説明

耐溶剤性を有するシリコン系樹脂発泡体

【課題】 化粧品に用いられる主要な溶剤に対する耐溶剤性を有し、かつ、肌あたりが良好で、脆くないといった、化粧用パフとして使用する場合に言う使用感が良好であるシリコン系樹脂発泡体を提供すること。
【解決手段】 分子鎖中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する硬化剤(A)、
分子鎖中に少なくとも1個のアルケニル基を有し、主鎖を構成する繰返し単位がイソブチレン単位からなる重合体(B)、
ヒドロシリル化触媒(C)、
発泡剤(D)、
を含んでなる液状樹脂組成物から得られるシリコン系樹脂発泡体であって、エタノールへの面積膨潤率が30%以下であることを特徴とするシリコン系樹脂発泡体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐溶剤性を有するシリコン系樹脂発泡体に関する。詳しくは、化粧用パフとして好適に使用しうるシリコン系樹脂発泡体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、化粧用パフとして、一般に天然ゴムラテックスから得られる多孔質体あるいは発泡体が用いられており、その感触が良いという長所を有しているものの、化粧品の成分として用いられる溶剤で膨潤してしまうなど、耐溶剤性が悪いという問題があった。そこで、NBRや軟質ポリウレタンの多孔質体あるいは発泡体が化粧用パフとして使用されているが、これらの多孔質体あるいは発泡体を用いた化粧用パフであっても、耐溶剤性の改良は不十分であった。一方で、シリコーンゴム発泡体を用いた化粧用パフも提案されてきた(特許文献1〜3)。しかしながら、シリコーンゴム発泡体を用いた化粧用パフは、硬度が高くカサツキ感があって使用感に劣ること、コストが高いことなどの問題があった。また、特許文献1〜2においては、発泡剤としてアゾビスイソブチロニトリル等、熱分解型有機発泡剤を使用しており、有害な分解副生物が発生するおそれがあること、特許文献3においては、製造方法が煩雑であることなどの問題点もあった。
【0003】
一方で、特許文献4にあるように、ヒドロシリル化反応活性な炭素−炭素不飽和結合および水酸基をともに有するイソブチレン系重合体を用いた樹脂組成物は耐溶剤性に優れていることが知られているが、高倍率で触感が良好な発泡体を得ることは困難であった。
【0004】
また、特許文献5には、基材樹脂の主成分が、分子鎖中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する硬化剤(A)、分子鎖中に少なくとも1個のアルケニル基を有し、主鎖を構成する繰返し単位が飽和炭化水素系単位またはオキシアルキレン系単位からなる重合体(B)、ヒドロシリル化触媒(C)、を主に含有する液状樹脂組成物を硬化してなるシリコン系重合体であって、重合体(B)が、数平均分子量10000以上の直鎖状重合体であるシリコン系重合体を基材樹脂として発泡体が柔軟性を有し、触感がよいことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−297203号公報
【特許文献2】特開平5−156059号公報
【特許文献3】特開2003−1899272号公報
【特許文献4】特開2000−351863号公報
【特許文献5】特開2009−74041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、特定の溶剤に対する耐溶剤性を有し、かつ、肌あたりが良好といった、例えば、化粧用パフとして使用する場合に使用感が良好であるシリコン系樹脂発泡体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題の解決のため鋭意研究を重ねた結果、耐溶剤性に優れ、かつ、肌あたりが良好であるシリコン系樹脂発泡体を見出し、本発明の完成に至った。
【0008】
即ち、本発明は、以下の構成よりなる。
〔1〕 分子鎖中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する硬化剤(A)、
分子鎖中に少なくとも1個のアルケニル基を有し、主鎖を構成する繰返し単位がイソブチレン単位からなる重合体(B)、
ヒドロシリル化触媒(C)、
発泡剤(D)、
を含んでなる液状樹脂組成物から得られるシリコン系樹脂発泡体であって、エタノールへの面積膨潤率が30%以下であり、セル径が30μm以上700μm以下であることを特徴とするシリコン系樹脂発泡体。
〔2〕 分子鎖中に少なくとも1個のアルケニル基を有し、主鎖を構成する繰返し単位がイソブチレン単位である重合体(B)の数平均分子量が6000以上30000以下である〔1〕に記載のシリコン系樹脂発泡体。
〔3〕 可塑剤(E)を含んでなる〔1〕または〔2〕に記載のシリコン系樹脂発泡体。
〔4〕 無機フィラー(F)を含んでなる〔1〕から〔3〕いずれか一項に記載のシリコン系樹脂発泡体。
〔5〕 〔1〕から〔4〕いずれか一項に記載のシリコン系樹脂発泡体からなる化粧用パフ。
