説明

耐溶剤性高分子バインダーを有する画像形成可能要素

【課題】平版用基板、及び基板上に配置された画像形成可能層を含んで成る画像形成可能要素を提供する。
【解決手段】画像形成可能層は、ラジカル重合性成分、画像形成用輻射線に暴露したときに重合反応を開始するのに十分なラジカルを発生させることができる開始剤系、及び高分子バインダーを含み、高分子バインダーは、疎水性主鎖を有し、そして疎水性主鎖に直接的に結合されたペンダントシアノ基を有する構成ユニット、及び親水性ポリ(アルキレンオキシド)セグメントを含むペンダント基を有する構成ユニットの両方を含む。得られた印刷版は改善されたオン・プレス耐溶剤性及びより長期に印刷寿命を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平版印刷版前駆体として有用な画像形成可能要素に関する。コンベンショナルな印刷又は「湿式」平版印刷の場合、画像領域として知られるインキ受理領域を平版用基板の親水性表面上に発生させることにより、印刷版を製造する。印刷版の表面が水で湿潤され、そしてインキが着けられると、親水性領域は水を保持してインキを弾き、そしてインキ受理領域はインキを受容して水を弾く。インキは画像が再現されるべき媒体の表面に転写される。典型的には、インキは中間ブランケットに先ず転写され、ブランケットは、画像が再現されるべき媒体の表面にインキを転写する。
【背景技術】
【0002】
平版印刷版のための前駆体として有用な画像形成可能要素は、典型的には、基板の親水性表面上に適用された画像形成可能層を含む。画像形成可能層は、しばしば好適なバインダー中に分散された1種又は2種以上の輻射線感光性成分を含む。像様露光に続いて、画像形成可能層の露光済領域又は未露光領域が好適な現像剤により除かれ、下に位置する親水性の基板表面を露にする。露光済領域が除去される場合には、前駆体はポジ型である。逆に、未露光領域が除去される場合には、この前駆体はネガ型である。それぞれの事例において、残される画像形成可能層領域(すなわち画像領域)はインキ受理性であり、そして、現像プロセスによって露出された親水性表面領域は、水及び水溶液、典型的にはファウンテン溶液を受容し、そしてインキは受容しない。
【0003】
紫外線及び/又は可視線から成る画像形成用輻射線を用いた画像形成可能要素のコンベンショナルな画像形成を、透明領域と不透明領域とを有するマスクを通して行うことができる。マスクは、画像形成可能要素と直接的に接触するように配置され、そして紫外の画像形成用輻射線がマスクを通るように指向される。マスクの透明領域の下側に位置する画像形成可能要素領域は露光されるのに対して、マスクの不透明領域の下側に位置する領域は露光されない。
【0004】
その一方で、マスクを通した画像形成の必要性を取り除く直接的なデジタル画像が、印刷産業分野においてますます普及してきている。具体的には、平版印刷版を調製するための画像形成可能要素が、赤外線レーザーによる画像形成のために開発されている。商業的に入手可能なイメージセッターにおいて使用される高性能レーザー又はレーザーダイオードは一般に、波長範囲800〜850 nm又は1060〜1120 nmの光を放射する。このようなレーザービームは、コンピュータを介してデジタル制御することができる。すなわち、コンピュータに記憶されたデジタル化情報を介して前駆体に像様露光を施すことができるように、レーザーをオン又はオフにすることができる。
【0005】
従って、このようなイメージセッターによって像様露光されることになる印刷版前駆体、又は前駆体中に含有される開始剤系は、近赤外スペクトル領域内で感光性である必要がある。このような印刷版前駆体はこの時、これらの製造及び処理を著しく容易にする日光条件下で取り扱うことができる。
【0006】
画像形成済要素は、典型的には、現像剤中で処理して、これらを平版印刷版に変換することを必要とする。現像剤は典型的にはアルカリ水溶液である。アルカリ水溶液は、大量の有機溶剤を含有することもある。高いpH及び有機溶剤の存在により、大量の使用済現像剤の処分は高価であり、また環境問題を引き起こすおそれがある。現像剤中で画像形成済要素を処理することはまた、現像剤のコスト、処理装置のコスト、及びプロセスを操作するための人件費に、付加的なコストを導入することにもなる。
【0007】
オン・プレス現像が可能な平版印刷版前駆体は、画像形成後、印刷機上に直接的に載置することができ、そして初期の印刷機操作中に、インキ及び/又はファウンテン溶液と接触させることにより現像される。このような前駆体は、印刷機上への載置前の別個の現像工程を必要としない。印刷機上で前駆体に画像形成及び現像の両方が施されるオン・プレス画像形成は、別個の画像形成装置内に前駆体を装着する必要性をなくする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、ペンダントシアノ基とポリ(アルキレンオキシド)セグメントを含むペンダント基とを有する高分子バインダーを含む感光性塗膜を含むネガ型画像形成可能要素に関する。露光後、画像形成済要素は、中間現像工程なしに印刷機上に直接的に載置することができる。画像形成可能層内にこのバインダーを含むことは、結果として得られる印刷版の耐オン・プレス溶剤性を高める。その結果、印刷版はより長いプレス寿命を示すことができる。いくつかの実施態様の場合、画像形成可能要素には、オン・プレスで画像形成及び現像の両方を施すことができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
1実施態様の場合、本発明は、平版用基板、及び基板上に配置された画像形成可能層を含んで成る画像形成可能要素を提供する。画像形成可能層は、ラジカル重合性成分、画像形成用輻射線に暴露したときに重合反応を開始するのに十分なラジカルを発生させることができる開始剤系、及び高分子バインダーを含み、高分子バインダーは、疎水性主鎖を有し、そして疎水性主鎖に直接的に結合されたペンダントシアノ基を有する構成ユニット、及び親水性ポリ(アルキレンオキシド)セグメントを含むペンダント基を有する構成ユニットの両方を含む。
【発明を実施するための形態】
【0010】
特に断らない限り、明細書及び特許請求の範囲において、光熱変換材料、コポリマー、共バインダー、モノマー及びコモノマー、マクロマーという用語、及び同様の用語は、このような材料の混合物及び組み合わせをも含む。特に断りのない限り、全てのパーセンテージは重量パーセントである。
【0011】
ポリマーに関連するあらゆる用語の定義を明らかにするために、International Union of Pure and Applied Chemistry(「IUPAC」)によって発行された「Glossary of Basic Terms in Polymer Science(ポリマー科学における基礎用語の解説)」Pure Appl. Chem. 68, 2287-2311(1996)を参照されたい。しかし、本明細書中に明確に述べられたいずれの記述も支配的なものと見なされるべきである。
【0012】
オン・プレス画像形成可能要素が当業者に知られている。例えば、米国特許第6,582,882号明細書(Pappas他)で報告された熱画像形成可能組成物は、ポリエチレンオキシド側鎖を有するコポリマーを含む。しかしこの参考文献は、重合性成分又は重合性開始剤を含む組成物を報告してはいない。
【0013】
Timpe他の同時係属中の米国特許出願第10/066,874号明細書(米国特許出願公開第2003/0157433号明細書)(この開示内容全体を参考のため本明細書中に引用する)で報告された赤外線感光性組成物は、酸性基を含まない第1高分子バインダー、ポリエーテル基を含む第2高分子バインダー、開始剤系、及びラジカル重合性系を含む。第2バインダーは、ポリアルキレンエーテルポリマー又はコポリマー、例えばポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドとのブロックコポリマーであってよい。
【0014】
Huang他の同時係属中の米国特許出願第10/119,454号明細書(米国特許出願公開第2003/0064318号明細書)で報告された重合性塗布用組成物は、重合性化合物と、ポリエチレンオキシドセグメントを含む高分子バインダーとを含む。バインダーは、ポリエチレンオキシドブロックを有するブロックコポリマー、又はポリエチレンオキシド側鎖を有するグラフトコポリマーであってよい。
【0015】
本発明は、平版用基板、及び基板上に配置された画像形成可能層を含む新規の画像形成可能要素を提供する。画像形成可能層は、ラジカル重合性成分、画像形成用輻射線に暴露したときに重合反応を開始するのに十分なラジカルを発生させることができる開始剤系、及び高分子バインダーを含み、高分子バインダーは、疎水性主鎖を有し、そして疎水性主鎖に直接的に結合されたペンダントシアノ基を有する構成ユニット、及び親水性ポリ(アルキレンオキシド)セグメントを含むペンダント基を有する構成ユニットの両方を含む。
【0016】
画像形成可能要素
画像形成可能要素は、平版用基板上に配置された画像形成可能層を含む。画像形成可能要素はネガ型である。画像形成可能層は、重合性成分、開始剤系、及び高分子バインダーを含む。平版用基板及び画像形成可能層に関して、以下にさらに説明する。
【0017】
いくつかの実施態様の場合、画像形成可能層以外の層は、当該画像形成可能要素内では利用されない。しかし、他の実施態様の場合、画像形成可能要素はさらに、上側の層を含んでもよい。上側の層の考えられ得る1つの可能な機能は、画像形成可能層内に大気からの酸素が拡散するのを防止する酸素バリア層として働くことである。上側の層は、現像剤中に可溶性であるか、分散性であるか、又は現像剤によって少なくとも膨潤性であるか、或いは現像剤透過性であるのがよい。上側の層の考えられ得る他の機能は、像様露光前の取扱中に表面層の損傷、例えば引掻き傷を防止し;像様露光済領域の表面に対する損傷、例えば、部分アブレーションを招くおそれのある過剰露光による損傷を防止し;そして未露光領域の現像可能性を容易にすることである。
【0018】
いくつかの実施態様において、画像形成可能要素は、画像形成可能層の下側に位置する層を含むことができる。下側の層の考えられ得る機能は、未像様露光領域の現像可能性を高め;そして像様露光済領域のための断熱層として作用することである。このような断熱高分子層は、さもなければ例えば熱伝導基板を通る急速な熱放散を防止する。これらの機能に従って、下側の層は、現像剤中に可溶性又は少なくとも分散性であるのがよく、そして好ましくは、比較的低い熱伝導性を有するのがよい。
【0019】
平版用基板
平版用基板は、支持体として作用し、そして、平版印刷版を調製するのに従来使用されている任意の材料であってよい。一般には、好適な平版用基板は、画像形成可能層が配置されている親水性表面を有することになる。
