説明

耐滑靴底及びその靴底成形金型

【課題】ブロック突起の方向性を特に考慮せずに、また床面が乾燥状態、水で濡れた状態、油分が付着した状態でもさほど差がなく、また勾配のある坂においても安定した耐滑機能を備えた靴底及びその靴底成形金型を提供する。
【解決手段】接地面側に独立したブロック突起を複数備えたゴム状弾性体からなる耐滑靴底1において、該各ブロック突起の接地面5を平滑とするとともにブロック突起の立ち上がり壁を接地面5に対して直角とした略三日月形状突起3…とした。該三日月形状突起3…はその曲面壁3a…を靴底の長手方向に向けて所定間隔に配列し、該三日月形状突起の突起幅をその突起の中央部より両端の端部に向けて漸次幅を狭く形成すると共に、該端部の側壁3d…を長手方向に沿った平面状とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は床面が乾燥状態、水で濡れた状態、油が付着した状態であっても、また歩行方向を問わず安定した歩行ができる耐滑靴底及びその靴底成形金型に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、耐滑靴底及びその靴底成形金型に関して、耐滑性を高めるために様々な提案がなされている。
【0003】
例えば、靴底の接地面の底意匠パターンに関して、靴底接地底は54〜62(JIS−A 、 20℃)の硬度を有するゴム、ポリ塩化ビニル、ポリウレタンからなり、最薄部の厚さが3〜8mmで、靴底接地部には、多角形、円形などのブロック意匠パターンを有するように形成し、さらにブロック意匠のパターンは、意匠高さが1〜7mm、意匠勾配が0〜3度、最小寸法が2〜8mmで、トップには凹凸模様がなく、フラットであることにより、床面上の水膜や油膜を切ることができ、ブロック意匠の変形を抑えることができる耐滑靴底が開示されている。(特許文献1)
【0004】
また、靴底の接地面側に複数の接地凸部を長さ方向に所定間隔を設けて形成し、その各接地凸部はV字形状の横断面を有し、前記靴底との付け根部位に傾斜補強部が形成され、20℃におけるJIS−A硬度が45〜80度の弾性重合体によって形成されている耐滑靴底が開示されている。(特許文献2)
【0005】
さらに、靴底接地部は靴底外周に流体を密閉する周壁がなく靴底に介在する流体を靴底外へ排出する縦横溝を有するヘリンボーンのブロック意匠で、ヘリンボーンの凸部幅が3〜5mm、凹部幅が2〜5mm、意匠深さが1.5〜3mmである防滑靴底も開示されている。(特許文献3)
【0006】
一方、靴底成形金型においては、靴底接地部の凹凸パターンとして、凸部である接地ブロックでその接地面との側面とが略直交する接地ブロックを複数有する靴底を射出成形するための金型であって、金型本体と、これに嵌合する少なくとも一つの嵌合部材とで構成され、前記接地ブロックの前記接地面と前記側面とで形成される角の全てを、互いに略直交する前記金型本体と前記嵌合部材との組み合わせ面若しくは前記嵌合部材同士の組み合わせ面の隅部、またはこの組み合わせの隅部に連通する隅部であって同一嵌合部材の略直交する面、または金型本体の略直交する面とで形成された隅部で成形し、且つ前記接地ブロックのそれぞれについては、前記接地面と前記接地面とで形成される角部の少なくとも一部が、互いに略直交する前記金型本体と前記嵌合部材との組み合わせ面もしくは前記嵌合部材同士の組み合わせ面の隅部で成形されるように構成されている靴底射出成形用金型が開示されている。(特許文献4)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−106903号公報
【特許文献2】WO2006−3740号公報
【特許文献3】特開2004−267407号公報
