説明

耐溶剤性ポリ(ビニルアセタール)を含む輻射線感受性組成物および要素

【課題】耐薬品性が改善されたポジ型画像形成要素を製造するための輻射線感受性組成物を提供すること。
【解決手段】a.特定のポリ(ビニルアセタール)であるアルカリ可溶性のポリマーバインダー、および
b.輻射線吸収性化合物、
を含む輻射線感受性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輻射線感受性組成物およびこれらの組成物を使用して製造されるポジ型の画像形成可能な要素に関する。本発明は、これらの要素を画像形成して、平版印刷版として使用できる画像形成された要素を提供する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
平版印刷では、画像領域として知られるインク受容性領域は、親水性表面上に生成される。この表面を水で濡らし、次いでインクを適用すると、親水性領域は水を保持してインクを撥き、インク受容性領域はインクを受容して水を撥く。インクは、次に、画像を再現させるべき材料の表面に転写される。例えば、インクを、まず中間のブランケットに転写し、次いで、そのブランケットを使用して、画像を再現させるべき材料の表面にインクを転写することができる。
【0003】
平版(またはオフセット)印刷版を製造するのに有用な画像形成可能な要素は、典型的には、基材(または中間層)の親水性表面に適用された1または2つ以上の画像形成可能な層を含む。これらの画像形成可能な層は、適切なバインダー中に分散させることのできる1種または2種以上の輻射線感受性成分を含む。画像形成後、画像形成可能な層における露光領域または非露光領域を適切な現像液により除去して、下方にある基材の親水性表面を露出させる。露光領域が除去される場合は、その要素はポジ型とみなされる。逆に、非露光領域が除去される場合は、その要素はネガ型とみなされる。各場合に、残留する画像形成可能な層の領域はインク受容性であり、現像工程で露出した親水性表面の領域は水または水溶液(典型的には湿し水)を受容し、インクを撥く。
【0004】
同様に、ポジ型組成物を使用して、印刷回路板(PCB)製造におけるレジストパターン、厚膜および薄膜回路、抵抗器、キャパシタ、およびインダクタ、マルチチップデバイス、集積回路、および能動半導体デバイスを形成することができる。
【0005】
コンピューターからのデジタルデータを使用してオフセット印刷版または印刷回路板を直接形成し、マスキング写真フィルムを使用する以前の方法を超える多くの利点をもたらす「レーザー直接画像形成」方法(LDI)が知られている。この分野では、より有効なレーザー、改善された画像形成可能な組成物およびそれらの成分でかなりの発展があった。
【0006】
感熱性の画像形成可能な要素は、好適な量の熱エネルギーへの暴露または好適な量の熱エネルギーの吸収に応答して化学変換を受けるものとして分類できる。熱的に誘発される化学変換の性質は、要素中の画像形成可能な組成物をアブレートするため、または、特定の現像液へのその溶解性を変えるため、あるいは、感熱性層の表面層の粘着性または親水性もしくは疎水性を変えるためのものであることができる。熱画像形成は、それだけで、平版印刷面としてまたはPCB製造におけるレジストパターンとして機能することのできる画像形成可能な層の所定の領域を露光するために使用できる。
【0007】
ノボラックまたは他のフェノール系ポリマーバインダーおよびジアゾキノン画像形成成分を含むポジ型の画像形成可能な組成物は、平版印刷版およびフォトレジスト産業界で長年にわたって広く使用されている。様々なフェノール系樹脂および赤外線吸収性化合物に基づく画像形成可能な組成物もよく知られている。
【0008】
熱記録材料として有用な様々な感熱性組成物が英国特許1,245,924号明細書(Brinckman)に記載されている。それらの組成物によれば、記録材料と接触して配置されるグラフィックオリジナルの背景領域から透過または反射した短時間高強度の可視光および/または赤外線への間接露光によって、画像形成可能な層を加熱することにより、所定の溶剤中への画像形成可能な層の任意の所定の領域の溶解性を増加させることができる。多数の異なる機構により機能し、水ないし塩素化有機溶剤にわたる様々な現像材料を使用する、いくつかのシステムが記載されている。開示されている水性現像可能な組成物としては、ノボラックタイプのフェノール樹脂が挙げられている。この特許明細書には、加熱によって溶解性の増加を示すかかる樹脂のコーテッドフィルムが開示されている。この組成物は、画像を更に着色するために、熱吸収性化合物、例えばカーボンブラックまたはMilori Blue(C.I.ピグメントブルー27)を含有してもよい。
【0009】
熱的に画像形成可能な単層および/または多層要素は、国際公開第97/39894号(Hoare他)、国際公開第98/42507号(West他)、国際公開第99/11458号(Ngueng他)、米国特許第5,840,467号(Kitatani)、米国特許第6,117,623号(Kawauchi)、米国特許第6,060,217号(Nguengら)、米国特許第6,060,218号(Van Damme他)、米国特許第6,110,646号(Urano他)、米国特許第6,117,623号(Kawauchi)、米国特許第6,143,464号(Kawauchi)、米国特許第6,294,311号(Shimazu他)、米国特許第6,352,812号明細書(Shimazu他)、米国特許第6,593,055号(Shimazu他)、米国特許第6,352,811号(Patel他)、米国特許第6,358,669号(Savariar-Hauck他)、米国特許第6,528,228号(Savariar-Hauck他)、米国特許出願公開第2002/0081522号(Miyake他)および米国特許出願公開第2004/0067432号(Kitson他)にも記載されている。
【0010】
産業界は、暴露前に画像形成可能な層におけるフェノール系バインダーの露光領域の溶解性を低下させること(溶解阻害剤)、好適な熱エネルギーへの暴露後にそれらの溶解性を高めること(溶解促進剤)についての必要性に注目してきた。国際公開第2004/081662号(Memetea他)には、ポジ型組成物および要素において、酸性の性質を有する現像促進性化合物と組み合わせて、様々なフェノール系ポリマーまたはポリ(ビニルアセタール)類を使用する事が記載されている。この態様で有用な幾つかの特定のポリ(ビニルアセタール)が米国特許第6,255,033号(Levanon他)および第6,541,1818号(Levanon他)に記載されている。
【0011】
幾つかの有用なポリ(ビニルアセタール)類は、米国特許出願番号第11/677,599号(Levanon他により2007年2月22日に出願)、欧州特許出願公開第1,627,732号(Hatanaka他)、および米国特許出願公開第2005/0214677号(Nagashima)、米国特許出願公開第2005/0214678号(Nagashima)および米国特許出願公開第2006/0275698号(My T.Nguen)に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第97/39894号
【特許文献2】国際公開第98/42507号
【特許文献3】国際公開第99/11458号
【特許文献4】米国特許第5,840,467号明細書
【特許文献5】米国特許第6,117,623号明細書
【特許文献6】米国特許第6,060,217号明細書
【特許文献7】米国特許第6,060,218号明細書
【特許文献8】米国特許第6,110,646号明細書
【特許文献9】米国特許第6,117,623号明細書
【特許文献10】米国特許第6,143,464号明細書
【特許文献11】米国特許第6,294,311号明細書
【特許文献12】米国特許第6,352,812号明細書
【特許文献13】米国特許第6,593,055号明細書
【特許文献14】米国特許第6,352,811号明細書
【特許文献15】米国特許第6,358,669号明細書
【特許文献16】米国特許第6,528,228号明細書
【特許文献17】米国特許出願公開第2002/0081522号明細書
【特許文献18】米国特許出願公開第2004/0067432号明細書
【特許文献19】国際公開第2004/081662号
【特許文献20】米国特許第6,255,033号明細書
【特許文献21】米国特許第6,541,1818号明細書
【特許文献22】欧州特許出願公開第1,627,732号明細書
【特許文献23】米国特許出願公開第2005/0214677号明細書
【特許文献24】米国特許出願公開第2005/0214678号明細書
【特許文献25】米国特許出願公開第2006/0275698号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
オフセット印刷版については、近年、溶剤および通常の印刷室内にある化学薬品に対する耐性について性能要求がますます高まっている。印刷版は、印刷版クリーニング剤、ブランケット洗浄剤、および湿し水中のアルコール代替物などの印刷室の化学薬品に遭遇する。特に、紫外線硬化性インクを使用し、エステル、エーテルまたはケトンを高い含有量で含むすすぎ剤が使用される印刷法では、コンベンショナルなポジ型印刷版の耐薬品性を改善することができる。
【0014】
かかる印刷版の画像領域は、紫外線硬化性インクに実質的に不溶性であり、かつ、印刷稼働中または印刷稼働後に版を清浄にするために使用される溶剤、しばしばグリコールエーテルに実質的に不溶性であるべきである。コンベンショナルなキノンジアジド/フェノール樹脂系輻射線感受性組成物はグリコールエーテル溶剤に可溶であり、紫外線硬化性インクを使用する印刷には不向きである。
【0015】
別の要求は、画像形成された領域が、版の親水性領域を湿らすために使用される湿し水(または湿し液)に実質的に不溶性であるということである。コンベンショナルな湿し水は、大部分が水から構成され、少量のアルコールを含む。最近になって、状況によって、かかる湿し水は、印刷室環境から可燃性アルコール溶剤を除去するために代替添加物を含む配合物に置き換わってきた。このように使用されてきた添加剤は、界面活性剤と、輻射線感受性組成物に対してより攻撃性の高いことがある様々な不揮発性溶剤とを含む。コンベンショナルな輻射線感受性組成物は、代替湿し水による攻撃を比較的受けやすい。
【0016】
ベーキング性が改善され、印刷薬品、例えば平版印刷インク、湿し水、および洗浄に使用される溶剤、UV洗浄液(UV washes)などに対する耐性が改善されたポジ型の感熱画像形成可能な要素が依然として求められている。ベーキングにより印刷版の印刷稼働時間が長くなるために、ベーキング性は非常に望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、新規な組成物およびポジ型要素によって上記の問題を解決する。すなわち、本発明は、
a.アルカリ可溶性ポリマーバインダー、および
b.輻射線吸収性化合物、
を含む輻射線感受性組成物であって、前記アルカリ可溶性ポリマーバインダーは、下記構造(I):
【0018】
【化1】

