説明

耐湿性を備えたシリカ系粒子とその製造方法、該粒子を含む半導体封止用樹脂組成物、および該樹脂組成物により塗膜を形成された基材

【課題】内部に空洞を有するシリカ系粒子の圧縮強度および耐湿性を向上することで、高温高湿条件下において比誘電率の変化量および誘電正接の変化量が殆どない塗膜を形成できる半導体封止用樹脂組成物、および高い耐湿性を長時間維持できる基材を提供する。
【解決手段】シリカ系粒子は無孔質の外殻シリカ層の内部に空洞を有し、空隙率が20〜95体積%の範囲にあり平均粒子径が0.1〜50μmの範囲にある。シリカ系粒子の空洞は負圧であり、133hPa以下である。シリカ系粒子の圧縮強度は0.1〜200kgf/mm2の範囲にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に空洞を有するシリカ系粒子を構成する外殻シリカ層に存在する細孔を封止してなり、圧縮強度が強く、耐湿性に優れたシリカ系粒子とその製造方法に関する。さらに、該シリカ系粒子を充填材として熱硬化性樹脂に混合してなる半導体封止用樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
シリカ系粒子には種々の形状、大きさの粒子が知られており、その用途も多岐に亘っている。
シリカ系多孔質粒子の製造方法や無機酸化物粒子の表面をシリカ系被膜で被覆する方法は、今日に至るまで数多く提案されている。
【0003】
たとえば、特許文献1(特開昭61−270201号公報)には、平均粒子径が2500Å以下の一次粒子を含むコロイド液を噴霧乾燥して平均粒子径が1〜20μmの無機酸化物粒子(真球状シリカ粉末など)を製造する方法が開示されている。
また、特許文献2(特開平6−192593号公報)には、無機粒子の水性懸濁液に珪酸塩溶液と酸とを添加し、さらに該混合懸濁液を超音波振動の影響下に晒すことにより、前記無機粒子の表面を非晶質シリカで被覆する方法が開示されている。
さらに、特許文献3(特開2002−160907号公報)は、平均粒子径が2〜250nmの無機酸化物微粒子を含むコロイド液を噴霧乾燥して得られる平均粒子径が1〜100μmの無機酸化物微粒子集合体の外表面を、化学式RSi(OR′)4−nで表される有機ケイ素化合物の加水分解物からなるシリカ系層で被覆してなる球状多孔質粒子が開示されている。
【0004】
特許文献4(特開2005−206436号公報)には、平均粒子径が0.5〜8μm、球形度が0.85以上、平均中空率が20〜70体積%の非晶質球状シリカ中空粉体とその製造方法が開示されており、強度、軽量性、断熱性、低誘電特性等に優れていることが開示されている。
しかしながら、前記非晶質球状シリカ中空粉体は、比表面積が40m/g以上、平均粒子径が10μm以下のシリカ原料粉末を高温火炎中に供給して球状化・中空化させて得られるが、平均粒子径の約5倍の粒子径を有する粒子が存在し、粒子径分布が不均一で、用途に制限があり、粒子径をより均一にするにはシリカ原料粉末の粒子径分布をより均一にする必要があり、また、粒子表面に微細粒子が融着した粒子が得られやすく、表面の滑らかさを要求される用途には不向きであった。
【0005】
さらに、特許文献5(特開平4−104907号公報)には、アルカリ金属ケイ酸塩水溶液を霧化し、100〜500℃の気流中へ導入してガラスバルーンとし、アルカリ金属の除去量を調節することにより、シリカバルーンの細孔径を制御したシリカバルーンの製造方法が開示されている。このとき、霧化する方法としては噴霧乾燥、超音波振動が採用されている。
【0006】
しかしながら、本願出願人が噴霧乾燥法に準拠して試験をした結果、アルカリ金属の除去工程でガラスバルーンが一部溶解し、所望のシリカバルーンを効率よく得ることが困難であった。また、得られるシリカバルーンは細孔を有する多孔質のシリカバルーンのみであり、内部に空洞を有する無孔質の粒子は得ることができなかった。
しかし、これらの特許文献には、無機酸化物粒子の表面をシリカ系物質で被覆する方法が開示されているものの、シリカ系多孔質粒子の表面に存在する細孔を封止する方法、さらに詳しくはシリカ系多孔質粒子の内部に存在する細孔はそのまま残し、粒子表面に存在する細孔のみを封止する方法については、何ら記載されていない。
【0007】
無機酸化物微粒子を充填材として混合した半導体封止材用樹脂組成物についても、数多くの提案がなされている。例えば、特許文献6(特開2002−37620号公報)には、有機ケイ素化合物を加水分解、縮合させて得られたポリオルガノシロキサン粒子の焼成体からなる真球状シリカ粒子集合体を混合した半導体封止材用樹脂組成物が開示されているが、充填材としてシリカ系多孔質粒子を使用することについては、何ら記載されていない。
【0008】
また、特許文献7(特開2001−220496号公報)には、ゾルゲル法から得られた多孔質シリカ粒子をエポキシ樹脂に混合した半導体封止材用樹脂組成物が開示されている。しかし、この多孔質シリカ粒子は、外部から浸入する水分をトラップすることを目的として使用されているので、その粒子表面に存在する細孔は封止されていない。
【0009】
