説明

耐油紙および耐油紙の製造方法

【課題】非フッ素系材料を用い、生産性の高い製造方法にて、高い耐油性とブロッキング防止効果を備えた耐油紙を提供する。
【解決手段】紙支持体の少なくとも片面に少なくとも1層のアクリル系樹脂を含有する耐油層を設けた耐油紙であって、該耐油層塗料に平均粒子径(短径(DS))が3.0〜15.0μmの球状粒子を少なくとも1種含有させたことを特徴とする耐油紙である。また、球状粒子の短径(DS)と長径(DL)の比(DS/DL)で表される真球度が0.7以上である耐油紙である。また、耐油層をトランスファーロールコーターで塗工するものであり、オンマシンコーティングする耐油紙の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動植物油等の油分の浸透を抑制する耐油紙および耐油紙の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より耐油紙は、洗剤、菓子、乾燥食品等の包装容器用素材として広く使用されていた。その用途としては様々なものがあるが、耐油性を付与した板紙については菓子等の食品用の箱、とりわけ油脂分を大量に含むチョコレート菓子等の箱としてや、薄葉紙に耐油性を付与したものについてはファーストフードなどの揚げ物を包装する容器やデパート、コンビニエンスストアなどでのテイクアウト食材の包装容器等に多く使用されている。
【0003】
紙に耐油性を付与する手段としては、優れた耐油性を有するフッ素樹脂系の耐油剤が従来から使用されており、例えば、紙、板紙の表面にフッ素樹脂系耐油剤を塗工して耐油層を設けたクッキングシートまたは紙層間にフッ素樹脂系耐油剤層を設けた菓子箱用の耐油板紙等が存在した。しかし、フッ素樹脂系耐油剤を使用した紙は、100〜180℃の食品調理温度で加熱した場合、炭素数8〜10のフッ素系アルコール化合物等、長期に残留しやすい成分が発生することが確認されている。また、これらフッ素樹脂系耐油剤を使用した紙を使用後焼却した際には、パーフルオロオクタン酸やパーフルオロスルホン酸等のフッ素化合物が発生し、健康または環境に悪影響を及ぼすことが懸念されるため、フッ素樹脂系耐油剤を使用しない耐油紙が求められている。
食品包装用耐油紙に求められる機能としては、サラダ油、チョコレートを始めとするオイル耐性はもちろんのこと、食品と直接触れるため可溶分が有る場合は安全性を、また、好みの大きさ、形状に応じて加工を行うため、罫線部の耐油性の付与、製函時の糊付け適性、さらに紙の製造時および加工後にはリールにて巻取り、または積み重ねることにより紙の裏表が接着するブロッキングを防ぐことが必要となる。
【0004】
アクリル系の耐油剤を使用した耐油紙の場合、例えば、特許文献1にはアクリル樹脂をオフコーター若しくは印刷機を用いて基紙上に幾層にもわたり塗布する技術が開示されているが、幾層にもわたり塗布することにより耐油性は確保できるもののその手間の多さからコストが極端に高くなること、汎用のアクリル樹脂のみの塗布では耐ブロッキング性が明らかに劣り、加工性も劣ることが容易に類推される。
【0005】
また、特許文献2においてはガラス転移温度(以下Tgという)が10〜28℃のアクリル系樹脂のエマルジョンのみを塗布する技術が開示されており、耐ブロッキング性の改善についても記載されているが、エマルジョンのTgが低いが故に乾燥後の吸湿により耐ブロッキング性が著しく悪化することが容易に類推され、根本的な解決には至っていない。
また、特許文献3には、耐油層をアンダーコート層、オーバーコート層の多層構成として、それぞれの耐油層で使用するアクリル樹脂のガラス転移温度を特定の範囲とすることで耐ブロッキング性の改善策が提案されているが、多層構成では生産効率の点で好ましくない。
【0006】
さらに、特許文献4には、耐油層をアンダーコート層、オーバーコート層の多層構成として、さらにオーバーコート層には顔料を添加するものであるが、顔料配合であるが故に耐油性を維持するため多量の塗工量が必要となり、塗工機での生産効率が悪化する。また、耐油性と耐ブロッキング性改善の面で満足なものが得られていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公平8−006278号公報
【特許文献2】特許第3055867号公報
【特許文献3】特開2006−028697号公報
【特許文献4】特開2006−316367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の課題を解決すべく、本発明の目的は紙支持体上の少なくとも片面に1層以上の耐油層を有する耐油紙に関し、耐ブロッキング性の改善された耐油紙およびその製造方法を提供することである。さらには高い耐油性能を兼ね備えた食品包装用耐油紙を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、アクリル系樹脂と特定粒子径の球状粒子を耐油層用塗料に含有させることにより、フッ素系化合物を用いないで環境面での問題の少ない食品用耐油紙を提供することを目的とする。また、前記耐油層用塗料をトランスファーロールコーター方式で塗工して、高い生産性を得るとともに高い耐油性、耐ブロッキング効果を備えた耐油紙を提供することを目的とする。本発明は以下の各発明を包含する。