【0019】
(式中、Aは下記構造(Ia):
【0020】
【化2】

【0021】
により表される反復単位を表し、Bは下記構造(Ib):
【0022】
【化3】

【0023】
により表される反復単位を表し、ここで、RおよびR’は、独立に、水素、または置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換シクロアルキル、あるいはハロ基であり、
1は、置換もしくは非置換フェノール、置換もしくは非置換ナフトール、または置換もしくは非置換アントラセノール基であり、
2は置換もしくは非置換ナフトールであるが、R1とは異なり、
mは少なくとも20モル%であり、nは少なくとも10モル%である)
により表される反復単位を含むポリ(ビニルアセタール)であり、
さらに現像性向上組成物を含む輻射線感受性組成物を提供する。
【0024】
また、本発明は、基材を含み、当該基材上にアルカリ可溶性ポリマーバインダーおよび輻射線吸収性化合物を含む画像形成可能な層を有し、アルカリ可溶性ポリマーバインダーが本明細書に定義する構造(I)または(I−A)により表される反復単位を含むポリ(ビニルアセタール)であるポジ型の画像形成可能な要素を提供する。
【0025】
さらに、本発明は、
A)本発明の画像形成可能な要素を像様露光して、露光領域および非露光領域をもたらすこと、および
B)像様露光された要素を現像して、露光領域だけを除去すること、
を含む印刷版の製造方法も提供する。
【0026】
本発明のポジ型組成物および画像形成可能な要素は、印刷薬品に対する改善された耐性を示し、現像前に予熱工程を必要としない。さらに、本発明の画像形成可能な要素は、改善された感度、印刷機上ランレングス、およびベーキング性(bakeability)を有する。これらの利点は、画像形成可能層に印刷薬品に対して改善された耐性を有する特定の部類のアルカリ可溶性ポリ(ビニルアセタール)バインダーを使用することにより達成された。
【発明を実施するための形態】
【0027】
定義
特に断らない限り、用語「輻射線感受性組成物」および「画像形成可能な要素」は、本明細書において使用された場合に、本発明の実施態様を指すことを意味する。
【0028】
さらに、特に断らない限り、本明細書に記載されている各種成分、例えば「ポリ(ビニルアセタール)」、「輻射線吸収性化合物」、「二次ポリマーバインダー」および「現像性向上化合物」は、各成分の混合物も意味する。したがって、単数で示されても、単一成分だけを必ずしも意味しない。
【0029】
百分率は、特に断らない限り、質量百分率を意味する。
【0030】
「単層の画像形成可能な要素」とは、画像形成にたった1層を必要とする画像形成可能な要素を意味するが、かかる要素は、以下でより詳しく説明するように、様々な特性を提供するために、画像形成可能な層の下または上に1または2つ以上の層(例えばトップコート)を含んでもよい。
【0031】
用語「輻射線吸収性化合物」とは、輻射線の特定の波長に対して感受性であり、それらが配置された層内で光子を熱に変換することができる化合物を意味する。これらの化合物は、当該技術分野で「光熱変換材料」、「増感剤」または「光熱変換剤」としても知られている。
【0032】
ポリマー類に関するどの用語の定義も明確にするため、the International Union of Pure and Applied Chemistry(“IUPAC”)が刊行している「Glossary of Basic Terms in Polymer Science」(Pure Appl. Chem. 68, 2287-2311 (1996))を参照すべきである。しかし、本明細書に明記されているどの定義も支配的とみなされるべきである。
【0033】
用語「ポリマー」および「ポリ(ビニルアセタール)」は、オリゴマーを含む高分子量および低分子量のポリマーを意味し、ホモポリマーとコポリマーの両方を包含する。
【0034】
用語「コポリマー」は、2種以上の異なるモノマーから誘導されたポリマーか、または、同じモノマーから誘導されたとしても2種以上の異なる反復単位を有するポリマーを意味する。
【0035】
用語「主鎖(backbone)」は、ポリマー中の原子の鎖であって、複数のペンダント基が結合している鎖を意味する。かかる主鎖の例は、1種または2種以上の重合性エチレン系不飽和モノマーの重合によって得られる「全炭素(all carbon)」の主鎖である。しかし、別の主鎖は、ポリマーが縮合反応または他の方法で製造される場合、ヘテロ原子を含むことがある。
【0036】
用途
本発明の輻射線感受性組成物は、印刷回路板(PCB)の製造、厚膜および薄膜回路、抵抗器、キャパシタ、およびインダクタ、マルチチップデバイス、集積回路、および能動半導体デバイスにレジストパターンを形成するために使用できる。さらに、そして好ましくは、本発明の輻射線感受性組成物は、ポジ型の画像形成可能な要素を提供するために使用でき、ポジ型の画像形成可能な要素は、平版印刷版を提供するために使用できる。他の用途は、当業者が容易に分かるであろう。
【0037】
輻射線感受性組成物
輻射線感受性組成物は、以下で定義するようなポリ(ビニルアセタール)類である1または2種以上のアルカリ可溶性のポリマーバインダーを含む。これらのポリ(ビニルアセタール)類は、当該組成物または画像形成可能な層中に存在する「一次(primary)」ポリマーバインダーと見なす。有用なポリマーの質量平均分子量(Mw )は概して少なくとも5,000であり、最大300,000に及ぶことがあり、典型的には20,000〜50,000である。最適なMw は、個々のポリマーおよびその用途によって変わりうる。
【0038】
アルカリ可溶性の一次ポリマーバインダーは、下記構造(I):
【0039】
【化4】

【0040】
(式中、Aは下記構造(Ia):
【0041】
【化5】

【0042】
により表される反復単位を表し、Bは下記構造(Ib):
【0043】
【化6】

【0044】
により表される反復単位を表す)
により表される反復単位を含むポリ(ビニルアセタール)である。
【0045】
実施態様によっては、上記の有用なポリ(ビニルアセタール)類は、下記構造(Ic)、(Id)、(Ie)、(If)および(Ig)により表される反復単位のうちの1つまたは2つ以上をさらに含む。
【0046】
【化7】

【0047】
上記の構造において、RおよびR’は、独立に、水素、または、炭素原子数1〜6の置換もしくは非置換の線状もしくは分岐アルキル基(例えば、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、クロロメチル、トリクロロメチル、iso−プロピル、iso−ブチル、t−ブチル、iso−ペンチル、neo−ペンチル、1−メチルブチルおよびiso−ヘキシル基など)、または、環内に3〜6個の炭素原子を有する置換もしくは非置換シクロアルキル(例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、メチルシクロヘキシルおよびシクロヘキシル基)、あるいは、ハロ基(例えば、フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨード)である。典型的には、RおよびR’は、独立に、水素、または、置換もしくは非置換メチルまたはクロロ基であるか、あるいは、例えばそれらは独立に水素または非置換メチルである。
【0048】
1は置換もしくは非置換フェノール、置換もしくは非置換ナフトール、または置換もしくは非置換アントラセノール基である。これらのフェノール、ナフトールおよびアントラセノール基は最大3個までのさらなる置換基を有することができ、かかる置換基としては、さらなるヒドロキシ置換基、メトキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオアリールオキシ、ハロメチル、トリハロメチル、ハロ、ニトロ、アゾ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、シアノ、アミノ、カルボキシ、エテニル、カルボキシアルキル、フェニル、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールおよび複素脂環式基が挙げられる。例えば、R1は非置換フェノールまたはナフトール基、例えば2−ヒドロキシフェニルまたはヒドロキシナフチル基であることができる。
【0049】
2は置換または非置換ナフトール基である。R2は、R1について先に述べたように最大3個までの置換基を有することができる。さらに、R2はR1と異なる。
【0050】
3は、炭素原子数2〜4の置換もしくは非置換アルキニル基(例えばエチニル基など)、または置換もしくは非置換フェニル基、例えばカルボキシ置換フェニル基など(フェニル、4−カルボキシフェニル、カルボキシアルキレンオキシフェニルおよびカルボキシアルキルフェニル基など)である。
【0051】
4は−O−C(=O)−R5基であり、R5は炭素原子数1〜12の置換もしくは非置換アルキル基、または芳香環内に6もしくは10個の炭素原子を有する置換もしくは非置換アリール基(例えば、フェニル、キシリル、トリル、p−メトキシフェニル、3−クロロフェニルおよびナフチルなどの置換もしくは非置換のフェニルおよびナフチル基)である。典型的には、R5は炭素原子数1〜6の置換もしくは非置換アルキル、例えば非置換メチルまたはエチル基である。
【0052】
6はヒドロキシ基である。
7は以下の基:
【0053】
【化8】

【0054】
(式中、Xは直接単結合または−O−CH2−基である)
である。
【0055】
7が「非開環(unopened)」形態(すなわち、縮合環)で示されているが、R7は、複素環式環が存在せず、かつ、−CH<基とフェニル環との間に結合が存在せず、さらなる炭素原子価が水素原子で置き換えられた「開環」形態で存在し得ることも当業者には明らかであろう。すなわち、R7の「開環」および「非開環」形態は、本発明の目的に対して等価であると考えられる。
【0056】
構造(I)において、mは少なくとも20モル%、典型的には少なくとも30モル%、または50〜80モル%であり、nは少なくとも10モル%、典型的には少なくとも20モル%である。mとnの合計(m+n)は、実施上可能な程度で高い値をとることができるが、実施態様によっては、この合計は75モル%以下、典型的には60モル%以下である。
【0057】
上記構造(Ic)、(Id)、(Ie)、(If)および(Ig)により表される反復単位は、存在する場合には、以下の量でポリマーバインダー中に存在する:
構造(Ic)により表される反復単位:2〜10モル%、
構造(Id)により表される反復単位および(Ie)により表される反復単位の一方または両方:2〜25モル%、
構造(If)により表される反復単位:1〜15モル%、および
構造(Ig)により表される反復単位:15〜30モル%。
【0058】
実施態様によっては、アルカリ可溶性ポリマーバインダーは、下記構造(I−A):
【0059】
【化9】