〔6〕 分子鎖中に少なくとも1個のアルケニル基を有し、主鎖を構成する繰返し単位がイソブチレン単位からなる重合体(B)に無機フィラー(F)を混練した後に、分子鎖中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する硬化剤(A)、ヒドロシリル化触媒(C)、発泡剤(D)を混合して液状樹脂組成物とし、該液状樹脂組成物を発泡・硬化させることを特徴とするシリコン系樹脂発泡体の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明のシリコン系樹脂発泡体は、エタノールに対する耐溶剤性が良好で、肌あたりが良好である。さらに特定の分子量範囲の重合体(B)を使用すると、脆さが低減されたシリコン系樹脂発泡体が得られる。
【0010】
本発明のシリコン系樹脂発泡体は、特定の溶剤に対して耐溶剤性が良好であり、肌あたりが良好であることから、化粧品用パフとして好適に使用することが出来る。とくに日焼け止めを塗布するための化粧用パフに好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明につき、さらに詳細に説明する。
【0012】
本発明のシリコン系樹脂発泡体は、分子鎖中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する硬化剤(A)、分子鎖中に少なくとも1個のアルケニル基を有し、主鎖を構成する繰返し単位がイソブチレン単位からなる重合体(B)、ヒドロシリル化触媒(C)、発泡剤(D)、を含んでなる液状樹脂組成物から得られるものであり、エタノールへの面積膨潤率が30%以下であることを特徴とする。本発明において、耐溶剤性が良好であるとは、所定の溶剤に対して、面積膨潤率が小さいことを言う。
【0013】
エタノールは化粧品、とくにリキッド系の化粧品に含まれ、化粧用パフの面積膨潤率が大きいと、コンパクトなどの収納ケースに収納する際にはみだしてしまう。面積膨潤率としては、好ましくは25%以下、とくに好ましくは20%以下であると、収納ケースやコンパクトからはみでるという問題を生じないものとすることができる。
【0014】
ここで、エタノールへの面積膨潤率とは、以下の測定方法により算出されるものである。
【0015】
試料を縦30mm×横30mm、25℃にて95%エタノールに1時間浸漬させる。浸漬後取り出して、試料の縦横の長さを計測して浸漬後の面積を算出し、浸漬前の面積との差分を浸漬前の面積で除したものをエタノールへの面積膨潤率とする。
【0016】
本発明のシリコン系樹脂発泡体は、好ましくは、酢酸ブチルに対しても耐溶剤性を有しており、具体的には、酢酸ブチルへの面積膨潤率が好ましくは30%以下、より好ましくは25%以下である。酢酸ブチルは、化粧品に香料や溶剤などとして多用されている。酢酸ブチルへの面積膨潤率は、試料を縦30mm×横30mmに切り出し、25℃にて、酢酸ブチルに1時間浸漬させる。浸漬後取り出して、試料の縦横の長さを計測して浸漬後の面積を算出し、浸漬前の面積との差分を浸漬前の面積で除したものを酢酸ブチルへの面積膨潤率とする。
【0017】
本発明のシリコン系樹脂発泡体は、より好ましくは、流動パラフィンとオクチルメトキシシンナメートの9:1(重量比)の混合液に対しても耐溶剤性を有する。流動パラフィンとオクチルメトキシシンナメートが9:1(重量比)の混合液への面積膨潤率が好ましくは30%以下、より好ましくは25%以下である。流動パラフィンはミネラルオイルとも呼ばれ、接着性、艶出し効果があり、口紅等のメイクアップ製品の艶出し剤などとして使われているものである。
【0018】
流動パラフィンとオクチルメトキシシンナメートの9:1(重量比)の混合液への面積膨潤率とは、試料を縦30mm×横30mmに切り出し、流動パラフィンとオクチルメトキシシンナメートを重量比9:1の割合で混合した混合液に、25℃にて24時間浸漬させる。浸漬後取り出して、試料の縦横の長さを計測して浸漬後の面積を算出し、浸漬前の面積との差分を浸漬前の面積で除したものを流動パラフィンとオクチルメトキシシンナメートの9:1(重量比)の混合液への面積膨潤率とする。
【0019】
本発明のシリコン系樹脂発泡体のエタノールへの面積膨潤率が30%以下とするには、たとえば、重合体(B)の主鎖を構成する繰返し単位がイソブチレン単位からなる構成とすることや、添加物、例えば無機フィラー(F)の種類や量を調整する等の要因が挙げられ、これらを組み合わせることにより、耐溶媒性の良好なシリコン系樹脂発泡体とすることが出来る傾向がある。
【0020】
本発明のシリコン系樹脂発泡体は、分子鎖中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する硬化剤(A)(以下、単に「硬化剤(A)」と表記する場合がある)、分子鎖中に少なくとも1個のアルケニル基を有し、主鎖を構成する繰返し単位がイソブチレン単位からなる重合体(B)(以下、単に「重合体(B)」と表記する場合がある)、ヒドロシリル化触媒(C)、発泡剤(D)を含んでなる液状樹脂組成物から得られる。
【0021】
分子鎖に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する硬化剤(A)は、分子鎖中に少なくとも2個、好ましくは3個以上のヒドロシリル基を有する。ヒドロシリル基の上限は、好ましくは100個、より好ましくは70個、さらに好ましくは50個である。このように分子鎖中にヒドロシリル基を有するため、それぞれのヒドロシリル基が分子鎖中に少なくとも1個のアルケニル基を有し、主鎖を構成する繰返し単位がイソブチレン単位からなる重合体(B)の分子鎖中に存在するアルケニル基と反応して硬化する。前記ヒドロシリル基の数が2個より少ないと、液状樹脂組成物をヒドロシリル化反応により硬化させる場合の硬化速度が遅くなり、硬化不良を起こす。また、前記ヒドロシリル基の個数が100個より多くなると、硬化剤(A)の安定性、即ち液状樹脂組成物の安定性が悪くなる場合があり、その上、硬化後も多量のヒドロシリル基がシリコン系樹脂発泡体中に残存しやすくなり、クラックの原因となる場合がある。