【0010】
(1)紙支持体の少なくとも片面に少なくとも1層のアクリル系樹脂を含有する耐油層を設けた耐油紙であって、前記耐油層に平均粒子径が3.0〜15.0μmの球状粒子を少なくとも1種含有させた耐油紙。
【0011】
(2)前記球状粒子の短径(DS)と長径(DL)の比(DS/DL)が0.7以上である(1)に記載の耐油紙。
【0012】
(3)前記球状粒子を耐油層全固形分に対して、0.1〜20質量%含有させた(1)または(2)に記載の耐油紙。
【0013】
(4)前記球状粒子が軽質炭酸カルシウムを含有する(1)〜(3)のいずれか1項に記載の耐油紙。
【0014】
(5)前記紙支持体表面のJAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法 No.5−2:2000に準じて測定した平滑度(王研式)が10〜50秒である(1)〜(4)のいずれか1項に記載の耐油紙。
【0015】
(6)前記耐油層の塗工量が2.5〜10.0g/mである(1)〜(5)のいずれか1項に記載の耐油紙。
【0016】
(7)前記(1)〜(6)のいずれか1項に記載の耐油紙において、前記耐油層を構成する耐油層用塗料をトランスファーロールコーターで塗工する耐油紙の製造方法。
【0017】
(8)前記耐油層用塗料をオンマシンコーターで塗工する(7)に記載の耐油紙の製造方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るアクリル系樹脂と特定粒子径の球状粒子を耐油層用塗料に含有させることにより、フッ素系化合物を用いないで環境面での問題の少ない食品用耐油紙を提供することができる。さらに、前記耐油層用塗料をトランスファーロールコーター方式で塗工して、高い生産性と高い耐油性、耐ブロッキング効果を備えた耐油紙を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に用いる紙支持体としては特に限定されず、少なくとも一方の表面に後述するアクリル系樹脂を含有する耐油層を少なくとも1層設けることができるものであればよく、用途に応じて適宜選択することができる。具体的には、晒または未晒クラフト紙、上質紙、中質紙、微塗工紙、塗工紙、板紙、白板紙、ライナー、セミグラシン紙、グラシン紙、片艶紙、パーチメント紙等が挙げられる。
紙支持体の坪量には特に制限はなく、包装用としては20〜150g/m、箱等の成型容器用としては150〜500g/mが好適である。
【0020】
本発明では、製造時の巻取り形態でのブロッキングや、製袋、製函後のブロッキングの防止効果を平均粒子径が3.0〜15.0μmの球状粒子を含有させ、紙−紙の接触面積を減少させることによって得るものであるため、塗工乾燥後の塗工面に球状粒子がある程度露出する必要がある。このため、使用される球状粒子の平均粒子径は、使用する紙支持体の表面平滑度や耐油層の厚さによって調整する必要がある。より好ましい球状粒子の平均粒子径は5.0〜12.0μmである。ここで、球状粒子の平均粒子径は堀場製作所製レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置「Partica LA−920」にて測定したメジアン径である。
【0021】
球状粒子の形状としては、粒子の長径(DL)と短径(DS)の比(DS/DL)で表される真球度が0.7以上であることが好ましい。より好ましくは0.8以上である。
真球度が0.7未満の場合、本発明の効果であるブロッキング防止効果が十分には得られない。
【0022】
なお、球状粒子の真球度(粒子の長径/短径の比)は以下の手順で測定された値を意味する。
まず、耐油紙の2本の対角線が交わる点を中心にして、耐油紙表面(耐油層が設けられた表面)のSEM写真(倍率5000倍)を真上(耐油紙表面に対して垂直な方向)から撮る。ここで、この時の耐油紙表面に対して垂直な方向をZ方向とし、当該z方向に対して垂直に交わる平面をxy平面とする。このSEM写真で粒子の形状が球状であるか非球状(立方状、柱状、紡錘状、針状、無定形等)を目視判定し、球状と判定されたものについて以下の操作を行う。
【0023】
前記SEM写真の左端を起点として縦50mm×横50mmの領域を観察エリアとして、画像処理ソフト(日本ローパー社製、商品名:「Image−Pro」)を用いて画像処理を行う。
次に、観察エリア内の1つの粒子に注目し、粒子の最大長さ(長径DL)と当該長径と直交する方向の長さ(短径DS)とを測定する。
【0024】
さらに、耐油紙をx方向とy方向とにそれぞれ±45度傾けた方向からも前記と同様にして測定を行い、この4方向から測定した真球度(DS/DL)を求める。本発明においては、真球度が0.7以上である場合を球状とする。
【0025】