【0060】
により表される。
【0061】
ここで、Aは下記構造(Ia):
【0062】
【化10】

【0063】
により表される反復単位を表し、Bは下記構造(Ib):
【0064】
【化11】

【0065】
により表される反復単位を表し、Cは下記構造(Ic):
【0066】
【化12】

【0067】
により表される反復単位を表し、Dは下記構造(Id):
【0068】
【化13】

【0069】
により表される反復単位を表し、Eは下記構造(Ie):
【0070】
【化14】

【0071】
により表される反復単位を表し、Fは下記構造(If):
【0072】
【化15】

【0073】
により表される反復単位を表し、Gは下記構造(Ig):
【0074】
【化16】

【0075】
により表される反復単位を表し、ここで、RおよびR’、R1、R2、R3、R4、R5、R6およびR7は先に定義したとおりであり、
mは少なくとも30モル%であり、nは少なくとも20モル%であり、mとnの合計(m+n)は60モル%以下であり、
pは2〜10モル%であり、
qおよびrは独立に2〜25モル%であり、
sは1〜15モル%であり、
tは15〜30モル%である。
【0076】
構造(I)または(I−A)により表される反復単位を含む一次ポリマーバインダーは、上記の構造により定義されるもの以外の反復単位を含んでよく、かかる反復単位は当業者に明らかであろう。すなわち、構造(I)および(I−A)は、広い意味で、定義した反復単位に限定されない。しかしながら、実施態様によっては、構造(I)または(I−A)で具体的に定義した反復単位のみが存在する。
【0077】
構造(Ia)〜(Ig)の先に定義した部類の反復単位のうちのいずれかに属し、異なる置換基を有する複数のタイプの反復単位が存在してもよい。例えば、異なる複数のR1基を有する構造(Ia)の複数のタイプの反復単位が存在してもよい。かかる複数の反復単位は、構造(Ib)、(Ic)、(Id)、(Ie)、(If)および(Ig)のうちのいずれかにより表されるものについても当てはまる。
【0078】
輻射線感受性層を形成する輻射線感受性組成物中の一次ポリマーバインダーの含有量は、一般的に、総乾燥質量の10〜99%、典型的には総乾燥質量の30〜95%である。実施態様の多くは、全組成物または層の乾燥質量の50〜90%の量で一次ポリマーバインダーを含む。
【0079】
本明細書に記載の構造(I)または(I−A)のポリ(ビニルアセタール)類は、米国特許第6,541,181号明細書(上記)に記載されているものを含む公知の出発物質および反応条件を使用して調製できる。
【0080】
例えば、ポリビニルアルコールのアセタール化は、例えば米国特許第4,665,124号明細書(Dhillon他)、米国特許第4,940,646号明細書(Pawlowski)、米国特許第5,169,898号明細書(Walls他)、米国特許第5,700,619号明細書(Dwars他)および米国特許第5,792,823号明細書(Kim他)並びに特開平9-328519号公報(Yoshinaga)に記載されているような公知の標準的な方法に従って行うことができる。
【0081】
このアセタール化反応は、一般的に、強い無機または有機触媒酸の添加を必要とする。触媒酸の例は、塩酸、硫酸、リン酸、およびp−トルエンスルホン酸である。例えばペルフルオロアルキルスルホン酸および他のペルフルオロ活性化酸などの他の強酸も有用である。酸の量は、効果的にプロトン化を引き起こす量であるが、アセタール基の望ましくない加水分解をもたらすことにより最終生成物を実質的に変えない量である。アセタール化の反応温度は、アルデヒドの種類、および所望の置換度に依存する。アセタール化の反応温度は、0℃から、もし、適用できるならば、溶剤の沸点までである。有機溶剤、および水と有機溶剤の混合物が、この反応に使用される。例えば、好適な有機溶剤は、アルコール(例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノールおよびグリコールエーテル)、環状エーテル(例えば1,4−ジオキサン)、並びに双極性非プロトン性溶剤(例えばN,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンまたはジメチルスルホキシド)である。アセタール化が有機溶剤中または有機溶剤と水の混合物中で起こる場合には、原料のポリビニルアルコールが完全に溶解しなかった場合であっても、反応生成物は往々にして溶液中に残る。有機溶剤中への原料のポリビニルアルコールの不完全な溶解は、再現性のない変換度および異なる生成物をもたらすことがあるという1つの欠点である。ポリビニルアルコールの完全な溶解を達成し、アセタール化の結果として再現性のある生成物を得るには、水、または有機溶剤と水の混合物を使用するべきである。様々なアセタール化剤の添加順序は、往々にして重要でなく、異なる調製順序から同程度の最終生成物が得られる。最終生成物を固形物として単離するために、ポリマー溶液を、激しく攪拌しながら非溶媒中に導入し、濾過により取り出し、乾燥させる。ポリマーの非溶媒としては水が特に適する。
【0082】
ヒドロキシル置換芳香族アルデヒドとのアセタール化により達成されるアセタール基の望ましくない加水分解は、同じ合成条件で、脂肪族または置換されていない芳香族アルデヒドからまたはカルボキシル部分を含むアルデヒドから形成されたアセタールの場合よりもかなり容易に起こる。反応混合物中にほんの僅かな量の水が存在する場合でも、アセタール化の程度の減少、および使用された芳香族ヒドロキシアルデヒドの不完全な変換をもたらす。一方、水の不在下では、ヒドロキシ置換芳香族アルデヒドは、アルコールのヒドロキシ基と即座に、ほぼ100%の変換率でもって反応する。そのため、所望のポリビニルアセタールを得るためのヒドロキシ置換芳香族アルデヒドによるポリビニルアルコールのアセタール化方法は、当該技術分野で知られているやり方とは異なるやり方で行うことができる。合成中に反応混合物から減圧蒸留により水を除去し、有機溶剤と置き換えることができる。残留水は、水と容易に反応する有機物質を混合物に加えることにより除去することができ、反応の結果として、揮発性物質と不活性化合物が生成する。これらの物質は、水と容易に反応するカーボネート、炭酸またはカルボン酸のオルトエステル、シリカ含有化合物、例えば、ジエチルカーボネート、トリメチルオルトホルメート、テトラエチルカーボネート、およびテトラエチルシリケートなどから選択できる。反応混合物へのこれらの物質の添加は、使用されたアルデヒドの100%の変換をもたらす。
【0083】
例えば、有用なポリ(ビニルアセタール)の調製は、原料ポリビニルアルコールの80〜90℃のDMSO中への溶解から開始することができ、次に溶液を60℃に冷却し、有機溶剤中に溶解した酸性触媒を加える。次に、この溶液に同じ溶剤中の脂肪族アルデヒドの溶液を加え、溶液を60℃に30分間維持し、同じ溶剤中の芳香族アルデヒドおよび/またはカルボン酸置換アルデヒド、あるいは他のアルデヒドの溶液を加える。反応混合物にアニソールを加え、水とアニソールの共沸混合物を蒸留により除去し、有機溶剤と置き換える。この段階で、芳香族ヒドロキシアルデヒドの変換率は95〜98%に達する。反応混合物中の酸を中和し、混合物を水とブレンドしてポリマーを析出させ、ポリマーを濾過し、水で洗浄し、乾燥させる。ベンザールへの芳香族ヒドロキシアルデヒドの100%の変換を達成する第2の方法は、反応混合物にアルデヒドを加えた後に、上記の水を除去する有機物質(例えばカーボネートまたはオルトホルメート)を加えることである。
【0084】
全てのアセタール基は6員環式アセタール基である。ラクトン部分は、反応の蒸留段階中の脱水によりクロトン酸成分から誘導される。
【0085】
ポリ(ビニルアセタール)は、一般的に、輻射線感受性組成物中に存在し、画像形成可能な要素の画像形成可能な層は、当該組成物または層中の全固形分を基準にして、一般的に10質量%〜99質量%、典型的には30〜95質量%である。実施態様の多くは、全固形分を基準にして50〜90質量%の量でポリ(ビニルアセタール)を含む。
【0086】
本明細書に記載のポリ(ビニルアセタール)類は、一般的に、輻射線感受性組成物または画像形成可能な層中の全ポリマーバインダーの10質量%〜100質量%を構成し、典型的には全ポリマーバインダーの50〜100質量%を構成する。
【0087】
本明細書に記載のポリ(ビニルアセタール)類は、単独で、または、他のアルカリ可溶性ポリマーバインダー(ここでは、「二次ポリマーバインダー」と呼ぶ)との混合物で使用できる。これらのさらなるポリマーバインダーとしては、上記一次ポリマーバインダーの範囲外[すなわち構造(I)または(I−A)の範囲に含まれない]のポリ(ビニルアセタール)類、例えば、米国特許第6,255,033号および第6,541,181号(上記)、国際公開第04/081662号(上記)、および本願出願人に譲渡された同時係属米国特許出願第11/677,599号(Levanon他により2007年2月に出願)に記載されているポリ(ビニルアセタール)類が挙げられる。
【0088】
一次ポリマーバインダーと併用することのできる二次ポリマーバインダーのタイプは特に制限されない。一般的に、画像形成可能な要素のポジ型輻射線感受性を低下させないという観点から、二次ポリマーバインダーも一般的にアルカリ可溶性ポリマーである。
【0089】
他の有用な二次ポリマーバインダーとしては、例えば、フェノール系樹脂が挙げられ、フェノール系樹脂としては、例えば、フェノールとホルムアルデヒドの縮合ポリマー、m−クレゾールとホルムアルデヒドの縮合ポリマー、p−クレゾールとホルムアルデヒドの縮合ポリマー、m−/p−混合クレゾールとホルムアルデヒドの縮合ポリマー、フェノールとクレゾール(m−,p−,またはm−/p−混合物)とホルムアルデヒドの縮合ポリマー、およびピロガロールとアセトンの縮合ポリマーが挙げられる。さらに、フェノール基を側鎖に含む化合物を共重合させることにより得られたコポリマーを使用できる。かかるポリマーバインダーの混合物も使用できる。
【0090】
少なくとも1,500の質量平均分子量および少なくとも300の数平均分子量を有するノボラック樹脂が有用である。一般的に、質量平均分子量は3,000〜300,000の範囲内にあり、数平均分子量は500〜250,000であり、分散度(質量平均分子量/数平均分子量)は1.1〜10の範囲内にある。
【0091】
1種または2種以上のポリ(ビニルアセタール)類と1種または2種以上のフェノール系樹脂の混合物などの上記の一次ポリマーバインダーの特定の混合物を使用することができる。例えば、1種または2種以上のポリ(ビニルアセタール)類と1種または2種以上のノボラックまたはレゾール樹脂(またはノボラックおよびレゾール樹脂の両方)との混合物を使用できる。
【0092】
他の二次ポリマーバインダーの例としては、以下に示す(1)〜(5)の範疇に含まれる酸性基を主鎖および/または側鎖(ペンダント基)上に有する以下の部類のポリマーが挙げられる。
(1)スルホンアミド(−SO2NH−R)、
(2)置換スルホンアミド系酸基(以下、活性イミド基と呼ぶ)[例えば−SO2NHCOR,SO2NHSO2R,−CONHSO2R]、
(3)カルボン酸基(−CO2H)、
(4)スルホン酸基(−SO3H)、および
(5)リン酸基(−OPO32)。
上記の基(1)〜(5)中のRは水素または炭化水素基を表す。
【0093】
基(1)のスルホンアミド基を有する代表的な二次ポリマーバインダーは、例えば、スルホンアミド基を有する化合物から誘導された主たる構成成分として最低限の構成単位から成るポリマーである。かかる化合物の例としては、少なくとも1個の水素原子が窒素原子に結合している少なくとも1個のスルホンアミド基と少なくとも1個の重合性不飽和基とをその分子中に有する化合物が挙げられる。これらの化合物には、m−アミノスルホニルフェニルメタクリレート、N−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、およびN−(p−アミノスルホニルフェニル)アクリルアミドなどがある。すなわち、例えば、m−アミノスルホニルフェニルメタクリレート、N−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、またはN−(p−アミノスルホニルフェニル)アクリルアミドなどのスルホンアミド基を有する重合性モノマーのホモポリマーまたはコポリマーを使用できる。
【0094】
基(2)の活性化イミド基を有する二次ポリマーバインダーの例は、主たる構成成分として活性イミド基を有する化合物から誘導された反復単位を含むポリマーである。かかる化合物の例としては、下記の構造式により定義される部分を有する重合性不飽和化合物が挙げられる。
【0095】
【化17】