【0022】
なお本発明において、ヒドロシリル基を1個有するとは、SiH結合を1個有することを言い、SiH2の場合にはヒドロシリル基を2個有することになるが、1つのSiに結合するHの数は、1つである方が硬化性は良くなり、また、柔軟性の点からも好ましい。本発明において「分子鎖中に平均して1個のヒドロシリル基」とは、1gあたりのヒドロシリル基量にその物質の数平均分子量を掛けたものである。本発明においては、ヒドロシリル基以外の官能基についても特に断りのない限り同様に、分子鎖中の官能基数を計算したものを示す。
【0023】
硬化剤(A)の分子量は、後述する発泡剤(D)成分の分散性や得られる発泡体の加工性などの点から、数平均分子量(Mn)の上限値は30000であることが好ましく、20000がより好ましく、15000であることが、成分の分散性がよくなる傾向にあり、さらに好ましい。重合体(B)との反応性や相溶性まで考慮すると、数平均分子量は、300以上であることが、重合体(B)との反応性が良い傾向にあり特に好ましい。
【0024】
前記硬化剤(A)の構造は、分子鎖中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有していれば特に制限はないが、例えば、炭化水素系硬化剤やポリシロキサン系硬化剤が例示できる。
【0025】
炭化水素系硬化剤とは、一般式(1)
1a (1)
(X:少なくとも1個のヒドロシリル基を含む基、R1:炭素数2〜150の1〜4価の炭化水素基、a:1〜4から選ばれる整数、但しXに1個のヒドロシリル基しか含まれない場合のaは2以上)
で示され、好適な具体例として、数平均分子量が30000以下であるヒドロシリル基を含有する炭化水素系硬化剤が挙げられる。
【0026】
重合体(B)は、分子鎖中に少なくとも1個のアルケニル基を有し、主鎖を構成する繰返し単位がイソブチレン単位からなる重合体である。「主鎖を構成する繰返し単位がイソブチレン単位からなる」とは、イソブチレン単位が50重量%以上であることを言い、イソブチレンとの共重合性を有する単量体単位を含んでもよい。イソブチレン単位は好ましくは70重量%、より好ましくは90重量%以上、特には全てがイソブチレン単位から形成されていることが好ましい。
【0027】
重合体(B)の分子量としては、得られる発泡体の柔軟性や触感と取り扱いやすさなどの点から、数平均分子量の下限値が3000であることが好ましく、より好ましくは4500、特に好ましくは6000である。数平均分子量の上限は好ましくは30000である。当該範囲内の数平均分子量である重合体(B)を使用することで、シリコン系樹脂発泡体の脆さを改善できる傾向にある。
【0028】
イソブチレンと共重合性を有する単量体単位としては、例えば炭素数4以上12以下のオレフィン、ビニルエーテル、芳香族ビニル化合物、ビニルシラン類、アクリルシラン類などが挙げられる。このような共重合成分の具体例としては、1−ブテン、2−ブテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、ヘキセン、ビニルシクロヘキサン、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、スチレン、α−メチルスチレン、ジメチルスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、β−ピネン、インデン、ビニルトリクロロシラン、ビニルメチルジクロロシラン、ビニルジメチルクロロシラン、ビニルメチルメトキシシラン、ビニルトリメチルシラン、ジビニルジクロロシラン、ジビニルジメトキシシラン、ジビニルジメチルシラン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、トリビニルメチルシラン、テトラビニルシラン、アリルトリクロロシラン、アリルメチルジクロロシラン、アリルジメチルクロロシラン、アリルジメチルメトキシシラン、アリルトリメチルシラン、ジアリルジクロロシラン、ジアリルジメトキシシラン、ジアリルジメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシランなどが挙げられる。
【0029】
前記イソブチレンと共重合性を有する単量体単位の中でも、アルコキシシリル基を含む化合物以外の化合物が、共重合が容易であるため好ましい。
【0030】
重合体(B)は、硬化剤(A)とヒドロシリル化反応して硬化する成分であり、分子鎖中に少なくとも1個のアルケニル基を有するため、ヒドロシリル化反応が起こって高分子状となり、硬化する。重合体(B)に含まれるアルケニル基の数は、硬化剤(A)とヒドロシリル化反応するという点から少なくとも1個必要であるが、硬化性、柔軟性の点からは分子鎖の両末端にアルケニル基が存在するのが好ましい。
【0031】