【0020】
基板材料は、丈夫であり、安定であり、そして可撓性であるべきである。基板材料は、色記録がフルカラー画像で表されるような使用条件下では、寸法変化に耐性を有すべきである。典型的には、基板材料はいかなる自立型材料であってもよく、例えば、高分子フィルム、例えばポリエチレンテレフタレートフィルム、セラミック、金属、又は硬い紙、又はこれらの材料のうちのいずれかの積層体を含む。好適な金属材料は例えば、アルミニウム、亜鉛、チタン及びこれらの合金を含む。平版用基板の裏側(すなわち、画像形成可能層とは反対側)には、静電防止剤及び/又はスリップ層又は艶消し層を被覆することにより、画像形成可能要素の取り扱い及び「感触」を改善することができる。
【0021】
典型的には、基板材料は、これが高分子フィルムの場合、一方又は両方の表面上に下塗り層を含有することにより、表面特性を改変することになる。例えば高分子フィルムは、表面の親水性を高め、上側の層との付着性を改善し、そして紙基板の平坦性を改善するために、塗布することができる。この下塗り層の性質は、基板及び後続の層の組成に依存する。下塗り材料の例は、付着促進材料、例えばアルコキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、及びエポキシ官能性ポリマー、並びに、写真フィルム内のポリエステルベース上に使用されるコンベンショナルな下塗り材料である。
【0022】
特に好適な1つの平版用基板は、親水性アルミニウム基板である。一般に、アルミニウム支持体は、物理研磨、電気化学研磨、化学研磨、及び陽極酸化を含む、当業者に知られた技術によって表面処理されることになる。表面が粗面化される場合には、平均粗さ(Ra)は好ましくは、0.1〜0.8 μm、そしてより好ましくは約0.1〜0.4 μmである。
【0023】
コンベンショナルな陽極酸化技術は、例えば硫酸陽極酸化及びリン酸陽極酸化を含む。硫酸陽極酸化のための陽極孔サイズは典型的には20 nm未満であるのに対して、リン酸陽極酸化のための陽極孔サイズは典型的には30 nmを上回る。リン酸陽極酸化された大きな陽極孔の基板を使用することが、硫酸陽極酸化型基板よりも好ましい。本発明の陽極酸化型基板の調製の際には、他のコンベンショナルな陽極酸化法を用いることもできる。この方法は具体的には、硫酸陽極酸化によって形成される陽極孔サイズよりも大きい陽極孔サイズを形成する方法を含む。
【0024】
基板は、印刷から生じる磨耗に耐えるのに十分な厚さを有し、また印刷機内でシリンダに巻き付けるのに十分に薄くあるべきであり、その厚さは典型的には約100 μm〜約600 μmである。アルミニウム平版用基板は、アルミニウム支持体と任意の上側の層との間に、中間層を含むことができる。中間層は、例えばケイ酸塩、デキストリン、ヘキサフルオロケイ酸、リン酸塩/フッ化物、ポリ(アクリル酸)(PAA)、ポリ(ビニルホスホン酸)(PVPA)、ビニルホスホン酸コポリマー、又は水溶性ジアゾ樹脂でアルミニウム支持体を処理することにより、形成することができる。
【0025】
画像形成可能層
画像形成可能層は、重合性成分、開始剤系、及び高分子バインダーを含む重合性組成物を含む。重合性組成物は典型的には、約10重量%〜約70重量%、より好適には約20重量%〜約60重量%、そして最も好適には約30重量%〜約50重量%の重合性成分を含む。重合性組成物はまた、約10重量%〜約80重量%、より好適には約20重量%〜約50重量%、そして最も好適には約30重量%〜約40重量%のバインダーを含む。重合性組成物はまた、約0.01重量%〜約20重量%、より好適には約0.1重量%〜約10重量%の開始剤系を含む。
【0026】
他のコンベンショナルな成分、例えば界面活性剤及びコントラスト色素が、重合性組成物中に含まれてよい。重合性組成物は任意には、最大20重量%、より好適には約0重量%〜約5重量%のその他の成分を含んでよい。
【0027】
例えば、画像形成可能層の保存寿命を延ばすための添加剤を含むことができる。保存寿命を延ばすのに効果的であり得る添加剤の例は、メルカプト化合物、アミノ化合物、及びモノカルボン酸又はポリカルボン酸を含む。好適なメルカプト化合物が、例えば、係属中のTimpe他の米国特許出願第10/131,866号明細書(米国特許出願公開第2002/0197564号明細書)(この開示内容全体を参考のため本明細書中に引用する)に記載されている。米国特許第6,309,792号明細書(Hauck他)に記載された好適なポリカルボン酸は、ヘテロ原子と置換された芳香族部分を有する。Munnelly他の米国特許出願第10/283,757号明細書(米国特許出願公開第2004/0091811号明細書)、及びMunnelly他の米国特許出願第10/847,708号明細書には、好適なモノカルボン酸添加剤が記載されている。
【0028】
重合性成分
画像形成可能層は、重合性又は架橋性成分を含む。重合性又は架橋性成分の重合又は架橋は、例えばラジカルにより開始することができる。
【0029】
重合性又は架橋性成分は、フリーラジカル開始型重合又は架橋される1つ以上のエチレン系不飽和型化合物を含む。エチレン系不飽和型化合物は、例えば重合性モノマーであってよい。好適なモノマーは典型的には多官能性であり、すなわち、2つ以上のエチレン系不飽和型ラジカル重合性基を含む。典型的な多官能性モノマーは、アルコールの不飽和型エステル、好ましくはポリオールのアクリレートエステル及びメタクリレートエステルである。オリゴマー及び/又はプレポリマー、例えばウレタンアクリレート及びメタクリレート、エポキシドアクリレート及びメタクリレート、ポリエステルアクリレート及びメタクリレート、ポリエーテルアクリレート及びメタクリレート、及び不飽和型ポリエステル樹脂を使用することもできる。
【0030】
フリーラジカル開始型重合によって重合可能な、そして重合性組成物において有用な数多くの不飽和型モノマーが当業者に知られており、そしてこれらは例えば「Photoreactive Polymers: The Science and Technology of Resists(光反応性ポリマー:レジストの科学及び技術)」 A. Reiser, Wiley, New York, 1989, 第102-177頁;「Photopolymers: Radiation Curable Imaging Systems(感光性ポリマー:輻射線硬化性画像形成系)」 B. M. Monroe;「Radiation Curing: Science and Technology(輻射硬化:科学及び技術)」 S.P. Pappas編、Plenum, New York, 1992, 第399-440頁;及び「Polymer imaging(ポリマー画像形成)」 A.B. Cohen及びP. Walker;「画像形成プロセス及び材料(Imaging Processes and Material)」 J.M. Sturge他編、Van Nostrand Reinhold, New York, 1989, 第226-262頁に記載されている。
【0031】
本発明の重合性成分は、熱又は輻射線に暴露した後、画像形成済領域を水性現像剤中に不溶性にするのに十分な量で存在する。重合性成分とバインダーとの重量比は、約5:95〜約95:5、好ましくは約10:90〜約90:10、より好ましくは約20:80〜約80:20、最も好ましくは約30:70〜約70:30である。
【0032】
開始剤系
重合性組成物は、画像形成可能要素が像様暴露されると重合反応を開始するための開始剤系を含む。開始剤系は熱又は輻射線に当てられると、フリーラジカルを発生させることにより、重合反応を開始する。開始剤系は例えば、スペクトル範囲約300〜1400 nmに対応する紫外線、可視線及び/又は赤外線スペクトル領域内の電磁輻射線に対して応答することができる。
【0033】
当業者によって、好適な開始剤系が認識されることになる。いくつかの実施態様において、開始剤系は、画像形成可能要素が熱により画像形成されるとフリーラジカルを発生させる化合物を含む。感熱性フリーラジカル発生体は、例えば過酸化物、例えば過酸化ベンゾイル;ヒドロペルオキシド、例えばクミルヒドロペルオキシド;アゾ化合物、例えばアゾビス-イソブチロニトリル;Dueber他、米国特許第4,565,769号明細書に開示されているような2,4,5-トリアリールイミダゾリル二量体(ヘキサアリールビスイミダゾール);トリハロメチルトリアジン;ホウ酸塩;及びオニウム塩、例えばジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、及びピリジニウム塩;及びこれらの混合物を含む。ジアリールヨードニウム塩及びトリアリールスルホニウム塩が、特に好適なオニウム塩である。重合性組成物は典型的には、約0.5〜約7重量%のラジカル発生性化合物を含む。
【0034】
いくつかの実施態様の場合、開始剤系は赤外線に対して感光する。赤外線は、例えば約800〜約1200 nmの範囲内にあってよい。赤外線で画像形成されるべき画像形成可能層は、典型的には、「光熱変換材料」として知られる赤外線吸収剤を含む。光熱変換材料は輻射線を吸収し、そしてこれを熱に変換する。光熱変換材料は高温体を用いて画像形成するのに必要というわけではないが、光熱変換材料を含有する画像形成可能要素を、高温体、例えばサーマルヘッド又はサーマルヘッドアレイで画像形成することもできる。
【0035】
光熱変換材料は、輻射線を吸収し、そしてこれを熱に変換することができる任意の材料であってよい。好適な材料は色素及び顔料を含む。好適な顔料は例えば、カーボンブラック、ヘリオゲングリーン、ニグロシンベース、酸化鉄(III)、酸化マンガン、プリシアンブルー、及びパリスブルーを含む。顔料粒子のサイズは、顔料を含有する層の厚さを上回るべきではない。最も好適には、粒子のサイズは、層の厚さの半分以下になる。画像形成可能層内の光熱変換材料の量は、一般には、画像形成波長において光学濃度0.05以上、好ましくは光学濃度約0.5から約2以上〜3を提供するのに十分である。重合性組成物は典型的には、約0.5〜約7重量%の光熱変換材料を含む。
【0036】