【0096】
N−(p−トルエンスルホニル)メタクリルアミドおよびN−(p−トルエンスルホニル)アクリルアミドはかかる重合性化合物の例である。
【0097】
基(3)〜(5)のいずれかを有する二次ポリマーバインダーとしては、望ましい酸性基または重合後にかかる酸性基に変換できる基を有するエチレン系不飽和重合性モノマーを反応させることにより容易に調製されるものが挙げられる。
【0098】
(1)〜(5)から選択される酸性基を有する最低限の構成単位について、ポリマー中にたった1種の酸性基を使用する必要はなく、実施態様によっては、少なくとも2種の酸性基を存在させることが有用な場合がある。言うまでもなく、二次ポリマーバインダー中の全ての反復単位が上記酸性基のうちの1つを持たなくてはならないわけではないが、通常、少なくとも10モル%、典型的には少なくとも20モル%が上記の酸性基のうちの1つを有する反復単位から構成される。
【0099】
二次ポリマーバインダーは、少なくとも2,000の質量平均分子量および少なくとも500の数平均分子量を有することができる。典型的には、質量平均分子量は5,000〜300,000であり、数平均分子量は800〜250,000であり、分散度(質量平均分子量/数平均分子量)は1.1〜10である。
【0100】
二次ポリマーバインダーの混合物を1種または2種以上のポリマーバインダーと併用してもよい。二次ポリマーバインダーは輻射線感受性組成物または画像形成可能な層中の全ポリマーバインダーの乾燥質量を基準として、少なくとも1質量%、かつ、50質量%以下、典型的には5〜30質量%の量で存在することができる。
【0101】
輻射線感受性組成物は、1または2種以上の現像性向上化合物を含む現像性向上組成物も含むことができる。実施態様によっては、かかる化合物は、300℃を超える沸点、およびn−ブチルアセテートに対して0.01未満である蒸発速度を有する。有用な塩基性窒素含有有機化合物のほとんどは25℃で液体である。必要に応じて、これらの化合物のうちの2種または3種以上を使用できる。
【0102】
現像性向上組成物において有用な塩基性窒素含有有機化合物の例には、N−(2−ヒドロキシエチル)−2−ピロリドン、1−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン、N−フェニルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−[ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ]−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)−エチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)−エチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)−エチレンジアミン、およびヘキサヒドロ−1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)−s−トリアジンがある。塩基性窒素含有有機化合物は、BASF(ドイツ国)およびAldrich Chemical Company(ウィスコンシン州ミルウォーキー)などの多くの商業的供給源から入手できる。これらの化合物についてのさらなる詳細は、本願出願人に譲渡された同時係属米国特許出願第11/677,599号(上記)に記載されている。塩基性窒素含有有機化合物は、輻射線感受性組成物(および画像形成可能な層)中に、輻射線感受性組成物の全固形分または画像形成可能な層の全乾燥質量を基準にして、1〜30質量%、典型的には3〜15質量%の量で存在することができる。
【0103】
1種または2種以上の酸性の現像性向上化合物、例えば、カルボン酸もしくは環状酸無水物、スルホン酸、スルフィン酸、アルキル硫酸、ホスホン酸、ホスフィン酸、ホスホン酸エステル、フェノール類、スルホンアミド類またはスルホンイミド類などと組み合わせて、これらの塩基性窒素含有有機化合物のうちの1種または2種以上を使用することもできる。なぜなら、かかる組み合わせは、現像ラチチュードおよび印刷耐久性のより一層の向上をもたらすことができるからである。かかる化合物の代表例は、米国特許出願公開第2005/0214677号明細書(上記)の[0030]〜[0036]に記載されており、米国特許出願公開第2005/0214677号明細書の記載は、酸現像性向上化合物に関して本明細書に援用する。かかる酸性の現像性向上化合物は、輻射線感受性組成物または画像形成可能な層の全乾燥質量を基準にして0.1〜30質量%の量で存在することができる。場合によって、これらの酸性の現像性向上化合物のうちの少なくとも2種が、上記の塩基性窒素含有有機化合物のうちの1種または2種以上(例えば2種)と組み合わせて使用される。
【0104】
上記の塩基性および酸性の化合物の組み合わせにおいて、1種または2種以上の酸性の現像性向上化合物に対する1種または2種以上の塩基性窒素含有有機化合物のモル比は0.1:1〜10:1であり、より典型的には0.5:1〜2:1である。
【0105】
輻射線感受性組成物は、画像形成可能な層について以下に記載するような他の任意添加剤を含んでもよい。
【0106】
画像形成可能な要素
画像形成可能な要素はポジ型の画像形成可能な要素であり、本明細書に記載のポリ(ビニルアセタール)は一般的にこれらの要素の1つの画像形成可能な層中にポリマーバインダーとして存在する。上記のように、ポリ(ビニルアセタール)は、画像形成可能な層中の唯一のポリマーバインダーであるか、1種または2種以上の第2のポリマーバインダーとの混合物で使用できる。
【0107】
一般的に、画像形成可能な要素は、1種または2種以上のポリマーバインダーと、輻射線吸収性化合物(下記)、任意選択的に現像性向上組成物、および他の任意添加剤を含む輻射線感受性組成物の配合物を適切な基材に適切に適用して画像形成可能な層を形成することにより形成される。この基材は、通常、前記配合物の適用に先立って、下記のような様々な方法で処理またはコーティングされる。接着性または親水性の向上のための「中間層」をもたらすように基材を処理することができ、この中間層上に1つの画像形成可能な層が適用される。
【0108】
基材は、一般的に、親水性表面を有するかまたは画像形成側の適用された画像形成用配合物よりも高い親水性を有する表面を少なくとも有する。基材は支持体を含み、その支持体は、平版印刷版などの画像形成可能な要素を製造するため通常使用されているいかなる材料から構成されたものであってもよい。支持体は、通常、シート、フィルムまたは箔の形態にあり、色記録がフルカラー画像を記録するように、使用条件下で、強力で安定であり、可撓性でかつ寸法の変化に対して抵抗性がある。典型的には、支持体は、ポリマーフィルム(例えば、ポリエステル、ポリエチレン、ポリカーボネート、セルロースエステルポリマーおよびポリスチレンのフィルムなど)、ガラス、セラミック類、金属シートもしくは箔、または剛性紙(樹脂コート紙および金属化紙など)、またはこれら材料のいずれかの積層体(例えば、ポリエステルフィルム上にアルミニウム箔を積層したもの)などのいかなる自立性材料でもよい。金属支持体としては、アルミニウム、銅、亜鉛、チタンおよびこれらの合金のシートまたは箔が挙げられる。
【0109】
ポリマーフィルム支持体は、親水性を高めるために片面または両面が「下引き」層で改質されていてもよく、また、紙製支持体は、平坦性を高めるために同様にコートされていてもよい。下引き層の材料の例としては、アルコキシシラン類、アミノ−プロピルトリエトキシシラン類、グリシジオキシプロピル−トリエトキシシラン類およびエポキシ官能性ポリマー類、並びにハロゲン化銀写真フィルムに使用されるコンベンショナルな親水性下引き材料(例えば、ゼラチンおよび他の天然に産出するおよび合成の親水性コロイド、並びに塩化ビニリデンコポリマーなどのビニルポリマー類)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0110】
ある基材は、アルミニウム支持体で構成され、このアルミニウム支持体は、物理的粗面化、電気化学的粗面化および化学的粗面化などの当該技術分野で知られている方法を用いてコーティングまたは処理され、その後、陽極酸化処理されていてもよい。好ましくは、アルミニウムシートは、機械的または電気化学的に粗面化され、次いで、リン酸または硫酸とコンベンショナルな手順を用いて陽極酸化される。
【0111】
アルミニウム支持体を、例えばシリケート、デキストリン、フッ化ジルコニウムカルシウム、ヘキサフルオロケイ酸、ホスフェート/フッ化ナトリウム、ポリ(ビニルホスホン酸)(PVPA)、ビニルホスホン酸コポリマー、ポリアクリル酸またはアクリル酸コポリマー溶液、あるいは英国特許第2,098,627号明細書および特開昭57−195697号公報(共にHerting他)に記載されているような縮合アリールスルホン酸で処理することによって、任意の中間層を形成できる。粗面化され陽極酸化処理されたアルミニウム支持体を、既知の手順を用いてポリアクリル酸で処理して表面の親水性を改善することが好ましい。
【0112】
基材の厚さは、変えることができるが、印刷による摩耗に耐えるように十分厚く、かつ、印刷版を巻けるように十分薄くなければならない。好ましい実施態様としては、100〜600μmの厚さを有する処理されたアルミニウム箔が挙げられる。
【0113】
画像形成可能な要素の取扱いと「触感」を改善するために、基材の裏面(非画像形成側)に帯電防止剤および/またはスリップ層もしくは艶消し層をコートしてもよい。
【0114】
基材は、適用された輻射線感受性組成物を上に有する円筒形表面であってもよく、従って、印刷機の一体部分であってもよい。かかる画像形成された円筒状物の使用については、例えば、米国特許第5,713,287号明細書(Gelbart)に記載されている。
【0115】
従って、画像形成可能な層は、分岐ヒドロキシスチレンポリマー(上記)のうちの1種または2種以上と、1種または2種以上の輻射線感受性化合物を含む。これらの化合物は、150〜1500nmの任意の好適なエネルギー形態(例えば紫外線および可視光)に対して感受性であることができるが、これらの化合物は赤外線に対して感受性であることが好ましい。そのため、輻射線吸収性化合物は、600〜1400nm、好ましくは700〜1200nmの輻射線を吸収する赤外線吸収性化合物(「IR吸収性化合物」)として知られている。画像形成可能な層は、一般的に、単層の画像形成可能な要素において最外層である。
【0116】
適切な赤外線(IR)染料の例としては、アゾ染料、スクアリリウム染料、クロコネート染料、トリアリールアミン染料、チオアゾリウム染料、インドリウム染料、オキソノール染料、オキサゾリウム染料、シアニン染料、メロシアニン染料、フタロシアニン染料、インドシアニン染料、インドトリカルボシアニン染料、ヘミシアニン染料、ストレプトシアニン染料、オキサトリカルボシアニン染料、チオシアニン染料、チアトリカルボシアニン染料、メロシアニン染料、クリプトシアニン染料、ナフタロシアニン染料、ポリアニリン染料、ポリピロール染料、ポリチオフェン染料、カルコゲノピリロアリーリデン染料およびビ(カルコゲノピリロ)ポリメチン染料、オキシインドリジン染料、ピリリウム染料、ピラゾリンアゾ染料、オキサジン染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、キノンイミン染料、メチン染料、アリールメチン染料、ポリメチン染料、スクアリン染料、オキサゾール染料、クロコニン染料、ポルフィリン染料、および上記の染料の部類の置換形態物またはイオン性形態物が挙げられるが、これらに限定されない。適切な染料は、例えば米国特許第4,973,572号(DeBoer)、第5,208,135号(Patel他)、第5,244,771号(Jandrue Sr.他)および第5,401,618号明細書(Chapman他)並びに欧州特許出願公開第0 823 327 A1号(Nagasaka他)に記載されている。
【0117】
陰イオン性発色団を有するシアニン染料も有用である。例えば、シアニン染料は、2個の複素環式基を有する発色団を有することがある。別の実施態様において、シアニン染料は、少なくとも2個のスルホン酸基を有してよく、例えば2個のスルホン酸基と2個のインドレニン基を有してよい。このタイプの有用なIR感受性シアニン染料は、例えば米国特許出願公開第2005-0130059号明細書(Tao)に記載されている。
【0118】
有用な部類の好適なシアニン染料についての概要が、国際公開第2004/101280号(Munnelly他)の[0026]に式で示されている。
【0119】
低分子量IR吸収性染料に加えて、ポリマーに結合されたIR染料部分も利用できる。さらに、IR染料カチオンも利用できる。すなわち、このカチオンは、カルボキシ、スルホ、ホスホまたはホスホノ基を側鎖に有するポリマーとイオン的に相互作用する染料塩のIR吸収性部分である。
【0120】
近赤外線吸収性シアニン染料も有用であり、例えば米国特許第6,309,792号(Hauck他)、米国特許第6,264,920号(Achilefu他)、米国特許第6,153,356号(Urano他)および米国特許第5,496,903号明細書(Watanate他)に記載されている。適切な染料は、通常の方法と出発物質を使って製造することができ、あるいは、American Dye Source(カナダ国ケベック州べ・ウルフェ(Baie D'Urfe)およびFEW Chemicals(ドイツ国)などの様々な商業的供給源から入手可能である。近赤外ダイオードレーザービーム用の他の有用な染料は、例えば、米国特許第4,973,572号明細書(上記)に記載されている。以下のIR染料、並びに下記実施例において使用したIR染料は、有用な輻射線吸収性化合物の代表的なものであり、限定を意図したものでは決してない。
【0121】
【化18】