【特許文献4】特開2001−225397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一般に、耐滑靴底のブロック意匠はそのブロック意匠の壁に直交する方向への滑りについてはグリップ力を発揮し滑りが効果的に防止されるが、ブロック意匠の壁の斜め方向の滑りについては壁に直交方向する向きに対して抵抗力が分散して減少するため、床面に対するブロック意匠の壁の角縁による引っ掛けや、また水や油の膜を切断する力が弱くなり、耐滑性が発揮されない傾向がある。そのため、靴底の耐滑性は滑り方向に対してそのブロック意匠の突起の壁向きによって大きく左右されるため、特にブロック意匠の形状、配置及び配列を考慮しなければならない。
【0009】
特許文献1での耐滑靴底は、前記防滑機能を発揮させるためにブロック意匠の壁を靴底の爪先方向に対して斜め方向や直交する横幅方向に配置されているが、これら個々の突起自体の形状、個数及びその向きによっては防滑機能が低下し、またブロック意匠が歩行動作を考慮されて配置されていないために、靴底の防滑性を満足させることには難点がある。また、耐滑靴底は床面の状態、即ち床面が水で濡れた状態、油分を付着した状態や乾燥状態とではグリップ性が極端に異なり、安定した耐滑機能が発揮されずに満足させることはできなかった。そして、このような耐滑靴底はブロック意匠が靴底接地面に散在された構成であるため、ブロック意匠とブロック意匠との間にゴミ、小石などの固形物がバラバラに挟まりがちであり、それら固形物を除去するには個々の除去作業となり接地面を掃除するのに不便が生じていた。
【0010】
また、特許文献2での耐滑性靴底においては、前記各接地凸部が爪先方向に向いたV字形状の横断面を有しているためV字形状の壁の直交方向、即ち靴底の斜め前方方向に対しては耐滑性が発揮されるが、前記耐滑靴底と同様な理由により前後方向及び横幅方向への滑りについては耐滑性が万全ではなく改良の余地があった。
【0011】
さらに、特許文献3の防滑靴底はブロックがヘリンボーン意匠であるが、この意匠の靴底も前記と同様の理由により前後方向及び横幅方向への滑りについて、ブロック意匠の壁の向きが対応しておらず、防滑性が満足できるものでなかった。
【0012】
そして、靴底射出成形用金型においては、多様なブロック突起を成形するのに数種類の嵌合部材及び多数の嵌合部材が必要であると同時にそれらの嵌合部材の組み合わせ構造が複雑となり、金型を製作するのにコストが高額になるきらいがあった。さらには、靴底接地部の凹凸のパターンは通常嵌合部材を組み易くするために長方体、立方体などの矩形形状に限られるため、上記耐滑靴底と同様に防滑機能を有するには個々の突起成形凹部の向きを考慮し配置、配列しなければならない難点があった。
【0013】
そこで、本発明の耐滑靴底は、床面が乾燥状態、水で濡れた状態、油分が付着した状態でも良好な耐滑性を示し、また歩行動作を考慮して耐滑性を高め、安定した防滑機能を備えた靴底及びその靴底成形金型を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の耐滑靴底は接地面側に独立したブロック突起を複数備えたゴム状弾性体からなる耐滑靴底において、該各ブロック突起の接地面を平滑とするとともにブロック突起の立ち上がり壁を接地面に対して直角とした略三日月形状突起からなり、該三日月形状突起の曲面壁を靴底の長手方向に向けて所定間隔に配列し、該三日月状突起の突起幅をその中央部より先端の端部に向けて漸次幅を狭く形成すると共に、該先端の端部の立ち上がり壁を長手方向に沿った平面状とした。これにより、本発明の耐滑靴底は略三日月形状突起の立ち上がり壁が長手方向に対し曲面壁であるのでいづれかの部分が前後斜め方向の滑りに対して直交し、かつ端部が平面壁であるので横幅方向の滑りに対しても直交して形成される。
【0015】
前記略三日月形状突起はその素材を硬度45〜60(JIS-A)を有するゴム、ポリ塩化ビニル、ポリウレタンとし、ブロック突起の高さを1.5〜4.5mmとし、また中央部での突起幅を3〜9mmとし、横幅方向の長さを20〜35mmとした。これにより、本発明の耐滑靴底は略三日月形状突起同士の間隔を狭くして長手方向に多数隣接して配列でき、また横幅方向に対しては3列配列できるので、靴底全体に対して突起接地面積の占有率を高く確保することができる。尚、前記略三日月形状突起は靴底接地面の外周付近や不踏部付近などでの配置によっては該突起の一部が削除されたり、また変形した形状となる。
