説明

耐湿性に優れたプラズマディスプレイパネル保護膜用蒸着材

【課題】周期表第2A族に属する元素の酸化物からなるPDP用蒸着材の耐湿性を改善し、電子ビーム蒸着法を使用して基板上に保護膜を成膜するためのターゲット材として使用する焼結体であって、得られた保護膜の密度及び耐スパッタ性を低下させることなく、優れた膜特性、例えば、PDP用保護膜として使用した場合の放電特性などを向上させることが可能な焼結体及びその製造方法、並びにこの焼結体をターゲット材として得られたPDP用保護膜を提供することである。
【解決手段】周期表第2A族に属する元素の酸化物からなる相対密度が90%以上の焼結体で、平均粒子径が100μm以上であるPDP保護膜用蒸着材であり、また、それらの酸化物単体および、それらの2つ以上の組合せによる混合物あるいは固溶体からなるPDP保護膜用蒸着材で、更に、有機シリケートで表面処理したことを特徴とするPDP保護膜用蒸着材である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばプラズマディスプレイパネル(以下、「PDP」という場合がある)保護膜を電子ビーム蒸着法、イオンプレーティング法又はスパッタリング法などの真空蒸着法を使用して製造する際に、蒸着源として使用される耐湿性に優れたPDP保護膜用蒸着材及びその製造方法、並びにこの蒸着材を使用して得られるPDP保護膜に関するものである。
【背景技術】
【0002】
放電発光現象を利用したPDPは、大型化しやすい平面ディスプレイとして開発が進められている。PDPは、電極構造の違いから、放電空間に金属電極が露出している直流型(DC型)と、金属電極が誘電体で覆われている交流型(AC型)とに大別される。
【0003】
AC型のPDPでは、イオン衝撃のスパッタリングにより誘電体層表面が変質して放電電圧が上昇することを防止するために、一般に、この誘電体上に保護膜が形成されている。この保護膜は、低い放電電圧を有し、耐スパッタリング性に優れていることが要求される。
【0004】
かかる要求を満足する保護膜として、従来から、酸化マグネシウム(以下、「MgO」という場合がある)膜が使用されている。MgO膜は耐スパッタリング性に優れ、かつ、二次電子放出係数の高い絶縁体であるため、放電開始電圧を下げることができ、PDPの長寿命化に寄与する。
【0005】
現在、PDP用の保護膜は、MgOをターゲット材とする電子ビーム蒸着法により誘電体上に形成されることが一般的である。しかしながら、更なるPDPの省電力化が求められており、この問題を解決するためには、放電開始電圧を更に下げる必要があり、従来よりも低い放電電圧を有し、二次電子放出係数が高い材料を開発することが必要である。
【0006】
例えば、特許文献1には、実用的な低い放電電圧を得るために、放電ガスに接するPDP保護膜は、できるだけイオンに対する二次電子放出係数の高い物質が良いことが記載されている。PDP保護膜にはMgOが主に用いられているが、他の周期表第2A族に属する元素の酸化物やそれらの組合せによる混合物、あるいは固溶体の方がより高い二次電子放出係数を持つので、これらの物質を用いることでPDPの放電電圧特性を改善することが期待できる。しかし、MgO以外の周期表第2A族に属する元素の酸化物は、それ自体が大気中の水分と反応して水酸化物となる傾向が強く、良好な酸化物薄膜となり難く実用化が困難である。そこで、放電ガスに接する周期表第2A族に属する元素の酸化物からなるPDP保護膜を真空蒸着法で形成する際、蒸着直前に蒸着装置内部で、蒸着源の周期表第2A族に属する元素の酸化物を、蒸着するために必要な温度以下かつ周期表第2A族に属する元素の酸化物が酸化物と水に解離し水の解離圧が蒸着装置内の真空度以上となるのに必要な温度以上で加熱した後、蒸着するために必要な温度以上に加熱し、周期表第2A族に属する元素の酸化物からなる保護層を成膜する方法を提示している。しかし、これは、PDP保護膜用蒸着材自体の耐湿性の改善には至っていない。
【0007】