【0122】
アニオンとしてCCOを有することを除いて上記のものと同じもの。
【0123】
【化19】

【0124】
【化20】

【0125】
【化21】

【0126】
【化22】

【0127】
有用な赤外線吸収性化合物としては、例えば可溶化基により表面官能化されたカーボンブラックなどのカーボンブラックを包含する様々な顔料が挙げられ、当該技術分野でよく知られている。親水性の非イオン性ポリマーにグラフト化したカーボンブラック、例えばFX-GE-003(Nippon Shokubai製)など、または、陰イオン性基により表面官能化されたカーボンブラック、例えばCAB-O-JET(登録商標)200またはCAB-O-JET(登録商標)300(Cabot Corporation製)も有用である。他の有用な顔料としては、ヘリオゲングリーン(Heliogen Green)、ニグロシンベース(Nigrosine Base)、酸化鉄(III)、酸化マンガン、プルシアンブルーおよびパリスブルーが挙げられるが、これらに限定されない。顔料粒子のサイズは、画像形成可能な層の厚さよりも大きくてはならず、顔料のサイズが画像形成可能な層の厚さの半分未満であることが好ましい。
【0128】
画像形成可能な要素において、輻射線吸収性化合物は一般的に、0.1〜20質量%の乾燥被覆量で存在し、あるいは、輻射線吸収性化合物は0.5〜5質量%の量で存在するIR染料である。あるいは、この量は、反射UV−可視分光光度計により求めた場合に、乾燥フィルムにおいて、0.05〜3、好ましくは0.1〜1.5の範囲内の吸光度により規定することができる。この目的に必要な具体的な量は、使用される個々の化合物に応じて、当業者であれば容易に分かるであろう。
【0129】
代わりに、輻射線吸収性化合物を、1つの画像形成可能な層と熱的に接触している別個の層の中に含めてもよい。この場合、画像形成中に、輻射線吸収性化合物の作用を、元々当該化合物が配合されていなかった画像形成可能な層に移すことができる。
【0130】
画像形成可能な層(および輻射線感受性組成物)は、着色染料である1種または2種以上のさらなる化合物を含んでもよい。アルカリ性現像液中に可溶な着色染料が有用である。着色染料に対して有用な極性基としては、エーテル基、アミン基、アゾ基、ニトロ基、フェロセニウム基、スルホキシド基、スルホン基、ジアゾ基、ジアゾニウム基、ケト基、スルホン酸エステル基、リン酸エステル基、トリアリールメタン基、オニウム基(例えばスルホニウム基、ヨードニウム基およびホスホニウム基)、複素環式環中に窒素原子が組み込まれている基、および正電荷を帯びた原子を含む基(例えば第4級化アンモニウム基)が挙げられるが、これらに限定されない。着色染料として有用な正電荷を帯びた窒素原子を含む化合物としては、例えば、テトラアルキルアンモニウム化合物ならびに第4級化複素環式化合物、例えば、キノリニウム化合物、ベンゾチアゾリウム化合物、ピリジニウム化合物、およびイミダゾリウム化合物が挙げられる。さらなる詳細および溶解阻害剤として有用な代表的な化合物は例えば米国特許第6,294,311号明細書(上記)に記載されている。有用な着色染料としては、トリアリールメタン染料、例えば、エチルバイレット、クリスタルバイオレット、マラカイトグリーン、ブリリアントグリーン、ビクトリアブルーB、ビクトリアブルーR、ビクトリアピュアブルーBO、BASONYL(登録商標)バイレット610、およびD11(PCAS、フランス国ロンジュモー)が挙げられる。これらの化合物は、現像された画像形成可能な要素において、非画像形成領域を画像形成領域から区別するコントラスト染料としても機能し得る。
【0131】
着色染料が画像形成可能な層中に存在する場合、着色染料の量は広範囲に変わりうるが、一般的には、溶解阻害剤は、少なくとも0.5質量%、かつ、30質量%以下の量で存在する。
【0132】
画像形成可能な層(および輻射線感受性組成物)は、分散助剤、保湿剤、殺生物剤、可塑剤、コーティング特性および他の特性を目的として界面活性剤、増粘剤、充填剤および増量剤、pH調整剤、乾燥剤、消泡剤、保存剤、酸化防止剤、現像助剤、レオロジー調整剤またはこれらの組み合わせ、あるいは平版印刷技術分野で通常使用されている他の添加剤を通常の量でさらに含んでもよい。
【0133】
ポジ型の単層画像形成可能な要素は、通常のコーティングまたは積層法を使用して基材(およびその上に設けられた任意の他の親水性層)の表面上に層配合物(1または2以上)を適用することにより作製できる。例えば、所望の成分を適切なコーティング溶剤に分散または溶解させ、そして得られた配合物を、適切な装置および方法、例えばスピンコーティング、ナイフコーティング、グラビアコーティング、ダイコーティング、スロットコーティング、バーコーティング、ワイヤロッドコーティング、ローラーコーティングまたは押出ホッパーコーティングなどを使用して、基材に逐次的または同時に適用できる。これらの配合物は、適切な支持体(例えば機上印刷胴(on-press printing cylinder))上に吹き付けることによって適用することもできる。
【0134】
画像形成可能な層のコーティング質量は一般的には0.5〜2.5g/m2 、典型的には1〜2g/m2 である。
【0135】
層配合物をコーティングするのに使用される溶媒は、配合物中のポリマーバインダーおよび他のポリマー材料並びに非ポリマー成分の性質に基づいて選択される。一般的に、画像形成可能な層の配合物は、当該技術分野でよく知られている条件および方法を使用して、アセトン、メチルエチルケトン、または他のケトン、テトラヒドロフラン、1−メトキシ−2−プロパノール、N−メチルピロリドン、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、γ−ブチロラクトン、およびこれらの混合物からコーティングされる。
【0136】
あるいは、内層と外層は、通常の押出コーティング法によって、それぞれの層の組成物の溶融混合物から適用できる。典型的には、かかる溶融混合物は、揮発性有機溶媒を含有しない。
【0137】
中間乾燥工程を、各種の層配合物を適用する間に用いて、他の配合物をコーティングする前に、溶媒(1種または2種以上)を除くことができる。乾燥工程は、各種層の混合を防止するのにも役立つ。
【0138】
ポジ型の画像形成可能な要素の代表的な製造方法を以下の実施例に記載する。
【0139】
基材上で画像形成可能な層の配合物を乾燥後(すなわち、コーティングは自己支持性であり、かつ、指触乾燥性である)、その要素を40〜90℃(好ましくは50〜70℃)で少なくとも4時間、好ましくは少なくとも20時間、あるいは少なくとも24時間熱処理する。最長熱処理時間は数日間であることができるが、熱処理に最適な時間および温度は、常套的な実験により容易に求めることができる。この熱処理は、「状態調整」としても知られている。かかる処理は、例えば欧州特許第823,327号(Nagasaka他)および欧州特許第1,024,958号(McCullough他)に記載されている。
【0140】
熱処理中に、画像形成可能な要素を、前駆体からの水分の除去に対する有効なバリヤーを提供する水不透過性シート材料で包むか当該水不透過性シート材料で覆うことも望ましい。このシート材料は、画像形成可能な要素(またはその積層体)の形状にぴったり整合して画像形成可能な要素(またはその積層体)と概して密着するように十分に可撓性である。例えば、水不透過性シート材料は、画像形成可能な要素またはその積層体の縁部で封止される。かかる水不透過性シート材料はポリマーフィルムまたは金属箔であり、ポリマーフィルムまたは金属箔は、画像形成可能な要素またはその積層体の縁部で封止される。
【0141】
あるいは、画像形成可能な要素の熱処理(または状態調節)は、相対湿度が少なくとも25%、あるいは少なくとも30%に調節された環境中で行われる。相対湿度は、所定の温度で飽和に必要な水の量の百分率として表した空気中に存在する水蒸気の量として定義される。
【0142】
少なくとも5個かつ100個以下の画像形成可能な要素を同時に熱処理することが好ましい。より一般的には、かかる積層体は少なくとも500個の画像形成可能な要素を含む。
【0143】
水不透過性シート材料を使用して、かかる積層体の上部および底部で良好なラッピングを達成することは困難なことがあり、その場合には、積層体のそれらの領域で「ダミー(dummy)」または「リジェクト(reject)」要素を使用することが望ましいであろう。従って、熱処理された(または「状態調節された」)積層体は、ダミーまたはリジェクト要素との組み合わせで少なくとも100個の有用な画像形成可能な要素を含むことがある。これらのダミーまたはリジェクト要素は、ラッピングまたは封止プロセスによりもたらされる損傷から有用な要素を保護する機能も果たす。
【0144】
代わりに、画像形成可能な要素(1または2以上)を、巻回した形態で熱処理し、その後、個々の要素に切り分けることができる。かかる巻回状物は、少なくとも1000m2 、より典型的には少なくとも3000m2 の画像形成可能な表面を含むことができる。
【0145】
隣接する巻回状物もしくは「渦巻き状物」またはコイル、あるいは積層体の複数の層は、必要に応じて、間に差し込まれる材料(interleaving material)、例えば、プラスチック材料または樹脂(例えばポリセン(polythene))でサイジングされていてもよい紙または薄葉紙により分けられていてもよい。
【0146】
画像形成および現像
本発明の画像形成可能な要素は、限定されないが、印刷版前駆体、印刷胴、印刷スリ−ブおよび印刷テープ(可撓性印刷ウエブを包含する)などのいかなる有用な形態を有してもよい。例えば、画像形成可能な部材は、平版印刷版を形成するための平版印刷版前駆体である。
【0147】
印刷版前駆体は、必要な画像形成可能な層が適切な基材上に配置された任意の有用な大きさおよび形状(例えば正方形または長方形)を有するものであることができる。印刷胴およびスリ−ブは、円筒状の基材および画像形成可能な層を有する輪転印刷部材として知られている。中空または中実の金属コアを、印刷スリーブ用の基材として使用できる。
【0148】