【0016】
また、前記略三日月状突起は靴底縦中央にその突起の曲面内壁を爪先方向に向けて複数配置し、またその靴底縦中央に配置した略三日月形状突起の両側にはそれに並行して曲面内壁を踵方向に逆向きに向けた略三日月形状突起を複数配置し、これら横幅方向に隣接した前記略三日月形状突起同士が連続した略波状になるように配列した。これによって、本耐滑靴底は曲面内壁を異方向へ配置した略三日月形状突起を備えたことにより、前後、斜め、横歩行に対応すると共に停止、後退などの歩行動作についてもグリップ性が作用し、さらに安定した歩行が行える。
【0017】
そして、前記耐滑靴底はその接地面と反対側の上面側に、外周下縁を突出させ下面側に窪みを設けたミッドソールを備え、該耐滑靴底のベース面を前記ミッドソールの外周下縁と同じ高さに合わせて耐滑靴底を該ミッドソールの窪みに埋設し接着させた。これによって、本耐滑靴底は本底面が効率的に床面に接することによる耐滑性の向上と共に靴底接地面側に挟まったゴミなどの固形物をベース面を通じて靴底外に排出できる。
【0018】
上記耐滑靴底はそのブロック突起の接地面の平滑度(凹凸の幅)を十点平均粗さ:Rz=1〜10μmとした。これにより、本耐滑靴底は該接地面と床面との密着性が増加し、防滑性が向上する。
【0019】
次に、靴底接地面に独立した複数のブロック突起を有する靴底を成形するための靴底成形金型においては、金型本体に設けた中空部の下部に上面に成形面を有したベース金型を嵌合して取付け、また該中空部の上部に上蓋を置いて該ベース金型と上蓋と間に靴底成形空隙を形成し、前記ベース金型の成形面には靴底の横幅方向に波形状の山部及び谷部からその中間部にかけて幅広に形成した複数の波状嵌合突起と長手方向にほぼ直線形状にした複数の線状嵌合突起とを前記波形嵌合突起の山部と谷部との中間部で交差させるとともに両嵌合突起の上部を成形面より突出させ、当該両嵌合突起の壁面を前記成形面に直立するよう嵌合して取り付けて、該ベース金型の成形面側に複数のブロック突起成形用の略三日月状の凹部を形成した。
【0020】
前記複数のブロック突起成形用の略三日月状の凹部は該ベース金型と該ベース金型の接地面に前記両嵌合突起が嵌合し組み合わされた構造となる。したがって、本発明の靴底成形金型はその凹部の隅部において空気が嵌合隙間から抜けて溜まらずに靴底成形されるので該突起の角縁をシャープに成形でき、しかも従来より嵌合部材の数、種類を少なくでき、その組み立てが簡易である。
【0021】
また、前記複数のブロック突起成形用の略三日月形状の凹部は、靴底縦中央に略三日月形状の凹部の曲面内壁を爪先方向に向けて配列し、またその靴底縦中央に配列した略三日月形状の凹部の両側にはそれと曲面内壁を逆向きにした踵向きの略三日月形状の凹部を並設した。
【0022】
さらに、前記複数のブロック突起成形用の略三日月形状の凹部は、靴底前方部においてその全体を不踏中央部を中心に第二指へと内側に向けて配列した。
【発明の効果】
【0023】
本発明の耐滑靴底は、靴底接地面に設けた略三日月形状突起の前後の立ち上がり壁を曲面とし、その曲面内壁を靴底の長手方向に向けて配置することでいずれかの部分が滑り方向に対して直交する同時に略三日月形状突起の端部の壁が長手方向に沿った面、即ち横幅方向に対してほぼ直交するように形成されているので、グリップ力F1,F2,F3が効果的に働き、前方、斜め、横幅、後方方向への滑りが防止され安定した歩行がなされる。
【0024】
また、本発明の略三日月形状突起はその突起幅がその中央部より先端の端部に向けて漸次幅を狭くして突起の弾性を序々に変化させた柔軟弾性を持たせた構造であるため、床面から該略三日月形状突起にかかるグリップ力F1、グリップ力F3によって略三日月形状突起の曲面内壁の角縁に力を集中させ床面に引っ掛かりを起こさせし易くした構成となる。これにより、本発明の耐滑靴底は床面が乾燥状態ではしっかりグリップし、また床面が水で濡れた状態や油が付着した状態では床面上の水膜や油膜を切断し床面の水、油を取り除くことが可能となり、そして勾配がある登り坂、下り坂でも床面をグリップし安定した歩行がなされる。