本発明のヒドロシリル化触媒(C)としては、ヒドロシリル化触媒として使用し得るものである限り、特に制限はなく、任意のものを使用し得る。ヒドロシリル化触媒(C)の具体例としては、白金の担体;アルミナ、シリカ、カーボンブラックなどの担体に固体白金を担持させたもの;塩化白金酸;塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトンなどとの錯体;例えば、Pt(CH2=CH22(PPh32、Pt(CH2=CH22l2などの白金−オレフィン錯体;例えば、Ptn(ViMe2SiOSiMe2Vi)m、Pt[(MeViSiO)4mなどの白金−ビニルシロキサン錯体;例えば、Pt(PPh34、Pt(PBu34などの白金−ホスフィン錯体;例えば、Pt[P(OPh)34、Pt[P(OBu)34などの白金−ホスファイト錯体;ジカルボニルジクロロ白金などが挙げられる。なお、以上の式中、Me:メチル基、Bu:ブチル基、Vi:ビニル基、Ph:フェニル基、m、n:1以上の整数を表す。
【0032】
また、アシュビー(Ashby)の米国特許第3,159,601号明細書および米国特許第3,159,662号明細書に記載された白金−炭化水素複合体、ラモロー(Lamoreaux)の米国特許第3,220,972号明細書に記載された白金アルコラート触媒、モディック(Modic)の米国特許第3,516,946号明細書に記載された塩化白金酸−オレフィン複合体なども本発明に有用に使用し得る。さらに、白金化合物以外の触媒も使用することができ、その具体例としては、RhCl(PPh33、RhCl3、Rh/Al23、RuCl3、IrCl3、FeCl3、AlCl3、PdCl2・2H2O、NiCl2、TiCl2など(Phはフェニル基を表す)が挙げられる。上記で挙げられたヒドロシリル化触媒群より選ばれる少なくとも1種を、ヒドロシリル化触媒(C)として用いることが好ましい。それらの中でも、触媒活性および安全性の点から、塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体が好ましい。
【0033】
ヒドロシリル化触媒(C)の含有量としては、重合体(B)のアルケニル基1モルに対して10-8〜10-1モルが好ましく、10-6〜10-3モルがより好ましい。前記含有量が10-8モルより少ないと十分に硬化が進行しない場合がある。また10-1モルよりも多いと、樹脂組成物の硬化の制御が困難である場合や、得られた発泡体が着色する場合がある。
【0034】
発泡剤(D)としては、物理発泡剤、化学発泡剤、活性水素化合物等が挙げられ、少なくとも1種を使用することができる。
【0035】
前記物理発泡剤としては、ヒドロシリル化反応を阻害しないものであれば特に限定はないが、発泡性、および作業性と安全性の点から、物理発泡剤の沸点は、100℃以下であることが好ましく、50℃以下がより好ましい。具体的には、炭化水素、フロン、塩化アルキル、エーテルなどの有機化合物、二酸化炭素、窒素、空気などの無機化合物が挙げられるが、環境適合性の観点から、炭化水素、エーテル、二酸化炭素、窒素、空気の何れか1以上を用いることが好ましい。
【0036】
炭化水素としては、メタン、エタン、プロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、n−ヘキサン、2−メチルペンタン、3−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタンクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。
【0037】
エーテルとしては、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、エチルメチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ブチルメチルエーテル、ブチルエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、tert−ブチルエチルエーテル、1,1−ジメチルプロピルメチルエーテル等が挙げられる。
【0038】
また、発泡体製造時に、空気中で機械的な攪拌を行う場合は、攪拌に伴って巻き込まれた空気により気泡が形成される場合があり、本発明においてはこれもまた物理発泡剤のひとつであるとする。ただし、これら物理発泡剤を使用する場合、残存物による発泡体成形後の物性変化が懸念されることなどから、発泡体製造後、使用した物理発泡剤の沸点以上の温度で加熱養生することにより、残留発泡剤を取り除くことが好ましい。
【0039】
前記化学発泡剤としては、ヒドロシリル化反応を阻害しないものであれば特に限定はないが、例えば、NaHCO3などの無機系化学発泡剤や有機系化学発泡剤などが挙げられる。
【0040】
前記活性水素化合物としては、ヒドロシリル基と反応して水素を発生する活性水素を含有する化合物であれば、特に限定されるものではないが、以下のものが例示できる。即ち、活性水素化合物としては、アルコール類、カルボン酸類、フェノール性ヒドロキシル基を有する化合物、水が例示できる。
【0041】
具体例としては、水、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノール、tert−ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、グリセリンジアリルエーテルなどの1価のアルコール;
【0042】
エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサメチレングリコール、1,9−ノナメチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、スクロース、グリセリンモノアリルエーテルなどの多価アルコール;