光熱変換材料は、適切な吸収スペクトル及び溶解度を有する色素を含むことができる。色素、特に750 nm〜1200 nmの高い吸光係数を有する色素が好ましい。好適な色素の例は、以下のクラス:メチン、ポリメチン、アリールメチン、シアニン、ヘミシアニン、ストレプトシアニン、スクアリリウム、ピリリウム、オキソノール、ナフトキノン、アントラキノン、ポルフィリン、アゾ、クロコニウム、トリアリールアミン、チアゾリウム、インドリウム、オキサゾリウム、インドシアニン、インドトリカルボシアニン、オキサトリカルボシアニン、フタロシアニン、チオシアニン、チアトリカルボシアニン、メロシアニン、クリプトシアニン、ナフタロシアニン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、カルコゲノピリロアリーリデン、及びビス(カルコゲノピリロ)ポリメチン、オキシインドリジン、ピラゾリンアゾ、及びオキサジンのクラス、の色素を含む。赤外線吸収色素は、数多くの刊行物、例えばNagasaka他の欧州特許出願公開第0 823 327号明細書、米国特許第4,973,572号明細書(DeBoer)、及び同第5,208,135号明細書(Patel他)に開示されている。有用な赤外線吸収色素の他の例は、American Dye Source, Inc.(Baie D'Urfe, カナダ国Quebec)から入手可能なADS-830A及びADS-1064を含む。
【0037】
インキ及び/又はファウンテン溶液と接触することにより現像されるようになっている画像形成可能要素の場合、水溶性光熱変換材料が好適であり得る。水溶性光熱変換材料は、例えば1つ又は2つ以上のスルフェート及び/又はスルホネート基を有するシアニン色素を含む。2〜4つのスルホネート基を含有する赤外線吸収性シアニンアニオンが、例えば米国特許第5,107,063号明細書(West他)、同第5,972,838号明細書(Pearce他)、同第6,187,502号明細書(Chapman他)、及び同第5,330,884号明細書(Fabricius他)に報告されている。
【0038】
他の実施態様の場合、開始剤系は光増感剤としての紫外線、可視線又は赤外線吸収剤、及びフリーラジカルを生成することができる電子受容体を含む。開始剤系は、電子及び/又は水素原子を供与することができ、且つ/又はフリーラジカルを形成することができる共開始剤を含むこともできる。このような開始剤系の例は、例えば米国特許第4,997,745号明細書(Kawamura他)に記載されているような、単独での、又は別個の光増感剤と一緒の状態でのトリハロメチルトリアジン;例えば米国特許第5,599,650号明細書(Bi他)に記載されているような、トリハロメチルトリアジンと一緒の状態での可視光活性化用分光増感剤;米国特許第5,942,372号明細書(West他)に記載されているような、ポリカルボン酸共開始剤、例えばアニリノ-N,N-二酢酸、及び二次共開始剤、例えばジアリールヨードニウム塩、チタノセン、ハロアルキルトリアジン、ヘキサアリールビスイミジゾール、ホウ酸塩、及び、アルコキシ基又はアシルオキシ基によって置換された複素環式窒素原子を含有する光酸化剤と一緒の状態の、紫外線及び可視光の活性化のための3-ケトクマリン;例えば米国特許第5,368,990号明細書(Kawabata他)に記載されているような、シアニン色素、ジアリールヨードニウム塩、及び、芳香族環に直接的に結合されたN, O又はS基に、メチレン基を介して結合されたカルボン酸基を有する共開始剤;例えば米国特許第5,496,903号明細書(Watanabe他)に記載されているような、トリハロメチルトリアジン及び有機ホウ素塩と一緒の状態の赤外線活性化用シアニン色素;赤外線吸収剤、トリクロロメチルトリアジン及びアジニウム化合物を含む、開始用フリーラジカルを生成することができる化合物、並びに、例えば米国特許第6,309,792号明細書(Hauck他)に記載されているような、芳香族環に直接的に結合されたN, O又はS基に、メチレン基を介して結合されたカルボン酸基を有するポリカルボン酸共開始剤を含む。
【0039】
バインダー
画像形成可能層の重合性組成物はまた、疎水性主鎖、疎水性主鎖に結合されたペンダントシアノ基、及び親水性ポリ(アルキレンオキシド)セグメントを含むペンダント基を有する高分子バインダーを含む。このようなバインダーの組み合わせを採用することもできる。いくつかの実施態様の場合、画像形成可能層はバインダーの組み合わせを含む。バインダーの組み合わせは、前記説明に合致しない任意選択の「共バインダー(co-binder)」(下で説明する)を含むことができる。
【0040】
重合性組成物は、約10重量%〜約80重量%、より好適には約20重量%〜約50重量%、そして最も好適には約30重量%〜約40重量%の総バインダー(すなわちバインダーと共バインダーとの総量)を含む。総バインダーは一般に、光重合性組成物を、水性現像剤中に可溶性又は分散性にするのに十分な量で存在する。重合性組成物の約0重量%〜約50重量%、より好適には約1重量%〜約30重量%が、共バインダーであってよい。
【0041】
高分子バインダーは一般に、室温で固形であり、そして典型的には非エラストマーの熱可塑性材料である。高分子バインダーは、親水性及び疎水性の両方の領域を含む。いかなる理論にも縛られはしないが、疎水性領域と親水性領域との組み合わせは、露光済領域と未露光領域との区別化を高めることにより、現像可能性を容易にするのに重要であると考えられる。
【0042】
一般に、高分子バインダーは、約10,000 Da〜約250,000 Da、より一般的には約25,000 Da〜約200,000 Daの数平均分子量(Mn)によって特徴付けられる。重合性組成物は、不連続的な高分子バインダー粒子を含んでよい。好ましくは、不連続的な粒子は、重合性組成物中に懸濁された高分子バインダー粒子である。懸濁液中の粒子の平均直径は、約0.01ミクロン〜約1ミクロン、より好適には約100ミクロン〜約700ミクロンであってよい。いくつかの実施態様の場合、懸濁液中の粒子の平均直径は、約150 nm〜約250 nmである。不連続的な粒子の存在は、未露光領域の現像可能性を促進する傾向がある。
【0043】
高分子バインダーは、付加ポリマー又は縮合ポリマーであってよい。付加ポリマーは、例えばアクリレート及びメタクリレートエステル、アクリル酸及びメタクリル酸、メチルメタクリレート、アリルアクリレート及びメタクリレート、アクリルアミド及びメタクリルアミド、アクリロニトリル及びメタクリロニトリル、スチレン、ヒドロキシスチレン又はこれらの組み合わせから調製することができる。好適な縮合ポリマーは、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリアミド、並びに、フェノール/ホルムアルデヒド及びピロガロール/アセトンポリマーを含むフェノール系ポリマーを含む。
【0044】
高分子バインダーは、ペンダント基が結合された構成ユニットを含む疎水性バックボーン(主鎖)を含む。いくつかの実施態様において、高分子バインダーがエチレン系不飽和型モノマーの組み合わせから誘導されたコポリマーである場合のように、疎水性主鎖は全炭素主鎖である。他の実施態様において、疎水性主鎖は、高分子バインダーが縮合反応又は何らかの他の手段によって形成される場合のように、疎水性主鎖はヘテロ原子を含んでよい。
【0045】
高分子バインダーは、疎水性主鎖に直接的に結合されたペンダントシアノ基(-C≡N)を有する複数の構成ユニットを含む。一例として挙げるならば、ペンダントシアノ基を有する構成ユニットは、-[CH2CH(C≡N)-]及び-[CH2C(CH3)(C≡N)-]を含む。
【0046】
ペンダントシアノ基を有する構成ユニットは、エチレン系不飽和型モノマー、例えばアクリロニトリル又はメタクリロニトリルから、又はこれらの組み合わせから誘導することができる。本明細書中に使用される「(メタ)アクリロニトリル」という用語は、アクリロニトリル又はメタクリロニトリル、又はアクリロニトリルとメタクリロニトリルとの組み合わせが、上記目的に適していることを示す。
【0047】
本発明のいくつかの実施態様の場合、高分子バインダーは、1つのコモノマーとして(メタ)アクリロニトリルから誘導されたコポリマーである。しかし、ペンダントシアノ基を有する構成ユニットは、他のコンベンショナルな手段によって、ポリマー中に導入することもできる。例えば、高分子バインダーは、シアノアクリレートモノマー、例えばメチルシアノアクリレート又はエチルシアノアクリレートから誘導されたコポリマーであってよい。別の実施態様の場合、高分子バインダーは、(メタ)アクリロニトリルとエチルシアノアクリレートモノマーとの組み合わせから誘導することができる。
【0048】
高分子バインダーはまた、親水性ポリ(アルキレンオキシド)セグメントを含むペンダント基を有する複数の構成ユニットを含む。ポリ(アルキレンオキシド)セグメントは、例えばアルキレンオキシド構成ユニットから成るブロックを含有するオリゴマー又はポリマーであってよい。一般に、ペンダント基は大部分がポリ(アルキレンオキシド)セグメント(又は2つ以上のこのようなセグメント)となるが、しかし、結合基及び末端基を含むこともできる。
【0049】
いくつかの実施態様の場合、アルキレンオキシド構成ユニットは、(C1-C6)アルキレンオキシド基、より典型的には(C1-C3)アルキレンオキシド基である。例えば、ポリ(アルキレンオキシド)セグメントは、炭素原子1〜3の直鎖状又は分枝状アルキレンオキシド基を含むことができ、これらの基は、-[CH2O-]、-[CH2CH2O-]、-[CH(CH3)O-]、-[CH2CH2CH2O-]、-[CH(CH3)CH2O-]、-[CH2CH(CH3)O-]、又は前記のもののいずれかの置換形を含む。いくつかの実施態様の場合、ポリ(アルキレンオキシド)セグメントは、このような構成ユニットから成る。1つの実施態様の場合、ポリ(アルキレンオキシド)セグメントは、-[CH2CH2O-]構成ユニットから成る。
【0050】
ポリ(アルキレンオキシド)セグメントは、典型的には、全部で約5〜約150個のアルキレンオキシド構成ユニットを含む。一般には、ポリ(アルキレンオキシド)セグメントの数平均分子量(Mn)は、約300〜約10,000 Da、より好適には約500〜約5,000 Da、そして典型的には約1,000〜約3,000 Daである。
【0051】
ポリ(アルキレンオキシド)セグメントを含む好適なペンダント基の一例は、形態:
-C(=O)O-[(CH2)xO-]yR
のペンダント基であり、上記式中、xは1〜3であり、yは約5〜約150であり、そしてRは好適な末端基である。好適な末端基Rは、一例として、炭素原子数1〜6のアルキル基、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソ-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、イソ-ペンチル、ネオ-ペンチル、n-ヘキシル、イソ-ヘキシル、1,1-ジメチル-ブチル、2,2-ジメチル-ブチル、シクロペンチル、及びシクロヘキシルを含むことができる。
【0052】
ポリ(アルキレンオキシド)セグメントを含む好適なペンダント基の具体例は、形態:
-C(=O)O-[CH2CH2O-]yCH3