【0025】
さらに、前記略三日月形状突起はその開放部からみてその端部の位置が突起中央部から左右に分岐し手前にズレた位置にあるので、前記突起の中央部にグリップ力F1、F3が作用し一時的に変形が生じたとしても該端部から引っ張り力F4が作用して即座に該突起が弾性回復されるため、突起接地面が床面から離れずに接した状態で突起の倒れが防止され、踏ん張りが効き一層耐滑機能が向上される。
【0026】
そして、本発明の耐滑靴底は該耐滑靴底のベース面を前記ミッドソールの外周下縁と同じ高さに合わせて耐滑靴底のベース部をミッドソールの該窪みに埋設しミッドソールを備えた構造になるので、ゴミや小石などの固形物が以前の靴底のように散在することなく、横幅方向の波状の溝や長手方向の直線状の溝に沿って密集するので、ブラシなどでそれら固形物を溝に沿って固形物を取り除くことができ掃除作業が容易である。また、本耐滑靴底はミッドソールによりクッション性が得られる。
【0027】
一方、靴底成形金型は、ベース金型の成形面に長手方向の線状嵌合突起と横幅方向の波状嵌合突起とを組み合わせ形成して靴底突起成形用凹部の全ての角部を嵌合構造としたため、靴底成形中に空気が嵌合隙間から抜けて隅部や角部に溜まることなく排出されるので靴底突起の角縁がシャープな耐滑靴底が成形される。したがって、本発明の靴底成形金型で成形された靴底は床面での水や油の膜を切断し効果的に滑りを抑制することができる。
【0028】
また靴底成形金型はベース金型の上面に長手方向及び横幅方向の嵌合突起の組みあわせで異方向の略三日月形状突起が同時に形成されるとともに、靴底成形用凹部が簡単な構造で容易に作成できるため、靴底成形金型の製造コストが安価となる。
【0029】
そして、靴底成形金型は横幅方向と長手方向との嵌合突起が約井形形状に交差した構造であるのでベース金型への取り付け強度が強化され靴底成形金型の耐久性が向上される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の耐滑靴底の底面図である。
【図2】図1におけるA−A断面図である。
【図3】本発明の略三日月形状突起の平面拡大図である。
【図4】図3のBーB断面図である。
【図5】本発明の靴底成形金型の平面図である。
【図6】図5におけるC−C断面図である。
【図7】図5におけるD−D断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の耐滑靴底の実施形態について説明する。図1は本実施形態に係る耐滑靴底1の接地面を示した底面図、図2は図1のAーA断面図であり、図3は略三日月形状突起の平面拡大図、図4は図3のB−B断面を示した図である。また図5は本発明の靴底成形金型の平面図であり、図6は図5におけるC−C断面図であり、図7は図5におけるD−D断面図である。
【0032】
図1、図 2、図3及び図4に示すように、本発明の耐滑靴底1はベース部2と複数の略三日月形状突起3…を有しており、その略三日月状突起3…はその立ち上がり壁3e…がベース部2の接地面5となす角度αを直角になるように設けられる。略三日月形状突起3…はその曲面壁3a…を靴底の長手方向に向けて所定間隔に配列し、曲面外壁3b(3b’)…の半径を曲面内壁3c(3c’)…の半径より短くするとともに、その曲面外壁3b(3b’)…の半径中心S1を曲面内壁3c(3c’)…の半径中心S2より突起の中央幅w1だけ内側位置にすることにより、突起幅を突起の中央部7から両端の端部8に向けて漸次狭く形成した。
【0033】
