MCP−HT450 条件:プルーブ:UR−100 印加電圧:500V
時間:1分)により計測した。
【0034】
実施例1
厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート(以下、PET)フィルム(ユニチカ社製、商品名:エンブレットSA)のコロナ処理面上にポリチオフェン系の導電性高分子分散液(東京インキ社製、商品名:導電ニスK−434)をバーコーター#5で塗布し、続けてドライヤーで揮発成分を留去して導電性高分子コートPETフィルムを得た。次いで、導電性高分子層上に耐汚染性ハードコーティング剤をバーコーター#4で塗布し、ドライヤーで揮発成分を留去後、80W/cmのエネルギーの高圧水銀灯を使用し照射距離10cm,ライン速度10m/minで紫外線を照射して本発明の耐汚染性帯電防止ハードコートフィルム1を得た。
【0035】
実施例2
バーコーター#4をバーコーター#8に替える以外は実施例1と同様にして本発明の耐汚染性帯電防止ハードコートフィルム2を得た。
【0036】
実施例3
厚さ100μmのPETフィルムを厚さ300μmのポリカーボネート(以下、PC)フィルム(住友ベークライト社製、商品名:ポリカエースECG100)に替える以外は実施例1と同様にして本発明の耐汚染性帯電防止ハードコートフィルム3を得た。
【0037】
実施例4
厚さ100μmのPETフィルムを厚さ300μmのPCフィルムに替える以外は実施例2と同様にして本発明の耐汚染性帯電防止ハードコートフィルム4を得た。
【0038】
比較例1
導電性高分子分散液を使用しない以外は実施例1と同様にして耐汚染性ハードコートフィルム5を得た。
【0039】
比較例2
導電性高分子分散液を使用しない以外は実施例3と同様にして耐汚染性ハードコートフィルム6を得た。
【0040】
比較例3
耐汚染性ハードコーティング剤を汎用ハードコーティング剤(東京インキ社製、商品名:UVトップHC106−1)に替える以外は実施例1と同様にして帯電防止ハードコートフィルム7を得た。
【0041】
<評価>
実施例1〜4、および比較例1〜3で得られたフィルムにつき、物性を測定し、結果を表1に示す。評価項目および評価基準は以下の通りとした。
なお、エネルギー線硬化ハードコート層の膜厚は、バーコーター各々のウエット塗布量のカタログ値、ハードコーティング剤の固形分より計算により算出した。
【0042】
(1)鉛筆硬度
JIS K 5600−5−4 により、各種硬度の鉛筆を45度の角度で樹脂層表面に当て、傷が目視確認されなかった、最も硬い鉛筆の硬度を鉛筆硬度とした。
【0043】
(2)密着
ハードコート層にX状の切れ込みを形成し、その上にセロハンテープ(28mm、ニチバン社製)を貼り付け、180度の角度で急速に剥離させる。剥離面積に基づき、以下に示す4ランクの基準で判定した。
○:全く剥離せず
○△:剥離面積が1/4以下である
△:剥離面積が1/4より大きく、3/4以下である
×:剥離面積が3/4より大きい
【0044】
(3)摩擦帯電圧
JIS L 1094により、摩擦帯電圧測定器(大栄科学精器製作所製、RST−200)を使用して、評価試料を35mm×45mmに切り取り、ハードコート層等の表面をカナキン3号と摩擦させ60秒後の電位差を測定した。
【0045】
(4)帯電防止効果(アッシュテスト)
評価試料について、そのハードコート層の表面をナイロン製布を使用し30回擦った後に、たばこの灰の上から1cm上にかざして、たばこの灰がハードコート層の表面に付着する状況から、目視により帯電防止効果を判定した。
○:灰は全く付着せず、帯電防止効果が非常に良好
△:灰は少ししか付着しておらず、帯電防止効果が良好
×:灰は多量に付着しており、帯電防止効果が認められない
【0046】
(5)耐摩擦傷性
評価試料を30mm幅に切り分け、ハードコート層の表面を#0000のスチールウールを摩擦子に用い、荷重500g、回数100往復にて学振式耐摩試験機を用いて摩擦を行い測定サンプルを作製した。このサンプルの摩擦処理前後のヘイズ値(JIS K 7136)を、ヘイズ測定器(東洋精機製作所製:ヘイズガード 2)により測定した。摩擦処理後のサンプルを目視観察し、以下に示す基準で判定した。
○:目視により摩擦傷を確認することができない
○△:目視により摩擦傷を確認し難い(実用上、問題ない)
△:目視により摩擦傷を確認することができる
×:目視により摩擦傷を容易に確認できる
【0047】
(6)耐汚染性
油性マジックペン(ゼブラ社製、商品名:マッキー)でハードコーティング剤の硬化塗布面に筆記を行い、筆記部のインクがはじく場合を○、はじかない場合を×とした。
【0048】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明によれば、帯電防止性、耐摩擦傷性及び耐汚染性を有するシート、フィルム、成型品等のハードコート積層体として利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、帯電防止層およびハードコート層がこの順に積層された帯電防止ハードコート積層体であって、
前記帯電防止層は導電性高分子、帯電防止剤および導電性金属酸化物から選択される一種以上を含み、
前記ハードコート層は防汚剤を含有し、活性エネルギー線により硬化した樹脂組成物からなり、
前記帯電防止ハードコート積層体は、JIS L 1094により計測した摩擦帯電圧が1000V以下である
耐汚染性帯電防止ハードコート積層体。
【請求項2】
前記ハードコート層の表面抵抗率が1013Ω/□以上であることを特徴とする請求項1に記載の耐汚染性帯電防止ハードコート積層体。
【請求項3】
前記ハードコート層の硬度が、鉛筆硬度H以上である請求項1または請求項2に記載の耐汚染性帯電防止ハードコート積層体。
【請求項4】
前記基材がシートまたはフィルムである請求項1〜3のいずれかに記載の耐汚染性帯電防止ハードコート積層体。
【請求項5】
基材上に、帯電防止層および耐汚染性ハードコート層をこの順に積層することを特徴とする耐汚染性帯電防止ハードコート積層体の製造方法。

【公開番号】特開2011−156741(P2011−156741A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−19879(P2010−19879)
【出願日】平成22年2月1日(2010.2.1)
【出願人】(000219912)東京インキ株式会社 (120)
【Fターム(参考)】