使用の際、画像形成可能な要素は、150〜1500nmの波長で、輻射線感受性組成物中の輻射線吸収性化合物に依存して、紫外線(UV)、可視光または赤外線などの輻射線の適切な供給原に暴露される。ほとんどの実施態様において、画像形成は700〜1200nmの波長の赤外線を使用して実施される。画像形成可能な部材を暴露するのに使用されるレーザーは、ダイオードレーザー装置が信頼性が高くかつ低メンテナンスであるので、ダイオードレーザーであることができるが、他のレーザー、例えばガスレーザーまたは固体レーザーも使用できる。レーザーで画像形成する場合の出力、強度および暴露時間の組合せは、当業者には容易に分かるであろう。市販されているイメージセッターに使用されている高性能のレーザーまたはレーザーダイオードは、現在、800〜850nmまたは1060〜1120nmの波長の赤外線を放出する。
【0149】
画像形成装置は、単独でプレートセッターとして機能することができるか、あるいは、画像形成装置を平版印刷機中に直接組み込むことができる。後者の場合、画像を形成させた後、直ちに印刷を開始できるので、印刷機のセットアップ時間をかなり短縮することができる。画像形成装置は、フラットベッド記録計(flatbed recorder)、またはドラムの内部もしくは外部の円筒形表面に取り付けられた画像形成可能な部材を備えたドラム記録計として製造できる。有用な画像形成装置の例は、Eastman Kodak Company(カナダ国ブリティッシュコロンビア州バーナビー)から入手可能なCreo Trendsetter(登録商標)イメージセッターのモデルとして入手可能であり、これらのモデルは波長が830nmの近赤外線を放射するレーザーダイオードを備えている。他の適切な画像形成源としては、波長1064nmで作動するGerber Crescent 42T Platesetter(米国イリノイ州シカゴ所在のGerber Scientificから入手可能)およびScreen PlateRite 4300シリーズもしくは8600シリーズのプレートセッター(米国イリノイ州シカゴ所在の Screenから入手可能)が挙げられる。追加の有用な輻射線源としては、印刷版胴に要素が付着している間にその要素に画像を形成させるために使用できる直接画像形成印刷機(direct imaging press)が挙げられる。適切な直接画像形成印刷機の例としては、Heidelberg SM74-DI印刷機(米国オハイオ州デイトン所在のHeidelbergから入手可能)が挙げられる。
【0150】
IR画像形成速度は、30〜1500mJ/cm2または40〜200mJ/cm2であることができる。
【0151】
レーザー画像形成が通常実施されるが、画像形成は、熱エネルギーを像様方式で供給する他の方法で画像を形成できる。例えば米国特許第5,488,025号(Martinら)に記載されている「熱印刷法(thermal printing)」として知られている方法で熱抵抗ヘッド(サーマルプリントヘッド)を使用して画像形成を達成できる。サーマルプリントヘッドは市販されている(例えば、Fujitsuサーマルヘッド FTP-040 MCS001およびTDKサーマルヘッドF415 HH7-1089として)。
【0152】
画像形成は、一般的に、直接画像形成法を使用して実施できる。画像信号は、コンピューターにビットマップデータファイルとして記憶される。かかるデータファイルは、ラスタ画像プロセッサ(RIP)または他の適切な手段で生成させることができる。前記ビットマップをスクリーン周波数および角度に加えて色の色相を規定するように構成される。
【0153】
画像形成可能な要素に画像形成によって、画像形成(露光)領域および非画像形成(非露光)領域の潜像を含む画像形成された要素が生成する。この画像形成された要素を、適切な現像液で現像すると、画像形成可能な層の露光領域とその下の任意の層が除去されて、基材の親水性表面が露出する。この場合、かかる画像形成可能な要素は「ポジ型」(例えば、「ポジ型」の平版印刷版前駆体)である。
【0154】
現像は、画像形成可能な層の画像形成(露光)領域とその下の層を除去するのに十分な時間であるが、画像形成可能な層の非画像形成(非露光)領域を除去するほど長くない時間実施する。したがって、画像形成可能な層の画像形成(露光)領域は、画像形成可能な層の非画像形成(非露光)領域より容易に現像液中で除去され、溶解されまたは分散されるので、現像液に「可溶性」または現像液中で「除去可能」と記載する。したがって、用語「可溶性」は「分散性」であることも意味する。
【0155】
画像形成された要素は、一般的に、従来の処理条件を使用して現像される。水性のアルカリ性現像液および溶剤ベースのアルカリ性現像液の両方を使用できる。本発明の方法のほとんどの実施態様において、ポジ型の画像形成された要素を処理するために通常使用される高pH水性アルカリ性現像液が使用される。
【0156】
かかる水性アルカリ性現像液は、一般的に、pHが少なくとも9であり、好ましくは少なくとも11である。有用な水性アルカリ性現像液としては、3000ディベロッパー、9000ディベロッパー、GOLDSTARディベロッパー、GOLDSTAR Plusディベロッパー、GOLDSTAR Premiumディベロッパー、GREENSTARディベロッパー、ThermalProディベロッパー、PROTHERMディベロッパー、MX1813ディベロッパー、T-189-8ディベロッパー(実施例に記載)、およびMX1710ディベロッパー(これらは全て、Eastman Kodak Companyから入手可能)、並びにFuji HDP7ディベロッパー(富士フィルム)およびEnergy CTPディベロッパー(Agfa)が挙げられる。これらの組成物は、一般的に、界面活性剤、キレート化剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸塩)およびアルカリ性成分(例えば、無機メタケイ酸塩、有機メタケイ酸塩、水酸化物および重炭酸塩)も含む。
【0157】
ネガ型の画像形成された要素を処理するために通常使用されている現像液も使用できる。かかる現像液は、一般的に、水と混和性の1種または2種以上の有機溶剤を含む単相溶液である。有用な有機溶剤は、フェノールとエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドとの反応生成物[例えば、エチレングリコールフェニルエーテル(フェノキシエタノール)];ベンジルアルコール;6個以下の炭素原子を有する酸とのエチレングリコールのエステルおよび6個以下の炭素原子を有する酸とのプロピレングリコールのエステル;ならびにエチレングリコール、ジエチレングリコールおよびプロピレングリコールのエーテル類(6個以下の炭素原子を有するアルキル基を有する)、例えばメトキシエタノールおよび2−ブトキシエタノールである。1種または2種以上のこれら有機溶剤が、一般的に、現像液の全質量を基準として0.5〜15%の量で存在する。かかる現像液は、中性、アルカリ性、またはわずかに酸性のpHを有するものであることができる。これらの現像液のほとんどはアルカリ性pH、例えば11以下のアルカリ性pHのものである。
【0158】
代表的な有機溶剤含有現像液としては、ND−1ディベロッパー、955ディベロッパー、ツーインワン(2 in 1)ディベロッパーおよび956ディベロッパー(Eastman Kodak Companyから入手可能)が挙げられる。
【0159】
一般的に、アルカリ性現像液は、その現像液を含むアプリケーターで、外層をこするかまたは拭くことによって、画像形成された要素に塗布される。あるいは、画像形成された要素に現像剤をブラシで塗ることができ、または現像液を、暴露領域を除去するのに十分な力で外層にスプレーすることによって適用できる。さらに、画像形成された要素は、現像液中に浸漬してもよい。いずれの場合も、現像画像が、印刷室内の化学薬剤に対して優れた耐性を有する平版印刷版において生成する。
【0160】
現像に続いて、その画像形成された要素を水ですすぎ、次いで適切な方法で乾燥することができる。また、その乾燥された要素は、通常のガム引き溶液(好ましくはアラビアゴム)で処理してもよい。
【0161】
画像形成され現像された要素は、得られた画像形成された要素のランレングスを増大するために実施できる露光後ベーキング操作でベーキングすることができる。ベーキングは、例えば、220℃〜240℃にて7〜10分間、または120℃にて30分間実施できる。
【0162】
印刷は、平版印刷インクと湿し水を、画像形成された要素の印刷表面に適用することによって実施できる。インクは、画像形成可能な層の非画像形成(非露光または非除去)領域によって取り込まれ、湿し水は、画像形成と現像の工程で露出した基材の親水性表面によって取り込まれる。次に、インクは、適切な受容材料(例えば、布地、紙、金属、ガラスまたはプラスチック)に転写され、これら材料上に望ましい刷り上がりの画像をもたらす。必要に応じて、中間の「ブランケット」ローラーを使って、インクを、画像形成された部材から受容材料に転移させることができる。画像形成された部材は、刷りの間、必要に応じて、従来の洗浄方法と化学薬剤を使用して洗浄できる。
【0163】
下記実施例は、本発明の実施を例示するため提供するものであるが、本発明を限定することを意図したものではない。
【実施例】
【0164】
以下の成分を例の調製および使用に使用した。特に断らない限り、これらの成分はAldrich Chemical Company(ウィスコンシン州ミルウォーキー)から入手可能である。
BCはブチルセロソルブ(エチレングリコールブチルエーテル)を表す。
BF−03は、Chang Chun Petrochemical Co. Ltd.(台湾)から入手したポリ(ビニルアルコール)、98%加水分解(Mw=15,000)を表す。
クリスタルバイオレット(C.I.42555)はベーシックバイオレット3(λmax=588nm)である。
DAAはジアセトンアルコール(4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン)を表す。
DMFAはN,N−ジメチルホルムアミドを表す。
DMSOはジメチルスルホキシドを表す。
HEPは1−(2−ヒドロキシエチル)−2−ピロリドンを表す。
MCはメチルセルロースを表す。
MEKはメチルエチルケトンを表す。