上記の球状粒子のなかで、球状軽質炭酸カルシウムまたは球状軽質炭酸カルシウムを含有する粒子が、耐油性の低下をきたしにくいという点で優れており好ましい。この球状軽質炭酸カルシウムの製造方法としては、例えば、塩化カルシウム水溶液に炭酸ナトリウム水溶液を反応させる方法、水酸化カルシウム塩と炭酸塩をカルシウム以外の2価のカチオン存在下で反応させる方法、特開平6−16417号公報に記載されているように、燐酸化合物の存在下、塩化カルシウムと炭酸水素塩を反応させてバテライト型の球状炭酸カルシウムを製造する方法、特公平4−4247号公報に記載されているように、添加物の存在下、水酸化カルシウムスラリーに二酸化炭素ガスを導入して球状軽質炭酸カルシウムを製造する方法、WO2004/076352に記載されているように、水酸化カルシウム含有水性懸濁液に二酸化炭素ガスまたは二酸化炭素含有ガスを吹き込んで、炭酸化率が2〜10%に到達した時点で水溶性リン酸またはその水溶性塩の水溶液あるいは懸濁液を添加して反応させる球状炭酸カルシウムの製造方法等を挙げることができる。
【0026】
また、その他の材質の球状粒子を使用することも可能である。例えば、塗工紙分野で一般的に使用される無機及び有機の顔料を挙げることができ、無機顔料としては、例えば重質炭酸カルシウム、カオリン、焼成カオリン、構造性カオリン、デラミカオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、シリカ、アルミノ珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、ホワイトカーボン、ベントナイト、ゼオライト、セリサイト、スメクタイト等の鉱物質を球状にしたものが挙げられる。有機顔料としては、例えば、ポリイソプレン、ポリネオプレン、ポリブタジエン等のポリジエン類、ポリブテン、ポリイソブチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリアルケン類、ビニルハライド、酢酸ビニル、スチレン、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド、メチルビニルエーテル等のビニル系重合体や共重合体類、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、尿素系樹脂、メラミン系樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂等の密実型、中空型、あるいは貫通孔型粒子等を球状にしたものが挙げられる。
【0027】
上記その他の材質の球状粒子の製造方法としては、例えば球状シリカは、ケイ酸アルカリ溶液と、鉱酸溶液或いはアルミニウム塩および/またはアルカリ土類金属塩を含む鉱酸溶液とを混合して、シリカ系ヒドロゲルにゲル化させる工程と、生成するシリカ系ヒドロゲルを必要により酸処理した後、アルカリ金属塩を除去するために水洗する工程と、水洗後のシリカ系ヒドロゲルを水浸された状態で水熱条件下に解膠する工程と、解膠された水性スラリーを微粉砕する工程と、微粉砕スラリーをスプレー造粒する工程とにより製造される。
【0028】
また、球状アルミナは、特開2011−102215号公報に記載されているように、原料粉末として水酸化アルミニウム、仮焼アルミナ又は電融アルミナ粉砕物を用いて製造される。例えば、炉頂部より水酸化アルミニウム、仮焼アルミナ又は電融アルミナ粉砕物等を火炎中に噴射し溶融し、炉体中胴部より炉内に常時、ドライアイスを供給し急冷処理を行い、得られた球状化物を排ガスと共にブロワーによってバグフィルターに搬送し捕集する。火炎の形成は、水素、天然ガス、アセチレンガス、プロパンガス、ブタン等の燃料ガスと、空気、酸素等の助燃ガスを、炉体に設定された燃焼バーナーから噴射して行う。火炎温度は2050〜2300℃程度である。原料粉末供給用のキャリアガスとしては、空気、窒素、酸素、二酸化炭素等が使用される。前記球状アルミナの製造方法において上記火炎温度および急冷処理によるδ相、θ相結晶分率の制御が重要である。
【0029】
また、球状有機顔料の製造方法としては、特開平8−120005号公報に記載の重合条件を適宜選択して所望の平均粒子径を有する有機顔料を得ることができる。
【0030】
耐油層中の球状粒子の含有量については特に限定するものではないが、例えば耐油層全固形分に対して、0.1〜20質量%の範囲で調整されるのが好ましい。球状粒子の含有量が0.1質量%未満の場合は、十分なブロッキング防止効果が得られないおそれがある。20質量%を超える場合は、耐油性の低下をきたすおそれがある他、耐油層塗料の保水度が低下するためトランスファーロールコーターでの塗工適性が低下するおそれがある。
【0031】
本発明では、その効果を損なわない範囲において、増粘剤を併用することも可能である。増粘剤としては、例えばアルカリ可溶性高分子エマルション、カルボキシメチルセルロース等の変性多糖類、アルギン酸ソーダ、変性グアーガム、ポリアクリル酸ソーダ、ポリカルボン酸ソーダ等が挙げられる。
【0032】
次に、本発明でいうアクリル系樹脂とは、(a)エチレン性不飽和カルボン酸含有モノマーを必須成分として含み、(b)(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー、(c)これらのモノマーと共重合可能な他のモノマーから選択される少なくとも1種のモノマーからなる共重合体である。
【0033】