また、略三日月形状突起3…は、その両端の端部8…の側壁3d(3d’)…を長手方向に沿って平面状に形成される。したがって、本発明の耐滑靴底1は略三日月形状突起3…の曲面壁3aを長手方向に向けて配置することで、歩行において耐滑抑止が前後斜め方向に働き、また横幅方向に対しても滑りが抑制可能となる。これらの略三日月形状突起3…は必要に応じて靴底接地面の全面または爪先部もしくは踵部に部分的に設けてもよい。また、略三日月形状突起3…はその曲面外壁3b(3b’)及び曲面内壁3c(3c’)を円弧状としたが、楕円状、湾曲状でもよい。
【0034】
前記略三日月形状突起3は、硬度45〜60(JIS−A)を有するゴム、ポリ塩化ビニル、ポリウレタンとし、ブロック突起の高さh1を靴底のベース面より1.5〜4.5mmとし、突起の中央幅w1を3〜9mmとし、横幅方向の長さLを20〜35mmとした。これにより、略三日月形状突起3は、長手方向に対して該略三日月形状突起3同士の間隔を狭くでき、また横幅方向に3列に配列できるので靴底全体に対する突起接地面の比率を高め耐滑機能を向上させることができる。前記略三日月形状突起3は、その端部の突起幅w2を中央幅w1に対して90〜50%、より好ましくは80〜60%が良い。これは、前記端部の突起幅d2が90%以上であれば突起両側部が中央部より柔軟弾性が得られないため引っ掛かり度が低減するきらいがあり、また50%以下にすると突起幅が少なくなり横幅方向に対してグリップ性が減少するきらいがあるからである。また、略三日月形状突起3はその突起の高さh1をその端部の突起幅d2の長さより短くすることで安定性が増加し突起の倒れをより防止できる。
【0035】
本発明の耐滑靴底の素材は、具体的には天然ゴム、合成ゴム、例えばブタジエン(BR)、スチレンーブタジエンゴム(SBR)、アクリルニトリルーブタジエン(NBR)などのジエン系ゴムやポリウレタン、塩化ビニルなどの合成樹脂をあげることができ、前記素材にゴム配合剤、例えば加硫促進剤、着色剤、可塑剤などを配合して使用する。
【0036】
本発明の耐滑靴底1 はその硬度をJIS−Aに基づいて測定した20℃における硬度を45〜60度としたことにより、より滑りを抑えることができる。尚、前記45度以下であれば突起の変形が大きくなり、前記60度以上になると硬くなりすぎるので踏ん張りが利かなくなり滑りやすくなる傾向がある。
【0037】
本発明の耐滑靴底1は、図2に示すように、その接地面と反対側の上面側に、下面側に外周下縁4aを突設させ窪みを形成したミッドソール4を備え、耐滑靴底のベース面2aをミッドソール4の外周下縁4aと同じ高さに合わせて耐滑靴底1をミッドソール4に埋設して接着させた。該ミッドソール4としてはクッション性を有する発泡ウレタン、発泡EVAなどの素材使用できる。また必要に応じて、耐滑靴底1とミッドソール4との間に硬い素材の中底を挿入してもよい。
【0038】
そして、前記略三日月状突起3…は靴底縦中央に該突起の曲面内壁3cを靴底の爪先方向に向けて配列し、またその靴底中央に配列した略三日月形状突起3の両端にそれに並行して曲面内壁3c’を踵方向に向けて逆向きにした略三日月形状突起3’…を隣接して配列し、これら前記横幅方向に隣接した略三日月形状突起同士が略波状になるように配置して形成してもよい。
【0039】
そして、本発明の耐滑靴底1 は上記通り横幅方向の波状の溝と長手方向に線状の溝とを連結したことにより、波状の溝又は線状の溝を通じて付着したごみを簡単に除去することができ掃除を簡単に行える。
【0040】
さらには、本発明の耐滑靴底は図1に示すように略三日月形状突起3を靴底前方部においては不踏部中央部を中心にその先端を第2指へかけて内側に傾けて配列し、また後方の踵部においてはそのまま踵中心部に沿って配列して、靴底全体において配列の中心軸を略「く」の字状に配列しておけば、その略三日月形状突起3の曲面壁3aの配列がほぼ歩行の際の踵から爪先への重心移動に沿うので、より歩行動作に対応してグリップ力が連動増加して作用し耐滑機能が効果的に発揮される。
【0041】