のペンダント基であり、上記式中、yは約10〜約100であり、そしてより好適にはyは約25〜約75である。1実施態様の場合、yは約40〜約50である。
【0053】
本発明の具体的な実施態様の場合、本発明の高分子バインダーの主鎖はまた、他の好適な重合性モノマー又はオリゴマーから誘導された構成ユニットを含む。例えば、高分子バインダーは、アクリレートエステル、メタクリレートエステル、スチレン、ヒドロキシスチレン、アクリル酸、メタクリル酸、メタクリルアミド、又は前記のもののいずれかの組み合わせから誘導された構成ユニットを含んでよい。特に好適なのは、スチレン又はメタクリルアミドから誘導された構成ユニットである。やはり好適なのは、メチルメタクリレート又はアリルメタクリレートから誘導された構成ユニットである。具体的には、疎水性主鎖に直接的に結合された無置換型又は置換型のペンダントフェニル基を有する構成ユニットが有用であり得る。置換型フェニル基は、例えば4-メチルフェニル、3-メチルフェニル、4-メトキシフェニル、4-シアノフェニル、4-クロロフェニル、4-フルオロフェニル、4-アセトキシフェニル、及び3,5-ジクロロフェニルを含む。このような構成ユニットは、例えばスチレン又は置換型スチレンモノマーから誘導することができる。
【0054】
いくつかの実施態様の場合、高分子バインダーは、シロキサン官能基を含有するペンダント基を有する構成ユニットを含む。好適な高分子バインダー及びこれらの調製に関しては、「On-Press Developable Imageable Element(オン・プレス現像が可能な画像形成可能要素)」と題された、同時係属中の米国特許出願第10/842,111号明細書に記載されている。
【0055】
本発明の高分子バインダーの場合、総反復ユニットの大きなパーセンテージが、ペンダントシアノ基を含む。高分子バインダー中の総構成ユニットの一般には約70モル%〜約99.9モル%、典型的には約75モル%〜約95モル%が、疎水性主鎖に直接的に結合されたペンダントシアノ基を含む。高分子バインダー中の構成ユニットのわずかな割合だけが、親水性ポリ(アルキレンオキシド)セグメントを含むペンダント基を有する。高分子バインダー中の総構成ユニットの一般には約0.1モル%〜約5モル%、典型的には約0.5モル%〜約2モル%が、親水性ポリ(アルキレンオキシド)セグメントを含むペンダント基を有する。他のモノマーが含まれる場合には、高分子バインダーの総構成ユニットのわずかな割合が、これらの他のモノマー(例えばスチレン、アクリルアミドなど)から誘導される。高分子バインダー中の総構成ユニットの一般には約0モル%〜約30モル%、典型的には約2モル%〜約20モル%、より好適には約5モル%〜約15モル%が、他のモノマーから誘導される。
【0056】
1実施態様の場合、高分子バインダーは:i) 疎水性主鎖に直接的に結合されたペンダントシアノ基を有する構成ユニット;ii) 親水性ポリ(アルキレンオキシド)セグメントを含むペンダント基を有する構成ユニット;及びiii) 疎水性主鎖に直接的に結合された無置換型又は置換型のペンダントフェニル基を有する構成ユニット、から本質的に成るランダムコポリマーである。別の実施態様の場合、高分子バインダーは:i) 形態-[CH2C(R)(C≡N)-]の構成ユニット;ii) 形態-[CH2C(R)(PEO)-]の構成ユニット(上記式中、PEOは形態-C(=O)O-[CH2CH2O-]yCH3のペンダント基を表し、yは約25〜約75である);及びiii) 形態:-[CH2CH(Ph)-]の構成ユニット(上記式中、各Rは独立して、-H又は-CH3を表し、そしてPhはペンダントフェニル基を表す)、から本質的に成るランダムコポリマーである。さらに別の実施態様の場合、高分子バインダーは、ランダムコポリマー中の総構成ユニットの約70〜約99.9モル%が形態-[CH2C(R)(C≡N)-]を有し;ランダムコポリマー中の総構成ユニットの約0.1〜約5モル%が形態-[CH2C(R)(PEO)-]の構成ユニットであり;そしてランダムコポリマー中の総構成ユニットの約2〜約20モル%が形態-[CH2CH(Ph)-]を有する、ランダムコポリマーである。
【0057】
高分子バインダーは典型的には、コモノマーのラジカル共重合によって得られるランダムコポリマーである。典型的な調製の場合には、2つ以上のコモノマー、すなわち、ペンダントシアノ基を有する構成ユニットの前駆体である1つのコモノマーと、ポリ(アルキレンオキシド)セグメントを含むペンダント基を有する構成ユニットの前駆体である別のコモノマー(より好適には「マクロマー」と呼ばれる)との組合せが共重合される。本明細書中に使用される「モノマーの混合物」及び「モノマーの組み合わせ」という語句は、1つ又は2つ以上の重合性モノマー及び/又は重合性マクロマーの混合物又は組み合わせを含むように、簡単にする目的で使用される。
【0058】
一例を挙げるならば、高分子バインダーは、好適なモノマー/マクロマー、例えば:
A)アクリロニトリル、メタクリロニトリル、又はこれらの組み合わせ(すなわち(メタ)アクリロニトリル);
B)アクリル酸又はメタクリル酸のポリ(アルキレングリコール)エステル、例えばポリ(エチレングリコール)メチルエーテルアクリレート、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート、又はこれらの組み合わせ(すなわち、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテル(メタ)アクリレート);及び
C)任意には、モノマー、例えばスチレン、アクリルアミド、メタクリルアミドなど、又は好適なモノマーの組み合わせ
の組み合わせ又は混合物の重合によって形成することができる。
【0059】
マクロマーBとして有用な前駆体は、例えばポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールメチルエーテルメタクリレート、ポリエチレングリコールエチルエーテルメタクリレート、ポリエチレングリコールブチルエーテルメタクリレート、ポリプロピレングリコールヘキシルエーテルメタクリレート、ポリプロピレングリコールオクチルエーテルメタクリレート、ポリエチレングリコールメチルエーテルアクリレート、ポリエチレングリコールエチルエーテルアクリレート、ポリエチレングリコールフェニルエーテルアクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールメチルエーテルメタクリレート、ポリプロピレングリコールエチルエーテルメタクリレート、ポリプロピレングリコールブチルエーテルメタクリレート、ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコール)メチルエーテルメタクリレート、ポリ(ビニルアルコール)モノメタクリレート、ポリ(ビニルアルコール)モノアクリレート、又はこれらの混合物を含む。モノマーBとして一般に使用される前駆体は、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート、ポリ(エチレングリコール)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール)メチルエーテルメタクリレート、又はこれらの組み合わせを含む。重合性マクロマーに関連して本明細書中に使用される「(メタ)アクリレート」という用語は、アクリレートマクロマー又はメタクリレートマクロマー、又はアクリレートマクロマーとメタクリレートマクロマーとの組み合わせが、上記目的に適していることを示す。マクロマーに関する「アルキルエーテル」という語句は、低級アルキルエーテル、一般には(C1-C6)線状又は分枝状飽和型アルキルエーテル、例えばメチルエーテル又はエチルエーテルを示す。
【0060】
任意のモノマーCとして使用することができる好適なモノマーは、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリレートエステル、メタクリレートエステル、例えばメチルメタクリレート、アリルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、スチレン、ヒドロキシスチレン、メタクリルアミド、又は前記のもののいずれかの組み合わせを含む。特に好適なのは、スチレン、又はメタクリルアミド、又はこれらから誘導されたモノマーである。好適なモノマーの具体例は、スチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、4-メトキシスチレン、4-アセトキシスチレン、アルファ-メチルスチレン、アクリル酸、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、メタクリル酸、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-プロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、n-ペンチルメタクリレート、ネオ-ペンチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、n-ヘキシルメタクリレート、2-エトキシエチルメタクリレート、3-メトキシプロピルメタクリレート、アリルメタクリレート、ビニルアセテート、ビニルブチレート、メチルビニルケトン、ブチルビニルケトン、フッ化ビニル、塩化ビニル、臭化ビニル、無水マレイン酸、マレイミド、N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-ベンジルマレイミド、及びこれらの混合物を含む。
【0061】
例えば、上記高分子バインダーは、ラジカル重合によって調製することができる。ラジカル重合は当業者によく知られており、例えば、Macromolecules(マクロ分子)第2巻、第2版、H.G. Elias編、Plenum, New York, 1984の第20章及び21章に記載されている。有用なフリーラジカル開始剤は、過酸化物、例えば過酸化ベンゾイル、ヒドロペルオキシド、例えばクミルヒドロペルオキシド、及びアゾ化合物、例えば2,2'-アゾビス-イソブチロニトリル(AIBN)である。連鎖移動剤、例えばドデシルメルカプタンを使用して、化合物の分子量を制御することができる。
【0062】
1実施態様の場合、高分子バインダーは、50重量%以上のモノマーAを含む、重合性モノマーの組み合わせから誘導されたコポリマーである。
【0063】