また、特許文献2には、駆動電圧が低く、また良好な耐湿性を有するPDP装置を提供することが記載されている。放電電圧は放電面の材料で決まることとなるので、放電電圧が小さくなる材料が好ましく、スパッタに強いことも必要である。このような観点から、従来の放電面材料は、例えば、MgOやMgO、CaO、BaO等の混合酸化物が使用されている。これら放電面を形成する誘電体材料は、割合に放電電圧が低く、耐スパッタ性が良好で好ましい。しかし、上記材料は耐湿性に乏しいので、工程中の雰囲気に留意する必要がある。また、形成された保護膜は炭酸ガスや水との反応性が高く、化学的に活性であるため、水や炭酸ガスを吸着し、経時的に水酸化マグネシウム又は炭酸マグネシウムに変化するため、未だに満足するものが得られていない。
【0008】
特許文献3には、相対密度が95%以上のMgO焼結体であって、平均結晶粒径が0.3〜100μmの結晶粒子を有するMgOマトリックス中に、アルカリ土類金属酸化物粒子が0.5〜50体積%分散されたMgO蒸着材が開示されている。しかし、周期表第2A族に属する元素の酸化物の蒸着材自体の耐湿性を改善することは行っておらず未だ満足するものではない。
【0009】
【特許文献1】特開平05−211031号公報
【特許文献2】特開平05−290743号公報
【特許文献3】特開2000−290062号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、周期表第2A族に属する元素の酸化物からなるPDP用蒸着材の耐湿性を改善することである。
例えば、電子ビーム蒸着法を使用して基板上に保護膜を成膜するためのターゲット材として使用する焼結体であって、得られた保護膜の密度及び耐スパッタ性を低下させることなく、優れた膜特性、例えば、PDP用保護膜として使用した場合の放電特性などを向上させることが可能な焼結体及びその製造方法、並びにこの焼結体をターゲット材として得られたPDP用保護膜を提供することである。
【0011】
低い放電電圧を得るために、放電ガスに接する保護層は、できるだけイオンに対する二次電子放出係数の高い物質がよい。MgOは、安定で比較的高い二次電子放出係数を持つが、MgO以外の周期表第2A族に属する元素の酸化物単体および、それらの2つ以上の組合せによる混合物あるいは固溶体の方がより高い二次電子放出係数を持ち、これらを用いることで、駆動電圧の低下や、駆動電圧の低下に起因する寿命を改善することが可能である。しかし、MgO以外の周期表第2A族に属する元素の酸化物は、大気中で水分と反応して水酸化物となり易く、この蒸着材を成膜した場合、以下のような問題がある。
【0012】
第一に、大面積のガラス誘電体層に対して酸化物膜を均一に生成させることが困難であり、膜厚分布が均一とならない。膜厚の均一性が十分でない酸化物膜を成膜したガラス誘電体層をPDPに組み込んだ場合は、電気的特性、例えば放電開始電圧や駆動電圧の上昇や変動などの問題が生じる。
【0013】
第二に、PDP保護膜用蒸着材の原料である周期表第2A族に属する元素の酸化物は、吸蔵されている気体や水分の量が多い。このため蒸着材を減圧装置内に設置すると、減圧開始から蒸着可能な真空度に到達するまでの時間が長くなるという問題がある。さらに、電子ビーム蒸着等による加熱時に蒸着材中に吸蔵された気体の離脱が生じ、蒸着操作条件を不安定にするとともに、減圧下で離脱する気体により基板が汚染され、その結果、清浄な保護膜を成膜できないという問題がある。
【0014】
第三に、周期表第2A族に属する元素の酸化物を蒸着材として形成した保護膜は炭酸ガスや水との反応性が高く、化学的に活性であるため、水や炭酸ガスを吸着し、経時的に水酸化マグネシウム又は炭酸マグネシウムに変化する。したがって、製造工程で、大気中にさらされる工程時間を厳密に管理する必要があるなど取扱が煩雑である。
【0015】
従来、PDP保護膜用蒸着材はMgOが使用されているが、PDPの高性能化に伴い、PDPメーカーの要求する技術レベルが高くなり、PDP保護膜用蒸着材もさらなる改良が望まれている。例えば、PDPでは発光効率改善のため、高キセノン化が図られており、それに伴い、放電電圧がアップし、消費電力がアップする。PDPの低消費電力化が現在の最大の課題であり、そのために放電電圧の低い保護膜材料の開発が行われている。