本発明において用いられる(a)エチレン性不飽和カルボン酸含有モノマーとしては、例えば(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、モノアルキルマレイン酸、モノアルキルフマル酸、モノアルキルイタコン酸等が挙げられ、これらのうちから少なくとも1種を用いることが必要である。
【0034】
本発明において用いられる(b)(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーとしては、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル等が挙げられ、これらのうちから少なくとも1種を用いることができる。
【0035】
本発明において用いられる(c)これらのモノマーと共重合可能な他のモノマーとしては、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、(メタ)アクリロニトリル、エチレン、プロピレン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリルレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,2−プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジアリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、ビニルスルホン酸ナトリウム、p−スチレンスルホン酸ナトリウム、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、酸ホスホキシエチル(メタ)アクリレートエタノールアミンハーフ塩、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンスチレン化フェニル硫酸ナトリウム、グリセリンモノアリルエーテルモノスルホコハク酸ナトリウム、2−スルホエチル(メタ)アクリル酸ナトリウム、(メタ)アクリルアミドステアリン酸ナトリウム、n−アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性(メタ)アクリレート、アクロレイン、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、ホルミルスチロール、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、(メタ)アクリロオキシアルキルプロペナール、ジアセトン(メタ)アクリレート、アセトニル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート等が挙げられ、これらのうちから少なくとも1種を用いることができる。
【0036】
本発明において用いられるアクリル系樹脂は公知の乳化重合法によって得ることができる。例えば、所定の反応容器に上記の各種モノマー類、乳化剤および水を仕込み、ラジカル重合開始剤を加え、攪拌下、加温することにより得られる。
【0037】
ラジカル重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、過酸化水素、t−ブチルハイドロオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート等の過酸化物、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス(2−ジアミノプロパン)ハイドロクロライド、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物が挙げられる。なお、重合速度の促進や低温反応を望む場合には、重亜硫酸ナトリウム、塩化第一鉄、アスコルビン酸、ホルムアルデヒドスルホオキシレート塩等の還元剤を前記ラジカル重合開始剤と組合せて(レドックス系重合開始剤)用いることができる。
【0038】
重合開始剤の使用量は、モノマー成分100質量部に対して、通常0.02〜3質量部であるが、好ましくは0.05〜1質量部である。
【0039】
使用する乳化剤としては、特に限定はなく、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、反応性乳化剤が挙げられる。
アニオン性乳化剤としては、オレイン酸カリウム等の脂肪酸金属塩、ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム等のアルキルスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテルリン酸エステル等が挙げられる。
ノニオン性乳化剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。
反応性乳化剤としては、種々の分子量(EO付加モル数の異なる)のポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルスルホン酸アンモニウム、ポリエチレングリコールのモノマレイン酸エステルおよびその誘導体、(メタ)アクリロイルポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル等が挙げられる。