さらに、特許文献8(特開2010−155750号公報)には、一次粒子を含むコロイド液を噴霧乾燥して平均粒子径が1〜20μmの無機酸化物粒子(真球状シリカ粉末など)に珪酸や有機ケイ素化合物を加水分解・縮合させて、シリカ系多孔質粒子の内部に存在する細孔はそのまま残し、粒子表面に存在する細孔のみを封止する方法について開示されているが、封止したシリカ系粒子の耐湿性が不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開昭61−270201号公報
【特許文献2】特開平6−192593号公報
【特許文献3】特開2002−160907号公報
【特許文献4】特開2005−206436号公報
【特許文献5】特開平4−104907号公報
【特許文献6】特開2002−37620号公報
【特許文献7】特開2001−220496号公報
【特許文献8】特開2010−155750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、内部に空洞を有するシリカ系粒子の圧縮強度および耐湿性を向上することで、高温高湿条件下において比誘電率の変化量および誘電正接の変化量が殆どない塗膜を形成できる半導体封止用樹脂組成物、および高い耐湿性を長時間維持できる基材を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、以下を要旨とするものである。
1. 無孔質の外殻シリカ層の内部に空洞を有し、空隙率が20〜95体積%の範囲にあり平均粒子径が0.1〜50μmの範囲にあることを特徴とするシリカ系粒子。
2. 前記シリカ系粒子の空洞が負圧である上記(1)に記載のシリカ系粒子。
3. 前記空洞の負圧が133hPa以下である上記(2)に記載のシリカ系粒子。
4. 前記シリカ系粒子の圧縮強度が、0.1〜200kgf/mm2の範囲にあることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載のシリカ系粒子。
5. 前記シリカ系粒子が、温度25℃、湿度90%の空気雰囲気下に7日間放置した時の吸湿率(重量変化率)が0.1%以下である上記(1)〜(4)に記載のシリカ系粒子。
【0013】
6. 下記工程(a)〜(d)を順次実施することを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれに記載のシリカ系粒子の製造方法。
(a)珪酸アルカリ水溶液を熱風気流中に噴霧乾燥してシリカ系粒子前駆体粒子を調製する工程
(b)シリカ系粒子前駆体粒子を酸水溶液に浸漬し、アルカリを除去する工程
(c)水熱処理する工程
(d)乾燥・加熱処理する工程
7. 工程(b)と工程(c)の間で下記工程(c′)を実施する上記(6)に記載のシリカ系粒子の製造方法。
(c′)乾燥・加熱処理する工程
8. 工程(c)の水熱処理温度が、180〜350℃である上記(6)または(7)に記載のシリカ系粒子の製造方法。
【0014】
9. 上記(1)〜(5)のいずれかに記載のシリカ系粒子と熱硬化性樹脂を含む半導体封止用樹脂組成物。
10. 前記シリカ系粒子の体積をAで表し、前記熱硬化性樹脂の体積をBで表したとき、その体積比(A/B)が10/100〜95/100の範囲にあることを特徴とする上記(9)記載の半導体封止用樹脂組成物。
【0015】
11. 上記(9)または(10)に記載の樹脂組成物からなる塗膜が形成された基材。
12. 上記基材が、高温高湿耐久性試験(温度80℃、湿度80%、保持時間1000時間)において、試験前後における共振法を用いた比誘電率の変化量(△ε)が0.2以下、さらに誘電正接の変化量(△tanδ)が0.01以下である上記(11)に記載の基材。
【発明の効果】
【0016】
本発明のシリカ系粒子によれば、圧縮強度が強く、耐湿性が高く、比誘電率および誘電正接の変化量が殆どない塗膜を得ることができる。
本発明のシリカ系粒子の製造方法によれば、耐湿性が高く、低い比誘電率および誘電正接の変化量が殆どない塗膜を得ることができるシリカ系粒子を製造できる。
本発明の半導体封止用樹脂組成物は、耐湿性が高く、比誘電率および誘電正接の変化量が殆どない塗膜が形成された基材を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るシリカ系粒子、該シリカ系粒子の製造方法、該粒子を含む半導体封止用樹脂組成物および該樹脂組成物から塗膜が形成された基材について具体的に説明する。
【0018】
[シリカ系粒子]
本発明に係るシリカ系粒子は、無孔質の外殻シリカ層の内部に空洞を有し、空隙率が20〜95体積%の範囲にあり平均粒子径が0.1〜50μmの範囲にあることを特徴とする。
粒子の空隙率は20〜95体積%、さらには25〜90体積%の範囲にあることが好ましい。
空隙率が20体積%未満の場合は、屈折率が充分に低くならず、低屈折率の樹脂などへの応用ができない場合がある。
前記シリカ系粒子の空隙率が95体積%を越えるものは得ることが困難であり、得られたとしても、粒子径によっては殻が薄くなり、粒子強度が不充分となる場合がある。
【0019】