高い二次電子放出係数を持つ周期表第2A族に属する元素の酸化物を蒸着材に用いた場合、MgO>CaO>SrO>BaOの順にバンドギャップが小さくなり、放電電圧が低下する。しかしながら、この順に大気中での安定性(耐湿性
COとの反応性)も低下し、実用的なレベルに至っていない、いう問題を解決することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、上記目的を達成すべく、電子ビーム蒸着法のターゲット材として使用される焼結体の出発原料として、表面の反応性が低い電融品を使用することおよびPDP保護膜用蒸着材自体の表面処理を行うことにより耐湿性を改善した。
【0017】
例えば、周期表第2A族に属する元素の酸化物からなる相対密度が90%以上の焼結体で、平均粒子径が100μm以上であるPDP保護膜用蒸着材であり、周期表第2A族に属する元素の酸化物が、好ましくは、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウムであるPDP保護膜用蒸着材である。
また、それらの酸化物単体および、それらの2つ以上の組合せによる混合物あるいは固溶体からなるPDP保護膜用蒸着材でも良く、更に、周期表第2A族に属する元素の酸化物の80重量%以上が電融品であることを特徴とするPDP保護膜用蒸着材であることが好ましい。
更に、有機シリケートでPDP保護膜用蒸着材の表面処理したことを特徴とするPDP保護膜用蒸着材で有機シリケートが、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシランであるPDP保護膜用蒸着材を発明した。
【0018】
本発明者らは、以上の知見に基づいて、周期表第2A族に属する元素の酸化物単体および、それらの2つ以上の組合せによる混合物、あるいは固溶体からなる焼結体の出発原料として、電融品の粉砕品を用いることが好ましく、焼結体を有機シリケートで表面処理することが更に好ましく、蒸着材自体の耐湿特性を向上することにより、PDP保護膜として満足すべき特性が得られるとの結論に達した。
【発明の効果】
【0019】
本発明の蒸着材は、高い二次電子放出係数を持つ、周期表第2A族に属する元素の酸化物を含有させることにより放電開始電圧を下げることができ、PDPの動作電圧は、この保護層の二次電子放出係数に依存するため低くすることができる。これらの周期表第2A族に属する元素の酸化物は、耐湿性が低く、雰囲気中の水分を吸着し、変質し易く、結果的に不安定な放電特性となるという問題があったが、本発明品の蒸着材は、この問題を改善することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明においては、従来、一般に使用されていた合成MgOだけではなく、電融MgOや周期表第2A族に属するMgO以外の元素酸化物を使用する。
【0021】
周期表第2A族に属する元素の酸化物は、MgO、CaO、SrO、BaOの順に融点が低く、また、水との反応性も激しくなるが、二次電子放出係数は高くなる傾向がある。この点を考慮すると、水との反応性(耐湿性)においてはMgOが最も優れているが、PDPの電気特性を向上させ、消費電力を低下させるためには、これら周期表第2A族に属するMgO以外の元素の酸化物材料を安定して使用できるように、耐湿性を改良させることが考えられる。
【0022】
したがって、MgOに比べて耐湿性が悪いという理由から、周期表第2A族に属するMgO以外の元素の酸化物の含有量を減らすのではなく、その高い二次電子放出係数を生かし、積極的に含有量を増やしつつ、以下に述べるように、物性を規定することにより、従来のPDP保護膜用蒸着材よりもターゲット材として優れた周期表第2A族に属する元素の酸化物蒸着材を得ることができる。
【0023】
さらに、得られた蒸着材自身の表面を有機シリケート等で表面処理すると耐湿性をさらに改善することができる。