別の実施態様の場合、高分子バインダーは、約55〜約90重量パーセントの(メタ)アクリロニトリル;約5〜約15重量パーセントのポリ(エチレングリコール)アルキルエーテル(メタ)アクリレート;及び約5〜約30重量パーセントのスチレン、から誘導されたコポリマーである。さらに別の実施態様の場合、高分子バインダーは:約55〜約90重量パーセントの(メタ)アクリロニトリル;約5〜約15重量パーセントのポリ(エチレングリコール)アルキルエーテル(メタ)アクリレート;及び約5〜約30重量パーセントのスチレン、から本質的に成るモノマーの組み合わせから誘導されたコポリマーである。さらに別の実施態様の場合、高分子バインダーは:約55〜約90重量パーセントのアクリロニトリル;約5〜約15重量パーセントのポリ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート;及び約5〜約30重量パーセントのスチレン、から本質的に成るモノマーの組み合わせから誘導されたコポリマーである。
【0064】
ラジカル重合に適した溶剤は、反応物質に対して不活性でありそして反応に対して特に不都合な影響を及ぼすことがない液体、例えばエステル、例えばエチルアセテート及びブチルアセテート;ケトン、例えばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルプロピルケトン、及びアセトン;アルコール、例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、及びブタノール;エーテル、例えばジオキサン及びテトラヒドロフラン、及びこれらの混合物を含む。
【0065】
しかし、高分子バインダーは、好ましくは親水性媒質(水、又は水とアルコールとの混合物)中で調製される。親水性媒質は、溶剤中に分散された粒子の形成を容易にすることができる。さらに、ポリマー主鎖に疎水性特性を提供する構成ユニットをもたらすモノマー、例えばアクリロニトリル又はメタクリロニトリルを完全には溶解しない溶剤系中で重合を行うことが望ましい場合がある。例えば、高分子バインダーは水/アルコール混合物、例えば水とn-プロパノールとの混合物中で合成することができる。
【0066】
全てのモノマー/マクロマー及び重合開始剤は、反応媒質に直接的に添加することができ、重合反応は、選択された重合開始剤によって決定された適切な温度で進行する。或いは、ポリ(アルキレンオキシド)セグメントを含有するマクロマーを反応溶剤に先ず添加し、続いて、高温でモノマーをゆっくりと添加することもできる。開始剤はモノマー混合物に、又はマクロマーの溶液に、又はその両方に添加することができる。
【0067】
高分子バインダーの調製を、コポリマーを形成するために使用することができるモノマー及びマクロマーに関して説明してきたが、本発明の実施は、コモノマーの混合物の重合によって形成されたコポリマーの使用に制限されることはない。高分子バインダーは、当業者に明らかなその他のルートによって、例えば前駆ポリマーの改質によって形成することができる。いくつかの実施態様の場合、高分子バインダーは、ポリ(アルキレンオキシド)セグメントが好適な高分子前駆体上にグラフトされる場合のように、グラフトコポリマーとして調製することができる。このようなグラフトは、例えばアニオン性、カチオン性、非イオン性、又はフリーラジカルグラフト法によって行うことができる。
【0068】
一例を挙げるならば、重合性モノマーの好適な組み合わせを共重合してグラフト可能なコポリマーを生成し、そしてその後、グラフト可能なコポリマー上にポリ(アルキレンオキシド)セグメントを含む官能基をグラフトすることにより、高分子バインダーを調製することができる。例えば、ヒドロキシ官能性又はアミン官能性ポリエチレングリコールモノアルキルエーテルと、酸塩化物、イソシアネート及び無水物基を含む共反応基を有するポリマーと反応させることにより、グラフトコポリマーを調製することができる。本発明における使用に適したグラフトコポリマーの他の調製方法は、上述の米国特許第6,582,882号に記載された方法を含む。
【0069】
任意の共バインダー
上記バインダーに加えて、画像形成可能層は任意には1種又は2種以上の共バインダーを含んでよい。典型的な共バインダーは、水溶性又は水分散性ポリマー、例えばセルロース誘導体、例えばカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース;ポリビニルアルコール;ポリアクリル酸;ポリメタクリル酸;ポリビニルピロリドン;ポリラクチド、ポリビニルホスホン酸;合成コポリマー、例えばアルコキシポリエチレングリコールアクリレート又はメタクリレート、例えばメトキシポリエチレングリコールアクリレート又はメタクリレートと、モノマー、例えばメチルメタクリレート、メチルアクリレート、ブチルメタクリレート、ブチルアクリレート、又はアリルメタクリレートとのコポリマー;及びこれらの混合物である。
【0070】
いくつかの実施態様の場合、共バインダーは架橋可能な部位を提供する。例えば、架橋可能な部位はエチレン系不飽和型部位であってよい。
【0071】
画像形成可能要素の調製
画像形成可能要素は、コンベンショナルな技術を用いて平版用基板の親水性表面上に画像形成可能層を適用することにより調製することができる。画像形成可能層は、任意の好適な方法、例えば塗布又はラミネーションによって適用することができる。
【0072】
典型的には、画像形成可能層の成分は、好適な塗布用溶剤、例えば水、又は水と有機溶剤、例えばメタノール、エタノール、イソ-プロピルアルコール、及び/又はアセトンとの混合物中に分散又は溶解される。界面活性剤、例えばフッ素化界面活性剤、又はポリエトキシル化ジメチルポリシロキサンコポリマー、又は界面活性剤の混合物が、塗布用溶剤中に他の成分を分散させるのを助けるように存在することができる。結果として得られる混合物は、コンベンショナルな方法、例えばスピン塗布、バー塗布、グラビア塗布、ダイ塗布、スロット塗布、又はローラ塗布によって、平版用基板上に塗布される。
【0073】
塗布後、画像形成可能層を乾燥させることにより、溶剤を蒸発させる。画像形成可能層は、周囲温度又は高温、例えば炉内で空気乾燥させることができる。或いは、画像形成可能層は、画像形成可能要素上に温風を吹き付けることにより乾燥させることもできる。画像形成可能層の乾燥塗布重量は、約0.2〜約5.0 g/cm2、より好適には約0.5〜約1.5 g/cm2、そして最も好適には約0.75〜約1.0 g/cm2である。
【0074】
画像形成可能要素の画像形成及び処理
画像形成可能要素を像様露光することにより、画像形成可能要素の露光済領域と未露光領域とを生成する。像様露光は、露光済領域における重合反応を開始する。
【0075】
いくつかの実施態様の場合、画像形成用赤外線を用いて像様露光を行う。画像形成可能要素は、例えば近赤外線電磁スペクトル領域内で発光する半導体レーザー又はレーザーダイオードを用いて像様露光を行うことができる。このようなレーザービームはコンピュータを介してデジタル制御することができ、すなわち、コンピュータ内に記憶されたデジタル化情報を介して前駆体の像様露光を生じさせることができるように、レーザーをオン又はオフにすることができる。目下、商業的に入手可能なイメージセッターにおいて使用される高性能レーザー又はレーザーダイオードは、波長範囲800〜850 nm又は1060〜1120 nmの赤外線を放射する。他の赤外線放射光源が好適な場合もある。
【0076】
像様露光に好適な輻射線源を含む装置の一例は、CreoScitex(Burnaby, British Columbia)のCreo TRENDSETTER 3230であり、これは波長約830 nmの近赤外線を発光するレーザーダイオードを含有する。好適な輻射線源を含む他の装置は、CRESCENT 42T PLATESETTER(Gerber Scientific, South Windsor, Connecticut) (波長1064 nmで作動する内部ドラムプレートセッター)、及びScreen(米国)(Rolling Meadows, Illinois)から入手可能なPlatRite Model 8600及び8800を含む。
【0077】
他の画像形成様式も、重合反応を開始するために必要なエネルギーが画像形成可能層に供給されるのであれば、本発明の実施に好適である。画像形成可能要素は、高温体、例えばサーマル印刷ヘッドを含有するコンベンショナルな装置を使用して、熱により画像形成することができる。好適な装置は1つ以上のサーマルヘッドを含むが、しかし普通はサーマルヘッドアレイを含むことになる。
【0078】
像様露光は画像形成済要素を生成し、画像形成済要素は、露光済領域と相補的な未露光領域とから成る潜像を含む。印刷版を形成するために画像形成済要素を現像すると、未露光領域が除去され、下側の基板の親水性表面が露出されることにより、潜像は画像に変換される。現像を達成するために、画像形成済要素は現像剤溶液、最も好適には水性現像剤、又はインキ及び/又はファウンテン溶液と接触させられる。本発明の画像形成済要素は、オン・プレス現像性印刷版、並びに、他の現像プロセスのために意図された印刷版を含む。
【0079】
現像はコンベンショナルな濯ぎ/ガミング装置内で行うことができる。水性現像剤組成物は、グラフトコポリマー組成物の性質に依存する。水性現像剤の共通の成分は、界面活性剤、キレート剤、例えばエチレンジアミン四酢酸の塩、有機溶剤、例えばベンジルアルコール、及びアルカリ成分、例えば無機メタシリケート、有機メタシリケート、水酸化物および重炭酸塩を含む。水性現像剤のpHは好ましくは、グラフトコポリマー組成物の性質に応じて約5〜約14内にある。数多くの現像剤水溶液が当業者に知られている。
【0080】
或いは、画像形成済要素は、画像形成後に印刷機上に直接的に載置し、そして最初の刷り中にインキ及び/又はファウンテン溶液と接触させることにより現像することもできる。印刷機上に載置する前には、別個の現像工程は必要とならない。このことは、処理装置及び現像剤の両方を伴う別個の現像工程をなくし、ひいては、印刷プロセスを単純化し、そして所要の高価な装置、及び発生する化学廃棄物の量を低減する。水性ファウンテン溶液の典型的な成分は、水に加えて、pH緩衝系、例えばリン酸及びクエン酸緩衝液;減感剤、例えばデキストリン、アラビアゴム、及びカルボキシメチルセルロースナトリウム;界面活性剤及び湿潤剤、例えばアリール及びアルキルスルホネート、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、及び、アルコール及びフェノールのポリエチレンオキシド誘導体;保湿剤、例えばグリセリン及びソルビトール;低沸点溶剤、例えばエタノール及び2-プロパノール;金属イオン封鎖剤、例えばホウ砂、ヘキサメタリン酸ナトリウム、及びエチレンジアミン四酢酸の塩;殺生剤、例えばイソチアゾリノン誘導体;及び消泡剤を含む。
【0081】