本発明のシリカ系粒子は、平均粒子径が0.1〜50μmの範囲にある。平均粒子径が0.1μm未満のものは、噴霧乾燥法を用いた生産性を考慮した場合、噴霧乾燥法を用いて製造することが困難である。また、平均粒子径が50μmを超えるシリカ系粒子は、半導体用途としては不向きである。一方、3次元実装技術を含む半導体用の実装材料用途としては、平均粒子径が0.1〜10μmのシリカ系粒子がより好ましい。
【0020】
上記のシリカ系粒子を製造する場合、乾燥・加熱処理を減圧下で行うと、得られるシリカ系粒子の外殻層内部が負圧のシリカ系粒子を得ることができる。
従って、上記減圧下で乾燥・加熱処理して得られるシリカ系粒子は、平均粒子径が0.1〜50μmの範囲にあり、外殻シリカ層の内部に空洞を有し、該空洞の空隙率が20〜95重量%の範囲にあり、外殻シリカ層が無孔質であり、空洞内部が負圧であることを特徴としている。
前記空洞内部の負圧が133hPa以下あることが好ましい。
【0021】
内部に空洞を有するシリカ系粒子は、屈折率は、1.1〜1.4と低い。中空粒子の屈折率が1.1以上であれば、屈折率が1.2以上の塗膜を得やすく、ガラスや樹脂のいずれの基材でも、反射防止効果の高い塗膜が得られる。また、前記粒子の屈折率が1.1以上であれば、十分な厚さのシェルが形成され、前記粒子の機械的強度が高くなる。
内部に空洞を有するシリカ系粒子の屈折率が1.4以下であれば、屈折率が1.4以下の塗膜を得やすく、ガラスや樹脂のいずれの基材でも、反射防止効果の高い塗膜が得られる。
【0022】
本発明のシリカ系粒子としては、シリカ粒子、シリカ以外の無機酸化物を粒子中に50重量%未満で含むシリカ・アルミナ、シリカ・ジルコニア、シリカ・チタニア等のシリカ系粒子が用いられる。なかでも、実質的にシリカのみからなり、粒子径が均一なシリカゾルに由来するシリカ粒子は好適に用いることができる。
【0023】
シリカ系粒子の圧縮強度は0.1〜200kgf/mm2の範囲にあることが好ましい。
圧縮強度が0.1kgf/mm未満の場合、強度が弱く、樹脂との混合作業や塗膜中で粒子が壊れ、形状を維持できない場合がある。また、圧縮強度が200kgf/mmを超えると粒子自身が脆くなり、粒子同士の衝突などで壊れる恐れがある。
【0024】
本発明のシリカ系粒子は耐湿性を有することが好ましい。ここで、耐湿性とは、シリカ系粒子を、温度25℃、湿度90%の空気雰囲気下に7日間放置した時の吸湿率(重量変化率)が0.1%以下であることを意味する。湿気を嫌う用途で使用する場合、粒子自身の吸湿率が0.1%を越えると、塗膜中に水分が取り込まれることになり、不具合の発生の重大な要因となる。
【0025】
[シリカ系粒子の製造方法]
本発明に係るシリカ系粒子の製造方法は、下記の工程(a)〜(d)からなることを特徴としている。
(a)珪酸アルカリ水溶液を熱風気流中に噴霧乾燥してシリカ系粒子前駆体粒子を調製する工程
(b)シリカ系粒子前駆体粒子を酸水溶液に浸漬し、アルカリを除去する工程
(c)水熱処理する工程
(d)乾燥・加熱処理する工程
【0026】
工程(a)
珪酸アルカリ水溶液を熱風気流中に噴霧乾燥してシリカ系粒子前駆体粒子を調製する。
本発明に用いる珪酸アルカリとしては、通常、水に可溶の珪酸ナトリウム、珪酸カリウムが用いられる。
珪酸アルカリのSiO/MOモル比(但し、Mはアルカリ金属を示す。)は1〜5、さらには2〜4の範囲にあることが好ましい。
珪酸アルカリのSiO/MOモル比が1未満の場合は、アルカリ量が多すぎるために後述する工程(b)における酸洗浄が困難となるだけでなく、噴霧乾燥品の潮解性が顕著となるためにシリカ系微粒子が得られない場合がある。
珪酸アルカリのSiO/MOモル比が5を越えると、珪酸アルカリの可溶性が低下し、水溶液の調製が困難であり、できたとしても水溶液中では数nm以下のシリカ微粒子が発生する場合があり、噴霧乾燥しても本発明に使用できるシリカ系粒子前駆体粒子が得られない場合がある。
【0027】
珪酸アルカリ水溶液のSiOとしての濃度は1〜30重量%、さらには5〜28重量%の範囲にあることが好ましい。
珪酸アルカリ水溶液のSiOとしての濃度が1重量%未満の場合は、生産性を考慮した場合に非効率となる場合がある。
珪酸アルカリ水溶液のSiOとしての濃度が30重量%を越えると、珪酸アルカリ水溶液としての安定性が著しく低下して高粘性になり噴霧乾燥が困難となる場合があり、噴霧乾燥できたとしても粒子径分布、外殻の厚さ等が極めて不均一になる場合があり、用途が制限される場合がある。
【0028】
珪酸アルカリ水溶液を熱風気流中に噴霧乾燥するが、噴霧乾燥方法としては、後述するシリカ系微粒子が得られれば特に制限は無いが、回転ディスク法、加圧ノズル法、2流体ノズル法等従来公知の方法を採用することができる。本発明では、内部に空洞を有する粒子を得る場合、2流体ノズル法が好適である。
【0029】
本発明のシリカ系粒子を製造する場合は、前記噴霧乾燥における入口温度が300〜600℃、さらには350〜550℃の範囲にあり、出口温度が120〜300℃、さらには130〜250℃の範囲にあることが好ましい。