【0024】
ここで、PDP保護膜用蒸着材の原料は、周期表第2A族に属する元素、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Raからなる酸化物の群から選択される成分を1種以上含むものである。好ましくは、Mg、Ca、Sr、Ba、からなる酸化物である。
【0025】
これらの周期表第2A族に属する元素の酸化物原料は、合成品をそのまま使用することもできるが、電融により得られた電融品を用いることにより、耐湿性を向上させることができる。
【0026】
また、場合により、二次電子放出係数と耐湿性の兼ね合いにより、混合割合を調節して使用することもできる。
【0027】
例えば、耐湿性においてMgOよりも劣るが、二次電子放出係数は、MgOよりも優れていることからCaOを積極的に使用するために、
蒸着材の原料として、耐湿性を向上させるために電融により得られたMgO 60質量%と2次電子放出係数を向上させるために合成CaO
40質量%を混合して使用、
耐湿性を向上させるために電融により得られたMgO 60質量%と2次電子放出係数を向上させるために合成CaO 30質量%と耐湿性を向上させるために電融により得られた電融CaO
10質量%とを混合して使用、
耐湿性を向上させるために電融により得られたMgO 60質量%と2次電子放出係数を向上させるために合成CaO 20質量%と耐湿性を向上させるために電融により得られた電融CaO
20質量%とを混合して使用、
耐湿性を向上させるために電融により得られたMgO 60質量%と2次電子放出係数を向上させるために合成CaO 10質量%と耐湿性を向上させるために電融により得られた電融CaO
30質量%とを混合して使用、
耐湿性を向上させるために電融により得られたMgO 60質量%と2次電子放出係数と耐湿性を向上させるために電融により得られた電融CaO
40質量%とを混合して使用、
して蒸着材を作製することができる。
【0028】
蒸着材の原料として電融品を含有する蒸着材は、合成原料100質量%品に比べ耐湿性に優れている。
耐湿性向上のためには、蒸着材の原料として電融品を60質量%以上含むことが必要であり、好ましくは、電融品の含有量が合計で80質量%以上さらに好ましくは、電融品100質量%である。
【0029】
また、成膜後の保護膜の密度を低下させず、かつ、蒸着速度を向上させるためには、焼結体の相対密度が90%以上であることが必要であり、好ましくは95%以上、より好ましくは、98%以上であり、平均粒子径が100μm以上であることが必要である。
【0030】
本発明の焼結体は、以下のようにして製造することができる。
まず、電融法により製造されたMgO粉末に対し、電融法により製造されたCaO粉末を所定の割合で混合する。混合は、ポットミルでアルコール溶媒中10〜30時間、鉄芯入りナイロンボール(直径10〜20mm)を入れて粉砕混合する。
原料として用いる周期表第2A族に属する元素は、酸化物、硝酸塩、炭酸塩、硫酸塩、水酸化物、亜硫酸塩、及びハロゲン化物などの形態で用いることができる。自然乾燥後、熱風乾燥機で100〜130℃強熱乾燥する。
【0031】
次に、湿式粉砕混合、乾燥して調整した原料にバインダーを混合する。この混合工程は、例えば、パワーニーダー、攪拌ミルなどを使用して実施される。バインダーとしては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレングリコール、CMC、PVA、ポリビニルブチラールなどが使用される。バインダーの添加量は、混合粉末の総量に対して、1〜10質量%とすることが好ましい。
【0032】
次いで、バインダーを添加混合した粉末粒子を造粒する。まず、バインダーを添加混合した粉末を乾燥させ、解砕機等を用いて造粒し、顆粒粉末を得る。スプレードライヤーを用いて顆粒粉末を得ても良い。顆粒粉末は流動性に優れるため、続く成形工程における金型への充填性が向上する。この顆粒粉末の平均粒径は、0.8mm以下とすることが好ましい。
【0033】