【0043】
ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、これらの共重合体、ポリテトラメチレングリコール、ソルビトール、スクロース、テトラエチレンジアミン、エチレンジアミン等を開始剤とした1分子内にヒドロキシル基を3個以上含むものも含むなどのポリエーテルポリオール;アジペート系ポリオール、ポリカプロラクトン系ポリオール、ポリカーボネート系ポリオールなどのポリエステルポリオール;エポキシ変性ポリオール;ポリエーテルエステルポリオール;ベンジリックエーテル型フェノールポリオールなどのフェノール系ポリオール;ルミフロン(旭硝子社製)などのフッ素ポリオール;ポリブタジエンポリオール;水添ポリブタジエンポリオール;ひまし油系ポリオール;ハロゲン含有難燃性ポリオール;リン含有難燃性ポリオール;
【0044】
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、東亜合成化学工業(株)製「アロニクス5700」、4−ヒドロキシスチレン、日本触媒化学工業(株)製「HE−10」、「HE−20」、「HP−10」および「HP−20」[いずれも末端にヒドロキシル基を有するアクリル酸エステルオリゴマー]、日本油脂(株)製のブレンマーシリーズとして、PPシリーズ[ポリプロピレングリコールメタクリレート]、ブレンマーPEシリーズ[ポリエチレングリコールモノメタクリレート]、ブレンマーPEPシリーズ[ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールメタクリレート]、ブレンマーAP−400[ポリプロピレングリコールモノアクリレート]、ブレンマーAE−350[ポリエチレングリコールモノアクリレート]、ブレンマーNKH−5050[ポリプロピレングリコールポリトリメチレンモノアクリレート]およびブレンマーGLM[グリセロールモノメタクリレート]、ヒドロキシル基含有ビニル系化合物とε−カプロラクトンとの反応により得られるε−カプロラクトン変性ヒドロキシアルキルビニル系モノマーなどのヒドロキシル基含有ビニル系モノマー(なお、ヒドロキシル基含有ビニル系モノマーは、硬化剤(A)成分と発泡剤(D)の何れとしても利用できる);前記ヒドロキシル基含有ビニル系モノマーとアクリル酸、メタクリル酸、それらの誘導体などとの共重合により得ることが可能なヒドロキシル基を有するアクリル樹脂;その他アルキド樹脂、エポキシ樹脂などのヒドロキシル基を有する樹脂;等のアルコール類;酢酸、プロピオン酸等の一価の飽和カルボン酸等のカルボン酸類;フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ピロガロール、ビスフェノールA、ビスフェノールB、ビスフェノールS、フェノール樹脂などのフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物;等が挙げられる。
【0045】
これらの活性水素化合物の中でも、反応性や取り扱い性の点からは、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノールなどの1級飽和炭化水素アルコール、ポリエーテルポリオール、水よりなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、また、柔軟性や透湿性付与の観点からは、酸素が直接炭素に結合している化合物または水が好ましい。とりわけ、水、エタノール、ポリエチレングリコールのいずれかが好ましい。
【0046】
本発明における活性水素化合物中の水酸基当量は、該水酸基当量が小さくなると、添加する活性水素化合物の体積が大きくなり、発泡倍率が上がりにくくなるため、0.1mmol/g以上が好ましく、さらに反応性の点から0.5mmol/g以上がより好ましい。
【0047】
なお、発泡剤(D)として、ポリエチレングリコールやポリエチレングリコールモノアリルエーテルのような1分子内に2個以上のヒドロキシル基、もしくはヒドロキシル基とアルケニル基を有する活性水素化合物を用いた場合は、ヒドロシリル基を有する硬化剤(A)中のヒドロシリル基と、発泡剤(D)中の活性水素化合物中のヒドロキシル基との反応により、水素ガスを発生すると共に架橋構造を形成するため、発泡性の低下や発泡体の機械強度が低下する場合があるので、下記のように配合に注意を要する。
【0048】
本発明において発泡剤(D)として、1分子内に2個以上のヒドロキシル基、もしくはヒドロキシル基とアルケニル基を有する活性水素化合物を用いる場合、硬化剤(A)、重合体(B)および発泡剤(D)の配合割合は、各化合物の構造、目的とする発泡倍率、目的とする物性により適宜選択されるものであって特に限定はされないが、硬化剤(A)中のヒドロシリル基のモル数:xと、重合体(B)中のアルケニル基のモル数:yおよび発泡剤(D)中のヒドロキシル基のモル数:zの和との比率が、x/(y+z)=1/10〜50/1であることが好ましく、x/(y+z)=1/5〜30/1であることがより好ましく、x/(y+z)=1/2〜20/1であることがさらに好ましい。x/(y+z)が50/1を越えると、架橋密度が低くなり、十分な機械的強度が得られない場合があり、x/(y+z)が1/10未満であると、十分な発泡、硬化が起こらない場合がある。
【0049】