【0040】
乳化剤の使用量は、通常、モノマー成分100質量部に対して、0.1〜10質量部程度使用すればよく、好ましくは0.2〜5質量部である。乳化剤の使用量がこの範囲にあることによって、凝固物を生じることなく、適度な平均粒子径を有するアクリル系樹脂エマルションが得られる。
【0041】
本発明において用いられるアクリル系樹脂は前記のように水媒体中で乳化重合法により得られるが、アクリル系樹脂エマルションの固形分濃度を30〜75質量%、好ましくは40〜65質量%程度として行うことができる。重合反応は単一重合開始剤の場合では通常40〜95℃、好ましくは60〜90℃程度の反応温度で、1〜10時間、好ましくは4〜8時間程度行えばよい。また、レドックス系重合開始剤の場合では反応温度はより低く、通常5〜90℃、好ましくは20〜70℃程度である。モノマーの添加方法としては、一括添加法、分割添加法、連続添加法等で、モノマータップ法、モノマープレ乳化タップ法等の方法で行うことができる。好ましくは連続添加法で、モノマープレ乳化タップ法である。
【0042】
本発明において用いられるアクリル系樹脂エマルションは平均粒子径が0.01〜1.0μmであることが好ましい。平均粒子径がこの範囲にあれば水分散性が良好となる。平均粒子径が0.01μm未満であると、塗工時の機械的安定性が悪くなるおそれがあり、1.0μmを超えるとハイシェア粘度が低く、所望の塗工量が得られなかったり、塗工面にストリーク等の塗工むらが発生するおそれがある。なお、平均粒子径については、乳化剤や重合開始剤の種類および添加量、添加方法、攪拌条件等を適宜設定することにより容易に調整することができる。ここで、エマルションの平均粒子径は光散乱法粒子径分布測定機(HORIBA社製、商品名:LB−550)で測定したものである。
【0043】
本発明の耐油層塗料には該アクリル系樹脂エマルション、増粘剤、変性ポリアミド樹脂や密実型有機フィラーの他に、さらにバインダー、球状粒子以外の顔料などを含んでもよい。また、必要に応じて、分散剤、増粘剤、保水剤、消泡剤、着色剤等の通常用いられている各種助剤が適宜使用できる。
【0044】
本発明において使用できるバインダーとしては、カゼイン、澱粉、変性澱粉、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコールなどの水溶性高分子、またはポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、カルボキシメチルセルロース系樹脂、ポリアミド系樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂等の水分散液が使用できる。
【0045】
本発明に使用できる球状粒子以外の顔料としてはカオリン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、シリカ、アルミノ珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、ホワイトカーボン、ベントナイト、ゼオライト、セリサイト、スメクタイト、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、合成マイカ、二酸化チタン、酸化亜鉛などの無機顔料、さらにはポリイソプレン、ポリネオプレン、ポリブタジエン等のポリジエン類、ポリブテン、ポリイソブチレン、ポリプロピレン等のポリアルケン類、酢酸ビニル、スチレン、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリルアミド、メチルビニルエーテル等のビニル系モノマーの重合体や共重合体類、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、尿素系樹脂、メラミン系樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂等の各種の密実型、中空型、あるいは貫通孔型粒子等の有機顔料が挙げられ、前記顔料の1種又は2種以上を使用することができる。
【0046】
本発明の耐油層の層構成としては、前記紙支持体の少なくとも片面に少なくとも1層の耐油層を設けるものであるが、同じ塗工量を塗工する場合、多層構成とした方が単層構成よりも耐油性は得られやすい。多層構成の場合、各層は同じ構成(組成)でもよいし、異なっていてもよい。
【0047】
本発明において紙支持体に耐油層塗料を塗工する方法としては、特に限定するものではなく、抄紙工程と連続して行なわれる所謂オンマシン方式あるいは紙支持体を一度巻き取って、別途塗工機で耐油層塗料を塗工する所謂オフマシンの何れかで行われる。塗工方式としては、例えばブレードコーター、バーコーター、エアナイフコーター、スリットダイコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、トランスファーロールコーター等が挙げられる。なかでもトランスファーロールコーターが、本発明の特定粒子径の球状粒子を塗工する面で好ましい。なお、ここでいうトランスファーロールコーター方式とは、前計量方式で、紙支持体に耐油層塗料を塗工する方式であり、2本以上のロールとアプリケータロールからなるゲートロールコーターやアプリケータロール上の塗料を巻線バーやロッドにより計量するシムサイザー、ブレードでの計量のブレードメタリングサイズプレスコーター等が挙げられる。塗工については、オンマシンコーティングが生産効率の点で好ましい。