また、本発明の耐滑靴底1は、前進動作のときは靴底中央に配置された爪先向きの略三日月形状突起3の曲面内壁3c…が床面から作用する踵から爪先へのグリップ力に対応して滑りを抑制し、また停止及び後退動作のときは踵向きの略三日月形状突起3’の曲面内壁3c’…が床面から作用する爪先から踵へのグリップ力に対応して滑りを抑制し、また横方向の歩行動作のときは該三日月形状突起の側壁3d(3d’)…が床面から作用する内側方向へのグリップ力に対応して滑りを抑制する。
【0042】
本発明の耐滑靴底1はその三日月形状突起の接地面5の平滑度(凹凸の幅)を十点平均粗さ:Rz=1〜10μmとした。この表面粗さは鏡面仕上げ程度で凸凹の高低差が少ないほど床面との密着性がよく滑りが抑制される。
【0043】
次に、前記耐滑靴底1を成形する靴底成形金型20について説明する。本靴底成形金型20は図5、図6及び図7に示すように金型本体21、ベース金型22、上蓋23を備えている。該金型本体21は中空部を有し、該中空部の上部を靴底形状とすると共に該中空部の下部をそれより広い形状にして段差を設けた金属製の板状枠からなり、該中空部の段差部にはその周壁に下方に広がったテーパーが設けられ、そこに上面に靴底形状の成形面を設けたベース金型22をそのテーパーに合わせて下方から該中空部を塞ぐように嵌合収納しネジなどの固定具で取付けられる。また該ベース金型22を取付けた金型本体21はその上面側に靴底形状の窪みが形成され、その窪みに上蓋23が被せられて靴底成形空隙24が形成される。
【0044】
また、ベース金型22はその上部を靴底形状した成形面側には靴底縦中央に波形状の山部を爪先方向に向けた略波形状嵌合突起25…と、また長手方向に線状嵌合突起26…が配列されると共に、該線状嵌合突起26…が前記略波形状嵌合突起25…の波形状の山部25aと谷部25bとの中間部25cに交差し連結するように設けられる。
【0045】
そして、前記波状嵌合突起25…は前記耐滑靴底1の略三日月形状突起3の突起幅がその中央部7から端部8にかけて漸次細幅に成形されるように、その波形状の山部25aと谷部25bとからその中間部25cにかけて嵌合突起幅が漸次肉厚に形成される。また波状嵌合突起25…と線状嵌合突起26…とはその下部をベース金型22に形成された複数の嵌合溝27… に埋め込み、またその上部を成形面22aから突出して直角になるように嵌合して設けられ、成形面22aには複数の整列した略三日月形状の凹部28…が形成される。また、波状嵌合突起25…と線状嵌合突起26…とはその上部先端の角をとり丸みを形成しておけば、成形される耐滑靴底は突起の根元に丸みが形成されるため、略三日月形状突起3が補強される。また、前記波状嵌合突起25…の壁は前記耐滑靴底と同様に円弧に限らず、楕円、湾曲でもよい。
【0046】
さらに、靴底成形金型20は、成形面22aに横幅方向の波状嵌合突起25…を長手方向の線状嵌合突起26…より深く取付けておけば、横幅方向の波状嵌合突起25…が長手方向の線状嵌合突起26…より浅くても長手方向の線状突起26…で止めることができるので取り付け強度をさらに強化することができる。尚、前記嵌合部材のベース金型との嵌合隙間や両嵌合部材と金型本体との嵌合隙が製造上比較的大きく形成された場合は必要に応じて接着剤を塗っておけば作成される耐滑靴底のバリ発生が防止される。
【実施例】
【0047】
靴底部材組成物はアクリルニトリル−ブダジエンゴムからなるゴム生地に充填剤、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、着色剤などをロール混練して得る。本耐滑靴底1はこの靴底部材組成物を下記靴底成形金型20に入れ、加硫して耐滑靴底1を作成する。耐滑靴底1の硬度は加硫剤、加硫促進剤、充填剤などを配合して、JIS−A硬度が53度に設定した。本発明で成形される耐滑靴底1は靴胛被にEVA発泡ミッドソールを介して接着して用いた。尚、本実施例では、靴底成形金型は靴底を片足としたが両足を一体に形成してもよい。
【0048】