次に、得られた顆粒粉末を所定の金型に投入して成型する。成型には例えば一軸プレス装置などを使用することができる。成型圧は、得られる成形体の相対密度を調整するために、例えば、100〜300MPaに設定することが好ましい。さらに好ましい成型圧は、150〜250MPaである。
【0034】
次に、得られた成形体を焼成し、本発明の焼結体を得る。焼成雰囲気は、大気中、ガス炉で、焼成温度は1500〜1700℃、焼成時間は、3〜5時間にそれぞれ設定することが好ましい。
得られた焼結体は、PDP用保護膜を成膜するためのターゲット材として使用することができる。
【0035】
得られた蒸着材は更に、有機シリケートで表面処理して、焼結体の耐湿性を改善することができる。有機シリケートは、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン等を使用することができ、好ましくはメチルトリメトキシシランである。
【0036】
得られた焼結体を密閉できる容器に対して、40〜80体積%を占めるように充填する。そこに有機シリケートを100〜1000ppm添加し、1〜30時間静置する。密閉容器は、20〜200℃に保持することが好ましい。更に好ましくは、有機シリケートの沸点以上の温度で保持することである。静置することにより、気相で蒸着材の表面に有機シリケート層が吸着するため、焼結体同士の衝突によってエッジ欠けが起ったり、亀裂が生じたりすることなく表面処理することができる。
【0037】
この焼結体をターゲット材として使用する成膜方法としては、電子ビーム蒸着法、イオン照射蒸着法、又はスパッタリング法などの真空蒸着法をあげることができ、特に電子ビーム蒸着材は好適である。
【実施例】
【0038】
本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0039】
周期表第2A族に属する元素の酸化物からなる焼結体の製造
[実施例1]
電融法により製造されたMgO粉末60重量%と電融法により製造されたCaO粉末40重量%をポットミルでアルコール溶媒中24時間、鉄芯入りナイロンボール(直径約15mm)を入れて粉砕した。
自然乾燥後、熱風乾燥機で120℃強熱乾燥し、次いでPK型パワーニーダー(ダルトン社製)、回転数250rpmで5分間、バインダー(商品名:メトローズ、信越化学社製)を6質量%添加しながら造粒した。
次いで、造粒粉末をプレス機(菅原精機製)で、成形圧力200MPaで成形したのち、ガス炉で、大気中1650℃で4時間焼成し、5mm×3mm×2mmの焼結体を得た。この焼結体の耐湿性の評価を表1に示す。
【0040】
耐湿性の評価は、焼結体を秤量し、これを温度40℃、相対湿度85%RHの恒温恒湿器に24時間静置し、静置後の焼結体の重量を測定し、重量増加率から耐湿性を相対評価した。
【0041】
[実施例2]
電融法により製造されたMgO粉末と電融法により製造されたCaO粉末と市販の合成CaO粉末との混合割合を、電融MgO:電融CaO:合成CaO=60:30:10(質量比)とする以外は、実施例1と同様にして、焼結体を作製した。この焼結体の耐湿性の評価を表1に示す。
【0042】
[実施例3]
電融法により製造されたMgO粉末と電融法により製造されたCaO粉末と市販の合成CaO粉末との混合割合を、電融MgO:電融CaO:合成CaO=60:20:20(質量比)とする以外は、実施例1と同様にして、焼結体を作製した。この焼結体の耐湿性の評価を表1に示す。
【0043】
[実施例4]
電融法により製造されたMgO粉末と電融法により製造されたCaO粉末と市販の合成CaO粉末との混合割合を、電融MgO:電融CaO:合成CaO=60:10:30(質量比)とする以外は、実施例1と同様にして、焼結体を作製した。この焼結体の耐湿性の評価を表1に示す。
【0044】
[比較例1]
電融法により製造されたMgO粉末と市販の合成CaO粉末との混合割合を、電融MgO:合成CaO=60:40(質量比)とする以外は、実施例1と同様にして、焼結体を作製した。この焼結体の耐湿性の評価を表1に示す。
【0045】