この時、噴霧乾燥における入口温度が300℃未満の場合は、出口温度によっても異なるが、内部に空洞を有するシリカ系粒子が得られない場合がある。
噴霧乾燥における入口温度が600℃を越えると、破裂状態のシリカ系粒子前駆体粒子が形成されるようになり、内部に空洞を有するシリカ系粒子を得ることが困難となる場合があり、得られたとしても外殻の厚みが薄くなり、得られるシリカ系粒子の強度が不充分となる場合がある。
【0030】
熱風の出口温度が120℃未満の場合は、内部に空洞を有するシリカ系粒子が得られない場合がある。
熱風の出口温度が300℃を越えると、破裂状態のシリカ系粒子前駆体粒子が形成されるようになり、内部に空洞を有するシリカ系粒子を得ることが困難となる場合があり、得られたとしても外殻の厚みが薄くなり、得られるシリカ系粒子の強度が不充分となる場合がある。
【0031】
工程(b)
シリカ系粒子前駆体粒子を酸水溶液に浸漬し、アルカリを除去する。
酸としては、塩酸、硝酸、硫酸等の鉱酸、酢酸、酒石酸、リンゴ酸等の有機酸等を用いることができる。通常、この様な酸を用いるが、陽イオン交換樹脂等を用いることもできる。本発明では塩酸、硝酸、硫酸等の鉱酸が好適に用いられる。
【0032】
シリカ系粒子前駆体粒子を酸水溶液に浸漬する際、シリカ粒子前駆体粒子中のMOモル数(Msp)と酸のモル数(Ma)とのモル比(Ma)/(Msp)が0.6〜4.7、さらには1〜4.5の範囲となるように浸漬することが好ましい。
前記モル比(Ma)/(Msp)が0.6未満の場合は、MOに対して酸の量が少なすぎるために、アルカリの除去とともに起きると考えられる珪酸の縮合、ケイ酸のシリカ骨格化が進行せず、シリカ系粒子前駆体粒子が部分的に溶解したり、溶解した珪酸アルカリがゲル化する場合がある。
前記モル比(Ma)/(Msp)が4.7を越えてもさらに、上記した珪酸の縮合、骨格化が進むこともなく、酸が過剰であり経済的でない。
【0033】
また、酸水溶液に浸漬した際のシリカ系粒子前駆体粒子の濃度がSiOとして1〜30重量%、さらには5〜25重量%の範囲にあることが好ましい。
酸水溶液に浸漬した際のシリカ系粒子前駆体粒子の濃度がSiOとして1重量%未満の場合は、アルカリ除去、洗浄性に問題はないが製造効率が低下する。また、前記した酸とシリカのモル比、珪酸アルカリのシリカとアルカリのモル比によっては、酸の濃度が低くなる場合があり、シリカ系粒子前駆体粒子が部分的に溶解したり、溶解した珪酸アルカリがゲル化する場合がある。
酸水溶液に浸漬した際のシリカ系粒子前駆体粒子の濃度がSiOとして30重量%を越えると、濃度が濃すぎてアルカリ除去、洗浄効率が低下する場合があり、また、シリカ系粒子前駆体粒子の粒子径が小さい場合には特に分散液の粘度が高くなりアルカリ除去、洗浄効率が低下する場合がある。
【0034】
アルカリを除去する条件としては、アルカリを除去できれば特に制限はないが、概ね温度が5〜70℃の範囲、時間は0.5〜24時間の範囲である。
ついで、従来公知の方法で洗浄する。例えば、純水にて濾過洗浄すればよい。
なお、本発明では、必用に応じて上記アルカリの除去および洗浄を繰り返し行うこともできる。
洗浄後のアルカリの残存量は、用途によっても異なるが、MOとして0.5重量%以下、さらには0.1重量%以下であることが好ましい。
【0035】
工程(c)
シリカ系粒子前駆体粒子分散液を水熱処理する。
前記工程(b)から得られたシリカ系粒子前駆体粒子は、前記分散液を加熱する必要があるため、該混合液をオートクレーブなどの耐圧容器に入れて行う必要がある。
前記混合液を180〜350℃の温度にて加熱処理すると、前記シリカ系粒子前駆体粒子および/またはその溶解物で前記シリカ系粒子前駆体粒子の表面に存在する細孔の内部が塞がれ、該細孔を封止することができる。加熱温度は、さらに200〜250℃が好ましい。
【0036】
また、この段階では、粒子表面の細孔を緻密に封止することを目的として、珪酸や有機ケイ素化合物などの従来公知の液状ケイ素化合物を前記混合液中にさらに加えることもできる。例えば、特開2010−155750号公報などに記載のように、シリカ系粒子の水熱処理時に珪酸や有機ケイ素化合物を、記載の割合で添加し水熱処理を行ってもよい。これは、前記液状ケイ素化合物を加えても、これらが前記シリカ系粒子前駆体粒子の内部に侵入することは殆どなく、その表面に存在する細孔のみを封止してなる、耐湿性に優れたシリカ系粒子を得ることができる。
【0037】
ここで、前記温度が180℃未満であると、前記シリカ系粒子前駆体粒子の表面に存在する細孔を十分に封止することができない場合があり、また前記温度が350℃を超えると、前記シリカ系粒子前駆体粒子の溶解が進み、しかもその溶解物(さらには、前記シリカ粒子の溶解物)が加熱終了後に該粒子上などに析出して非多孔質粒子や非球状粒子などになってしまうことがあるので、好ましくない。
【0038】
また、この加熱処理は、5〜20時間、好ましくは10〜16時間かけて行うことが好ましい。ここで、前記処理時間が5時間未満であると、前記シリカ系粒子前駆体粒子の表面に存在する細孔を十分に封止することができない場合があり、また前記処理時間が20時間を超えると、前記シリカ系粒子前駆体粒子の溶解が進み、しかもその溶解物(さらには、前記シリカ粒子の溶解物)が加熱終了後に該粒子上などに析出して非多孔質粒子や非球状粒子などになってしまうことがあるので、好ましくない。