【0048】
本発明の耐油紙は耐油層形成後、その効果を損なわない限りにおいて、平滑化処理を行うことができる。平滑化処理は通常のスーパーキャレンダー、グロスキャレンダー、ソフトキャレンダー等の平滑化処理装置を用いて、オンマシンまたはオフマシンで行われる。なお、本発明の効果を損なわない限りにおいて、耐油層塗工前の紙支持体を平滑化処理することも可能である。
【0049】
紙支持体の表面の平滑度は、特に限定するものではないが、王研式平滑度(JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法 No.5−2:2000に準じて測定)で10〜50秒が好ましい。より好ましくは20〜40秒である。
王研式平滑度が10秒を下回る場合は、十分な耐油性を得るためには耐油層の塗工量を増やす必要があり、操業性、生産効率の面で不利であり、またブロッキングを防止することも困難となる。
王研式平滑度が50秒を超える場合は、球状粒子保持能力が低下して、粉落ち等が発生するおそれがある。また、トランファーロールコーターでの塗工時に十分な塗工量が得られないおそれがあるため好ましくない。
【0050】
耐油層の塗工量についても特に限定するものではないが、たとえば2.5〜10.0g/mの範囲で調整される。耐油層の塗工量が2.5g/m未満の場合は、紙支持体表面のカバーリング性が十分に得られず、満足な耐油性が得られないおそれがある。10.0g/mを超える場合は、球状粒子を用いても満足なブロッキング防止効果が得られないおそれがあるほか、乾燥負荷も大きくなり、生産効率が低下する。
【実施例】
【0051】
以下に実施例および比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、勿論本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、実施例および比較例中の%および部数はそれぞれ質量%、質量部を示す。なお、紙支持体上の塗工量は絶乾質量を示す。
【0052】
<球状粒子Aの製造>〔平均粒子径:10.0μm、真球度:0.9〕
1000Lの水(導電率0.05mS/cm)に、生石灰86kgを入れ、105g/Lの濃度の水酸化カルシウム水性スラリー(消石灰ミルク)を得た。次いで、このスラリーを濃度100g/L、20℃に調整した後、150Lを半回分式反応器に仕込み、周速13m/sでかき混ぜながら、二酸化炭素濃度30容量%のガスを、水酸化カルシウム1kg当たり100容量%二酸化炭素換算で3NL/minの割合で吹き込み、反応液の炭酸化率4%またはその付近に達したところで反応を一時停止し、一次反応中間体を得た(段階1)。
【0053】
上記一次反応中間体に、その水酸化カルシウム換算100質量部に対し、ヘキサメタリン酸ナトリウムを1.5質量部、固形分濃度2%の水溶液にして添加して混合し、次いで周速13m/sでかき混ぜながら、二酸化炭素濃度30容量%のガスを、水酸化カルシウム1kg当たり100容量%二酸化炭素換算で0.3NL/minの割合で吹き込み、炭酸化率15%またはその付近に達したところで反応を停止し、二次反応中間体を得た(段階2)。
【0054】
二次反応中間体に20℃の水150Lを投入し、二次反応中間体を希釈した後、次いで周速13m/sでかき混ぜながら、二酸化炭素濃度80容量%のガスを、水酸化カルシウム1kg当たり100容量%二酸化炭素換算で3.6NL/minの割合で吹き込み、反応を終結させ、三次反応中間体を得た(段階3)。
【0055】
上記三次反応中間体210L、水酸化カルシウム水性スラリー(濃度50g/L)70Lとその水酸化カルシウム換算100質量部に対し1.0質量部のヘキサメタリン酸ナトリウムを固形分濃度2%の水溶液にして添加したものを半回分式反応器に仕込み20℃に調整した後、次いで周速2.6m/sでかき混ぜながら、二酸化炭素濃度30容量%のガスを、水酸化カルシウム1kg当たり100容量%二酸化炭素換算で3NL/minの割合で吹き込み、反応を終結させた(段階4)。
このようにして得られた球状軽質炭酸カルシウムの水性スラリーをフィルタープレスでろ過後脱水を行い、固形分濃度50質量%の脱水ケーキを得、乾燥機にて乾燥後、サンドグラインダーで粉砕処理を行うことで球状粒子Aを得た。この球状粒子Aは平均粒子径10.0μm、真球度0.9である。
【0056】
<球状粒子Bの製造>〔平均粒子径:8.0μm、真球度:0.9〕
球状粒子Aの製造において、三次反応中間体を得た時点で反応を終結し、生成した球状炭酸カルシウム粒子を回収した。この球状粒子Bは平均粒子径8.0μm、真球度0.9である。
【0057】
<球状粒子Cの製造>〔平均粒子径:3.5μm、真球度:0.8〕