[比較例2]
電融法により製造されたMgO粉末と市販のSrCO粉末を酸化物換算で混合割合を、電融MgO:合成SrO=60:40(質量比)とする以外は、実施例1と同様にして、焼結体を作製した。この焼結体の耐湿性の評価を表1に示す。
【0046】
[比較例4]
電融法により製造されたMgO粉末と市販のBaCO粉末を酸化物換算で混合割合を、電融MgO:合成BaO=60:40(質量比)とする以外は、実施例1と同様にして、焼結体を作製した。この焼結体の耐湿性の評価を表1に示す。
【0047】
焼結体の表面処理
[実施例5〜11]
実施例1〜4、比較例1〜3で得られた焼結体を更に、有機シリケート(メチルトリメトキシシラン)で表面処理して、実施例5〜11とした。
【0048】
表面処理する焼結体を密閉できる容器に対して、40〜80体積%を占めるように充填した。そこに有機シリケートを500ppm添加し、静置して120℃で20時間静置した。密閉容器を静置することにより、有機シリケート(メチルトリメトキシシラン)が焼結体の表面に吸着するため焼結体同士の衝突によってエッジが欠けたり、亀裂が生じたりすることなく表面処理することができた。これらの焼結体の耐湿性の評価を表2に示す。
【0049】
【表1】

◎:吸湿性 極小、○:吸湿性
小、×:吸湿性 大
【0050】
【表2】

◎:吸湿性 極小、○:吸湿性
小、×:吸湿性 大
【0051】
表1の結果から、電融法により製造された単結晶CaO粉末の含有量を増加させ、市販のCaO粉末の含有量を減少させた焼結体は、耐湿特性が向上しており、PDP保護膜用蒸着材として均一な酸化物膜を生成することができ好適に使用できる。
また、MgOよりも二次電子放出係数が高い周期表第2A族に属する元素の酸化物成分を多く含有させることにより、PDP保護膜自体の消費電力を下げることに効果的である。
【0052】
また、表1に示すように、比較例1〜3は、電融品以外の市販品を焼結体の原料に使用すると、実施例1〜4の焼結体と比べて、耐湿性が低下していることがわかるが、表2より、有機シリケートで表面処理を施すことによって耐湿性を改善することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周期表第2A族に属する元素の酸化物からなる相対密度が90%以上の焼結体であって、平均粒子径が100×10-6m以上であるプラズマディスプレイパネル保護膜用蒸着材。
【請求項2】
周期表第2A族に属する元素の酸化物が、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウムである請求項1記載のプラズマディスプレイパネル保護膜用蒸着材。
【請求項3】
周期表第2A族に属する元素の酸化物単体および、それらの2つ以上の組合せによる混合物、あるいは固溶体からなる請求項1又は2記載のプラズマディスプレイパネル保護膜用蒸着材。
【請求項4】
周期表第2A族に属する元素の酸化物の80質量%以上が電融品であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のプラズマディスプレイパネル保護膜用蒸着材。
【請求項5】
有機シリケートで表面処理したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載のプラズマディスプレイパネル保護膜用蒸着材。
【請求項6】
上記有機シリケートが、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシランである請求項5記載のプラズマディスプレイパネル保護膜用蒸着材。

【公開番号】特開2008−91074(P2008−91074A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−267883(P2006−267883)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000108764)タテホ化学工業株式会社 (50)
【Fターム(参考)】