Mowilith(登録商標)MCT5は、Synthomer Ltd.(英国ハーロウ)から入手した、酢酸ビニルとクロトン酸のコポリマー(Mw=36,000)(モル比95:5)、酸価35〜45mg KOH/gである。
MSAはメタンスルホン酸(99%)を表す。
NMPはN−メチルピロリドンを表す。
PGはフロログルシノールを表す。
PGideはフロログルシドを表す。
PMは1−メトキシ−2−プロパノールを表す。
PVA−co−クロトン酸は、ポリ(酢酸ビニル−co−クロトン酸)(モル比90:10)、酸価62〜70mg KOH/gを表す。
S 0094は、FEW Chemicals(ドイツ国)から入手したIR染料(λmax=813nm)である。
S 0451は、FEW Chemicals(ドイツ国)から入手したIR染料(λmax=775nm)である。
スダンブラックBは、ニュートラルジアゾ染料(C.U.26150)である。
Synthomer MCT5は、Synthomer Ltd.(英国ハーロウ)から入手した酢酸ビニルとクロトン酸のコポリマー(Mw=36,000)、酸価35〜45mg KOH/gである。
T−189−8はEastman Kodak Company(ニューヨーク州ロチェスター)から入手した水性アルカリ性ポジ型現像液である。
TEAはトリエタノールアミンである。
UVウォッシュ(UV Wash)はVarn Chemical Products(英国グレイターマンチェスター州アーラム)から入手した平版印刷ブランケットおよびローラー洗浄液である。
【0165】
ポリマーAの調製:
ポリマーAを、本願出願人に譲渡された同時係属米国特許出願番号第11/677,599号(Levanon他により2007年2月22日に出願)に記載されているように調製した。
水冷式凝縮器、滴下漏斗および温度計を備え、DMSO(200g)を含む反応容器にBF−03(50g)を加えた。連続攪拌しながら、混合物を、透明な溶液になるまで、80℃で30分間加熱した。次に、温度を60℃に調節し、DMSO(50g)中のMSA(2.7g)を加えた。15分間かけて、ブチルアルデヒド(10.4g)の溶液を反応混合物に加え、反応混合物を55〜60℃に1時間保った。次に、DMSO(100g)中の2−ヒドロキシベンズアルデヒド(サリチル酸アルデヒド、39g)を反応混合物に加えた。次に、反応混合物をアニソール(350g)で希釈し、真空蒸留を開始した。反応混合物からアニソール:水共沸物を蒸留により除去した(溶液中に0.1%未満の水が残留)。反応混合物を室温に冷却し、DMSO(30g)中のTEA(8g)により中和し、次に6kgの水とブレンドした。析出したポリマーを水で洗浄し、濾過し、50℃で24時間真空乾燥すると、86gの乾燥ポリマーAが得られた。
【0166】
ポリマーBの調製:
ブチルアルデヒドとサリチル酸の混合物の代わりにサリチル酸アルデヒド(54g)のみを使用したことを除いてポリマーAと同様にポリマーBを調製した。約85.0gのポリマーBが得られた。
【0167】
ポリマーCの調製:
サリチル酸アルデヒドの代わりにサリチル酸アルデヒド(13.6g)と2−ヒドロキシナフトエ酸アルデヒド(43.6g)の混合物を使用したことを除いて、ポリマーBと同様にポリマーCを調製した。約85.6gのポリマーCが得られた。
【0168】
ポリマーDの調製:
ポリ(酢酸ビニル−co−クロトン酸)(100g)をメタノール(1000ml)中に溶解させた。ナトリウムメチラート溶液(2gのナトリウムと40mlのメタノール)をポリマー溶液に滴下添加した。反応混合物を30分間還流し、析出したポリマー粒子を濾過により取り出した。メタノールで洗浄することで、ポリマーを乾燥させた。BF−03ポリビニルアルコールに代わりに50gの析出したポリマー粒子を使用し、MSA(5.5g)を加えたことを除いて、ポリマーBについて記載した手順を用いた。約75gのポリマーDが得られた。
【0169】
ポリマーEの調製:
ポリ(酢酸ビニル−co−クロトン酸)の代わりにMowilith(登録商標)MCT5(100g)を使用したことを除いてポリマーDを調製するために用いた手順を繰り返した。約75gのポリマーEが得られた。
【0170】
ポリマーFの調製:
サリチル酸アルデヒドの代わりにサリチル酸アルデヒド(23g)および2−ヒドロキシナフトエ酸アルデヒド(27g)の混合物を使用したことを除き、ポリマーDを調製するために用いた手順を繰り返した。約78.5gのポリマーFが得られた。
【0171】
ポリマーGの調製:
サリチル酸アルデヒドの代わりにサリチル酸アルデヒド(23.6g)と2−ヒドロキシナフトエ酸アルデヒド(28.4g)と2−ホルミルフェノキシ酢酸(8g)の混合物を使用したことを除き、ポリマーBと同様にポリマーCを調製した。約88.2gのポリマーGが得られた。
【0172】
比較例1:
本発明の範囲外の画像形成可能な要素を以下のように作製した。輻射線感受性組成物を以下の成分を使用して調製した:
ポリマーA 11.5g
クリスタルバイオレット 0.25g
S 0094 IR染料 0.125g
S 0451 IR染料 0.225g
スダンブラックB 0.125g
PG 0.25g
PM 45g
MEK 34g
NMP 8.5g
【0173】
組成物を濾過し、電気化学的に粗面化され陽極酸化されたアルミニウム基材であって、一般的な方法によりポリ(ビニルホスホン酸)の水溶液を使用して後処理したアルミニウム基材に適用し、得られた画像形成可能な層コーティングを、Glunz&Jensen "Unigraph Quartz"オーブン内で100℃で2.5時間乾燥させた。各画像形成可能な層の坪量は約1.5g/m2であった。
【0174】
得られた画像形成可能な要素を、CREOLE(登録商標)Lotem 400 Quantumイメージャーにより、40mJ/cm2〜120mJ/cm2のエネルギー範囲で露光し、T−189−8現像液を使用してGlunz&Jensen "InterPlater 85HD"により21℃で現像した。得られた印刷版を感度(クリアリングポイント:所定の温度および時間で現像液により露光領域が完全に除去された最低画像形成エネルギー)、耐溶剤性、ベーキング性、および印刷機上ランレングスについて評価した。結果を下記表Iに示す。
【0175】
発明例1
本発明の画像形成可能な要素を以下のように作製した。以下の成分を使用して輻射線感受性組成物を調製した:
ポリマーB 10.8g
クリスタルバイオレット 0.25g
S 0094 IR染料 0.125g
S 0451 IR染料 0.225g
スダンブラックB 0.125g
PG 1g
PM 43.8g
MEK 35g
NMP 8.75g
【0176】
比較例1に記載したように、組成物をコートして画像形成可能な層を得、それを乾燥させて画像形成可能な要素を得、画像形成可能な要素を画像形成し、現像し、評価した。結果を下記表Iに示す。
【0177】
発明例2:
本発明の別の画像形成可能な要素を以下のように作製した。以下の成分を使用して輻射線感受性組成物を調製した:
ポリマーC 10.8g
クリスタルバイオレット 0.25g
S 0094 IR染料 0.125g
S 0451 IR染料 0.225g
スダンブラックB 0.125g
PG 1g
MC 64.7g
MEK 21.6g
NMP 1.25g
【0178】
比較例1に記載したように、組成物をコートして画像形成可能な層を得、それを乾燥させて画像形成可能な要素を得、画像形成可能な要素を画像形成し、現像し、評価した。結果を下記表Iに示す。
【0179】
発明例3:
本発明の別の画像形成可能な要素を以下のように作製した。以下の成分を使用して輻射線感受性組成物を調製した:
ポリマーD 10.8g
クリスタルバイオレット 0.25g
S 0094 IR染料 0.125g
S 0451 IR染料 0.225g
スダンブラックB 0.125g
PG 1g
MC 64.7g
MEK 21.6g
NMP 1.25g
【0180】
比較例1に記載したように、組成物をコートして画像形成可能な層を得、それを乾燥させて画像形成可能な要素を得、画像形成可能な要素を画像形成し、現像し、評価した。結果を下記表Iに示す。
【0181】
発明例4および5:
例4では、ポリマーDの代わりにポリマーEを使用したことを除いて例3と同様に画像形成可能な要素を作製した。同様に、例5では、ポリマーCの代わりにポリマーFを使用したことを除いて例2と同様に画像形成可能な層を作製した。結果を下記表Iに示す。
【0182】
発明例6:
例6では、ポリマーAの代わりにポリマーGを使用し、0.5gのPGの代わりに0.5gのPGideを使用したことを除いて比較例1と同様に画像形成可能な要素を作製した。結果を下記表Iに示す。
【0183】
比較例2および3:
本発明の画像形成可能な要素に対して2種の市販のポジ型印刷版前駆体を比較した。これらの市販の要素は、Eastman Kodak Companyの子会社であるKodak Polychrome Graphics(コネチカット州ノーウォーク)から入手可能なコダック・ソード・ウルトラ・サーマルプリンティングプレート(Kodak Sword Ultra Thermal Printing Plate)および富士フィルム製のLH−PI印刷版であった。コダック・ソード・ウルトラ・サーマルプリンティングプレートは、本発明の範囲外である主ポリマーバインダーを含む1層の画像形成可能な層を含む。富士フィルム製のLH−PI印刷版は、これも本発明の範囲外である1層の画像形成層を有する。
【0184】
発明例1〜6および比較例1〜3の要素を以下の試験で評価した:
UVウォッシュに対する耐性 試験1:Varn UVウォッシュの滴を、画像形成され現像された印刷版上に、1分間隔で4分まで載せ、次に、滴を布で除去した。除去された印刷層の量を測定した。
UVウォッシュに対する耐性 試験2:様々な比のジアセトンアルコール(DAA)と水の混合物の滴を、画像形成され現像された印刷版上に、1分間隔で4分まで載せ、次に、滴を布で除去した。除去された印刷層の量を測定した。
UVウォッシュに対する耐性 試験3:様々な比の2−ブトキシエタノール(BC)と水の混合物の滴を、画像形成され現像された印刷版上に、1分間隔で4分まで載せ、次に、滴を布で除去した。除去された印刷層の量を測定した。
これらの試験の結果を下記表Iに示す。
【0185】
【表1】