SiO基準で22質量%濃度の珪酸ソーダ溶液(A液)と、13質量%濃度の硫酸(B液)とを先端部に混合部を有する二流体ノズルを用いて、pHが9になるように両者を混合した後吐出し、熟成を行う。熟成後のシリカヒドロゲルを硫酸溶液をはったタンクに入れ攪拌しながら、pHが1.0以下になるまで酸処理を行った。酸処理後のヒドロゲルを水洗した後、ヒドロゲルをオートクレーブに移し水に浸漬し180℃の水熱条件化で6時間解膠処理を行った。次に解膠されたヒドロゲルに水を加えSiO濃度を7質量%に調整後、コロイドミルで微粉砕しスラリーを調製した。次いで、このスラリーをアシザワ・ニロ社製SD−25のスプレードライヤーを用いて噴霧(入口温度300℃、出口温度120℃)させて球状シリカを得た。この球状シリカ粒子は平均粒子径3.5μm、真球度0.8である。
【0058】
<球状粒子Dの製造>〔平均粒子径:1.0μm、真球度:0.95〕
球状粒子Aの製造の段階2におけるガス吹き込み量を5.5NL/分の高ガス吹き込み量条件に変えた以外は球状粒子Aの製造と同様にして段階1〜段階3の反応を行い、生成した球状炭酸カルシウムを回収した。この球状粒子Dは平均粒子径1.0μm、真球度0.95である。
【0059】
<球状粒子Eの製造>〔平均粒子径:20.0μm、真球度:0.9〕
球状粒子Aの製造と同様にして三次反応中間体を得た。この三次反応中間体を90L、水酸化カルシウムスラリー(濃度50g/L)250Lとその水酸化カルシウム換算100質量部に対し1.0質量部のヘキサメタリン酸ナトリウムを固形分濃度2%の水溶液にして添加したものを半回分式反応器に仕込み、その他の条件は球状粒子Aの製造と同様にして炭酸カルシウムを製造した。このようにして得られた球状炭酸カルシウムは、平均粒子径20.0μm、真球度0.9である。
【0060】
<実施例1>
(1)耐油層塗料の調製
酸化デンプン(商品名:エースA、王子コースターチ社製)の25%水溶液9.6質量部、カオリン(商品名:ウルトラホワイト90、BASFジャパン社製)の70%水分散液30.0質量部、平均粒子径が10.0μmで短径(DS)と長径(DL)の比(DS/DL)で表される真球度が0.9であるの球状粒子A(軽質軽質炭酸カルシウム)の50%水分散液4.2部、スチレン−ブタジエンラテックス(商品名:X300B、JSR社製)の48%水分散液9.0質量部、コア−シェル型アクリル系耐油剤(商品名:PDX7326、BASFジャパン社製)の38.5%水分散液170.4質量部、スチレン−ブタジエン系密実型有機フィラー(商品名:Nipol V1004、日本ゼオン社製)の50%水分散液8.6質量部、アルカリ可溶性高分子エマルションを主成分とする増粘剤(商品名:ソマレックス270K,ソマール社製)の10%水分散液3質量部を混合撹拌して、固形分濃度42.6質量%の耐油層塗料を調製した。
【0061】
(2)耐油紙の製造
坪量50g/mのセミグラシン原紙(フリーネス195ml・CSF、LBKP100%、塗工する面の王研式平滑度:25秒)の片面に、抄造パート後のゲートロールコーターにて、上記耐油層塗料の調製で得られた固形分濃度42.6質量%の塗料を2.7g/mオンマシン塗工後乾燥して耐油紙を得た。
【0062】
<実施例2>
実施例1の耐油層塗料の調製において、前記球状粒子A(軽質炭酸カルシウム)の50%水分散液の使用量を20質量部に変更した以外は実施例1と同様にして固形分濃度43.1質量%の耐油層塗料を調製した。この耐油層塗料を用いて、実施例1と同様にして、セミグラシン原紙の片面に2.8g/mオンマシン塗工後乾燥して耐油紙を得た。
【0063】
<実施例3>
実施例1の耐油層塗料の調製において、前記球状粒子A(軽質炭酸カルシウム)の50%水分散液の使用量を1質量部に変更した以外は実施例1と同様にして固形分濃度42.5質量%の耐油層塗料を調製した。この耐油層塗料を用いて、実施例1と同様にして、セミグラシン原紙の片面に2.7g/mオンマシン塗工後乾燥して耐油紙を得た。
【0064】
<実施例4>
実施例1の耐油層塗料の調製において、前記球状粒子A(軽質炭酸カルシウム)の50%水分散液の代わりに、平均粒子径が8.0μmで短径(DS)と長径(DL)の比(DS/DL)で表される真球度が0.9である球状粒子B(軽質炭酸カルシウム)の50%水分散液4.2質量部を使用したした以外は、実施例1と同様にして固形分42.6質量%の耐油層塗料を調製した。この耐油層塗料を用いて、実施例1と同様にして、セミグラシン原紙の片面に2.8g/mオンマシン塗工後乾燥して耐油紙を得た。
【0065】
<実施例5>
実施例1の耐油層塗料の調製において、前記球状粒子A(軽質炭酸カルシウム)の50%水分散液の代わりに、平均粒子径が3.5μmで、短径(DS)と長径(DL)の比(DS/DL)で表される真球度が0.8である球状シリカ粒子Cの20%水分散液10.5質量部を使用した以外は実施例1と同様にして、固形分41.5質量%の耐油層塗料を調製した。この耐油層塗料を用いて、実施例1と同様にして、セミグラシン原紙の片面に2.6g/mオンマシン塗工後乾燥して耐油紙を得た。
【0066】
<比較例1>
実施例1の耐油層塗料の調製において、前記球状粒子A(軽質炭酸カルシウム)を使用しなかった以外は実施例1と同様にして、固形分42.5質量%の耐油層塗料を調製した。この耐油層塗料を用いて、実施例1と同様にして、セミグラシン原紙の片面に2.7g/mオンマシン塗工後乾燥して耐油紙を得た。