オン・プレス画像形成の場合、画像形成可能要素は、平版印刷機シリンダ上に載置された状態で画像形成され、そして画像形成済要素は、初期の印刷機操作時に、ファウンテン溶液及び/又はインキを用いてオン・プレス現像される。この方法は、別個の現像工程を含まない。この方法は、コンピューター・ツー・プレスの用途に特に適している。これらの用途の場合、画像形成可能要素(又は多色プレスのための要素)は、コンピュータで生成されたデジタル画像形成情報に従って版シリンダ上に直接的に画像形成され、しかも処理を最小限にしか又は全く伴わずに、通常の印刷シートを直接的にプリントアウトする。直接画像形成用印刷機の一例は、Heidelberg USA, Inc(Kennesaw, Georgia)のSPEEDMASTER 74-DI印刷機である。
【0082】
画像形成可能要素を画像形成して現像することにより平版印刷版を形成したら、次いでファウンテン溶液を、次に平版インキを印刷版表面上に適用することにより、印刷を行うことができる。ファウンテン溶液は、画像形成されていない領域、すなわち画像形成・現像プロセスによって露出された親水性基板の表面によって取り込まれ、そしてインキは、画像形成済領域、すなわち現像プロセスによって除去されていない領域によって取り込まれる。次いで、オフセット印刷ブランケットを使用して、直接的又は間接的にインキを好適な受理媒体(例えば布地、紙、金属、ガラス、又はプラスチック)に転写することにより、受理媒体上に画像の所望の刷りを提供する。
【0083】
現像に続いて、後ベーキング処理を任意に用いて、プレスの寿命を長くすることができる。
【実施例】
【0084】
コポリマーの合成及び塗布用配合物中に使用される化学物質の用語解説
過硫酸アンモニウム:(NH4)2S2O8
Byk 336:Byk-Chemie USA Inc.(Wallingford, Connecticut)から入手可能な、25% キシレン/メトキシプロピルアセテート溶液中の改質ジメチルポリシロキサンコポリマー
DESMODUR N100:Bayer Corp.(Milford, Connecticut)から入手可能な、ヘキサメチレンジイソシアネートを主剤とする脂肪族ポリイソシアネート樹脂)
ELVACITE 4026:Lucite International, Inc.(Cordova, Tennessee)から入手可能な高分枝状ポリ(メチルメタクリレート)の10重量% 2-ブタノン溶液
IR色素:塗布用配合物中に使用されるIR色素は下記式によって表される:
【0085】
【化1】

【0086】
IRGACURE 250:Ciba Specialty Chemicals(Tarrytown, New York)から入手可能な、(4-メチルフェニル)[4-(2-メチルプロピル)フェニル]ヨードニウムヘキサフルオロホスフェートの75重量%プロピレンカーボネート溶液
KLUCEL M:Hercules Inc., Aqualon Division(Wilmington, Delaware)から入手可能な、ヒドロキシプロピルセルロースの2%水溶液(粘度:5.000 mPa・s)
メルカプト-3-トリアゾール:PCAS(フランス国Paris)から入手可能なメルカプト-3-トリアゾール-1H,2,4
PAA:ポリ(アクリル酸)
【0087】
PEGMA:Sigma-Aldrich Corp.(St. Louis, Missouri)から入手可能なポリ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート;50重量%水溶液として、平均Mn〜2080
PVPA:ポリ(ビニルホスホン酸)
SARTOMER 355:Sartomer Co., Inc. (Exton, Pennsylvania)から入手可能なジトリメチロールプロパンテトラアクリレート
TRENDSETTER 3244x:Creo Products(Burnaby, British Columbia)から入手可能な、波長830 nmで動作する商業的に入手可能なプレートセッター
ウレタンアクリレート:DESMODUR N100と、ヒドロキシエチルアクリレート及びペンタエリトリトールトリアクリレートとの反応により得られるウレタンアクリレートの、80重量% 2-ブタノン溶液
VAZO-64:E. I. du Pont de Nemours and Co. (Wilmington, Delaware)から入手可能な2,2'-アゾビス-イソブチロニトリル
【0088】
コポリマーの合成
(注意!メタクリロニトリル及びアゾビス-イソブチロニトリルを含む、下記合成に使用されるいくつかの化学物質は高毒性である)
例1. コポリマー1の合成
54 gのn-プロパノールと16 gの脱イオン水との混合物を250 mLフラスコ内に装入し、これを70℃まで加熱し、N2ガスの定常流でパージし、そして機械的撹拌器で撹拌した。
【0089】
54 gのn-プロパノール、16 gの脱イオン水、10 gのPEGMA、4.5 gのスチレン、40.5 gのアクリロニトリル、及び0.32 gのVAZO-64の混合物を別個のビーカー内に準備し、次いでこれを30分間にわたって250 mLフラスコに液滴状に添加した。2.5時間後、反応混合物に0.16 gのVAZO-64を添加した。重合反応はさらに2時間続いた。結果として生じたポリマー溶液は、21重量%固形分のコポリマー1を含有した。
【0090】
例2. コポリマー2の合成
2-ブタノン(384.1 g)及び8.5 gのPEGMAを、N2雰囲気下で1L四首フラスコ内に装入し、そして80℃まで加熱した。アリルメタクリレート(38.0 g)とVAZO-64(0.3 g)との予混合物を、90分間にわたって80℃で添加した。添加が完了した後、VAZO-64をさらに0.13 g添加した。その後、0.13gのVAZO-64をさらに2回添加した。不揮発分パーセントに基づくポリマー変換率は、>98%であった。
【0091】
下記例11〜14及び比較例19の塗布用配合物において、コポリマー2は、コポリマー1及び3〜7に加えて、架橋性バインダーとして使用される。
【0092】
例3. コポリマー3の合成
15 gのPEGMA、48 gの水、及び192 gの1-プロパノールの混合物を、500 mLフラスコ内に装入し、これを80℃まで加熱した。別個のビーカー内で、66.9 gのスチレンと0.48 gのVAZO-64とを混合し、そしてこの溶液の一部(12 g)を、フラスコ内の混合物に添加した。これは約10分以内で曇ってきた。続いて、残りの溶液を30分間にわたってフラスコに添加した。さらに3時間後に、結果として生じたポリマー溶液は、25重量%固形分のコポリマー3を含有した。
コポリマー3は、疎水性ポリマー主鎖上にペンダントシアノ基を有しない。コポリマー3は、下記比較例19におけるバインダーとして使用される。
【0093】
例4. コポリマー4の合成
50 gの水と2.5 gのPEGMAとの混合物を、250 mL三首フラスコ内に入れた。フラスコは磁気撹拌器、温度調節器、添加漏斗及びN2入口を備えた。混合物を撹拌しながら70℃まで加熱した。
【0094】
2.1 gのメタクリロニトリルを含有するモノマー混合物の第1部分をフラスコに添加し、続いて、0.05 gの過硫酸アンモニウムを添加した。混合物を約30分間にわたって70℃で撹拌し、そしてさらに0.05 gの過硫酸アンモニウムを添加した。17 gのメタクリロニトリル、13 gのn-プロパノール、及び1.9 gのスチレンを含有するモノマー混合物の第2部分を、2時間にわたって混合物中にゆっくりと添加した。0.05 gの過硫酸アンモニウムの最終部分を添加し、そして混合物を70℃で一晩(〜20時間)撹拌しておいた。結果として生じたポリマー溶液は、13.7重量%固形分のコポリマー4を含有した。
【0095】
例5. コポリマー5の合成
1.25 gのPEGMAを、50 mL三首フラスコ内の0.05 gの過硫酸アンモニウム、10 gの水、及び10 gのn-プロパノールとの混合物中に入れた。フラスコは磁気撹拌器、添加漏斗、及びN2入口を備えた。混合物をN2保護下で70℃まで加熱した。1.0 gのスチレンと4.0 gのメタクリロニトリルとを含有する溶液を、撹拌しながら1.5時間以内で、添加漏斗を介して三首フラスコにゆっくりと添加し、そして温度を約70℃で維持した。5時間後、0.04 gの過硫酸アンモニウムをさらに添加した。反応物を70℃で一晩(〜20時間)撹拌した。結果として生じたポリマー溶液は、15.6重量%固形分のコポリマー5を含有した。
【0096】
例6. コポリマー6の合成
54 gのn-プロパノールと16 gの脱イオン水との混合物を250 mLフラスコ内に装入し、これを70℃まで加熱し、N2ガスの定常流でパージし、そして機械的撹拌器で撹拌した。54 gのn-プロパノール、16 gの脱イオン水、10 gのPEGMA、13.5 gのスチレン、31.5 gのアクリロニトリル、及び0.48 gのVAZO-64の混合物を別個のビーカー内に準備し、そしてこれを30分間にわたって250 mLフラスコに液滴状に添加した。2.5時間後、反応混合物に0.16 gのVAZO-64を添加した。重合反応はさらに2時間続いた。結果として生じたポリマー溶液は、21.7重量%固形分のコポリマー6を含有した。
【0097】
例7. コポリマー7の合成
54 gのn-プロパノールと16 gの脱イオン水との混合物を250 mLフラスコ内に装入し、これを70℃まで加熱し、N2ガスの定常流でパージし、そして機械的撹拌器で撹拌した。54 gのn-プロパノール、16 gの脱イオン水、10 gのPEGMA、6.75 gのスチレン、38.25 gのアクリロニトリル、及び0.48 gのVAZO-64の混合物を別個のビーカー内に準備し、そしてこれを30分間にわたって250 mLフラスコに液滴状に添加した。2.5時間後、反応混合物に0.16 gのVAZO-64を添加した。重合反応は全部で19時間続いた。結果として生じたポリマー溶液は、24重量%固形分のコポリマー7を含有した。
【0098】
例8. コポリマー8の合成
190 gの脱イオン水と200 gのn-プロパノールとの混合物中に溶解された20 gのPEGMAの溶液を、1000 mL四首フラスコ内に装入し、そしてN2雰囲気下でわずかに還流するまで(〜73℃)ゆっくりと加熱した。スチレン(9 g)、アクリロニトリル(81 g)、及びVAZO-64(0.7 g)の予混合物を、2時間にわたって添加した。6時間後、VAZO-64のさらに1アリコート(0.5 g)を添加した。温度を80℃まで上昇させた。続いて、VAZO-64のさらに2アリコート(それぞれ0.35 g)を6時間にわたって添加した。全部で19時間にわたる反応後、コポリマーへの変換率は、不揮発分パーセントの測定に基づいて、>98%であった。PEGMA/スチレン/アクリロニトリルの重量比は、10:9:81であり、そしてn-プロパノール/水の比は、50:50であった。溶液中の残留アクリロニトリルは、1H-NMRによる測定に基づいて、0.08%であった。