【0186】
表I中の結果から、本発明の範囲内の一次ポリ(ビニルアセタール)を含む組成物が、広範な印刷薬品に対して優れた耐溶剤性を有し、700〜1000nmでデジタル画像形成装置により画像形成した場合に高い感度を示す画像形成可能な要素を提供することが分かる。
【0187】
発明例1〜6の画像形成された要素を露光後にWisconsin SPC-HD 34/125オーブン内で260℃で0.5m/分〜1.0m/分の速度でベーキングした。次に、DMFAを各要素の表面に5分間適用し、布で拭った。コーティングが除去されなかったときの条件をフルベーキングと見なして観察した。これらの結果を表IIに示す。
【0188】
【表2】

【0189】
表II中の結果から、本発明に係るポリ(ビニルアセタール)を含む組成物がベーキング性の高い画像形成可能な層コーティングを有する画像形成可能な要素を提供することが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.アルカリ可溶性ポリマーバインダー、および
b.輻射線吸収性化合物、
を含む輻射線感受性組成物であって、前記アルカリ可溶性ポリマーバインダーは、下記構造(I):
【化1】

[式中、Aは下記構造(Ia):
【化2】

により表される反復単位を表し、Bは下記構造(Ib):
【化3】

により表される反復単位を表し、ここで、RおよびR’は、独立に、水素、または置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換シクロアルキル、あるいはハロ基であり、
1は、置換もしくは非置換フェノール、置換もしくは非置換ナフトール、または置換もしくは非置換アントラセノール基であり、
2は置換もしくは非置換ナフトールであるが、R1とは異なり、
mは少なくとも20モル%であり、nは少なくとも10モル%である]
により表される反復単位を含むポリ(ビニルアセタール)であり、
前記輻射線感受性組成物はさらに現像性向上組成物を含む、輻射線感受性組成物。
【請求項2】
mが少なくとも少なくとも30モル%であり、nが少なくとも20モル%であり、mとnの合計(m+n)が75モル%以下である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記アルカリ可溶性ポリマーバインダーは、さらに、下記構造(Ic)、(Id)、(Ie)、(If)および(Ig):
【化4】

【化5】

[式中、RおよびR’は上記定義のとおりであり、R3は置換もしくは非置換アルキニル基または置換もしくは非置換フェニル基であり、R4は−O−C(=O)−R5基であり、R5は置換もしくは非置換アルキル基または置換もしくは非置換アリール基であり、R6はヒドロキシ基であり、R7は以下の基:
【化6】

(式中、Xは直接単結合または−O−CH2−基である)
である]
により表される反復単位のうちの1つまたは2つ以上を含む請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記輻射線吸収性化合物が赤外線吸収性化合物である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記アルカリ可溶性ポリマーバインダーが、下記構造(I−A):
【化7】

により表され、ここで、Aは下記構造(Ia):
【化8】

により表される反復単位を表し、
Bは下記構造(Ib):
【化9】

により表される反復単位を表し、
Cは下記構造(Ic):
【化10】

により表される反復単位を表し、
Dは下記構造(Id):
【化11】

により表される反復単位を表し、
Eは下記構造(Ie):
【化12】

により表される反復単位を表し、
Fは下記構造(If):
【化13】

により表される反復単位を表し、
Gは下記構造(Ig):
【化14】

により表される反復単位を表し、
ここで、RおよびR’は、独立に、水素、または置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換シクロアルキル、あるいはハロ基であり、
は、置換もしくは非置換フェノール、置換もしくは非置換ナフトール、または置換もしくは非置換アントラセノール基であり、
は置換もしくは非置換ナフトールであるが、Rとは異なり、
は、置換もしくは非置換アルキニル基、または置換もしくは非置換フェニル基であり、
は−O−C(=O)−R基であり、ここで、Rは置換もしくは非置換アルキル基またはカルボキシ置換もしくは非置換アリール基であり、
はヒドロキシ基であり、
は以下の基:
【化15】

(式中、Xは直接単結合または−O−CH−基である)
であり、
mは少なくとも30モル%であり、nは少なくとも20モル%であり、mとnの合計(m+n)は60モル%以下であり、
pは2〜10モル%であり、
qおよびrは独立に2〜25モル%であり、
sは1〜15モル%であり、
tは15〜30モル%である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
基材を含み、当該基材上に請求項1〜5のいずれか一項に記載の輻射線感受性組成物を含む画像形成可能な層を有するポジ型の画像形成可能な要素。
【請求項7】
A)請求項6に記載のポジ型の画像形成可能な要素を像様露光して、露光領域および非露光領域をもたらすこと、および
B)像様露光された要素を現像して、露光領域だけを除去すること、
を含む、印刷版の製造方法。

【公開番号】特開2013−20268(P2013−20268A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−229079(P2012−229079)
【出願日】平成24年10月16日(2012.10.16)
【分割の表示】特願2010−514758(P2010−514758)の分割
【原出願日】平成20年6月13日(2008.6.13)
【出願人】(590000846)イーストマン コダック カンパニー (1,594)
【Fターム(参考)】