【0067】
<比較例2>
実施例1の耐油層塗料の調製において、前記球状粒子A(軽質炭酸カルシウム)の50%水分散液の代わりに、平均粒子径が1.0μmで、短径(DS)と長径(DL)の比(DS/DL)で表される真球度が0.95である球状粒子D(軽質炭酸カルシウム)の50%水分散液4.2質量部を使用した以外は実施例1と同様にして、固形分42.6質量%の耐油層塗料を調製した。この耐油層塗料を用いて、実施例1と同様にして、セミグラシン原紙の片面に2.7g/mオンマシン塗工後乾燥して耐油紙を得た。
【0068】
<比較例3>
実施例1の耐油層塗料の調製において、前記球状粒子A(軽質炭酸カルシウム)の50%水分散液の代わりに、平均粒子径が20.0μmで、短径(DS)と長径(DL)の比(DS/DL)で表される真球度が0.9である球状粒子E(軽質炭酸カルシウム)の50%水分散液4.2質量部を使用した以外は実施例1と同様にして、固形分42.6質量%の耐油層塗料を調製した。この耐油層塗料を用いて、実施例1と同様にして、セミグラシン原紙の片面に2.7g/mオンマシン塗工後乾燥して耐油紙を得た。
上記、実施例、比較例で得られた8種類の耐油紙について、評価結果を表1にまとめた。
【0069】
(耐油性)
平面部の耐油度の評価基準:TAPPI UM−557法(キット法)によって塗工面を測定した。耐油紙として使用可能なキット耐油度は6級以上であることが好ましい。
【0070】
(耐ブロッキング性評価)
耐油紙の耐油面−反対面が接触するように重ね合わせて、23℃50%RH環境下で2.0kgf/cm加圧して、24時間後のブロッキング度合いを評価した。
耐油紙の耐油面−耐油面が接触するように重ね合わせて、23℃50%RH環境下で2.0kgf/cm加圧して、24時間後のブロッキング度合いを評価した。
<耐油性評価基準>
1 剥離せずに基材が破れる
2 剥離可能であるが重い
3 軽い力で剥がれる
4 微小な刺激で剥がれる
5 ブロッキングが見られない
【0071】
【表1】

【0072】
上記実施例結果が示すように、本発明のアクリル系樹脂と特定粒子径の球状粒子とを耐油層に含有させることにより、フッ素系化合物を用いないで環境面での問題の少ない食品用耐油紙を、ブロッキングの発生を伴わずに提供することができる。また、トランスファーロールコーター方式で塗工して、高い生産性と高い耐油性さらには耐ブロッキング効果を備えた耐油紙を製造することができる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明による耐油紙は、フッ素樹脂代替の食品包装用耐油紙に使用でき、ファーストフードなどの揚げ物を包装する容器やデパート、コンビニエンスストアなどでのテイクアウト食材の包装容器等に使用可能であり、実用上極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙支持体の少なくとも片面に少なくとも1層のアクリル系樹脂を含有する耐油層を設けた耐油紙であって、該耐油層塗料に平均粒子径が3.0〜15.0μmの球状粒子を少なくとも1種含有させたことを特徴とする耐油紙。
【請求項2】
前記球状粒子の短径(DS)と長径(DL)の比(DS/DL)で表される真球度が0.7以上であることを特徴とする請求項1に記載の耐油紙。
【請求項3】
前記球状粒子を耐油層全固形分に対して、0.1〜20質量%含有させたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の耐油紙。
【請求項4】
前記球状粒子が軽質炭酸カルシウムを含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の耐油紙。
【請求項5】
前記紙支持体表面のJAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法 No.5−2:2000に準じて測定した平滑度(王研式)が10〜50秒であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の耐油紙。
【請求項6】
前記耐油層の塗工量が2.5〜10.0g/mであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の耐油紙。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の耐油紙において、前記耐油層を構成する耐油層用塗料をトランスファーロールコーターで塗工することを特徴とする耐油紙の製造方法。
【請求項8】
前記耐油層用塗料をオンマシンコーターで塗工することを特徴とする請求項7に記載の耐油紙の製造方法。

【公開番号】特開2013−112907(P2013−112907A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260133(P2011−260133)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000122298)王子ホールディングス株式会社 (2,055)
【出願人】(000191320)王子エフテックス株式会社 (79)
【Fターム(参考)】