【0099】
例9. コポリマー9の合成
50.5 gの脱イオン水と242.2 gのn-プロパノールとの混合物中に溶解された20 gのPEGMAの溶液を、1000 mL四首フラスコ内に装入し、そしてN2雰囲気下でわずかに還流するまで(〜73℃)ゆっくりと加熱した。スチレン(9 g)、アクリロニトリル(81 g)、及びVAZO-64(0.7 g)の予混合物を、2時間にわたって添加した。6時間後、VAZO-64のさらに1アリコート(0.5 g)を添加した。温度を80℃まで上昇させた。続いて、VAZO-64のさらに2アリコート(それぞれ0.35 g)を6時間にわたって添加した。全部で19時間にわたる反応後、グラフトコポリマーへの変換率は、不揮発分パーセントの測定に基づいて、>98%であった。PEGMA/スチレン/アクリロニトリルの重量比は、10:9:81であり、そしてn-プロパノール/水の比は、80:20であった。溶液中の残留アクリロニトリルは、1H-NMRによる測定に基づいて、0.25%であった。
【0100】
例10. コポリマー10の合成
74.8 gの脱イオン水と241.4 gのn-プロパノールとの混合物中に溶解された20 gのPEGMAの溶液を、1000 mL四首フラスコ内に装入し、そしてN2雰囲気下でわずかに還流するまで(76℃)ゆっくりと加熱した。スチレン(20 g)、アクリロニトリル(70 g)、及びVAZO-64(0.7 g)の予混合物を、2時間にわたって添加した。6時間後、VAZO-64のさらに1アリコート(0.5 g)を添加した。温度を80℃まで上昇させた。続いて、VAZO-64のさらに2アリコート(それぞれ0.35 g)を6時間にわたって添加した。全部で19時間にわたる反応後、コポリマーへの変換率は、不揮発分パーセントの測定に基づいて、>98%であった。PEGMA/スチレン/アクリロニトリルの重量比は、10:20:70であり、そしてn-プロパノール/水の比は、76:24であった。溶液中の残留アクリロニトリルは、1H-NMRによる測定に基づいて、0.5%であった。
【0101】
コポリマー1〜10の特性
Microtrac(North Largo, Florida)から入手可能なMICROTRAC UPA150超微粒子サイズ分析器を使用して、粒子サイズを測定した。コポリマー1〜10のデータを表1に報告する(n/a-測定されず)。
【0102】
表中、「ma」は、面積分布の平均直径であり;「mv」は、容積分布の平均直径であり、そして分布の「重心」を表す。mvの計算は粗い粒子に対して重み付けされている。面積平均maは、粗い粒子のmvほどは重み付けされておらず、したがってより小さな粒子サイズを示す。「50パーセンタイル(%ile)」は、中央粒径である。
【0103】
たいていの場合にはジメチルホルムアミド(「DMF」)中、又はテトラヒドロフラン(「THF」)(その旨を示す)中で、ゲル透過クロマトグラフィを用いて、分子量を測定した。Mpはピーク平均分子量であり;Mnは数平均分子量であり;Mwは重量平均分子量であり;多分散性はMw/Mnとして定義される。
【0104】
【表1】

【0105】
1 コポリマー2の粒子サイズ測定のための溶剤はTHFであった。
2 コポリマー4は、分子量測定において、二峰性分布を示した。
3 コポリマー5は、粒子サイズ及び分子量の測定に際して、二峰性分布を示した。
【0106】
印刷版前駆体及び印刷版の調製
例11. コポリマー1で調製された印刷版
ブラシ研磨されリン酸陽極酸化された、ポリアクリル酸(「PAA」)後処理済のアルミニウム基板に、表2で指定した塗布用組成物を適用した。塗布用組成物を、巻線ロッドを使用して適用し、次いで、90℃で設定されたRanarコンベヤ炉内で約90秒にわたって乾燥させることにより、印刷版前駆体を産出した。得られた乾燥塗布重量は1.5 g/m2であった。
【0107】
【表2】

【0108】
1 塗布用配合物中に使用されたコポリマー1は、n-プロパノール/水の80/20混合物中の21重量%固形分の分散体である。表中に示す量は、溶剤を含む、使用された分散体の重量である。
2 塗布用配合物中に使用されたコポリマー2は、2-ブタノン中の10重量%固形分の溶液である。
【0109】
例11の得られた前駆体に、250 mJ/cm2で、Creo TRENDSETTER 3244x上で画像を形成し、次いでこの前駆体をKomori印刷機上に直接的に載置した。この印刷機には、Graphics Equinox ブラックインキと、3 oz./gal.のVarn Litho Etch 142W及び3 oz./gal.のPARアルコール代替物(両方ともVarn International ,Addison, Illinoisから入手可能)を含有するファウンテン溶液と、硬質ブランケットとを装入した。この印刷版の画像領域のプリントアウトは青色であり、そして容易に視認可能であるのに対して、非画像領域は薄青色のままであった。版が印刷した良好な品質のプリントは、30,000部を上回った。
【0110】
印刷機上にある間、Kodak Polychrome Graphics(Norwalk, Connecticut)から入手可能なAqua Image印刷版保存剤/クリーナー溶液、又はVarn Internationalから入手可能なV-120印刷機洗浄剤で、画像領域を別々に処理した。Aqua Image印刷版保存剤/クリーナー溶液、又はV-120で処理された画像領域は影響を及ぼされず、そして未処理の画像領域と同じ速度で磨耗した。
【0111】
例12. コポリマー4で調製された印刷版
ブラシ研磨されリン酸陽極酸化された、PAA後処理済のアルミニウム基板に、表3で指定した塗布用組成物を適用した。塗布用組成物を、巻線ロッドを使用して適用し、次いで、90℃で設定されたRanarコンベヤ炉内で約90秒にわたって乾燥させることにより、印刷版前駆体を産出した。得られた乾燥塗布重量は1.5 g/m2であった。
【0112】
【表3】

【0113】
1 塗布用配合物中に使用されたコポリマー4は、n-プロパノール/水の20/80混合物中の14重量%固形分の分散体である。表中に示す量は、溶剤を含む、使用された分散体の重量である。
【0114】
例12の得られた前駆体に、262 mJ/cm2で、Creo TRENDSETTER 3244x上で画像を形成し、次いでこの前駆体をABDick印刷機上に直接的に載置した。この印刷機には、Van Son Rubber Baseブラックインキと、3 oz./gal.のVarn Litho Etch 142W及び3 oz./gal.のPARアルコール代替物を含有するファウンテン溶液とを装入した。この印刷版の画像領域のプリントアウトは青色であり、そして容易に視認可能であるのに対して、非画像領域は薄青色のままであった。印刷機を停止させたときに、版が印刷した良好な品質のプリントは、250部であった。
【0115】
例13. コポリマー5で調製された印刷版
ブラシ研磨されリン酸陽極酸化された、PAA後処理済のアルミニウム基板に、表4に記載された塗布用組成物を適用した。塗布用組成物を、巻線ロッドを使用して適用し、次いで、90℃で設定されたRanarコンベヤ炉内で約90秒の滞留時間にわたって乾燥させることにより、印刷版前駆体を産出した。得られた乾燥塗布重量は1.5 g/m2であった。
【0116】
【表4】

【0117】
1 塗布用配合物中に使用されたコポリマー5は、n-プロパノール/水の50/50混合物中の16重量%固形分の分散体である。表中に示す量は、溶剤を含む、使用された分散体の重量である。
【0118】
例13の得られた前駆体に、262 mJ/cm2で、Creo TRENDSETTER 3244x上で画像を形成し、次いでこの前駆体をABDick印刷機上に直接的に載置した。この印刷機には、Van Son Rubber Baseブラックインキと、3 oz./gal.のVarn Litho Etch 142W及び3 oz./gal.のPARアルコール代替物を含有するファウンテン溶液とを装入した。この印刷版の画像領域のプリントアウトは青色であり、そして容易に視認可能であるのに対して、非画像領域は薄青色のままであった。印刷機を停止させたときに、版が印刷した良好な品質のプリントは、250部であった。
【0119】
例14. コポリマー6で調製された印刷版
ブラシ研磨されリン酸陽極酸化された、PAA後処理済のアルミニウム基板に、表5に記載された塗布用組成物を適用した。塗布用組成物を、巻線ロッドを使用して適用し、次いで、90℃で設定されたRanarコンベヤ炉内で約90秒の滞留時間にわたって乾燥させることにより、印刷版前駆体を産出した。得られた乾燥塗布重量は1.5 g/m2であった。
【0120】
【表5】

【0121】
1 塗布用配合物中に使用されたコポリマー6は、n-プロパノール/水の80/20混合物中の21.7重量%固形分の分散体である。表中に示す量は、溶剤を含む、使用された分散体の重量である。
【0122】
例14の得られた前駆体に、262 mJ/cm2で、Creo TRENDSETTER 3244x上で画像を形成し、次いでこの前駆体をABDick印刷機上に直接的に載置した。この印刷機には、Van Son Rubber Baseブラックインキと、3 oz./gal.のVarn Litho Etch 142W及び3 oz./gal.のPARアルコール代替物を含有するファウンテン溶液とを装入した。この印刷版の画像領域のプリントアウトは青色であり、そして容易に視認可能であるのに対して、非画像領域は薄青色のままであった。印刷機を停止させたときに、版が印刷した良好な品質のプリントは、250部であった。
【0123】
例15. コポリマー7で調製された印刷版
ブラシ研磨されリン酸陽極酸化された、PAA後処理済のアルミニウム基板に、表6に記載された塗布用組成物を適用した。塗布用組成物を、巻線ロッドを使用して適用し、次いで、90℃で設定されたRanarコンベヤ炉内で約90秒の滞留時間にわたって乾燥させることにより、印刷版前駆体を産出した。得られた乾燥塗布重量は1.5 g/m2であった。
【0124】
【表6】

【0125】
1 塗布用配合物中に使用されたコポリマー7は、n-プロパノール/水の80/20混合物中の24重量%固形分の分散体である。表中に示す量は、溶剤を含む、使用された分散体の重量である。
【0126】