該略三日月形状突起3は、その曲面外壁3bの半径を20mm、曲面内壁3cの半径を23mmとし、その突起の中央幅w1を6mmとし、突起の長さLを31.5mmとした。また略三日月形状突起3はその突起の先端の端部3d、3dを中央部から漸次幅狭くし端部3dの縦幅w2を4.6mmの形状とした。また耐滑靴底3は略三日月形状突起の高さh1を3mmとし、ベース厚みh2を2.5mmとし、全体の厚みを5.5mmとした。そして、本耐滑靴底は長手方向に配置した略三日月形状突起3と略三日月形状突起3と間の横溝幅を概ね3mmとし、横幅方向に配置した略三日月形状突起3と略三日月形状突起3と間の縦溝幅を3.5mmとした。作成した耐滑靴底は靴サイズ26cmのとき、靴底に略三日月形状突起3を靴底中央長手方向に32列、横幅方向に3列配列できた。
【0049】
該靴底成形金型20は、金型本体21に嵌合し取付けられたベース金型22の成形面22eに靴底の横幅方向に複数の波状嵌合突起25…と長手方向に複数の線状嵌合突起26…とを前記波形状の山部25aと谷部25bの中間部25cで交差させ嵌め込むとともに該両嵌合突起の壁を前記成形面22eと直立するよう取り付け、ベース金型22の成形面22eに複数の略三日月状の凹部28…を形成した。
【0050】
そして、前記略三日月形状の凹部28…は、その中央部7から先端の端部8に向けて漸次突起幅を狭くした略三日月形状突起3…を成形するために、横幅方向に配列される波状嵌合突起25の突起幅をその波形状の山部または谷部から中間にかけて漸次広げて形成される。そして、略三日月形状の凹部28…はその底面を平滑とし、表面粗さ(凸凹の高さの差)を2μmとした。
【0051】
また前記靴底成形金型20は、図6に示すように前記耐滑靴底1を成形するのに靴底成形空隙24の高さを5.5mmとして該耐滑靴底の厚みとし、前記波状嵌合突起25…と線状嵌合突起26…とはベース金型22の成形面22aより3mm突出させて略三日月形状突起の高さd1とし、ベース部の厚みd2を2.5mmとした。また横幅方向の波状嵌合突起25は、概ね突起幅を3mmにして溝幅とし、波状嵌合突起同士の山部での溝間隔を6mmとして略三日月形状突起の中央幅w1とし、また中間部での溝幅を4.6mmとして略三日月形状突起の端部幅w2とした。また、該長手方向の線状嵌合突起22bはその突起幅を3.5mmにして溝幅とし、また不踏部から前方爪先部と踵部とへ沿って屈曲延長させた略「く」の字状の平行2本からなる形状からなり、その2本の線状嵌合突起22の間隔を31.5mmとし、それを略三日月形状突起の長さLとした。これにより、本靴底成形金型は波状嵌合突起25…と線状嵌合突起26…とで囲まれた略三日月形状の凹部28…が形成される。
【0052】
本発明の靴底成形金型20は略三日月形状の凹部28…の角部ではベース金型22の嵌合溝27に前記略波状嵌合突起25…及び線状嵌合突起26…とが嵌合した隙間から、また靴底外周ではベース金型22と金型本体21との嵌合隙間から空気が抜け、靴底成形される耐滑靴底1はシャープな角縁6を有する突起が成形される。
【0053】
本発明の耐滑靴底の試験方法はステレンレス試験台を夫々乾燥状態、水で濡らした状態、サラダ油を塗った状態において、靴に荷重5kgを掛け、牽引速度30cm/分のとき、耐滑靴底の動摩擦係数を計測した。上記作製した耐滑靴底を備えた靴と従来靴(ブロック突起が立方形)との結果は次の表の通りで、本発明の耐滑靴底は乾燥状態のとき1.55、水で濡れた状態のとき1.45、サラダ油のとき1.25であり、何れの状態でも従来靴と比較して安定した耐滑機能の効果があることが判明した。また、官能評価において傾斜30度のステンレス板上の歩行テストでも被験者6名の平均は従来靴では5を最も良いとした5段階中1〜3であったのが、本発明の耐滑靴底を備えた靴では4〜5の評価であった。
【0054】
【表1】

【符号の説明】
【0055】
1 耐滑靴底
2 ベース部
2a ベース面
3 3’略三日月形状突起
3a 3a’ 曲面部
3b 3b’ 曲面外壁
3c 3c’ 曲面内壁
3d 3d’ 側壁
3e 立ち上がり壁
4 ミッドソール
5 接地面
6 角縁
7 中央部
8 端部

α 接地面と立ち上がり壁との角度