この工程では、前記混合液中に含まれるシリカ粒子が溶解され、この溶解物が少なくとも前記シリカ系粒子前駆体粒子の表面に存在する細孔の内部に入って固着するので、該粒子の表面に存在する細孔を封止することができる。
【0039】
工程(d)
ついで、乾燥・加熱処理する。
乾燥・加熱処理温度は90〜1200℃、さらには110〜1150℃の範囲にあることが好ましい。
乾燥・加熱処理温度が90℃未満の場合は、細孔が消失しない場合があり、外殻が無孔質なシリカ系粒子が得られない場合がある。
乾燥・加熱処理温度が1200℃を越えても、さらに無孔質化することもなく、また、さらに粒子強度が向上することもなく、温度、粒子径によっては分散し難い凝集体粒子となる場合がある。
【0040】
工程(c′)
この工程(c′)は任意工程であり、工程(b)と工程(c)の間において、シリカ系粒子前駆体粒子を、乾燥・加熱処理する工程である。
乾燥・加熱処理温度は30〜120℃、さらには40〜100℃の範囲にあることが好ましい。
また、乾燥・加熱処理を減圧下で行い、得られるシリカ系粒子の外殻層内部が負圧であることが好ましく、さらに空洞内部の負圧が133hPa以下であることが好ましい。
乾燥・加熱処理温度が30℃未満の場合は、付着水が多く残存し、用途に制限がある他、乾燥処理に長時間を要し生産性が低下する問題がある。
乾燥・加熱処理温度が120℃を越えると、アルカリを除去した際にできる細孔が消滅する場合がある。
【0041】
[半導体封止用樹脂組成物]
本発明に係る半導体封止用樹脂組成物は、前記シリカ系粒子を充填材として熱硬化性樹脂に混合してなるものである。
前記熱硬化性樹脂としては、一般に半導体封止用に使用されているものであれば、特に制限なく使用することができる。さらに、熱硬化性樹脂の中でも、光硬化樹脂または熱硬化樹脂を使用することが好ましい。このようなものとしては、エポキシ系樹脂、ポリイミド系樹脂、ビスマレイミド系樹脂、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、シリコン系樹脂、BTレジン、シアネート系樹脂は好適に用いることができる。例えば、エポキシ系樹脂としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、トリフェノールアルカン型エポキシ樹脂、ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂、ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環型エポキシ樹脂、ハロゲン化エポキシ樹脂などが挙げられる。また、これらの樹脂化合物については、単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0042】
前記シリカ系粒子は、該シリカ系粒子の重量をAで表し、前記熱硬化性樹脂の重量をBで表したとき、その重量比(A/B)が10/100〜95/100、好ましくは30/100〜80/100となるように混合することが好ましい。ここで、前記重量比が10/100未満であると、前記シリカ系粒子の特性である低熱膨張係数効果、熱硬化性硬化が悪くなり、また前記重量比が95/100を超えると、流動性が悪くなるため半導体を効率よく封止することが難しくなるので、好ましくない。
【0043】
前記半導体封止用樹脂組成物の調製に際しては、フェノール化合物、アミン化合物、酸無水物などの硬化剤が使用される。この硬化剤としては、エポキシ樹脂の硬化剤に使用されているものならば、制限なく使用することができる。この中でも、1分子中にフェノール性水酸基を2個以上有する、ビスフェノール型樹脂、ノボラック樹脂、トリフェノールアルカン型樹脂、レゾール型フェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ビフェニル型フェノール樹脂、ナフタレン型フェノール樹脂、シクロペンタジエン型フェノール樹脂などのフェノール樹脂や、メチルヘキサヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、無水メチルナジック酸等の酸無水物を使用することが好ましい。
【0044】
さらに、前記半導体封止用樹脂組成物には、必要に応じて着色剤、応力緩和剤、消泡剤、レベリング剤、カップリング剤、難燃剤、硬化促進剤などを添加することができる。
また、前記半導体封止用樹脂組成物の調製は、従来公知の方法で行うことができる。すなわち、該樹脂組成物は、たとえば、前記熱硬化性樹脂、前記シリカ系粒子、前記硬化剤、さらに必要に応じて前記添加剤を混合し、ロールミルなどで混練した後、減圧脱泡処理を施して調製される。
【0045】
[被膜付基材]
前記半導体封止用樹脂組成物を用いた被膜付基材の形成方法は、ディップ法、スプレー法、スピナー法、ロールコート法、バーコート法、グラビア印刷法、マイクログラビア印刷法等の周知の方法で基材に塗布し、乾燥する等常法によって硬化させることによって被膜を形成することができ、被膜付基材を作成できる。