また、重合体(B)のアルケニル基のモル数:yと発泡剤(D)のヒドロキシル基のモル数:zとの比率には特に限定はなく、目的とする発泡倍率、目的とする物性、硬化剤(A)の骨格、発泡剤(D)の種類により、適宜選定することが出来るが、一般的には、y:z=100:1〜1:100が好ましく、y:z=10:1〜1:20がより好ましい。
【0050】
本発明においては、分子鎖中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する硬化剤(A)、分子鎖中に少なくとも1個のアルケニル基を有し、主鎖を構成する繰返し単位がイソブチレン単位からなる重合体(B)、ヒドロシリル化触媒(C)、発泡剤(D)を含んでなる液状樹脂組成物は、さらに可塑剤(E)を含むことが、成形時の流動性を付与できる傾向があるため好ましい。
【0051】
本発明の可塑剤(E)は、ゴムの流動性、混練性、成形性等の改善に使用される一般的な可塑剤が使用できるが、本発明に用いる重合体(B)との相溶性が良いものが好ましい。このような可塑剤の具体例としては、例えば、ポリブテン、水添ポリブテン、α―メチルスチレンオリゴマー、液状ポリブタジエン、水添液状ポリブタジエン、パラフィン油、ナフテン油、α―ポリオレフィン、セバシン酸エステルやアジピン酸エステルなどの脂肪酸エステルなどが挙げられる。中でも、α―ポリオレフィンを使用することが、本発明の重合体(B)との相溶性が良好であるため特に好ましい。
【0052】
これらの可塑剤(E)の使用量としては、重合体(B)100重量部に対し、好ましくは10重量部以上300重量部以下、より好ましくは20重量部以上250重量部以下、さらに好ましくは20重量部以上100重量部以下である。可塑剤の使用量が重合体(B)100重量部に対し、10重量部未満である場合、液状樹脂組成物の流動性が低く、他の成分を混合することが困難となる場合がある。一方、重合体(B)100重量部に対し、300重量部を超えての使用は、得られる発泡体の強度が不足し、脆くなり、取扱い性が悪くなる傾向がある。
【0053】
本発明においては、分子鎖中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する硬化剤(A)、分子鎖中に少なくとも1個のアルケニル基を有し、主鎖を構成する繰返し単位がイソブチレン単位からなる重合体(B)、ヒドロシリル化触媒(C)、発泡剤(D)を含んでなる液状樹脂組成物に、さらに無機フィラー(F)を含むことが、発泡体のセルの均一性を向上できる傾向があるため好ましい。
【0054】
本発明の無機フィラー(F)としては、微粉末シリカ、カーボンブラック、膠質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、焼成クレイ、タルク、亜鉛華、ケイソウ土、硫酸バリウムなどが挙げられる。このうち、液状樹脂組成物の流動性と、得られる発泡体の強度のバランスから、微粉末シリカ、膠質炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、焼成クレイが好ましい。なかでも、得られる発泡体のセルが小さくかつ均一になる傾向があるため、微粉末シリカがとくに好ましく用いられる。
【0055】
これら無機フィラー(F)の使用量は、使用する成分の種類によって最適な使用量が異なるため、一概には規定しがたいが、無機フィラー(F)の使用量としては、例えば、微粉末シリカを用いる場合、重合体(B)100重量部に対し、1重量部以上300重量部以下が好ましく、より好ましくは2重量部以上200重量部以下であり、さらに好ましくは2重量部以上50重量部未満である。1重量部未満であると、セルの均一性が低下する傾向にあり、300重量部を超えては、液状樹脂組成物の粘度が上がり、成形性が悪くなる傾向にある。
【0056】
また、シリコン系樹脂発泡体の整泡性や、硬化剤(A)、重合体(B)、ヒドロシリル化触媒(C)、発泡剤(D)を含んでなる液状樹脂組成物の相溶性を向上する目的で、界面活性剤を添加することもできる。
【0057】
本発明の液状樹脂組成物には、さらに必要に応じて、充填剤、老化防止剤、ラジカル禁止剤、紫外線吸収剤、接着性改良剤、難燃剤、酸あるいは塩基性化合物(ヒドロシリル基とヒドロキシル基との反応調整のための添加剤であり、酸で縮合反応を抑制し、塩基で加速する。)、保存安定改良剤、オゾン劣化防止剤、光安定剤、増粘剤、カップリング剤、酸化防止剤、熱安定剤、導電性付与剤、帯電防止剤、放射線遮断剤、核剤、リン系過酸化物分解剤、滑剤、顔料、金属不活性化剤、物性調整剤などを、本発明の目的および効果を損なわない範囲において添加することができる。
【0058】
本発明のシリコン系樹脂発泡体の製造方法としては、無機フィラー(F)を重合体(B)に、2軸ミキサーやロール等のように、せん断をかけながら均一に分散できるような方法で混練した後に、分子鎖中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する硬化剤(A)、ヒドロシリル化触媒(C)、発泡剤(D)を混合する方法が挙げられる。
【0059】
混合の順番としては、特に制限されるものではないが、無機フィラーを使用する場合、無機フィラー(F)と重合体(B)を混練したものに、発泡剤(D)、ヒドロシリル化触媒(C)を加えて十分に攪拌し、最後に硬化剤(A)を混合して攪拌し、液状樹脂組成物を得る方法等が挙げられる。可塑剤(E)は、いずれの時点においても添加してもよい。
【0060】