例15の得られた前駆体に、254 mJ/cm2で、Creo TRENDSETTER 3244x上で画像を形成し、次いでこの前駆体をKomori印刷機上に直接的に載置した。この印刷機には、Graphics Equinox ブラックインキと、3 oz./gal.のVarn Litho Etch 142W及び3 oz./gal.のPARアルコール代替物を含有するファウンテン溶液とを装入した。この印刷版の画像領域のプリントアウトは青色であり、そして容易に視認可能であるのに対して、非画像領域は薄青色のままであった。印刷機を停止させたときに、版が印刷した良好な品質のプリントは、45,000部を上回った。
【0127】
印刷機上にある間、V-120印刷機洗浄剤で画像領域を処理した。V-120で処理された領域は影響を及ぼされず、そして、印刷機運転全体にわたって磨耗を示すことはなかった。
【0128】
例16. コポリマー8で調製された印刷版
電気化学的に研磨され硫酸陽極酸化された、PVPA後処理済のアルミニウム基板に、表7に記載された塗布用組成物を適用した。塗布用組成物を、巻線ロッドを使用して適用し、次いで、90℃で設定されたRanarコンベヤ炉内で約90秒の滞留時間にわたって乾燥させることにより、印刷版前駆体を産出した。得られた乾燥塗布重量は1.5 g/m2であった。
【0129】
【表7】

【0130】
1 塗布用配合物中に使用されたコポリマー8は、n-プロパノール/水の50/50混合物中の20重量%固形分の分散体である。表中に示す量は、溶剤を含む、使用された分散体の重量である。
【0131】
例16の得られた前駆体に、150 mJ/cm2で、Creo TRENDSETTER 3244x上で画像を形成し、次いでこの前駆体をABDick印刷機上に直接的に載置した。この印刷機には、Van Son Rubber Baseブラックインキと、3 oz./gal.のVarn Litho Etch 142W及び3 oz./gal.のPARアルコール代替物を含有するファウンテン溶液とを装入した。印刷機を停止させたときに、版が印刷したのは250部であった。この時点までに、際立った磨耗が観察された。
【0132】
例17. コポリマー9で調製された印刷版
電気化学的に研磨され硫酸陽極酸化された、PVPA後処理済のアルミニウム基板に、表8に記載された塗布用組成物を適用した。塗布用組成物を、巻線ロッドを使用して適用し、次いで、90℃で設定されたRanarコンベヤ炉内で約90秒の滞留時間にわたって乾燥させることにより、印刷版前駆体を産出した。得られた乾燥塗布重量は1.5 g/m2であった。
【0133】
【表8】

【0134】
1 塗布用配合物中に使用されたコポリマー9は、n-プロパノール/水の80/20混合物中の24重量%固形分の分散体である。表中に示す量は、溶剤を含む、使用された分散体の重量である。
【0135】
得られた印刷版に、150 mJ/cm2で、Creo TRENDSETTER 3244x上で画像を形成し、次いでこの印刷版を、前述のように運転されるABDick印刷機上に直接的に載置した。印刷機を停止させたときに、版試料が印刷したのは250部であった。磨耗は観察されなかった。
【0136】
例18. コポリマー10で調製された印刷版
ブラシ研磨されリン酸陽極酸化された、PAA後処理済のアルミニウム基板に、表9で指定された塗布用組成物を適用した。塗布用組成物を、巻線ロッドを使用して適用し、次いで、90℃で設定されたRanarコンベヤ炉内で約90秒にわたって乾燥させることにより、印刷版前駆体を産出した。得られた乾燥塗布重量は1.5 g/m2であった。
【0137】
【表9】

【0138】
1 塗布用配合物中に使用されたコポリマー10は、n-プロパノール/水の76/24混合物中の24重量%固形分の分散体である。表中に示す量は、溶剤を含む、使用された分散体の重量である。
【0139】
例18の得られた前駆体に、300 mJ/cm2で、Creo TRENDSETTER 3244x上で画像を形成し、次いでこの前駆体をKomori印刷機上に直接的に載置した。この印刷機には、Graphics Equinox ブラックインキと、3 oz./gal.のVarn Litho Etch 142W及び3 oz./gal.のPARアルコール代替物を含有するファウンテン溶液と、硬質ブランケットとを装入した。この印刷版の画像領域のプリントアウトは青色であり、そして容易に視認可能であるのに対して、非画像領域は薄青色のままであった。版が印刷した良好な品質のプリントは、40,000部を上回った。
【0140】
印刷機上にある間、V-120印刷機洗浄剤で画像領域を処理した。V-120で処理された領域は影響を及ぼされず、そして未処理の画像領域と同じ速度で磨耗した。
【0141】
比較例19
例11におけるように前駆体を調製した。ただしここでは、コポリマー1の代わりにコポリマー3を使用した。得られた前駆体に、250 mJ/cm2で、Creo TRENDSETTER 3244x上で画像を形成し、次いでこの前駆体をKomori印刷機上に直接的に載置した。この印刷機には、Graphics Equinox ブラックインキと、3 oz./gal.のVarn Litho Etch 142W及び3 oz./gal.のPARアルコール代替物を含有するファウンテン溶液と、硬質ブランケットとを装入した。この印刷版の画像領域のプリントアウトは青色であり、そして容易に視認可能であるのに対して、非画像領域は薄青色のままであった。固形領域内の磨耗を示す前に版が印刷したのは、約16,000部であった。
【0142】
印刷機上にある間、Aqua Image印刷版保存剤/クリーナー溶液、又はV-120印刷機洗浄剤で、画像領域を別々に処理した。Aqua Image印刷版保存剤/クリーナー溶液、又はV-120で処理された画像領域は目に見えて弱くなり、そして未処理の画像領域よりも著しく高い速度で磨耗した。
【0143】
本発明は、その思想及び範囲を逸脱することなしに、種々の改変形及び変更形を採用することができる。従って言うまでもなく、本発明は、上記のものに限定されるのではなく、添付の特許請求の範囲及びそれと同等のものによって支配されるべきである。また、本発明が、本明細書中に具体的には開示されていない任意の要素の不在において、好適に実施され得ることも言うまでもない。
【0144】
本発明の好ましい実施態様を説明する上で、分かりやすさのために、特定の専門用語が使用されている。しかし、本発明は、このように選択された特定の用語に限定されるものではなく、このように選択された各用語が、同様に機能する全ての技術的に同等のものを含むことは言うまでもない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平版用基板;並びに
該基板上に配置された、
a) ラジカル重合性成分;
b) 画像形成用輻射線に暴露したときに重合反応を開始するのに十分なラジカルを発生させることができる開始剤系;及び
c) 疎水性主鎖を有し、そして
i) 該疎水性主鎖に直接的に結合されたペンダント・シアノ基を有する構成ユニット、及び
ii) 親水性ポリ(アルキレンオキシド)セグメントを含むペンダント基を有する構成ユニット
の両方を含む高分子バインダー
を含む画像形成可能層
を含んで成る画像形成可能要素。
【請求項2】
該高分子バインダーが、(メタ)アクリロニトリル、ポリ(エチレングリコール)アルキルエーテル(メタ)アクリレート、スチレン、アクリルアミド、メタクリルアミド、又はこれらの組合せから誘導されたコポリマーである、請求項1に記載の画像形成可能要素。
【請求項3】
該高分子バインダーが:
約55〜約90重量パーセントの(メタ)アクリロニトリル;
約5〜約15重量パーセントのポリ(エチレングリコール)アルキルエーテル(メタ)アクリレート;及び
約5〜約30重量パーセントのスチレン
から誘導されたコポリマーである、請求項1又は2に記載の画像形成可能要素。
【請求項4】
ペンダント・シアノ基を有する該構成ユニットが、形態-[CH2CH(C≡N)-]又は-[CH2C(CH3)(C≡N)-]の構成ユニットを含む、請求項1から3までのいずれか1項に記載の画像形成可能要素。
【請求項5】
親水性ポリ(アルキレンオキシド)セグメントを含む該ペンダント基が、形態:
-C(=O)O-[(CH2)xO-]yR
(上記式中、xは1〜3であり、yは約5〜約150であり、そしてRは好適な末端基である)
を有している、請求項1から4までのいずれか1項に記載の画像形成可能要素。
【請求項6】
該高分子バインダーが:
i) 形態-[CH2C(R)(C≡N)-]の構成ユニット;
ii) 形態-[CH2C(R)(PEO)-]の構成ユニット
(上記式中、PEOは形態
-C(=O)O-[CH2CH2O-]yCH3
のペンダント基を表し、
ここで、yは約25〜約75である);及び
iii) 形態:
-[CH2CH(Ph)-]
の構成ユニット
から本質的に成るランダム・コポリマーであり、
上記式中、各Rは独立して、-H又は-CH3を表し、そしてPhはペンダント・フェニル基を表す、
請求項1から5までのいずれか1項に記載の画像形成可能要素。
【請求項7】
該高分子バインダーが、不連続的な粒子の形態で該画像形成可能層内に存在する、請求項1から6までのいずれか1項に記載の画像形成可能要素。
【請求項8】
該開始剤系が、約800 nm〜約1200 nmの赤外線に暴露したときに重合反応を開始するのに十分なラジカルを発生させることができる、請求項1から7までのいずれか1項に記載の画像形成可能要素。
【請求項9】
該開始剤系が、光熱変換材料とラジカル発生体とを含む、請求項1から8までのいずれか1項に記載の画像形成可能要素。
【請求項10】
平版用基板;並びに
a) ラジカル重合性成分;
b) 画像形成用輻射線に暴露したときに重合反応を開始するのに十分なラジカルを発生させることができる開始剤系;及び
c) 疎水性主鎖を有し、そして
i) 該疎水性主鎖に直接的に結合されたペンダント・シアノ基を有する構成ユニット、及び
ii) 親水性ポリ(アルキレンオキシド)セグメントを含むペンダント基を有する構成ユニット
の両方を含む高分子バインダー
を含んで成る画像形成可能要素を用意する工程;
該要素を、画像形成用輻射線に対し像様露光する工程;
該要素をリソグラフィ印刷機上に載置する工程;及び
該要素とインキ及び/又はファウンテン溶液とを接触させることにより該要素を現像し、これにより印刷版を作製する工程
の各工程を含んで成る、印刷版を形成する方法。

【公開番号】特開2013−47004(P2013−47004A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−203991(P2012−203991)
【出願日】平成24年9月18日(2012.9.18)
【分割の表示】特願2007−516525(P2007−516525)の分割
【原出願日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(590000846)イーストマン コダック カンパニー (1,594)
【Fターム(参考)】