【0046】
被膜付基材は、湿気を嫌う用途で使用する場合、塗膜付基材の高温皇室耐久性試験において、比誘電率の変化量(△ε)が0.2を越えて、さらに誘電正接(△tan δ)が0.01を越えると、塗膜中に水分が取り込まれることになり、不具合の発生の重大な要因となる。
【0047】
[測定方法]
次に、本発明で用いられる測定方法を示せば、以下の通りである。
(1)シリカ系粒子の平均粒子径
シリカ系粒子の粉体を40重量%のグリセリン含有水溶液に分散させてなるスラリー液(固形分濃度0.1〜5質量%)を調製し、これを超音波発生装置(iuch社製US−2型)にかけて5分間、分散処理を施す。次いで、前記グリセリン水溶液を加えて濃度を調節した分散液より試料を取り、これをガラスセル(長さ10mm、幅10mm、高さ45cmのサイズ)に入れて、遠心沈降式粒度分布測定装置(堀場製作所製:CAPA−700)を用いて平均粒子径を測定する。
【0048】
(2)シリカ系微粒子の平均粒子径
ナノサイズの粒子径を有するシリカ系微粒子の水分散ゾル(固形分 含有量20重量%)0.15gに純水19.85gを混合して調製した固形分含有量0.15%の試料を、長さ1cm、幅1cm、高さ5cmの石英セルに入れて、動的光散乱法による超微粒子粒度分析装置(大塚電子(株)製、型式ELS−Z2)を用いて、粒子群の粒子径分布を測定する。なお、本発明でいう平均粒子径は、この測定結果をキュムラント解析して算出された値を示す。
【0049】
(3)シリカ系粒子の真密度
日本工業規格JIS Z8807に規定される測定方法により、ピクノメーターを用いて水熱処理前のシリカ系粒子の真密度を求める。
【0050】
(4)シリカ系粒子の空隙率
前記(3)で求められた水熱処理前のシリカ系粒子の真密度を用いて、以下の式から算出する。ここで用いる2.2という数値は、シリカの密度を示す。
空隙率(%)=[2.2−(水熱処理前のシリカ系粒子の真密度)]/2.2×100
【0051】
(5)シリカ系粒子を含む混合液のpH
シリカ系粒子を含む混合液にアンモニアなどを添加してpHを調整した分散液を、25℃の恒温槽中で30分以上攪拌した後、pH4、7および9の標準液で更正が完了したpHメータ(堀場製作所製、F22)のガラス電極を挿入して測定する。
【0052】
(6)シリカ系粒子の圧縮強度
シリカ系粒子の粉体より、平均粒子径±0.5μmの範囲にある粒子1個を試料として取り、微小圧縮試験機(島津製作所製、MCTM−200)を用いて、この試料に一定の負荷速度で荷重を負荷し、粒子が破壊した時点の加重値を圧縮強度(kgf/mm)とする。さらに、この操作を4回繰り返し、5個の試料について圧縮強度を測定し、その平均値を粒子圧縮強度とする。
【0053】
(7)シリカ系粒子の吸湿率
所定量のシリカ系微粒子を磁性ルツボに入れて、その重量を精密電子天秤(ASONE社 ASP214)を用いて秤量する。次いで、前記磁性ルツボを温度25℃、湿度90%に調整されたデシケーター内に入れて7日間放置し、その後、前記磁性ルツボを取り出してその重量を精密電子天秤で秤量する。次に、その重量変化を算出し、その値を吸湿率とする。
【0054】
(8)シリカ系粒子の空隙内部圧の測定方法
以下の方法で空隙内部圧を測定し、以下の基準で評価した。
U字管マノメータの一方に接続した100ccガラス瓶に、シリカ系微粒子を粒子密度で換算した40cc相当の重量を投入し、次に濃度48重量%の水酸化ナトリウム水溶液50cc投入し、直ちに圧抜き弁を閉じて密閉状態にした。このとき、ガラス瓶内部の空気層の空間は10ccであった。次に、マグネットスターラーを用いて攪拌しながら、オイルバスにて80℃で15時間加熱してシリカ系微粒子を溶解させ、ついで、室温まで冷却した。この時の空気層の空間は25cc(ガラス瓶内部の空気層の体積:10ccとシリカ系粒子の内部空隙体積:16ccの和と凡そ等しい)となった。これにより、シリカ系微粒子の内部空隙がシリカの溶解により開放されたことが分かった。次に、U字管マノメータの他方には48%水酸化ナトリウム水溶液のみを90cc投入した100ccガラス瓶を接続し、双方のガラス瓶内部の蒸気圧を等しくした。これにより、マノメータで測定した差圧を元に、ボイルの法則からシリカ系微粒子の内部圧力を算出できる。このときのU字管マノメータの差圧を読み取って、空隙内部圧を算出した。
【0055】
評価基準
差圧が133hPa以下 : ◎
差圧が133hPa超〜500hPa : ○
差圧が500hPa超〜1013hPa未満 : △
差圧が1013hPa : ×
【0056】
(9)耐久性試験
耐久性試験は、高温高湿試験において基材の比誘電率と誘電正接を測定して実施した。
1.基材の作成
ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合エポキシ樹脂(東都化成社製、ZX-1059、エポキシ当量約165)、硬化剤(新日本理化(株)社製、リカシッド MH−700)および硬化促進剤(四国化成(株)社製、キュアゾール 2PHZ−PW)とを重量比で100/86/1で混合撹拌した混合液とシリカ系粒子を体積比50/50で混合したものを、樹脂混合装置を用いて混錬、減圧脱泡処理を施して樹脂組成物を調製した。