得られた液状樹脂組成物を、金型に流し込み、加熱することにより、発泡・硬化させてシリコン系樹脂発泡体を得る。加熱条件としては、50℃以上300℃以下が好ましく、80℃以上200℃以下がさらに好ましい。加熱温度が50℃未満であると、硬化性が悪くなる傾向があり、300℃を超えると、発泡性が悪くなる傾向がある。
【0061】
本発明のシリコン系樹脂発泡体の発泡倍率としては、好ましくは1.1倍以上30倍以下、さらに好ましくは、1.5倍以上20倍以下である。発泡倍率が30倍を超えるとセルが肥大化する傾向にある。
【0062】
得られたシリコン系樹脂発泡体のセル径は、好ましくは30μm以上700μm以下、さらに好ましくは50μm以上500μm以下、特に好ましくは50μm以上250μm以下である。セル径が700μmを越えると、シリコン系樹脂発泡体の断面を肌に押し付けたときのしっとりした感じがせず、いわゆる肌あたりが悪い傾向にある。
【0063】
なお、セル径は、試料の断面をマイクロスコープにて任意の倍率で観察し、視野中におけるセルの直径を20点測定して平均化したものである。
【0064】
本発明のシリコン系樹脂発泡体の形状としては、特に限定されるものではないが、長方形、正方形、円形、楕円形、ひし形などの多角形や、短冊状やドーナツ型の内部がくりぬいてあるもの、表面に任意の凹凸を付けたもの等が挙げられる。また、発泡・硬化して得られたシリコン系樹脂発泡体を切削加工し、例えば、角を研磨して丸くしたり、繊維を埋め込んで加工してもよい。
【0065】
本発明のシリコン系樹脂発泡体は、耐溶剤性が良好であり、かつ肌あたりが良いため、化粧用パフとして好適に使用することが出来る。
【0066】
化粧用パフは、特にリキッドファンデーション用、日焼け止め用、化粧下地用、美容液用等の用途が挙げられる。本発明のシリコン系樹脂発泡体を化粧用パフとして使用することで、化粧ノリが良く、肌あたりが優れたものでありながら、元の収納ケースに収納できるリキッドタイプの化粧用パフとして使用できる。
【実施例】
【0067】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例および比較例中の測定、評価は、次の条件・方法により行った。なお、特にことわりがない場合、実施例および比較例の部や%は重量基準である。
【0068】
<発泡倍率>
試料から任意の大きさの立方体を切り出し、その3辺のサイズを測定して体積を算出する。試料の重量を測定し、体積で除して発泡倍率とした。
【0069】
<セル径>
試料の断面をマイクロスコープにて任意の倍率で観察し、視野中におけるセルの直径を20点測定して平均化し、セル径とした。
【0070】
<面積膨潤率>
(エタノールへの面積膨潤率)
試料を縦30mm×横30mm、任意の厚さに切り出し、縦×横から、溶剤浸漬前の面積を算出する。その試料を25℃にて95%エタノールに1時間浸漬させる。1時間後、試料を取り出して、縦横の長さを計測し、浸漬後の面積を算出する。以下の式(2)を用いて面積膨潤率を算出する。
面積膨潤率(%)=(浸漬後の面積−浸漬前の面積/浸漬前の面積)×100 (2)
【0071】
(酢酸ブチルへの面積膨潤率)
酢酸ブチルへの面積膨潤率は、前記エタノールへの面積膨潤率の測定において、95%エタノールを酢酸ブチルに代えた他は同様に測定を行い、面積膨潤率を求めた。
【0072】
(流動パラフィンとオクチルメトキシシンナメートが9:1(重量比)の混合液への面積膨潤率)
流動パラフィンとオクチルメトキシシンナメートが9:1(重量比)の混合液への面積膨潤率刃、前記エタノールへの面積膨潤率の測定において、95%エタノールを流動パラフィンとオクチルメトキシシンナメートが9:1(重量比)の混合液(商品名:パルソールMCX、DSM ニュートリション ジャパン製)に代えた他は同様に測定を行い、面積膨潤率を求めた。
【0073】
<化粧用パフとしての使用感評価>
・肌あたり
肌あたりについては、試料の断面を肌に押し付けたときの感触を相対的に比較した。
○:しっとりとした感触
△:肌へのひっかかりなど、若干の違和感がある。
×:違和感があり、不快である。
【0074】
・脆さ
脆さについては、試料の断面を親指で擦ることにより、相対的に比較した。
○:10回擦っても剥がれない
△:3〜9回擦ると破片が剥がれ落ちる
×:1〜2回擦るだけで破片が剥がれ落ちる
【0075】
<使用化合物>
実施例および比較例においては、表1に示す化合物を用いた。
【0076】
【表1】

【0077】
(実施例1)
100部の重合体(B−1)に対して、可塑剤(E)を50部加えて十分に攪拌する。そこに、無機フィラー(F)を10部、発泡剤(D−1)を2.9部、触媒(C)を0.195部加えて均一になるまで攪拌する。そこに、硬化剤(A)を14.5部加えて攪拌し、液状樹脂組成物とした。得られた液状樹脂組成物を金型に流し込み、100℃のオーブンにて30分加熱し、シリコン系樹脂発泡体を得た。得られた試料の評価結果を表2に示す。得られた発泡体は、耐溶剤性が良好で、肌あたりもよかったが、重合体(B−1)の分子量が小さいため、脆いものとなった。
【0078】
【表2】

【0079】
(実施例2)
100部の重合体(B−2)に対して、可塑剤(E)を50部加えて十分に攪拌する。そこに無機フィラー(F)を10部加えて、3本ロールを3回通して無機フィラーを十分に分散させ、マスターバッチを作製する。このマスターバッチに、発泡剤(D−1)を2.9部、触媒(C)を0.195部加えて十分に攪拌する。その後、硬化剤(A)を14.5部加えて攪拌し、液状樹脂組成物を得た。得られた液状樹脂組成物を金型に流し込み、100℃のオーブンにて30分加熱し、シリコン系樹脂発泡体を得た。得られた試料の評価結果を表2に示す。得られた発泡体は、耐溶剤性が良好で、肌あたりも良好であり、脆さも改善されていた。