h1 略三日月形状突起の高さ
h2 靴底ベースの厚み
w1 略三日月形状突起の中央幅
w2 略三日月形状突起の端部幅
d3 嵌合突起の高さ
d4 靴底成形空隙の高さ
L 略三日月状突起の横幅

F1 F2 F3 摩擦力
F4 引っ張り力


20 靴底成形金型
21 金型本体
22 ベース金型
22a 成形面
23 上蓋
24 靴底成形空隙
25 波状嵌合突起
25a 山部
25b 谷部
25c 中間部
26 線状嵌合突起
27 嵌合溝
28 略三日月形状の凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接地面側に独立したブロック突起を複数備えたゴム状弾性体からなる耐滑靴底において、該各ブロック突起はその接地面を平滑とするとともにブロック突起の立ち上がり壁を接地面に対して直角とした略三日月形状突起からなり、該三日月形状突起の曲面壁を靴底の爪先方向に向けて所定間隔に配列し、該略三日月形状突起の突起幅をその中央部より先端の端部に向けて漸次狭くすると共に、その端部の立ち上がり壁を長手方向に沿った平面状としたことを特徴とする耐滑靴底。
【請求項2】
前記三日月状突起は硬度45〜60(JISーA 、20℃)を有するゴム、ポリ塩化ビニル、ポリウレタンとし、ブロック突起の高さを靴底のベース面より1.5〜4.5mmとし、突起の中央幅を3〜9mmとし、横幅方向の長さを20〜35mmとすることを特徴とする請求項1記載の耐滑靴底。
【請求項3】
前記略三日月状突起は靴底縦中央に該突起の内側曲面壁を靴底の爪先方向に向けて配列し、またその略三日月形状突起の両側にそれと内側曲面壁を踵方向に向けた逆向きの略三日月形状突起を並設し、これら略三日月形状突起同士が横幅方向の略波状になるように配列したことを特徴とする請求項1又は2記載の耐滑靴底。
【請求項4】
前記耐滑靴底は、その上面側に外周縁を下方に突出させて下面側に窪みを形成したミッドソールを備え、該耐滑靴底のベース面を該ミッドソールの外周縁と同じ高さに合わせて前記ミッドソールの窪みに埋設し接着させたことを特徴とする請求項1から3のうち何れか1項に記載の耐滑靴底。
【請求項5】
前記耐滑靴底はその三日月形状突起の接地面の平滑度(凹凸の幅)を十点平均粗さ:Rz=1〜10μmとしたことを特徴とする請求項1から4のうち何れか1項に記載の耐滑靴底。
【請求項6】
靴底接地面に独立した複数のブロック突起を有する靴底を成形するための靴底成形金型であって、上下に貫通した中空部を有する金型本体と、該金型本体の中空部の下部に嵌るベース金型と、前記金型本体の中空部の上部を塞ぐ上蓋とを備え、該ベース金型と該上蓋との間に靴底成形空隙を形成すると共に、前記ベース金型の成形面に設けた嵌合溝に靴底の横幅方向に並列した複数の略波状嵌合突起と長手方向に配置した複数の線状嵌合突起とを前記略波状嵌合突起の波形状の山部と谷部との中間部で交差させて取り付けるとともにそれら両嵌合突起の上部を成形面より突出させ、かつ両嵌合突起の突出させた壁面を前記成形面に対し直角にするとともに、該波状嵌合突起の突起幅を山部と谷部とからその中間部へ向けて漸次幅広形状にして、該ベース金型の成形面に複数のブロック突起成形用の略三日月形状の凹部を配列し形成したことを特徴とする靴底成形金型。
【請求項7】
前記複数のブロック突起成形用の略三日月形状の凹部は、靴底縦中央に略三日月形状の凹部の曲面壁を爪先方向に向けて配列し、またその靴底縦中央に配列した略三日月形状の凹部の両側にはそれと曲面壁を逆向きにした踵向きの略三日月形状の凹部を並設したことを特徴とする請求項6記載の耐滑靴底。
【請求項8】
前記複数のブロック突起成形用の略三日月形状の凹部は、靴底前方部においてその全体を不踏中央部を中心に第二指へと内側に向けて配列したことを特徴とする請求項7記載の耐滑靴底。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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