調製した組成物をディップコート法によりPET基板上に、シリカ系被膜形成用樹脂組成物を塗布した。塗布方法は従来公知のいずれの方法を用いても特に制限はない。塗布した塗膜は、70℃、16時間乾燥した後、150℃、3時間焼成硬化して評価用基材を作成した。
【0057】
2.比誘電率および誘電正接の測定方法
上記1で作成した基材を、120℃、1時間乾燥することで表面に付いた吸着水を除いた後、同軸型共振器((株)エーイーティー社製、周波数:9.4GHz、解析ソフト:3次元電磁界解析、CST社製 MW-Studio)を用いて、耐久性試験前の比誘電率(ε1)、誘電正接(tan δ1)を測定した。その後、該基材を高温高湿耐久性試験器(エスペックス(株)社製、小型環境試験機 SH−241)を用いて、80℃、湿度80%の条件下1000時間放置した。その後、上記比誘電率測定方法と同様手法で、耐久性試験の比誘電率(ε2)、誘電正接(tan δ2)を測定した。次に、各物性の耐久性試験前後の差を算出し、各々の物性の変化量(△ε、△tan δ)とした。
【実施例】
【0058】
以下、実施例に基づき本発明を更に具体的に説明する。しかし、本発明は、これらの実施例に記載された範囲に限定されるものではない。
【0059】
[実施例1]
シリカ系粒子(1)の調製
水ガラス水溶液(SiO/NaOモル比3.2、SiO濃度24重量%)3000gを用い、2流体ノズルの一方に0.62kg/hrの流量で、他方のノズルに空気を31800L/hr(空/液体積比63600)の流量で、入口温度400℃の熱風に噴霧してシリカ系粒子前駆体粒子(1)を得た。この時、出口温度は150℃であった。
ついで、シリカ系粒子前駆体粒子(1)500gを濃度10重量%の硫酸水溶液3200gに浸漬して1.5時間撹拌した。この時、固形分(SiO)濃度は10.2重量%、分散液の温度は35℃、pHは3.0であった。また、酸のモル数(Ma)とのモル比(Ma)/(Msp)は1.2であった。
【0060】
その後、シリカ系粒子前駆体粒子(1)を含む混合液をオートクレーブなどの耐圧容器に入れて、200℃で16時間水熱処理を行い、室温まで冷却して抜きだした。
得られた混合液を、ブフナー漏斗(関谷理化硝子器械(株)製、3.2L)を用いて定量濾紙(アドバンテック(株)製 No.5C)でろ過した後、繰り返し洗浄して、表面が封止されたシリカ系粒子の集合体からなるケーキ状物質を得た。
ついで、乾燥機にて、120℃で24時間乾燥・加熱処理してシリカ系粒子(1)を調製した。
得られたシリカ系粒子(1)の平均粒子径、粒子の真密度、空隙率、吸湿率、圧縮強度を測定し、結果を表1に示す。
【0061】
[実施例2]
シリカ系粒子(2)の調製
水ガラス水溶液(SiO/NaOモル比3.2、SiO濃度24重量%)3000gを用い、2流体ノズルの一方に0.62kg/hrの流量で、他方のノズルに空気を31800L/hr(空/液体積比63600)の流量で、入口温度400℃の熱風に噴霧してシリカ系粒子前駆体粒子(2)を得た。この時、出口温度は150℃であった。
ついで、シリカ系粒子前駆体粒子(1)500gを濃度10重量%の硫酸水溶液3200gに浸漬して1.5時間撹拌した。この時、固形分(SiO)濃度は10.2重量%、分散液の温度は35℃、pHは3.0であった。また、酸のモル数(Ma)とのモル比(Ma)/(Msp)は1.2であった。
ついで、乾燥機にて、真空ポンプにて、減圧度1hPaで排気しながら、乾燥・加熱処理を120℃で24時間乾燥・加熱処理してシリカ系粒子(2)を調製した。
【0062】
その後、シリカ系粒子(2)を含む混合液にSiO2換算基準で4.5重量%含む珪酸液をシリカ系粒子(2)の重量に対し10重量%を加えた溶液をオートクレーブなどの耐圧容器に入れて、200℃で16時間水熱処理を行い、室温まで冷却して抜きだした。
得られた混合液を、ブフナー漏斗(関谷理化硝子器械(株)製、3.2L)を用いて定量濾紙(アドバンテック(株)製 No.5C)でろ過した後、繰り返し洗浄して、表面封止シリカ系粒子の集合体からなるケーキ状物質を得た。
ついで、乾燥機にて、120℃で24時間乾燥・加熱処理してシリカ系粒子(2)を調製した。
得られたシリカ系粒子(2)の平均粒子径、粒子の真密度、空隙率、吸湿率、圧縮強度を測定し、結果を表1に示す。また、シリカ系粒子(2)の空隙内部圧は◎であった。
【0063】
[実施例3]
実施例1において、水ガラス水溶液の流量を0.08kg/hrで行った以外は同様にしてシリカ系粒子(3)を調製した。
得られたシリカ系粒子(3)の平均粒子径、粒子の真密度、空隙率、吸湿率、圧縮強度を測定し、結果を表1に示す。
【0064】
[実施例4]
実施例1において、空気の流量を15900L/hrで行った以外は同様にしてシリカ系粒子(4)を調製した。
得られたシリカ系粒子(4)の平均粒子径、粒子の真密度、空隙率、吸湿率、圧縮強度を測定し、結果を表1に示す。
【0065】