【0080】
(実施例3)
100部の重合体(B−3)に対して、可塑剤(E)を25部加えて十分に攪拌する。そこに、無機フィラー(F)を2.5部、発泡剤(D−1)を2.9部、触媒(C)を0.049部加えて均一になるまで攪拌する。そこに、硬化剤(A)を14.5部加えて攪拌し、液状樹脂組成物を得た。得られた液状樹脂組成物を金型に流し込み、100℃のオーブンにて30分加熱し、シリコン系樹脂発泡体を得た。得られた試料の評価結果を表2に示す。得られた発泡体は、エタノール、酢酸ブチルへの耐溶剤性は良好であったが、流動パラフィンとオクチルメトキシシンナメートが9:1(重量比)の混合液への耐溶剤性が悪かった。肌あたりは若干の違和感があった。
【0081】
(実施例4)
100部の重合体(B−3)に対して、可塑剤(E)を50部加えて十分に攪拌する。そこに無機フィラー(F)を10部加えて、3本ロールを3回通して無機フィラーを十分に分散させ、マスターバッチを作製する。このマスターバッチに、発泡剤(D−1)を2.9部、触媒(C)を0.195部加えて十分に攪拌する。その後、硬化剤(A)を11.0部加えて攪拌し、液状樹脂組成物を得た。得られた液状樹脂組成物を金型に流し込み、100℃のオーブンにて30分加熱し、シリコン系樹脂発泡体を得た。得られた試料の評価結果を表2に示す。得られた発泡体は、耐溶剤性が良好で、肌あたりも良好であり、脆さも改善されていた。
【0082】
(比較例1)
100部の重合体(B−1)に対して、無機フィラー(F)を10部、発泡剤(D−1)を2.9部、触媒(C)を0.195部加えて十分に攪拌する。さらに、硬化剤(A)を14.5部加えて攪拌し、液状樹脂組成物を得た。得られた液状樹脂組成物を金型に流し込み、100℃のオーブンにて30分加熱し、シリコン系樹脂発泡体を得た。
【0083】
得られた発泡体は、硬化が充分でなく、粘着性があって取扱い性が悪かったため、評価を行うことができなかった。
【0084】
(比較例2)
100部の重合体(B−2)に対して、可塑剤(E)を25部加えて十分に攪拌する。そこに、無機フィラー(F)を2.5部、発泡剤(D−1)を2.9部、触媒(C)を0.049部加えて均一になるまで攪拌する。そこに、硬化剤(A)を14.5部加えて攪拌し、液状樹脂組成物を得た。得られた液状樹脂組成物を金型に流し込み、100℃のオーブンにて30分加熱し、シリコン系樹脂発泡体を得た。得られた試料の評価結果を表2に示す。
【0085】
(比較例3)
100部の重合体(B−4)に対して、発泡剤(D−2)を3.8部、触媒(C)を0.03225部加えて十分に混合し、さらに、硬化剤(A)を12部添加してすばやく混合した。該混合物を金型に注入し、40℃のオーブンで60分加熱し、変成シリコーン樹脂発泡体を得た。得られた試料の評価結果を表2に示す。
【0086】
(参考例1)市販のNBRパフ
市販のNBRパフを評価した。
【0087】
(参考例2)市販のウレタンパフ
市販のウレタンパフを評価した。
【0088】
以上の結果より、本発明のシリコン系樹脂発泡体は、耐溶剤性に優れ、肌あたりが良好であることが理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子鎖中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する硬化剤(A)、
分子鎖中に少なくとも1個のアルケニル基を有し、主鎖を構成する繰返し単位がイソブチレン単位からなる重合体(B)、
ヒドロシリル化触媒(C)、
発泡剤(D)、
を含んでなる液状樹脂組成物から得られるシリコン系樹脂発泡体であって、エタノールへの面積膨潤率が30%以下であり、セル径が30μm以上700μm以下であることを特徴とするシリコン系樹脂発泡体。
【請求項2】
分子鎖中に少なくとも1個のアルケニル基を有し、主鎖を構成する繰返し単位がイソブチレン単位である重合体(B)の数平均分子量が6000以上30000以下である請求項1に記載のシリコン系樹脂発泡体。
【請求項3】
可塑剤(E)を含んでなる請求項1または2に記載のシリコン系樹脂発泡体。
【請求項4】
無機フィラー(F)を含んでなる請求項1から3いずれか一項に記載のシリコン系樹脂発泡体。
【請求項5】
請求項1から4いずれか一項に記載のシリコン系樹脂発泡体からなる化粧用パフ。
【請求項6】
分子鎖中に少なくとも1個のアルケニル基を有し、主鎖を構成する繰返し単位がイソブチレン単位からなる重合体(B)に無機フィラー(F)を混練した後に、分子鎖中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する硬化剤(A)、ヒドロシリル化触媒(C)、発泡剤(D)を混合して液状樹脂組成物とし、該液状樹脂組成物を発泡・硬化させることを特徴とするシリコン系樹脂発泡体の製造方法。

【公開番号】特開2011−57865(P2011−57865A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−209558(P2009−209558)
【出願日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】