[実施例5]
実施例2において、空気の流量を15900L/hrで行った以外は同様にしてシリカ系粒子(5)を調製した。
得られたシリカ系粒子(5)の平均粒子径、粒子の真密度、空隙率、吸湿率、圧縮強度を測定し、結果を表1に示す。また、シリカ系粒子(5)の空隙内部圧は◎であった。
【0066】
[実施例6]
実施例1において、空気の流量を5500L/hrで行った以外は同様にしてシリカ系粒子(6)を調製した。
得られたシリカ系粒子(6)の平均粒子径、粒子の真密度、空隙率、吸湿率、圧縮強度を測定し、結果を表1に示す。
【0067】
[比較例1]
実施例1において、水熱処理を行わなかった以外は同様にしてシリカ系粒子(7)を調製した。
得られたシリカ系粒子(7)の平均粒子径、粒子の真密度、空隙率、吸湿率、圧縮強度を測定し、結果を表1に示す。
【0068】
[比較例2]
実施例1において、水熱処理の温度を150℃で行った以外は同様にしてシリカ系粒子(8)を調製した。
得られたシリカ系粒子(7)の平均粒子径、粒子の真密度、空隙率、吸湿率、圧縮強度を測定し、結果を表1に示す。
【0069】
[比較例3]
溶融シリカ粒子(アドマテックス(株)社製、SO−E3;平均粒子径1μm)をSiO換算基準で20重量%含む溶液にSiO換算基準で4.5重量%含む珪酸液を溶融シリカ粒子の重量に対し10重量%を加えた溶液をオートクレーブなどの耐圧容器に入れて、200℃で16時間水熱処理を行い、室温まで冷却して抜きだした。
得られた混合液を、ブフナー漏斗(関谷理化硝子器械(株)製、3.2L)を用いて定量濾紙(アドバンテック(株)製 No.5C)でろ過した後、繰り返し洗浄して、表面封止シリカ系粒子の集合体からなるケーキ状物質を得た。
ついで、乾燥機にて、120℃で24時間乾燥・加熱処理してシリカ系粒子(9)を調製した。
得られたシリカ系粒子(9)の平均粒子径、粒子の真密度、空隙率、吸湿率、圧縮強度を測定し、結果を表1に示す。
【0070】
【表1】

【0071】
[組成物および基材の作成と耐久性試験前後の物性評価]
実施例1〜6および比較例1〜3で得たシリカ系粒子(1)〜(9)を、前記[測定方法](9)に記載した方法を用いて、組成物および基材を作成した。その後、耐久性試験前後の物性評価し、結果を表2に示す。
【0072】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
無孔質の外殻シリカ層の内部に空洞を有し、空隙率が20〜95体積%の範囲にあり平均粒子径が0.1〜50μmの範囲にあることを特徴とするシリカ系粒子。
【請求項2】
前記シリカ系粒子の空洞が負圧である請求項1に記載のシリカ系粒子。
【請求項3】
前記空洞の負圧が133hPa以下である請求項2に記載のシリカ系粒子。
【請求項4】
前記シリカ系粒子の圧縮強度が、0.1〜200kgf/mm2の範囲にあることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のシリカ系粒子。
【請求項5】
前記シリカ系粒子が、温度25℃、湿度90%の空気雰囲気下に7日間放置した時の吸湿率(重量変化率)が0.1%以下である請求項1〜4のいずれかに記載のシリカ系粒子。
【請求項6】
下記工程(a)〜(d)を順次実施することを特徴とする請求項1〜5のいずれに記載のシリカ系粒子の製造方法。
(a)珪酸アルカリ水溶液を熱風気流中に噴霧乾燥してシリカ系粒子前駆体粒子を調製する工程
(b)シリカ系粒子前駆体粒子を酸水溶液に浸漬し、アルカリを除去する工程
(c)水熱処理する工程
(d)乾燥・加熱処理する工程
【請求項7】
工程(b)と工程(c)の間で下記工程(c′)を実施する請求項6に記載のシリカ系粒子の製造方法。
(c′)乾燥・加熱処理する工程
【請求項8】
工程(c)の水熱処理温度が、180〜350℃である請求項6または7に記載のシリカ系粒子の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれかに記載のシリカ系粒子と熱硬化性樹脂を含む半導体封止用樹脂組成物。
【請求項10】
前記シリカ系粒子の体積をAで表し、前記熱硬化性樹脂の体積をBで表したとき、その体積比(A/B)が10/100〜95/100の範囲にあることを特徴とする請求項9記載の半導体封止用樹脂組成物。
【請求項11】
請求項9または10に記載の樹脂組成物からなる塗膜が形成された基材。
【請求項12】
前記基材が、高温高湿耐久性試験(温度80℃、湿度80%、保持時間1000時間)において、試験前後における共振法を用いた比誘電率の変化量(△ε)が0.2以下、さらに誘電正接の変化量(△tanδ)が0.01以下である請求項11に記載の基材。

【公開番号】特開2013−103850(P2013−103850A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247143(P2011−247143)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(000190024)日揮触媒化成株式会社 (458)
【Fターム(参考)】